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6998281自律移動装置、サーバ装置、プログラム、および情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】自律移動装置、サーバ装置、プログラム、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220111BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018167269
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020042366
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2019-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】514020389
【氏名又は名称】TIS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】松井 暢之
(72)【発明者】
【氏名】油谷 実紀
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167077(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060281(WO,A1)
【文献】特開2014-002705(JP,A)
【文献】特開2015-040098(JP,A)
【文献】特開2014-142758(JP,A)
【文献】特開2005-049327(JP,A)
【文献】特開2016-114970(JP,A)
【文献】特開平01-158510(JP,A)
【文献】特開2014-006833(JP,A)
【文献】特開2002-189726(JP,A)
【文献】特開2009-199151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0208745(US,A1)
【文献】特開2013-250374(JP,A)
【文献】特開2006-184976(JP,A)
【文献】特開2008-083777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に建物内を移動する自律移動装置であって、
前記自律移動装置の移動を実行させる駆動部と、
前記自律移動装置における地図の座標系である地図座標系と、平面直角座標系における目的地の系番号を記憶する記憶部と、
前記建物内の所定の位置にある標識を検出する検出部であって、前記自律移動装置の移動状態を検出する検出部と、
前記自律移動装置により前記標識が検出された際の前記地図座標系における前記自律移動装置の座標を、平面直角座標系における前記標識の座標に対応付けて、前記地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換する第1変換行列を生成する生成部と、
前記目的地の緯度経度座標を取得する取得部であって、平面直角座標系における前記検出された前記標識の座標および系番号を取得する取得部と、
前記自律移動装置の移動状態に基づいて、前記地図座標系における前記自律移動装置の座標を推定する推定部と、
前記標識が検出されていない場合、前記地図座標系における前記自律移動装置の座標に基づいて、前記第1変換行列を用いて、平面直角座標系における前記自律移動装置の座標を算出する算出部と、
前記標識が検出されていない場合、前記平面直角座標系における前記自律移動装置の座標を、前記目的地の系番号を用いて、前記自律移動装置の緯度経度座標に変換し、他方、前記標識が検出された場合、前記平面直角座標系における前記標識の座標を、前記平面直角座標系における前記標識の系番号を用いて、前記標識の緯度経度座標に変換する第1変換部と、を備え、
前記推定部は、前記標識を検出された場合、前記標識の緯度経度座標に基づいて、前記自律移動装置の緯度経度座標を推定し、
前記目的地の緯度経度座標および前記自律移動装置の緯度経度座標に基づいて、前記駆動部を制御して前記目的地に前記自律移動装置を移動させる移動制御部をさらに備える、
自律移動装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記地図座標系における前記検出された前記標識の座標に基づいて、前記地図座標系における前記自律移動装置の座標を補正する、
請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記目的地の住所を示す住所情報を取得し、
前記目的地の住所に基づいて、前記目的地の平面直角座標系の系番号を判別する判別部と、
前記目的地の緯度経度座標を、前記目的地の系番号を用いて、平面直角座標系における目的地の座標に変換する第2変換部と、
前記算出部は、前記平面直角座標系における目的地の座標に基づいて、前記第1変換行列の逆行列を用いて、前記地図座標系における前記目的地の座標を算出し、
前記移動制御部は、前記地図座標系における前記目的地の座標および前記自律移動装置の座標に基づいて、前記駆動部を制御して前記目的地に前記自律移動装置を移動させる、
請求項1または2に記載の自律移動装置。
【請求項4】
自律的に建物内を移動する自律移動装置に、
前記自律移動装置の移動を実行させる駆動機能と、
前記自律移動装置における前記建物内の地図の座標系である地図座標系と、平面直角座標系における目的地の系番号を記憶する記憶機能と、
前記建物内の所定の位置にある標識を検出する検出機能であって、前記自律移動装置の移動状態を検出する検出機能と、
前記自律移動装置により前記標識が検出された際の前記地図座標系における前記自律移動装置の座標を、平面直角座標系における前記標識の座標に対応付けて、前記地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換する第1変換行列を生成する生成機能と、
前記目的地の緯度経度座標を取得する取得機能であって、平面直角座標系における前記検出された前記標識の座標および系番号を取得する取得機能と、
前記自律移動装置の移動状態に基づいて、前記自律移動装置の前記地図座標系の座標を推定する推定機能と、
前記標識が検出されていない場合、前記地図座標系における前記自律移動装置の座標に基づいて、前記第1変換行列を用いて、平面直角座標系における前記自律移動装置の座標を算出する算出機能と、
前記標識が検出されていない場合、前記平面直角座標系の前記自律移動装置の座標を、前記目的地の系番号を用いて、前記自律移動装置の緯度経度座標に変換し、他方、前記標識が検出された場合、前記平面直角座標系における前記標識の座標を、前記平面直角座標系における前記標識の系番号を用いて、前記標識の緯度経度座標に変換する第1変換機能と、を実現させ、
前記推定機能は、前記標識を検出された場合、前記標識の緯度経度座標に基づいて、前記自律移動装置の緯度経度座標を推定し、
前記自律移動装置に、前記目的地の緯度経度座標および前記自律移動装置の緯度経度座標に基づいて、前記駆動機能を制御して前記目的地に前記自律移動装置を移動させる移動制御機能をさらに実現させる、
プログラム。
【請求項5】
自律的に特定の建物内を移動する自律移動装置が、
目的地の緯度経度座標を取得するステップと、
前記自律移動装置における前記建物内の地図の座標系である地図座標系と、平面直角座標系における前記目的地の系番号を記憶するステップと、
前記建物内の所定の位置にある標識を検出するステップと、
