(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】インク、インクセット、及び繊維の捺染方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/328 20140101AFI20220111BHJP
D06P 1/38 20060101ALI20220111BHJP
D06P 1/642 20060101ALI20220111BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20220111BHJP
D06P 5/20 20060101ALI20220111BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C09D11/328
D06P1/38 A
D06P1/642
D06P5/00 102
D06P5/20 C
D06P5/30
(21)【出願番号】P 2018552546
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2017041490
(87)【国際公開番号】W WO2018097061
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2016228558
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017008386
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴博
(72)【発明者】
【氏名】永塚 由桂
(72)【発明者】
【氏名】武田 径明
(72)【発明者】
【氏名】田中 勇気
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-035952(JP,A)
【文献】特開2016-138157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.Reactive Blue 176と、C.I.Reactive Red 245と、C.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99の少なくとも一方とを含む反応染料、及び尿素を含有
し、
C.I.Reactive Blue 176の含有率が5~15質量%であり、C.I.Reactive Red 245の含有率が0.1~10質量%であり、C.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99の合計の含有率が0.1~30質量%であり、他の反応染料の含有率が5質量%以下であるインク。
【請求項2】
前記反応染料がC.I.Reactive Orange 13を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記反応染料がC.I.Reactive Orange 99を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記反応染料がC.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99を含む、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
少なくとも環状アミド系溶剤1種以上を含む双極子モーメント値(δP値)が9~30MPa
1/2の範囲内である水溶性有機溶剤、及び水を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のインク。
【請求項6】
前記水溶性有機溶剤の双極子モーメント値(δP値)が9~20MPa
1/2の範囲内である、請求項5に記載のインク。
【請求項7】
前記環状アミド系溶剤が2-ピロリドンである、請求項5又は6に記載のインク。
【請求項8】
2-ピロリドンの含有率が5~20質量%である、請求項7に記載のインク。
【請求項9】
尿素の含有率が5~20質量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のインク。
【請求項10】
2-ピロリドンを含有し、2-ピロリドンと尿素との合計の含有率が15~30質量%であり、かつ、2-ピロリドンと尿素との含有比が質量基準で1:2~2:1である(ただし、2-ピロリドンと尿素との合計の含有率が15質量%であり、かつ、2-ピロリドンと尿素との含有比が質量基準で2:1であるものを除く)、請求項1~9のいずれか一項に記載のインク。
【請求項11】
pH調整剤を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のインク。
【請求項12】
前記pH調整剤がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである、請求項11に記載のインク。
【請求項13】
C.I.Reactive Blue 176の含有率が8~12質量%である、請求項
1~12のいずれか一項に記載のインク。
【請求項14】
ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤の少なくとも一方を含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載のインク。
【請求項15】
ブラックインクと、マゼンタインク及びシアンインクの少なくとも一方とを備えるインクセットであって、
前記ブラックインクが、請求項1~
14のいずれか一項に記載のインクであり、
前記マゼンタインクが、C.I.Reactive Red 245を反応染料として含有し、
前記シアンインクが、C.I.Reactive Blue 15:1及びC.I.Reactive Blue 72の少なくとも一方を反応染料として含有するインクセット。
【請求項16】
請求項1~
14のいずれか一項に記載のインクの液滴を、インクジェットプリンタにより吐出させて繊維に付着させる付着工程と、
前記付着工程にて前記繊維に付着させたインク中の反応染料を、熱により該繊維に反応固着させる反応固着工程と、
前記繊維中に残存する未固着の反応染料を洗浄する洗浄工程と、
を含む繊維の捺染方法。
【請求項17】
前記付着工程を行う前の繊維に、1種類以上の糊材、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤を含有する水溶液を付着させる前処理工程をさらに含む、請求項
16に記載の繊維の捺染方法。
【請求項18】
請求項
15に記載のインクセットが備える各インクの液滴を、インクジェットプリンタにより吐出させて繊維に付着させる付着工程と、
前記付着工程にて前記繊維に付着させたインク中の反応染料を、熱により該繊維に反応固着させる反応固着工程と、
前記繊維中に残存する未固着の反応染料を洗浄する洗浄工程と、
を含む繊維の捺染方法。
【請求項19】
前記付着工程を行う前の繊維に、1種類以上の糊材、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤を含有する水溶液を付着させる前処理工程をさらに含む、請求項
18に記載の繊維の捺染方法。
【請求項20】
前記インクジェットプリンタがスキャン方式のインクジェットプリンタであり、
前記付着工程では、前記ブラックインクと、前記マゼンタインク及び前記シアンインクの少なくとも一方とを重ねて前記繊維に付着させる、請求項
18又は
19に記載の繊維の捺染方法。
【請求項21】
前記付着工程では、前記ブラックインクと、前記マゼンタインクと、前記シアンインクとを重ねて前記繊維に付着させる、請求項
20に記載の繊維の捺染方法。
【請求項22】
前記ブラックインクの吐出量がその他のインクの吐出量よりも多い、請求項
20又は
21に記載の繊維の捺染方法。
