(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】層間間隔の拡大により飛沫耐性を向上させた多層構造体及びそれから形成された物品
(51)【国際特許分類】
A41D 31/00 20190101AFI20220111BHJP
B32B 3/18 20060101ALI20220111BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220111BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20220111BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A41D31/00 502E
B32B3/18
B32B5/26
A41D13/12 109
A41D13/11 Z
(21)【出願番号】P 2018554502
(86)(22)【出願日】2017-04-11
(86)【国際出願番号】 US2017026908
(87)【国際公開番号】W WO2017184378
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-03-24
(32)【優先日】2016-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518174101
【氏名又は名称】オーアンドエム ハリヤード インターナショナル アンリミテッド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポトニス、プラサド・シュリクリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ、クリステナ
(72)【発明者】
【氏名】シュタインドルフ、エリック・シー
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特許第4510834(JP,B2)
【文献】実開昭58-033059(JP,U)
【文献】米国特許第05705251(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0065658(US,A1)
【文献】特表2014-501157(JP,A)
【文献】特開平11-104255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/04
B32B 3/18
B32B 5/26
A41D 13/11
A41D 13/12
A41D 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐飛沫性の多層構造体であって、
外側を向いた表面と、内側を向いた表面とを有する材料の外層と、
外側を向いた表面と、内側を向いた表面とを有する材料の内層と、
前記材料の外層と前記材料の内層との間に配置された、スパンボンドウェブである追加の材料の層と、
前記材料の内層と前記追加の材料の層との間に配置された、メルトブローンウェブの層と、
前記多層構造体内の
前記追加の材料の層の外側を向いた表面上に配置された第1の複数の3次元スペーサとを含み、
前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層と前記
追加の材料の層との間の空間を画定し、
前記空間は、前記第1の複数の3次元スペーサの最大高さと少なくとも同じ距離だけ延びており、前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層に接触する流体に関連するエネルギーを吸収するのを助け、
第2の複数の3次元スペーサをさらに含み、
前記第2の複数の3次元スペーサは、前記材料の内層の前記内側を向いた表面に複数のドットの形態で分散配置され
、アクリルバインダのなかに封入された相変化材料を含むことを特徴とする多層構造体。
【請求項2】
耐飛沫性の多層構造体であって、
外側を向いた表面と、内側を向いた表面とを有する材料の外層と、
外側を向いた表面と、内側を向いた表面とを有する材料の内層と、
前記材料の内層と前記材料の外層との間に配置された、メルトブローンウェブの層と、
前記多層構造体内の前記材料の外層の内側を向いた表面上に配置された第1の複数の3次元スペーサとを含み、
前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層と前記メルトブローンウェブの層との間の空間を画定し、
前記空間は、前記第1の複数の3次元スペーサの最大高さと少なくとも同じ距離だけ延びており、前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層に接触する流体に関連するエネルギーを吸収するのを助け、
第2の複数の3次元スペーサをさらに含み、
前記第2の複数の3次元スペーサは、前記材料の内層の前記内側を向いた表面に複数のドットの形態で分散配置され、アクリルバインダのなかに封入された相変化材料を含むことを特徴とする多層構造体。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の多層構造体であって、
前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層に衝突する流体の流れを方向転換するための第1の複数のチャネルを画定し、
前記第1の複数のチャネルは、前記流体が、前記第1の複数のチャネルを通る前記流体の接触点から横方向に向けられるような向きを有することを特徴とする多層構造体。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか一項に記載の多層構造体であって、
前記第1の複数の3次元スペーサはパターンで配置されることを特徴とする多層構造体。
【請求項5】
請求項
4に記載の多層構造体であって、
前記パターンは連続的または不連続的であることを特徴とする多層構造体。
【請求項6】
請求項
5に記載の多層構造体であって、
前記パターンは複数のドットを含み、前記ドットは一連の列及び一連の行をなすように材料の層上に配置されることを特徴とする多層構造体。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の多層構造体であって、
前記第1の複数の3次元スペーサは、バインダ、インク、接着剤、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする多層構造体。
【請求項8】
請求項
7に記載の多層構造体であって、
前記第1の複数の3次元スペーサは、アクリルバインダを含むことを特徴とする多層構造体。
【請求項9】
請求項
7に記載の多層構造体であって、
前記第1の複数の3次元スペーサは、インクを含み、前記インクは、弾性または非弾性の膨張可能なインクであることを特徴とする多層構造体。
【請求項10】
請求項
7に記載の多層構造体であって、
前記第1の複数の3次元スペーサは、バインダ、インク、接着剤、またはそれらの組み合わせのなかに含まれる封入された機能性添加剤をさらに含み、
前記機能性添加剤は、相変化材料、芳香剤、吸収性材料、超吸収性材料、抗菌剤、治療剤、局所軟膏、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする多層構造体。
【請求項11】
請求項
10に記載の多層構造体であって、
前記機能性添加剤は、前記多層構造体のなかに存在する前記第1の複数の3次元スペーサの乾燥重量に基づいて約0.25重量%~約70重量%の範囲の量で存在することを特徴とする多層構造体。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の多層構造体であって、
前記第1の複数の3次元スペーサは疎水性のアクリルバインダを
含むことを特徴とする多層構造体。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の多層構造体であって、
前記材料の外層及び前記材料の内層はそれぞれスパンボンドウェブを含むことを特徴とする多層構造体。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の多層構造体から形成される物品であって、
前記物品は、フェイスマスク、外科用ガウン、外科用ドレープ、外科用保護フード、またはブーファンキャップのいずれかであることを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年4月21日に出願された米国仮特許出願第62/325,712号を基礎とする優先権及び利益を主張し、当該出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、層間間隔の増大により耐飛沫性の向上させた多層構造体及びそれから形成された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用ガウン、顔面マスクや、外科用ドレープ、ブーファンキャップなどのその他の個人用保護具(PPE)の使用は、病気の広がりを防ぐのに役立つ医療業界で推奨される方法である。例えば、医療提供者が着用したフェイスマスクは、着用者から吐出された空気を濾過して、環境中に放出される有害生物または他の汚染物質の数を減らすことによって、患者の感染を減少させるのに役立つ。
【0003】
これは、開いた創傷部位の存在のために患者が感染に非常に影響を受けやすくなる外科手術中に特に重要である。同様に、呼吸器感染症の患者は、顔面マスクを使用して、排出される病原菌を濾過して含めることによって病気の広がりを防ぐことができる。さらに、顔面マスクは、吸入する空気から浮遊汚染物質や微生物を濾過することによって医療従事者を保護する。
【0004】
肝炎及びエイズのようないくつかの疾患は、感染した血液または他の体液が他の人の粘膜(すなわち、目、鼻、口など)と接触することによって広がることがある。医療業界は、汚染物として付着した体液との接触の可能性を低減させるための具体的な行為の実行を推奨している。そのような行為の1つは、体液の飛沫からの浸透に抵抗性のある顔面マスク、外科用ガウン、外科用ドレープ、ブーファンキャップ、及び他の同様のPPEを使用することである。
【0005】
このようなPPEを形成するために使用される材料は、いくつかの層から構成することができる。着用者の皮膚に最も近い位置にある層は、典型的には内層と呼ばれる。着用者の皮膚から最も遠い層は外層と呼ばれる。外層と内層との間に追加の1つまたは複数の材料の層を配置することができる。一般的には、これらの追加の層の1つは、マイクロファイバーファイバーグラス層またはエレクトレット処理されたメルトブローン層のような濾過層である。
【0006】