前記自律移動装置により前記標識が検出された際の前記地図座標系における前記自律移動装置の座標を、平面直角座標系における前記標識の座標に対応付けて、前記地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換する第1変換行列を生成するステップと、
前記自律移動装置の移動状態を検出するステップと、
前記自律移動装置の移動状態に基づいて、前記自律移動装置の前記地図座標系の座標を推定するステップと、
前記標識が検出されていない場合、前記地図座標系における前記自律移動装置の座標に基づいて、前記第1変換行列を用いて、平面直角座標系における前記自律移動装置の座標を算出するステップと、
前記標識が検出されていない場合、前記平面直角座標系の前記自律移動装置の座標を、前記目的地の系番号を用いて、前記自律移動装置の緯度経度座標に変換するステップと、
前記標識が検出された場合、平面直角座標系における前記検出された前記標識の座標および系番号を取得するステップと、
前記標識が検出された場合、前記平面直角座標系における前記標識の座標を、前記平面直角座標系における前記標識の系番号を用いて、前記標識の緯度経度座標に変換するステップと、
前記標識を検出された場合、前記標識の緯度経度座標に基づいて、前記自律移動装置の緯度経度座標を推定するステップと、
前記目的地の緯度経度座標および前記自律移動装置の緯度経度座標に基づいて、前記目的地に前記自律移動装置を移動させるステップと、を含む、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動装置、サーバ装置、プログラム、および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律的に移動するロボットなどの自律移動装置が存在する。自律移動装置が自律移動するためには、自律移動装置が内部的に保持する周辺環境の地図(以下、「内部地図」ともいう)や当該内部地図上の目的地や自己の位置が必要となる。下記特許文献1には、走行中に周囲の情報を検知して地図情報を作成し、自身が有するカメラによって取得した画像から予め決められたマーカを検出することで自己の位置を算出する自律走行装置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-120551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自律移動装置が建物内の自律移動に用いる内部地図は、人が移動する際に一般的に使用する測地系とは異なる座標系の場合がある。このように内部地図の座標系が測地系とは異なる場合、人が測地系を用いて目的地を指定しても、内部地図上の自己位置から当該目的地の位置までの経路を自律移動装置が認識できず、目的地に移動できないという問題があった。また、建物外での移動では、目的地の指定に測地系を使用することが一般的である。このため、自律移動装置において、建物内外とで目的地の指定に使用する座標系が異なる場合、同一の仕組みによって建物内外の目的地を指定しシームレスに自律移動することが難しいという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、建物内でも測地系を用いて目的地に自律移動することができる自律移動装置、サーバ装置、プログラム、および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る自律移動装置は、自律的に建物内を移動する自律移動装置であって、自律移動装置の移動を実行させる駆動部と、目的地の緯度経度座標を取得する取得部と、自律移動装置における地図の座標系である地図座標系と、平面直角座標系における目的地の系番号を記憶する記憶部と、自律移動装置の移動状態を検出する検出部と、自律移動装置の移動状態に基づいて、地図座標系における自律移動装置の座標を推定する推定部と、地図座標系における自律移動装置の座標に基づいて、地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換する第1変換行列を用いて、平面直角座標系における自律移動装置の座標を算出する算出部と、平面直角座標系における自律移動装置の座標を、目的地の系番号を用いて、自律移動装置の緯度経度座標に変換する第1変換部と、目的地の緯度経度座標および自律移動装置の緯度経度座標に基づいて、駆動部を制御して目的地に自律移動装置を移動させる移動制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、自律的に建物内を移動する自律移動装置に、建物内にある目的地の緯度経度座標を取得する取得機能と、自律移動装置における建物内の地図の座標系である地図座標系と、平面直角座標系における目的地の系番号を記憶する記憶機能と、自律移動装置の移動状態を検出する検出機能と、自律移動装置の移動状態に基づいて、自律移動装置の地図座標系の座標を推定する推定機能と、地図座標系における自律移動装置の座標に基づいて、地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換する第1変換行列を用いて、平面直角座標系における自律移動装置の座標を算出する算出機能と、平面直角座標系の自律移動装置の座標を、目的地の系番号を用いて、自律移動装置の緯度経度座標に変換する第1変換機能と、目的地の緯度経度座標および自律移動装置の緯度経度座標に基づいて、駆動機能を制御して目的地に自律移動装置を移動させる移動制御機能と、を実現する。
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、自律的に特定の建物内を移動する自律移動装置が、建物内にある目的地の緯度経度座標を取得するステップと、自律移動装置における建物内の地図の座標系である地図座標系と、平面直角座標系における目的地の系番号を記憶するステップと、自律移動装置の移動状態を検出するステップと、自律移動装置の移動状態に基づいて、自律移動装置の地図座標系の座標を推定するステップと、地図座標系における自律移動装置の座標に基づいて、地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換する第1変換行列を用いて、平面直角座標系における自律移動装置の座標を算出するステップと、平面直角座標系の自律移動装置の座標を、目的地の系番号を用いて、自律移動装置の緯度経度座標に変換するステップと、目的地の緯度経度座標および自律移動装置の緯度経度座標に基づいて、目的地に自律移動装置を移動させるステップと、を含む。
【0009】
上記の態様によれば、自律移動装置は、移動の際に、地図座標系における自己位置の座標を平面直角座標系の座標を介して緯度経度座標に変換することができる。これにより、自律移動装置は、自律移動に用いる地図とは別に測地系で表された地図においても自己位置を特定することができるため、測地系の自己位置から同じく測地系の目的地の位置までの経路を認識できる。すなわち、上記の態様によれば、自律移動装置は、建物内でも測地系を用いて目的地に移動することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建物内でも測地系を用いて目的地に自律移動することができる自律移動装置、サーバ装置、プログラム、および情報処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るロボットシステムのシステム構成例を説明するための図である。
図2】本実施形態に係るロボットシステムの概要を説明するための図である。
