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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】X線を生成するための装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/00 20060101AFI20220111BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220111BHJP
   H05G 1/34 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H05G1/00 H
A61B6/03 373
A61B6/03 360Q
H05G1/34 H
A61B6/03 ZDM
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018562618
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2017062531
(87)【国際公開番号】W WO2017207383
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】16172185.7
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】プロクサ ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ムエンゼル ダニエラ
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-272454(JP,A)
【文献】特開平02-066898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00-2/00
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と電源と処理ユニットとを備える、X線を生成するための装置であって、
前記電源は、電圧を生成し、
前記X線源は、カソードとアノードとを備え、前記カソードは、前記アノードに対して位置付けられ、前記カソード及び前記アノードは、前記カソードから放出された電子が前記電圧に対応したエネルギーで前記アノードと相互作用するように動作可能であり、前記電子は前記アノードと相互作用してX線を生成し、
前記処理ユニットは、各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるように、前記X線源を制御し、前記第1のX線パルスは互いから時間的に分離されていて、
前記処理ユニットは、前記第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるように、前記X線源を制御し、
前記複数の第1のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルは、前記少なくとも1つの第2のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルと実質的に同じであり、
前記処理ユニットは、前記少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に前記第1のX線パルスのうちの2つの連続したパルスの間に生成されるようにし、
前記X線源は、前記カソードと前記アノードとの間における電子の前記相互作用を抑制するスイッチを備え、前記処理ユニットは、前記スイッチを制御することにより、前記X線源を制御する、
装置。
【請求項2】
前記処理ユニットは、前記複数の第1のX線パルスのパルス持続期間を制御し、前記少なくとも1つの第2のX線パルスのパルス持続期間を制御する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2のX線フラックスに対する前記第1のX線フラックスの比は、前記少なくとも1つの第2のX線パルスのパルス持続期間に対する、前記複数の第1のX線パルスの各パルスのパルス持続期間の比に実質的に等しい、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記スイッチは、約1μsの立ち上がり時間を有する、請求項に記載の装置。
【請求項5】
X線源と、電源と、処理ユニットと、X線ディテクターとを備える、物体を撮像するためのシステムであって、
前記電源は、電圧を生成し、
前記X線源は、カソードとアノードとを備え、前記カソードは、前記アノードに対して位置付けられ、前記カソード及び前記アノードは、前記カソードから放出された電子が前記電圧に対応したエネルギーで前記アノードと相互作用するように動作可能であり、前記電子は、前記アノードと相互作用してX線を生成し、
前記処理ユニットは、各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるように、前記X線源を制御し、前記第1のX線パルスは互いから時間的に分離され、
前記処理ユニットは、前記第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるように、前記X線源を制御し、
前記処理ユニットは、前記少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に前記第1のX線パルスのうちの2つの連続したパルスの間に生成されるようにし、
前記X線源は、前記X線源と前記X線ディテクターとの間の領域の少なくとも一部が物体を収容するための検査領域となるように、前記X線ディテクターに対して位置付けられ、
前記X線ディテクターは、前記複数の第1のX線パルスのうちの1番目のX線パルスが生成されたときに、第1のデータを獲得し、前記第1のデータはスペクトルデータを含み、
前記X線ディテクターは、前記少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されたときに、第2のデータを獲得し、
前記X線ディテクターは、前記複数の第1のX線パルスのうちの2番目のX線パルスが生成されたときに、第3のデータを獲得し、前記第3のデータはスペクトルデータを含み、
前記処理ユニットは、前記第1のデータと前記第3のデータとを含むスペクトル的に分解された像データを生成し、
前記処理ユニットは、前記第1のデータと前記第2のデータと前記第3のデータとを含むスペクトル的に一体化された像データを生成する、
システム。
【請求項6】
前記処理ユニットは、前記第2のデータにおけるノイズの少なくとも1つの測定値を特定し、前記第2のデータはスペクトルデータを含み、ノイズの前記少なくとも1つの測定値に基づいて、前記処理ユニットは、前記第1のデータと前記第2のデータと前記第3のデータとからスペクトル的に分解された像データを生成する、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記X線ディテクターは、第1のX線エネルギーにおけるエネルギー依存データを獲得し、及び、第2のX線エネルギーにおけるエネルギー依存データを獲得する、請求項又はに記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のデータは、前記第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データと、前記第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データとを含み、前記第3のデータは、前記第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データと、前記第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データとを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2のデータはスペクトルデータを含み、前記第2のデータは前記第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データと、前記第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データとを含み、前記処理ユニットは、前記第1のX線エネルギーにおける前記第1のエネルギー依存データと前記第2のX線エネルギーにおける前記第1のエネルギー依存データとから第1の組み合わせデータを生成し、前記第1のX線エネルギーにおける前記第2のエネルギー依存データと前記第2のX線エネルギーにおける前記第2のエネルギー依存データとから第2の組み合わせデータを生成し、及び、前記第1のX線エネルギーにおける前記第3のエネルギー依存データと前記第2のX線エネルギーにおける前記第3のエネルギー依存データとから第3の組み合わせデータを生成し、スペクトル的に一体化された像データは、第1の組み合わされた像、第2の組み合わされた像、及び第3の組み合わされた像から生成される、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
X線を生成する方法であって、前記方法は、
a)電源を使用して電圧を生成するステップと、
b)X線源のアノードに対して前記X線源のカソードを位置付けるステップと、
c)前記カソードから電子を放出するステップと、
d)前記カソードから放出された電子を、前記電圧に対応したエネルギーで前記アノードと相互作用させるステップと、
e)前記アノードからX線を生成するステップであって、前記電子が前記アノードと相互作用してX線を生成する、ステップと、
f)前記X線源に含まれ、前記カソードと前記アノードとの間における電子の相互作用を抑制するスイッチを制御することにより、各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるように前記X線源を制御するステップであって、前記第1のX線パルスが互いから時間的に分離されている、ステップと、
