(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】システイン改変抗体-毒素複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20220203BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220203BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220203BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220203BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220203BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20220203BHJP
A61K 47/68 20170101ALN20220203BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C07K19/00
C12P21/02 C
C12P21/08
C12N15/13
A61K39/395 A
A61K39/395 H
A61K47/68
(21)【出願番号】P 2019540482
(86)(22)【出願日】2017-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2017104706
(87)【国際公開番号】W WO2018064964
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】201610876568.9
(32)【優先日】2016-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519125807
【氏名又は名称】四川百利薬業有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN BAILI PHARM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】WANG, Jing Cross-Strait Science and Technology Industrial Development Zone, Wen Jiang Chengdu, Sichuan 611130, CN
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】朱義
(72)【発明者】
【氏名】王一茜
(72)【発明者】
【氏名】卓識
(72)【発明者】
【氏名】李傑
(72)【発明者】
【氏名】陳瀾
(72)【発明者】
【氏名】万維李
(72)【発明者】
【氏名】余永国
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/157595(WO,A1)
【文献】特表2013-512927(JP,A)
【文献】国際公開第2016/131769(WO,A2)
【文献】特表2008-516896(JP,A)
【文献】Griffin, L. M. et al.,Analysis of heavy and light chain sequences of conventional camelid antibodies from Camelus dromedarius and Camelus bactrianus species,J. Immunol. Methods,2014年,Vol. 405, pp. 35-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体及び細胞毒素を含むシステイン改変抗体-毒素複合体であって、
前記抗体は、システイン挿入位置に挿入されたシステインを含み、前記システイン挿入位置は、kappa/λ軽鎖定常領域の第205位
(Kabat番号)、軽鎖定常領の第206
(Kabat番号)、及びIgG抗体重鎖定常領域の
第474位(Kabat番号)から選択される少なくとも1つの部位を含む、ことを特徴とするシステイン改変抗体-毒素複合体。
【請求項2】
前記システイン挿入位置のアミノ酸配列は、
LC-205ins:GLSSP
CVTKSF、LC-206ins:GLSSPV
CTKSF、及びHC-
474ins:TQKSLS
CLSPGKから選択される少なくとも1つの配列を含み、
前記Cは、それぞれ目的抗体軽鎖の第205位若しくは第206位、及び重鎖の第
474位に挿入されたシステインである、ことを特徴とする請求項1に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体。
【請求項3】
前記挿入されたシステインは、チオール基を含み、
前記細胞毒素は、リンカーを介して前記チオール基に結合し、
前記抗体は、GLSSP
CVTKSF及びGLSSPV
CTKSFから選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含み、
前記抗体は、アミノ酸配列がTQKSLS
CLSPGKである重鎖を含み、
前記Cは、前記軽鎖の第205位、前記軽鎖の第206位、又は前記重鎖の第
474位に挿入されたシステインである、ことを特徴とする請求項1に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体。
【請求項4】
前記抗体の軽鎖は、kappa(κ)又はlambda(λ)アイソタイプを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体。
【請求項5】
前記抗体の重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体。
【請求項6】
前記システインは、チオール基を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体。
【請求項7】
前記チオール基は、前記細胞毒素
に結合する、ことを特徴とする請求項6に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体。
【請求項8】
前記細胞毒素は、MMAE、MMAF、PBD、SN-38、Dox又はそれらの誘導体からなる群より選択される、ことを特徴とする請求項1に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体。
【請求項9】
以下のステップ1からステップ4を含む請求項1に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体の製造方法であって、
ステップ1において、前記抗体を還元剤で還元して還元抗体を提供し、
前記抗体は、マスキングされたチオール基を有する前記挿入されたシステインを含み、前記マスキングされたチオール基は、前記挿入されたシステイン上のチオール基に結合したマスキング基を含み、
前記還元剤による前記抗体の還元は、前記マスキングされたチオール基から前記マスキング基を除去し、前記挿入されたシステイン上の遊離チオール基及び分離されたマスキング基を有する還元抗体を提供することを含み、