図3】本実施形態に係るサーバ装置の機能構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係る移動ロボットの機能構成の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係るサーバ装置の動作例を示す図である。
図6】本実施形態に係る移動ロボットの動作例を示す図である。
図7】本実施形態に係る移動ロボットの動作例を示す図である。
図8】本実施形態に係る移動ロボットの動作例を示す図である。
図9】本実施形態に係るサーバ装置および端末300のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10】本実施形態に係る移動ロボットのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一または同様の構成を有する。
【0013】
<1.概要>
本実施形態では、建物内外問わず測地系を用いて自律移動する移動型サービスロボット(以下、「移動ロボット」という)が人を目的地まで案内する例を説明するが、これに限る趣旨ではない。本実施形態に係る移動ロボットは、例えば、建物内外を自律移動して人や物を目的地まで移動させる自律移動システムにおいても適用することが可能である。
【0014】
<1-1.システム構成>
図1を参照して、本実施形態に係るロボットシステム1のシステム構成例を説明する。
【0015】
ロボットシステム1は、移動ロボットを用いて人を案内するサービス(以下、単に「案内サービス」ともいう)を提供するためのシステムである。図1に示すように、ロボットシステム1は、移動ロボットを管理するためのサーバ装置100と、移動ロボット200とを含む。また、ロボットシステム1は、移動ロボットの移動経路などを示す移動情報を表示するための端末300を含んでもよい。サーバ装置100と、移動ロボット200と、端末300とは、ネットワークNを介して互いに通信可能に接続されている。また、サーバ装置100および移動ロボット200は、測地系や平面直角座標系に関連するデータを取得するため、ネットワークNを介してGPSを含めた外部システム400と接続されている。ここで「移動情報」とは、案内サービスの提供にあたって、移動ロボット200が移動した実績を示す情報である。移動情報は、例えば、移動ロボット200ごとの移動開始終了日時、移動経路、移動経路上の特定の地点の通過時刻などを含む。
【0016】
ネットワークNは、無線ネットワークや有線ネットワークにより構成される。ネットワークの一例としては、携帯電話網や、PHS(Personal Handy-phone System)網、無線LAN(Local Area Network)、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、WiMax(登録商標)、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、有線LAN、電話線、電灯線ネットワーク、IEEE1394等に準拠したネットワークがある。
【0017】
サーバ装置100は、移動ロボット200や外部システム400との通信や異なる座標系の座標を相互変換させるための変換行列の算出が可能な情報処理装置である。サーバ装置100は、所定のプログラムを実行することにより、移動ロボット200の自律移動を管理したり、複数の移動ロボット200間の連携を制御したりするサーバ機能を実現する。なお、ここで「座標」とは、特定の位置のX座標およびY座標をいう。また、座標は、特定の位置のZ座標を含んでもよい。
【0018】
移動ロボット200は、自律的に移動する自律移動装置である。移動ロボット200は、所定のプログラムを実行することにより、自律的に移動したり、サーバ装置100または他の移動ロボットと連携をしたりする。また、移動ロボット200は、案内サービス提供のための案内メッセージを出力してもよい。また、移動ロボット200は、オープンソースソフトウェアを用いてもよく、例えば、ロボット用オープンソースソフトウェアのROS(Robot Operating System)を用いてもよい。
【0019】
端末300は、サーバ装置100および/または移動ロボット200との通信が可能なスマートフォンやラップトップ端末等の端末装置である。端末300は、所定のプログラムを実行することにより、サーバ装置100や移動ロボット200と連携して移動ロボット200の移動情報を送受信したり、移動ロボット200の移動に関する画面を表示したりする。端末300は、移動ロボット200の移動経路を、測地系で表された地図を用いて表示してもよい。
【0020】
外部システム400は、ロボットシステム1が案内サービスを提供するためにサーバ装置100または移動ロボット200と連携する外部のシステムである。外部システム400は、例えば、GPS、測地系もしくは平面直角座標系で表された地図情報を提供する地図情報提供システム、または建物外の経路案内するナビゲーションシステム等である。
【0021】
<1-2.ロボットシステムの概要>
図2を参照して、ロボットシステム1の概要を説明する。ここでは、(1)案内サービス提供前の前処理、(2)案内サービス提供という二つの場面に分けて、ロボットシステム1の概要を説明する。
【0022】
まず上記(1)の場面について説明する。図2(a)に示すように、ロボットシステム1は、(ア)サーバ装置100における標識座標データベースの生成と、(イ)移動ロボット200における第1変換行列の生成とを行う。ここで「標識座標データベース」とは、建物内の平面直角座標系における標識の座標および系番号を格納するデータベースである。なお、以降「データベース」は、適宜「DB」と略す。標識座標DBの詳細については後述する。また、ここで「第1変換行列」とは、平面直角座標系の系番号を用いて、平面直角座標系の座標を緯度経度座標に変換する変換行列である。第1変換行列の詳細については後述する。
【0023】
「標識」とは、移動ロボット200が移動する際の位置の目印である。標識は、例えば、識別範囲の狭いBluetoothビーコンなどを用いたセンサーベースの標識(以下、「センサベース標識」という)、または天井などの建物内の画像の情報に基づくビジョンベースの標識(以下、「ビジョンベース標識」という)などが含まれる。なお、画像の情報は、例えば、画像の特徴点を示す情報であってもよいし、QRコード(登録商標)等のコード情報であってもよい。
【0024】
サーバ装置100は、具体的には、建物内の空間において二次元の直交座標系である相対座標系を設定し、当該設定された相対座標系における標識の座標を、第2変換行列を用いて平面直角座標系における標識の座標に変換して算出する。ここで「第2変換行列」とは、相対座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換するための変換行列である。第2変換行列の詳細については後述する。
【0025】
サーバ装置100は、上記算出された平面直角座標系における標識の座標により標識座標DBを生成する。サーバ装置100は、当該生成された標識座標DBを、上記(2)の場面における移動ロボット200の自己位置推定に用いるため、建物ごとに移動ロボット200それぞれに送信する。
【0026】
移動ロボット200は、建物内を移動して標識を検出した際に、第1変換行列を生成する。移動ロボット200は、当該生成された第1変換行列を上記(2)の場面における移動ロボット200の自己位置推定に用いるため、サーバ装置100に送信する。サーバ装置100は、移動ロボット200から送信された第1変換行列を移動ロボット200それぞれに配信する。