g)前記スイッチを制御することにより、前記第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるように前記X線源を制御するステップであって、前記少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に前記第1のX線パルスのうちの連続したパルス間において生成される、ステップとを有し、前記複数の第1のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルは、前記少なくとも1つの第2のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルと実質的に同じである、
方法。
【請求項11】
物体を撮像する方法であって、前記方法は、
a)電源を使用して電圧を生成するステップと、
X線源のアノードに対してX線源のカソードを位置付けるステップと、
前記カソードから電子を放出するステップと、
前記カソードから放出された電子を、前記電圧に対応したエネルギーで前記アノードと相互作用させるステップと、
前記アノードからX線を生成するステップであって、前記電子が前記アノードと相互作用してX線を生成する、ステップと、
各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるように、前記X線源を制御するステップであって、前記第1のX線パルスが互いから時間的に分離されている、ステップと、
前記第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるように、前記X線源を制御するステップであって、前記少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に前記第1のX線パルスのうちの連続したパルス間において生成される、ステップと、
により、前記X線源からX線を生成するステップを有し、
前記方法は、
b)X線ディテクターと前記X線源との間の領域の少なくとも一部が、物体を収容するための検査領域となるように、前記X線ディテクターに対して前記X線源を位置付けるステップと、
c)複数の前記第1のX線パルスのうちの1番目のX線パルスが生成されたときに、第1のデータを獲得するステップであって、前記第1のデータがスペクトルデータを含む、ステップと、
d)前記少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されたときに、第2のデータを獲得するステップと、
e)前記複数の第1のX線パルスのうちの2番目のX線パルスが生成されたときに、第3のデータを獲得するステップであって、前記第3のデータがスペクトルデータを含む、ステップと、
f)前記第1のデータと前記第3のデータとからスペクトル的に分解された像データを生成するステップと、
g)前記第1のデータと前記第2のデータと前記第3のデータとからスペクトル的に一体化された像データを生成するステップと、
をさらに有する、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法を実行するプロセッサによってコンピュータプログラムが実行されるときに、請求項1乃至のいずれか一項に記載の装置を制御する、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項11に記載の方法を実行するプロセッサによってコンピュータプログラムが実行されるときに、請求項乃至のいずれか一項に記載のシステムを制御する、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項12に記載のコンピュータプログラム及び/又は請求項13に記載のコンピュータプログラムが記憶された、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を生成するための装置、物体を撮像するためのシステム、X線を生成する方法、物体を撮像する方法、並びに、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の全体としての背景はX線管技術の分野であり、特に、コンピュータX線断層撮影のためのX線管技術である。スペクトル像データを取得するために使用されるデュアル層検出(DL(Dual Layer))では、このようなスペクトル撮像は、ノイズ誘起バイアスと呼ばれる効果を引き起こす。DL検出から(VNC又はヨウ素マップなどの)スペクトル情報を取得するために、2つのディテクターチャンネルからのデータは、(非線形)材料分離工程を経る必要がある。本工程は、ノイズのある入力データに対してバイアスを生成する傾向がある。バイアスは、像の質に著しい悪影響をもたらし、定量化に対して問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
X線を生成するための改善された装置、及び、このような装置を使用して物体を撮像するための改善されたシステムを提供することが有益である。
【0004】
本発明の目的は、独立請求項の主題により解決され、さらなる実施形態が従属請求項に組み込まれる。本発明の後述の態様及び例は、X線を生成するための装置、物体を撮像するためのシステム、X線を生成する方法、物体を撮像する方法、並びにコンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体にも適用されることが留意されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によると、X線源と、電源と、処理ユニットと、を備える、X線を生成するための装置が提供される。
【0006】
電源は、電圧を生成するように構成される。X線源は、カソードとアノードとを備え、カソードは、アノードに対して位置付けられる。カソード及びアノードは、カソードから放出された電子が電圧に対応したエネルギーでアノードと相互作用するように動作可能であり、電子はアノードと相互作用してX線を生成する。処理ユニットは、各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるように、X線源を制御するように構成され、第1のX線パルスは互いから時間的に分離されている。処理ユニットはまた、第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるように、X線源を制御するように構成される。複数の第1のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルは、少なくとも1つの第2のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルと実質的に同じである。処理ユニットは、少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に第1のX線パルスのうちの2つの連続したパルスの間に生成されるように構成される。
【0007】
このように、装置は2種類のパルス、すなわち、第1の高フラックスパルスと、連続したより長いパルス間における1つ又は複数の第2のより低フラックスのパルスとを生成し、より高フラックスのパルスがより大きな総エネルギーを有するので、より低フラックスのパルスよりも、より多くのX線(すなわち、X線光子)を含む。このように、高エネルギーをともなう、より高フラックスのパルスは、例えばディテクターの1つの部分が低エネルギーにおけるX線を検出し、ディテクターの別の部分が高エネルギーにおけるX線を検出するデュアル層ディテクターを使用して、物体のスペクトルエネルギーデータを提供するために使用され得る。このようなデュアル層ディテクターの場合、最良でも、ディテクターの各部分が、ディテクターに達するX線の総数の半分を検出するのに対して、実際には、一方のディテクターが、他方よりも、ピクセル当たりより多くの信号カウント数を含む。このようなディテクターは電子ノイズの影響を受け、ショットノイズに起因した信号対ノイズは、検出されたカウント数の平方根として計られる。ノイズのある入力データは、ノイズのあるスペクトルデータをもたらすこのようなノイズのある信号の内因性の問題に加えて、さらに、ノイズ誘起バイアスなど、スペクトルデータ分析における特定の問題をもたらす。従って、ディテクターが物体の周囲において角度的に動くまばらな角度サンプリングにより、特定のパルスのためにフラックスを増やすことにより、それらのパルスに関係するより大きな信号対ノイズが存在するので、それらのパルスのみがスペクトル処理のために使用され得る。しかし、同時に、ディテクターがすべての利用可能なパルスから物体の高分解能の像を取得するために、低エネルギー及び高エネルギーのX線により生成されたピクセル当たりのカウント数をまとめて加算して、スペクトル的に一体化された信号を取得することをともなう従来の手法において、高フラックスパルス及び低フラックスパルスが使用され得る。このとき、信号がスペクトル的に分解されない(例えば、ディテクターの両半分からの信号が組み合わされる)ので、増加された全体的なピクセル当たりの信号と、従って増加された信号対ノイズが存在し、これは、高分解能非スペクトル像データを提供するために使用され得る。さらに、スペクトルデータが、非スペクトルデータを形成する高フラックスパルスと同じ配向で物体に対して獲得され(言い換えると特定の像に対して絶対的な像レジストレーションが存在する)、及び、獲得されたスペクトルデータは、非スペクトルデータを改善又は増強するために使用され得、非スペクトルデータは、スペクトルデータを改善又は増強するために使用され得る。
【0008】
これについて別の表現をすれば、装置は、非スペクトル目的の完全サンプリングを組み合わせたハイブリッド型のスペクトル目的のまばらなサンプリングを提供する。
【0009】
一例において、処理ユニットは、複数の第1のX線パルスのパルス持続期間を制御するように構成されるとともに、少なくとも1つの第2のX線パルスのパルス持続期間を制御するように構成される。
【0010】
言い換えると、第1のX線パルスの各々のパルス持続期間は、高X線フラックスを提供するために制御され、この場合、各パルスは同じパルス持続期間を有し得、第2のX線パルスのパルス持続期間又は第2のX線パルスの各々は、低X線フラックスを提供するように制御され、この場合、各パルスは同じパルス持続期間を有し得る。
【0011】
