(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】葉脈状エクステンション
(51)【国際特許分類】
A41G 5/00 20060101AFI20220111BHJP
A41G 3/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A41G5/00
A41G3/00 J
(21)【出願番号】P 2019089003
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2019-12-27
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510122083
【氏名又は名称】平野 隆喜
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(72)【発明者】
【氏名】平野 隆喜
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】関口 哲生
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-231437(JP,A)
【文献】特開2018-90935(JP,A)
【文献】特開2007-217802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G3/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地毛に装着するための装着手段が紐状体であるエクステンションの製造方法であって、
前記エクステンションが、
前記紐状体が、太さ53d~10,630dの繊維によって形成されたものであり、
その紐状体の一端側際に、複数本の人毛を束ねた10~30個の毛束を、所定の長さを隔てて結び付けることによって形成されているとともに、
前記10~30個の毛束が、結び目を真ん中にした状態で、前記紐状体の長手方向に沿って前記紐状体から左右に互い違いに突出した状態になっているものであり、
前記各毛束が下記(a)~(d)の工程によって前記紐状体に結びつけられることを特徴とする葉脈状エクステンションの製造方法。
(a)紐状体の下側に、3本~5本の人毛を束ねた毛束を1回折り返して、略U字状の第一の折り返しを形成させた状態でセットする工程
(b)毛束の片方の端縁を、紐状体の下側から上側に通すとともに、毛束の他方の端縁を、紐状体の下側から上側に通して、前記第一の折り返しの先端の下側を通過させてから、折り返して、略U字状の第二の折り返しを前記第一の折り返しよりも外側に突出するように形成させた後、再び、前記第一の折り返しの先端の下側を通過させて、紐状体の上側を通過させる工程
(c)毛束の片方の先端を、前記第一の折り返しの外側であって前記第二の折り返しの先端の下側から、前記第二の折り返しと前記第一の折り返しとで形成される空間内を通過させた後に、毛束の両端縁を引っ張る工程
(d)各毛束を紐状体に結び付けた後、それらの毛束の結び目の位置を紐状体に沿って移動させて紐状体の一端側際に纏める工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪にボリューム感を与える等の目的で地毛に装着するヘアエクステンション(付け毛)に関するものである。さらに言えば、外観が葉脈状に形成された葉脈状エクステンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエクステンションとしては、付け足す毛髪の束の基端に金属製のチューブが付設されており、その金属製のチューブの内部に地毛を挿通させた状態でチューブを圧壊することによって地毛に装着するものが知られている。また、接着剤を含浸させた毛髪の束からなる筒状体の外側に熱収縮チューブが被覆されており、筒状体の内部に地毛を挿通させた状態で熱収縮チューブをアイロン等で加熱することにより、収縮したチューブと溶融させた接着剤とによって地毛に装着するものも開発されている。
【0003】