【請求項23】
前記繊維がセルロース系繊維又はポリアミド系繊維である請求項
16~
22のいずれか一項に記載の繊維の捺染方法。
【請求項24】
前記繊維がセルロース系繊維である、請求項
23に記載の繊維の捺染方法。
【請求項25】
請求項1~
14のいずれか一項に記載のインク又は請求項
15に記載のインクセットを用いて染色された繊維。
【請求項26】
請求項
16~
24のいずれか一項に記載の捺染方法により染色された繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応染料を含有するインク及びインクセット、並びにそれらを用いた繊維の捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタを用いた繊維のインクジェット捺染は、スクリーン捺染、ローラー捺染、ロータリー捺染等の捺染方法に比べ、
(1)製版工程が不要であり工程が短縮できること、
(2)デジタル化されたデザインを、コンピューターを介してそのまま印捺できること、
(3)多品種の製品を少量ずつであっても生産することが可能であること、
(4)染料色糊の廃液等が大幅に削減できること、
等の多くのメリットがある。その一方で、インクジェット捺染は、従来の製版捺染に比べ、印捺加工速度が遅いこと、濃色を再現し難いこと等の課題があり、見本反の製造や少量生産の範囲で使用されることが多かった。
【0003】
近年、コンピューターの画像処理技術や産業用インクジェットプリントヘッドの製造技術の進歩により、インクジェットプリンタによる印捺速度が大幅に向上してきた。これに加えて、印捺デザインのデジタル化、印捺加工の多様化及び小ロット化が市場で要求されてきたことから、産業用インクジェット捺染の普及が進んでいる。
【0004】
ところで、綿、レーヨン等のセルロース系繊維の染色に用いられるインクジェット捺染用のインクには、反応染料が使用されている。反応染料は、その染料分子中に存在する繊維と反応する反応性基が、繊維中に存在するヒドロキシ基等と反応し、染料と繊維との間で共有結合を形成することにより繊維に固着する。しかし、インクジェット捺染では、インクの液滴を吐出させて画像を形成するため、従来のスクリーン捺染等の捺染方法で用いられてきたインクをそのままインクジェット捺染に適用することができない。インクジェット特性を確保するためには、インクの表面張力、粘度等の物理特性だけでなく、溶剤等の組成、色材の濃度などについても調整する必要がある。このような制約から、従来のインクジェット捺染では、染布の染色濃度を高くすることが困難であり、これらの問題に対して様々な試みがなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、高濃度の捺染布が得られるインクジェット捺染用のインクとして、反応染料及びチオジグリコールを含有するインクが提案されている。また、特許文献2及び特許文献3には、高濃度の捺染布が得られるインクジェット捺染用のインクとして、反応染料及び1,2-アルカンジオールを含有するインクが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3323549号公報
【文献】特開2004-292523号公報
【文献】特開2011-195675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、反応染料を含有し、高濃度な染色が可能なインク、そのインクを備えたインクセット、及びそれらを用いた繊維の捺染方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の1)~27)に記載の本発明を完成させた。
【0009】
1)
C.I.Reactive Blue 176と、C.I.Reactive Red 245と、C.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99の少なくとも一方とを含む反応染料、及び尿素を含有するインク。
2)
前記反応染料がC.I.Reactive Orange 13を含む、1)に記載のインク。
3)
前記反応染料がC.I.Reactive Orange 99を含む、1)に記載のインク。
4)
前記反応染料がC.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99を含む、1)に記載のインク。
5)
少なくとも環状アミド系溶剤1種以上を含む双極子モーメント値(δP値)が9~30MPa1/2の範囲内である水溶性有機溶剤、及び水を含有する、1)~4)のいずれか一項に記載のインク。
6)
前記水溶性有機溶剤の双極子モーメント値(δP値)が9~20MPa1/2の範囲内である、5)に記載のインク。
7)
前記環状アミド系溶剤が2-ピロリドンである、5)又は6)に記載のインク。
8)
2-ピロリドンの含有率が5~20質量%である、7)に記載のインク。
9)
尿素の含有率が5~20質量%である、1)~8)のいずれか一項に記載のインク。
10)
2-ピロリドンを含有し、2-ピロリドンと尿素との合計の含有率が15~30質量%であり、かつ、2-ピロリドンと尿素との含有比が質量基準で1:2~2:1である(ただし、2-ピロリドンと尿素との合計の含有率が15質量%であり、かつ、2-ピロリドンと尿素との含有比が質量基準で2:1であるものを除く)、1)~9)のいずれか一項に記載のインク。
11)
pH調整剤を含有する、1)~10)のいずれか一項に記載のインク。
12)
前記pH調整剤がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである、11)に記載のインク。
13)
C.I.Reactive Blue 176の含有率が5~15質量%である、1)~12)のいずれか一項に記載のインク。
14)
C.I.Reactive Blue 176の含有率が8~12質量%である、13)に記載のインク。
15)
ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤の少なくとも一方を含む、1)~14)のいずれか一項に記載のインク。
【0010】
16)
ブラックインクと、マゼンタインク及びシアンインクの少なくとも一方とを備えるインクセットであって、
前記ブラックインクが、1)~15)のいずれか一項に記載のインクであり、
前記マゼンタインクが、C.I.Reactive Red 245を反応染料として含有し、
前記シアンインクが、C.I.Reactive Blue 15:1及びC.I.Reactive Blue 72の少なくとも一方を反応染料として含有するインクセット。
【0011】
17)
1)~15)のいずれか一項に記載のインクの液滴を、インクジェットプリンタにより吐出させて繊維に付着させる付着工程と、
前記付着工程にて前記繊維に付着させたインク中の反応染料を、熱により該繊維に反応固着させる反応固着工程と、
前記繊維中に残存する未固着の反応染料を洗浄する洗浄工程と、
を含む繊維の捺染方法。
18)
前記付着工程を行う前の繊維に、1種類以上の糊材、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤を含有する水溶液を付着させる前処理工程をさらに含む、17)に記載の繊維の捺染方法。
19)
16)に記載のインクセットが備える各インクの液滴を、インクジェットプリンタにより吐出させて繊維に付着させる付着工程と、
前記付着工程にて前記繊維に付着させたインク中の反応染料を、熱により該繊維に反応固着させる反応固着工程と、
前記繊維中に残存する未固着の反応染料を洗浄する洗浄工程と、
を含む繊維の捺染方法。
20)
前記付着工程を行う前の繊維に、1種類以上の糊材、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤を含有する水溶液を付着させる前処理工程をさらに含む、19)に記載の繊維の捺染方法。