陽イオン交換クロマトグラフィー又は限外濾過により前記分離されたマスキング基及び前記還元剤を除去し、
ステップ2において、前記還元抗体を酸化して鎖間ジスルフィド結合を再接続することで、酸化抗体を提供し、
ステップ3において、細胞毒素部分を含むmc-vc-PAB-payloadと前記酸化抗体とを接触させ、前記挿入されたシステイン上の遊離チオール基と前記細胞毒素部分とを結合することで、前記システイン改変抗体-毒素複合体を提供し、
ステップ4において、陽イオン交換クロマトグラフィー又は限外濾過により結合していないmc-vc-PAB-payloadを除去する、ことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
前記細胞毒素と前記抗体との比は1.6-2である、ことを特徴とする請求項1に記載のシステイン改変抗体-毒素複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその製造方法に関し、特にシステイン改変抗体-毒素複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体-毒素複合体(Antibody drug conjugate、ADC)は、標的療法の分野に属する。米国で販売承認されている2つの薬Adcetris及びKadcylaは、優れた臨床効果を示しており、臨床試験段階では50種を超えるADC薬がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の化合物であるシステイン改変抗体-毒素複合体(TDC)において、システイン挿入位置は、軽鎖の第205位(Kabat番号;アミノ酸配列:GLSSPCVTKSF)、軽鎖の第206位(Kabat番号;アミノ酸配列:GLSSPVCTKSF)、重鎖の第439位(Kabat番号;アミノ酸配列:YTQKSLSCLSPGK)のうちの1つ又は複数の部位を含む。1つ又は複数の上記システイン挿入変異を含む抗体は、その親抗体の抗原に対する結合の能力(親和性)を保持する。本発明は、軽鎖の第205位及び/又は第206位、並びに/或いは重鎖の第439位に挿入されたシステインチオール基及びリンカー-毒素により抗体-毒素複合体(TDC)部位特異的結合を行う。
【0004】
システイン改変抗体-毒素複合体において、抗体はシステイン位置特異的挿入抗体であり、システイン挿入位置は、kappa/λ軽鎖定常領域における第205位(Kabat番号)、軽鎖定常領域における第206位(Kabat番号)及びIgG抗体重鎖定常領域における第439位(Kabat番号)のうちの1つ又は複数の部位を含む。
【0005】
システイン挿入位置のアミノ酸配列は、LC-205ins:GLSSPCVTKSF、LC-206ins:GLSSPVCTKSF、及びHC-439ins:TQKSLSCLSPGKのうちの1つ又は複数の配列を含む。
【0006】
高活性の細胞毒素は、リンカーを介して挿入されたシステインの遊離チオール基(-SH) に部位特異的結合し、リンカーと挿入されたシステインとが結合した抗体の軽鎖のアミノ酸配列はGLSSPCVTKSF及びGLSSPVCTKSFであり、リンカーと挿入されたシステインとが結合した抗体の重鎖のアミノ酸配列はTQKSLSCLSPGKであり、Cは目的抗体軽鎖の第205位若しくは第206位、又は重鎖の第439位に挿入されたシステインである。
【0007】
好ましくは、前記抗体の軽鎖は、kappa又はλアイソタイプを含む。
好ましくは、前記抗体の重鎖は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプを含む。
好ましくは、前記システインはチオール基(-SH)を含む。
好ましくは、チオール基(-SH)は化学的に結合することができる
好ましくは、リンカーを介してシステイン挿入変異遊離チオール基に部位特異的結合する小分子高活性の細胞毒素は、MMAE、MMAF、PBD、SN-38、Dox及びそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。MMAE、MMAF、PBD、SN-38及びDoxの分子式は、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
である。
【0008】
主要な部位特異的結合のステップは、まず、還元剤(例えば、DTT、TCEPなど)で抗体を還元することにより、抗体上の改変したシステイン残基上のマスキング基を除去し、陽イオン交換クロマトグラフィー又は、限外濾過及び液体交換などの方式によりDTT及びマスキング基を除去し、次いで、酸化剤(例えば、DHAA、CuSO4など)で抗体を酸化して抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させ、最後に、リンカー-毒素を加えてシスチン残基上の遊離チオール基に結合させ、陽イオン交換クロマトグラフィー又は限外濾過及び液体交換などの方式により抗体分子に結合していないリンカー-毒素を除去することである。
【0009】
【0010】
SEQ ID NO:6 LC-Cys205ins軽鎖定常領域(Kappa)アミノ酸配列
>LC-Cys205ins-Kappa
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPCVTKSFNRGEC
GLSSPCVTKSFNにおけるCは部位特異的結合位置であって、mc-vc-PAB-payloadと部位特異的結合するものである。
SEQ ID NO:8 LC-Cys206ins軽鎖定常領域(Kappa)アミノ酸配列
>LC-Cys206ins-Kappa
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVCTKSFNRGEC
GLSSPVCTKSFNにおけるCは部位特異的結合位置であって、mc-vc-PAB-payloadと部位特異的結合するものである。
SEQ ID NO:10 IgG1-Fc-Cys439ins重鎖定常領域(Fc)アミノ酸配列
>IgG1-Fc-Cys439ins
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSCLSPGK
TQKSLSCLSPGKにおけるCは部位特異的結合位置であり、mc-vc-PAB-payloadと部位特異的結合するものである。
SEQ ID NO:12 LC-V205C軽鎖定常領域(Kappa)アミノ酸配列
>LC-V205C-Kappa
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPCTKSFNRGEC
GLSSPCTKSFNにおけるCは部位特異的結合位置であり、mc-vc-PAB-payloadと部位特異的結合するものである。
【0011】
本発明に開示される新しいシステイン改変抗体-毒素複合体(TDC)は、非部位特異的結合ADCと比較して、薬物均一性が良好で、副作用が小さいなどの利点を有し、前臨床研究により、非部位特異的結合ADCよりも顕著に優れていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例25に係るHIC-HPLCによる2A1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出結果の図である。
【