【0027】
つぎに上記(2)の場面について説明する。図2(b)に示すように、移動ロボット200は、建物内外で測地系を用いて目的地Gまで自律移動する。(ア)まず移動ロボット200は、緯度経度座標で指定された目的地Gまで案内するために建物Bの外で自動車に乗って移動してきた案内対象の人物を迎える。この際、移動ロボット200は建物Bの外にいるためGPSから取得した緯度経度座標により自己位置を推定する。また、この自動車がインターネットに接続するいわゆるコネクテッドカ―(Connected Car)である場合、当該自動車と移動ロボット200との間で緯度経度座標を用いて案内をハンドオーバーさせてもよい。
【0028】
つぎに移動ロボット200は、上記人物を目的地Gまで案内するため、目的地Gに向けて建物B内を自律移動する。移動ロボット200は、上記目的地Gまでの当該建物B内の移動の際、内部地図を用いて経路計画をし、位置追跡により内部地図上の自己位置を推定しながら移動してもよい。移動ロボット200は、この内部地図を用いた移動の際、目的地Gの緯度経度座標に基づいて内部地図の座標系(以下、「地図座標系」という)における目的地Gの座標を求めてもよい。
【0029】
移動ロボット200は、自己の緯度経度座標を求めて大域自己位置推定を行い、内部地図上の自己位置を補正してもよい。移動ロボット200は、当該補正された内部地図上の自己位置を初期位置として再び位置追跡により自己推定をしながら移動する。
【0030】
(イ)移動ロボット200は、上記大域自己位置推定の際、例えば、地図座標系における自己位置の座標に基づいて、自己の緯度経度座標を求めてもよい。移動ロボット200は、具体的には、自己が生成またはサーバ装置100から配信された第1変換行列を用いて自己の地図座標における座標を一旦平面直角座標系における座標に変換し、平面直角座標系の座標から測地系における緯度経度座標を算出する。
【0031】
(ウ)移動ロボット200は、上記大域自己位置推定の際、上記(イ)とは異なり、例えば標識500が検出された場合には、標識500を用いて自己の緯度経度座標を求めてもよい。移動ロボット200は、具体的には、サーバ装置100から配信された標識座標DBを用いて標識500の平面直角座標系における座標を緯度経度座標に変換する。移動ロボット200は、標識500の位置を自己の位置とみなして、標識500の緯度経度座標から自己の緯度経度座標を推定する。
【0032】
(エ)移動ロボット200は、目的地Gまで到着して案内サービスを終了する。また当該案内サービスにおいて、上記案内対象の人物の家族などが使用する端末300に、上記(ア)~(エ)までの案内サービスにおける移動ロボット200の移動経路を、測地系で表された地図上に表示させてもよい。
【0033】
上記のような構成によれば、移動ロボット200は、建物内外で測地系を用いてシームレスに自律移動することができる。さらに、移動ロボット200は、上記のような構成によれば、建物内では内部地図による移動制御しつつ、測地系を用いて自己位置を補正することができるため、精度よく自律移動することができる。また、ロボットシステム1は、上記構成によれば、端末300に表示された案内時の移動経路によって、建物外問わずに測地系で表された地図上で統一的に案内対象の人物の移動や居場所を確認することができるため、ユーザにとって使い勝手のよい案内サービスを提供することができる。
【0034】
上記のような構成によれば、さらに、測地系で目的地を指定することにより、建物内外に関わらず同一の座標系で目的地が指定できるため、通常は建物内を移動する移動ロボット200であっても、災害発生時などの緊急時には建物外の目的地へ自律移動することが可能となる。
【0035】
<2.機能構成>
<2-1.サーバ装置>
図3を参照して、本実施形態に係るサーバ装置100の機能構成を説明する。図3に示すように、サーバ装置100は、サーバ制御部110と、サーバ記憶部120と、サーバ通信部130と、を備える。
【0036】
サーバ制御部110は、サーバ判別部111と、設定部112と、第1算出部113と、第2算出部114と、配信部115と、サーバ取得部116と、サーバ変換部117と、サーバ生成部118とを備える。サーバ制御部110は、図9のプロセッサ801に相当する。
【0037】
サーバ判別部111は、建物の住所に基づいて、平面直角座標系における当該建物の系番号を判別する。サーバ判別部111は、具体的には、建物の住所を示す住所情報に基づいて、平面直角座標系変換DBを用いて、建物が属する平面直角座標系における系番号を判別する。ここで、「住所情報」とは、特定の建物や特定の地点の住所を示す情報である。住所情報は、例えば、都道府県、市区町村、大字、字および/または街区などを含む。また、「平面直角座標系変換DB」とは、住所情報と平面直角座標系における1~19の系番号とを対応付けて格納するデータベースである。平面直角座標系変換DBの詳細は後述する。
【0038】
設定部112は、建物の設計に基づいて、当該建物内の特定の点を原点とした二次元の直交座標系とする相対座標系を設定する。設定部112は、具体的には、建物情報による建物のフロアマップ上に、上記特定の点を原点とし特定の基本単位ベクトルを持つ二次元の直交座標系を設定する。当該設定にあたっては、例えば、サーバ装置100と接続する端末(不図示)に建物情報により描画された建物のフロアマップ上にユーザが手動で任意の点および基本単位ベクトルを指定して設定してもよいし、所定の規則にしたがって自動で原点および基本単位ベクトルを設定してもよい。この設定された二次元の直交座標系を「相対座標系」という。ここで「建物情報」とは、建物の設計を示す情報である。建物情報の詳細は後述する。
【0039】
設定部112は、例えば、建物内の同一直線上にない3つの基準点(以下、単に「基準点」ともいう)を設定してもよい。設定部112は、具体的には、建物情報による建物のフロアマップ上に同一直線上にない3つの基準点を設定する。設定部112は、当該設定の際、建物情報に含まれる建物に関する緯度経度情報から上記3つの基準点の緯度経度情報を取得してもよい。上記3つの基準点は、例えば、建物内の特定のフロアの四隅のうち、いずれか3つの点を設定してもよい。当該設定にあたっては、例えば、サーバ装置100と接続する端末(不図示)に建物情報により描画された建物のフロアマップ上にユーザが手動で任意の3つの基準点を指定して設定してもよいし、所定の規則にしたがって自動で3つの基準点を設定してもよい。
【0040】
第1算出部113は、建物内の標識の設置状況に基づいて、相対座標系における標識の座標を算出する。第1算出部113は、具体的には、建物情報に基づいて建物内に設置されている相対座標系における標識の座標を算出する。
【0041】
第1算出部113は、例えば、相対座標系における基準点の座標を算出してもよい。第1算出部113は、具体的には、設定部112により設定された相対座標系において、直交する2軸に同じ長さで目盛を付与し、設定部112により設定された3つの基準点の座標を算出してもよい。
【0042】
第2算出部114は、相対座標系における標識の座標に基づいて、相対座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換する第2変換行列を用いて、平面直角座標系における当該標識の座標を算出する。第2算出部114は、当該算出された平面直角座標系における標識の座標を、標識ごとに対応する系番号と紐づけて標識座標DBに記憶する。
【0043】
