(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】降着装置及び補剛部材
(51)【国際特許分類】
B64C 25/58 20060101AFI20220111BHJP
B64C 27/04 20060101ALI20220111BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20220111BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B64C25/58
B64C27/04
F16F7/12
F16F7/00 E
(21)【出願番号】P 2018079016
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 洋一
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-79405(JP,U)
【文献】特開2016-107804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0151836(US,A1)
【文献】米国特許第4645143(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 25/58
B64C 27/04
F16F 7/12
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼航空機の機体の前後軸に平行に配置される一対のスキッドと、
前記機体に装着され、一対の前記スキッドを連結し、且つ、内部空間を有するクロスチューブと、
前記クロスチューブの扁平化を抑制する補剛部と、を備え、
前記クロスチューブは、前記機体との装着部よりも端部側に湾曲
部を有し、
前記補剛部は、前記湾曲
部及び一対の前記湾曲
部の間のうちの少なくともいずれかの
被補剛部の内部空間に配置されて
おり、
前記補剛部は、前記クロスチューブの軸方向の締結力により拡径し、前記被補剛部の内面に接触する拡径部と、前記拡径部に軸方向の締結力を生じさせる締結部とをさらに有する、降着装置。
【請求項2】
前記
拡径部と前記
被補剛部の内面とは無負荷状態で接触している、請求項1に記載の降着装置。
【請求項3】
前記
拡径部は、無負荷状態で前記
被補剛部の内面との間に隙間を有するように配置され、
着地時の負荷によって扁平化した前記
被補剛部の内面が前記
拡径部と接触することにより前記負荷と前記装着部の変位との関係を示す曲線の変曲点が、前記
被補剛部の座屈時の変位よりも小さい変位において形成されるように、前記隙間が設定されている、請求項1に記載の降着装置。
【請求項4】
前記変曲点が、前記
被補剛部の弾性変形位置に含まれる変位において形成されるように、前記隙間が設定されている、請求項3に記載の降着装置。
【請求項5】
前記
拡径部は、拡径可能であって拡径することにより前記
被補剛部の内面に接触するリングと、前記リングに内嵌すると共に当該リングを軸方向に挟持する第1ディスク及び第2ディスクと
を有し、
前記締結部は、前記第1ディスク及び前記第2ディスクに軸方向の締結力を生じさせるワイヤを有し、
前記第1ディスクは、前記リングに当接して、前記軸方向の一方への前記リングの変位を規制し、且つ、前記リングを拡径させる第1係合部を有し、
前記第2ディスクは、前記リングを当接して、前記軸方向の他方への前記リングの変位を規制し、且つ、前記リングを拡径させる第2係合部を有している、請求項1~4のいずれか一項に記載の降着装置。
【請求項6】
前記第2係合部は、前記第1ディスクの外側面と前記リングの内周面との間隙に嵌って前記リングを拡径させる突起を有している、請求項5に記載の降着装置。
【請求項7】
回転翼航空機の機体の前後軸に平行に配置される一対のスキッドと、
前記機体に装着され、一対の前記スキッドを連結し、且つ、内部空間を有するクロスチューブと、を備える降着装置に用いられる補剛部材であって、
前記クロスチューブにおける前記機体との装着部よりも端部側に設けられる湾曲
部、及び、一対の前記湾曲
部の間のうちの少なくともいずれかの
被補剛部の内部空間に配置され、
前記クロスチューブの軸方向の締結力により拡径し、前記被補剛部の内面に接触する拡径部と、
前記拡径部に軸方向の締結力を生じさせる締結部とを備える、補剛部材。
【請求項8】
前記拡径部は、
拡径可能であって拡径することにより前記被補剛部の内面に接触するリングと、
前記リングに内嵌すると共に当該リングを軸方向に挟持する第1ディスク及び第2ディスクとを有し、
前記締結部は、前記第1ディスク及び前記第2ディスクに軸方向の締結力を生じさせるワイヤを有し、
前記第1ディスクは、前記リングに当接して、前記軸方向の一方への前記リングの変位を規制し、且つ、前記リングを拡径させる第1係合部を有し、
前記第2ディスクは、前記リングを当接して、前記軸方向の他方への前記リングの変位を規制し、且つ、前記リングを拡径させる第2係合部を有している、請求項7に記載の補剛部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降着装置及び補剛部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の降着装置を用いた例として、たとえば、特許文献1の回転翼航空機の降着装置が知られている。この特許文献1の降着装置では、スキッドチューブに、上方に突出した湾曲部を形成している。当該スキッドチューブにおいても着陸エネルギを吸収できるようにすることにより、急速な沈下速度で着地する場合などでも大きな着陸エネルギを吸収して、機体及び乗員にダメージを与えないようにしている。
【0003】
また、従来の降着装置を用いた例として、たとえば、非特許文献1の地上共振対策が知られている。この非特許文献1の降着装置では、機体との間にダンパを追加することにより、地上共振を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-49097号公報