急速に電流を変化させることは困難であり得るので、これは、異なるフラックスを有するパルスを提供する効果的な手法を提供する。
【0012】
一例において、複数の第1のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルは、少なくとも1つの第2のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルと実質的に同じである。第2のX線フラックスに対する第1のX線フラックスの比は、少なくとも1つの第2のX線パルスのパルス持続期間に対する、複数の第1のX線パルスの各パルスのパルス持続期間の比に実質的に等しい。
【0013】
言い換えると、各パルスに対する単位時間当たりのフラックスは同じである。このように、X線フラックスは、第1のパルスと第2のパルスとのそれぞれのパルス持続期間の制御を通して制御され、第1のパルスは、第2のパルスより大幅に長い持続期間を有する。
【0014】
このように、装置は2種類のパルス、すなわち、第1の長いパルスと、連続したより長いパルス間におけるより短い持続期間の1つ又は複数の第2のより短いパルスとを生成し、より長い持続期間を有するパルスはより大きな総エネルギーを有し、従って、より短いパルスと比べてより多くのX線をもたらす。このように、高エネルギーを有するより長いパルスは、例えば、ディテクターの1つの部分が低エネルギーにおけるX線を検出し、ディテクターの別の部分が高エネルギーにおけるX線を検出するデュアル層ディテクターを使用して物体のスペクトルエネルギーデータを提供するために使用され得る。しかし、同時に、ディテクターは、すべての利用可能なパルスから物体の高分解能の像を取得するために、ピクセル当たりの低エネルギー及び高エネルギーのX線をまとめて加算して、スペクトル的に一体化された信号を取得することをともなう従来の手法において、より長いパルスとより短いパルスとが使用され得る。
【0015】
これは、X線源が高及び低フラックスパルスの両方に対して同じ手法で駆動されるが、異なるフラックスがパルス持続期間により支配される単純なシステムを提供することにより、必要に応じてフラックスを変化させるための単純で効果的な手段を提供する。
【0016】
一例において、X線源は、カソードとアノードとの間における電子の相互作用を抑制するように構成されたスイッチを備える。処理ユニットは、スイッチを制御することにより、X線源を制御するように構成される。
【0017】
言い換えると、電源に結合され得るか、又は別の手段に結合され得るスイッチは、異なる持続期間のパルスを生成するために、アノードと相互作用するように、電子がカソードから放出されることを定期的に可能にするように処理ユニットにより制御される。
【0018】
一例において、スイッチは、約1μsの立ち上がり時間を有する。
【0019】
このように、多くの低フラックスパルスが高フラックスパルス間に生成され得、短い曝露期間が達成可能であることに起因して、及び総走査期間における最小化のために、装置が物体の周りで回転するために使用されるとき、非常に高い角度分解能が実現されることを可能にする。
【0020】
第2の態様によると、X線源と、電源と、処理ユニットと、を備える、物体を撮像するためのシステムが提供される。
【0021】
電源は、電圧を生成するように構成される。X線源は、カソードとアノードとを備え、カソードは、アノードに対して位置付けられる。カソード及びアノードは、カソードから放出された電子が電圧に対応したエネルギーでアノードと相互作用するように動作可能であり、電子は、アノードと相互作用してX線を生成する。処理ユニットは、各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるように、X線源を制御するように構成され、第1のX線パルスは互いから時間的に分離されている。処理ユニットは、第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるように、X線源を制御するように構成される。処理ユニットは、少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に第1のX線パルスのうちの2つの連続したパルスの間に生成されるように構成される。システムは、X線ディテクターをさらに備える。
【0022】
X線源は、X線源とX線ディテクターとの間の領域の少なくとも一部が物体を収容するための検査領域となるように、X線ディテクターに対して位置付けられるように構成される。X線ディテクターは、複数の第1のX線パルスのうちの1番目のX線パルスが生成されたときに、第1のデータを獲得するように構成され、第1のデータはスペクトルデータを含む。X線ディテクターはまた、少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されたときに、第2のデータを獲得するように構成される。X線ディテクターは、複数の第1のX線パルスのうちの2番目のX線パルスが生成されたときに、第3のデータを獲得するように構成され、第3のデータはスペクトルデータを含む。処理ユニットは、第1のデータと第3のデータとを含むスペクトル的に分解された像データを生成するように構成される。処理ユニットはまた、第1のデータと第2のデータと第3のデータとを含むスペクトル的に一体化された像データを生成するように構成される。
【0023】
このように、ハイブリッド型システムは、スペクトルデータを取得するために、多数のX線(すなわち、X線光子)を含む高フラックスのパルスを使用し得、これらのパルスは、ディテクターにおいて高い信号対ノイズをもたらす可能性があり、スペクトル処理に起因してノイズに誘起される問題を軽減する可能性があるが、すべてのパルスを使用して従来の非スペクトルデータを取得する。非スペクトルデータを生成する際に、高フラックスパルスに取得されたスペクトルデータは、例えば、各ピクセルに対して異なるエネルギーにおける光子を一緒に加算し、信号カウント数、従って信号対ノイズを増やすが、そのピクセルに対するスペクトルコントラスト情報を失うことにより、非スペクトルデータに変換される。
【0024】
これについて別の表現をすれば、システムは、従来の撮像のための中程度のまばらな、又はさらには完全な角度サンプリングの高い像品質を、スペクトル像のためのまばらなサンプリングの利点に組み合わせるための、ハイブリッド型のまばらなサンプリングアプローチを可能にする。
【0025】
言い換えると、システムは、比較的低い効果的な線量を使用した一連の獲得サイクルにおいて、1つのサイクルがはるかに高い線量を使用して実行されることを可能にする。次に、従来のスペクトルデータの再現が、異なる手法で実行される。従来の像再現がすべての投射を使用し、従って、角度サブサンプリングの影響を受けないか、又は、中程度にのみ角度サブサンプリングの影響を受けるのに対し、スペクトルの再現は、まばらな高フラックスビューのみを使用する。
【0026】
非スペクトルデータは、スペクトルデータを改善するためにも使用され得、スペクトルデータは、非スペクトルデータを改善するためにも使用され得る。
【0027】
一例において、処理ユニットは、第2のデータにおけるノイズの少なくとも1つの測定値を特定するように構成され、第2のデータはスペクトルデータを含む。ノイズの少なくとも1つの測定値に基づいて、処理ユニットは、第1のデータと第2のデータと第3のデータとからスペクトル的に分解された像データを生成するように構成される。
【0028】
言い換えると、包含することが全体的なノイズを大幅に有害なほど変化させるわけではないので、低フラックスパルスに関係する検出された光子の数が十分大きいとき、このデータは、スペクトル像データ、及び高フラックスパルスからのスペクトル像データを生成するために使用され得る。これは、オンザフライのデータがこのような目的に適していることが見出されたときに、オンザフライのデータがスペクトル撮像を提供するために使用されることを可能にするが、データが過度にノイズを含むときには使用されない。
【0029】
一例において、X線ディテクターは、第1のX線エネルギーにおけるエネルギー依存データを獲得するように、及び、第2のX線エネルギーにおけるエネルギー依存データを獲得するように構成される。
【0030】
言い換えると、X線ディテクターは、スペクトル的に高感度(例えば、デュアル層ディテクター)である。これは、スペクトル撮像を提供するために使用可能なスペクトルエネルギーデータを獲得するための単純な手段を提供するが、この手段は、非スペクトル撮像にも使用され得る。
【0031】
一例において、第1のデータは、第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データとを含み、第3のデータは、第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データとを含む。
【0032】
一例において、第2のデータはスペクトルデータを含み、第2のデータは第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データとを含む。処理ユニットは、第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データとから第1の組み合わせデータを生成するように、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データとから第2の組み合わせデータを生成するように、及び、第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データとから第3の組み合わせデータを生成するように構成される。スペクトル的に一体化された像データは、第1の組み合わされた像、第2の組み合わされた像、及び第3の組み合わされた像から生成される。
【0033】
第3の態様によると、X線を生成する方法が提供され、この方法は、
a)電源を使用して電圧を生成するステップと、
b)X線源のアノードに対してX線源のカソードを位置付けるステップと、
c)カソードから電子を放出するステップと、
d)カソードから放出された電子を、電圧に対応したエネルギーでアノードと相互作用させるステップと、
e)アノードからX線を生成するステップであって、電子がアノードと相互作用してX線を生成する、ステップと、
