(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】化粧用塗布具
(51)【国際特許分類】
A45D 40/02 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A45D40/02 Z
(21)【出願番号】P 2019537430
(86)(22)【出願日】2017-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2017029744
(87)【国際公開番号】W WO2019038799
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000146825
【氏名又は名称】株式会社新和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】田中 章浩
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/027047(WO,A1)
【文献】実開昭48-072074(JP,U)
【文献】国際公開第02/039845(WO,A1)
【文献】米国特許第06234181(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/02~40/06
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に突起(22)が設けられた外筒(20)と、
外面に前記突起
(22)が嵌通するガイド溝(76)が設けられた内筒(60)と、
を有する二重構造の軸
(16)を備え、
前記ガイド溝(76)は、円周方向にのびる第1横溝(66)と第2横溝(70)と、軸方向にのびる第1縦溝(64)と第2縦溝(68)を有し、
前記第2縦溝(68)は、
前記第2横溝(70)の端点と、
前記第1横溝(66)の中央付近とを結んで軸方向に伸び、
前記第1縦溝(64)は、
前記第2縦溝(68)とは周方向にズレた位置に設けられ、
前記第1縦溝(64)は、
前記第1横溝(66)から軸方向に先端まで設けられている、
ことを特徴とする化粧用塗布具。
【請求項2】
前記第1横溝(66)および前記第2横溝(70)は、前記外筒
(20)を保持する保持手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧用塗布具。
【請求項3】
前記突起
(22)の形状は半円柱形状である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧用塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
軸が伸縮可能な化粧用塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイシャドウ、マスカラ、マニキュア等の化粧料を塗布する塗布具には、有底筒体の容器のキャップとして容器と一体化して備えられるタイプがある。このタイプの塗布具は、キャップを閉めた状態で容器に一端が挿入され、キャップを取り外した状態でキャップは塗布具の把持部として使用される。先端にある塗布部は、変形を防ぐためキャップを閉めた状態では容器の底面より上となることが多く、化粧料を最後まで使い切ることが難しい。化粧料を使い切るため、塗布具の軸が伸縮できるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。軸が伸縮することで、塗心地の向上もみこめ、使い勝手の向上にもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1を始めとする軸が伸縮する塗布具は、多くが螺合タイプであり、軸を伸ばすためにはキャップ等を回転させる必要がある。軸を所望の長さに伸ばせる利点はあるが、通常軸を伸ばして使用する場合には、使いやすいよう最長の長さまで伸ばして使用することが多く、使用のために伸ばす際にも塗布後に容器に収納するために縮める際にも、螺合されたキャップ等を回転させなければならず手間である。
【0005】