上述したように、顔面マスク、外科用ガウン、外科用ドレープ、ブーファンキャップ、及び他の同様のPPEは、流体の飛沫の浸透に対する耐性を有し、血液または他の体液中に見出される病原体が、そのようなPPEのユーザの皮膚に移ることができないように設計することができる。米国材料試験協会(ASTM)は、3つの圧力のレベルでの吹きつけによって物品の飛沫浸透抵抗能力を評価する試験方法F1862-13「医療用フェイスマスクの人工血液の浸透抵抗率の標準試験方法(一定体積を既知の速度で水平に吹きつけ)」(2013)を開発した。この方法は、医療用フェイスマスクの性能基準のセットを特定するASTM F2100-11「医療用フェイスマスクで使用される材料の性能に関する標準仕様」(2011)で参照されている。ASTM F2100-11で最も厳しいレベルのテストであるレベル3の性能を達成するためには、フェイスマスクが、ASTM F1862-13の手順に従った160mmHgで2ミリリットルの人工血液(Johnson,Moen & Co.,2505 Northridge Lane NE、Rochester,MN55906から入手可能)の吹きつけに対する耐性を有していなければならない。
【0007】
PPE物品(例えば、顔面マスクなど)の飛沫耐性は、一般的には、物品に使用される構造体の1つ以上の層が流体の浸透に抵抗する能力、及び/または流体の飛沫のエネルギーの後続の層への移動を減少させる能力、及び/またはそれらの飛沫のエネルギーを吸収する能力の関数である。飛沫耐性を改善するための典型的なアプローチは、構造体の構築においてより厚い材料または追加の層を使用することである。しかしながら、これらの解決策は、多層構造体の耐熱性に悪影響を及ぼし、構造体のコストを増大させ、構造体の重量を増加させ、構造体の多孔性を低下させ、着用者に不快感を与える可能性がある。
【0008】
フェイスマスク、外科用ガウン、外科用ドレープ、ブーファンキャップ、または他の類似のPPEを形成するために使用される材料または構造の飛沫耐性を改善するためのさらに別のアプローチは、多孔質で高ロフトの繊維材料の層を組み込むことである。このタイプの材料は、層が流体飛沫の衝撃のエネルギーを吸収または散逸するという点で有利である。しかし、流体がこの高ロフト材料を飽和させ、それにより将来の流体飛沫のエネルギーを吸収する効果を低下させることが多い。さらに、この高ロフト材料から流体を絞り出すことができ、多層構造体の圧縮時に次の層を介して流体を移送することができる。
【0009】
したがって、ユーザに不快感を与えることなく改善された飛沫耐性を有する構造物及びそこから形成される物品に対するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第4,340,563号明細書
【文献】米国特許第3,692,618号明細書
【文献】米国特許第3,802,817号明細書
【文献】米国特許第3,338,992号明細書
【文献】米国特許第3,341,394号明細書
【文献】米国特許第3,502,763号明細書
【文献】米国特許第3,542,615号明細書
【文献】米国特許第3,849,241号明細書
【文献】米国特許第4,041,203号明細書
【文献】米国特許第5,169,706号明細書
【文献】米国特許第5,145,727号明細書
【文献】米国特許第5,178,931号明細書
【文献】米国特許第5,188,885号明細書
【文献】米国特許第4,100,324号明細書
【文献】米国特許第3,486,168号明細書
【文献】米国特許第4,640,810号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態によれば、本発明は、耐飛沫性の多層構造体を提供する。前記多層構造体は、外側を向いた表面と、内側を向いた表面とを有する材料の外層と、外側を向いた表面と、内側を向いた表面とを有する材料の内層と、前記多層構造体内の表面上に配置された第1の複数の3次元スペーサとを含む。前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層と前記材料の内層との間の空間を画定し、前記空間は、前記第1の複数の3次元スペーサの最大高さと少なくとも同じ距離だけ延びており、前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層に接触する流体に関連するエネルギーを吸収するのを助ける。
【0012】
1つの特定の実施形態では、前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層に衝突する流体の流れを方向転換するための第1の複数のチャネルを画定し、
前記第1の複数のチャネルは、前記流体が、前記第1の複数のチャネルを通る前記流体の接触点から横方向に向けられるような向きを有する。
【0013】
別の実施形態では、前記第1の複数の3次元スペーサはパターンで配置される。前記パターンは連続的または不連続的であってもよい。例えば、前記パターンは複数のドットを含み得、前記ドットは一連の列及び一連の行をなすように材料の層上に配置される。
【0014】
さらに別の実施形態では、前記第1の複数の3次元スペーサは、バインダ、インク、接着剤、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、前記第1の複数の3次元スペーサは、アクリルバインダか、弾性または非弾性の膨張可能なインクであるインクを含み得る。さらに、前記第1の複数の3次元スペーサは、バインダ、インク、接着剤、またはそれらの組み合わせのなかに含まれる封入された機能性添加剤をさらに含むことができ、前記機能性添加剤は、相変化材料、芳香剤、吸収性材料、超吸収性材料、抗菌剤、治療剤、局所軟膏、またはそれらの組み合わせを含み得る。
さらに、前記機能性添加剤は、前記多層構造体のなかに存在する前記第1の複数の3次元スペーサの乾燥重量に基づいて約0.25重量%~約70重量%の範囲の量で存在し得る。
【0015】
さらに別の実施形態では、前記多層構造体は、前記材料の外層と前記材料の内層との間に配置された追加の材料の層をさらに含むことができる。
【0016】
さらに、前記第1の複数の3次元スペーサは、前記追加の材料の層の外側を向いた表面上に配置され得る。また、前記追加の材料の層は、前記材料の外層に隣接して配置されたスパンボンドウェブであることができ、前記多層構造体は、メルトブローンウェブをさらに含み、メルトブローンウェブは、前記材料の内層に隣接して配置され得る。
【0017】
別の実施形態では、前記多層構造体は、第2の複数の3次元スペーサをさらに含むことができ、前記第2の複数の3次元スペーサは、前記材料の内層の内側を向いた表面に配置され、前記第1の複数の3次元スペーサはアクリルバインダを含むことができ、前記第2の複数の3次元スペーサはアクリルバインダのなかに封入された相変化材料を含むことができる。
【0018】
さらに別の実施形態では、前記追加の材料の層は、メルトブローンウェブである。前記追加の材料の層は、メルトブローンウェブである場合、前記第1の複数の3次元スペーサは、前記材料の外層の内側を向いた表面に配置され得るか、または前記メルトブローンウェブの内側を向いた表面に配置され得る。
【0019】
いずれのシナリオにおいても、前記多層構造体は、第2の複数の3次元スペーサを含むことができ、前記第2の複数の3次元スペーサは、前記材料の内層の内側を向いた表面に配置されることができ、前記第1の複数の3次元スペーサはアクリルバインダを含み、前記第2の複数の3次元スペーサはアクリルバインダのなかに封入された相変化材料を含むことができる。
【0020】
さらに別の実施形態では、前記材料の外層及び前記材料の内層はそれぞれスパンボンドウェブを含むことができる。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明は、上述の多層構造体から形成される、フェイスマスク、外科用ガウン、外科用ドレープ、外科用保護フード/帽子、またはブーファンキャップなどの物品を想定している。
【0022】
本発明のこれらの及び他の特徴、態様、及び効果は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲の請求項の記載を参照することにより、よりよく理解されるであろう。添付の図面は、本出願の一部を構成し、本発明の実施形態を示し、明細書の記載とともに本発明の原理を示す役割を果たす。
【0023】
当業者に対して本発明の最良の実施の形態を含む本発明の完全かつ可能な開示が、本明細書において添付図面を参照して記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明が想定する多層構造体から形成され得る本体部分を有するフェイスマスクの斜視図である。
【
図2】
図2は、フェイスマスクがユーザの頭部に取り付けられたときの本体部分を有するフェイスマスクの斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明が想定する多層構造体から形成することができる外科用ガウンの正面図である。
【
図4】
図4は、複数の3次元スペーサが材料の表面に適用されている、本発明の多層構造体に使用することができる材料の層の斜視図である。
【
図5】
図5は、多層構造体の外側を向いた表面における血液などの体液の付着の前の、本発明の多層構造体の2つの層の断面図である。
【
図6】
図6は、多層構造体の外側を向いた表面における血液などの体液の付着の間の、本発明の多層構造体の2つの層の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明が想定する3次元スペーサを含まない多層構造体の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態による多層構造体の層の1つに適用された3次元スペーサを含む例示的な多層構造体の断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の別の実施形態による多層構造体の層の1つに適用された3次元スペーサを含む例示的な多層構造体の断面図である。
【
図10】
図10は、本発明のさらに別の実施形態による多層構造体の2つの層に適用された3次元スペーサを含む例示的な多層構造体の断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態による多層構造体の2つの層に適用された3次元スペーサを含む例示的な多層構造体の断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態による多層構造体の2つの層に適用された3次元スペーサを含む例示的な多層構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書及び図面において同一の参照符合が繰り返し使用される場合、その符合は本開示の同一のまたは類似の特徴若しくは要素を表すことが意図されている。
【0026】
以下、本発明の様々な実施形態を詳細に参照し、その1つ以上の例を以下に示す。各実施形態は、本発明の説明のために提供され、本発明を限定するものではない。実際に、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明に様々な変更及び変形がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として図示または説明された特徴は、別の実施形態とともに用いられて、さらに別の実施形態にできることを理解されたい。本出願の目的のために、類似の特徴は図面間で類似の番号で表される。