21)
前記インクジェットプリンタがスキャン方式のインクジェットプリンタであり、
前記付着工程では、前記ブラックインクと、前記マゼンタインク及び前記シアンインクの少なくとも一方とを重ねて前記繊維に付着させる、19)又は20)に記載の繊維の捺染方法。
22)
前記付着工程では、前記ブラックインクと、前記マゼンタインクと、前記シアンインクとを重ねて前記繊維に付着させる、21)に記載の繊維の捺染方法。
23)
前記ブラックインクの吐出量がその他のインクの吐出量よりも多い、21)又は22)に記載の繊維の捺染方法。
24)
前記繊維がセルロース系繊維又はポリアミド系繊維である17)~23)のいずれか一項に記載の繊維の捺染方法。
25)
前記繊維がセルロース系繊維である、24)に記載の繊維の捺染方法。
【0012】
26)
1)~15)のいずれか一項に記載のインク又は16)に記載のインクセットを用いて染色された繊維。
27)
17)~23)のいずれか一項に記載の捺染方法により染色された繊維。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反応染料を含有し、高濃度な染色が可能なインク、そのインクを備えたインクセット、及びそれらを用いた繊維の捺染方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<インク>
本実施形態に係るインクは、C.I.Reactive Blue 176と、C.I.Reactive Red 245と、C.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99の少なくとも一方とを含む反応染料、及び尿素を含有する。このようなインクによれば、高い染色濃度で黒色に染色することが可能である。
【0015】
[反応染料]
本実施形態に係るインクは、C.I.Reactive Blueから選択される反応染料として、C.I.Reactive Blue 176を含有する。C.I.Reactive Blue 176は、C.I.Reactive Black 39とも称される反応染料であり、発色性に優れ、鮮明なネイビー色を呈する。
【0016】
C.I.Reactive Blue 176の含有率は、インクの総量中、5~15質量%であることが好ましく、8~12質量%であることがより好ましい。
【0017】
C.I.Reactive Blue 176は、通常、Na塩の化合物として知られているが、インクの要求特性等に応じて、Na塩以外の塩に変更することが可能である。
【0018】
C.I.Reactive Blue 176が有し得るNa塩以外の塩としては、例えば、無機陽イオン又は有機陽イオンとの塩が挙げられる。無機陽イオンとの塩の具体例としては、Li、K等のアルカリ金属との塩、Ca、Mg等のアルカリ土類金属との塩、アンモニウム塩(NH4
+)等が挙げられる。また、有機陽イオンとの塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中でも、1価の陽イオンとの塩であることが好ましく、Li塩であることがより好ましい。C.I.Reactive Blue 176がLi塩を含むことにより、溶剤に対する溶解性が向上し、印刷時における染色濃度を向上させる効果が得られる。
【0019】
C.I.Reactive Blue 176がLi塩を含む場合、Li塩とLi塩以外の塩とのモル比は、5:95~95:5であることが好ましく、20:80~80:20であることがより好ましく、30:70~70:30であることがさらに好ましく、40:60~60:40であることが特に好ましく、40:60~50:50であることが極めて好ましい。また、インク中におけるLiイオン濃度は、1000~2000質量ppmの範囲であることが好ましく、1200~1700質量ppmの範囲であることがより好ましい。このLiイオン濃度は、公知の方法で測定することが可能である。
【0020】
上記のように塩を変更する場合、その調製方法としては、例えば、逆浸透膜精製法を用いたイオン交換による調製や塩交換結晶化等の公知のイオン交換方法を用いることが可能であり、逆浸透膜精製法を用いることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態に係るインクは、C.I.Reactive Redから選択される反応染料として、C.I.Reactive Red 245を含有する。
【0022】
C.I.Reactive Red 245の含有率は、インクの総量中、0.1~10質量%であることが好ましく、1~8質量%であることがより好ましい。
【0023】
また、本実施形態に係るインクは、C.I.Reactive Orangeから選択される反応染料として、C.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99の少なくとも一方を含有する。本実施形態に係るインクは、C.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99の両方を含有することが好ましい。
【0024】
C.I.Reactive Orange 13及びC.I.Reactive Orange 99の合計の含有率は、インクの総量中、0.1~30質量%であることが好ましく、1~25質量%であることがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係るインクは、本発明の効果を阻害しない限り、上記以外の他の反応染料を含有していてもよい。
【0026】
他の反応染料のうち、C.I.Reactive Blueに分類されるものとしては、例えば、C.I.Reactive Blue 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、13、14、15、15:1、16、17、18、19、19:2、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、36:1、38、39、40、41、42、43、44、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、112、113、114、116、117、118、118:1、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、171:1、172、173、174、175、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、198、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、233、234、235、236、237、238、242、243、244、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284等が挙げられる。
【0027】
他の反応染料のうち、C.I.Reactive Redに分類されるものとしては、例えば、C.I.Reactive Red 1、1:1、2、3、3:1、4、5、6、6:1、7、8、8:1、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、21:1、22、22:1、23、24、24:1、25、26、27、28、29、30、31、31:1、32、33、34、35、35:1、35:2、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、45:1、46、47、48、49、50、51、51:1、52、53、54、55、56、58、59、59:1、60、60:1、61、61:1、62、63、63:1、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、73:1、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、106:1、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、123、124、125、126、128、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、238:1、239、241、242、243、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288等が挙げられる。