配信部115は、平面直角座標系における標識の座標を、移動ロボット200に配信する。配信部115は、具体的には、後述のサーバ通信部130を介して、平面直角座標系における標識の座標が格納されている標識座標DBを特定の移動ロボット200に送信する。このような構成によれば、いずれか一つの移動ロボット200が生成した建物ごとの標識座標DBを同じ建物内を移動する別の移動ロボット200に共有することができる。すなわち、このような構成によれば、汎用性の高いロボットシステムを提供することができる。
【0044】
サーバ取得部116は、基準点の緯度経度座標を取得する。サーバ取得部116は、具体的には、建物情報による建物のフロアマップから上記基準点の緯度経度座標を取得してもよい。
【0045】
サーバ変換部117は、基準点の緯度経度座標を、平面直角座標系における基準点の座標に変換する。サーバ変換部117は、具体的には、まず平面直角座標系パラメータDBを用いて建物の系番号に対応する原点緯度経度座標などの計算パラメータを取得する。サーバ変換部117は、つぎに当該取得された計算パラメータを用いて基準点の緯度経度座標を平面直角座標系における座標に変換する。ここで、「平面直角座標系パラメータDB」とは、平面直角座標系における1~19の系番号を、特定の位置の平面直角座標系における座標を算出するための計算パラメータに対応付けて格納するデータベースである。平面直角座標系パラメータDBおよび計算パラメータの詳細は後述する。
【0046】
上記のような、建物などの対象の場所の系番号に対応する計算パラメータを用いて平面直角座標系における座標と緯度経度座標とを相互変換する技術については、例えば、平成23年12月28日発行,国土地理院時報,2011,121集,109~124ページ,題名「Gauss-Kruger 投影における経緯度座標および平面直角座標相互間の座標換算についてのより簡明な計算方法」に開示されている。以降に説明する平面直角座標系の座標と緯度経度座標とを相互変換する構成に関しても当該技術を用いることができる。
【0047】
サーバ生成部118は、相対座標系における基準点の座標を、平面直角座標系における基準点の座標に対応付けて第2変換行列を生成する。サーバ生成部118は、例えば、相対座標系における3つの基準点の座標(xa,ya)、(xb,yb)および(xc,yc)と、これらの座標に対応するサーバ変換部117により変換された平面直角座標系における3つの基準点の座標(Xa,Ya)、(Xb,Yb)および(Xc,Yc)とを対応付けて、相対座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換するための次式(1)のアフィン行列を生成する。サーバ生成部118は、具体的には、上記対応付けによりアフィン行列の係数(線形変換の係数であるa1、b1、c1およびd1、ならびに平行移動の係数tx1およびty1)を求める。この生成されたアフィン行列が第2変換行列となる。
【0048】
【数1】
【0049】
上記構成によれば、移動ロボット200は、同一建物内を移動する際には、この生成された第2変換行列を用いて容易に相対座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換することができる。
【0050】
サーバ記憶部120は、建物情報、平面直角座標系変換DBと、平面直角座標系パラメータDBと、標識座標DBとを記憶する。なお、本例において、サーバ記憶部120は、平面直角座標系変換DB等データベースを利用する例について説明するが、適宜ファイルシステムを利用してもよい。サーバ記憶部120は、図9のメモリ803および記憶装置805に相当する。
【0051】
建物情報は、例えば、建物ごとに、建物内の標識の設置状況と、建物の住所とを示す情報である。建物情報は、具体的には、BIM(Building Information Modeling)を利用した、3次元の建物のデジタルモデルに対する、コスト、建物形状、空間関係、地理情報(建物の住所情報や緯度経度情報を含む)、建物部材の数量および/または特性を含む情報であってもよい。
【0052】
平面直角座標系変換DBは、住所情報と平面直角座標系における1~19の系番号を対応付けて格納する。平面直角座標系変換DBは、例えば、平成十四年国土交通省告示第九号で示されている19の系の都道府県、市区町村および/または島を、系番号に対応付けてもよい。
【0053】
平面直角座標系パラメータDBは、例えば、長半径、扁平率、縮尺係数、系番号ごとの原点経度および/または原点緯度などの上記パラメータを、系番号に対応付けてもよい。
【0054】
標識座標DBは、標識ごとの平面直角座標系における座標および系番号を記憶する。標識座標DBは、具体的には、各標識を一意に識別する標識IDと、平面直角座標系の座標と、系番号とを含む。標識座標DBにおける各標識は建物ごとに管理されてもよい。なお、この標識IDについて、移動ロボット200で検出する際に、センサーベース標識の場合、センサーが発する電波に一意な標識IDを埋め込むことで対象の標識を識別する。また、ビジョンベース標識の場合、画像内の特徴点から一意な標識IDを抽出可能とすることで対象の標識を識別する。
【0055】
サーバ通信部130は、ネットワークNを介して、移動ロボット200、端末300、他のサーバおよび/または外部システム400等に各種情報を送受信する。サーバ通信部130は、例えば、ネットワークNを介して、移動ロボット200から第1変換行列や移動情報を受信したり、サーバ記憶部120に記憶する各種情報またはDBを移動ロボット200に送信したりする。サーバ通信部130は、図9の通信I/F部811に相当する。
【0056】
<2-2.移動ロボット>
図4を参照して、本実施形態に係る移動ロボットの機能構成を説明する。図4に示すように、移動ロボット200は、制御部210と、記憶部220と、通信部230と、検出部240と、駆動部250とを備える。
【0057】
制御部210は、取得部211と、推定部212と、算出部213と、第1変換部214と、移動制御部215とを備える。また、制御部210は、判別部216と、第2変換部217、または生成部218を備えてもよい。制御部210は、図10のプロセッサ901に相当する。
【0058】
取得部211は、目的地の緯度経度座標を取得する。取得部211は、具体的には、建物内であれば建物情報から目的地の緯度経度座標を取得してもよいし、建物外であれば測地系で表された地図情報を提供する地図情報提供システムなどから受信することで取得してもよい。
【0059】
取得部211は、例えば、平面直角座標系における後述の検出部240により検出された標識の座標および系番号を取得してもよい。取得部211は、具体的には、標識座標DBを参照して、該当の標識の平面直角座標系における座標および系番号を取得する。
【0060】
取得部211は、例えば、目的地の住所を示す住所情報を取得してもよい。取得部211は、例えば、目的地の緯度経度座標に基づいて、後述の記憶部220に記憶するリバースジオコーディングDBを参照して目的地の住所情報を取得する。
【0061】
推定部212は、移動ロボット200の移動状態に基づいて、地図座標系における当該移動ロボット200の座標を推定する。ここで「移動状態」とは、移動ロボット200が移動する際の移動ロボット200の少なくとも一部の状態をいう。移動状態は、例えば、移動ロボット200が備える車輪の回転角度、移動速度、移動方向、姿勢および/または傾斜などを含む。
【0062】
移動ロボット200は、移動の際、位置追跡により自己位置推定してもよい。移動ロボット200は、具体的には、検出部240により検出された移動ロボット200の移動状態に基づいて、初期値からの自己位置推定を繰り返して移動を行う。