【文献】日本航空技術協会著、新航空工学講座5 ヘリコプタ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、特許文献1では大きな着陸エネルギを吸収するようにし、また、非特許文献1では地上共振を回避するようにしている。しかしながら、これらは相反する要求であるが、これらを同時に満たすことが求められている。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、大きな着陸エネルギを吸収しつつ、地上共振を回避することができる降着装置及び補剛部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る降着装置は、回転翼航空機の機体の前後軸に平行に配置される一対のスキッドと、前記機体に装着され、一対の前記スキッドを連結し、且つ、内部空間を有するクロスチューブと、前記クロスチューブの扁平化を抑制する補剛部と、を備え、前記クロスチューブは、前記機体との装着部よりも端部側に湾曲管部分を有し、前記補剛部は、前記湾曲管部分及び一対の前記湾曲管部分の間のうちの少なくともいずれかの管部分の内部空間に配置されている。
【0008】
この構成によれば、管部分に配置された補剛部がクロスチューブの扁平化を抑制している。このクロスチューブにおける補剛部の配置位置、数量及びクロスチューブ内面の接触状態により、クロスチューブの剛性を任意の値へ増加させるため、地上共振を回避することができる。また、急速な沈下速度で着地する場合などでもクロスチューブの座屈崩壊を防止することにより、大きな着陸エネルギを吸収することができる。
【0009】
この降着装置では、前記補剛部と前記管部分の内面とは無負荷状態で接触していてもよい。この構成によれば、補剛部は、管部分を内側から支持することにより、クロスチューブの扁平化を抑制している。このため、クロスチューブの剛性を増加させて地上共振を回避したり、クロスチューブの座屈を防止して大きな着陸エネルギを吸収したりすることができる。
【0010】
この降着装置では、前記補剛部は、無負荷状態で前記管部分の内面との間に隙間を有するように配置され、着地時の負荷によって扁平化した前記管部分の内面が前記補剛部と接触することにより前記負荷と前記装着部の変位との関係を示す曲線の変曲点が、前記管部分の座屈時の変位よりも小さい変位において形成されるように、前記隙間が設定されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、補剛部は、管部分を内側から支持することにより、クロスチューブの扁平化を抑制している。このため、クロスチューブの剛性を増加させて地上共振を回避したり、クロスチューブの座屈を防止し大きな着陸エネルギを吸収したりすることができる。
【0012】
この降着装置では、前記変曲点が、前記管部分の弾性変形位置に含まれる変位において形成されるように、前記隙間が設定されていてもよい。この構成によれば、地上共振の回避、及び、吸収する着陸エネルギの増加を図ることができる。
【0013】
この降着装置では、前記補剛部は、拡径可能であって拡径することにより前記管部分の内面に接触するリングと、前記リングに内嵌すると共に当該リングを軸方向に挟持する第1ディスク及び第2ディスクと、前記第1ディスク及び前記第2ディスクに軸方向の締結力を生じさせるワイヤと、を有し、前記第1ディスクは、前記リングに当接して、前記軸方向の一方への前記リングの変位を規制し、且つ、前記リングを拡径させる第1係合部を有し、前記第2ディスクは、前記リングを当接して、前記軸方向の他方への前記リングの変位を規制し、且つ、前記リングを拡径させる第2係合部を有していてもよい。
【0014】
この構成によれば、補剛部を既存の降着装置のクロスチューブに装着することができる。また、リング、第1ディスク及び第2ディスク間における摩擦、これらとワイヤとの間の摩擦、リングと管部分の内面との間の摩擦によって、振動が減衰し、地上共振を低減することができる。
【0015】
この降着装置では、前記第2係合部は、前記第1ディスクの外側面と前記リングの内周面との間隙に嵌って前記リングを拡径させる突起を有していてもよい。この構成によれば、クロスチューブ、リング、第1ディスク及び第2ディスク間に径方向内力が生じ、内力によって生じる摩擦力によって、補剛部をクロスチューブに固定することができる。
【0016】
本発明の別の態様に係る補剛部材は、回転翼航空機の機体の前後軸に平行に配置される一対のスキッドと、前記機体に装着され、一対の前記スキッドを連結し、且つ、内部空間を有するクロスチューブと、を備える降着装置に用いられる補剛部材であって、前記クロスチューブにおける前記機体との装着部よりも端部側に設けられる湾曲管部分、及び、一対の前記湾曲管部分の間のうちの少なくともいずれかの管部分の内部空間に配置され、拡径可能であって拡径することにより前記管部分の内面に接触するリングと、前記リングに内嵌すると共に当該リングを軸方向に挟持する第1ディスク及び第2ディスクと、前記第1ディスク及び前記第2ディスクに軸方向の締結力を生じさせるワイヤと、を有し、前記第1ディスクは、前記リングに当接して、前記軸方向の一方への前記リングの変位を規制し、且つ、前記リングを拡径させる第1係合部を有し、前記第2ディスクは、前記リングを当接して、前記軸方向の他方への前記リングの変位を規制し、且つ、前記リングを拡径させる第2係合部を有している。
【0017】
この構成によれば、補剛部材を既存の降着装置のクロスチューブに装着することができる。また、この補剛部材は、断面2次モーメントの増加を主目的とした他の補剛装置よりも締結箇所が少なくてすみ、クロスチューブに対する補剛部材の装着及び固定が簡便である。また、補剛部材によって、クロスチューブの剛性を増加させて地上共振を回避したり、クロスチューブの座屈を防止し大きな着陸エネルギを吸収したりすることができる。また、リング、第1ディスク及び第2ディスク間における摩擦、これらとワイヤとの間の摩擦、リングと管部分の内面との間の摩擦によって、振動が減衰し、地上共振を低減することができる。
【0018】