図2】実施例25に係るHIC-HPLCによる2A1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出結果の図である。
【
図3】実施例25に係るHIC-HPLCによる2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出結果の図である。
【
図4】実施例25に係るHIC-HPLCによる4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出結果の図である。
【
図5】実施例25に係るHIC-HPLCによる4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出結果の図である。
【
図6】実施例25に係るHIC-HPLCによる4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出結果の図である。
【
図7】実施例25に係るHIC-HPLCによる4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出結果の図である。
【
図8】実施例25に係るHIC-HPLCによる4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出結果の図である。
【
図9】実施例26に係るRP-HPLCによる4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE毒素と抗体との比の測定結果の図である。
【
図10】実施例27に係るSEC-HPLCによるTDC抗体骨格4D3の凝集状況の検出結果の図である。
【
図11】実施例27に係るSEC-HPLCによるTDC抗体骨格4D3-LC-Cys205insの凝集状況の検出結果の図である。
【
図12】実施例27に係るSEC-HPLCによるTDC抗体骨格4D3-LC-Cys206insの凝集状況の検出結果の図である。
【
図13】実施例27に係るSEC-HPLCによるTDC抗体骨格4D3-HC-Cys439insの凝集状況の検出結果の図である。
【
図15】実施例29に係る抗原c-metに対する4E1-LC-Cys205ins-MVPM、4E1-LC-Cys206ins-MVPM、4E1-HC-Cys439ins-MVPM抗体の親和性の結果の図である。
【
図16】実施例29に係る抗原Trop2に対するTDC 4D3-LC-Cys205ins-MVPM、4D3-LC-Cys206ins-MVPM、4D3-HC-Cys439ins-MVPM抗体の親和性の結果の図である。
【
図17】EGFRwt過剰発現ヒト皮膚扁平上皮がん細胞A431に対する2A1-LC-V205C-mc-vc-PAB-MMAE、2A1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、2A1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAのIC50検出結果の図である。
【
図18】FGRvIII過剰発現ヒト神経膠腫細胞株U87-EGFRvIIIに対する2A1-LC-V205C-mc-vc-PAB-MMAE、2A1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、2A1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAEのIC50検出結果の図である。
【
図19】c-Met中高度発現悪性神経膠腫細胞株U87-MGに対する4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1のIC50検出結果の図である。
【
図20】trop2高度発現膵臓がん細胞株BXPC-3に対するD3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3のIC50検出結果の図である。
【
図21】4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAEのヒト血漿における安定性の調査結果の図である。
【
図22】4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAEのヒト血漿における安定性の調査結果の図である。
【
図23】4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAEのヒト血漿における安定性の調査結果の図である。
【
図24】4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAEのヒト血漿における安定性の調査結果の図である。
【
図25】4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAEのヒト血漿における安定性の調査結果の図である。
【
図26】4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAEのヒト血漿における安定性の調査結果の図である。
【
図27】4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3親抗体の担癌マウス薬効試験結果の図である。
【
図28】4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3親抗体の担癌マウス薬効試験結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1:mcの合成
【数1】
30ml氷酢酸に6-アミノカプロン酸3.9g(0.03mol)及び1.2eqの無水マレイン酸3.5g(0.036mol)を加えた。反応液を120℃で撹拌しながら4~6時間反応させた。反応終了後、加熱を停止し、室温まで自然冷却した。60℃で減圧濃縮して大部分の酢酸を除去した。得られた黄褐色の粘性液体を水に入れた後、酢酸エチル(20ml×3)を加えて抽出し、有機層を合わせた。有機層を順に水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、濾液を減圧濃縮して黄褐色の油状物を得た。50ml水を加えて撹拌することで類白色固体を析出させ、濾過し、50℃で減圧乾燥して目的製品5.08gを得た。収率は80%であった。mp:89-92℃。m/z:212.2 [M+H]+。1HNMR(400Mz,DMSO):13.21(br,1H,COOH)、6.75(s,2H,COCH=CHCO)、3.63(t,2H,J=7.2Hz,NCH2CH2)、2.42 (t,2H,J=7.4Hz,CH2COOH)、1.52 -1.68 (m,4H,NCH2CH2CH2CH2)、1.30 -1.42(m,2H,NCH2CH2CH2CH2)。
【0014】
実施例2:Mc-OSuの合成
【数2】
窒素ガスの保護下で50mlアセトニトリルに4.7g(22mmol)MC及び25g(22mmol)HOSuを加えた。別途4.5g(22mmol)DCCを25mlアセトニトリルに溶解し、内温を約0℃に保持し、反応液にゆっくりと滴下した。反応液を0℃で2時間反応させた後、室温で一晩反応させた。濾過し、濾過ケーキをアセトニトリル(10ml×3)で洗浄し、濾液を減圧濃縮することにより乾燥させた。得られた油状物を室温で6時間減圧乾燥して淡褐色固体6.4gを得た。収率は95%であった。生成物を精製せずに次に反応に用いた。m/z:309.2 [M+H]+。1HNMR(400Mz ,CDCl3):1~2(m,6H,CCH2CH2CH2C)、2.68(t,2H,CH2CO),2.95(s,4H,COCH2CH2CO)、3.68(t,2H,CH2N)、6.81(s,2H,CH=CH)。