【0063】
推定部212は、上記位置追跡により自己位置推定にあたって、例えば、オドメトリなどの手法を用いて地図座標系における移動ロボット200の座標を推定してもよい。移動ロボット200は、具体的には、オドメトリを用いた場合は、上記車輪の回転角度の計算から移動量を算出し、その累積から移動ロボット200の地図座標系における自己位置の座標を算出する。
【0064】
推定部212は、例えば、標識の緯度経度座標に基づいて、移動ロボット200の緯度経度座標を推定してもよい。推定部212は、例えば、検出部240により標識が検出された場合、自己位置を標識の位置と一致しているとみなして、第1変換部214により変換された標識の移動経度座標を自己位置として推定してもよい。このような構成によれば、複雑な変換処理を用いず、標識の緯度経度座標用いて移動ロボット200の測地系における自己位置推定が可能となる。
【0065】
推定部212は、例えば、検出部240により検出された移動ロボット200の移動状態および周辺環境を統合して、地図座標系における移動ロボット200の座標を推定してもよい。推定部212において、具体的には、移動ロボット200の移動状態から推定した地図座標系における座標には誤差が蓄積されていく場合がある。このため、推定部212は、検出部240により標識が検出された場合、地図座標系における当該検出された標識の座標に基づいて、地図座標系における移動ロボット200の座標を補正してもよい
【0066】
算出部213は、地図座標系における移動ロボット200の座標に基づいて、地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換する第1変換行列を用いて、平面直角座標系における移動ロボット200の座標を算出する。ここで「第1変換行列」とは、地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換するための変換行列である。第1変換行列の詳細について後述する。
【0067】
算出部213は、例えば、平面直角座標系における目的地の座標に基づいて、第1変換行列の逆行列を用いて、地図座標系における目的地の座標を算出してもよい。
【0068】
第1変換部214は、平面直角座標系における移動ロボット200の座標を、目的地の系番号を用いて、移動ロボット200の緯度経度座標に変換する。第1変換部214は、例えば、まず平面直角座標系パラメータDBを参照して目的地の系番号に対応する計算パラメータを取得する。第1変換部214は、つぎに当該取得された計算パラメータを用いて移動ロボット200の平面直角座標系における座標を緯度経度座標に変換する。
【0069】
第1変換部214は、例えば、平面直角座標系における標識の座標を、平面直角座標系における標識の系番号を用いて、標識の緯度経度座標に変換してもよい。第1変換部214は、具体的には、まず標識座標DBを参照して、標識の平面直角座標系における座標および系番号を取得する。第1変換部214は、つぎに平面直角座標系パラメータDBを参照して当該取得された標識の系番号に対応する計算パラメータを取得する。第1変換部214は、つぎに当該取得された計算パラメータを用いて目的地の緯度経度座標を平面直角座標系における座標に変換する。
【0070】
移動制御部215は、目的地の緯度経度座標および移動ロボット200の緯度経度座標に基づいて、後述の駆動部250を制御して目的地に移動ロボット200を移動させる。移動制御部215は、具体的には、測地系で表された地図上において、第1変換部214により変換された移動ロボット200の緯度経度座標から取得部211により取得された目的地の緯度経度座標までの経路計画をして、移動ロボット200を移動させてもよい。このような構成によれば、移動制御部215は、建物内でも測地系を用いて移動ロボット200を自律移動させることができる。すなわち、このような構成によれば、移動ロボット200は、測地系を用いて、建物内外をシームレスに移動することができる。
【0071】
移動制御部215は、例えば、地図座標系における目的地の座標および移動ロボット200の座標に基づいて、駆動部250を制御して目的地に移動ロボット200を移動させてもよい。移動制御部215は、具体的には、内部地図上において、移動ロボット200の地図座標系における座標から算出部213により算出された目的地の地図座標系における座標までの経路計画をして、移動ロボット200を移動させてもよい。このような構成によれば、移動制御部215は、測地系を用いて目的地が指定されても内部地図上の目的地の位置を求めることができるため、地図座標系を用いて目的地に移動させることができる。
【0072】
移動制御部215は、この移動制御の際に、第1変換部214により変換された移動ロボット200の緯度経度座標に基づいて、移動ロボット200の地図座標系における座標を補正してもよい。このような構成によれば、移動制御部215は、この補正された内部地図により、より精度よく移動ロボット200を自律移動させることができる。
【0073】
判別部216は、目的地の住所に基づいて、目的地の平面直角座標系の系番号を判別する。判別部216は、具体的には、記憶部220に記憶する平面直角座標系変換DBを参照して、目的地の平面直角座標系の1~19の系番号を判別する。
【0074】
第2変換部217は、目的地の緯度経度座標を、目的地の系番号を用いて、平面直角座標系における目的地の座標に変換する。
【0075】
生成部218は、第1変換行列を生成する。生成部218は、具体的には、検出部240により標識が検出された際の地図座標系における移動ロボット200の座標を、平面直角座標系における標識の座標に対応付けて第1変換行列を生成してもよい。
【0076】
生成部218は、具体的には、移動ロボット200を平面直角座標系における位置が定義されている各標識間を自律航法で移動させ、移動ロボット200が各標識を検出した際の地図座標系における標識の座標(αa',βa)、(αb',βb)および(αc',βc)と、これらの座標に対応するサーバ装置100により配信された標識座標DBの平面直角座標系における標識の座標(Xa',Ya)、(Xb',Yb)および(Xc',Yc)とを対応付けて、地図座標系の座標を平面直角座標系の座標に変換するための次式(2)のアフィン行列を生成する。生成部218は、具体的には、上記対応付けによって、次式(2)のアフィン行列の係数(線形変換の係数であるa2、b2、c2およびd2、ならびに平行移動の係数tx2およびty2)を求める。この生成されたアフィン行列が第1変換行列となる。
【0077】
【数2】
【0078】
生成部218は、例えば、自律移動に用いる内部地図を生成してもよい。生成部218は、例えば、案内サービス提供前の処理として、移動ロボット200に移動対象の建物内を探索させ、オドメトリ情報などのロボットの移動状態および/または標識を用いたセンサー情報に基づいて、内部地図を生成してもよい。生成部218は、当該生成にあたって、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて、後述の検出部240で周辺環境を検出し自己位置推定と同時に内部地図を生成してもよい。
【0079】
記憶部220は、移動ロボット200における地図の座標系である地図座標系と、平面直角座標系における目的地の系番号を記憶する。また、記憶部220は、建物情報、住所情報、移動情報、平面直角座標系変換DBと、平面直角座標系パラメータDBと、標識座標DBと、リバースジオコーディングDBとを記憶する。記憶部220は、図10のメモリ903および記憶装置905に相当する。