本発明は、以上に説明した構成を有し、大きな着陸エネルギを吸収しつつ、地上共振を回避することができる降着装置及び補剛部材を提供することができるという効果を奏する。
【0019】
本発明の上記目的、他の目的、特徴及び利点は、添付図面を参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る降着装置を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のクロスチューブに配置される補剛部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2の補剛部を脇部に配した降着装置を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、
図2の補剛部の取り付け方法を説明するための断面図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、
図1のクロスチューブの変形を説明するための図である。
【
図8】
図1のクロスチューブに対する負荷と装着部の変位との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、本発明の実施の形態2に係る降着装置の一部を概略的に示す断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態3に係る降着装置の一部を概略的に示す図である。
【
図11】
図10のクロスチューブに対する負荷と装着部の変位との関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施の形態3の変形例に係る降着装置の一部を概略的に示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態4に係る降着装置におけるクロスチューブに対する負荷と装着部の変位との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14(a)~
図14(c)は、本発明の別の実施の形態に係る降着装置の一部を概略的に示す断面図である。
【
図15】本発明のさらに別の実施の形態に係る降着装置が装着されるクロスチューブの一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0022】
(実施の形態1)
<降着装置の構成>
実施の形態1に係る降着装置10は、
図1及び
図3に示すように、回転翼航空機11の機体12に装着され、回転翼航空機11の着陸の際に用いられる。以下、降着装置10をヘリコプタに適用した場合について説明するが、回転翼航空機11はヘリコプタに限定されず、ドローン等の他の航空機にも適用することができる。なお、回転翼航空機11の降着装置10に対して機体12側を「上」とし、その反対側を「下」として説明するが、回転翼航空機11の方向はこれに限定されない。
【0023】
降着装置10は、一対のスキッド20と、一対のスキッド20を連結する一対のクロスチューブ30を備えている。一対のスキッド20は、回転翼航空機11の降着時に接地する部分であって、回転翼航空機11の機体12の前後軸Lに平行に設けられ、互いに間隔を空けて配置されている。スキッド20は、管状部材であり、前部分が前方ほど上昇するように傾斜している。なお、スキッド20はその前部分が傾斜していなくてもよい。
【0024】
一対のクロスチューブ30は、スキッド20が接地した際のエネルギ(着陸エネルギ)を吸収し機体12への衝撃を緩和する部分であって、機体12と一対のスキッド20との間に設けられている。一対のクロスチューブ30は、回転翼航空機11の機体12の前後軸Lに垂直に設けられ、互いに間隔を空けて配置されている。一対のクロスチューブ30のそれぞれは、両端部31のうちの一端部31が一対のスキッド20の一方のスキッド20に接続され、他端部31が他方のスキッド20の一端に接続されている。
【0025】
クロスチューブ30は、例えば、内部空間を有する管状部材であって、外径が軸方向に沿って一定であり、肉厚が軸方向及び周方向に沿って一定である。また、クロスチューブ30は、公知の形状を有しており、例えば、円管を曲げ加工することにより製作される。クロスチューブ30の内部空間に補剛部40が配置されている。この補剛部40については後述する。
【0026】
クロスチューブ30は、例えば、中央部32、一対の脇部33、一対の伸延部34、一対の装着部35及び一対の端部31を有している。一対の脇部33、一対の伸延部34、一対の装着部35及び一対の端部31は中央部32に対して鏡面対称に配置されている。
【0027】
中央部32は、着陸荷重等の外力による撓みで湾曲する部分であり、一対の装着部35の間であって、クロスチューブ30の中央に設けられ、一対のスキッド20を含む面に対して平行に配置されている。脇部33は、装着部35よりも端部31側であって、中央部32と伸延部34との間に設けられ、中央部32に対して下方へ曲がりながら傾斜して伸延部34と繋がっている。伸延部34は、脇部33と端部31との間に設けられ、脇部33よりも外側に両端部31を向けて直線状に下降するように中央部32に対して傾斜している。
【0028】
また、クロスチューブ30は、直線状に延びる直管部分、及び、略円弧状に湾曲する湾曲管部分により構成されている。この実施の形態では、中央部32及び伸延部34は直管部分により形成され、脇部33は直管部分36及び湾曲管部分37により形成されている。この直管部分36は、湾曲管部分37よりも中央部32側に設けられており、中央部32と装着部35を挟んで互いに連続する1本の直線状に並ぶ。なお、脇部33は、直管部分36を含まず、湾曲管部分37により形成されていてもよい。
【0029】
装着部35は、機体12に装着される部分であって、この装着部35でクロスチューブ30は機体12を支持している。1本のクロスチューブ30に一対の装着部35が設けられている。これにより、機体12は、一対のクロスチューブ30の4点で降着装置10により支持されている。
【0030】