【0015】
実施例3:Fmoc-Val-OSuの合成
【数3】
100mlTHFにFmoc-Val 10g及びHOSu 3.4gを加えた。別途DCC6gを50mlアセトニトリルに溶解し、内温を約0℃に保持し、入反応液にゆっくりと滴下した。反応液を室温で撹拌しながら24時間反応させた。濾過し、濾過ケーキをTHFで洗浄し、濾液を減圧濃縮して透明な油状物を得た。油状物を精製せずに次の反応に用いた。m/z:437.4 [M+H]+。
【0016】
実施例4:Fmoc-vcの合成
【数4】
20mlTHFにCit 4.0g(1.05eq)及び重炭酸ナトリウムの水溶液60ml(NaHCO3 2g,1.05eq)を加えた。別途22.35mmol Fmoc-Val-OSuを60ml DMEに溶解し、さらに反応液に加えた。反応液を室温下で24時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、反応系に15%クエン酸水溶液110mlを加えた後、EAで2回抽出し、有機層を合わせ、減圧濃縮して白色固体を得た。白色固体にメチルtert-ブチルエーテル100mlを加え、撹拌して洗浄し、濾過し、濾過ケーキを40℃で4時間減圧乾燥し、製品4.83gを得た。収率は65%であった。m/z: 497.6 (M+H)+。1HNMR(400Mz,DMSO): 0.92 (6H, m)、1.35 ~ 1.65 (4H, m)、2.10 (1H, m)、3.01(2H, q)、3.99 (1H, t)、4.01 -4.45 (2H, m)、4.45 (2H, t)、5.46 (2H, br)、6.03(1H, t)、7.20-8.02 (8H, m)、8.25 (1H, d)。
【0017】
実施例5:Fmoc-vc-PABOHの合成
【数5】
反応フラスコにDCM/MeOH=2/1混合溶媒60mlを加え、さらにFmoc-vc 2g(4.2mmol)及びPABOH 1.04g(2eq)を加え、撹拌して一部を溶解した後、EEDQ 2.0g(2eq)を加えた。反応系を室温条件下で暗所で2日撹拌しながら反応させた。反応終了後、40℃で減圧濃縮して白色固体を得た。白色固体を収集し、メチルtert-ブチルエーテル100mlを加え、撹拌して洗浄し、濾過し、濾過ケーキをメチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、得られた白色固体を40℃で減圧乾燥して2.2g製品を得た。収率は約88%であった。m/z: 602.6 (M+H)+。1HNMR (400Mz, DMSO): 0.95 (6H,m)、1.45~1.69 (4H, m)、 2.10 (1H, m)、3.11(2H, m)、3.99 (1H, m )、4.30 (2H, d)、 4.05~-4.66 (2H, m)、4.55 (2H, d)、5.21 (1H, t)、5.51 (2H, br)、6.11(1H, t)、7.09 -8.10 (12H, m)、 8.21 (1H, d)、10.51(1H, br)。
【0018】
実施例6:vc-PABOHの合成
【数6】
10mlNMPにFmoc-vc-PABOH 490mg(0.815mmol)を加え、撹拌して溶解し、さらにジエチルアミン2mlを加えた。室温下で24時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、40℃で減圧濃縮し、得られた油状物に20mlDCMを加え、撹拌して結晶を析出させ、濾過し、濾過ケーキをDCMで洗浄し、得られた固体を減圧乾燥して製品277mgを得た。収率は90%であった。m/z: 380.2 (M+H)+。1HNMR (400Mz, DMSO): 0.89 (6H, m), 1.31~1.61 (4H, m), 1.82 (1H, m), 2.86 (1H, m), 2.89(2H, d), 4.38 (2H, d), 4.44 (1H, m), 5.01 (1H, br), 5.35 (2H, br), 5.84 (1H, br), 7.14 (2H, d), 7.42 (2H, d), 8.08 (1H, br), 9.88 (1H, br)。
【0019】
実施例7:mc-vc-PABOHの合成
【数7】
10mlNMPにvc-PABOH 205mg(0.54mmol)及びMC-OSu 184mg(1.1eq)を加え、その後、室温下で24時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、40℃で減圧濃縮し、得られた油状物に20mlメチルtert-ブチルエーテルを加え、撹拌して結晶を析出させた。濾過し、濾過ケーキをメチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、310mg製品を得た。収率は100%であった。m/z: 573.3 (M+H)+。1HNMR (400Mz, DMSO): 0.89 (6H, m)、 1.15-1.99 (10H, m)、2.11(1H, m)、2.31 (2H, t)、3.21(2H, m)、 3.53 (2H, t)、4.32 (1H, t)、4.51 (1H, m)、4.59 (2H, br)、5.24 (1H, br)、 5.56 (2H, br)、6.20(1H, br)、 7.12(2H, s)、7.23(2H, d) ,7.58 (2H, d)、7.94 (1H, d) , 8.1 7 (1H, d)、10.21 (1H, br)。
【0020】
実施例8:mc-vc-PAB-PNPの合成
【数8】
窒素ガスの保護下でmc-vc-PABOH 168.6mg(0.294mmol)を5ml無水ピリジンに溶解し、反応系を約0℃に冷却した。別途PNP179mg(3eq)を5mlDCMに溶解し、さらに反応系にゆっくりと加えた。約0℃に10min保持した後、氷浴を取り外し、室温で3時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、70mlEA及び100ml 15%クエン酸水溶液を加え、有機層を収集した。有機層を順にクエン酸、水、飽和食塩水で洗浄し、その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を減圧濃縮により乾燥させ、淡黄色油状物を得、メチルtert-ブチルエーテルを加えて結晶を析出させ、類白色固体86mgを得た。収率は40%であった。m/z: 738(M+H)+。1HNMR (400Mz, CDCl3/CD3OD): 0.84 (6H, m)、1.11-1.84 (10H, m)、 2.05 (1H, m)、2.15 (2H, t)、3.09 (2H, m)、3.32 (2H, t)、4.12 (1H, m)、4.38 (1H, m)、5.15 (2H, s)、6.61 (2H, s)、6.84 (1H, d) ,7.61 (1H, d)、7.21 (2H,d), 7.50 (2H,d)、7.61 (2H,d), 8.18 (2H, d)、9.59 (1H, br)。