【0080】
リバースジオコーディングDBは、特定の位置の緯度経度座標と、住所情報とを対応付けて格納する。リバースジオコーディングDBは、例えば、目的地の緯度経度座標と、目的地の住所情報とを対応付けて格納してもよい。
【0081】
通信部230は、ネットワークNを介して、サーバ装置100、端末300および/または外部システム等と各種情報を送受信する。通信部230は、例えば、ネットワークNを介して、サーバ装置100から標識座標DB等の各種情報またはDBを受信したり、記憶部220に記憶する移動情報をサーバ装置100に送信したりする。通信部230は、図10の通信I/F部911に相当する。
【0082】
検出部240は、移動ロボット200の移動状態を検出する。検出部240は、具体的には、移動ロボット200が備える車輪の回転角度、移動速度、移動方向、姿勢および/または傾斜などを検出する。検出部240は、図10の通信I/F部911、内界センサー915および/または外界センサー917に相当する。
【0083】
検出部240は、例えば、建物内にある標識を含む周辺環境を検出してもよい。検出部240は、具体的には、移動制御部215が目的地に移動ロボット200を移動させる際に、所定の時間間隔で標識を探索し検出する。
【0084】
検出部240は、センサーベース標識の場合、標識を検出できた(検出部240が標識を識別できた)状態は、言い換えれば移動ロボット200が当該標識の近傍にいる状態である。このため、検出部240の識別範囲は誤差が許容できる程度まで十分に狭くすると、標識のより近くにいる状態で当該標識を検出可能となる。また、検出部240は、ビジョンベース標識の場合、映像内の特徴点の相対的な歪みが閾値以下になった場合に、当該標識を検出してもよい。検出部240は、具体的には、標識の特徴点として本来平行であるべき二つの直線を識別している場合、それらの直線がなす角度がある閾値以下になった場合などに相対的な歪みが閾値以下になったとして、当該標識を検出する。
【0085】
駆動部250は、移動ロボット200の移動を実行させる。駆動部250は、具体的には、移動制御部215の制御により目的地までの経路計画にしたがって、移動ロボット200の移動を実行させる。駆動部250は、図10の駆動機構919に相当する。
【0086】
<3.動作例>
図5~8を参照して、本実施形態に係るロボットシステム1の動作例を説明する。
【0087】
<3-1.サーバ装置における標識座標DBの生成>
図5は、サーバ装置100において、標識座標DBを生成する際の処理の流れを示すフロー図である。なお、以下に示す処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。
【0088】
図5に示すように、サーバ判別部111は、標識座標DBの生成対象の建物の建物情報をサーバ記憶部120から取得し、当該建物情報に示された建物の住所に基づいて、平面直角座標系における上記建物が属する系の系番号を判別する(S10)。サーバ装置100と接続する端末(不図示)は、上記建物情報に基づいて建物のフロアマップを表示する(S11)。上記端末は、当該表示されたフロアマップに対する建物内の同一直線上にない3つの基準点の設定入力をユーザから受け付ける(S12)。設定部112は、当該受け付けられた3つの基準点を設定する(S13)。サーバ取得部116は、上記建物情報から当該設定された3つの基準点の緯度経度座標を取得する(S14)。
【0089】
設定部112は、上記建物情報に示された上記建物の設計に基づいて、上記建物内の特定の点を原点とした二次元の直交座標系とする相対座標系を設定する(S15)。第1算出部113は、当該設定された相対座標系における上記基準点の座標を算出する(S16)。サーバ変換部117は、上記基準点の緯度経度座標を、平面直角座標系における上記基準点の座標に変換する(S17)。サーバ生成部118は、相対座標系における上記基準点の座標を、平面直角座標系における上記基準点の座標に対応付けて第2変換行列を生成する(S18)。
【0090】
第1算出部113は、上記建物情報に示された上記建物内の標識の設置状況に基づいて、相対座標系における標識の座標を算出する(S19)。第2算出部114は、当該算出された相対座標系における上記標識の座標に基づいて、上記生成された第2変換行列を用いて、平面直角座標系における上記標識の座標を算出する(S20)。第2算出部114は、当該算出された平面直角座標系における上記標識の座標を標識座標DBに格納する(S21)。
【0091】
<3-2.移動ロボットにおける第1変換行列の生成>
図6は、移動ロボット200において、第1変換行列を生成する際の処理の流れを示すフロー図である。なお、以下に示す処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。
【0092】
図6に示すように、生成部218は、移動ロボット200に移動対象の建物内を探索させ、自律移動に用いる内部地図を生成する(S30)。生成部218は、移動ロボット200に移動対象の建物内を探索させ、検出部240により標識が検出された際の地図座標系における移動ロボット200の座標を、平面直角座標系における標識の座標に対応付けて第1変換行列を生成する(S31)。通信部230は、当該生成された第1変換行列を、管理や他の移動ロボット200と共有するためサーバ装置100に送信する(S32)。
【0093】
<3-3.移動ロボットにおける地図座標系における目的地の座標算出>
図7は、移動ロボット200において、地図座標系における目的地の座標を算出する際の処理の流れを示すフロー図である。なお、以下に示す処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。
【0094】
図7に示すように、取得部211は、住所情報に示された目的地の住所を取得する(S40)。判別部216は、当該取得された目的地の住所に基づいて、目的地の平面直角座標系の系番号を判別する(S41)。第2変換部217は、目的地の緯度経度座標を、当該判別された目的地の系番号を用いて、平面直角座標系における目的地の座標に変換する(S42)。算出部213は、当該変換された平面直角座標系における目的地の座標に基づいて、第1変換行列の逆行列を用いて、地図座標系における目的地の座標を算出する(S43)。
【0095】
<3-4.移動ロボットにおける移動時の自己位置推定>
図8は、移動ロボット200において、移動時の自己位置推定する際の流れを示すフロー図である。なお、以下に示す処理の順番は一例であって、適宜、変更されてもよい。
【0096】
図8に示すように、移動制御部215は、駆動部250を制御して目的地への移動を開始する(S50)。検出部240は、当該移動にあたって、近傍の標識を探索する(S51)。
【0097】
検出部240は、標識を検出していない場合(S52のNO)、移動ロボット200の移動状態を検出する(S53)。推定部212は、当該検出された移動ロボット200の移動状態に基づいて、地図座標系における移動ロボット200の座標を推定する(S54)。算出部213は、当該推定された地図座標系における移動ロボット200の座標に基づいて、第1変換行列を用いて、平面直角座標系における移動ロボット200の座標を算出する(S55)。第1変換部214は、当該算出された平面直角座標系における移動ロボット200の座標を、上記目的地の系番号を用いて、移動ロボット200の緯度経度座標に変換する(S56)。
【0098】