本発明の目的は、軸を容易に伸縮させることができる化粧用塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の化粧用塗布具は、内面に突起が設けられた外筒と、外面に前記突起が嵌通するガイド溝が設けられた内筒とを有する二重構造の軸を備え、ガイド溝は、円周方向にのびる二本の横溝と、前記二本の横溝を結ぶ軸方向へのびる縦溝を有し、軸の伸縮が可能であるよう構成した。
【0007】
好ましくは、ガイド溝は、前記縦溝とは周方向にずれた位置に設けられた第2の縦溝を有し、第2の縦溝は、二本の横溝の内の塗布部のある先端に近い横溝から軸方向に先端までのびるものとする。
【0008】
好ましくは、二本の横溝は内筒を着脱可能に保持する保持手段が備えられているものとする。
【0009】
さらに好ましくは、突起の形状は半円柱形状であるものとする。
【発明の効果】
【0010】
軸を容易に伸縮させることができる化粧用塗布具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧料容器の、キャップを外した状態での斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る化粧料容器の、分解した状態での正面縦断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る化粧料容器の基軸本体であり、(a)正面図、(b)基軸部の拡大斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る軸体の斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るガイド溝の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の構成)
以下、本発明に係る化粧用塗布具の好ましい実施形態を、図に従って説明する。
図1、
図2に示すように、化粧料容器1は、アイシャドウ等の粉末の化粧料80を収容する容器本体30、容器本体30に螺合して一体化するジョイント40、ジョイント40に着脱可能に嵌合する塗布具本体2を備える。塗布具本体2は、把持部としてのキャップ4、キャップ4に垂設された軸部16、及び化粧料80の塗布に使用する塗布体8を有する。
【0013】
容器本体30は有底の円筒であり、上端部が縮径されており、かかる容器縮径部32の上端に容器開口部34を有する。容器縮径部32の外周面には雄ネジ36が設けられている。容器本体30の材質は特に限定はされないが、プラスチップやガラスなど、透明又は半透明であれば収容されている化粧料80の色、残量、状態等を確認でき好ましい。
【0014】
塗布具本体2は、キャップ4、キャップ4に一体化し容器本体30に延出する基軸本体6、基軸本体6に嵌合して基軸本体6外周に備えられる軸体20、及び軸体20の先端に備えられる塗布体8から構成される。
【0015】
キャップ4の下部内面には、ジョイント40との嵌合に使用されるキャップ突起14が円周方向に複数個設けられている。ジョイント40の筒体42の外周面に円環状に突設された円環凸部46をこのキャップ突起14が乗り越えることで、塗布具本体2はジョイント40に着脱される。基軸本体6上部の拡径された基端部10はリブ62を有し、ここにキャップ4が冠着し一体化している。キャップ4は、化粧料80を塗布の際に使用者が把持する把持部となる。
【0016】
基軸本体6は中空であり、軸16を構成する基軸部60は円筒状で、基軸部60より長く一回り大きい筒状の軸体20と嵌合して全体を軸体20に覆われている。軸体20の先端開口部12には、塗布体8が嵌まり固着されている。
【0017】
塗布体8は、弾丸形状の先端の一部が斜めに切り取られた形状を有する。平面部分と曲面部分、細い部分と太い部分を合わせ持ち、一本で細かい塗り分けが可能である。塗布体8はこの形状に限られず、弾丸形状、球形状、円錐台形状、円柱形状等、先端開口部12に固着され底面孔52に嵌合する形状であれば良い。塗布体8の材質は、NBR、ウレタン、シリコン等の柔らかい材質が好ましく、スポンジ等それらを発泡させた材質、ルビーセル等の連続気孔体、筆、などでも良い。
【0018】