【0021】
実施例9:mc-vc-PAB-MMAEの合成
【数9】
2mlDMFに20mg mc-vc-PAB-PNP(1.5eq)及び3mgHOBTを加えた。室温で暫く撹拌した後、13mgMMAE、0.5mlピリジン、25ulDIEAを加えた。反応液を室温で2日撹拌しながら反応させた。反応終了後、反応液をそのまま分取カラムで精製し、所要の成分を収集して濃縮した後、冷凍乾燥し、約10mg製品を得た。収率は約42%であった。m/z: 1317.1 (M+H)+。
【0022】
実施例10:mc-vc-PAB-MMAFの合成
【数10】
実施例9の操作に従ってmc-vc-PAB-MMAFを約12.5mg得た。収率は45.2%であった。m/z: 1345.7(M+H)+。
【0023】
実施例11:mc-vc-PAB-PBDの合成
【数11】
実施例9の操作に従ってmc-vc-PAB-PBDを約9.5mg得た。収率は32.5%であった。m/z: 1325.4 (M+H)+。
【0024】
実施例12:mc-vc-PAB-DOXの合成
【数12】
実施例9の操作に従ってmc-vc-PAB-DOXを約11.2mg得た。収率は38.9%であった。m/z: 1143.2 (M+H)+。
【0025】
実施例14:mc-vc-PAB-SN-38の合成
【数13】
購入された100mgの10-O-Boc-SN-38を10ml乾燥ジクロロメタンで溶解した後、25.6mg(1eq)DMAPを加え、0℃でトリホスゲンのジクロロメタン溶液(62mgトリホスゲンを2mlジクロロメタンで溶解したもの)を滴下し、その後、引き続き0℃で12時間反応させ、減圧によりジクロロメタンを除去し、10mlの乾燥DMFで溶解した後、144mgのmc-vc-PABOHを加え、室温で24時間撹拌し、分取液体クロマトグラフィーにより分離してmc-vc-PAB-SN-38 41mgを得た。総収率は19.7%であった。m/z: 1063.2(M+H)+ 。
【0026】
実施例15:目的抗体の発現及び精製
FreestyleTM 293-F(Invitrogen)懸濁細胞を用いて目的抗体を発現した。トランスフェクションの1日前、6×105個/mLの密度で細胞を300mL F17完全培地(FreestyleTM F17発現培地、Gibco社)を含む1L振盪フラスコに接種し、細胞培養シェーカーを用いて37℃、5%CO2、120rpmで一晩培養した。翌日、PEIで抗体発現プラスミドのトランスフェクションを行なった。ここで、プラスミド:PEIは2:1であった。トランスフェクションの翌日、2.5%(v/v)でTN1フィード培地を加え、引き続き4日培養した後、遠心分離して上澄みを収集した。
【0027】
得られた細胞発現上澄みを収集し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラム(Mabselect Sure LX,GE社)を用い、0.1Mクエン酸(pH3.0)で溶出させ、捕獲された抗体を1M Tris-HCl(pH9.0)で1/10(v/v)でpH7.0に調整した後、ゲル濾過クロマトグラフィーカラムSEC(Superdex 200,GE社)によりポリマー及びエンドトキシンなどの不純物を除去し、抗体緩衝液をPBS(pH7.4)に置換し、UV280nmでの目的ピークのサンプルを収集し、限外ろ過遠心管(30KD,Pall社)により2mg/mlに濃縮した。このようにして得られた目的抗体のモノマー(POI%)は90%を超え、次に試験に用いられる。
【0028】
実施例16:2A1-HC-Cys439ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEの結合による2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0029】
細胞で発現された2A1-HC-Cys439ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を2A1-HC-Cys439ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0030】
実施例17:2A1-LC-Cys205ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEとの結合による2A1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0031】
細胞で発現された2A1-LC-Cys205ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を2A1-LC-Cys205ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、2A1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0032】
実施例18:2A1-LC-Cys206ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEとの結合による2A1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0033】
細胞で発現された2A1-LC-Cys206ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を2A1-LC-Cys206ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、2A1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0034】
実施例19:4D3-HC-Cys439ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEとの結合による4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0035】
細胞で発現された4D3-HC-Cys439ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を4D3-HC-Cys439ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F. 陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0036】
実施例20:4D3-LC-Cys205ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEとの結合による4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0037】
細胞で発現された4D3-LC-Cys205ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を4D3-LC-Cys205ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0038】