また、クロスチューブ30において装着部35は、機体12の前後軸L及びこれに対して互いに直交する2軸に沿った並進3方向の力を機体12に伝達する。これに対し、装着部35は、前後軸Lまわりの回転を拘束せず、前後軸Lまわりのモーメントを機体12へ伝達しない。このため、クロスチューブ30は4点曲げ梁モデルと等価と言える。
【0031】
この4点曲げ梁モデルでは、一対の装着部35間の中央部32において曲げモーメントが最大であって、且つ、一定となる。このため、着陸エネルギは、主に曲げモーメントが最大となる中央部32の塑性曲げにより吸収される。また、4点曲げ梁モデルに相当するクロスチューブ30では塑性領域(体積)を大きく採ることができ、クロスチューブ30による着陸エネルギの吸収性が優れる。
【0032】
例えば、従来技術の降着装置のように、スキッド及びクロスチューブが弾性変形し、着陸エネルギを吸収する。この場合、一旦吸収したエネルギは、弾性変形によりほとんど消費されることなく解放されるため、地面への大きな反発力となる。これにより、降着装置に装着された機体が上方へ跳ね返るおそれがある。
【0033】
これに対し、クロスチューブ30は、塑性変形することにより、弾性変形よりも多くの着陸エネルギを消費することができる。しかも、この塑性領域が大きいため、着陸エネルギをより効率的に消費することができる。よって、降着時の安全性の向上を図ることができる。
【0034】
なお、クロスチューブ30の曲げ剛性(EI)は、断面によらず一定である。このEは縦弾性係数であって、Iは断面2次モーメントである。このクロスチューブ30全体の曲げ剛性により地上共振に係る剛性は決まる。
【0035】
<補剛部の構成>
図2~
図5に示すように、補剛部40は、クロスチューブ30内に配置され、クロスチューブ30の扁平化を抑制する補剛部材であって、拡径部及び締結部を有している。クロスチューブ30において、補剛部40は、湾曲管部分37、及び、一対の湾曲管部分37の間のうちの少なくともいずれかの管部分の内部空間に配置されている。この実施の形態では、補剛部40は、脇部33の湾曲管部分37、及び、一対の湾曲管部分37の間の脇部33の直管部分36の両管部分に配置されている。なお、補剛部40は、直管部分36に配置されておらず、湾曲管部分37に配置されていてもよい。又は、補剛部40は、直管部分36に配置され、湾曲管部分37に配置されていなくてもよい。
【0036】
拡径部は、締結部による軸方向の締結力によって拡径する部材であって、リング41、リング41に内嵌すると共にリング41を軸方向に挟持する第1ディスク42及び第2ディスク43を有し、これらは金属等の剛性を有する材料で形成されている。なお、第1ディスク42よりも第2ディスク43側を上と称し、その反対側を下と称するが、補剛部40の配置方向はこれに限定されない。
【0037】
リング41は、環形状であって、周方向の一部に切断部44が設けられている。この切断部44によってリング41の周方向の一端と他端との間隔が広がることにより、リング41は拡径可能である。また、リング41の中心軸を通る断面における形状は、半円形状である。この円弧形状の曲面がリング41の内周面を構成し、平面がリング41の外周面を構成する。
【0038】
第1ディスク42は、円柱形状の本体45、並びに、本体45に設けられる孔(第1貫通孔48)及び係合部(第1係合部49)を有している。本体45は、円形状の上面(第1上面)及び下面(第1下面)、並びに、第1上面の外周縁と第1下面の外周縁とを繋ぐ側面(第1側面)を有している。
【0039】
本体45は、第1上面及び第1下面がクロスチューブ30の中心軸30aに対して直交し、第1側面がクロスチューブ30の中心軸30aに平行又は略平行になるような形状を有している。このため、クロスチューブ30において直管部分36では、第1上面と第1下面は互いに平行であって、第1側面が第1上面及び第1下面に対して直交して設けられている。これに対し、湾曲管部分37では、第1上面に対して第1下面が傾斜し、第1側面が第1上面及び第1下面に対して傾斜して設けられている。
【0040】
1つ以上(この実施の形態では、8つ)の第1貫通孔48が本体45に設けられており、これらは本体45において周方向に均等な間隔を空けて配置されている。第1貫通孔48は、補剛部40を脇部33内に取り付ける際のワイヤ60が通る孔であり、本体45の中心軸に沿って第1上面と第1下面との間を貫通している。
【0041】
第1係合部49は、本体45の一端(この実施の形態では、下端)に設けられている。第1係合部49は、円環形状であって、本体45の第1側面から拡径するように外側へ突出し、外径がクロスチューブ30の内径よりも小さい。第1係合部49の上面は、リング41の内周面に沿うように下方ほど拡径する傾斜面で形成されている。第1係合部49の下面は、本体45の第1下面に対して面一になるように平面で形成されている。また、第1係合部49の上端49aにより形成される仮想面49bがクロスチューブ30の中心軸30aに対して直交するように、第1係合部49が形成されている。
【0042】
第2ディスク43は、円筒形状の係合部(第2係合部54)及び円盤形状の平面部51を有している。第2係合部54は、一方開口が塞がれるように基端が平面部51に接続され、他方開口が開放されている。この他方開口の周囲を取り囲む第2係合部54の先端54aは、リング41の内周面に沿うように下方ほど縮径する傾斜面で形成されている。
【0043】
第2係合部54の内径は、第2係合部54内に第1ディスク42の本体45が挿入され、第2係合部54の内側面が本体45の第1側面が接するように、本体45の外径よりも少し大きく設定されている。また、第2係合部54の外径は、第1ディスク42の第1係合部49の直径と同じになるように設定されている。
【0044】
第2係合部54は、平面部51、及び、先端54aにより形成される仮想面54bがクロスチューブ30の中心軸30aに対して直交し、外側面がクロスチューブ30の中心軸30aに平行になるような形状を有している。このため、クロスチューブ30の直管部分36では、平面部51と仮想面54bが互いに平行であって、外側面が平面部51及び仮想面54bに対して直交して設けられている。これに対し、湾曲管部分37では、平面部51に対して仮想面54bが傾斜し、外側面が平面部51及び仮想面54bに対して傾斜して設けられている。
