(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ポリ(アミドアミン)系高分子色素
(51)【国際特許分類】
C09B 69/10 20060101AFI20220111BHJP
C11D 3/40 20060101ALI20220111BHJP
C09D 11/03 20140101ALI20220111BHJP
C09D 11/17 20140101ALI20220111BHJP
C08G 69/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C09B69/10 A
C09B69/10 B
C11D3/40
C09D11/03
C09D11/17
C08G69/08
(21)【出願番号】P 2018541491
(86)(22)【出願日】2016-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2016001814
(87)【国際公開番号】W WO2017076496
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-11-01
(32)【優先日】2015-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515225895
【氏名又は名称】アルフローマ アイピー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ヌッサー
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534268(JP,A)
【文献】特開平07-196942(JP,A)
【文献】Synthesis and functionalization of polyamidoamine dendrimers with thiazol derivatives to prepare novel disperse dyes and their application on polyethylene terephthalate (PET),Dyes and Pigments,2015年,(2015), 116, p20-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 69/10
C11D 3/00
C09D 11/00
C08G 69/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式(I)中、
Aは、
次の発色団
:アゾ、アゾ金属錯体、フタロシアニン、アントラキノン、アザ[18]アヌレン、ホルマザン銅錯体、トリフェノジオキサジン、ニトロソ、ニトロ、ジアリールメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、メチン、チアゾール、インダミン、アジン、オキサジン、チアジン、キノリン、インジゴイド、インドフェノール、ラクトン、アミノケトン、ヒドロキシケトン、およびスチルベンの1つ以上を含む一価有機残基であり;
Bは
、二価有機残基であり;
ここで、A-Bは、反応染料の残基であり、Bは、ジハロゲノトリアジン、ジハロゲノピリミジン、トリハロゲノピリミジン、ジハロゲノキノキサリン、ジハロゲノフタラジン、スルファトエチルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルスルホン、α-ハロゲノアクリルアミド、およびα,β-ジハロゲノプロピオニルアミドから選択される部分を含む残基から選択される;ならびに
Cは少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物の残基であり、Cはアミノ基の窒素原子によりBと結合し、前記化合物はポリ(アミドアミン)である]
の着色剤であって、前記ポリ(アミドアミン)が、マイケル付加において、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンおよびポリエチレンイミンからなる群から選択される分岐鎖または非分岐鎖アミンと、アクリレートまたはメタクリレートとの反応生成物であり、次いで、前記マイケル付加において生成した生成物を重縮合反応させて前記ポリ(アミドアミン)を得る、着色剤。
【請求項2】
前記ポリ(アミドアミン)の平均分子量M
wが1,000~1,000,000g/モルの範囲であり、ここで前記分子量は静的光散乱法を用いて決定される、請求項
1に記載の着色剤。
【請求項3】
反応染料A-Bを前記ポリ(アミドアミン)と反応させて着色剤A-B-Cを得る、請求項1
または2に記載の着色剤の製造方法。
【請求項4】
前記反応染料A-B中のBが、
【化2】
[式中、