特許文献1には、「地毛を傷めることなく、きわめて容易に地毛に装着することができる上、地毛の拘束力が高いため取れにくく、しかも、横たわった場合でも使用者に違和感を与えることがない実用的なエクステンションを提供する。」ことを課題として、「エクステンション1は、地毛への装着手段である紐状体3が、片端に結び目を形成したものであり、その結び目(塊状部7)を本体部2の毛髪内に埋め込んで毛髪とともにバインダーで接着することによって本体部2に固着されている。また、紐状体3には、基端と先端とを離す方向に引っ張ることによって収縮する第一ループ5aおよび第二ループ5bが約2.0mmの間隔を隔てて位置するように形成されている。」エクステンション(特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るエクステンション(特許文献1:発明の名称)は、結び目(塊状部7)を本体部2の毛髪内に埋め込んで毛髪とともにバインダーで接着することによって本体部2に固着されている。要するに、複数本の人毛が向きを揃えて束ねられ、その束の基端の長さ10mmの部分を、耐熱性のケラチンを主成分とするバインダー(所謂、ケラチンボンド)によって接着することにより一体的に結束されているため、人工毛の始点の位置が横並びになってしまうことにより、人工的に髪の毛を増やしているように見えてしまう、すなわち、特許文献1に係るエクステンションは、本来の髪の毛が人間の頭に自然に生えているようには見えにくい。
【0006】
本発明の目的は、地毛に接着剤を固着させる必要がなく、かつ、製造の過程においても接着剤をまったく使用する必要がないため効率的に製造することができる上、人工毛の始点の位置を分散することができるので、見た目が自然な感じに見えるように装着することができる(すなわち、本来の髪の毛が人間の頭に自然に生えているように見せかけることが可能な)葉脈状エクステンションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、地毛に装着するための装着手段が紐状体であるエクステンションの製造方法であって、前記エクステンションが、前記紐状体が、太さ53d~10,630dの繊維によって形成されたものであり、その紐状体の一端側際に、複数本の人毛を束ねた10~30個の毛束を、所定の長さを隔てて結び付けることによって形成されているとともに、前記10~30個の毛束が、結び目を真ん中にした状態で、前記紐状体の長手方向に沿って前記紐状体から左右に互い違いに突出した状態になっているものであり、前記各毛束が下記(a)~(d)の工程によって前記紐状体に結びつけられることを特徴とする葉脈状エクステンションの製造方法である。
(a)紐状体の下側に、3本~5本の人毛を束ねた毛束を1回折り返して、略U字状の第一の折り返しを形成させた状態でセットする工程
(b)毛束の片方の端縁を、紐状体の下側から上側に通すとともに、毛束の他方の端縁を、紐状体の下側から上側に通して、前記第一の折り返しの先端の下側を通過させてから、折り返して、略U字状の第二の折り返しを前記第一の折り返しよりも外側に突出するように形成させた後、再び、前記第一の折り返しの先端の下側を通過させて、紐状体の上側を通過させる工程
(c)毛束の片方の先端を、前記第一の折り返しの外側であって前記第二の折り返しの先端の下側から、前記第二の折り返しと前記第一の折り返しとで形成される空間内を通過させた後に、毛束の両端縁を引っ張る工程
(d)各毛束を紐状体に結び付けた後、それらの毛束の結び目の位置を紐状体に沿って移動させて紐状体の一端側際に纏める工程
【0008】
本発明に係る製造方法で製造されるエクステンションは、毛束を構成する毛髪の本数が3本~5本であり、毛束の長さが30cm~50cmであり、毛束間の長さが0.1mm~0.2mmであるものでも良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に記載された葉脈状エクステンションは、従来の装着方法(シート状のシールを使用する方法、地毛の根元に編み込んでいく方法、超音波を利用して取り付ける方法、筒状の小さなビーズ等に地毛と一緒に通しペンチ等で固定する方法等)とは異なり、地毛に装着するための装着手段が紐状体であるエクステンションである。そのため、地毛を傷めることなく、きわめて容易に地毛に装着することができる上、地毛の拘束力が高いため取れにくく、しかも、横たわった場合でも使用者に違和感を与えることがない実用的なエクステンションを提供することができる。
【0012】
それに加えて、本発明に係る葉脈状エクステンションは、紐状体の一端側際に所定の長さを隔てて、それぞれに複数本の毛髪を束ねた毛束を結び付けることにより形成されている。特許文献1に係るエクステンションは、長さ約300mmの人毛を約300本束ねることによって形成されており、その束の基端の長さ約10mmの部分をバインダーで接着することで一体化されているものであり、毛髪が一か所に纏めて形成されているため、装着時に多くの毛髪の基端が横方向に(一箇所に)揃うので不自然な感じが否めない。これに対して、本発明に係る葉脈状エクステンションは、装着時に毛髪の基端が異なった位置になるので、地肌から髪の毛が生えている状態に近い状態が創り出されるため、装着時における毛髪の状態をより自然な感じにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】葉脈状エクステンションの全体図、および部分拡大図である。