【0027】
一般に、本発明は、耐飛沫性多層構造体に関する。多層構造体の飛沫耐性は、多層構造体の隣接する層間の強制的な分離の状態、例えば第1の材料層の内側を向いた表面(すなわち、ユーザの皮膚側を向いた層)と、第2の材料層の外側を向いた表面(すなわち、ユーザの皮膚側に向いていない層)との間の強制的な分離の状態によって向上する。2つの隣接する材料層の間の強制的な分離は、多層構造体の隣接する層の間に配置された複数の3次元スペーサの存在の結果であり、複数の3次元スペーサは、多層構造体の隣接する層の一方または両方に配置されて、複数の3次元スペーサの最大高さと少なくとも同じ大きさの距離だけ2つの層を互いに分離する。3次元スペーサは、連続的または不連続的なパターンで材料の層上に存在してよく、またはランダムな形で材料の層上に存在してよい。多層構造体の2つの層の間における複数の3次元スペーサの存在の結果として、層の間に複数のチャネルを形成して層間の間隔を広げ、一旦流体が多層構造体と接触すると、流体の横方向の広がりを促進することによって、多層構造体の飛沫耐性及び流体バリア能力を高めることができる。さらに、3次元スペーサによって与えられる剛性によって、流体の付着が発生した場合に、エネルギーの横方向散逸を容易化して、多層構造体の層の圧縮を防止することができる。このような配置は、流体が多層構造体全体に浸透することを防止し、多層構造体がPPEに形成されるときにユーザの健康を危険にさらす可能性がある。さらに、3次元スペーサの存在により、十分な飛沫耐性を有する多層構造体を形成するのに必要な材料の層の数を減らすことができる。同様に、3次元スペーサの存在により、PPE物品を形成するためにより低い基本重量を有する材料の使用が可能となり、これはユーザの快適さを増加させ得る。具体的には、材料の1つ以上の層の坪量を減少または除去させると、熱抵抗を低減することができ、多層構造体の層の前後での圧力降下を低下させることができ、また多層構造体の全体重量を減少させて通気性及び快適性を高めることができる。
【0028】
これに代えて、及び/またはこれに加えて、多層構造体のフィルタ材料構成要素または濾過層は、多層構造体の飛沫耐性及び流体バリア能力を利用するように改変され得ることも想定される。フェイスマスクなどの物品のための従来の多層構造体に使用されるメルトブローン布(及び/または他の濾過媒体)は、多層構造体の一部として、液体による浸透に対する抵抗がより大きくなるように選択される。結果として、メルトブローン布(及び/または他の濾過媒体)は、不必要に高い坪量及び/または不必要に高いレベルの圧力低下を有する可能性がある。本発明の一態様によれば、多層構造体の有利な飛沫耐性及び流体バリア能力により、より低い坪量及び/またはより低いレベルの圧力降下を有するメルトブローン布(及び/または他の濾過媒体)の使用が可能になる。さらに、メルトブローン生地(及び/または他の濾過媒体)のより大きい「通気性」により、相変化材料と呼吸サイクル中に交換される空気との間のより効率的なエネルギー伝達が得られる。このことは、少なくとも、フェイスマスクのような物品において相変化材料を経済的かつ効率的に使用することが可能となることから重要であると考えられている。結果として、エネルギー移動の閾値レベルを達成するために必要な相変化材料がより少なくて済むが、このことは、使い捨て物品中の高価な成分の量を減少させ、そのような使い捨て物品の商業的生存性に非常に大きな影響を及ぼす可能性があることから重要である。この改変はまた、濾過効率、保護及び/またはユーザの快適性を維持、またはさらに向上させながら、フェイスマスク領域はより小さい、実用的で経済的なフェイスマスクの製造を可能にするので重要である。より少量またはより少ない数の材料の使用及び/またはマスクサイズの減少の結果として、使い捨て物品のコストを低減することができ、これはこのような使い捨て物品の商業的な実現可能性に非常に大きな影響を及ぼし得る。
【0029】
図1及び
図2は、本発明において想定された耐飛沫性の多層構造体から形成され得るフェイスマスク100を示す。フェイスマスク100は、通常の呼吸によって交換される空気がフェイスマスク100の本体部分102を通過するように、口の上及びユーザ108の鼻の少なくとも一部の上に配置されるように構成された本体部分102を含む。しかし、本体部分102は、限定しないが、フラットハーフマスク、プリーツフェイスマスク、コーンマスク、フラット折り畳み個人用呼吸装置、ダックビルスタイルマスク、台形マスクなどの様々なスタイル及び幾何学的形状であってもよいことを理解されたい。本体部分102は、1つ以上の水平なプリーツ(ひだ)付き、1つ以上の垂直なプリーツ付き、またはプリーツなしの形態に構成することができ、そのような設計は、当技術分野で一般的に知られている。したがって、フェイスマスク100は、ユーザ108の口及び鼻を環境から隔離する。フェイスマスク100は、ユーザ108の頭部(及びユーザによって装着された場合にはヘアキャップ106)の周りに巻かれ、互いに接続された1対のタイストラップ104によってユーザ108に取り付けられる。しかし、本発明の様々な例示的な実施形態によって、他のタイプの締結装置を使用することができることを理解されたい。例えば、タイストラップ104の代わりに、フェイスマスク100は、イヤーループ、頭の周りに巻かれる弾性バンド、または面ファスナ(フックアンドループタイプのファスナ構成)によってユーザ108に取り付けられてもよく、或いはフェイスマスク100は、弾性バンドによってユーザ108の頭に巻かれる単一部品であてもよい。フェイスマスク100は、ヘアキャップ106に直接取り付けられてもよい。
【0030】
さらに、フェイスマスク100の構成は、様々な例示的な実施形態によって異なっていてもよい。これに関して、フェイスマスク100は、ユーザの目、髪、鼻、喉、及び口の両方を覆うように形成されてもよい。このように、本発明は、ユーザ108の鼻及び口だけを覆うフェイスマスク100に限定されない。
【0031】
一方、
図3は、本発明によって想定されている耐飛沫性の多層構造体から形成することができる外科用ガウン200の正面図を示す。ガウン200は、スリーブ208を本体210に連結するカラー202、袖口204、及び肩継ぎ目206を含み得る。本発明の耐飛沫性の多層構造体から形成することができる他の例示的な物品としては、外科用ドレープまたは耐飛沫特性が望まれる任意の他のPPE等が挙げられる。さらに、本発明において想定されている前述のフェイスマスク、外科用ガウン、外科用ドレープ、外科用保護フード/帽子、ブーファンキャップなどを形成するために使用される多層構造体の材料の複数の層は、接着結合、熱点結合、または超音波結合を含む様々な方法によって接合され得る。
【0032】
本発明の耐飛沫性の多層構造体の種々の構成要素は、以下により詳細に述べる。
【0033】
I.複数の3次元スペーサ
本発明の耐飛沫性多層構造体は、1つ以上の外側を向いた表面(すなわち、ユーザの皮膚を向いていない側の表面)または内側を向いた表面(すなわち、ユーザの皮膚を向いた側の表面)の上に配置された複数の3次元スペーサを含む。複数の3次元スペーサは、多層構造体を形成するために使用される材料の複数の層(そのような材料の複数の層については、以下でより詳細に論じる)のうちの1つに適用されるときに3次元スペーサを形成することができる、バインダ、インク、ポリマー、またはそれらの組み合わせ、または任意の他の成分を含む組成物から形成することができる。本発明において想定される3次元スペーサを形成するのに適合し得るバインダの具体例としては、弾性パフ(膨張性)印刷インキ、非弾性パフ(膨張性)印刷インキ、アクリルバインダ、ポリウレタンバインダー、熱可塑性材料(例えば、低温ポリオレフィンホットメルト接着剤またはのり;印刷インク、または任意の他の適切なバインダ、インク、接着剤、またはそれらの組み合わせ)等が挙げられる。そのようなバインダは、LubrizolまたはH.B.Fullerから入手することができる。さらに、バインダは水溶性であってもよい。必須ではないが、一実施形態では、バインダ、インク、接着剤などが疎水性であり得、この場合、その疎水性が流体の次の層への浸透を防止することにより飛沫耐性を高めることができる。
【0034】
特定の一実施形態では、3次元スペーサは、熱活性化可能な膨張性インクから形成することができ、そのようなインクの例としては、Polytex Environmental Inks(Bronx,NY)から入手できるAQUAPUFF(商標)インクが挙げられる。他の市販のインクとしては、East Color and Chemical Company(Greenville,SC)製、International Coatings Company(Cerritos,CA)製、Dongguan CityHaiya Printing Material Company(中国)製、Atlas Screen Supply Company(Schiller Park,IL)製、NEHOC Australia Pty, Limited(オーストラリア)製、INX International Ink Corporation(Schaumburg,IL)製のものなどが挙げられる。そのようなインクは、熱にさらされたときに反応して、インクを3次元構造に膨張または「パフ」を生じさせる膨張性インクである。インクは、当業界では発泡剤として知られている添加剤を含むことができ、加熱すると物理的または化学的変化を受けて気体生成物を形成する化学物質を含むことができる。このような添加剤としては、EXPANCEL(商標)461DU Microsphere(Expancelが販売)、Unicell OH(OMYAが販売)、Genitron LE(Acrolが販売)、または他の気体封入熱可塑性ミクロスフェア等が挙げられる。そのようなインクの本発明の多層構造体の1つ以上の層上への印刷は、オフライン印刷工程のようなプロセスの多くの段階で、または物品組立工程の間にオンラインで行うことができる。さらに、インクを、1つのプロセスステップで印刷し、後続の下流のステップで熱活性化によって膨張させることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、3次元スペーサは、任意の量の吸湿ポリマーを含むことができる。ポリマーは、3次元構造スペーサ中に所望の量で存在することができる。例えば、いくつかの態様では、3次元スペーサは、例えば約1重量%まで、約5重量%まで、または約10重量%までの吸湿性ポリマーを含むことができる。適切な吸湿性ポリマーの例としては、限定しないが、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、3次元スペーサは任意のエラストマーポリマーを含むことができる。エラストマーポリマーは、発泡構造を弾力性にすることができ、スポンジのように水を捕捉することによって吸湿性を助けることができる。さらに、エラストマーポリマーは、3次元スペーサに弾力性または可撓性を加えることができる。エラストマーポリマー成分は、所望の寸法変化特性を達成するのに有効な量で存在し得る。例えば、3次元スペーサは、改善された特性を与えるために、例えば約1重量%まで、約5重量%まで、または約10重量%以上までのエラストマーポリマーを含むことができる。適切なエラストマーポリマーの例としては、限定しないが、熱可塑性ポリウレタン、オレフィン性エラストマーポリマー(Vistamaxx(登録商標))、ポリ(エーテル-アミド)ブロックコポリマー、熱可塑性ゴム(例えば未架橋ポリオレフィン)、スチレン-ブタジエンコポリマー、シリコーンゴム、ニトリルゴム等の合成ゴム、スチレン-イソプレンコポリマー、スチレン-エチレンブチレンコポリマー、ブチルゴム、ナイロンコポリマー、セグメント化ポリウレタンを含むスパンデックス繊維、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0037】
