(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】蒸気冷却プロセスを実施する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20220111BHJP
F25B 11/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F25B1/00 101E
F25B1/00 311B
F25B1/00 331E
F25B11/02 B
(21)【出願番号】P 2018504846
(86)(22)【出願日】2016-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2016068126
(87)【国際公開番号】W WO2017021293
(87)【国際公開日】2017-02-09
【審査請求日】2018-05-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】102015214705.3
(32)【優先日】2015-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506174360
【氏名又は名称】ビツァー キュエールマシーネンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ニックル
【合議体】
【審判長】林 茂樹
【審判官】河内 誠
【審判官】山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-329416(JP,A)
【文献】特開2012-193897(JP,A)
【文献】特開2011-64448(JP,A)
【文献】特開2012-193908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0126562(US,A1)
【文献】国際公開第2010/137401(WO,A1)
【文献】特開2011-179689(JP,A)
【文献】特表2011-512509(JP,A)
【文献】特開2011-214741(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10313850(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 1/10
F25B 9/06
F25B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気冷却プロセスを実施する装置であって、
モータ駆動されるメインコンプレッサ(C1)を有し、前記メインコンプレッサが、冷媒として用いられる、蒸発器圧レベルにある流体の質量流量を吸引して、この質量流量を高圧レベルへ圧縮するように設計されており、
高圧熱交換器(H)を有し、該高圧熱交換器が、高圧レベルにある流体の質量流量を冷却し、密度を高め、かつ流体の温度を減少させるように、設計されており、
膨張器(E)を有し、該膨張器が、前記高圧熱交換器(H)から来る流体の質量流量を、作動を行うように蒸発器圧レベルに膨張させるように、設計されており、
蒸発器(V)を有し、該蒸発器が熱を吸収するように設計されているので、蒸発器(V)を通過する際に流体の密度が減少し、かつ、前記膨張器(E)から来る、蒸発器圧レベルにある質量流量の温度と、前記蒸発器(V)を通して供給される流体の温度とが上昇し、
前記高圧熱交換器(H)の下流に接続され、かつ前記膨張器(E)の上流に接続されたサブクーラー(U)を有し、
前記サブクーラー(U)の下流かつ前記膨張器(E)の上流で、高圧レベルにある流体の質量流量の一部が分岐可能であり、かつ分岐した前記質量流量の一部が高圧制御弁(TH)によって中圧レベルへ膨張可能であるので、流体が次に中圧レベルにおいてサブクーラー(U)内で向流において熱を吸収することによって、高圧レベルにある質量流量を過冷却し、
高圧コンプレッサ(C2)を有し、該高圧コンプレッサは、前記膨張器(E)と機械的に直接接続されており、かつ、
前記膨張器(E)の上流で分岐されて、前記サブクーラー(U)を通過する、高圧レベルにある流体の質量流量に対して向流で供給される、中圧レベルにある質量流量、のみを圧縮し、前記高圧熱交換器(H)の上流で、モータ駆動される前記メインコンプレッサ(C1)から来る質量流量に混合するように設計されており、
前記高圧制御弁(TH)は、前記高圧熱交換器(H)、前記メインコンプレッサ(C1)および前記サブクーラー(U)で確立された高圧における高圧レベルを効率的に制御するために使用され
、
前記膨張器(E)の作動室(5.1、5.2)が、メインスライドバルブ(8)と補助スライドバルブ(9)を介して制御可能であり、該メインスライドバルブと該補助スライドバルブは、前記作動室(5.1、5.2)の間の中央に配置されている、