f)各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるようにX線源を制御するステップであって、第1のX線パルスが互いから時間的に分離されている、ステップと、
g)第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるようにX線源を制御するステップであって、少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に第1のX線パルスのうちの連続したパルス間において生成される、ステップと、
を有する。複数の第1のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルは、少なくとも1つの第2のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルと実質的に同じである。
【0034】
第4の態様において、物体を撮像する方法が提供され、この方法は、
a)X線源からX線を生成するステップであって、
電源を使用して電圧を生成するステップと、
X線源のアノードに対してX線源のカソードを位置付けるステップと、
カソードから電子を放出するステップと、
カソードから放出された電子を、電圧に対応したエネルギーでアノードと相互作用させるステップと、
アノードからX線を生成するステップであって、電子がアノードと相互作用してX線を生成する、ステップと、
各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるように、X線源を制御するステップであって、第1のX線パルスが互いから時間的に分離されている、ステップと、
第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるように、X線源を制御するステップであって、少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に第1のX線パルスのうちの連続したパルス間において生成される、ステップと、
により、X線源からX線を生成するステップを有し、上記方法は、
b)それらの間の領域の少なくとも一部が、物体を収容するための検査領域となるように、X線ディテクターに対してX線源を位置付けるステップと、
c)複数の第1のX線パルスのうちの1番目のX線パルスが生成されたときに、第1のデータを獲得するステップであって、第1のデータがスペクトルデータを含む、ステップと、
d)少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されたときに、第2のデータを獲得するステップと、
e)複数の第1のX線パルスのうちの2番目のX線パルスが生成されたときに、第3のデータを獲得するステップであって、第3のデータがスペクトルデータを含む、ステップと、
f)第1のデータと第3のデータとからスペクトル的に分解された像データを生成するステップと、
g)第1のデータと第2のデータと第3のデータとからスペクトル的に一体化された像データを生成するステップと、
をさらに有する。
【0035】
別の一態様によると、処理ユニットによりコンピュータプログラム要素が実行されるときに、上述のように方法ステップを実施するように適応された、上述のように装置を制御するコンピュータプログラム要素が提供される。
【0036】
別の一態様によると、上述のようなコンピュータプログラム要素が記憶されたコンピュータ可読媒体が提供される。
【0037】
有益には、上述の態様のうちの任意のものにより提供される利点は、他の態様のすべてに等しく適用され、逆も同様である。
【0038】
上述の態様及び例は、以下で説明される実施形態から明らかとなり、以下で説明される実施形態を参照しながら説明される。
【0039】
以下の図面を参照しながら、例示的な実施形態が以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】X線を生成するための装置の一例の概略構成を示す図である。
図2】物体を撮像するためのシステムの一例の概略構成を示す図である。
図3】X線を生成する方法を示す図である。
図4】物体を撮像する方法を示す図である。
図5】X線を生成するための装置により生成された一連のフラックスパルスの一例を示す図である。
図6】公称サンプリングに対するハイブリッド型のまばらなサンプリングについての信号対ノイズ比の一例を示す図である。
図7】様々なエネルギー及び吸収における、公称サンプリングに対するハイブリッド型のサンプリングについての信号対ノイズ比の一例を示す図である。
図8】スペクトルデータにおけるノイズ誘起バイアスを表す例示的なデータを示す図である。
図9】様々なエネルギー及び吸収における、ノイズ誘起バイアスの一例を示す図である。
図10】デュアルエネルギーディテクターの一例を示す図である。
図11】物体を撮像するためのシステムの一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、X線を生成するための装置10の一例を示す。装置10は、X線源20と電源30と処理ユニット40とを備える。電源30は、電圧を生成するように構成される。X線源20は、カソード22とアノード24とを備える。カソード22は、アノード24に対して位置付けられる。カソード22及びアノード24は、カソード22から放出された電子が電圧に対応したエネルギーでアノード24と相互作用するように動作可能である。電子は、アノード24と相互作用してX線を生成する。処理ユニット40は、各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるように、X線源20を制御するように構成される。第1のX線パルスは、互いから時間的に分離されている。処理ユニット40は、第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるように、X線源20を制御するようにさらに構成される。処理ユニット40は、少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に第1のX線パルスのうちの2つの連続したパルスの間に生成されるように構成される。
【0042】
一例において、処理ユニットは、電源を制御することにより、X線源を制御するように構成される。一例において、電源の電圧が制御される。言い換えると、電源電圧は、例えば異なる持続期間にわたって、定期的にハイとローとにスイッチングし得る。一例において、電源により供給される電流が制御される。言い換えると、例えば固定電圧において、カソード電流が定期的にスイッチオン及びスイッチオフされるか、又は変更される。例えば、固定パルス持続期間にわたって、電流が、高フラックスパルスに対して1つのレベルをとり得、低フラックスパルスに対するより低いレベルをとり得、別の一例において、電流は、高フラックスパルスのために設定された期間にわたって特定のレベルをとり得、低フラックスパルスに対して、より短い持続期間ではあるが同じレベルをとり得る。一例において、電源の電圧と電流との両方が制御される。
【0043】
一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスが、2つのX線パルスを含む。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスが、3つのX線パルスを含む。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスが、4つのX線パルスを含む。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスが、4つを上回る、例えば、5つ、6つ、7つ、又は例えば20までの任意の数のX線パルスを含む。
【0044】
一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスの各々が、実質的に同じであり、実質的に同じパルス持続期間を有し、及び実質的に同じフラックスを含む。
【0045】
一例において、第1のX線パルスの各々が、同じパルス持続期間を有する。
【0046】
一例において、第1のX線パルスは、約500μsだけ互いから時間的に分離される。一例において、第1のX線パルスは、約100μsだけ互いから時間的に分離される。一例において、第1のX線パルスは、約200μsだけ互いから時間的に分離される。一例において、第1のX線パルスは、約300μsだけ互いから時間的に分離される。一例において、第1のX線パルスは、約400μsだけ互いから時間的に分離される。一例において、第1のX線パルスは、約600μsだけ互いから時間的に分離される。一例において、第1のX線パルスは、約1000μsだけ、又は、100~1000μsのうちの任意の値の間の持続期間だけ互いから時間的に分離される。
【0047】
一例において、処理ユニットは、一連のX線パルスが生成されるように構成され、一連のX線パルスの各々が、少なくとも1つの第2のX線パルスと実質的に同じであり、一連のX線パルスのうちの1つが、時間的に第1のX線パルスのうちのすべての連続したパルス間に生成される。言い換えると、装置は、反復手法で動作し得、1つ又は複数の低フラックスパルスが、高フラックスパルスの各ペア間に生成され、反復サイクルは、100~1000μsであり得る。
【0048】
一例によると、処理ユニット40は、複数の第1のX線パルスのパルス持続期間を制御するように構成され、少なくとも1つの第2のX線パルスのパルス持続期間を制御するように構成される。
【0049】
一例において、複数の第1のX線パルスのパルスが100μsの持続期間を有する。一例において、複数の第1のX線パルスのパルスが20μsの持続期間を有する。一例において、複数の第1のX線パルスのパルスが40μsの持続期間を有する。一例において、複数の第1のX線パルスのパルスが60μsの持続期間を有する。一例において、複数の第1のX線パルスのパルスが80μsの持続期間を有する。一例において、複数の第1のX線パルスのパルスが150μsの持続期間を有する。一例において、複数の第1のX線パルスのパルスが200μsの持続期間を有する。一例において、複数の第1のX線パルスのパルスが400μsの持続期間を有する。