自由原子価はBからAへの結合を表し、
R
1はHまたは置換もしくは非置換C
1~10アルキル基から選択され;
XはFまたはClから選択され;
XがClである場合、Zは-Cl、-NR
2R
3、-OR
2から選択され;
XがFである場合、Zは-NR
2R
3から選択され;
R
2およびR
3は、独立して、H、置換もしくは非置換C
1~10アルキル基および置換もしくは非置換C
1~10アリール基から選択され;
Yはアルカリにより脱離できる任意の基である]
から選択される、請求項
1または2に記載の着色剤。
【請求項5】
1当量の前記反応染料A-Bを0.25~4当量の前記ポリ(アミドアミン)と反応させる、請求項
3に記載の着色剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1
、2および4のいずれか一項に記載の着色剤、または請求項
3もしくは5に記載の方法により製造した着色剤と、
水、極性有機溶媒、または水と極性有機溶媒との混合物からなる群から選択される溶媒と
を含む、組成物。
【請求項7】
前記溶媒は水を含むか、または水である、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1
、2および4のいずれか一項に記載の着色剤、または
請求項
3もしくは5に記載の方法により製造した着色剤、または
請求項
6もしくは7に記載の組成物
を含む、製品。
【請求項9】
前記製品が、洗浄剤、インク、色鉛筆、またはマーカーからなる群から選択される、請求項
8に記載の製品。
【請求項10】
前記洗浄剤が洗剤および柔軟剤から選択される、請求項
9に記載の製品。
【請求項11】
染色のため、または洗浄剤、色鉛筆、もしくはマーカーの着色のための、請求項1
、2および4のいずれか一項に記載の着色剤の使用、または請求項
3もしくは5に記載の方法により製造した着色剤の使用、または請求項
6もしくは7に記載の組成物の使用。
【請求項12】
前記洗浄剤が洗剤または柔軟剤である、請求項
11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(アミドアミン)の残基を含む着色剤、その製造方法、前記着色剤を含む組成物、および前記着色剤または組成物を含む種々の製品に関する。
【背景技術】
【0002】
反応染料を適切なポリマーと反応させることにより該反応染料の着色性を低下させることが知られている。得られた高分子色素は、例えば、洗剤の着色用に使用し得る。着色性低下によって、高分子色素は洗剤のみを着色するが、例えば、前記洗剤を用いて洗浄される布を着色しない。好ましい高分子色素は、例えば、欧州特許第0864617号明細書に開示されたポリ(オキシアルキレン)、または、例えば、国際公開第2009/030344号に開示されたポリエーテルポリオール、または国際公開第2009/030344号に開示されたポリグリセロールなどの様々なポリマー系のものであり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
生産業において、例えば、洗剤などの着色用色素を提供するニーズが常にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本目的は、少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物系高分子色素であって、前記化合物がポリ(アミドアミン)である前記高分子色素を用いて達成された。
【0005】
詳細には、第一の態様では、本発明は式(I):
【化1】
の着色剤に関し、式(I)中、
Aは、発色団を含む一価有機残基であり;
Bは、置換されていてもよい、芳香族基 (aromatic group)、芳香族複素環基 (heteroaromatic group)、脂環基 (cycloaliphatic group)および2~10個の炭素原子を含有する脂肪族基 (aliphatic group)からなるクラスから選択される二価有機残基であり;
Cは少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物の一価残基であり、Cはアミノ基の窒素原子によりBと結合し、前記化合物はポリ(アミドアミン)である。
【0006】
1つの実施形態では、式(I)中のAは、次の発色団:アゾ、アゾ金属錯体、フタロシアニン、アントラキノン、アザ[18]アヌレン、ホルマザン銅錯体、トリフェノジオキサジン、ニトロソ、ニトロ、ジアリールメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、メチン、チアゾール、インダミン、アジン、オキサジン、チアジン、キノリン、インジゴイド、インドフェノール、ラクトン、アミノケトン、ヒドロキシケトン、およびスチルベンの1つ以上を含む有機残基である。