【0028】
他の反応染料のうち、C.I.Reactive Orangeに分類されるものとしては、例えば、C.I.Reactive Orange 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、15:1、16、16:1、16:2、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、28:1、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、66、67、68、69、70、71、72、72:1、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144等が挙げられる。
【0029】
これらの他の反応染料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、他の反応染料の含有率は、インクの総量中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
[尿素]
本実施形態に係るインクは、尿素を含有する。尿素の含有率は、インクの総量中、5~20質量%であることが好ましく、10~20質量%であることがより好ましい。尿素の含有率を5質量%以上とすることで、染色濃度がより高まるとともに、インクの耐乾燥性がより向上する傾向にある。また、尿素の含有率を20質量%以下とすることで、インクの高温保存安定性が向上する傾向にある。
【0031】
[水]
本実施形態に係るインクは、水性インクであり、水を含有する。インク調製に用いる水は、イオン交換水、蒸留水等の精製操作を行ったものが好ましい。特に精製操作を行わない水は、Caイオン、Mgイオン等の金属イオンを含むため、このような水をインク調製に用いた場合には、微量ながら該イオン等が混入する。本明細書においては、このような金属イオンや無機塩を、便宜上、「無機不純物」という。これらの無機不純物は、インクに対する溶解度及び保存安定性を悪くするため、少なくする方がよい。
【0032】
[水溶性有機溶剤]
本実施形態に係るインクは、水のほかに水溶性有機溶剤を含有していてもよい。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C4アルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール等のポリオール(好ましくはトリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1-C4モノアルキルエーテル;γ-ブチロラクトン;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
【0033】
特に、本実施形態に係るインクは、吐出安定性及び低温保存安定性を向上させる観点から、少なくとも環状アミド系溶剤1種以上を含む双極子モーメント値(δP値)が9~30MPa1/2の範囲内(好ましくは、9~20MPa1/2の範囲内)である水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。なお、双極子モーメント値(δP値)は、ハンセン溶解度パラメータの分極項であり、コンピュータソフトウェア(Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP))を用いて推算することができる。
【0034】
環状アミド系溶剤としては、カルボキシ基とアミノ基とが脱水縮合して3~7員環構造を形成した溶剤が挙げられ、具体例としては、α-ラクタム(21.7)、β-ラクタム(17.9)、ε-カプロラクタム(13.8)、2-ピロリドン(12)、N-メチル-2-ピロリドン(12.3)、N-エチル-2-ピロリドン(12)等が挙げられる(括弧内の数値はいずれもδP値を示す)。環状アミド系溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本実施形態に係るインクは、環状アミド系溶剤の中でも、2-ピロリドンを含有することが好ましい。2-ピロリドンの含有率は、インクの総量中、5~20質量%であることが好ましく、8~12質量%であることがより好ましい。
【0036】
なお、本実施形態に係るインクが2-ピロリドンを含有する場合、2-ピロリドンと尿素との合計の含有率が15~30質量%であり、かつ、2-ピロリドンと尿素との含有比が質量基準で1:2~2:1であること(ただし、2-ピロリドンと尿素との合計の含有率が15質量%であり、かつ、2-ピロリドンと尿素との含有比が質量基準で2:1であるものを除く)が好ましい。
【0037】
また、環状アミド系溶剤以外の、双極子モーメント値(δP値)が9~30MPa1/2の範囲内である水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール(11)、プロピレングリコール(10.4)、グリセリン(11.3)、出光興産(株)製の商品名エクアミドB-100(9)及びエクアミドM-100(10.4)、1,4-ブタンジオール(11)、エチレン尿素(17.6)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(9.2)、シンナミド(27.6)等が挙げられる(括弧内の数値はいずれもδP値を示す)。環状アミド系溶剤以外の水溶性有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本実施形態に係るインクは、環状アミド系溶剤以外の水溶性有機溶剤の中でも、エチレングリコール及びプロピレングリコールの少なくとも一方を含有することが好ましく、エチレングリコール及びプロピレングリコールの両方を含有することがより好ましい。エチレングリコール及びプロピレングリコールの合計の含有率は、インクの総量中、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましい。
【0039】
[その他の成分]
本実施形態に係るインクは、その他の成分として、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、褪色防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等のインク調製剤を含有していてもよい。各インク調製剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(pH調整剤)
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等の3級アミン類、好ましくはヒドロキシ基で置換されていてもよいモノ、ジ、又はトリC1-C4アルキルアミン;等が挙げられる。これらの中では、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが好ましい。
【0041】
本実施形態に係るインクがpH調整剤を含有する場合、その含有率は、インクの総量に対して、通常は0.01~3質量%であり、好ましくは0.02~2.5質量%であり、より好ましくは0.05~2質量%である。
【0042】
(防腐防黴剤)