検出部240が標識を検出した場合(S52のYES)、取得部211は、平面直角座標系における当該検出された標識の座標および系番号を取得する(S57)。第1変換部214は、当該取得された平面直角座標系における上記標識の座標を、当該取得された平面直角座標系における上記標識の系番号を用いて、上記標識の緯度経度座標に変換する(S58)。推定部212は、当該変換された上記標識の緯度経度座標に基づいて、移動ロボット200の緯度経度座標を推定する(S59)。推定部212は、上記検出された地図座標系における標識の座標に基づいて、地図座標系における移動ロボット200の座標を補正する(S60)。
【0099】
移動制御部215は、上記目的地の緯度経度座標および上記移動ロボット200の緯度経度座標に基づいて、駆動部250を制御して目的地に移動ロボット200を移動させる(S61)。
【0100】
<5.ハードウェア構成>
<5-1.サーバ装置>
図9を参照して、上述してきたサーバ装置100および端末300をコンピュータ800により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0101】
図9に示すように、コンピュータ800は、プロセッサ801、メモリ803、記憶装置805、入力I/F部807、データI/F部809、通信I/F部811、表示装置813を含む。
【0102】
プロセッサ801は、メモリ803に記憶されているプログラムを実行することによりコンピュータ800における様々な処理を制御する。例えば、サーバ装置100のサーバ制御部110が備える各機能部などは、メモリ803に一時記憶された上で、主にプロセッサ801上で動作するプログラムとして実現可能である。
【0103】
メモリ803は、例えばRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体である。メモリ803は、プロセッサ801によって実行されるプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。
【0104】
記憶装置805は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。記憶装置805は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶する。この他、記憶装置805は、各種情報や各種DBを記憶することも可能である。このようなプログラムやデータは、必要に応じてメモリ803にロードされることにより、プロセッサ801から参照される。
【0105】
入力I/F部807は、ユーザからの入力を受け付けるためのデバイスである。入力I/F部807の具体例としては、キーボードやマウス、タッチパネル、各種センサー、ウェアラブル・デバイス等が挙げられる。入力I/F部807は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のインタフェースを介してコンピュータ800に接続されても良い。
【0106】
データI/F部809は、コンピュータ800の外部からデータを入力するためのデバイスである。データI/F部809の具体例としては、各種記憶媒体に記憶されているデータを読み取るためのドライブ装置等がある。データI/F部809は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、データI/F部809は、例えばUSB等のインタフェースを介してコンピュータ800へと接続される。
【0107】
通信I/F部811は、コンピュータ800の外部の装置と有線または無線により、インターネットNを介したデータ通信を行うためのデバイスである。通信I/F部811は、コンピュータ800の外部に設けられることも考えられる。その場合、通信I/F部811は、例えばUSB等のインタフェースを介してコンピュータ800に接続される。通信I/F部811は、例えば、標識がセンサービーコンであった場合、当該センサービーコンが発するBluetooth(登録商標)等のビーコン信号を受信してもよい。
【0108】
表示装置813は、各種情報を表示するためのデバイスである。表示装置813の具体例としては、例えば液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、ウェアラブル・デバイスのディスプレイ等が挙げられる。表示装置813は、コンピュータ800の外部に設けられても良い。その場合、表示装置813は、例えばディスプレイケーブル等を介してコンピュータ800に接続される。また、入力I/F部807としてタッチパネルが採用される場合には、表示装置813は、入力I/F部807と一体化して構成することが可能である。
【0109】
<5-2.移動ロボット>
図10を参照して、上述してきた移動ロボット200を自律移動装置900により実現する場合のハードウェア構成の一例を説明する。なお、それぞれの装置の機能は、複数台の装置に分けて実現することもできる。
【0110】
図8に示すように、自律移動装置900は、プロセッサ901、メモリ903、記憶装置905、データI/F部909、通信I/F部911、内界センサー915、外界センサー917、駆動機構919を含む。また、自律移動装置900は、表示装置913を含んでもよい。なお、プロセッサ901、メモリ903、記憶装置905、データI/F部909、通信I/F部911、および表示装置913は、コンピュータ800のプロセッサ801、メモリ803、記憶装置805、データI/F部809、通信I/F部811、および表示装置813と同様の構成のため説明を割愛する。
【0111】
内界センサー915は、自律移動装置900自身の状態を検出するためのセンサーである。内界センサー915は、例えば、測距センサー、タイヤエンコーダ、ジャイロセンサー、および/または加速度センサーなどである。
【0112】
外界センサー917は、自律移動装置900の周辺環境を検出するためのセンサーである。外界センサー917は、例えば、超音波距離センサー、光学式距離センサー、および/またはカメラなどである。
【0113】
駆動機構919は、移動ロボット200が移動するために車輪などの移動機構、および当該移動機構を駆動制御するアクチュエータなどである。このアクチュエータは、例えば、車輪の回転速度や回転方向を変化させることにより、移動ロボット200の移動(移動方向や移動速度)を変化させる。
【符号の説明】
【0114】
1…ロボットシステム、100…サーバ装置、110…サーバ制御部、111…サーバ判別部、112…設定部、113…第1算出部、114…第2算出部、115…配信部、116…サーバ取得部、117… サーバ変換部、118…サーバ生成部、120…サーバ記憶部、130…サーバ通信部、200…移動ロボット、210… 制御部、211…取得部、212…推定部、213…算出部、214…第1変換部、215…移動制御部、216…判別部、217…第2変換部、218…生成部、220…記憶部、230…通信部、240…検出部、250…駆動部、300…端末、400…外部システム、500…標識、800…コンピュータ、801… プロセッサ、803…メモリ、805…記憶装置、807…入力I/F部、809…データI/F部、811…通信I/F部、813…表示装置、
900…自律移動装置、901… プロセッサ、903…メモリ、905…記憶装置、909…データI/F部、911…通信I/F部、913…表示装置、915…内界センサー、917…外界センサー、919…駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10