実施例21:4D3-LC-Cys206ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEとの結合による4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0039】
細胞で発現された4D3-LC-Cys206ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を4D3-LC-Cys206ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0040】
実施例22:4E1-HC-Cys439ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEとの結合による4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0041】
細胞で発現された4E1-HC-Cys439ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を4E1-HC-Cys439ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0042】
実施例23:4E1-LC-Cys205ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEとの結合による4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0043】
細胞で発現された4E1-LC-Cys205ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を4E1-LC-Cys205ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F. 陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0044】
実施例24:4E1-LC-Cys206ins抗体とmc-vc-PAB-MMAEとの結合による4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルの製造
【0045】
細胞で発現された4E1-LC-Cys206ins抗体をMabselect Sureにより精製し、低pHで溶出させた直後、Tris溶液を加えて中和し、pH7.5のTris-HCl緩衝液に置換した。化合物mc-vc-PAB-MMAE(白色粉末)をDMAに溶解して準備用とした。変異システイン残基上のマスキング基を除去するために、まず抗体を還元する必要がある。40倍の分子比で1MのDTT水溶液を4E1-LC-Cys206ins抗体溶液に加え、均一に混合した後2時間反応させた。その後サンプルのpHを5.0に調整し、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーによりサンプルにおけるDTT及びマスキング基を除去した。次いで、20倍の分子比でDHAA溶液をサンプルに加え、25℃で暗所で4時間反応させることで抗体鎖間のジスルフィド結合を再結合させた。次いでmc-vc-PAB-MMAE溶液を加え、mc-vc-PAB-MMAEと抗体変異システインとを結合し、均一に混合した後25℃で2時間反応させた。反応終了後、SP Sepharose F.F.陽イオン交換クロマトグラフィーにより抗体分子に結合していないmc-vc-PAB-MMAEを除去し、4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCサンプルを得た。
【0046】
実施例25:HIC-HPLCによる毒素と抗体との比DARの測定
【0047】
HPLC疎水性クロマトグラフィー方法によりTDCサンプルを分析し、対応するピーク面積に基づいてDARを算出した。具体的な方法は以下の通りである。
カラム:Proteomix(登録商標) HICBu‐NP5(5μm,4.6x35mm)
移動相:A:硫酸アンモニウム2M、pH7のリン酸塩緩衝液0.025M;B:pH7のリン酸塩緩衝液0.025M;C:100%イソプロパノール
緩衝液Aは平衡化、緩衝液B及び緩衝液Cは勾配溶出に用いられ、25℃、214nm及び280波長で検出した。
図1~3に基づいて算出した部位特異的結合DARは1.6~1.7であり、優れた化合物の均一性を示す。
図4~6に基づいて算出した部位特異的結合DARは1.60-1.95であり、優れた化合物の均一性を示す。
図7~8に基づいて算出した部位特異的結合DARは1.60-1.90であり、優れた化合物の均一性を示す。
【0048】
実施例26:RP-HPLCによる毒素と抗体との比DARの測定
RP-HPLCによる毒素と抗体との比DARを測定し、采用逆相疎水性高速液体クロマトグラフィーによりDTTで処理したサンプルを分析し、対応するピーク面積に基づいてDARを算出した。具体的な方法は以下の通りである。
カラム:Proteomix RP-1000(5μm, 4.6×100mm)
移動相:A:0.1%TFA水溶液;B:0.1%アセトニトリル溶液
移動相A及び移動相Bを用いて割合で勾配溶出を行い、80℃、214nm及び280波長で検出した。
図9に基づいて算出した部位特異的結合DARは1.82であり、優れた化合物の均一性を示す。
【0049】
2A1-LC-V205C-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAEの結合効率DAR表
【表1】
【0050】
表1は、システイン挿入変異修飾により部位特異的結合したTDC化合物は、結合効率が高く(理論上の最大値:2.0)、DAR≧1.6であることを示している。
【0051】
実施例27:SEC-HPLCによるTDC抗体骨格の凝集状況の検出
【0052】
TDC抗体骨格サンプルを37℃で保存し、0、7、21、29日目にそれぞれSEC-HPLCによりその凝集状況を分析した。具体的な方法は以下の通りである。
カラム:TSKgel SuperSW mAb HR(7.8mm×30cm)
移動相:硫酸ナトリウム0.1M、pH6.7のリン酸塩緩衝液0.1M
25℃、280nmで検出した。
図10-13に示すように、SEC-HPLCによりTDC抗体骨格4D3、4D3-LC-Cys205ins、4D3-LC-Cys206ins及び4D3-HC-Cys439insの凝集状況を検出した。サンプルを37℃で4週間保存した後、凝集体の含有量は基本的に変化していない。
【0053】
上記抗体の検出方法の同様に、2A1-LC-V205C-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-LC-Cys206ins--mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE 4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCをSEC検出した。
【0054】
2A1-LC-V205C-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-LC-Cys206ins--mc-vc-PAB-MMAE TDC及び2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCにおける目的モノマーの含有量
【表2】