【0007】
1つの実施形態では、前記ポリ(アミドアミン)は、マイケル付加において分岐鎖または非分岐鎖アミンとアクリレートまたはメタクリレートとの反応生成物であり、次いで、前記マイケル付加において生成した生成物を重縮合反応させて前記ポリ(アミドアミン)を得る。
【0008】
1つの実施形態では、前記ポリ(アミドアミン)の平均分子量Mwは、1,000~1,000,000g/モル、好ましくは1,000~500,000g/モルの範囲であり、ここで該分子量は静的光散乱法を用いて決定される。
【0009】
第二の態様では、本発明は、反応染料A-Bをポリ(アミドアミン)と反応させて前記着色剤A-B-Cを得る、第一の態様において定義した着色剤の製造方法に関する。
【0010】
1つの実施形態では、反応染料A-B中のBは、ジハロゲノトリアジン、ジハロゲノピリミジン、トリハロゲノピリミジン、ジハロゲノキノキサリン、ジハロゲノフタラジン、スルファトエチルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルスルホン、α-ハロゲノアクリルアミド、およびα,β-ジハロゲノプロピオニルアミドから選択される部分を含む残基から選択される。
【0011】
1つの実施形態では、反応染料A-B中のBは:
【0012】
【化2】
[式中、
自由原子価はBからAへの結合を表し、
R
1はHまたは置換もしくは非置換C
1~10アルキル基から選択され;R
1は好ましくはHであり;
XはFまたはClから選択され;
XがClである場合、Zは-Cl、-NR
2R
3、-OR
2から選択され;
XがFである場合、Zは-NR
2R
3から選択され;R
2およびR
3は、独立して、H、置換もしくは非置換C
1~10アルキル基および置換もしくは非置換アリール基から選択され、好ましくは前記アリール基はフェニルであり、そして前記アリール基は好ましくは1つ以上の-SO
3Hまたは-SO
2CH
2CH
2Yにより置換されており、好ましくは前記C
1~10アルキル基はメチルまたはエチルであり;
Yはアルカリにより脱離できる任意の基である]
から選択される。
【0013】
1つの実施形態では、1当量の反応染料A-Bを0.25~4当量のポリ(アミドアミン)と反応させる。
【0014】
第三の態様では、本発明は、第一の態様において定義した着色剤または第二の態様において定義した方法により製造した着色剤と、水、極性有機溶媒、または水と極性有機溶媒との混合物からなる群から選択される溶媒とを含む、組成物に関する。
【0015】
1つの実施形態では、溶媒は水を含むかまたは水である。
【0016】
第四の態様では、本発明は、第一の態様において定義した着色剤、または第二の態様において定義した方法により製造した着色剤、または第三の態様において定義した組成物を含む、製品に関する。
【0017】
1つの実施形態では、製品は、洗浄剤、インク、色鉛筆、またはマーカーからなる群から選択される。
【0018】
1つの実施形態では、洗浄剤は、洗剤および柔軟剤から選択される。
【0019】
第五の態様では、本発明は、染色のため、または洗浄剤、色鉛筆、もしくはマーカーの着色のための、第一の態様において定義した着色剤の使用、または第二の態様において定義した方法に従って製造した着色剤の使用、または第三の態様において定義した組成物の使用に関する。
【0020】
1つの実施形態では、前記洗浄剤は、洗剤または柔軟剤である。
【0021】
以下で、引用符内の全用語は本発明の意味で使用される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第一の態様では、本発明は式(I):
【化3】
の着色剤に関し、式(I)中、
Aは、発色団を含む一価有機残基であり;
Bは、置換されていてもよい、芳香族基、芳香族複素環基、脂環基および2~10個の炭素原子を含有する脂肪族基からなるクラスから選択される二価有機残基であり;
Cは少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物の残基であり、Cはアミノ基の窒素原子によりBと結合し、該化合物はポリ(アミドアミン)である。
【0023】
式(I)の着色剤は、例えば、洗剤に対して良好な着色性を有するが、布に対して低着色性を示す。
【0024】
用語「A」は、少なくとも1つの発色団を含む任意の化合物である。
【0025】
式(I)A-B-Cの着色剤では、Aは、少なくとも1つの発色団を含む前記化合物の一価残基である。
【0026】
1つの実施形態では、Aは、次の発色団:アゾ、アゾ金属錯体、フタロシアニン、アントラキノン、アザ[18]アヌレン、ホルマザン銅錯体、トリフェノジオキサジン、ニトロソ、ニトロ、ジアリールメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、メチン、チアゾール、インダミン、アジン、オキサジン、チアジン、キノリン、インジゴイド、インドフェノール、ラクトン、アミノケトン、ヒドロキシケトン、およびスチルベンの1つ以上を含む有機化合物または一価残基である。