さらに、接着促進剤を3次元スペーサに加えることができる。例えば、Noveon,Inc.(Cleveland,Ohio)から販売されているCarboset 514Hは、アンモニア水中で提供されるアクリルコロイド分散ポリマーであり、乾燥させて透明で耐水性の非粘着性の熱可塑性フィルムにすることができる。そのような接着促進剤は、3次元スペーサが適用される材料の層への3次元スペーサの取り付けを容易にする。
【0038】
さらに、3次元スペーサは、着色剤(例えば、顔料または染料)、溶媒、及び任意の他の所望の成分を含有することができる。一般的には、顔料は、水または溶媒に溶解しない無機または有機粒子をベースとする着色剤を指す。通常、顔料は水中にエマルジョンまたは懸濁液を形成する。他方、染料は、一般的に、水または溶剤に可溶性の着色剤を意味する。顔料または染料は、スペーサが塗布された材料の層に形成された後の乾燥重量基準で約0.25重量%~約40重量%(例えば、約0.5重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%)の範囲の量が3次元スペーサ中に存在し得る。
【0039】
適切な有機顔料としては、ダイアリライドイエローAAOT(例えば、ピグメントイエロー14 CI番号21095)、ダイアルリドイエローAAOA(例えば、ピグメントイエロー12 CI番号21090)、ハンザイエロー、CIピグメントイエロー74、フタロシアニンブルー(例えば、ピグメントブルー15)、リソールレッド(例えば、ピグメントレッド52:1 CI番号15860:1)、トルイジンレッド(例えば、ピグメントレッド22 CI番号12315)、ジオキサジンバイオレット(例えば、ピグメントバイオレット23 CI番号51319)、フタロシアニングリーン(例えば、ピグメントグリーン7 CI番号74260)、フタロシアニンブルー(例えば、ピグメントブルー15 CI番号74160)、及びナフトエ酸レッド(例えば、ピグメントレッド48:2 CI番号15865:2)等が挙げられる。適切な無機顔料としては、二酸化チタン(例えば、ピグメントホワイト6 CI番号77891)、カーボンブラック(例えば、ピグメントブラック7 CI番号77266)、酸化鉄(例えば、赤色、黄色、及び褐色)、酸化鉄第二鉄(例えば、ピグメントブラック11 CI番号77499)、酸化クロム(例えば、緑色)、及びフェロシアン化アンモニウムフェロシアン化物(例えば、青色)等が挙げられる。
【0040】
使用することができる適切な染料としては、例えば、酸性染料、及び直接染料を含むスルホン化染料等が挙げられる。他の好適な染料としては、アゾ染料(例えば、ソルベントイエロー14、分散イエロー23及びメタニルイエロー)、アントラキノン系染料(例えば、ソルベントレッド111、分散ブルー1、ソルベントブルー56、ソルベントオレンジ3)、キサンテン染料(例えば、ソルベントグリーン4、アシッドレッド52、ベーシックレッド1、及びソルベントオレンジ63)、及びアジン染料(例えば、ジェットブラック)等が挙げられる。
【0041】
3次元スペーサは、本発明の耐飛沫性多層構造体に存在する任意の材料層の外側を向いた表面または内側を向いた表面に適用することができる。スペーサを適用するために、インク、バインダまたはポリマー組成物は、一般的に、水または別の低粘度キャリアに分散または溶解される。溶媒として水を使用することに加えて、使用され得る例示的な溶媒としては、例えばポリアミド、シェラック、ニトロセルロース及びスチレンマレイン酸などの一般的な種類のバインダを有する脂肪族炭化水素を挙げることができる。一般的に、溶剤ベースの処理剤には、非触媒性のブロックウレタン樹脂が使用され、これは一般に、従来のフレキソ印刷用バインダ(スチレン-マレイン酸、ロジン-マレイン酸、及びアクリル酸溶液など)より優れた耐久性を示す。望ましい溶媒ブレンドには、(i)酢酸エチル、酢酸N-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸N-ブチル、及びそれらの混合物といった種々なアセテート;(ii)エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノーマルプロピルアルコール、及びそれらの混合物を含む種々のアルコール;及び(iii)EKTASOLVE(商標)、EP(エチレングリコールモノプロピルエーテル)、EB(エチレングリコールモノブチルエーテル)、DM(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、DP(ジエチレングリコールモノプロピルエーテル)及びPM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を含むグリコールエーテルが含まれ、これらはEastman Chemical(TennのKingsport)から入手することができる。使用され得る他のグリコールはDow Chemical(Midland,Mich)から入手可能なDOWANOL(商標)である。望ましい溶媒ブレンドは、約50%~約75%のグリコールエーテル、約25%~約35%の酢酸N-プロピル、及び約15%~約25%の酢酸ブチルのブレンドであり得る。
【0042】
使用され得る適切な水ベースの3次元スペーサは、エマルジョンをさらに含むことができ、そのエマルジョンは、水-アンモニア中で安定化させることができ、共溶媒としてアルコール、グリコールまたはグリコールエーテルをさらに含み得る。一般に、有機溶媒(約7重量%以下)を水ベースの処理剤に添加することができ、具体的には、乾燥を早めるため、及び湿潤を助けるためにアルコール類、例えばプロパン-2-オールを添加することができ、乾燥を遅くするためにグリコール類、例えばモノプロピレングリコールを添加することができ、フィルム形成を助けるためにグリコールエーテル類、例えばジプロピルグリコールモノメチルエーテルを添加することができる。そのような溶媒は、様々な会社から販売されている汎用化学品であってよい。一般に、水ベースの処理剤には、自己架橋性アクリルコポリマーエマルジョンが含まれ、これはアクリル溶液及び分散コポリマーのような従来の非架橋バインダより優れた耐久性を示し得る。熱活性化可能で膨張可能な処理剤は、溶媒及び顔料の他に、結合剤を含んでいてもよい。バインダは、それが適用されている材料層の上に3次元スペーサを形成するために使用される組成物を安定化させるのを助ける。
【0043】
さらに、1つ以上のカプセル化された機能性添加剤を、上述のバインダ、接着剤、またはインクの1つの中で組み合わせて、その後、本発明の多層構造体の1つ以上の層に適用して、多層構造体のユーザに付加的な利益を与えることができる。機能性添加剤は、マイクロカプセル封入された当該機能性添加剤を粉砕すると、その封入剤から放出されるように構成でき、粉砕は、本発明の物品がその包装から開かれたり、展開等されたとき、または本発明の物品が流体で濡れたときに生ずる。例えば、複数の3次元スペーサは、冷却を提供する相変化材料(PCM)、抗菌保護を提供する抗菌剤、臭気制御のための芳香剤、スキンケア用局所軟膏、特定の治療を可能にするための治療薬、水分または臭気制御のための活性炭のような吸収性材料、超吸収性材料、またはPPEとして使用される物品に有用であり得る任意の他の添加剤を含むことができる。例えば、芳香剤をマイクロカプセル中にカプセル化し、これをバインダに組み込んで本発明の3次元スペーサを形成することができ、この場合、3次元スペーサを含有する物品が濡れると、芳香剤を含むマイクロカプセルの「粉砕」または「崩壊」により、香りのマスクか、香りの放出が生じ、この香りに関する変化は、例えば物品または材料層が飛沫を受けていることを示す指標として使用され得る。別の実施形態では、超吸収性材料をバインダに組み込んで本発明の3次元スペーサを形成することができ、この3次元スペーサを含む物品を濡らすと、超吸収性材料が活性化して、液体の付着物を吸収するのを助けることができる。抗微生物剤、芳香剤、局所軟膏、または治療剤を含有するマイクロカプセルの場合、そのような添加剤を活性化するために「粉砕」または「崩壊」が必要となり得るが、
相変化材料である機能性添加剤、吸収性材料、または超吸収性材料を含有するマイクロカプセルの場合は、「粉砕」または「崩壊」は必要ないことを理解されたい。
【0044】
利用される特定の封入された機能性添加剤とは無関係に、機能性添加剤は、より長時間にわたって機能的な永続性を提供するように、または異なる頻度の時間にわたって上述した機能性のタイムリリースを提供するようにカプセル化することができる。このような添加剤は、スペーサが適用された材料の層に形成された後の乾燥重量で約0.25重量%~約70重量%(例えば約0.5重量%~約60重量%、または例えば約1重量%~約60重量%)の範囲の量で3次元スペーサ中に存在することができる。
【0045】
さらに、複数の3次元スペーサの特定の組成物、本発明の多層構造体の材料の1つ以上の層に、任意の適切なパターンで、またはランダムに適用することができる。3次元スペーサがパターンで適用される場合、パターンは連続的または不連続的であり得る。
図4に示す1つの特定の実施形態では、3次元スペーサ302は、半円形及び最大高さSを有する一連のドットの形態で多層構造の層300に適用されて、ドットは一連のオフセット列304と一連のオフセット行306との間に配置され、その間にチャネル314を形成し得る。他の実施形態では、3次元スペーサが本発明の多層構造体を形成するために使用される材料の層間に十分な間隔を提供し、多層構造体の耐飛沫性が達成される限り、3次元スペーサは、線、十字線、グリッド線、ロゴ、または任意の他の形態または形状の形態であってよく、任意の密度、高さ、またはテクスチャを有することができる。いずれにしても、3次元スペーサの特定の寸法、形状、及び間隔は、使用される材料の関数である。使用される材料の層の間に間隙を設けて飛沫の衝撃のエネルギーを消散させることが想定されているので、より高剛性の層、特に外層は、より小さく、より短く、より分散している3次元スペーサー(例えば、ドット)が可能である。一方、材料の外側層のドレープ性または可撓性が増加するにつれて、3次元スペーサ(例えば、ドット)は、次の層を通る流体の移動をもたらすような隣接材料層間の接触の可能性を最小にするために、より大きく及び/またはより接近したものとする必要があり得る。
【0046】