ジョイント40は、上面が開口し、内面が上方に向かって太く拡径し、中心に底面孔52が設けられた底面50を有する筒体42を有する。筒体42の外側円周には、筒体42よりも径の大きな筒状のカバー部44が設けられている。カバー部44の下部内周面には、雌ネジ48が設けられており、容器本体30の雄ネジ36と螺合可能となっている。ジョイント40の雌ネジ48と容器本体30の雄ネジ36が螺合した状態で、容器開口部34に筒体42は入り込み、化粧料80の出入り口は底面孔52となる。塗布体8は一番太い部分の径が底面孔52よりも一回り大きく、キャップ4が取着された状態でジョイント40の底面孔52に嵌合するよう軸部16の長さは調整されている。筒体42の内面は軸体20よりも太く、ジョイント40の上方開口部56にキャップ4が取着された状態で、軸体20は筒体42に入り込み、塗布体8が底面孔52に嵌る。塗布体8が隙間なく底面孔52を塞ぎ、塗布体8は底面孔52の栓の役割を果たし、化粧料80の飛散を防ぐ。塗布体8の先端は充填された化粧料80の上面よりも上方となるよう配置される。
【0019】
(伸縮構造)
塗布具本体2の軸部16は伸縮可能であり、その構造について説明する。
図3に示すように、基軸本体6の基軸部60の表面には、ガイド溝76が設けられている。このガイド溝76は、基軸部60の先端から基軸部60の軸方向(長手方向)に沿って基軸部60中ほどまで設けられた第1縦溝64、第1縦溝64の端部から右に折れて円周方向に全周の1/3程の長さで設けられた第1横溝66、第1横溝66の中央付近より第1縦溝64とは逆側に、基端部10まで軸方向に設けられた第2縦溝68、第2縦溝68の端点から第1横溝66と同じ円周方向である右に折れて全周の1/3程の長さで設けられた第2横溝70から構成される。これらの溝は、それぞれ180度回転した位置にも、もう1セット設けられている。
【0020】
図4に示すように、軸体20の上部内面には、ガイド溝76に嵌合し、ガイド溝76に沿わせ移動させるための軸体突起22が設けられている。軸体突起22は半円柱形状で、その長手方向(軸方向)は軸体20の軸方向と平行で、円周方向に向き合うように二つ設けられている。ガイド溝76の形状は軸体突起22の半円柱形状に合わせてあり、第1縦溝64及び第2縦溝68は断面形状が半円形状に、第1横溝66及び第2横溝70は、端部は角が丸くなっている。
【0021】
軸体20を基軸部60に組み付けの際は、軸体突起22を第1縦溝64の先端に合わせ、ガイド溝76に沿って滑らせ嵌合させる。軸体20が嵌合し易いよう、基軸部60の先端部分には軸体20の内径よりも径が小さい円柱部74が設けられている。また軸体突起22の外面部分には小さく軸体溝24が目印として設けられており、円周方向を合わせ易くなっている。第2横溝70の端部(行き止まり)近くには、盛り上がった山部72が設けられており、軸体突起22はクリック感をもって第2横溝70の端部に嵌合し、軸体20は基軸部60に保持される。軸体20は通常この位置に保持され使用される。
【0022】
使用者が軸部16を伸ばして使用したい場合には、ガイド溝76に沿って軸体20を移動させ、第1横溝66の端部で保持する。第1横溝66の端部は少し細くなっており、端部の高さL2(
図3参照)は、軸体突起22の高さL1(
図2参照)より僅かに小さいため、軸体20は軸体突起22の上下面の摩擦により固持される。基軸部60と軸体20の二重構造からなる軸部16は、このガイド溝76と軸体突起22により、伸縮を可能にしている。
【0023】
(作用効果)
化粧料80を肌等に塗布の際は、化粧料容器1の上下を逆にするようにして数度振ることで、塗布体8に化粧料80を付着させ、キャップ4を把持してジョイント40から引抜き使用する。化粧料80の残量が少ない場合には、ジョイント40を外し、軸部16を伸ばして塗布体8に化粧料80を塗布させることで、最後まで化粧料80を使い切ることができる。塗布体8に自分の好みの分量や位置で化粧料80を付着させたい場合や、使用感や使い勝手をアップさせたい場合などにも、好みに応じて軸部16を伸ばして使用することができる。ガイド溝76に沿って軸体20を移動させるだけで軸16を延長でき、螺合タイプのように回転させる手間がなく、延長も収縮も容易で、伸ばした/縮めた位置で軸体20を固持できる。
【0024】
第1縦溝64と第2縦溝68が同一線上になく、互いが周方向にずれた位置に設けられているため、軸体20を引き出しそのまま外れてしまうのを防ぐことができる。
【0025】