【0050】
一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスのうちのパルスが1μsの持続期間を有する。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスのうちのパルスが1μs未満の持続期間を有する。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスのうちのパルスが2μsの持続期間を有する。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスのうちのパルスが5μsの持続期間を有する。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスのうちのパルスが10μsの持続期間を有する。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスのうちのパルスが20μsの持続期間を有する。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスのうちのパルスが50μsの持続期間を有する。一例において、少なくとも1つの第2のX線パルスのうちのパルスが100μsの持続期間を有する。
【0051】
一例によると、複数の第1のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルは、少なくとも1つの第2のX線パルス内におけるX線のエネルギースペクトルと実質的に同じである。第2のX線フラックスに対する第1のX線フラックスの比は、少なくとも1つの第2のX線パルスのパルス持続期間に対する、複数の第1のX線パルスの各パルスのパルス持続期間の比に実質的に等しい。
【0052】
一例によると、X線源20は、カソード22とアノード24との間における電子の相互作用を抑制するように構成されたスイッチ26を備える。処理ユニット40は、スイッチを制御することによりX線源を制御するように構成される。
【0053】
言い換えると、電源に結合され得るか、又は、別個の電源に結合され得るスイッチは、異なる持続期間のパルスを生成するために、アノードと相互作用するために、電子がカソードから放出されることを定期的に可能にするように処理ユニットにより制御される。
【0054】
一例において、スイッチは、カソードとアノードとの間に配置された格子を備え、格子が特定の電位に保持されたとき、電子がカソードにより放出されてアノードと相互作用し得、格子の電位が変えられたときは、このような相互作用がない。言い換えると、X線源(X線管などの)の格子スイッチングは、X線ビーム変調を提供するために、急速な立ち上がり時間及び立ち下がり時間(約1μs又は1μs未満)とともに使用され、X線フラックスが投影ごとに制御されることを可能にする。
【0055】
一例によると、スイッチ26は、約1μsの立ち上がり時間を有する。
【0056】
図2は、物体を撮像するためのシステム100の一例を示す。システム100は、図1に示される装置の例の任意の1つ又は任意の組み合わせに関連して上で説明されたように、X線を生成するための装置10と、X線ディテクター110とを備える。X線ディテクター110、電源30、及びX線源20はこの例において孔内に滑動し得るテーブル66を収容するための孔を含む主ハウジングに収容される。他の形状は、貫通孔もテーブルも必要とせず、従って、これらの特徴は任意選択的とみなされ得る。CTスキャナである特定の形状のシステムが図2に示されるが、図11に示される異なる形状のCTスキャナ(Cアームスキャナ)を含む他のシステム形状も可能である。X線源20は、X線源20とX線ディテクター110との間の領域の少なくとも一部が、物体を収容するための検査領域となるように、X線ディテクター110に対して配置されるように構成される。X線ディテクター110は、複数の第1のX線パルスのうちの1番目のX線パルスが生成されたときに、第1のデータを獲得するように構成され、第1のデータは、スペクトルデータを含む。X線ディテクター110は、少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されたときに、第2のデータを獲得するようにさらに構成される。X線ディテクター110は、複数の第1のX線パルスのうちの2番目のX線パルスが生成されたときに、第3のデータを獲得するように構成され、第3のデータは、スペクトルデータを含む。処理ユニット40は、第1のデータと第3のデータとを含むスペクトル的に分解された像データを生成するように構成される。処理ユニット40は、第1のデータと第2のデータと第3のデータとを含むスペクトル的に一体化された像データを生成するようにさらに構成される。通信ケーブル60は、X線ディテクター110から処理ユニット40につながり、通信ケーブル70は、処理ユニット40から電源30、X線源20、及びX線ディテクター110につながる。これらは単一のケーブルとして示されるが、別々のケーブルであり得る。一例において、電源30は、処理ユニット40とともに収容され得る。このような場合、通信ケーブル60は、X線ディテクター110から処理ユニット40につながり、一体型の通信及び電力ケーブル70は、電源30及び処理ユニット40からX線源20及びX線ディテクター110につながる。
【0057】
一例において、システムは、X線源及びディテクターが物体の周りで回転して異なる角度位置においてデータを獲得することにより、物体の角度データを取得するために使用される。従って、システムは、当業者により認識されるように、「単一の走査」を形成するために多くの角度位置においてデータを獲得するために使用可能である。従って、システムはこのような単一の走査を使用して、1)高分解能(非スペクトル)像と、2)より低い空間分解能の、又は制限された視野を有する高い信号対ノイズをともなうスペクトル像を取得するために使用可能である。
【0058】
一例において、第1のデータは、システムの軸に対して第1の角度位置において獲得され、第2のデータは、システムの軸に対して第2の角度位置において獲得され、第3のデータは、システムの軸に対して第3の角度位置において獲得される。
【0059】
一例において、処理ユニットは、スペクトル的に分解された像データを使用して、スペクトル的に一体化された像データにビーム硬化修正を実施するように構成される。
【0060】
一例において、処理ユニットは、スペクトル的に一体化された像データを使用して、スペクトル的に分解された像データに分解能修正を実施するように構成される。
【0061】
このように、このようなハイブリッド型システム内において、非スペクトルデータは、スペクトルデータを改善又は増強するために使用され得、及び/又は、スペクトルデータは、非スペクトルデータを改善又は増強するために使用され得る。
【0062】
この手法により、ディテクター読み取り値当たりの総ノイズ(量子及び電子ノイズ)が低減され得、信号対ノイズの改善に加えてノイズ誘起バイアスの大幅な改善をもたらす。
【0063】
一例によると、処理ユニット40は、第2のデータにおけるノイズの少なくとも1つの測定値を特定するように構成され、第2のデータは、スペクトルデータを含む。ノイズの少なくとも1つの測定値に基づいて、処理ユニット40が、第1のデータと第2のデータと第3のデータとからスペクトル的に分解された像データを生成するように構成される。
【0064】
個々の検出値におけるノイズに基づいたスペクトル像のための投影低フラックスデータの任意選択的な使用は、(ピクセルごとに)投影内に、及び角度領域内に非標準的な投影サンプルをもたらすことに留意されたい。これは、非標準的なサンプリングデータを扱うことのできる再現技術を要求する。しかし、いわゆる反復再現方法は非標準的なサンプリングデータを扱うことができ、高フラックスデータの排他的な使用と比較して、追加的なデータから利益をもたらし得る。
【0065】
一例によると、X線ディテクター110は、第1のX線エネルギーにおけるエネルギー依存データを獲得するように、第2のX線エネルギーにおけるエネルギー依存データを獲得するように構成される。
【0066】
一例において、X線ディテクターはデュアル層ディテクターである。これは、スペクトル撮像を提供するために使用可能なスペクトルエネルギーデータを獲得する単純な手段を提供する。
【0067】
一例において、ディテクターは2つのシンチレーターを含み、2つのシンチレーターの各々が異なるスペクトル感度を有する。
【0068】
一例によると、第1のデータは、第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データとを含み、第3のデータは、第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データとを含む。
【0069】
一例によると、第2のデータは、スペクトルデータを含み、第2のデータは、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データとを含む。処理ユニット40は、第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データとから第1の組み合わせデータを生成するように、及び、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データとから第2の組み合わせデータを生成するように、及び、第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データとから第3の組み合わせデータを生成するように構成される。スペクトル的に一体化された像データは、第1の組み合わされた像、第2の組み合わされた像、及び第3の組み合わされた像から生成される。
【0070】