蒸気冷却プロセスを実施する装置。
【請求項2】
前記膨張器(E)の下流に収集器(S)が配置され、該収集器は、流体の液相と流体の気相を分離するように設計されており、
液相は貯蔵可能であり、噴射弁(TV)を介して蒸発圧へ膨張可能であり、かつ流体の気相は圧力維持弁(TS)を介して膨張可能であり、
膨張した液相は、前記蒸発器(V)へ供給可能であり、膨張した気相は、前記蒸発器(V)の後方で、前記蒸発器から来る流体の質量流量へ混合可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記膨張器(E)と前記高圧コンプレッサ(C2)が、共通のハウジング(10)内に配置されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記膨張器(E)と前記高圧コンプレッサ(C2)の間のストローク体積比が、0.5と0.75の間に維持されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記メインスライドバルブ(8)及び/又は前記補助スライドバルブ(9)が、フラットスライドバルブとして形成されている、ことを特徴とする請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記補助スライドバルブ(9)が、少なくとも2つのピン(7)によって、作動ピストン(1、2)により移動可能である、ことを特徴とする請求項
1又は請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
ピストンロッド(3)が前記作動ピストン(1、2)に取り外し可能に結合されている、ことを特徴とする請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
蒸気冷却プロセスを実施する方法であって、
冷媒として用いられる、蒸発器圧レベルにある流体の質量流量が、モータ駆動されるメインコンプレッサ(C1)によって吸引されて、高圧レベルへ圧縮され、
高圧レベルにある流体の質量流量が、高圧熱交換器(H)内で冷却されることによって、流体の密度が増大されて、温度が低下され、
前記高圧熱交換器(H)から来る流体が、膨張器(E)内で、作動を行うように、蒸発器圧レベルへ膨張され、前記膨張器(E)は、機械的に直接、高圧コンプレッサ(C2)と接続されており、
前記膨張器(E)から来る流体が、蒸発器(V)内に供給されて熱を吸収するので、前記膨張器(E)から来る、蒸発器圧レベルにある質量流量の密度が減少して、温度が上昇し、
前記高圧熱交換器(H)の後方で流体がサブクーラー(U)を通して供給されて、該サブクーラー(U)の間かつ前記膨張器(E)の上流で、高圧レベルにある質量流量から流体の一部が分岐され、分岐した前記質量流量の一部が前記サブクーラー(U)を通して供給され、かつ高圧制御弁(TH)によって中圧レベルへ膨張され、
次に前記サブクーラー(U)内で、高圧レベルで流れる質量流量に対して向流で供給されて、熱を吸収することによって、高圧レベルにある質量流量が過冷却され、
かつ、前記サブクーラー(U)の通過後に、前記高圧コンプレッサ(C2)を通過し、向流で供給される流体のみが前記高圧コンプレッサ(C2)内で高圧レベルへ圧縮されて、前記高圧熱交換器(H)の上流で、モータ駆動される前記メインコンプレッサ(C1)から来る質量流量に混合され、
前記高圧制御弁(TH)は、前記高圧熱交換器(H)、前記メインコンプレッサ(C1)および前記サブクーラー(U)で確立された高圧における高圧レベルを効率的に制御するために使用され
、
前記膨張器(E)の作動室(5.1、5.2)が、メインスライドバルブ(8)と補助スライドバルブ(9)を介して制御可能であり、該メインスライドバルブと該補助スライドバルブは、前記作動室(5.1、5.2)の間の中央に配置されている、
蒸気冷却プロセスを実施する方法。
【請求項9】
前記流体が、前記膨張器(E)の後方で収集器(S)内に供給され、前記収集器内で流体の液相が流体の気相から分離されて、液相が噴射弁(TV)を介して蒸発圧に膨張され、そして流体の気相が圧力維持弁(TS)を介して膨張されて、前記蒸発器(V)の後方で、前記蒸発器(V)から来る流体の質量流量に混合される、ことを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記流体として、二酸化炭素が使用される、ことを特徴とする請求項