一旦材料の層に適用されると、3次元スペーサは様々なテクスチャを有することができる。例えば、上述したように、3次元スペーサは、「パフ特性(ふかふか感)」か、または従順性(例えば、柔らかさ及びクッション性)を有し得、このことで、3次元スペーサを組み込んだ多層構造体(例えば、多層構造体がフェイスマスクに使用される場合など)に改善された圧力分配能力を付与することができ、または3次元スペーサが、構造的安定性を有する多層構造体を形成して、流体の付着が発生した場合に多層構造体の圧縮を防止する。また、3次元スペーサは、3次元スペーサが適用される材料の層の表面積の約5%~約100%(例えば約10%~約99.5%、または例えば約15%~約99%)に存在することができることを理解されたい。さらに、3次元スペーサは、グラビアロール、スロットコーティング、連続スプレー、不連続スプレー、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの任意の既知の方法を使用してバインダまたはキャリアも含む組成物中の材料の層に適用することができる。加えて、例えば、スペーサが「パフ状態になり得る特性の」インクの形態である場合に、3次元スペーサを含む組成物を材料層に適用した後に熱を加えて、材料層上に存在するスペーサの複数の3次元特性を活性化することができる。
【0047】
3次元スペーサを形成するために使用される特定の材料の種類とは無関係に、3次元スペーサは、ドット、グリッド、ロゴ、十字形などの形態であり得、それらは、約0.25mm~約5mmの幅、長さ、または直径を有することができ、約0.025mm~約3mmの範囲の高さSを有することができる。さらに、3次元スペーサは、用途による必要に応じて、硬質、軟質、または発泡材状であり得る。さらに、3次元スペーサー(例えば、ドット、十字形、ロゴなど)は、多層構造体の様々な層における、スペーサが通気性バリアまたは多孔質材料のために適用される表面では全表面積の約1%~約70%の範囲の量で、スペーサが非多孔性/非通気性材料のために適用される表面では全表面積の約1%~約100%の範囲の量で適用することができる。
【0048】
II.材料の層
上述の複数の3次元スペーサは、本発明によって想定される多層構造体の材料の1つ以上の層に適用することができる。例えば、多層構造体の層は、1つ以上の不織材料(例えば、スパンボンド(S)、メルトブローン(M)、SMSラミネート、スパンレース、水流交絡された、カード処理(梳綿)された、エラストマー、または発泡材ウェブ)、1つ以上のフィルム、またはそれらの任意の組合せを含み、3次元スペーサは、材料の複数の層のうちのいずれか1つに存在することができ、スペーサは、材料の外側を向いた表面、内側を向いた表面、またはその両方の表面上に存在し得る。多層構造体中の材料が疎水性である場合、ASTM F1862-13によって測定される飛沫耐性は、天然にまたは添加剤または処理剤の使用によって、さらに増強することができる。これにより、層を通って流体の付着物が浸透する可能性を低減することができる。さらに、3次元スペーサは、本発明の多層構造の材料層の2つ以上に存在することができる。さらに、多層構造を形成するために使用される材料の様々な層は、それぞれが、約10gsm~約150gsm(例えば、約12.5gsm~約100gsm、例えば約15gsm~約80gsm)の範囲の坪量を有することができる。例えば、任意のメルトブローン材料層が、約10gsm~約75gsm(例えば約12.5gsm~約70gsm、例えば約15gsm~約50gsm)の範囲の坪量を有することができる。さらに、任意のスパンレースまたは二成分不織材料層が、約10gsm~約25gsm(例えば約12.5gsm~約20gsm、例えば約15gsm~約17.5gsmなど)の範囲の坪量を有することができる。さらに、任意のスパンボンド材料層が、約15gsm~約60gsm(例えば約20gsm~約50gsm、または約20gsm~約45gsmなど)の範囲の坪量を有することができる。
【0049】
スパンボンドウェブは、本発明の多層構造体の1つ以上の層に使用することができる不織材料の1つのタイプである。スパンボンドウェブは、溶融した熱可塑性材料をフィラメントとして、通常は紡糸口金の複数の微細な、通常は円形のキャピラリ(毛細管)から押し出し、次いで押出されたフィラメントの直径が縮径することによって形成された小径の繊維から作られた材料であり、キャピラリからの押し出しによる方法は、例えば米国特許第4,340,563号明細書(特許文献1)、米国特許第3,692,618号明細書(特許文献2)、米国特許第3,802,817号明細書(特許文献3)、米国特許第3,338,992号明細書(特許文献4)、米国特許第3,341,394号明細書(特許文献5)、米国特許第3,502,763号明細書(特許文献6)、及び米国特許第3,542,615号明細書(特許文献7)等に記載されている。スパンボンド繊維は、一般的に、それが収集面上に堆積されるとき粘着性ではない。スパンボンド繊維は、一般的に連続しており、平均直径(少なくとも10本のサンプルからの平均直径)は7μmより大きく、より具体的には約10~20μmである。
【0050】
メルトブローンウェブは、本発明の多層構造体の1つ以上の層に使用することもできる。メルトブローンウェブは、溶融した熱可塑性材料を、複数の微細で通常は円形のダイキャピラリを通して、溶融糸またはフィラメントとして収束する高速で通常は高温のガス(例えば空気)流れに押し出すことによって形成され、高速ガス流への押し出しにより溶融した熱可塑性材料のフィラメントを細くしその縮径させて、マイクロファイバーの直径にすることができる。次いで、メルトブローされた繊維は、高速ガス流によって運ばれ、収集面上に堆積され、ランダムに分散されたメルトブローン繊維のウェブを形成する。そのようなプロセスは、例えば米国特許第3,849,241号明細書(特許文献8)に開示されている。メルトブローン繊維は、連続的であっても不連続的であってもよいマイクロ繊維であり、一般的に平均直径が10μmより小さく、収集面上に堆積されたときに一般的に粘着性である。
【0051】
スパンボンド材料とメルトブローン材料の積層体(例えば、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド(SMS)積層体)も、本発明の多層構造体の1つ以上の層に使用することができる。このような積層体及び他のものは、米国特許第4,041,203号明細書(特許文献9)、米国特許第5,169,706号明細書(特許文献10)、米国特許第5,145,727号明細書(特許文献11)、米国特許第5,178,931号明細書(特許文献12)、及び米国特許第5,188,885号明細書(特許文献13)に記載されている。このような積層体は、最初に移動する成形ベルト上にスパンボンド層、次いでメルトブローン層及び最後に別のスパンボンド層を順次に堆積させ、次にこの積層体を以下に説明する方法で結合することによって製造することができる。あるいは、層を個別に作製し、ロールに集め、別個の結合工程で組み合わせることができる。このような積層体は、通常は約0.1~12osy(6~400gsm)、特に約0.75~約3osyの坪量を有する。多層積層体は、多くの異なる構成でメルトブローン(「M」と略記する)層または複数のスパンボンド(「S」と略記する)層の様々な数を有し、フィルム(「F」と略記する)またはコフォーム材料などの他の材料を含み得る(例示的なコフォーム材料の説明については、米国特許第4,100,324号明細書(特許文献14)参照)。例としては、SMMS積層体、SM積層体、SFS積層体などが挙げられる。
【0052】
水流交絡されたウェブを、本発明の多層構造体の1つ以上の層に使用することもできる。複数の水流交絡されたウェブを、本発明の多層構造体の1つ以上の層に使用することもできる。水流交絡されたウェブは、不織ウェブまたは不織ウェブの層が、十分に高いエネルギーレベルで、かつその繊維を交絡させるのに十分な時間、非圧縮性流体、例えば水の流れにさらされるプロセスによって形成されたウェブである。流体は、ウェブがメッシュ構造によって支持されている間に、ウェブ上の数cm(数インチ)の距離から約14~351kg/cm2ゲージ圧(約200~5000psig)の圧力で有利に使用することができる。この方法は、米国特許第3,486,168号明細書(特許文献15)に記載されている。水流交絡を受ける不織ウェブは、例えば、スパンレース材料とも呼ばれる。
【0053】
本発明の多層構造体の1つまたは複数の層に結合されたカード処理されたウェブを使用することもできる。結合されたカード処理されたウェブは、コーミングまたはカード処理ユニットを通って送られるステープルファイバー(スフ)から作られた不織ウェブであり、このコーミングまたはカード処理ユニットは、ステープルファイバーを機械方向に分離または分離して整列させて、概して機械方向に配向した繊維不織ウェブを形成する。この材料は、点結合、通気結合、超音波結合、接着結合などを含む方法によって互いに接合され得る。
【0054】
エアレイドウェブは、本発明の多層構造体の1つ以上の層に使用することもできる。エアレイドウェブは、繊維不織布層を形成することができるプロセスによって形成された不織布ウェブである。エアレイングプロセスでは、典型的に約3~約52ミリメートル(mm)の範囲の長さを有する細い繊維の束を分離し、空気供給に連行させ、次いで通常は真空供給を用いて成形スクリーンに付着させる。次いで、ランダムに堆積された繊維は、例えば熱風または噴霧接着剤を使用して互いに結合される。エアレイ処理は、例えば米国特許第4,640,810号明細書(特許文献16)に開示されている。
【0055】
エラストマーウェブ及び発泡材ウェブから製造された種々の層も、本発明の多層構造体における使用が想定されている。
【0056】
本発明の多層構造体は、比較的低いコスト及び加工性のために一般的にポリエチレン及びポリプロピレンのような熱可塑性ポリオレフィン及びそれらのコポリマーから製造される、薄い通気性フィルムの1つ以上の層を含み得る。一般的にポリエチレンがフィルム製造に使用される。ガウンやドレープなどの物品に使用される場合、フィルムは、通気性を高めるために、一般的に以下に挙げる材料で「充填」、すなわち炭酸カルシウム、各種粘土、シリカ、アルミナ、炭酸バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、二酸化チタン、ゼオライト、セルロース系粉末、カオリン、マイカ(雲母)、炭素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、パルプパウダー、木粉、セルロース誘導体、キチン及びキチン誘導体で「充填」することができ、一方、マスクのような物品に使用されるときには、空気の通過を可能にするために、フィルムを穿孔または開口形成する必要がある。充填材は、延伸時に多孔度を増加させるべくフィルム中に微細な孔を生成する。残念ながら、これらの薄くて通気性のフィルムは、熱及び/または圧力によって損なわれる傾向があるので、感熱性であると考えられる。これらのフィルムを、例えばスパンボンド層、メルトブローン層及びそれらの組み合わせなどの他の材料の様々な組み合わせと一緒にそれらを挟んで積層バリア材料に組み込むと、得られる積層バリア材料は一般に感熱性であるとも考えられる。この特徴付けは、積層後の成形処理工程において特に重要である。すなわち、このようなフィルムの後に感熱性バリア材料を積層バリア材料に変換する製造のための処理が行われる。例えば感熱性バリア材料を、熱点結合よび/または超音波結合技術を用いてガウンまたは他の物品に変換する場合、または、例えばタイコードまたは他の特徴のような要素を物品に取り付ける場合には、バリア積層体の通気性フィルムは損なわれることが多いが、それは液体浸透及び病原体に対する所望のレベルのバリアをより長期間にわたって提供できる程度のものである。特定の実施形態では、本発明は、その上に適用された3次元スペーサのパターンまたはランダム分布を有する材料の層を組み込んだ多層構造体を提供する。そのような層は、材料の隣接する層の接触を減少させることによって、及び/または流体飛沫衝突の衝撃によって生成されたエネルギーを多層構造体に吸収させることによって、及び/または衝突する流体を接触点から離れて導かれる機構を多層構造体に設けることによって、多層構造体の流体飛沫の浸透に対する耐性を抵抗する能力を改善する。