【
図2】葉脈状エクステンションの作製方法を示す説明図である。
【
図3】葉脈状エクステンションの取り付け前における全体図である。
【
図4】葉脈状エクステンションを地毛に取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<葉脈状エクステンションの構造、および作製方法>
以下、本発明に係る葉脈状エクステンション1の一実施形態について、
図1~
図4に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る葉脈状エクステンション1の全体図、および部分拡大図である。
【0015】
図1に記載したように、本発明に係る葉脈状エクステンション1は、紐状体2の一端側際に所定の長さを隔てた各箇所に対して複数本の毛髪3を束ねて結び付けることによって形成されていることを特徴としており、外観的に葉脈(葉面を走る維管束系の筋)のようにも見える葉脈状エクステンション1である。
【0016】
紐状体2の一端側際に所定の長さを隔てて、
図1拡大図に記載したように、それぞれに複数本の毛髪3(人毛であっても良いし、ファイバー等の人口毛であっても良い)を束ねて結び付けてある(結び付け方については、後で説明する)。所定の長さ(ある結び目の中心と隣接する結び目の中心の間隔)は、通常は1mm以下であるが、好みによっては、1mm以上間隔を空けることもできるし、間隔の幅をランダム(0.5mm~1.5mm)に設定することもできる。なお、一つの結び目4を形成する複数の毛髪3の本数は3本~5本であり、毛髪3の長さは30cm~50cmである。毛髪3を紐状体2に結び付けた際に生じる結び目4が、毛髪3の略真ん中になるように、かつ、紐状体2に沿って移動自在に結び付けてある。さらに、
図1に記載したように、毛髪3が紐状体2を中心にして結び目4毎に左右に互い違いに広がるように流している。
【0017】
図2は、葉脈状エクステンション1の作製方法を示す説明図(すなわち、葉脈状エクステンション1の紐状体2に対する毛髪3の結び付け方法を示す説明図)である。なお、本明細書においては、説明の便宜上、二次元的な表現となることは避けられないが、実際の作業は三次元空間にて行われている。
【0018】
まず、
図2(a)に記載したように、紐状体2の下側に、毛髪3(3本~5本束ねたもの)を1回折り返した状態でセットする。なお、折り返しの先端から見て、毛髪3の右側の先端を(α)とし、毛髪3の左側の先端を(β)とし、折り返しの先端を(γ)とする。この状態から結び付け作業を開始する。
【0019】
そして、
図2(b)に記載したように、毛髪3の右側の先端(α)を、紐状体2の下側から上側に通すとともに、毛髪3の左側の先端(β)を、紐状体2の下側から上側に通して、(γ)の下側を通過させてから、折り返して(γ‘と記載)再び、(γ)の下を通過させて、紐状体2の上側を通過させる。
【0020】
さらに、
図2(c)に記載したように、毛髪3の右側の先端(α)を、(γ)と(γ’)の間を通過させる。αβ両端を引っ張ることにより、最終的に、
図2(d)の如く結び目が形成されて結び付け作業の1回分が完了する。実際に葉脈状エクステンション1の作製する際は、この作業を何度も繰り返すことになる。すなわち、紐状体2に沿って隣接する箇所において、この工程を10回~30回程度繰り返すことになる。毛髪3を紐状体2に結び付けた後、結び目4の位置を紐状体2に沿って自由に移動させて紐状体2の一端側際に纏める。
【0021】
<葉脈状エクステンションの使用方法>
図3は、葉脈状エクステンション1の取り付け前における全体図である。葉脈状エクステンション1は、紐状体2の一端側際に所定の長さを置いて、それぞれに複数本の毛髪3を束ねて結び付けることにより形成されている。
図3に記載したように、紐状体2の他端側には、紐状体2を引っ張る際に指を挿通させるための内周約90mmの摘み5が、紐状体2を結束することによって形成されている。
【0022】
そして、紐状体2を結束することにより、紐状体2の基端と先端とを離す方向に引っ張ることによって収縮する第一ループ6、および第二ループ7が、所定の距離を隔てて位置するように形成されている。紐状体2は、綿を主成分とする太さ53d~10,630dの繊維によって形成されており、第一ループ6、および第二ループ7の内周の長さが、5.0mm~13.0mmになるように調整されている。