8又は請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気冷却プロセスを実施する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒としての二酸化炭素を有する蒸気冷却プロセスは、知られており、温室効果に関して二酸化炭素の特性が好ましいことに基づいて、ますます多く使用されるようになっている。作動を行う膨張の利用によって、この種のCO2蒸気冷却プロセスの出力を高めることが、たとえば特許文献1から知られている。しかし、この既知の解決においては、高圧を調節するために複雑な周波数制御が使用される、という欠点がある。さらにいわゆる流体の増圧装置が、非特許文献1から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Quack, H.; Kraus, W. E.:「鉄道冷却冷房のための冷媒としての二酸化炭素」(Carbon Dioxide as a Refrigerant for Railway Refrigeration and Air Conditioning), IIR会議「冷凍空調における天然作動流体の新しい応用」論文集(Proceedings of the IIR-Conference New Application of Natural Working Fluids in Refrigeration and Air Conditioning), Hannover, Deutschland 1994, p.489-494
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は、蒸気冷却プロセスの簡略化された開ループ制御と閉ループ制御を可能とする、蒸気冷却プロセスを実施する装置と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の装置によって、そして請求項9に記載の方法によって解決される。好ましい形態と展開が、従属請求項に記載されている。
【0007】
蒸気冷却プロセスを実施する装置は、モータ駆動されるメインコンプレッサを有しており、そのメインコンプレッサは、冷媒として用いられる、蒸発器圧レベルにある流体の質量流量を吸引して、この質量流量を高圧レベルへ圧縮するように、設計されている。さらに、高圧レベルにある流体の質量流量を冷却し、その密度を増大させ、流体の温度を冷却によって低下させるために、高圧熱交換器が設けられている。高圧熱交換器から来る流体の質量流量は、膨張器内で、作動を行うように蒸発器圧レベルに膨張されて、蒸発器へ供給される。蒸発器は、熱を吸収するように設計されているので、蒸発器を通過する際に流体の密度が減少し、かつ膨張器から来る、蒸発器圧レベルにあり、かつ蒸発器を通過する質量流量の温度が上昇する。そして、高圧熱交換器の下流に接続され、かつ膨張器の上流に接続されているサブクーラーが設けられている。サブクーラーの後方かつ膨張器の上流で、高圧レベルにある流体の質量流量の一部が分岐可能であって、高圧制御弁によって中圧レベルへ膨張可能であるので、流体が次に中圧レベルにおいてサブクーラー内で向流で熱を吸収し、その場合に高圧レベルにある質量流量をサブクーラー内で過冷却する。膨張器と機械的に直接接続されている高圧コンプレッサは、サブクーラーの間と膨張器の上流で分岐されて、サブクーラーを通過する、高圧レベルにある流体の質量流量に対して向流で供給される質量流量のみを中圧レベルから高圧レベルへ圧縮し、かつ高圧熱交換器の上流で、モータ駆動されるメインコンプレッサから来る流体の質量流量に混合するように、設計されている。
【0008】
説明した装置によって、典型的に高圧熱交換器、高圧コンプレッサ及び部分的にサブクーラーに生じる高圧を、効率的に制御することが可能である。付加的に膨張器によって直接駆動される高圧コンプレッサが、流体の別の質量流量、中圧質量流量、のみを圧縮することによって、膨張器を通して供給される、高圧熱交換器から来る質量流量を付加的に過冷却することができる。したがって膨張のエクセルギーは、最終的に高圧における付加的な過冷却のために利用され、もしくは膨張器の出力が、高圧コンプレッサ内で中圧質量流量を圧縮するために用いられる。
【0009】
膨張器の後方(かつそれに伴ってコンプレッサの前)に、収集器を配置することができる。この収集器は、流体の液相を流体の気相から分離するように設計されている。流体の液相は、収集器内に貯蔵可能であり、かつ収集器と蒸発器の間に配置されている噴射弁を介して蒸発圧へ膨張可能である。流体の気相は、圧力維持弁を介して膨張可能である。膨張した液相は、質量流量内で蒸発器へ供給可能であり、膨張した気相は蒸発器の後方で、蒸発器から来る流体の質量流量内へ混合可能である。
【0010】
膨張器と高圧コンプレッサを共通のハウジング内に配置することができ、それらはユニットを形成し、そのユニットは「膨張器-コンプレッサユニット」とも称される。唯一のハウジング内に配置することによって、場所をとらない構造が可能になり、それにおいて膨張器と高圧コンプレッサは機械的に直接、特に圧力密に、互いに結合可能である。