【0045】
平面部51には、1つ以上(この実施の形態では、8つ)の孔(第2貫通孔53)が設けられており、これらは平面部51において周方向に均等な間隔を空けて配置されている。第2貫通孔53は、補剛部40を脇部33内に取り付ける際のワイヤ60が通る孔であり、平面部51の上面(第2上面)と下面(第2下面)との間を貫通している。第2ディスク43が第1ディスク42との間にリング41を挟んで脇部33内に配置された際に、第2貫通孔53は、第1貫通孔48を通過したワイヤ60が通るように配置されている。
【0046】
締結部は、拡径部に軸方向の締結力を生じさせる部材であって、ワイヤ60、第1支持具61及び第2支持具64を有している。ワイヤ60は、例えば、
図3に示すように、一端に球状の第1端末金具63が取り付けられ、他端にネジ部が設けられた第2端末金具66が取り付けられている。ただし、補剛部40をクロスチューブ30に固定できれば、ワイヤ60の端の形状はこれに限定されない。
【0047】
第1支持具61は、例えば、円盤形状であって、第1支持具61をその厚み方向に貫通する第1挿通孔62が設けられている。第1挿通孔62は、補剛部40の第2貫通孔53に相当する位置に設けられ、ワイヤ60の直径よりも大きく且つ第1端末金具63の直径よりも小さな内径を有している。
【0048】
第2支持具64は、例えば、円柱形状であって、第2支持具64をその軸方向に貫通する第2挿通孔65が設けられている。第2挿通孔65は、補剛部40の第1貫通孔48に相当する位置に設けられている。第2挿通孔65は、ワイヤ60及び第2端末金具66の直径よりも大きく、且つ、第2端末金具66に取り付けるナット67の直径よりも小さな内径を有している。また、第2支持具64には、径方向に貫通する第3貫通孔68が設けられている。
【0049】
<補剛部の取り付け方法>
まず、
図4に示すように、ワイヤ60を第1支持具61の第1挿通孔62に通す。これにより、第1支持具61の一方面にワイヤ60の第1端末金具63が係止され、ワイヤ60が第1支持具61に固定される。この一方面側から第1支持具61をクロスチューブ30内に挿入する。
【0050】
続いて、補剛部40の第2ディスク43の平面部51の第2上面が第1支持具61の他方面に当接するようにして、第2貫通孔53にワイヤ60を通して、第2ディスク43をクロスチューブ30内に挿入する。これにより、第1支持具61側と反対側へ第2係合部54の先端54aが突出している。
【0051】
それから、リング41をクロスチューブ30に挿入してから、第1上面が平面部51の第2下面に対向するように、第1ディスク42をクロスチューブ30に挿入する。これにより、第1ディスク42と第2ディスク43との間にリング41を挟んだ状態になり、補剛部40がクロスチューブ30内に配置される。
【0052】
同様の方法で、複数の補剛部40をクロスチューブ30に挿入していき、クロスチューブ30の脇部33内に配置する。それから、
図5に示すように、端部31に最も近い補剛部40の第1ディスク42の第1下面に第2支持具64を当接し、第2支持具64の第2挿通孔65にワイヤ60を通す。
【0053】
そして、第2挿通孔65から突出したワイヤ60の第2端末金具66にナット67を取り付ける。この第2支持具64にナット67が係止され、ワイヤ60が第2支持具64に固定される。また、第2支持具64の第3貫通孔68にボルト(図示せず)を締結することにより、第2支持具64、及び、補剛部40が脇部33に固定される。
【0054】
この際、第2端末金具66にナット67を締結すると、ワイヤ60は第1支持具61と第2支持具64との間の距離を縮める力(軸方向の締結力)を拡径部に生じさせる。このため、
図6(a)に示すように、リング41内に第1ディスク42の本体45が嵌り、リング41は、軸方向において第1ディスク42の第1係合部49と第2ディスク43の第2係合部54との間に挟まっている。そして、
図6(b)に示すように、ワイヤ60を締結すると、本体45が第2係合部54内に嵌り、第1上面が第2下面に当接する。
【0055】
ここで、リング41が第1係合部49に当接し、軸方向の一方(下方)への変位が規制される。そして、リング41と本体45との間に第2係合部54の先端54aが挿入されて、リング41が拡径する。このように、締結部による軸方向の締結力が、軸方向に直交する径方向への荷重に置換される。これにより、リング41が第2係合部54に当接し、軸方向への他方(上方)への変位が規制される。また、リング41の外周面がクロスチューブ30の内面に当接して、補剛部40がクロスチューブ30に固定される。なお、
図6(a)及び
図6(b)は、補剛部40の一部及びクロスチューブ30の一部だけを表し、それ以外を省略している。また、
図6(a)及び
図6(b)では、クロスチューブ30について直管形状で表しているが、湾曲管形状であっても同様である。
【0056】
このように、補剛部40を既存の降着装置10のクロスチューブ30に装着することができる。よって、降着装置10の大幅な設計変更を必要としない。また、この補剛部40の取り付けは、断面2次モーメントの増加を主目的とした他の補剛装置よりも締結箇所が少なくてすむ。このため、クロスチューブ30に対する補剛部40の装着及び固定が簡便である。
【0057】
さらに、クロスチューブ30に対して着陸荷重等が負荷されていない状態(無負荷状態)であって、クロスチューブ30が扁平していない状態において、補剛部40のリング41がクロスチューブ30の内面と接触している。このため、降着装置10の降着時における衝撃がクロスチューブ30に作用しても、互いに接触したリング41とクロスチューブ30との摩擦によって衝撃によるクロスチューブ30の振動を低減することができる。よって、振動による降着装置10の地上共振を抑制することができる。
【0058】