また軸が伸縮する塗布具でも、組み付けが複雑であるタイプや、一度組み付けると取り外しは困難であるタイプとは異なり、伸縮するための構造がシンプルで、部品点数も少なく、組み付けしやすく、取り外しも容易である。軸体20はガイド溝76に沿って動かすだけで取り外し出来るため、形状の異なる塗布体8を有する他の軸体20を容易に付け替えて使用することができ、化粧料80を好みの塗布体8で塗布することが可能である。また、塗布体8が変形や固化した場合に、軸体20ごと新品に取り換えることも容易である。先端の塗布体8だけの交換では、使用の際に塗布体8が外れる心配もあるが、塗布体8が固着された軸体20ごと交換するため、塗布体8の脱落の懸念もない。
【0026】
また、ガイド溝76が軸体突起22を着脱可能に固持できるよう、第1横溝66の端部は狭くなっており、第2横溝70は山部72を有している。塗布体8を先端に有する軸体20を基軸部60に固持できるようにすることで、使用する際に軸部16が勝手に動いてしまって化粧料80を思わぬところへ塗布することを防いでいる。両方の横溝(66、70)が軸体20を保持する手段を持つ事で、軸を伸ばした際も、軸を縮めた際も、軸体20が動いてしまうのを防ぐことができる。
【0027】
軸体突起22は半円柱形状であり、軸体20を基軸部60に嵌めやすくかつ固持し易くしている。突起の形状が直方体形状ならば角を二点合わせなければならないところ、半円の頂点一点のみで合わせることができるため嵌めやすい。また軸体20の軸体突起22を横溝に固持する際には、上面と下面の平面部分が使用されるため固く固持できる。特に第1横溝66の端部に軸体突起22を嵌めて保持する際に、軸体突起22の形状が球形等では保持が緩くなる懸念があるが、この形状であれば上面と下面の二面を使用されるため、摩擦が大きく、強固に固持できる。
【0028】
軸部16は外筒内筒の二つの筒を用いた二重構造であり、外筒である軸体20の先端に塗布体8を有する。延長される軸体20が塗布体8を有する内筒である場合、軸体20が引き出されて使用され、また再び戻す際に、化粧料80が外筒の内側に入りこみ周囲や手が汚れる恐れがあるが、逆の構成よりその心配が少ない。
【0029】
(変形例)
図5は、ガイド溝76の変形例である。ガイド溝76aは、第1横溝66が第2横溝70とは逆の方向(左方向)に曲がって伸びている点が、ガイド溝76とは異なる。ガイド溝76は、第1横溝66及び第2横溝70の軸体突起22が保持される端点(行き止まり)の方向が同じであったため、軸部16を伸ばす場合でも軸体20を取り外す場合でも、軸体20を右に回すと固持され、左に回すと外れ、使用者が理解しやすい。ガイド溝76aが設けられた軸部16は、第2横溝70の通常の保持位置から軸体20を引きながら左に軽く捻るだけで延長でき、押しながら右に捻ることで元の位置に戻すことができるため、伸縮が容易である。取り外すには一度左に回した後に逆方向に回す必要があり、外しにくい。伸縮を頻繁に行う塗布具に好適である。ガイド溝76bはガイド溝76と、ガイド溝76cはガイド溝76aと、それぞれ左右対称の形状であり、軸体20を逆ネジ方向(右方向)へ回して外すことになるので、右利きの使用者は軸体20を外しにくく、左利きの使用者は外しやすい。それぞれ目的に応じて使用可能である。
【0030】
本実施形態では、化粧料80に粉末化粧料を使用したが、マニキュアやマスカラなどの液体化粧料や、固形化粧料への使用も可能である。本実施形態はジョイント40を備えているが、ジョイント40の無い、直接容器本体30に塗布具本体2が着脱される構成でも良い。伸縮、着脱機能のある塗布具単体としても良い。
【0031】
軸体突起22は、第1横溝66の端部では摩擦で保持されるが、第2横溝70と同様、山部72を設けて保持されるようにしてもよい。また保持可能な他の構造でも良い。
【0032】
また、ガイド溝76の横溝の数を増やし、何段階かで伸縮できるようにすることも好ましい。第1横溝66は基軸部60の中ほどに設けられていたが、先端近くに設け伸縮長を長くしても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 化粧料容器
2 塗布具本体
4 キャップ
6 基軸本体
8 塗布体
10 基端部
12 先端開口部
14 キャップ突起
16 軸部
20 軸体
22 軸体突起
24 軸体溝
30 容器本体
32 容器縮径部
34 容器開口部
36 雄ネジ
40 ジョイント
42 筒体
44 カバー部
46 環状凸部
48 雌ネジ
50 底面
52 底面孔
56 上方開口部
60 基軸部
62 リブ
64 第1縦溝
66 第1横溝
68 第2縦溝
70 第2横溝
72 山部
74 円柱部
76、76a、76b、76c ガイド溝
80 化粧料