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N-ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えば、ペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオキシド系化合物としては、例えば、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウムが挙げられる。イソチアゾリン系化合物としては、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤としては、酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製の商品名プロキセルRTMGXL(S)及びプロキセルRTMXL-2(S)等が挙げられる。なお、上付きのRTMは登録商標を意味する。
【0043】
(キレート試薬)
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0044】
(防錆剤)
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0045】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物が挙げられる。また、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤等も使用できる。
【0046】
(粘度調整剤)
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤のほかに水溶性高分子化合物が挙げられる。水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン、分子量20000程度以下のポリC2-C3アルキレングリコール、好ましくは液状のポリアルキレングリコール等が挙げられる。例えば、阪本薬品工業(株)製の商品名SC-P400、SC-P750、SC-P1000、SC-P1200、SC-P1600等のポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル;SC-E450、SC-E750、SC-E1000、SC-E1500、SC-E2000等のポリオキシエチレンジグリセリルエーテル;等が挙げられ、SC-P1000を用いることが好ましい。
【0047】
(褪色防止剤)
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機系の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及びヘテロ環類等が挙げられる。金属錯体系の褪色防止剤としては、例えば、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。
【0048】
(表面張力調整剤)
表面張力調整剤としては、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の中でも、ノニオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤の少なくとも一方が好ましい。
【0049】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N-アシルアミノ酸又はその塩;N-アシルメチルタウリン塩;アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩;アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩;ロジン酸石鹸;ヒマシ油硫酸エステル塩;ラウリルアルコール硫酸エステル塩;アルキルフェノール型燐酸エステル;アルキル型燐酸エステル;アルキルアリールスルホン酸塩;ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等のスルホ琥珀酸系;等が挙げられる。好ましくはスルホ琥珀酸系であり、その市販品の例としては、ライオン(株)製、商品名リパール835I、同860K、同870P、同NTD、同MSC;アデカ(株)製、商品名アデカコールEC8600;花王(株)製、商品名ペレックスOT-P、同CS、同TA、同TR;新日本理化(株)製、リカマイルドES-100、同ES-200、リカサーフP-10、同M-30、同M-75、同M-300、同G-30、同G-600;東邦化学工業(株)製、コハクノールL-300、同L-40、同L-400、同NL-400;等が挙げられる。
【0050】
本実施形態に係るインクがアニオン界面活性剤を含有する場合、その含有率は、インクの総量に対して、通常は0.05~2質量%であり、好ましくは0.05~1.5質量%であり、より好ましくは0.05~1質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.5質量%である。
【0051】
(ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレンアルコール系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、エアープロダクト社製、商品名サーフィノール104、同104PG50、同82、同420、同440、同465、同485;オルフィンSTG;等のアセチレングリコール系;などが挙げられる。これらの中でも、アセチレングリコール系又はアセチレンアルコール系が好ましく、アセチレングリコール系がより好ましい。
【0052】
本実施形態に係るインクがノニオン界面活性剤を含有する場合、その含有率は、インクの総量に対して、通常は0.05~2質量%であり、好ましくは0.05~1.5質量%であり、より好ましくは0.05~1質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.5質量%である。
【0053】
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0054】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0055】
(消泡剤)
消泡剤としては、例えば、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、シリコーン系化合物等が挙げられる。
【0056】
[インクの物性]
本実施形態に係るインクの20℃における粘度は、例えば、4~30mPa・sであることが好ましく、5~20mPa・sであることがより好ましい。
また、工業用インクジェットヘッドが搭載されたプリンタでの使用時において、低温環境下における高速での連続吐出性を改善する観点から、本実施形態に係るインクの25℃における静的表面張力は、20~45mN/mであることが好ましく、25~40mN/mであることがより好ましい。
【0057】
[インクの調製方法]
本実施形態に係るインクにおいて、各成分を加える順番は特に制限されず、撹拌により実質的に溶液となるまで混合し、インクを調製すればよい。インクの調製の際に使用する水は、上記のとおり、蒸留水、イオン交換水等の無機不純物の少ないものを用いるのがよい。
【0058】
インクは、メンブランフィルタ等を用いて精密濾過し、夾雑物を除いた濾液を用いるのがよい。精密濾過を行う際のフィルタの孔径は、通常は0.1~1.0μmであり、好ましくは0.1~0.8μmである。また、無機不純物の含有率は、インクの総量に対して、通常は1質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下である。下限は検出機器の検出限界以下、すなわち0質量%とすることができる。そして、無機不純物を除去した後、希釈又は濃縮により所望の染料濃度に調整し、インクを得ることができる。
【0059】