また、着陸荷重は、クロスチューブ30、補剛部40のリング41、第1ディスク42及び第2ディスク43、ワイヤ60という順で伝わる。この際、ワイヤ60が張力を変動させる。そして、補剛部40においてリング41、第1ディスク42及び第2ディスク43間における摩擦、これらとワイヤ60との間の摩擦、リング41とクロスチューブ30の管部分の内面との間の摩擦によって、振動が減衰し、さらに地上共振を低減することができる。
【0059】
<降着装置の特性>
図1及び
図7(a)に示すように、回転翼航空機11が着地すると、降着装置10のスキッド20が接地する。これにより、スキッド20に接続するクロスチューブ30の端部31に、上向きの負荷(着陸荷重)Pが作用する。
【0060】
これに伴い、
図7(b)に示すように、機体12の装着部35に負荷Pが端部31に対する負荷Pと反対側へ作用する。この装着部35に対する負荷Pによりクロスチューブ30の中央部32及び脇部33は、断面が楕円形に変形して、扁平化する。また、これと共に、一対の端部31の間隔が拡がるように脇部33が変形しながら、中央部32が下方へ湾曲するように撓む。これにより、装着部35が変位δ、下方へ移動する。
【0061】
例えば、
図7(c)に示すように、装着部35が最大変位δmaxまで移動すると、中央部32が接地する。
【0062】
図7(a)~
図7(c)の負荷Pと装着部35の変位δとの関係を
図8に示す。
図8のグラフでは、縦軸が負荷Pを示し、横軸が変位δを示している。また、破線が、補剛部40を装着していない従来の降着装置に関する負荷Pと変位δとの関係を示し、実線が補剛部40を装着した本実施の形態の降着装置10に関する負荷Pと変位δとの関係を示している。
【0063】
図8の破線に示す従来の降着装置では、負荷Pが増加するに伴い、装着部35の変位δもほぼ直線的に増加する。変位δが0からδ1まで増加する(0≦δ<δ1)間、クロスチューブ30は弾性域にて弾性変形する。その後、変位δがδ1以上(δ≧δ1)では、クロスチューブ30は塑性域にて塑性変形し、この塑性域では変位δがδ2において負荷Pが最大負荷Pmaxに達する。そして、クロスチューブ30の変形により変位δが最大変位δmaxになると、クロスチューブ30の中央部32が接地する。
【0064】
これに対して、
図8の実線に示す本実施の形態の降着装置10では、装着部35の変位δが0からδ2の間(0≦δ<δ2)において、変位δの増加に伴って負荷Pも増加する。これにより、下記式(1)に示す、降着装置10の降着時の衝撃に対する降着装置10の吸収エネルギEは、
図8の実線と破線との差の網掛けで表す範囲分、従来よりも増加する。また、変位δがδ2以上(δ≧δ2)では、クロスチューブ30の座屈を防止している。このため、降着装置10は一層大きな着陸エネルギを吸収し、降着時の安全性の向上を図ることができる。
【0065】
【0066】
また、脇部33が補剛部40により支持されて、脇部33の扁平化が制限されているため、一対の脇部33で挟まれた中央部32は下方への撓みが低減される。これにより、0≦δ<δ1の弾性域において、クロスチューブ30の弾性域における剛性が向上し、変位δの増加に対して上昇する負荷Pの傾きが従来よりも大きくなる。これにより、クロスチューブ30のばね定数k[N/m]が変化することにより、下記式(2)に示すクロスチューブ30の固有振動数Fnが変化する。このため、降着装置10の降着時の地上共振を回避し、降着時の安全性の向上を図ることができる。
【0067】
【0068】
仮に、破損等により補剛部40がクロスチューブ30を支持する機能が奏しない状態であっても、降着装置10の形状は従来通りである。このため、降着装置10は、吸収エネルギE及び最大負荷Pmaxにより定める着陸エネルギ吸収性を従来と同等に維持することができる。
【0069】
また、降着装置10の大幅な設計変更を必要とせずに、降着時の安全性の向上を図ることができる。
【0070】
すなわち、既存の設計手順では、設計初期段階において、クロスチューブ30の管材料、管外径、装着部35の位置(座標)、及び、スキッド20の位置(座標)を決める。その後の特性を調整する方法は、クロスチューブ30の肉厚の増減により制限される。
【0071】
例えば、クロスチューブ30の肉厚を増やすと、弾性域の剛性(ばね定数)が増加すると共に、着陸エネルギの吸収性が変わる。総吸収エネルギ量は増える傾向があり、また、最大荷重が増加する。このため、機体12の強度検討をやり直す必要があり、所望の着陸時の吸収エネルギ等を得るために降着装置の大幅な設計変更が必要になる。
【0072】
一方、クロスチューブ30の肉厚を減らすと、弾性域の剛性(ばね定数)が低下すると共に、着陸エネルギの吸収性が変わる。総吸収エネルギ量は減る傾向がある。また、薄肉化によって変位δが最大変位δmaxになる前にクロスチューブ30の座屈が発生し、総吸収エネルギ量はさらに減少する可能性がある。これにより、総吸収エネルギ量がその要求下限を下回り、設計初期段階の検討を見直さなければならなくなり、降着装置の大幅な設計変更が必要になる。
【0073】
さらに、クロスチューブ30の肉厚の変更以外の安全性向上を図る方法として、例えば、ダンパを装着部35に取り付けることが考えられる。この場合も、降着装置の大幅な設計変更が必要になる。
【0074】
これに対して、4点曲げ梁モデルと等価のクロスチューブ30では、ブラジール効果により同じモーメントに対して曲率の小さいほど撓みが大きく、剛性が低くなる。このため、モーメントが高く、且つ、曲率が小さい湾曲管部分37に楕円変形(扁平化)を拘束する補剛部40を装着することにより、地上共振発生に係る剛性を向上させることができる。
図8に示すとおり、最大荷重Pmax0の増加及びエネルギの吸収量を減らさずに、クロスチューブ30の剛性が増加する。よって、降着装置10の大幅な設計変更を要せずに、降着時の安全性の向上を図ることができる。
【0075】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る降着装置10では、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、第2ディスク43の第2係合部54は、第1ディスク42に外嵌し、第1ディスク42の外側面とリング41の内周面との間隙に嵌ってリング41を拡径させる突起55を有している。なお、