一例において、処理ユニットは、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データにおけるノイズの測定値を特定するように、及び、第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データにおけるノイズの測定値を特定するように構成され、ノイズの測定値に基づいて、処理ユニットは、第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データ、第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データ、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データ、並びに/又は、第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データ、第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データ、及び第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データからスペクトル的に分解された像データを生成するように構成される。
【0071】
言い換えると、ワンショットのみに対してディテクターの一方の半分に対応するデータがそのショットのために使用される場合でも、データのすべてがスペクトル像データを提供するために使用され得る。
【0072】
一例において、システムは、スペクトル的に分解された像データを表すデータを出力するように構成された出力ユニットを備える。一例において、システムは、スペクトル的に分解された像データとスペクトル的に一体化された撮像データとを表すデータを出力するように構成された出力ユニットを備える。
【0073】
一例において、システムは、CアームCTシステムを備える。他の例において、異なる種類の像獲得構成が使用される。
【0074】
図3は、その基本ステップとしてのX線を生成する方法200を示す。方法200は、
ステップa)とも呼ばれる生成するステップ210において、電源30が電圧を生成することと、
ステップb)とも呼ばれる位置付けるステップ220において、X線源20のカソード22が、X線源のアノード24に対して位置付けられることと、
ステップc)とも呼ばれる放出するステップ230において、電子が、カソードから放出されることと、
ステップd)とも呼ばれる相互作用するステップ240において、カソードから放出された電子が、電圧に対応したエネルギーでアノードと相互作用することと、
ステップe)とも呼ばれる生成するステップ250において、X線がアノードから生成されることであって、電子がアノードと相互作用してX線を生成する、ことと、
ステップf)とも呼ばれる制御するステップ260において、各々が第1のX線フラックスを含む複数の第1のX線パルスが生成されるようにX線源が制御されることであって、第1のX線パルスが互いから時間的に分離されている、ことと、
ステップg)とも呼ばれる制御するステップ270において、第1のX線フラックスより大幅に少ない第2のX線フラックスを含む少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されるようにX線源が制御されることであって、少なくとも1つの第2のX線パルスが、時間的に第1のX線パルスのうちの連続したパルス間において生成される、ことと、
を有する。
【0075】
上述の方法において、ステップb)は、位置付けるステップと呼ばれるが、これは、X線源のカソードとアノードとの間における何らかの動きがあることが必要とされることを意味するのではなく、アノードとカソードとが互いに相対的に位置付けられることを意味し得、この位置付けは、固定の形状であり得る。
【0076】
一例において、ステップf)は、電源30を制御するステップ262を有する。
【0077】
一例において、ステップf)は、複数の第1のX線パルスの各々のパルス持続期間を制御するステップ264を有する。
【0078】
一例において、ステップg)は、電源30を制御するステップ272を有する。
【0079】
一例において、ステップg)は、少なくとも1つの第2のX線パルスのパルス持続期間を制御するステップ274を有する。
【0080】
一例において、X線源20は、カソードとアノードとの間における電子の相互作用を抑制するように構成されたスイッチ26を備え、ステップf)は、スイッチを制御するステップ266を有する。
【0081】
一例において、X線源20は、カソードとアノードとの間における電子の相互作用を抑制するように構成されたスイッチ26を備え、ステップg)は、スイッチを制御するステップ276を有する。
【0082】
図4は、その基本ステップとしての物体を撮像する方法300を示す。方法300は、
ステップa)とも呼ばれる生成するステップ310において、図3に示される方法に関連して上で説明されるように、X線源20からX線が生成されることと、
ステップb)とも呼ばれる配置するステップ320において、X線源とX線ディテクター110との間の領域の少なくとも一部が、物体を収容するための検査領域となるように、X線源が、X線ディテクター110に対して配置されることと、
ステップc)とも呼ばれる獲得するステップ330において、複数の第1のX線パルスのうちの1番目のX線パルスが生成されたときに、第1のデータが獲得されることであって、第1のデータがスペクトルデータを含む、獲得されることと、
ステップd)とも呼ばれる獲得するステップ340において、少なくとも1つの第2のX線パルスが生成されたときに、第2のデータが獲得されることと、
ステップe)とも呼ばれる獲得するステップ350において、複数の第1のX線パルスのうちの2番目のX線パルスが生成されたときに、第3のデータが獲得されることであって、第3のデータがスペクトルデータを含む、獲得されることと、
ステップf)とも呼ばれる生成するステップ360において、スペクトル的に分解された像データが、第1のデータと第3のデータとから生成されることと、
ステップg)とも呼ばれる生成するステップ370において、スペクトル的に一体化された像データが、第1のデータと第2のデータと第3のデータとから生成されることと、
を有する。
【0083】
上述の方法において、ステップb)は配置するステップと呼ばれるが、これは、X線源とディテクターのアノードとの間に何らかの動きがあることが必要とされることを意味するのではなく、X線源とディテクターとが互いに相対的に配置されることを意味し得、この配置は固定の形状であり得、ただし、両方が軸の周囲で回転するが一定の離間距離にある。しかし、X線源とディテクターとは、必要に応じて、一緒により近くに動かされ得るか、又は、互いに離れるように動かされ得る。
【0084】
物体を撮像する方法300の一例において、ステップa)は、その基本ステップとしてのX線を生成する方法200であるが、図3に関係して説明される任意選択的な方法ステップの任意の組み合わせを有する方法200であり得る。
【0085】
一例において、本方法は、ステップh)すなわち、スペクトル的に分解された像データを使用して、スペクトル的に一体化された像データにビーム硬化修正を実施するステップ380を有する。
【0086】
一例において、本方法は、ステップi)すなわち、スペクトル的に一体化された像データを使用して、スペクトル的に分解された像データに分解能修正を実施するステップ390を有する。
【0087】
一例において、第2のデータは、スペクトルデータを含み、ステップf)は、第2のデータにおけるノイズの少なくとも1つの測定値を特定するステップ362を有し、ノイズの少なくとも1つの測定値に基づいて、スペクトル的に分解された像データが、第1のデータと第2のデータとスペクトルデータとから生成される。
【0088】
一例において、X線ディテクターは、第1のX線エネルギーにおけるデータを獲得するように、及び、第2のX線エネルギーにおけるデータを獲得するように構成される。
【0089】
一例において、第1のデータは、第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データとを含み、第3のデータは、第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データとを含む。
【0090】
一例において、第2のデータは、スペクトルデータを含み、第2のデータは、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データと、第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データとを含む。次に、本方法は、第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データとから第1の組み合わせデータを生成するステップと、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データとから第2の組み合わせデータを生成するステップと、第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データと第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データとから第3の組み合わせデータを生成するステップとを有する。次に、ステップg)は、第1の組み合わされた像、第2の組み合わされた像、及び第3の組み合わされた像から、スペクトル的に一体化された像データを生成するステップを有する。
【0091】
一例において、ステップf)は、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データにおけるノイズの測定値を特定するステップと、第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データにおけるノイズの測定値を特定するステップを有する(364)。ノイズの測定値に基づいて、スペクトル的に分解された像データが、第1のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データ、第2のX線エネルギーにおける第1のエネルギー依存データ、第1のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データ、並びに/又は、第2のX線エネルギーにおける第2のエネルギー依存データ、第1のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データ、及び、第2のX線エネルギーにおける第3のエネルギー依存データから生成される。