【0023】
図4は、葉脈状エクステンション1を地毛Hに取り付けた状態を示す説明図である。葉脈状エクステンション1を地毛H(すなわち、使用者自身の毛髪)に装着する場合には、所定量(約50本程度)の地毛H,H・・を束ねて、第二ループ7内を挿通させた後に、第一ループ6内を挿通させる(
図4参照))。なお、そのように地毛H,H・・を第二ループ7、第一ループ6に挿通させる場合には、かぎ針等の道具を好適に利用することができる。
【0024】
しかる後に、紐状体2の一端側の基端を把持しながら、紐状体3の摘み5を外向きに引っ張る。そのように紐状体2を引っ張ると、第一ループ6と第二ループ7とがわずかに間隔を拡げながら、相対的に回転するように捻れるとともに、第一ループ6、および第二ループ7の径が次第に小さくなる(すなわち、第一ループ6、および第二ループ7が収縮する(
図4参照))。
【0025】
そのように第一ループ6、および第二ループ7が、互いに捻れながら収縮すると、地毛H,H・・が、第一ループ6と第二ループ7との間で、約180度のスパイラルを描きながら紐状体2の凹凸(結束により形成された凹凸)に合わせて屈曲した状態で、第一ループ6、および第二ループ7によって把持される。そのため、第一ループ6および第二ループ7内を挿通させた地毛H,H・・は、極めて高い拘束力で把持される。
【0026】
そして、上記の如く、紐状体2の第一ループ6と第二ループ7とによって地毛H,H・・を把持させた後には、収縮した第一ループ5aと第二ループ5bとの外側で、紐状体2を切断することによって頭髪への装着を完了する。
【0027】
<葉脈状エクステンションの効果>
従来のエクステンションは、エクステンションを装着する方法としては、大きく分けて地毛に編み込む方法、地毛にシート状のシールを使いエクステを装着させるシート状エクステンション、直径3mm~5mm、長さは5mm~15mmの熱収縮チューブに地毛とエクステを一緒に通し、ヘアアイロン等の熱を利用して熱収縮チューブと接着剤でエクステを装着するもの等があった。
【0028】
編み込みエクステは、編み目があるので編み込んでいる部分がどうしてもボコボコしてしまうため、装着部に違和感がある。シールエクステは、ボコボコした触感がないが、取り外すときには、専用のリムーバーや、アセトンが成分に含まれている除光液を使用しなければならないので、地肌にダメージを与えてしまうことがあるし、また、装着強度が弱いという不具合もある。また、シャンプーやトリートメント等に含まれる成分や、地肌の油分も接着部を弱くしてしまう。さらに、熱にも弱いので、ドライヤーやヘアアイロンも制限される。
【0029】
本発明に係る葉脈状エクステンション1は、これらの従来からの方法を根本から見直すものであり、装着が簡単であるにも拘らず、十分な強度を有し、しかも違和感がないという画期的なエクステンションである。すなわち、葉脈状エクステンション1は、紐状体2の一端側際に所定の長さを隔てて、それぞれに複数本の毛髪3を束ねて結び付けることにより形成されている。特許文献1に係るエクステンションは、長さ約300mmの人毛を約300本束ねることによって形成されており、その束の基端の長さ約10mmの部分をバインダーで接着することで一体化されているが、かかるエクステンションは、毛髪3が一か所に纏めて形成されているので、装着時に多くの毛髪の基端が横方向に(一箇所に)揃ってしまい、不自然な感じが否めない。これに対して、本発明に係る葉脈状エクステンション1は、装着時に毛髪(各毛束)3の基端が異なった位置になるので、地肌から髪の毛が生えている状態に近い状態が創り出され、装着時における毛髪の状態がより自然な感じになる。
【0030】
<エクステンションの変更例>
本発明に係る葉脈状エクステンションは、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、紐状体、毛髪、結び目等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る葉脈状エクステンションは、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、頭髪にボリュームを与えるための所謂ヘアーエクステンションとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1・・葉脈状エクステンション
2・・紐状体
3・・毛髪
4・・結び目
5・・摘み
6・・第一ループ
7・・第二ループ