表2は、システイン部位特異的結合したTDC化合物の目的モノマー含有量は90%以上であることを示している。
【0055】
実施例28:システイン部位特異的変異及び挿入変異により修飾された骨格抗体、及びEGFRvIIIに対する親抗体2A1の親和性、c-metに対する4E1の親和性、Trop2に対する4D3の親和性
【0056】
間接ELISA法により2A1-LC-V205C、2A1-LC-Cys205ins、2A1-LC-Cys206ins、2A1-HC-Cys439ins及び2A1のEGFRvIIIに対する相対親和性を比較した。具体的な方法は以下の通りである。
【0057】
組み換えEGFRvIII-His*6抗原をプレートにコーティングし、魚皮ゼラチンでブロックし、2A1、2A1-LC-V205C、2A1-LC-Cys205ins、2A1-LC-Cys206ins及び2A1-HC-Cys439insをそれぞれ最高濃度10ug/ml、4倍勾配、11個の濃度で希釈し、HRP標識二次抗体をインキュベートし、TMB発色し、450nmでの吸収を検出した。検出結果をA450/濃度で図を作成した。システイン部位特異的変異又は挿入変異後の抗体2A1-LC-V205C、2A1-LC-Cys205ins、2A1-LC-Cys206ins及び2A1-HC-Cys439insは2A1に類似する親和性を保持し、EC50値が非常に近かった。これは、2A1での軽鎖V205Cの部位特異的変異、第205位の挿入変異若しくは第206位の挿入変異、又は重鎖第439位の挿入変異がEGFRvIII抗原に対する親和性に影響を与えないことを示している。
【0058】
図に示すように、2A1-LC-V205C、2A1-LC-Cys205ins、2A1-LC-Cys206ins、2A1-HC-Cys439ins抗体は、抗原EGFRvIIIに対する2A1の親和性を保持している。
【0059】
実施例29:システイン部位特異的変異及び挿入変異により改造された骨格抗体、及び対応する抗原に対するTDCの親和性、c-metに対応する4E1の親和性、Trop2に対応する4D3の親和性
用間接ELISA法により4E1-LC-Cys205ins-MVPM、4E1-LC-Cys206ins-MVPM、4E1-HC-Cys439ins-MVPM及び4E1のEGFRvIIIに対する相対親和性を比較した。具体的な方法は以下の通りである。
【0060】
組み換えc-met-His*10抗原をプレートにコーティングし、魚皮ゼラチンでブロックし、希釈4E1-LC-Cys205ins-MVPM、4E1-LC-Cys206ins-MVPM、4E1-HC-Cys439ins-MVPM及び4E1をそれぞれ最高濃度10ug/ml、4倍勾配、11個の濃度で希釈し、HRP標識二次抗体をインキュベートし、TMB発色し、450nmでの吸収を検出した。検出結果をA450/濃度で図を作成した。システイン部位特異的挿入変異後に結合して得られたTDC4E1-LC-Cys205ins-MVPM、4E1-LC-Cys206ins-MVPM、4E1-HC-Cys439ins-MVPMは、親抗体4E1に類似する親和性を保持し、EC50値が非常に近かった。これは、4E1軽鎖第205位の挿入変異若しくは第206位の挿入変異、又は重鎖第439位の挿入変異により得られたTDCがc-met抗原に対する親和性に影響を与えないことを示している。
【0061】
用間接ELISAにより4D3-LC-Cys205ins-MVPM、4D3-LC-Cys206ins-MVPM、4D3-HC-Cys439ins-MVPM及び4D3のEGFRvIIIに対する相対親和性を比較した。具体的な方法は以下の通りである。
【0062】
組み換えTrop2-His*10をプレートにコーティングし、魚皮ゼラチンでブロックし、4D3-LC-Cys205ins-MVPM、4D3-LC-Cys206ins-MVPM、4D3-HC-Cys439ins-MVPM及び4D3をそれぞれ最高濃度10ug/ml、4倍勾配、11個の濃度で希釈し、HRP標識二次抗体をインキュベートし、TMB発色し、450nmでの吸収を検出した。検出結果をA450/濃度で図を作成した。システイン部位特異的挿入変異後に結合して得られたTDC4D3-LC-Cys205ins-MVPM、4D3-LC-Cys206ins-MVPM、4D3-HC-Cys439ins-MVPMは、親抗体4D3に類似する親和性を保持し、EC50値が非常に近かった。これは、4D3軽鎖第205位の挿入変異若しくは第206位の挿入変異、又は重鎖第439位の挿入変異により得られたTDCがTrop2抗原に対する親和性に影響を与えないことを示している。
【0063】
図15に示すように、4E1-LC-Cys205ins-MVPM、4E1-LC-Cys206ins-MVPM、4E1-HC-Cys439ins-MVPM抗体は、抗原c-metに対する4E1の親和性を保持している。
【0064】
図16に示すように、4D3-LC-Cys205ins-MVPM、4D3-LC-Cys206ins-MVPM、4D3-HC-Cys439ins-MVPM抗体は、抗原Trop2に対する4D3の親和性を保持している。
【0065】
実施例30:細胞毒性薬効の検出
以下の実験によりTDC細胞毒性活性を測定した。即ち、TDCをそれぞれEGFRが過剰発現されるか又はEGFRVIIIが発現されるヒトの腫瘍細胞培地に加え、72時間培養した後、細胞生存率を測定した。細胞によるインビトロ試験により、細胞生存率、細胞毒性、及び本発明のTDC誘導アポトーシスを測定した。
【0066】
細胞増殖試験により抗体-毒素複合体のインビトロ薬効を測定した。CellTiter 96(登録商標)AqueousOne Solution Cell Proliferation Assayは、市販品(Promega Corp.,Madison,WI)である。CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(a)は、比色法により細胞増殖及び細胞毒性を検出する試験に用いられる生細胞数の検出試薬である。この試薬には、新しいテトラゾリウム化合物[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、内塩;MTS]及び電子結合剤(phenazine ethosulfate; PES)が含まれる。PESは、強化した化学的安定性を有するため、MTSと混合して安定な溶液を形成することができる。このような便利な「単一溶液」モデルは、初代CellTiter 96(登録商標)AQueous Assayをベースにして改良したものである。CellTiter 96(登録商標)AQueous Assayに用いられる電子結合剤PMS及びMTS溶液は別々に提供される。MTS(Owen試薬)は、細胞によって生物学的に還元されてそのまま培地に溶解できる着色ホルマザン生成物製品になる(
図1)。このような変換は、代謝的に活性な細胞におけるデヒドロゲナーゼによって産生されたNADPHまたはNADHの作用下で達成される可能性が高い。検出時には、少量のCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Reagentをそのまま培地プレートウェルの培地に加え、1~4時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダーで490nmの吸光度を読み取れば良い。