【0027】
用語「B」は、Aと結合する場合、得られた化合物を反応染料A-Bに転換することができる任意の化合物である。
【0028】
反応染料A-Bでは、Bは、置換されていてもよい、芳香族基、芳香族複素環基、脂環基および2~10個の炭素原子を含有する脂肪族基からなるクラスから選択される一価有機残基である。脂肪族基は直鎖でも分岐鎖でもよい。必要に応じて置換される置換基は、C1~4アルキル、C1~4アルコキシ、またはフェニルから選択され得る。
【0029】
式(I)A-B-Cの着色剤では、Bは、置換されていてもよい、芳香族基、芳香族複素環基、脂環基および2~10個の炭素原子を含有する脂肪族基からなるクラスから選択されるそれぞれ適切な二価有機残基である。
【0030】
1つの実施形態では、Aと結合して反応染料A-Bを生成する場合、すなわち、Bが反応染料中の一価有機残基である場合、Bは、ジハロゲノトリアジン、ジハロゲノピリミジン、トリハロゲノピリミジン、ジハロゲノキノキサリン、ジハロゲノフタラジン、スルファトエチルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルスルホン、α-ハロゲノアクリルアミド、およびα,β-ジハロゲノプロピオニルアミドから選択される部分を含む残基から選択される。
【0031】
1つの実施形態では、反応染料A-Bにおいて、Bは、
【0032】
【化4】
(自由原子価は、Aとの結合を表す)
から選択され、
式中、
R
1はHまたは置換もしくは非置換C
1~10アルキル基から選択され;R
1は好ましくはHであり;
XはFまたはClから選択され;
XがClである場合、Zは-Cl、-NR
2R
3、-OR
2から選択され;
XがFである場合、Zは-NR
2R
3から選択され;
R
2およびR
3は、独立して、H、置換もしくは非置換C
1~10アルキル基および置換もしくは非置換アリール基から選択され、好ましくは前記アリール基はフェニルであり、そして前記アリール基は好ましくは1つ以上の-SO
3Hまたは-SO
2CH
2CH
2Yにより置換されており、好ましくは前記C
1~10アルキル基はメチルまたはエチルであり;
Yはアルカリにより脱離できる任意の基である。
【0033】
用語「C1~10アルキル基」は、直鎖基、ならびに分岐鎖基を包含する。
【0034】
反応染料A-Bは、考え得る色相または濃淡を有してもよい。
【0035】
1つの実施形態では、反応染料は、好ましくは、C.I.リアクティブブラック5、C.I.リアクティブブルー2、C.I.リアクティブブルー4、C.I.リアクティブブルー5、C.I.リアクティブブルー7、C.I.リアクティブブルー9、C.I.リアクティブブルー15、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー27、C.I.リアクティブバイオレット3、C.I.リアクティブバイオレット5、C.I.リアクティブレッド2、C.I.リアクティブレッド23、C.I.リアクティブレッド24、C.I.リアクティブオレンジ4、C.I.リアクティブオレンジ13、C.I.リアクティブオレンジ16、C.I.リアクティブオレンジ78、C.I.リアクティブイエロー1、C.I.リアクティブイエロー3、C.I.リアクティブイエロー13、C.I.リアクティブイエロー14、C.I.リアクティブイエロー17、C.I.リアクティブイエロー22およびC.I.リアクティブイエロー95から選択される。しかしながら、この一覧はさらなる反応染料を排除しない。
【0036】
用語「C]は、少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物である。
【0037】
本発明に従えば、式(I)A-B-Cにおいて、用語「C」は、少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物の一価残基であり、式(I)中のCは、ポリ(アミドアミン)の残基である。好ましくは、Cは、前記化合物のアミノ基の窒素原子によりBと結合する。
【0038】
ポリ(アミドアミン)(PAMAM)は当技術分野において公知であり、公知の方法に従って製造してもよい。
【0039】
詳細には、ポリ(アミドアミン)は、炭素アミド基ならびに第一級および第二級アミン基を含む有機化合物である。アミン基は、ポリ(アミドアミン)と反応染料との間の共有結合の生成を可能とする。
【0040】
1つの実施形態では、ポリ(アミドアミン)は、マイケル付加において、アクリレートまたはメタクリレートに対する分岐鎖または非分岐鎖アミンの反応生成物である。その後、前記マイケル付加で生成した生成物を重縮合させる。