【0057】
別の実施形態では、内層などの多層構造体の1つ以上の層を、不透明度が高く疎水性の材料から形成することができる。このような材料の使用により、流体が内層を通過するのを防止する多層構造体の能力をさらに高めることができ、ASTM F1862-13試験における、薄いまたは半透明の材料が多層構造の内層に使用される場合に起こり得る偽陽性の可能性(失敗)を回避するのに役立ち得る。そのような薄いまたは半透明の材料が使用され、血液が内層に隣接する材料の層を破壊したとき、構造体のすべての層が破損しているため、たとえ内層の突破が実際には発生していない場合でも、ASTM F1862-13の方法では失敗とされてしまう。
【0058】
本発明が想定する多層構造体の2つ以上の層を形成するために使用される特定の材料の種類に関係なく、多層構造体を様々な個人用保護物品に成形することができ、そのような物品としては、限定しないが、フェイスマスク、外科用ガウン、外科用ドレープ、外科用保護フード/帽子、ブーファンキャップなどが挙げられる。
【0059】
3次元スペーサと材料層の配置
様々な実施形態において、上述した3次元スペーサ及び層を配設して、飛沫耐性を改善し、フェイスマスク、外科用ドレープ、ブーファンキャップ、及び他のPPEに用いることができる多層構造体を形成することができ、この場合、複数の3次元スペーサによって容易に達成される層同士の強制的な分離により、追加の材料層を使用して飛沫耐性が高めた場合に生じるバルク、重量及び不快感の増加を生じることなく構造体の飛沫耐性を高められる。ここで、
図5及び
図6を参照すると、そのように流体付着物が多層構造体に入ったときの3次元スペーサの機能を示すために本発明の多層構造体の2つの層が示されている。
【0060】
具体的には、
図5は、血液などの体液308が付着する前の、内側材料層の内層300と外側材料層の外層400とを含む多層構造体の断面図であり、内層300はユーザの皮膚に最も近い層であり、外層400は、その構造が、フェイスマスク、外科用ドレープ、ブーファンキャップなどのPPEの一部であるときにユーザから最も遠い層である。内層300は、外側を向いた表面310と内側を向いた表面312とを有し、外層400は、外側を向いた表面402と内側を向いた表面404とを有する。内層300の外側を向いた表面310には複数の3次元スペーサ302が配置されており、3次元スペーサ302は最大高さSを有している。内層300の外側を向いた表面310と外層400の内側を向いた表面404との間の距離Dは、少なくとも最大高さSと同じ大きさであり、3次元スペーサ302の最大高さSが内層300と外層400との間の分離を強制している。このような構成は、本発明の多層構造体の流体バリア及び飛沫耐性を高める。特に、層間の分離が、層間の接触面積を減少させるのに役立ち、したがって、流体が1つの層から次の層へ移動する能力を低下させる。したがって、3次元スペーサ302は、材料の層間の表面接触面積を減少させることによって流体が層を容易に通過できないように、内層300及び外層400を分離するのを助ける。
【0061】
さらに、3次元スペーサ302は、3次元スペーサ302が配置される材料の層の表面に隣接して位置するチャネル314を画定し、チャネルが画定される表面は、
図5の多層構造体では内層300の外側を向いた表面310であるが、3次元スペーサ302及びチャネル314は、任意の層の内側を向いた表面または外側を向いた表面上に存在し得ることを理解されたい。チャネル314を設けることにより、流体付着物を、それに層が接触したときに、層の横方向に移動させて、より均一に分布させることができる。また、この分離は、層が圧縮されるときに流体が横方向に容易に流れることができる収容空間を提供し、これがさらに流体が層を通過して移動するのを防止するのに役立つ。この流体の分配は、層の外側表面上の特定の位置に流体のプールが溜まるのを防止するのに役立つ。一般的には、多層構造体のある層上の特定の位置に高度に濃縮された流体は、同じ量の流体が層の外側表面のより広い部分にわたって分散した場合とは異なり、多層構造の層を介して移動する可能性がより高い。チャネル314は、すべてのチャネル314が互いに連通するように、相互接続されたチャネルであってもよい。これにより、任意の接触点318で層に接触する流体がより多くのチャネル314を通って分配されるという有利さが実現可能となる。あるいは、チャネル314は、チャネル314の一部のみが互いに連通するように構成されてもよい。さらに、本発明の他の例示的な実施形態によれば、チャネル314は任意の数で提供されてもよい。したがって、チャネル314は、層に接触する流体を所望の位置に方向転換することができる。例えば、チャネル314は、材料の層に接触点318で接触する流体が、その層の外側表面に沿って方向転換されて、多層構造体を通って、例えば多層構造体の縁部に沿った位置に流れるように構成される。
【0062】
図6は、体液308が付着中の3次元スペーサ302及びチャネル314の機能性を示す。図示のように、3次元スペーサ302は、それらの3次元構造は、内側に向いた表面404が材料の内層300の外側を向いた表面310と接触できるようにはせずに材料の外層400が撓んで、材料の外層400の外側を向いた表面402に当たる体液308によって伝達される力の少なくとも一部を吸収することを可能にするように構成される。これに関して、最大高さSを有する3次元スペーサ302の存在により、材料の外層400の内側を向いた表面404と材料の内層300の外側を向いた表面310との間に、少なくとも最大高さSと同じ距離Dを有する空間がもたらされる。流体の衝当によって与えられる前述の力を吸収することは、流体が本発明の多層構造体の材料の内層300を通過するのを防止するのに役立ち得る。これに関連して、流体が本発明の多層構造体の1つ以上の層の間に既に閉じ込められている場合がある。多層構造体に衝突する体液308によって与えられる力が、これらの既に閉じ込められていた流体がさらに多層構造体を通って押し出される原因となる。しかし、3次元スペーサ302の存在によって形成される内層300と外層400との間の強制的な分離の結果として複数のチャネル314が形成されるため、これらの閉じ込められた流体は、多層構造体の最も内側の層を通って伝播し、本発明の多層構造体から形成されたPPEの皮膚またはユーザと接触することを防止することができる。
【0063】
上述したように、本発明によって想定されている、
図1及び
図2に示される種々の多層構造体は、2つ以上の層802、804、806、及び808のから構成されてもよい。層802、804、806、及び808の配置は、順序を変えることが可能で、あらゆる順序の組み合わせが可能であり、2層構造体から4層構造体のいずれの層の数の構造体も利用することができ、図示される4層構造体800、860、及び870ならびに3層構造体880及び890は、本発明によって想定される特定の実施形態のいくつかを表す。さらに、外層802、中間層804と806、及び内層808は、同じ材料から作製されても、または異なる材料から作製されてもよいことを理解されたい。さらに、複数の3次元スペーサは、材料の層802、804、806、及び808のいずれかの内側を向いた表面、外側を向いた表面、またはその両方に適用することができる。さらに、所望の特性を達成するために、図に示されたもの以外の追加の層を多層構造体に組み込むこともできるが、本発明者らは、本発明の構造体では、当技術分野で従来知られているより少ない数の層の使用で十分な飛沫耐性が達成され得ることを見出しており、このようになる理由は、少なくとも部分的には3次元スペーサ302を様々な多層構造体800、860、870、880及び890に組み込んだためである。追加の層は、上述したような当業者に知られている様々な材料から構成することができる。多層構造体の具体的な実施形態については、以下でより詳細に説明するが、本発明は、材料の層のいずれかの片面または両面に複数の3次元スペーサが適用される、あらゆる他の適切な複数の材料の層の配置が想定していることは理解されたい。
【0064】
ここで
図8を参照すると、本発明の一実施形態による4層構造体800が示されている。多層構造体800は、材料の外層802と材料の内層808とを含む4つの層を有し、材料の外層802は外側を向いた表面810及び内側を向いた表面818を有し、内側の材料の層808は外側を向いた表面824及び内側を向いた表面812を有する。材料の外層802と材料の内層808との間には、材料の層804及び806が配置されている。材料の層804は、材料の外層802に隣接して配置され、外側を向いた表面814及び内側を向いた表面816を有する。一方、材料の層806は、材料の内層808に隣接して配置され、外側を向いた表面820及び内側を向いた表面822を有する。
図8に示すように、材料の層804の外側を向いた表面814には、複数の3次元スペーサ302が配置されており、この特定の実施形態では、この複数の3次元スペーサ302は、材料の外層802の外側を向いた表面810(多層構造全体の外側を向いた表面としても機能する)を越えて存在する第2の材料の層と呼ぶこともできる。複数の3次元スペーサ302は、材料の外層802と材料の層804との間に形成される複数のチャネル314を画定する。さらに、複数の3次元スペーサ302は、第2の材料の層804の外側を向いた表面814と、第1の材料の層(または最外層)802の内側を向いた表面818との間の強制的な分離または空間を作り出す。第2の材料の層804の外側を向いた表面814と第1の材料の層802の内側を向いた表面818との間の距離は、距離Dにわたり、この距離は少なくとも部分的に3次元スペーサ302の最大高さSによって制御される。
図8の特定の実施形態では、材料の(第1の層)外層802、3次元スペーサ302が配置される第2の材料の層804、及び材料の(第4の層)内層808はスパンボンドウェブであり、材料の内層808に隣接して配置された第3の材料の層806は、メルトブローンウェブである。さらに、
図8の特定の実施形態では、3次元スペーサ302は、封入された相変化材料を含むバインダから形成される。