【0092】
X線を生成するための装置及び方法、並びに、物体を撮像するためのシステム及び方法の例が、図5図10に関連して以下でより詳細に説明される。
【0093】
まばらなサンプリングによるCT検出ノイズ低減
シンチレーターベースのCTディテクターは、電子ノイズの影響を受ける。ノイズレベルは低いが、入射X線フラックスが非常に低くなった場合にはノイズが支配的となり得る。高度な反復再現の使用などのCT撮像における改善は、超低線量走査を可能にし、検出ノイズが重要性を高め、制限となり得る。これを解決するために、X線管格子スイッチング(GS)を使用してまばらな獲得が行われ、格子スイッチングされるX線管が超高速(約1μsの立ち上がり時間及び立ち下がり時間)のX線ビーム変調を可能にする。管格子スイッチングは、従来のX線管のカソードとアノードとの間における電子ビームを制御するためのよく知られた技術である。本技術は、市販のX線蛍光透視機において使用される。(速いスイッチング時間の)同じ技術が、X線フラックスを変調するために本例において使用される。この管技術の基本原理は、R.Behling、Modern Diagnostic X-ray Sources、CRC Pressにおいて説明される。従って、投影ごとにX線フラックスを制御することが可能となる。X線パルス幅変調を使用して、単一の投影による獲得(~100μs以上)における平均フラックスを急速に制御することが可能となる。X線フラックスは、さらに、異なるパルスに対して電流及び/又は電圧を変化させることにより、一定の持続期間にわたって変調され得る。
【0094】
GSを使用して角度サブサンプリングが実施される。図2に示されるシステムが人間などの物体の周りで回転するとき、1つのレベルにおいて、1つおきのビューのみをサンプリングすること、及び、従ってGSを使用してX線ビームを変調することにより、スペクトルデータが取得され得る。まばらな獲得中にX線管フラックスが倍増された場合、倍増されていないフラックスを使用した各ビューにおいてサンプリングされた場合と比べて、全体的な獲得に対して同じ総X線線量が取得される。しかし、使用される投影当たりのディテクターにおけるX線フラックスが倍増されているので、上述の電子ノイズ問題が低減される。
【0095】
デュアル層スペクトルCTのためのまばらな角度サンプリング
デュアル層検出(DL)では、図10に示されるように、層の異なる実効スペクトル感度によりスペクトル情報を取得するために、2つのシンチレーターのスタックが使用される。X線が層に吸収されて光子が生成され、光子が側方監視フォトダイオードにより検出される。最上層のシンチレーターが低エネルギーX線を吸収し、最上レベルのシンチレーターのピクセルの各々が関係するフォトダイオードピクセルを含み、同様に、最下層のシンチレーターが高エネルギーX線を吸収し、吸収された高エネルギーX線がフォトダイオードにより検出される。チャンネル当たりの電子部品は、従来のディテクターと同一なので、電子ノイズの影響を受ける。しかし、スペクトルデータがデュアル層検出により獲得されるとき、問題が悪化する。理想的な条件下であっても、総入射フラックスが2つの層により均等に共有されるので、1つの層により観測されるフラックスは、従来の検出の場合のフラックスと比較して、50%に過ぎない。現実に即した条件下では、フラックスのバランスがとられず、多くの場合、層のうちの1つが低いフラックスのみを入手し、他方の層はより高いフラックスを入手する。従って、信号対ノイズに低減が見られる。
【0096】
検出ノイズ問題に加えて、スペクトル撮像は、ノイズ誘起バイアスと呼ばれる効果の影響を受ける。DL検出から(VNC又はヨウ素マップなどの)スペクトル情報を取得するために、2つのチャンネルからのデータは、(非線形)材料分離工程を経る必要がある。本工程は、ノイズのある入力データのためのバイアスを生成する傾向にある。バイアスは、像の質に著しい悪影響をもたらし、定量化に対する問題となる。しかし、まばらなサンプリングは、バイアス問題を大幅に改善し得、及び、ディテクター読み取り値当たりの総ノイズ(量子及び電子ノイズ)の低減に起因して、GSベースのまばらなサンプリングの追加的な利点となる。
【0097】
図5は、この手法により反復し続けるx線管変調パターンの一例を示す。比較的低い実効線量(又は、フラックス)をともなう一連の獲得サイクルにおいて、1つのサイクルは、はるかに高い線量(フラックス)を含み、低フラックスサイクルが、連続した高フラックスパルス間に時間的に散在する。この変調パターンは、従来の(非スペクトル)撮像に対する中程度のまばらな、又はさらには(まばらでない)完全な角度サンプリングの高い像品質を、スペクトル撮像のためのまばらなサンプリングと組み合わせることで、ハイブリッド型のまばらなサンプリングアプローチを可能にする。ハイブリッド型アプローチでは、従来のスペクトルデータの再現は、異なる手法で実行される。従来の像再現は、図5に示される獲得サイクルの各々が投影のために使用されることをともなって、すべての投影を使用するので、角度サブサンプリングの影響を受けないか、又は、中程度にのみ影響を受ける。しかし、スペクトルの再現は、図5において位置N+4、N+8、N+12に示される、高フラックス獲得に対応したそれらの投影のみを使用する。
【0098】
ハイブリッド型のまばらなサンプリングのためのSNR利得
以下は、ハイブリッド型のまばらなサンプリングが、どのように、信号対ノイズの改善をもたらし得るかについての詳細を提供する。「s」個のサンプルと、サンプル当たり「n」個の光子の公称フラックスとを使用したシーケンスを検討する。これらのサンプルが組み合わされた場合、次式の信号対ノイズ比が得られ、
【数1】
ここで、「e」は電子ノイズの光子等価分散である。ハイブリッド型のまばらなサンプリングを使用して、「f」をこの単一のサンプルにおける総フラックスの一部として次式のより高フラックスをともなう1つのサンプルが使用される場合、
【数2】
次式の信号対ノイズ比が得られる。
【数3】
言い換えると、「f」は、考慮されるデュアル層ディテクターの一方の半分において検出されたフラックスの一部であるが、全体的なフラックスは、以前に考慮されたパルスのすべてを上回るものにマッチングするように、この1つのパルスにおいて増やされている。SNRの比較が図6にプロットされる。それは、光子の一部「f」のみが検出される場合であっても、電子ノイズからのより小さな寄与が存在するという事実が、SNRにおける損失を上回ることを明確に示す。
【0099】
図5において、高フラックスを有するものを含むすべてのパルスが、高分解能の従来の撮像を提供するために使用され、デュアル層ディテクターの2つの半分からの信号が、以前のスペクトル的に一体化された信号に加算される。しかし、信号レベルが監視され、低フラックス獲得に対して検出された信号が十分大きい場合、例えば、この角度位置における物体があまり吸収しない場合、この低フラックス獲得は、従来の撮像において使用されることに加えて、高フラックスの場合に対応した獲得とともにスペクトル撮像にも使用され得る。これは、ディテクターの2つの半分からのスペクトルデータが獲得され、スペクトルデータは上述のように従来の(非スペクトル)撮像のために一緒に加算されるが、スペクトル撮像の一部として2つの独立した信号として使用されるからである。このように、高フラックスシーケンスにおいてSNRの損失がない。
【0100】
図7は、(80、100、120、及び140kVpの管電圧に関係する)様々なスペクトル、及び、吸収(0から450mmの水)に対する数値的な検討の結果を示す。これらの図中「f」は「s」個の連続したパルスの総フラックスの50%が高フラックスパルス内にあることを示す0.5に等しく、「s」は3つの低フラックスパルスが各高フラックスパルスに追従することを示す4であることを示す。図7は、様々なエネルギー及び吸収に対してデュアル層ディテクターから特定された、ハイブリッド型のスペクトルデータに対する想定される信号対ノイズ利得を示す。様々な水吸収長(0から450mm)が、検出ユニットに対して異なるスペクトルを生成するので、ディテクターの2つの層間で共有するフラックスを変化させる。水吸収が多くなるほど、X線ビームがよりハードになり、第2の検出層が、第1の層と比較してより多くのフラックスを入手する。
【0101】
ハイブリッド型のまばらなサンプリングのためのノイズ誘起バイアス
ノイズのあるスペクトルデータの処理によりもたらされるノイズ誘起バイアスは、上で説明されており、ここでより詳細に説明される。(平均)減衰値が獲得されたデータにおけるノイズに依存するので、投影データにおける、及び結果として得られる像におけるバイアスは、定量的な像に対して問題を形成する。バイアスは、データにおける想定される値及びノイズの決定論的関数であるが、推定は、想定される値自体の知識なしでノイズのあるデータサンプルからバイアスが導き出されなければならないという事に影響されるので、バイアスを推定及び修正することは困難である。従って、ノイズ誘起バイアスは、以下でさらなる詳細を提供するように、信号対ノイズを改善することにより軽減され得る。
【0102】
簡潔のため、獲得されたデータの対数は、データの単純な非線形処理関数をモデル化するために、像再現の一部として特定され得ると仮定される。典型的には、対数は、測定されたディテクター信号を再現のための線形な吸収線積分に変換するために使用され、従って、この単純な測定値は、要求される処理の指標を提供する。この関数が明示的に実施されない場合でも、変換がデータに概念的に適用されなければならず、どこかに隠されている可能性があり、従って、データの忠実性を検査する手段として機能する。
【0103】
ポアソン到着分布でディテクターに到達する「n」個の光子が存在する場合、対数から想定されるバイアスは、b=E(logX(n))-log nであり、ここで、X(n)はポアソン分布した確率変数であり、「n」は平均である。図8は、次式の相対バイアスの数値的評価を示す。
【数4】
数値的な不安定さがあるので、シミュレーションは、ディテクターに到達する6個以上の光子の事例に制限される。これは、ノイズのある信号をもたらすロー信号の周辺における問題を示す。ハイブリッド型のまばらなサンプリングの影響のデュアル層システムシミュレーションが図9に示され、図9は、まばらなサンプリングとまばらでないサンプリングとの両方に対する様々なエネルギー及び吸収に対するノイズ誘起バイアスを示し、まばらなサンプリングがノイズ誘起バイアスを軽減することを浮き彫りにする。図9に示されるデータをもたらすシミュレーションの場合、やはり「f」=0.5、及び「s」=4である。