【0041】
従って、1つの実施形態では、本発明において使用する好ましいポリ(アミドアミン)を、少なくとも2工程を含む反応で生成してもよい:
【0042】
第1工程において、分岐鎖または非分岐鎖アミンをマイケル付加でアクリレートまたはメタクリレートに付加する。マイケル付加において使用する好ましいアミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、またはポリエチレンイミンである。
【0043】
第2工程は重縮合である。反応順序を、例として、次のスキームに示す。
【0044】
【0045】
R1~R3は、独立して、上記定義の意味を有し得る。R4およびR5は、独立して、R1~R3の意味を有し得る。
【0046】
1つの実施形態では、残基Cを誘導する化合物は、少なくとも500g/モルまたは1,000g/モル、好ましくは少なくとも10,000g/モルの平均分子量Mwを有する。1つの実施形態では、Mwは、1,000~1,000,000g/モル、好ましくは1,000~500,000g/モルの範囲である。Mwは、公知の方法に従って静的光散乱法を用いて決定されてもよい。
【0047】
さらなる実施形態では、本発明は式(I)の着色剤に関する:
【化6】
式(I)中、
Aは、発色団を含む一価有機残基であり;
Bは、置換されていてもよい、芳香族基、芳香族複素環基、脂環基および2~10個の炭素原子を含有する脂肪族基からなるクラスから選択される二価有機残基であり;または
A-Bは反応染料の残基であり;および
Cは少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物の残基であり、Cはアミノ基の窒素原子によりBと結合し、該化合物はポリ(アミドアミン)である。
【0048】
第二の態様では、本発明は、第一の態様において定義された着色剤の製造方法に関し、反応染料A-Bを少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物と反応させて、式(I)の着色剤A-B-Cを得る。
【0049】
1つの実施形態では、1当量の反応染料A-Bを、少なくとも1つのアミド基、1つの第一級アミノ基、および1つの第二級アミノ基を含む化合物、すなわち、ポリ(アミドアミン)の0.25~4当量と反応させる。
【0050】
得られた高分子色素は、水および/または極性有機溶媒に、通常、可溶である。
【0051】
8つの異なる反応1)~8)に対して5つの異なる反応性アンカー(B)を示す反応染料A-Bについて、次のスキームにこの反応を例示している[H2N-ポリマー=ポリ(アミドアミン)C]:
【0052】
【0053】
1つの実施形態では、ポリ(アミドアミン)とそれぞれのアゾ染料との反応を、次の順序で行う:
【0054】
1つの実施形態では、第1工程において、ポリ(アミドアミン)Cの水溶液または分散液を準備する。
【0055】
反応性アンカーBの冷染色の場合[反応1)~5)]、水溶液を、30~70℃、好ましくは40~60℃、より好ましくは50℃などの45~55℃の範囲の温度まで加熱する。
【0056】
反応性アンカーBの加熱染色の場合[反応6)~8)]、水溶液を、80~100℃、好ましくは95℃などの90~100℃の範囲の温度まで加熱する。
【0057】
その後、水溶液または分散液の形態の反応染料A-Bを撹拌しながら滴下する。
【0058】
滴下での添加の完了後、得られた混合物を約1~2時間さらに撹拌し、着色剤A-B-Cの水溶液を得る。
【0059】
用語「溶液」は、分散液または乳液などの用語を包含する。
【0060】
必要に応じて、1つの実施形態では、蒸発により溶媒を除去して、式(I)の着色剤A-B-Cを単離し得る。しかしながら、好ましくは、着色剤A-B-Cを次の用途において水溶液として使用し得る。
【0061】
1つの実施形態では、式(I)の着色剤を、水溶液の総量に対して、水溶液中0.1~90重量%、または0.1~80重量%、または0.1~70重量%、または0.1~60重量%、または0.1~50重量%、または0.1~40重量%、または0.1~30重量%、または0.1~20重量%、または0.1~10重量%の量で準備する。
【0062】
第三の態様では、本発明は、第一の態様において定義した着色剤、または第二の態様において定義した方法に従って製造した着色剤、ならびに水および極性有機溶媒、または水と極性有機溶媒との混合物からなる群から選択される溶媒を含む組成物に関する。
【0063】
1つの実施形態では、溶媒は水を含むかまたは水である。
【0064】
本発明に従えば、着色剤、すなわち、第一の態様において定義した、または第二の態様において定義した方法により製造した、または第三の態様において定義した組成物を含む高分子色素を用いて製品を着色し得る。