【0011】
膨張器と高圧コンプレッサの間のストローク空間比は、蒸気冷却プロセスの最適な推移を保証するために、好ましくは0.5と0.75の間にある。特に好ましくは、ストローク空間比は、0.6である。原則的に、高圧熱交換器の出口における高い復帰冷却温度のためには、より低い値を適用することが有意義である。
【0012】
その代わりに、あるいはそれに加えて、膨張器の作動室は、メインスライドバルブと補助スライドバルブを介して制御可能とすることができる。その場合にメインスライドバルブと補助スライドバルブは、通常内側に位置する、したがって膨張器の互いに向き合う、作動室の間の中央に配置されている。
【0013】
好ましくはメインスライドバルブ及び、もしくは又は補助スライドバルブは、わずかなスペースしか必要とせずに、簡単かつ特に密な機能方法を保証するために、フラットスライドバルブとして形成されている。
【0014】
補助スライドバルブは、2つのピンによって作動ピストンにより移動可能とすることができる。
【0015】
典型的に、作動ピストンを離隔して保持するピストンロッドは、作動ピストンと取り外し可能に結合されており、したがって作動ピストンと固定的に結合されていない。これは、製造技術的に簡単であり、しかも機能的である。というのは、内側に位置するピストンロッドは、押圧力のみを受け、したがって1つ又は複数のピストンと堅固に結合される必要はないからである。それによってハウジング部分の小さいアライメントエラーを許容することができ、製造が簡単になる。同様にして、メインスライドバルブ、スライドバルブロッド及びスライドバルブピストンからなるメインスライドバルブユニットを構築することもできる。同様にして、補助スライドバルブとピンからなる補助スライドバルブユニットを構築することもできる。
【0016】
膨張器を多段で形成することができ、それは特に複数の相前後して接続された膨張器であり、それらは複数段階で膨張を実施し、その場合に独国特許発明第10242271(B3)号明細書に示す、以前の構造が、周波数制御なしで提供される。
【0017】
説明される装置において4つの圧力レベルが発生することができ、それらは、典型的に以下で説明する値領域をとる:50barと100barの間の高圧レベル、40barと65barの間の中圧レベル、30barと35barの間の収集器圧力レベル及び25barと30barの間の蒸発器圧レベル。
【0018】
蒸気冷却プロセスを実施する方法は、冷媒として用いられる、蒸発器圧レベルにある流体の質量流量を、モータ駆動されるメインコンプレッサによって高圧レベルへ圧縮する、方法ステップを有している。高圧レベルにある流体のこの質量流量は、高圧熱交換器内で冷却され、その場合に流体の密度が増大されて、温度が減少される。高圧熱交換器から来る流体は、膨張器内で、作動を行うように、蒸発器圧レベルへ膨張され、その場合に膨張器は機械的に高圧コンプレッサと直接接続されている。膨張器から流体は、蒸発器内に供給されて、そこで熱を吸収するので、流体の密度が減少し、かつ膨張器から来る、蒸発器圧レベルにある流体の質量流量の温度が上昇する。高圧熱交換器の後方かつ膨張器の上流で、流体がサブクーラーを通して供給され、その場合にサブクーラーの間かつ膨張器の上流で、高圧レベルにある質量流量から流体の一部が分岐され、かつ高圧制御弁によって中圧レベルへ膨張される。次に、流体は、サブクーラー内に供給される、高圧レベルにある質量流量に対して向流で、中圧レベルにおいてサブクーラーを通して供給され、その場合に熱を吸収し、かつ高圧レベルにある質量流量が過冷却される。サブクーラーを通過した後に、流体は、分岐された中圧質量流量内で高圧コンプレッサへ達し、その高圧コンプレッサは、向流で供給される流体のみを中圧レベルから高圧レベルへ圧縮し、かつ高圧熱交換器の上流でモータ駆動されるメインコンプレッサから来る質量流量に混合する。
【0019】
流体は、膨張器の後方で、収集器内に供給することができ、その中で流体の液相が流体の気相から分離される。液相は、噴射弁を介して蒸発圧へ膨張される。流体の気相は、圧力維持弁を介して膨張されて、蒸発器の後方で、蒸発器から来る流体の質量流量内へ混合される。
【0020】
これに関連して冷媒とも称される、流体として、二酸化炭素、CO2、を使用することができる。というのは、二酸化炭素は爆発しにくく、燃焼可能ではないが、熱的に安定しているからである。冷熱担体として、その利点に数えられるのは、非常に低い比容積と高い熱伝達係数及び熱伝達体を通って流れる場合の圧力損失の低さである。
【0021】
記載された方法は、記載された装置によって実施することができ、もしくは記載された装置は記載された方法を実施するように設計されている。
【0022】
本発明の実施例を図面に示し、以下で