<インクセット>
本実施形態に係るインクセットは、ブラックインクと、マゼンタインク及びシアンインクの少なくとも一方とを備える。本実施形態に係るインクセットは、マゼンタインク及びシアンインクの両方を備えることが好ましい。
【0060】
ブラックインクとしては、上述した本実施形態に係るインクが使用されるため、詳細な説明を省略する。
【0061】
マゼンタインクは、C.I.Reactive Red 245を反応染料として含有する。C.I.Reactive Red 245の含有率は、マゼンタインクの総量中、1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましい。
【0062】
マゼンタインクは、C.I.Reactive Red 3、3:1、4、13、24、29、31、33、125、151、206、218、226等のC.I.Reactive Redに分類される他の反応染料を含有していてもよい。ただし、他の反応染料の含有率は、マゼンタインクの総量中、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
シアンインクは、C.I.Reactive Blue 15:1及びC.I.Reactive Blue 72の少なくとも一方を反応染料として含有する。C.I.Reactive Blue 15:1及びC.I.Reactive Blue 72の合計の含有率は、シアンインクの総量中、1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましい。
【0064】
シアンインクは、C.I.Reactive Blue 2、5、10、13、14、15、49、63、71、75、162、176等のC.I.Reactive Blueに分類される他の反応染料を含有していてもよい。ただし、他の反応染料の含有率は、シアンインクの総量中、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
マゼンタインク及びシアンインクは、水性インクであり、水を含有する。また、マゼンタインク及びシアンインクは、上述した本実施形態に係るインクと同様に、水溶性有機溶剤やその他のインク調製剤を含有していてもよい。
【0066】
<繊維の捺染方法及び染色された繊維>
本実施形態に係る繊維の捺染方法は、上述した本実施形態に係るインク又は本実施形態に係るインクセットを用いて、繊維(好ましくは、セルロース系繊維又はポリアミド系繊維)に捺染する方法である。より具体的には、セルロース系繊維又はポリアミド系繊維を主体とした布帛に捺染するのが好ましい。セルロース系繊維としては、綿、麻等の天然繊維、レーヨン等の再生セルロース繊維、及びこれらを含有する混紡繊維等が挙げられる。
【0067】
繊維の捺染方法としては、以下の3工程を順次行う方法が挙げられる。
(付着工程)
インクの液滴を、インクジェットプリンタにより吐出させて繊維に付着させる。
(反応固着工程)
付着工程にて繊維に付着させたインク中の反応染料を、熱により該繊維に反応固着させる。
(洗浄工程)
該繊維中に残存する未固着の反応染料を洗浄する。
【0068】
インクジェットプリンタのインクノズルについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、インクジェットプリンタの印刷方式についても特に制限はなく、スキャン方式、シングルパス方式等の任意の印刷方式を選択することができる。
【0069】
付着工程としては、上述した本実施形態に係るインクが充填された容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、該インクの液滴を記録信号に応じて吐出させて、繊維に付着させる方法が挙げられる。上述した本実施形態に係るインクセットを用いる場合、各インクが充填された容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、各インクの液滴を記録信号に応じて吐出させて、繊維に付着させればよい。
【0070】
反応固着工程としては、インクが付着した繊維を常温~150℃にて0.5~30分間放置して予備乾燥させた後、スチーミング処理を施す方法等が挙げられる。スチーミング処理の条件としては、インクが付着した繊維を、湿度80~100%、温度95~105℃の環境下に5~40分間放置する条件が挙げられる。
【0071】
洗浄工程としては、スチーミング処理を施した繊維を水により洗浄する方法が挙げられる。洗浄に使用する水は、界面活性剤を含んでいてもよい。未固着の染料を洗浄した後の繊維を50~120℃にて5~30分間乾燥させることにより、染色された繊維を得ることができる。
【0072】
本実施形態に係る繊維の捺染方法は、付着工程を行う前の工程として、繊維に対する前処理工程を含んでいてもよい。この前処理工程としては、1種類以上の糊材、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤を含有する水溶液を前処理液として、繊維に付着させる工程が挙げられる。この前処理工程は必須ではないが、捺染の際に染料の滲みを防止する効果が得られる場合もあるため、前処理工程を含む4工程を順次行う捺染方法が好ましい。
【0073】
なお、前処理液に含有されるpH調整剤は、インクに含有されるpH調整剤と使用目的は同じであるが、その好ましい具体例等は異なる。このため、本明細書においては、インクに含有されるpH調整剤は単に「pH調整剤」と記載し、前処理液に含有されるpH調整剤は「前処理用のpH調整剤」と記載して、両者を区別する。
【0074】
糊剤としては、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ソーダ、ふのり等の海藻類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、カルボキシメチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊などが挙げられる。これらの中でも、セルロース系繊維の前処理に用いられる糊剤としては、アルギン酸ソーダが好ましい。また、ポリアミド系繊維の前処理に用いられる糊剤としては、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム類が好ましい。
【0075】
pH調整剤としては、繊維に適したpH調整剤が選択される。セルロース系繊維の前処理に用いられるpH調整剤としては、水溶液とした際にアルカリ性を示すものが好ましく、例えば、無機酸又は有機酸のアルカリ金属塩;アルカリ土類金属の塩;加熱した際にアルカリを遊離する化合物;等が挙げられる。特に、無機酸又は有機酸のアルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属塩が好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、蟻酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられ、炭酸水素ナトリウムが好ましい。一方、ポリアミド系繊維の前処理に用いられるpH調整剤としては、水溶液とした際に酸性を示すものが好ましい。具体的には、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の酸性のアンモニウム塩が挙げられ、硫酸アンモニウムが好ましい。
【0076】
ヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等のアルキル尿素等が挙げられ、好ましくは尿素が挙げられる。
【0077】