【0065】
多層構造体800を、ASTM標準F-1862(レベル3)に従って、飛沫耐性について試験したところ、流体が、材料の外層802の外側を向いた表面810において流体接触点を通過したところの第2の層であるスパンボンド層804の外側を向いた表面814上に存在する3次元スペーサ302を通過することが妨げられた。換言すれば、
図8の多層構造体800は、流体の多層構造体の通過を防止するために、2つの材料の層(例えば、その外側を向いた表面814上に存在する3次元スペーサ302を有するスパンボンド層802及びスパンボンド層804)だけしか必要としなかった。
【0066】
次に、
図9は、本発明の別の実施形態による別の4層構造体860を示す。多層構造体860は、材料の外層802及び材料の内層808を含む4つの層を有し、材料の外層802は、外側を向いた表面810及び内側を向いた表面818を有し、材料の内層808は、外側を向いた表面824及び内側を向いた表面812を有する。材料の外層802と材料の内層808との間には、材料の層806と材料の層804が配置されている。材料の層806は、材料の外層802に隣接して配置され、外側を向いた表面820及び内側を向いた表面822を有する。一方、材料の層804は、材料の内層808に隣接して配置され、外側を向いた表面814及び内側を向いた表面816を有する。
図9に示すように、材料の層804の外側を向いた表面814には、複数の3次元スペーサ302が配置されており、この特定の実施形態では、この複数の3次元スペーサ302は、材料の外層802の外側を向いた表面810(多層構造全体の外側を向いた表面としても機能する)を越えて存在する第3の材料の層と呼ぶこともできる。複数の3次元スペーサ302は、材料の層806と材料の層804との間に形成される複数のチャネル314を画定する。さらに、複数の3次元スペーサ302は、第3の材料の層804の外側を向いた表面814と、第2の材料の層806の内側を向いた表面822との間の強制的な分離または空間を作り出す。第3の材料の層804の外側を向いた表面814と第2の材料の層806の内側を向いた表面822との間の距離は、距離Dにわたり、この距離は少なくとも部分的に3次元スペーサ302の最大高さSによって制御される。
図9の特定の実施形態では、材料の(第1の層)外層802、3次元スペーサ302が配置される第3の材料の層804、及び材料の(第4の層)内層808はスパンボンドウェブであり、材料の外層802に隣接して配置された第2の材料の層806は、メルトブローンウェブである。さらに、
図9の特定の実施形態では、3次元スペーサ302は、封入された相変化材料を含むバインダから形成される。
【0067】
多層構造体860を、ASTM標準F-1862(レベル3)に従って、飛沫耐性について試験したところ、流体が、材料の外層802の外側を向いた表面810において流体接触点を通過したところの第3の層であるスパンボンド層の外側を向いた表面814上に存在する3次元スペーサ302を通過することが妨げられた。しかし、流体は多層構造体全体を通過しなかった。換言すれば、
図9の多層構造体860は、流体の多層構造体の通過を防止するために、3つの材料の層(例えば、スパンボンド層802、メルトブローン層806、及びその外側を向いた表面814上に存在する3次元スペーサ302を有するスパンボンド層804)だけしか必要としなかった。
図8の多層構造体800を
図9の多層構造体860と比較すると、3次元スペーサ302は、スパンボンド層に直接隣接して配置される場合、または最初に液体の大部分を捕捉しているメルトブローン層以外の他のいずれかの層に直接隣接して配置される場合、より良好な飛沫耐性を提供するとみられる。本発明者らは、このようになる理由は、3次元スペーサが、層間により大きい隙間が存在し、それが付着する流体の初期圧力を通さないように配置され、その後に流体が付着する層同士は互いに接近して配置されている結果、流体が、その接近して配置された層によって吸収されるためとみられる。
【0068】
さらに、
図10は、本発明のさらに別の実施形態による4層構造体870を示す。多層構造体870は、材料の外層802と材料の内層808とを含む4つの層を有し、材料の外層802は外側を向いた表面810及び内側を向いた表面818を有し、材料の内層808は外側を向いた表面824及び内側を向いた表面812を有する。材料の外層802と材料の内層808との間には、材料の層804及び806が配置されている。材料の層804は、材料の外層802に隣接して配置され、外側を向いた表面814及び内側を向いた表面816を有する。一方、材料の層806は、材料の内層808に隣接して配置され、外側を向いた表面820及び内側を向いた表面822を有する。
【0069】
図10に示すように、材料の層804の外側を向いた表面814には、複数の3次元スペーサ302が配置されており、この特定の実施形態では、この複数の3次元スペーサ302は、材料の外層802の外側を向いた表面810(多層構造全体の外側を向いた表面としても機能する)を越えて存在する第2の材料の層と呼ぶこともできる。複数の3次元スペーサ302は、材料の外層802と材料の層804との間に形成される複数のチャネル314を画定する。さらに、複数の3次元スペーサ302は、第2の材料の層804の外側を向いた表面814と、第1の材料の層(または最外層)802の内側を向いた表面818との間の強制的な分離または空間を作り出す。第2の材料の層804の外側を向いた表面814と第1の材料の層802の内側を向いた表面818との間の距離は、距離Dにわたり、この距離は少なくとも部分的に3次元スペーサ302の最大高さSによって制御される。さらに、複数の3次元スペーサ302が、材料の内層808の内側を向いた表面812上にも配置され、これらの3次元スペーサ302も、複数のチャネル314を画定する。さらに、材料の内層808の内側を向いた表面812上に存在する複数の3次元スペーサ302は、ユーザの皮膚と材料の内層808との間の強制的な分離を作り出すことができ、すなわち多層構造体870は、多層構造体800及び多層構造体860の場合のように内側を向いた表面812全体でユーザに接触するのではなく、3次元スペーサ302だけでユーザに接触するため、ユーザにとっての快適さを増すことができる。この分離の距離は、少なくとも部分的には、3次元スペーサ302の最大高さSによって制御される。
【0070】
図10の特定の実施形態では、材料の(第1の層)外層802、複数の3次元スペーサ302が配置される第2の材料の層804、及び材料の(第4の層)内層808はスパンボンドウェブであり、材料の内層808に隣接して配置された第3の材料の層806は、メルトブローンウェブである。さらに、
図10の特定の実施形態では、第2の材料の層804の外側を向いた表面814上に存在する3次元スペーサ302はアクリルバインダの形態であり、一方、内層808の内側を向いた表面812上に存在する3次元スペーサ302は、封入された相変化材料を含むバインダから形成されて、その結果、内側を向いた表面812上に存在する3次元スペーサ302は、多層構造体870とユーザとの間の接触の程度を最小にするだけでなく、ユーザにさらに涼しく感じさせることを容易化することができる。
【0071】
多層構造体870を、ASTM標準F-1862(レベル3)に従って、飛沫耐性について試験したところ、流体が、材料の外層802の外側を向いた表面810において流体接触点を通過したところの第2の層であるスパンボンド層804の外側を向いた表面814上に存在する3次元スペーサ302を通過することが妨げられた。換言すれば、
図10の多層構造体870は、流体の多層構造体の通過を防止するために、2つの材料の層(例えば、その外側を向いた表面814上に存在する3次元スペーサ302を有するスパンボンド層802及びスパンボンド層804)だけしか必要としなかった。
【0072】
一方、
図11は、スパンボンド層804を除去した。本発明のさらなる実施形態による3層構造880を示す。多層構造体880は、材料の外層802(第1の層)と材料の内層808(第3の層)とを含む3つの層を有し、材料の外層802(第1の層)は外側を向いた表面810及び内側を向いた表面818を有し、材料の内層(第3の層)808は外側を向いた表面824及び内側を向いた表面812を有する。材料の外層802(第1の層)と材料の内層808(第3の層)との間に配置されているのは、第2の材料の層806である。第2の材料の層806は、外側を向いた表面820及び内側を向いた表面822を有する。
【0073】
図11に示すように、材料の外層802の外側を向いた表面818には、複数の3次元スペーサ302が配置されており、この複数の3次元スペーサ302は、これは第1の材料の層と呼ぶことも、多層構造体全体の外側を向いた表面と呼ぶこともできる。複数の3次元スペーサ302は、材料の外層802(第1の層)と材料の内層808(第3の層)との間に形成される複数のチャネル314を画定する。さらに、複数の3次元スペーサ302は、材料の外層802(第1の層)の内側を向いた表面818と、第2の材料の層806の外側を向いた表面820との間の強制的な分離または空間を作り出す。第2の材料の層806の外側を向いた表面820と材料の外層802(第1の層)の内側を向いた表面818との間の距離は、距離Dにわたり、この距離は少なくとも部分的に3次元スペーサ302の最大高さSによって制御される。さらに、複数の3次元スペーサ302が、材料の(第3の層)内層808の内側を向いた表面812上にも配置され、これらの3次元スペーサ302も、複数のチャネル314を画定する。さらに、材料の(第3の層)内層808の内側を向いた表面812上に存在する複数の3次元スペーサ302は、ユーザの皮膚と材料の(第3の層)内層808との間の強制的な分離を作り出すことができ、すなわち多層構造体880は、多層構造体800及び多層構造体860の場合のように内側を向いた表面812全体でユーザに接触するのではなく、3次元スペーサ302だけでユーザに接触するため、ユーザにとっての快適さを増すことができる。この分離の距離は、少なくとも部分的には、3次元スペーサ302の最大高さSによって制御される。
【0074】
図11の特定の実施形態では、複数の3次元スペーサ302が配置される材料の(第1の層)外層802、及び材料の(第3の層)内層808はスパンボンドウェブであり、それらに隣接して配置された第2の材料の層806は、メルトブローンウェブである。さらに、
図11の特定の実施形態では、材料の(第1の層)外層802の内側を向いた表面818上に存在する3次元スペーサ302はアクリルバインダの形態であり、一方、材料の(第3の層)内層808の内側を向いた表面812上に存在する3次元スペーサ302は、封入された相変化材料を含むバインダから形成されて、その結果、内側を向いた表面812上に存在する3次元スペーサ302は、多層構造体880とユーザとの間の接触の程度を最小にするだけでなく、ユーザにさらに涼しく感じさせることを容易化することができる。
【0075】