図1から12を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】蒸気冷却プロセスのプロセスガイドを図式的に示している。
【
図2】
図1と同様のプロセスガイドを収集器なしで図式的に示している。
【
図3】膨張器-コンプレッサユニットを示す横断面図である。
【
図4】ピストンロッドを作動ピストンと共に示す側面図である。
【
図5】膨張器-コンプレッサユニットの端部を示す断面図である。
【
図6】
図3に示す膨張器-コンプレッサユニットの中央部分を示す断面図である。
【
図7】メインスライドバルブをスライドバルブロッ及びピストンと共に示す、
図4と同様の側面図である。
【
図8】補助スライドバルブをピンと共に拡大して示している。
【
図9】補助スライドバルブをピンと共に、
図4と同様に示している。
【
図10】シールフレームをOリングと共に示す上面図である。
【
図11】メインスライドバルブを拡大して示す上面図である。
【
図12】他のシールフレームをOリングと共に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、蒸気冷却プロセスのプロセスガイドを図式的な表示で示している。
図1の下方の部分には、低圧回路が示されており、それにおいて収集器Sから来て噴射弁TVを通る流体、図示される実施例においては二酸化炭素、が蒸発器Vを通って、モータ駆動されるメインコンプレッサC1へ達する。メインコンプレッサC1によって圧縮された流体が、高圧熱交換器Hの上流で、高圧コンプレッサC2によって圧縮された流体の中圧質量流量と混合され、その高圧熱交換器内では収集器S内よりも高い圧力が維持されている。高圧熱交換器Hから流体は、サブクーラーUと膨張器Eとを介して再び収集器S内へ達する。
【0025】
しかし、図示されるプロセスガイドにおいては、別の中圧質量流量が、膨張器Eによって直接駆動される高圧コンプレッサC2によって圧縮され、その後に高圧熱交換器H内へ達する。高圧コンプレッサC2は、この中圧質量流量のみを圧縮し、したがって中圧質量流量の外部で供給される流体は圧縮しない。ガスクーラーもしくは凝縮器とも称される、高圧熱交換器Hの後で、まさに高圧熱交換器Hから出て、高圧熱交換器Hと膨張器Eとの間に位置するサブクーラーU内へ流入する流体は、サブクーラーUを通過後に分割される。典型的に15パーセントと30パーセントの間の、より小さい部分が、高圧制御弁とも称される絞りTH内で膨張される。次に、分岐された流体はサブクーラーU内で向流において熱を吸収して、高圧コンプレッサC2へ達する。それによって流体の高圧質量流量が付加的に過冷却される。したがって膨張のエクセルギーは、高圧において、付加的に過冷却するために利用される。そして、高圧コンプレッサC2によって再び高圧に圧縮された中圧質量流量が高圧熱交換器Hの上流で、メインコンプレッサC1から来る流体に混合される。膨張器の直上流で高圧制御弁THを分岐することによって、さらに、高圧レベルにおける「液体部分」内の望ましくない脈動が減少され、かつ、高圧熱交換器HとサブクーラーUの間における既知の分岐に比較して、さらに、多くの駆動点においてエネルギ的な利点が得られる。
【0026】
その場合に圧力差と吸引体積流は、高圧コンプレッサC2において、膨張器側における供給に従って自由に調節することができる。高圧制御弁もしくは絞りTHが閉鎖される場合に、その圧力差は、図示される膨張器-コンプレッサユニットが静止し、かつ膨張器質量流量がもはや存在しなくなるまでの間、上昇する。その結果、高圧が上昇する。高圧制御弁THがゆっくりと開放される場合に、再び中圧が上昇し、ついには膨張器Eが始動して所望の膨張器質量流量、高圧及び膨張器流入温度が生じる。その場合にもちろん高圧は、サブクーラーUの「熱い側」、すなわち高圧コンプレッサ側に最小の温度差が残る分だけ、上昇される。これが他の制御原則である。したがって膨張器質量流量は、それを絞ることなしに、制御され、それがエクセルギー損失に匹敵する。
【0027】
収集器S内の収集器圧力は、噴射弁TVと圧力維持弁TSの充分な制御可能性が保証されるだけの高さに選択され、その圧力維持弁は収集器Sの蒸気室の間と蒸発器Vの後方かつメインコンプレッサC1の前に接続されている導管内に配置されている。蒸発圧が一定である場合に、これが、高圧に関係なく、一定の低い収集器圧力を許す。
【0028】
図1の実施例に示す装置もしくは対応する方法によって、コンプレッサ、高圧ガスクーラーもしくはコンデンサ、絞り弁、収集器及び蒸発器が既知のように使用されるだけの、単純な蒸気冷却プロセスに対して、-10℃の蒸発温度と20℃の周囲温度における出力数を、約15パーセント上昇させることができる。その場合に高圧は、比較可能な値に留まる。さらに大きい上昇を得るためには、さらに他のエクセルギー損失を中間冷却による2段階の圧縮によって減少させることができ、その場合に残りのプロセスガイドもしくは残りの構造は、変わらない。