【0104】
図10は、デュアル層ディテクターアレイを示し、そのアレイの1つのピクセルが拡大図に示される。ディテクターピクセルは、一方を他方の上に重ねてスタックされた2つのシンチレーターにより形成され、X線は、上部から入射される。低エネルギーX線は上部シンチレーターに吸収され、吸収が、そのシンチレーターの側部に配置されたフォトダイオードにより検出されるより長い波長の放射線の放射をもたらす。下部のシンチレーターは高エネルギーX線を吸収し、再び、再放射されたより長い波長の放射線がそのシンチレーターに関係する第2のフォトダイオードにより検出される。
【0105】
図11は、図2に示されるものに対して、物体を撮像するためのシステムの別の例を示し、この形状はCアーム構成である。
【0106】
ビーム硬化修正
本ハイブリッド型システムにおいて、まばらなスペクトルデータが、高分解能非スペクトルデータにおけるビーム硬化を修正するために使用され得る。ビーム硬化という用語は、X線ビームのスペクトルが物体を通るときに、比較的より高いエネルギーの光子を入手する(よりハードになる)物理的効果を表すことに留意されたい。像獲得がこの非線形エネルギー吸収に対して分解をすることができない場合、ディテクター読み取り値からの線形減衰係数の推定は、もはや固有のものではない。問題に対する通常の解決策は、撮像デバイスの理論的なスペクトル応答について取り上げ、水(又は、軟組織)が減衰の原因となると推定する。これらの推定を使用して、いわゆる水-ビーム硬化修正が実施され得る。水、又は軟組織などの水に類似した吸収体が吸収を支配している場合は、これが十分に機能する。しかし、より大きな原子番号を有するカルシウム(骨)又はヨウ素(造影剤)などの他の元素が関連するようになった場合、この1次修正はうまくいかず、いわゆるビーム硬化アーチファクトを生成する。より高度な方法は、第1の再現を行い、結果として得られる像において骨をセグメント分けする。識別された骨を使用して、改善された修正が投影データに適用されて、この骨のスペクトルの減衰を推定し得る。従って、骨像の順投影により骨の減衰の寄与が推定される。第2の再現において、修正された投影データが修正された像を生成するために使用される。これらの種類の修正方法は、第2パスビーム硬化修正と呼ばれる。アーチファクト及び関係する修正が、典型的には低空間周波数成分のみを含むことに留意されたい。
【0107】
本装置、システム、及び方法に従ったハイブリッド型のまばらなサンプリングの場合、低空間周波数スペクトルデータは、従来の像に対してビーム硬化修正を実施するために使用され得る。この修正を実施するために、次の2つの方法が使用され得る。
【0108】
スペクトル的な材料の分解(例えば水、骨)が、高フラックスの読み取り値に対して実施される。修正係数が、組み合わされたディテクター値に対して計算及び適用される。低フラックスの読み取り値に対する修正係数は、高フラックスを有する幾何学的に隣のデータから補間される。
【0109】
骨像がスペクトル的な材料の分解及び再現から取得される、いわゆる第2パスビーム硬化が効果的に適用されて、骨像を生成する。
【0110】
ビーム硬化修正のこれらの基本原理は、ヨウ素又は金属(例えばインプラント)などの大きな原子番号を有する他の材料に適用され得る。
【0111】
従来の像からのスペクトル像の修正
本ハイブリッド型システムにおいて、非スペクトルデータが、まばらなスペクトルデータを改善するために使用され得、より高い空間分解能及び従来の像の低減されたノイズが、スペクトル像を改善するために使用される。まず、まばらなサンプリングがなぜ制限された空間分解能をもたらすのかが簡潔に説明され、次に従来の非スペクトルがこれを改善するためにどのように使用され得るかが説明される。
【0112】
CTデータ獲得は、個別のデータサンプルを獲得する。再現は、これらのデータを個別の像に伝える。データ表現の空間サンプリング及び信号周波数は、エイリアシングアーチファクトを避けるためにいくつかのナイキスト条件を満たさなければならない。本問題は、K.Kak及びM.Slaney、applied mathematicsのSIAMにおける“Principles of Computerized Tomographic Imaging”、p.177以降に説明される。像領域内において要求される空間分解能に対して、獲得のサンプリング周波数は、エイリアシングを避けるために最小要求を満たさなければならない。角度サンプリング周波数(角度サブサンプリング)が小さくされると(これは、ここではまばらなサンプリングを使用してスペクトルデータを生成するために使用される高フラックスパルスに対して行われる)、像領域内において制限された空間分解能のみを生成し得る。角度高フラックス投影の数が制限されるので、投影データは、それに応じてフィルタ処理されることを必要とし、このことから、完全な角度サンプリングと比較して制限された空間分解能のみが生成され得る。
【0113】
非スペクトルデータを使用してこの状況を改善することに関して、構造化された伝搬と呼ばれる1つの強力な方法では、像(非スペクトル像及びスペクトル像)内における構造的性質が非常に似ている(例えば縁部が同じ位置にある)ことを想定する。像のノイズモデルと組み合わせて、オブジェクト関数が定式化され得、従来の(非スペクトル)像の構造をスペクトル像に伝搬するために数値的に最適化され得る。このような方法は、WO2014128595A1に記載される。このように、従来の高分解能の像は、スペクトル像の分解能を改善するために使用され得る。
【0114】
別の例示的な実施形態において、適切なシステムにおいて、先行する実施形態のうちの1つに従った方法の方法ステップを実行するように構成されることにより特徴付けられたコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0115】
コンピュータプログラム要素は、従って、コンピュータユニットに記憶されてもよく、これも一実施形態の一部である。この演算ユニットは、上述の方法のステップを実施するように、又は実施することを誘起するように構成されてもよい。さらに、それは、上述の装置及び/又はシステムのコンポーネントを動作させるように構成されてもよい。演算ユニットは、自動的に動作するように、及び/又はユーザーの命令を実行するように構成され得る。コンピュータプログラムは、データプロセッサの作業メモリにロードされてもよい。データプロセッサは、従って、先行する実施形態のうちの1つに従った方法を実施するように装備されてもよい。
【0116】
本発明のこの例示的な実施形態は、まさに最初から本発明を使用するコンピュータプログラムと、更新により既存のプログラムを本発明を使用するプログラムに変換するコンピュータプログラムとの両方をカバーする。
【0117】
さらに、コンピュータプログラム要素は、上述のような方法の例示的な実施形態の手順を満たすすべての必要なステップを提供することが可能である。
【0118】
本発明のさらなる例示的な実施形態によると、CD-ROMなどのコンピュータ可読媒体が提示され、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータプログラム要素を含み、このコンピュータプログラム要素はこれまでのセクションにより説明される。
【0119】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一体的に又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体に記憶及び/又は分散されてもよいが、インターネット又は他の有線又は無線電気通信システムを介するなどにより、他の形態でも配信されてもよい。
【0120】
しかし、コンピュータプログラムは、また、ワールドワイドウェブといったネットワークを通じて提示されてもよく、このようなネットワークからデータプロセッサの作業メモリ内にダウンロードされ得る。本発明のさらなる例示的な実施形態によると、ダウンロードのためにコンピュータプログラム要素を利用可能にする媒体が提供され、このコンピュータプログラム要素が本発明の上述の実施形態のうちの1つに従った方法を実行するように構成される。
【0121】
本発明の実施形態が異なる主題との関連において説明されることに留意されたい。特に、いくつかの実施形態が方法形態の請求項に関連して説明されるのに対して、他の実施形態はデバイス形態の請求項を参照しながら説明される。しかし、当業者は、上述の内容と以下の説明とを参照して、別段の記載がない限り、一つの形態の主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関する特徴の間の任意の組み合わせも本出願において開示されるとみなされることを理解する。しかし、すべての特徴が組み合わされて、特徴の単なる足し合わせを上回る相乗効果を提供し得る。
【0122】
図面及び上述の説明において本発明が詳細に例示及び説明されるが、このような例示及び説明は例示又は一例とみなされ、限定とはみなされない。本発明は、開示される実施形態に限定されない。図面、本開示、及び従属請求項の考察により、請求項に記載された発明を実施する当業者により、開示される実施形態に対する他の変形例が理解及び実現され得る。
【0123】
特許請求の範囲において、「備える」という用語は、他の要素もステップも排除せず、「1つ(a)」又は「1つ(an)」という単数表現の不定冠詞は、複数を排除しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲において列挙されたいくつかの項目の機能を果たす。単に特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されるということは、利点を得るためにこれらの手段の組み合わせが使用され得ないということを示すわけではない。特許請求の範囲における参照符号は、いずれも特許請求の範囲を限定するように解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11