上記の糊剤、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記の糊剤、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤の含有率は、例えばセルロース系繊維及びポリアミド系繊維のそれぞれにおける混紡の比率等により一概に決めることは困難であるが、目安としては、前処理液の総量に対して、糊剤が0.5~5質量%、前処理用のpH調整剤が0.5~5質量%、ヒドロトロピー剤が1~20質量%であり、残部は水である。
【0079】
前処理液を繊維に付着させる方法としては、例えばパディング法が挙げられる。パディングの絞り率は40~90%程度が好ましく、60~80%程度がより好ましい。
【0080】
なお、近年では、高濃度だけでなく、高精細かつインクジェット特有の粒状感を抑えた高品質なインクジェット捺染物が求められており、数pL~10数pLの微小液滴を吐出することが可能なインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタが開発されている。しかし、このようなインクジェットプリンタを用いた場合、染布に対する液滴1滴あたりのインクの量が少なく、1回捺染しただけでは高濃度を達成することが難しくなるため、必然的に染布上の同じ箇所を繰り返し捺染することが必要となり、生産速度が著しく低下してしまう。このことは、高濃度が強く求められるブラック色において顕著である。
【0081】
そこで、上述した本実施形態に係るインクセットを用いて繊維に捺染する場合には、ブラックインクと、マゼンタインク及びシアンインクの少なくとも一方(好ましくは両方)とを重ねて繊維に付着させるようにしてもよい。例えば、スキャン方式のインクジェットプリンタを用いて、ブラックインクと、マゼンタインク及びシアンインクの少なくとも一方とを重ねて繊維に付着させるようにしてもよい。このように、ブラックインクと、マゼンタインク及びシアンインクの少なくとも一方とを重ねて繊維に付着させることにより、繰り返し捺染を行うことなく、染色濃度が高く鮮明なブラック色のインクジェット捺染物を得ることができる。
【0082】
ブラックインクと、マゼンタインク及びシアンインクの少なくとも一方とを重ねて繊維に付着させる場合、ブラックインクの吐出量は、その他のインクの吐出量よりも多いことが好ましい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。なお、実施例においては特に断りがない限り、「部」、「%」、及び「ppm」はいずれも質量基準である。
【0084】
<実施例1>
[インクの調製]
1~10%程度の濃度に調整したC.I.Reactive Blue 176(Na塩)の水溶液を、逆浸透膜精製法にて水酸化リチウム溶液を添加した後、蒸発乾燥することで、Liイオン濃度を約15000ppmに調整したC.I.Reactive Blue 176の乾燥粉末を得た。そして、下記表1に記載の各成分(単位:部)を混合し、40℃に液温を保持した状態で固形分が溶解するまで約1時間撹拌した後、0.45μmのメンブランフィルタ(セルロースアセテート系濾紙、アドバンテック社製)で濾過することにより、試験用のインクを調製した。
【0085】
表1中の略号等は、以下の意味を示す。
RB176…C.I.Reactive Blue 176
RO13…C.I.Reactive Orange 13
RO99…C.I.Reactive Orange 99
RR245…C.I.Reactive Red 245
2PD…2-ピロリドン
EG…エチレングリコール
PG…プロピレングリコール
SC-P1000…ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル
SF440…サーフィノール440(アセチレングリコール界面活性剤)
GXL…プロキセルRTMGXL
THMAM…トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
【0086】
【0087】
[粘度評価]
実施例1のインクの20℃における粘度を、E型粘度計を用いて測定した。結果を下記表2に示す。この粘度の単位はmP・sである。
【0088】
[インク調製時の溶解性評価]
インク調製時におけるRB176の溶解性を評価した。上記表1に記載の各成分を混合し、40℃に液温を保持した状態で固形分が溶解するまで約1時間撹拌することによりインクを得た後、室温で放置し、以下の基準で評価した。結果を下記表2に示す。
(評価基準)
A:7日以上放置しても析出物が観察されない。
B:7日未満では析出物が観察されないが、7日以上放置すると析出物が観察される。
C:3日以上7日未満放置すると析出物が僅かに観察される。
D:3日未満で明らかな析出物が観察される。
【0089】
[低温保存安定性評価]
実施例1のインクの低温保存安定性を評価した。低温保存安定性は、-5℃で3日間保管した後、室温で数時間放置し、以下の基準で評価した。結果を下記表2に示す。
(評価基準)
A:染料の沈降及びインクのゲル化が確認されない。
B:染料の沈降が僅かにあるが、インクのゲル化は確認されない。
C:染料の沈降が相当あるか、又はインクのゲル化が確認される。
【0090】
【0091】
[インクジェット捺染]
アルギン酸ナトリウム、尿素、及び炭酸水素ナトリウムを含有する前処理液を、パッド法にて綿布に付着させた後、乾燥することにより、前処理された綿布を得た。前処理後の綿布は、A4サイズに裁断した。
【0092】
実施例1のインクが充填された容器を産業用インクジェットヘッド評価装置(拡張型塗布装置EV2500;リコー(株)製)に装填し、25℃の環境下、前処理後の綿布に200mm×250mmのベタ柄を印捺した。得られた綿布を60~80℃で乾燥した後、100~103℃で10分間スチーミング処理を行った。得られた綿布を水、95~100℃の沸騰水(10分間)、及び水で順次洗浄した後、乾燥することにより、評価用の捺染された染布を得た。染布をテストサンプルとして用い、下記の評価試験を行った。評価試験において測色が必要な際は、GRETAG-MACBETH社製の測色機(商品名:SpectroEye)を用いた。
【0093】
[染色濃度試験]
染布の反射濃度を上記の測色機で測色してDk値を得た後、以下の基準で染色濃度を評価した。Dk値が大きい方が染色濃度が高いことを意味するため、品質が優れる。結果を下記表3に示す。
(評価基準)
A:Dk値が1.6以上
B:Dk値が1.4以上1.6未満
C:Dk値が1.4未満
【0094】
[吐出安定性試験]
実施例1のインクが充填された容器を上記の評価装置に装填したまま、装置を止めた状態で2日間放置した後、パージを1回行い、前処理後の綿布に200mm×250mmのベタ柄を印捺した。そして、以下の基準で吐出安定性を評価した。結果を下記表3に示す。
(評価基準)
A:最後まで良好に印捺できる。
B:最後まで良好に印捺できるが、印捺画像に僅かに散り及びスジ欠けが確認される。
C:印捺画像の散り及びスジ欠けが激しい。
【0095】
【0096】
表2に示すとおり、実施例1のインクは、インク調製時の染料溶解性が高く、低温安定性にも優れていた。また、表3に示すとおり、実施例1のインクは、高濃度な染色が可能であり、吐出安定性にも優れていた。
【0097】
<実施例2~9、比較例1>
[インクの調製]
1~10%程度の濃度に調整したC.I.Reactive Blue 176(Na塩)の水溶液を、逆浸透膜精製法にて水酸化リチウム溶液を添加した後、蒸発乾燥することで、Liイオン濃度を約15000ppmに調整したC.I.Reactive Blue 176の乾燥粉末を得た。そして、下記表4、5に記載の各成分(単位:部)を混合し、40℃に液温を保持した状態で固形分が溶解するまで約1時間撹拌した後、0.45μmのメンブランフィルタ(セルロースアセテート系濾紙、アドバンテック社製)で濾過することにより、試験用のインクを調製した。なお、表5中の「-」は、その成分を含有しないことを示す。
【0098】
【0099】
【0100】
[粘度評価]