【数14】
【0067】
490nmで検出されたホルマザン生成物の量は培養物中の生細胞の数に正比例する。MTSのホルマザン生成物が組織培地に可溶であるため、CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution AssayはMTT又はINT法と比較して操作手順が少ない。
【0068】
本発明において、A431(EGFR過剰発現細胞)、U87-EGFRVIII(EGFR変異体安定細胞系)、U87-MG(c-Met中高度発現悪性神経膠腫細胞株)及びBXPC-3(trop2高度発現膵臓がん細胞株)をインビトロ薬効検出のための研究反応系として用いた。96ウェルプレート中で6000/ウェルで細胞を接種し、24時間後、抗体投与を行った。A431、U87-EGFRVIII細胞株に対応する各TDC初期濃度は10uMであり、5倍勾配で順次希釈し、U87-MG、BXPC-3細胞株に対応する各TDC初期濃度は1uMであり、5倍勾配で順次希釈した。72時間処理後、MTSにより細胞活性を検出した。
【0069】
EGFRwt過剰発現細胞系A431及びEGFRvIII発現安定性株U87-EGFRVIIIに対するTDC、ADCの細胞毒性IC
50の検出結果
【表3】
【0070】
表3の結果から分かるように、2A1-LC-V205C-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-LC-Cys205Cins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、2A1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCは、EGFRwt過剰発現細胞系A431及びEGFRvIII発現安定性株U87-EGFRVIIIbに対する細胞毒性活性が相当し、439位挿入変異TDCの活性が205位及び206位挿入変異TDCよりもやや良い。
4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC及び4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCは、U87-MG細胞毒性活性及び結合位置には一定の相関があり、439位插入変異TDCの活性は、205位及び206位挿入変異TDCよりもやや良く、TDCの活性は、親抗体の活性よりも顕著に良い。
4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC及び4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCは、膵臓がん細胞株BXPC-3に対して細胞毒性活性が相当し、439位插入変異TDCの活性が205位及び206位挿入変異TDCよりもやや良く、TDCの活性は親抗体の活性よりも顕著に良い。
【0071】
実施例31:血漿安定性の検出
一定量のADCサンプルを取り、ヒトIgGが除去されたヒト血漿に加え、ADCごとに2管繰り返し、37℃水浴中でそれぞれ0時間、72時間インキュベートした後、ADCサンプルを取り出し、各管にプロテインA(MabSelect SuReTM LX Lot:#10221479 GE、PBSで洗浄したもの)100ulを加え、縦型ミキサーで2時間振盪し、洗浄、溶出により、インキュベートされたADCを得た。特定の時間インキュベートされたADCサンプルに対してHIC-HPLC及びRP-HPLC検出を行い、サンプルの血漿安定性を判定した。
【0072】
図21~23は、4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC及び4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCのヒト血漿における安定性の調査結果である。4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出方法は、RP-HPLCであり、4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAEの検出方法はHIC-HPLCである。
【0073】
図24~26は、4E1-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4E1-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC及び4E1-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCのヒト血漿における安定性の調査結果であり、検出方法はHIC-HPLCである。
【0074】
TDC血漿安定性の検出結果(DARの変化により計算)
【表4】
【0075】
上記TDCをヒト血漿サンプルに加え、37℃で72時間インキュベートした後、いずれも相対的に安定であり、良好な薬物形成特性を示した。比較では、439位挿入変異TDCの安定性は最も高く、205位、206位挿入変異TDCの安定性は高いが、439位挿入変異TDCのほどではなかった。
【0076】
実施例32:担癌マウスの薬効試験
【0077】
本発明では、TDC及び親抗体のインビボ薬効を評価するためにBXPC-3担癌マウスモデルを構築した。皮下注射により3×106 BXPC-3細胞を4~6週齢のBALB/cヌードマウスの背中に投与し、マウスの平均腫瘍サイズが400~500mm3に成長した後、5匹/群で群分けした。0日目及び7目に、4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC及び4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDCをそれぞれ5mg/kgの用量で単回静脈内投与し、親抗体4D3を5mg/kgの用量で投与した。データAは、測定時の平均腫瘍体積±SEを示す。データBは、測定時のマウスの平均体重±SEを示す。
【0078】
図27は、担癌マウス薬効試験における4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC及び4D3親抗体の測定結果である。TDCは、親抗体と比較してインビボで顕著な抗腫瘍効果を示した。
【0079】
図28は、担癌マウス薬効試験における4D3-LC-Cys205ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-LC-Cys206ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC、4D3-HC-Cys439ins-mc-vc-PAB-MMAE TDC及び4D3親抗体の試験結果である。マウスの体重に有意な変化は見られず、それはTDCがインビボで毒性がないかまたはほとんどないことを証明した。
【0080】
本発明は、実施例中に開示された具体的な実施形態の範囲に限定されず、これらの実施例は、本発明のいくかの態様を例示するためのものであり、機能的に等価な任意の実施形態は、すべて本発明の範囲に属する。実際、本明細書に開示されたもの以外の、本発明の様々な修正は当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲内に含まれる。
【配列表】