図9(a)及び
図9(b)では、補剛部40の一部及びクロスチューブ30の一部だけを表し、それ以外を省略している。また、
図9(a)及び
図9(b)では、クロスチューブ30について直管形状で表しているが、湾曲管形状であっても同様である。
【0076】
突起55は、第2係合部54の伸延方向に沿って第2係合部54から延びている。突起55は、円筒形状であって、内径が円筒形状の第2係合部54の内径と等しく、内周面は第2係合部54の内周面と面一になるように第2係合部54と同軸に設けられている。突起55は、外径が第2係合部54の外径よりも小さいため、径方向の厚みが第2係合部54よりも薄い。
【0077】
また、突起55は、内周面と外周面とが互いに平行であり、先端55a面が内周面と外周面との間で湾曲する曲面で形成されている。この場合、第2係合部54は、平面部51、及び、先端55aにより形成される仮想面55bがクロスチューブ30の中心軸30aに対して直交し、外側面がクロスチューブ30の中心軸30aに平行になるような形状を有している。
【0078】
このような突起55を有する第2ディスク43を用いて補剛部40を、
図9(a)に示すように、クロスチューブ30の脇部33に配置する。この場合、ワイヤ60を締結すると、突起55が第1ディスク42の本体45の外側面に沿って下方へ移動し、リング41の内周面と本体45の外側面との間に差し込まれる。これにより、リング41が拡径することにより、リング41の外周面が脇部33の内面と接する。
【0079】
ここで、リング41の内周面と本体45の外側面との間に突起55が介在するため、第2ディスク43が第1ディスク42から離れることが防止され、補剛部40が脇部33に対し固定される。よって、
図5に示す第2支持具64におけるボルト等で固定してなくてもよい。ただし、第2支持具64におけるボルト等で固定してもよい。
【0080】
実施の形態2に係る降着装置10においても、クロスチューブ30の剛性を増加させて地上共振を回避したり、クロスチューブ30の座屈を防止して大きな着陸エネルギを吸収したりすることができる。また、実施の形態2に係る降着装置10において、実施の形態1に係る降着装置10の構成と同じ構成を有する点については、実施の形態1に係る降着装置10と同様の作用、効果を奏する。
【0081】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る降着装置10では、
図10に示すように、補剛部40が、着陸荷重等が負荷されていない状態(無負荷状態)でクロスチューブ30の内面との間に隙間56を有するように配置されていてもよい。なお、
図10では、補剛部40の一部及びクロスチューブ30の一部だけを表し、それ以外を省略している。また、
図10では、クロスチューブ30について直管形状で表しているが、湾曲管形状であっても同様である。
【0082】
クロスチューブ30に対して着陸荷重等が負荷されていない状態(無負荷状態)では、クロスチューブ30が扁平していない。この状態において、第1上面が第2下面に当接した補剛部40についてリング41とクロスチューブ30の内面との間に隙間56が設けられるように、補剛部40が形成されている。
【0083】
これに対し、着地時の負荷によってクロスチューブ30が扁平化すると、リング41がクロスチューブ30の内面に接触する。これにより、補剛部40がクロスチューブ30の扁平化を抑制する。このため、
図11に示すように、負荷と装着部35の変位との関係を示す曲線(負荷-変位曲線)においてδ3で変曲点が生じる。この変曲点が、クロスチューブ30の座屈時の変位よりも小さい変位において形成されるように、隙間56が設定されていてもよい。
【0084】
例えば、
図11の実線に示すように、変位δがδ3の位置の変曲点は、脇部33の弾性変形位置に含まれる変位(弾性域:0≦δ<δ1)において設けられる。このため、0≦δ<δ3では、補剛部40がクロスチューブ30の内面と接触せず、クロスチューブ30の扁平化を抑制していない。よって、この範囲では、実線に示す補剛部40を装着した降着装置10の負荷-変位曲線は、破線に示す補剛部40を装着しない従来の降着装置の負荷-変位曲線と一致、又はほぼ一致する。
【0085】
これに対し、δ3<δ<δ2の範囲では、実線に示す降着装置10の変位δに対する負荷Pは、破線に示す降着装置10の変位δに対する負荷Pよりも大きくなる。このような非線形挙動により、上記式(1)に示す、降着装置10の降着時の衝撃に対する降着装置10の吸収エネルギEは、
図11の網掛けで表す範囲分、増加する。
【0086】
また、δ3<δ<δ1の弾性域において、補剛部40の降着装置10への装着によりクロスチューブ30の剛性が向上している。これにより、クロスチューブ30のばね定数k[N/m]が変化することにより、上記式(2)に示すクロスチューブ30の固有振動数Fnが変化するため、降着装置10の降着時の地上共振を回避することができる。
【0087】
このように、実施の形態3に係る降着装置10においても、大きな着陸エネルギを吸収しつつ、地上共振を回避することができる。また、実施の形態3に係る降着装置10において、実施の形態1に係る降着装置10の構成と同じ構成を有する点については、実施の形態1に係る降着装置10と同様の作用、効果を奏する。
【0088】
なお、変曲点が負荷-変位曲線の塑性域(δ1≦δ<δmax)に設けられていてもよい。この場合、クロスチューブ30の座屈を防止することにより降着時の着陸エネルギの低下を低減し、補剛部40によって降着時の安全性の向上を図ることができる。
【0089】
また、
図12に示すように、第2ディスク43の第2係合部54は、第1ディスク42に外嵌し、第1ディスク42の外側面とリング41の内周面との間隙に嵌ってリング41を拡径させる突起55を有している。この突起55は実施の形態2に係る突起55と同様であるため、その説明を省略する。なお、
図12では、補剛部40の一部及びクロスチューブ30の一部だけを表し、それ以外を省略している。また、