【0065】
本発明に従った着色剤は、通常、遅い染色因子を有し、それにより、ほとんどの硬質面、皮膚、布および設備に対する染色が低下または染色しない。用語「染色」は、用語「着色」と同意語として使用する。このような着色剤を、しばしば、冷水で洗浄してもよい。着色剤は、低染色因子を必要とするインクでない用途に特に好適である。例えば、このような用途としては、色素が洗浄する品目に薄い色がつかないことが望まれる洗浄剤用色素が挙げられる。
【0066】
本発明の着色剤を広いpH範囲にわたって使用することができ、得られた混合物を複雑にまたは不安定にすることなく、香料および保存料と混合可能である。本発明の着色剤は、ほとんどのカチオン系およびアニオン系、非イオン系ならびに第四級系とも混合可能である。通常、これらの着色剤は、乳液または分散液よりむしろ真溶液である。得られた処方物の外観は、透明かつ鮮明である。
【0067】
第四の態様では、本発明は、第一の態様において定義した着色剤、もしくは第二の態様において定義した方法により製造した着色剤を含む、または第三の態様において定義した組成物を含む製品に関する。
【0068】
1つの実施形態では、製品は、洗浄剤、インク、色鉛筆、またはマーカー、またはメガパール(megapearls)(登録商標)からなる群から選択される。
【0069】
1つの実施形態では、洗浄剤は、洗剤および柔軟剤から選択される。
【0070】
用語「洗剤」は、洗浄液、食器用液体洗剤、食器用洗剤、洗口剤、捕集剤、循環液、掘削流体、液体(fluid)、洗浄液(flush fluid)、洗浄溶剤(flush medium)、洗浄液(flushing fluid)、洗浄溶剤(flushing medium)、掘削流体、エアウォーター掘削流体などの用語のための一般用語である。
【0071】
用語「柔軟剤」は、織物柔軟剤または織物仕上げ剤などの用語のための一般用語である。
【0072】
第五の態様では、本発明は、染色のため、または洗浄剤、色鉛筆、もしくはマーカーの着色のための、第一の態様において定義した着色剤の使用、または第二の態様において定義した方法により製造した着色剤の使用、または第三の態様において定義した組成物を含む着色剤の使用に関する。
【0073】
1つの実施形態では、使用は、洗剤および柔軟剤を着色するためである。
【0074】
次の実施例では、部およびパーセントは重量基準であり、温度はセルシウス度で報告する。
【実施例】
【0075】
実施例1
製造実施例1[ポリ(アミドアミン)の製造]
ジエチレントリアミン309.4部を窒素下、多口反応器内に入れた。撹拌しながら、メタクリル酸メチル300.2部を慎重に添加した。それから、60分の間に、反応混合物を90℃の温度まで加熱し、さらに2.5時間、この温度を維持した。メタノールを蒸留して取り除くために145℃まで温度を上昇させて、メタノールの蒸留が観察できなくなるまでこの温度を維持した。蒸留が終わった後、反応混合物を約95℃の温度まで冷却した。それから、脱塩水465部を30分の間に継続的に添加した。それから、PAMAM水溶液を、20~25℃の範囲の温度まで冷却した。得られたPAMAMポリマーの1つの実施例は次式のものである:
【0076】
【0077】
実施例2~16
次の表には、製造実施例1に記載した方法と同様に製造したPAMAMポリマーのための出発物質としてのアクリレートおよびアミン類が含まれている。アクリレート基とアミノ基との間のモル比は変わり得るが、アミノ基の数はアクリレート単位の数を上回らなければならない。
【0078】
【0079】
実施例17
製造実施例17[着色剤A-B-Cを得るため、ポリ(アミドアミン)を用いた反応染料A-Bからの高分子色素の製造]
C.I.リアクティブレッド22、10.0部を水300部に溶解し、80~85℃の範囲の温度まで加熱した。それから、製造実施例1の水性PAMAMポリマー20.0部を、9~9.5の範囲のpHにおいて15分の間に滴下した。得られた混合物を30分間撹拌した。反応が完結するまで、炭酸ナトリウム溶液の添加によりpHを9~9.5の範囲に調節した。それから、赤い溶液を、20~25℃の範囲の温度まで冷却した。必要に応じて、溶液を水で希釈してもよい。
【0080】
得られた高分子色素の1つの実施例は、次式のものである:
【化9】
[
*は、ポリ(アミドアミン)のアミノ基との結合を表す]
【0081】
製造実施例18~64
次の表は、出発物質として、反応染料およびポリ(アミドアミン)PAMAMポリマーを示す。製造実施例17と同様に高分子色素を製造するために必要な反応温度を、出発物質として使用した反応染料およびポリ(アミドアミン)の反応性まで調節した。全実施例において、反応染料1当量とPAMAMのアミノ基の当量とのモル比を、0.25~4に維持した。
【0082】