実施例2~9、比較例1の各インクの20℃における粘度を、E型粘度計を用いて測定した。結果を下記表6、7に示す。この粘度の単位はmP・sである。
【0101】
[耐乾燥性評価]
実施例2~9、比較例1の各インクをシャーレに入れ、60℃で4時間保持し、以下の基準で耐乾燥性を評価した。結果を下記表6、7に示す。
(評価基準)
S:析出物が観察されない。
A:僅かに析出物が観察される。
B:明らかな析出物が観察される。
【0102】
[インクジェット捺染]
実施例2~9、比較例1の各インクが充填された容器を産業用インクジェットヘッド評価装置(拡張型塗布装置EV2500;リコー(株)製)に装填し、25℃の環境下、綿布(シルケット綿ブロード、無シルケット綿ニット、又はシルケット綿ニット)に200mm×250mmのベタ柄を印捺した。得られた各綿布を60~80℃で乾燥した後、100~103℃で10分間スチーミング処理を行った。得られた各綿布を水、95~100℃の沸騰水(10分間)、及び水で順次洗浄した後、乾燥することにより、評価用の捺染された染布を得た。各染布をテストサンプルとして用い、下記の評価試験を行った。評価試験において測色が必要な際は、GRETAG-MACBETH社製の測色機(商品名:SpectroEye)を用いた。
【0103】
[染色濃度試験]
各染布の380~730nmにおける反射率Rλを測色し、Kubelka-Munkの式:K/S=(1-Rλ)2/2RλによりK/S値を算出した。そして、各波長におけるK/S値の合計であるΣK/S値を算出し、以下の基準で染色濃度を評価した。ΣK/S値が大きい方が染色濃度が高いことを意味するため、品質が優れる。結果を下記表6、7に示す。
(シルケット綿ブロードの評価基準)
A:ΣK/S値が220以上
B:ΣK/S値が200以上220未満
C:ΣK/S値が190以上200未満
D:ΣK/S値が190未満
(無シルケット綿ニットの評価基準)
A:ΣK/S値が320以上
B:ΣK/S値が300以上320未満
C:ΣK/S値が290以上300未満
D:ΣK/S値が290未満
(シルケット綿ニットの評価基準)
A:ΣK/S値が280以上
B:ΣK/S値が250以上280未満
C:ΣK/S値が220以上250未満
D:ΣK/S値が220未満
【0104】
【0105】
【0106】
表6、7に示すとおり、実施例2~9のインクは、比較例1のインクと比較して同等以上の耐乾燥性を示し、かつ、比較例1のインクよりも染色濃度が高い印捺物を得ることができた。
【0107】
<実施例10~19>
[インクの調製]
下記表8に記載の各成分(単位:部)を混合し、40℃に液温を保持した状態で固形分が溶解するまで約1時間撹拌した後、0.45μmのメンブランフィルタ(セルロースアセテート系濾紙、アドバンテック社製)で濾過することにより、試験用の各インクを調製した。なお、表8中の「-」は、その成分を含有しないことを示す。
【0108】
表8中の略号等は、以下の意味を示す。
RB176…C.I.Reactive Blue 176
RO13…C.I.Reactive Orange 13
RO99…C.I.Reactive Orange 99
RR245…C.I.Reactive Red 245
RB15:1…C.I.Reactive Blue 15:1
RB72…C.I.Reactive Blue 72
RY2…C.I.Reactive Yellow 2
RY95…C.I.Reactive Yellow 95
EG…エチレングリコール
PG…プロピレングリコール
SF440…サーフィノール440(アセチレングリコール界面活性剤)
GXL…プロキセルRTMGXL
THMAM…トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
【0109】
【0110】
[インクジェット捺染]
アルギン酸ナトリウム、尿素、及び炭酸水素ナトリウムを含有する前処理液を、パッド法にて綿布に付着させた後、綿布を乾燥することにより、前処理された綿布を得た。前処理後の綿布は、A4サイズに裁断した。
【0111】
上記[インクの調製]で調製した各インクが充填された容器を産業用インクジェットヘッド評価装置(拡張型塗布装置EV2500;リコー(株)製)に装填し、25℃の環境下、前処理後の綿布に200mm×250mmのベタ柄を下記表9に示す条件にて印捺した。ブラックインクによるベタ柄の印刷条件を100%のインク打ち込み量とみなし、マゼンタインク、シアンインク1、シアンインク2、イエローインクの各インクにおいては、ブラックインクのインク打ち込み量を基準に0~100%の任意の数値にて印刷を行った。得られた綿布を60~80℃で乾燥した後、100~103℃で10分間スチーミング処理を行った。得られた綿布を水、95~100℃の沸騰水(10分間)、及び水で順次洗浄した後、乾燥することにより、評価用の捺染された染布を得た。
【0112】
[染色濃度試験]
上記のようにして得た各染布の反射濃度をGRETAG-MACBETH社製の測色機(商品名SpectroEye)で測色し、Dk値を得た。Dk値が大きい方が、染色濃度が高いことを意味するため品質が優れる。結果を下記表9に示す。
表9中、記号のKはブラックインク、Mはマゼンタインク、C1はシアンインク1、Yはイエローインクをそれぞれ示す。また、各インク記号の後の括弧内に記載した数字は、ブラック100%のインク打ち込み量を100とした場合の打ち込み量を数値化したものであり、60は60%、90は90%を意味する。
【0113】
【0114】
表9に示すとおり、ブラックインクとマゼンタインク又はシアンインク1とを重ね打って得られた実施例10~13の染布は、同一箇所の繰り返し印刷を行うことなく同じく一回の印捺で得られた実施例14の染布と比べて、高いDk値を示した。また、実施例10、11の染布は、ブラックインクとイエローインクとを重ね打って得られた実施例15の染布と比べて、いずれも高いDk値を示した。さらに、ブラックインクとマゼンタインク及びシアンインク1とを重ね打って得られた実施例12、13の染布は、ブラックインクとマゼンタインク及びイエローインクとを重ね打って得られた実施例16、17の染布、及びブラックインクとシアンインク1及びイエローインクとを重ね打った実施例18、19の染布と比べて、いずれも高いDk値を示した。これらの結果は、ブラックインクと、マゼンタインク及びシアンインクの少なくとも一方とを重ねて打つことにより、高いDk値が得られることを示している。
【0115】
<実施例20~28>
[色糊の調製]
実施例10~19と同様にして、ブラックインク、シアンインク1、及びシアンインク2の各インクを調製した。そして、下記表10に記載の各成分(単位:部)を混合し、試験用の色糊を調製した。なお、表10中の「-」は、その成分を含有しないことを示す。
【0116】
【0117】
[スクリーン捺染]
上記[色糊の調製]で調製した各色糊を用いて、25℃の環境下、綿布(シルケット綿ブロード、無シルケット綿ニット、又はシルケット綿ニット)にスクリーン印捺した。得られた綿布を60~80℃で乾燥した後、100~103℃で10分間スチーミング処理を行った。得られた綿布を水、95~100℃の沸騰水(10分間)、及び水で順次洗浄した後、乾燥することにより、評価用の捺染された染布を得た。
【0118】
[染色濃度試験]
上記のようにして得た各染布の反射濃度をGRETAG-MACBETH社製の測色機(商品名SpectroEye)で測色し、Dk値を得た。Dk値が大きい方が、染色濃度が高いことを意味するため品質が優れる。結果を下記表11に示す。
【0119】
【0120】
表11に示すとおり、ブラックインクとシアンインク1とを混合した色糊1、又はブラックインクとシアンインク2とを混合した色糊2を用いて捺染した実施例20~25の染布は、シアンインクを混合していない色糊3を用いて捺染した実施例26~28の染布と比べて、高いDk値を示した。これらの結果は、ブラックインクとシアンインクとを重ねて繊維に付着させることにより、高いDk値が得られることを示している。