図12では、クロスチューブ30について直管形状で表しているが、湾曲管形状であっても同様である。
【0090】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る降着装置10では、クロスチューブ30の中央部32の内部空間に補剛部40が配置されている。この中央部32は、一対の湾曲管部分37の間の管部分である。この補剛部40によって、ブラジール効果を抑制し、座屈の防止により着陸エネルギの吸収低下を低減することができる。
【0091】
すなわち、装着部35間の中央部32は、着陸の際の曲げモーメントが大きく、座屈が発生し易い。このため、
図13の負荷Pと装着部35の変位δとの関係のグラフにおいて破線で示すように、変位δがδ4に至ると、クロスチューブ30が座屈し機体12を支持できなくなり、負荷Pが急速に低下する。これにより、クロスチューブ30により吸収する着陸エネルギが低下する。
【0092】
これに対して、中央部32内に補剛部40を装着することにより、中央部32、延いては、クロスチューブ30の座屈を防止することができる。このため、
図13の実線で示すように、変位δがδ4以上(δ≧δ4)においても、クロスチューブ30は機体12を支持し続け、装着部35に負荷Pが作用する。そして、変位δの増加に伴い負荷Pが徐々に減少し、最大変位δmaxでクロスチューブ30の中央部32が接地する。このように、この結果、上記式(1)に示す降着装置10の吸収エネルギEは、
図11の網掛けで表す範囲分、増加する。
【0093】
このように、実施の形態4に係る降着装置10においても、大きな着陸エネルギを吸収しつつ、地上共振を回避することができる。また、実施の形態4に係る降着装置10において、実施の形態1に係る降着装置10の構成と同じ構成を有する点については、実施の形態1に係る降着装置10と同様の作用、効果を奏する。
【0094】
また、実施の形態4において、補剛部40は、クロスチューブ30の中央部32の内部空間に加えて、実施の形態1と同様に、湾曲管部分37、及び、一対の湾曲管部分37の間のうちの少なくともいずれかの管部分の内部空間に配置されていてもよい。
【0095】
実施の形態2に係る突起55を有する補剛部40が、実施の形態4の場合と同様に、クロスチューブ30の中央部32の内部空間に配置されていてもよい。また、実施の形態3に係る着陸荷重等が負荷されていない状態(無負荷状態)でクロスチューブ30の内面との間に隙間56を有する補剛部40が、実施の形態4の場合と同様に、クロスチューブ30の中央部32の内部空間に配置されていてもよい。これらの場合も、大きな着陸エネルギを吸収しつつ、地上共振を回避することができる。
【0096】
(その他の実施の形態)
上記全ての実施の形態に係る降着装置10では、補剛部40を配置するクロスチューブ30の形状に応じて、第1ディスク42及び第2ディスク43の形状を変化させた。ただし、補剛部40が湾曲管部分37及び一対の湾曲管部分37の間のうちの少なくともいずれかの管部分の内部空間に配置され、クロスチューブ30の扁平化を抑制する形状であれば、形状はこれに限定されない。
【0097】
例えば、クロスチューブ30において
図14(a)の直管部分36及び
図14(b)の湾曲管部分37のいずれにおいても、同じ形状の補剛部40を配置してもよい。この場合、
図14(c)に示すように、第1ディスク42の第1上面と第2ディスク43の第2下面とが接した固定状態において、第1ディスク42の第1下面及び第2ディスク43の第2上面がクロスチューブ30の中心軸30aに対して直交するような形状である。また、補剛部40のクロスチューブ30に対する挿入及び通過時に、補剛部40がクロスチューブ30に干渉しないように、補剛部40の寸法が設定される。
【0098】
上記全ての実施の形態に係る降着装置10では、クロスチューブ30は直管部分36及び湾曲管部分37により形成されていた。ただし、クロスチューブ30の形状はこれに限定されない。例えば、
図15に示すように、湾曲管部分により形成されたクロスチューブ30に補剛部40を配置してもよい。
【0099】
この場合も、装着部35よりも端部31側の脇部33の湾曲管部分に補剛部40が配置されれば、剛性の変化によって地上共振を回避することができる。また、一対の装着部35の間の中央部32の湾曲管部分に補剛部40が配置されれば、座屈の防止によって降着時の着陸エネルギの低下を低減することができる。このように、補剛部40によって降着時の安全性の向上を図ることができる。
【0100】
上記全ての実施の形態に係る降着装置10では、補剛部40が、クロスチューブ30に着脱可能な補剛部材であって、クロスチューブ30とは別に設けられていた。ただし、補剛部40はクロスチューブ30に着脱不可能に固定されており、クロスチューブ30と一体的に形成されていてもよい。
【0101】
上記実施の形態1に係る補剛部40は、脇部33及び中央部32の少なくともいずれの管部分に設けられていてもよい。また、実施の形態2に係る突起55を有する補剛部40が、脇部33及び中央部32の少なくともいずれの管部分に設けられていてもよい。また、実施の形態3に係る着陸荷重等が負荷されていない状態(無負荷状態)でクロスチューブ30の内面との間に隙間56を有する補剛部40が、脇部33及び中央部32の少なくともいずれの管部分に設けられていてもよい。これらの場合も、大きな着陸エネルギを吸収しつつ、地上共振を回避することができる。
【0102】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の降着装置及び補剛部材は、大きな着陸エネルギを吸収しつつ、地上共振を回避することができる降着装置及び補剛部材等として有用である。
【符号の説明】
【0104】
10 :降着装置
11 :回転翼航空機
12 :機体
20 :スキッド
30 :クロスチューブ
31 :端部
35 :装着部
37 :湾曲管部分
40 :補剛部(補剛部材)
41 :リング
42 :第1ディスク
43 :第2ディスク
49 :第1係合部
54 :第2係合部
55 :突起
56 :隙間