多層構造体880を、ASTM標準F-1862(レベル3)に従って、飛沫耐性について試験したところ、流体が、多層構造体880の最外層に相当する、スパンボンドの(第1の層)外層の内側を向いた表面818上に存在する3次元スペーサ302に少なくとも部分的に起因して、メルトブローンの(第2の層)層806を通過することが妨げられた。換言すれば、
図11の多層構造体880は、たとえ3層のみであっても、それが流体の多層構造体の通過を防止するために、2つの材料の層(例えば、その内側を向いた表面818上に存在する3次元スペーサ302を有するスパンボンド層802及びメルトブローン層808)だけしか必要としなかった。
【0076】
さらに、
図12は、スパンボンド層804を除去した。本発明のさらに別の実施形態による3層構造890を示す。多層構造体890は、材料の外層802(第1の層)と材料の内層808(第3の層)とを含む3つの層を有し、材料の外層802(第1の層)は外側を向いた表面810及び内側を向いた表面818を有し、材料の内層(第3の層)808は外側を向いた表面824及び内側を向いた表面812を有する。材料の外層802(第1の層)と材料の内層808(第3の層)との間に配置されているのは、第2の材料の層806である。材料の層806は、外側を向いた表面820及び内側を向いた表面822を有する。
【0077】
図12に示すように、第2の材料の外層806の外側を向いた表面822には、複数の3次元スペーサ302が配置されている。複数の3次元スペーサ302は、第2の材料の外層806と材料の内層808(第3の層)との間に形成される複数のチャネル314を画定する。さらに、複数の3次元スペーサ302は、第2の材料の層806の内側を向いた表面822と、材料の(第3の層)内層808の外側を向いた表面824との間の強制的な分離または空間を作り出す。第2の材料の層806の内側を向いた表面822と材料の(第3の層)内層808の外側を向いた表面824との間の距離は、距離Dにわたり、この距離は少なくとも部分的に3次元スペーサ302の最大高さSによって制御される。さらに、複数の3次元スペーサ302が、材料の(第3の層)内層808の内側を向いた表面812上にも配置され、これらの3次元スペーサ302も、複数のチャネル314を画定する。さらに、材料の(第3の層)内層808の内側を向いた表面812上に存在する複数の3次元スペーサ302は、ユーザの皮膚と材料の(第3の層)内層808との間の強制的な分離を作り出すことができ、すなわち多層構造体890は、多層構造体800及び多層構造体860の場合のように内側を向いた表面812全体でユーザに接触するのではなく、3次元スペーサ302だけでユーザに接触するため、ユーザにとっての快適さを増すことができる。この分離の距離は、少なくとも部分的には、3次元スペーサ302の最大高さSによって制御される。
【0078】
図12の特定の実施形態では、材料の(第1の層)外層802、及び材料の(第3の層)内層808はスパンボンドウェブであり、複数の3次元スペーサ302が配置される材料であり外層と内層の間に配置される第2の材料の層806は、メルトブローンウェブである。さらに、
図12の特定の実施形態では、第2の材料の層806の内側を向いた表面822上に存在する3次元スペーサ302はアクリルバインダの形態であり、一方、材料の(第3の層)内層808の内側を向いた表面812上に存在する3次元スペーサ302は、封入された相変化材料を含むバインダから形成されて、その結果、内側を向いた表面812上に存在する3次元スペーサ302は、多層構造体890とユーザとの間の接触の程度を最小にするだけでなく、ユーザにさらに涼しく感じさせることを容易化することができる。
【0079】
多層構造体890を、ASTM標準F-1862(レベル3)に従って、飛沫耐性について試験したところ、流体が、メルトブローンの(第2の層)層806の内側を向いた表面822上に存在する3次元スペーサ302に少なくとも部分的に起因して、メルトブローンの(第2の層)層806を通過することが妨げられた。しかしながら、飛沫耐性は、多層構造体880が示したものほど良好ではなかった。いずれにしても、
図12の多層構造体890は、多層構造体890が3層のみであっても、流体が多層構造を通過するのを防止するために、依然として2つの材料の層(例えば、3次元スペーサ302をその内側を向いた表面822上に存在するスパンボンド層802及びメルトブローン層806)のみしか必要としない。
【0080】
比較のため、
図7が、本発明の多層構造体の3次元スペーサを含まない4層構造体700を示す。多層構造体700は、外側を向いた表面710を有する材料の外層702と、内側を向いた表面712を有する材料の内層708とを有し、材料の外層702はユーザから最も遠くなる位置に配置され、材料の内層708はユーザに最も近く、例えば皮膚に隣接して配置される。材料の外層702と材料の内層708との間には、2つの追加の層704及び706が存在する。材料の層704は材料の外層702に隣接し、材料の層706は材料の内層708に隣接する。材料の外層702、材料の内層708、及び材料の外層702に隣接する材料の層704はそれぞれ、スパンボンドウェブから形成することができ、材料の内層708に隣接する材料の層706は、メルトブローン材料であり得る。しかし、そのような層を形成するために、不織ウェブ、発泡材、またはフィルム材料のいずれかの種類の材料を使用できることを理解されたい。
【0081】
いずれの場合でも、多層構造体700を、ASTM標準F-1862(レベル3)に従って、飛沫耐性について試験したところ、流体が、材料の外層702の外側を向いた表面710において流体接触点を通過したところの第3の層である材料の層706を通過することが妨げられたが、このことが意味するのは、
図7の多層構造体700は、多層構造体700における流体の通過を防止するために3つの層(例えば、2つのスパンボンド層702、704及びメルトブローン層706)を必要とした、ということである。これに対して、本発明の多層構造体は、特に3次元スペーサが外側を向いた表面または流体接触点の側においてスパンボンド層に隣接している場合には、1層のみの材料及び上記の3次元スペーサを使用して流体の通過を防止することができる。
【0082】
一般的に、
図8~
図12と
図7との比較から、3層構造体または4層構造体の層上に3次元スペーサを組み込むことにより、3次元スペーサが多層構造体内に(例えば、外層の外側を向いた表面上または内層の内側を向いた表面上に)配置されている限り、そのような構造体の飛沫耐性を高められることが分かる。
【0083】
本発明は、以下の実施例を参照してより良く理解されよう。
【実施例】
【0084】
実施例1
実施例1では、
図9に示す構成に概ね対応するが3次元スペーサを有していない多層構造体(対照サンプル)と、
図9に示すように構成された多層構造体(試験サンプル)とを、ASTM F2100-11で最も厳しいレベルのテストであるレベル3の性能を達成するそれらの能力について比較した。ASTM F2100-11のレベル3では、フェイスマスクが、ASTM F1862-13手順に従って160mmHgで2mlの人工血液(Moen&Co.,2505 Northridge Lane NE,Rochester,MN55906から入手)に対する耐浸透性を有することが求められる。換言すれば、対照サンプルは、3次元スペーサ302を除いて4層構造体860を含むものであった。対照サンプルの多層構造体は、0.5オンス/平方ヤード(16.95gsm)の坪量を有し、外側を向いた表面810を有するポリエステルパルプ湿潤材料から形成された材料の外層802を有していた。対照サンプル多層構造体860はまた、0.5オンス/平方ヤード(16.95gsm)の坪量を有し、内側を向いた表面812を有するバイコンポーネントカード処理された不織材料から形成された材料の内層808を有し、構造体が皮膚に隣接して着用されたフェイスマスクに使用された場合のように、材料の外層802が流体付着物に最も近くに配置され、材料の内層808が流体付着物から最も離れて配置されたように構成した。材料の外層802と材料の内層808との間に、2つの追加の層804及び806を設けた。材料の層806は、材料の外層802に隣接して配置され、0.600オンス/平方ヤード(20.34gsm)の坪量を有するメルトブローン材料から形成され、一方、材料の層804は、材料の内層808であり、0.9オンス/平方ヤード(30.52gsm)の坪量を有するスパンボンド材料から形成された。
【0085】
一方、試験サンプルは、一般に、
図9の多層構造体860に対応する。特に、試験サンプルは、0.5オンス/平方ヤード(16.95gsm)の坪量を有するポリエステルパルプ湿潤材料から形成された材料の外層802と、0.5オンス/平方ヤード(16.95gsm)の坪量を有するバイコンポーネントカード処理された不織材料から形成された材料の内層808とを含み、材料の外層802は外側を向いた表面810と内側を向いた表面818とを有し、材料の内層808は外側を向いた表面824と内側を向いた表面812とを有していた。材料の外層802と材料の内層808との間には、材料の層806及び材料の層804とが配設されている。材料の層806は、材料の外層802に隣接して配置され、0.6オンス/平方ヤード(20.34gsm)の坪量を有するメルトブローン材料から形成され、かつ材料の層806は、外側を向いた表面820及び内側を向いた表面822を有する。一方、材料の層804は、材料の内層808に隣接して配置され、0.9オンス/平方ヤード(30.52gsm)の坪量を有するスパンボンド材料から形成され、かつ材料の層804は、外側を向いた表面814及び内側を向いた表面816を有する。
図9に示すように、材料の層804の外側を向いた表面814上には、アクリルバインダから形成された複数の3次元スペーサ302(すなわちドット)も配設され、このスペーサは、材料の外層802の外側を向いて存在する第3の材料の層とも呼ばれる。複数の3次元スペーサ302は、材料の層806と材料の層804との間に複数のチャネル314を形成していた。さらに、複数の3次元スペーサ302は、第3の材料の層804の外側を向いた表面814と第2の材料の層806の内側を向いた表面822との間に強制的な分離または空間を作り出すように構成されていた。
【0086】
上記の対照サンプル及び試験サンプルを、ASTM標準F-1862(レベル3)に従って飛沫耐性について試験したが、ここで流体は対照サンプル中の層808を通過し、対照サンプルがASTM標準F-1862(レベル3)に失敗したことを意味する。しかし、流体は試験サンプル中の層808を通過せず、したがって試験サンプルはASTM標準F-1862(レベル3)に合格した。
【0087】
以上の説明では、本発明を開示するため、及び当業者が、任意の装置またはシステムを製造及び使用し、組み込まれた方法を実行することを含む本発明の実施を行えるようにするために最良の形態を含む実施形態を用いている。本発明の範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、当業者が想到し得る他の実施形態を含むことができる。そのような他の実施形態は、特許請求の範囲の請求項の記載の表現と同じ要素を含む場合、または請求項の記載の表現との実質的に異なるが均等の要素を含む場合のいずれも本発明の範囲内に含まれる。