(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】患者のヘモグロビン量を判定するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/145 20060101AFI20220111BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61B5/145 ZDM
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2019562460
(86)(22)【出願日】2017-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017051919
(87)【国際公開番号】W WO2018137780
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519277335
【氏名又は名称】オー・ペ―・セー・オー メディカル アー・ペー・エス
【氏名又は名称原語表記】OpCO Medical Aps
【住所又は居所原語表記】c/o Carsten Lundby, Skovrodvej 3 A, 3460 Birkerod Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルンドビー、カルステン
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102006057185(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0075552(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0071481(US,A1)
【文献】特開2015-058388(JP,A)
【文献】特開2001-72023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145 - 5/1495
A61B 5/08 - 5/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のヘモグロビン量を判定するための装置であって、
密閉ガスボリューム(100)と、
吸口(47)を含むガス出口であり、前記吸口(47)は、前記密閉ガスボリューム(100)へのガスの吸入及び前記密閉ガスボリューム(100)からのガスの放出を可能にするように構成されるガス出口と、
前記密閉ガスボリューム(100)に一酸化炭素を供給する手段
であって、前記密閉ガスボリューム(100)の一部ではない手段と
を備え、
前記一酸化炭素を供給する手段は、一酸化炭素貯蔵器(15)を含み、前記一酸化炭素貯蔵器(15)は、前記一酸化炭素貯蔵器(15)における前記一酸化炭素の温度を判定するためのセンサ(19)及び前記一酸化炭素の圧力を判定するためのセンサ(17)を備え
、
前記一酸化炭素を供給する手段は、規定量の一酸化炭素を前記密閉ガスボリューム(100)に供給するように構成され、
前記一酸化炭素貯蔵器(15)の容量と、前記センサ(17)により判定された前記一酸化炭素貯蔵器(15)における前記一酸化炭素の圧力と、前記センサ(19)により判定された前記一酸化炭素貯蔵器(15)における前記一酸化炭素の温度とに基づいて前記規定量を判定するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
二酸化炭素フィルタ(51)は、前記密閉ガスボリューム(100)に配置され、前記密閉ガスボリューム(100)から二酸化炭素を濾過して取り除くように構成されることを特徴とする請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は酸素を供給する手段を備え、該手段は、前記密閉ガスボリューム(100)に酸素を供給するように構成されることを特徴とする請求項1から
2のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記酸素を供給する手段は弾性バルーン(41)を含み、前記弾性バルーン(41)は、動作中に6リットルの最大充填容量を有することを特徴とする請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記弾性バルーン(41)の前記充填容量を判定する手段(55)を備えることを特徴とする請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記光学手段は、少なくともレーザ及び検出器を含み、前記レーザ及び前記検出器は、前記装置において固定して配置されることを特徴とする請求項
5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記密閉ガスボリューム(100)の一酸化炭素含有量を検出するように構成される一酸化炭素検出器(53)を備えることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は更なるガス出口(49)を備え、前記一酸化炭素検出器は、前記更なるガス出口(49)に配置されることを特徴とする請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記一酸化炭素を供給する手段及び/又は前記酸素を供給する手段、並びに/あるいは前記ガス出口は、弁(5、13、23、25、35、37、43、45)を介して前記密閉ガスボリュームに接続され、前記弁(5、13、23、25、35、37、43、45)は、別個に調整可能であることを特徴とする請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
前記一酸化炭素貯蔵器(15)の前記少なくとも1つの圧力センサ(17)の測定誤差は、100mbarより小さいことを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記一酸化炭素貯蔵器(15)の前記少なくとも1つの温度センサ(19)の測定誤差は、2℃より小さいことを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は制御装置を備え、前記制御装置は、10mlより小さい測定誤差で、前記一酸化炭素貯蔵器(15)における前記一酸化炭素の量を判定することを特徴とする請求項1から