【0029】
さらに、膨張器Eを多段で形成すること、すなわち流体の膨張を多段階で遂行することが、可能である。そのためにたとえば、複数の個別膨張器Eを相前後して配置することができる。そのために、既知の構造が独国特許発明第10242271(B3)号明細書から、周波数制御なしのものが提供される。
【0030】
図2は、上述したプロセスガイドを収集器Sなしで、
図1に相当する表示で示している。この図においても、以下の図においても、繰り返される特徴は、同一の参照符号を有している。したがって膨張器Eは流体を直接蒸発器Vへ供給し、流体がその前に収集器Sを通過することはない。したがって噴射弁TVと圧力維持弁TSも設けられていない。
【0031】
図3は、膨張器Eと高圧コンプレッサC2とからなる膨張器-コンプレッサユニットの横断面を側面図で示しており、膨張器と高圧コンプレッサは共通のハウジング10内に配置されており、したがって膨張器-コンプレッサユニットを形成する。2つのピストン1と2が、ピストンロッド3を介して離隔して保持されており、かつユニットの中央部分4によって互いに空間的に分離されている。それによって複数の作動室が形成され、図示される例において、もちろんそのうちの作動室5.1と6.2のみが最大の作動空間において見られる。作動室5.1と作動室5.2は、それぞれ2つの膨張器作動室の1つであり、作動室6.1と6.2は、それぞれ2つのコンプレッサ作動室の1つである。図示されるユニットの最適なストローク体積比として、0.5と0.75の値が明らかにされている。
【0032】
図示される実施例において、内側に位置する膨張器作動室5.1と5.2は、中央部分4内に配置されている補助スライドバルブ9もしくはメインスライドバルブ8を介して制御される。その場合に補助スライドバルブ9は、ピン7によって直接作動ピストン1と2により移動される。補助スライドバルブ9は、次に、メインスライドバルブ8への圧力供給へ変化し、そのメインスライドバルブはそれによって移動されて、膨張器Eの作動室5.1と5.2のための供給開口部と排出開口部を開放と閉鎖によって制御する。その場合にメインスライドバルブ8と補助スライドバルブ9は、好ましくはフラットスライドバルブとして形成されている。
【0033】
コンプレッサ作動室6.1と6.2内に、単純な玉弁が配置されている。図示の実施例においてピストンロッド3は押圧力しか受けないので、ピストン1と2がピストンロッド3の前側に接触し、あるいは平面的に接触することにより、ピストンロッド3はピストン1及び2と固定的にではなく、取り外し可能に結合されている。これが
図4に側面図で示されており、それにおいて作動ピストン1と2はピストンロッド3から分離されている。しかし他の実施例においては、もちろん、固定的な結合を設けることもできる。したがって図示される構造は、他の場合には密閉することが困難な箇所にも、Oリングの使用を許す。
【0034】
図5は、膨張器-コンプレッサユニットの終端片を、
図3のB-B線に沿って断面で示している。玉弁として形成されているコンプレッサ弁は、上方の接続端が高圧側と、下方の接続端がサブクーラーUの中圧レベルと接続されている。
【0035】
図6には、
図3に示す膨張器-コンプレッサユニットの中央部分4がA-A線に沿って断面で示されている。上方の接続端は、サブクーラーUの高圧レベルからの流体を供給し、下方の接続端は収集器5へ通じている。メインスライドバルブ8は、スライドバルブロッド11を介してスライドバルブピストン12と結合されており、その場合にこの結合は、取り外し可能である。これが、
図7にも側面で示されており、それにおいてメインスライドバルブ8、スライドバルブロッド11及びスライドバルブピストン12は、互いに分離された別々の構成部品として示されている。
【0036】
補助スライドバルブ9が、それを作動ピストン1と2によって操作するために使用されるピン7と共に、
図8に
図3のD-D線に沿って示されている。
図9は補助スライドバルブ9と、補助スライドバルブ9を移動させることができる2つのピン7を、
図4と同様の表示で示している。
【0037】
図10は、シールフレーム13を、補助スライドバルブ9のための2つのOリング14及び15と共に上面で示しており、それらのOリングは組み込む場合にシールフレーム13の切り欠き内へ配置される。
図11には、メインスライドバルブ8がスライドバルブロッド11及びスライドバルブピストン12と共に
図3のC-C線に沿って上面で示されている。
図10と同様に、
図12は、他のシールフレーム16をメインスライドバルブ8のためのOリング17と共に示している。説明した構造は、まさに、密閉が困難な面(すなわちメインスライドバルブ8と補助スライドバルブ9の回り)にOリングを使用することを許すので、しかるべき支持フレームによってポケットフライスが回避される。