11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記吸口(47)は交換可能であることを特徴とする請求項1から
12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記一酸化炭素を供給する手段及び/又は前記酸素を供給する手段は、一酸化炭素又は酸素を供給あるいは排出するための少なくとも1つの調整可能部品を含むことを特徴とする請求項
3から
13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記吸口(47)及び前記二酸化炭素フィルタ(51)を除く前記装置の全ての部品は、筐体に配置されることを特徴とする請求項1から
14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記請求項1から
15のいずれか1項に記載の装置を使用してヘモグロビン量を判定するための方法であって、
i)規定量の一酸化炭素を前記密閉ガスボリューム(100)に供給する工程と、
ii)前記患者によるガスを前記密閉ガスボリューム(100)に吸入及び放出する工程と、
iii)前記患者の前記血液中の前記一酸化炭素の量を非観血に判定する工程と、
iv)前記患者の前記血液中の前記一酸化炭素の量に基づいて前記ヘモグロビン値を判定する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項17】
前記患者の前記ヘモグロビン量は、2.5%より小さい誤差で判定されることを特徴とする請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記工程i)の前に、
純酸素を前記密閉ガスボリューム(100)に供給する工程と、
前記患者が前記供給された純酸素を吸入及び放出する工程と、
を備えることを特徴とする請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
前記工程i)の前の前記酸素を前記吸入及び放出する工程は、第1継続時間にわたり実行され、工程ii)における前記ガスを前記吸入及び放出する工程は、第2継続時間にわたり実行され、前記第1継続時間は、0.1分から6分あり、前記第2継続時間は、1分から240分であることを特徴とする請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のヘモグロビン量を判定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘモグロビンは、赤血球の鉄を含有するタンパク質複合体であり、酸素を結合させて血流に運ぶことができる。酸素供給の中心的役割によれば、貧血症、多血症及び脱水又は水分過剰等の多くの病気は、血液中のヘモグロビン量の変化と関連付けられる。病気を診断及び治療するために、患者の血液中のヘモグロビン量が判定されうる。判定は、種々の観血法又は非観血法により実行されうる。
【0003】
国際公開第03/100440号には、所定量の一酸化炭素を吸入することでヘモグロビン量を判定するための装置及方法が開示されている。国際公開第03/100440号において、装置は吸口を備え、吸口は、酸素で充填可能な袋を有するコネクタを介して接続される。
【0004】
米国特許出願公開第2015/0140670号明細書には、生理学的ヘモグロビンレベルを迅速且つ非観血に判定するように構成された方法及び診断キットが開示されている。診断キットは、指示薬で予め充填されたチャンバを備えうる。指示薬溶液は、テトラメチルベンジジン(TMB)溶液を含み、溶液は、色を変えるように構成される。更に、被験者のサンプルを受け取るために、受け取り手段が設けられる。
【0005】
従来技術によれば、患者の血液中のヘモグロビン値は、おおよそ正確に判定されうる。しかし、病気の診断及び病気と関連付けられる症状の治療を向上させるためには、可能な限り正確にヘモグロビン値を判定することが望ましい。
【0006】
従って、本発明は、患者のヘモグロビン量を判定するために改善された装置及び方法を提供することで、上述の問題を少なくとも部分的に解決することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の課題は、請求項1に記載の装置及び請求項17に記載の方法により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、患者のヘモグロビン量を判定するための装置であって、装置は、密閉ガスボリュームと、吸口を含むガス出口であり、吸口は、密閉ガスボリュームへのガスの吸入及び密閉ガスボリュームからのガスの放出を可能にするように構成されるガス出口と、密閉ガスボリュームに一酸化炭素を供給する手段とを備え、一酸化炭素を供給する手段は、一酸化炭素貯蔵器を含み、一酸化炭素貯蔵器は、一酸化炭素貯蔵器における一酸化炭素の温度を判定するためのセンサ及び一酸化炭素の圧力を判定するためのセンサを備えることを特徴とする装置に関する。ヘモグロビンは、一酸化炭素(CO)に対する結合親和性が高い。ヘモグロビンの結合親和性は、酸素に対するものと比較して、一酸化炭素に対するものの方が約200倍から300倍高い。従って、吸入された一酸化炭素は、患者の血液中のヘモグロビンに結合される酸素を置換する。ヘモグロビンに結合される一酸化炭素を測定することにより、患者の血液中のヘモグロビン含有量又は量を推測できる。このため、供給された一酸化炭素の量を厳密に判定する必要がある。一酸化炭素は、患者の血液中のヘモグロビン量及び一酸化炭素の供給量に依存する。ヘモグロビン量を判定するためには、供給及び投与された一酸化炭素の量がより多ければ、あるいはより少なければ、それに対応して患者の血液中において結合した一酸化炭素の量もより多く又はより少なくなりうるため、吸入のために供給された一酸化炭素の量を知ることが非常に重要である。従って、投与された一酸化炭素の量が不正確に判定されれば、ヘモグロビン量が不正確に判定されることも多くなる。
【0009】
これまで、投与された一酸化炭素は、手動で注射筒に吸い込まれ、目視検証された。ここでは、そのように吸い込まれた一酸化炭素容量、従って注射筒に含まれる一酸化炭素量を厳密に判定することは、おおよそ可能であるにすぎない。一酸化炭素容量を得る間の誤差を減らすため、使用された注射筒は、環境大気等の残留ガスが注射筒に存在しないように、一酸化炭素ガスを繰り返し取り込むことにより「洗浄」された。しかし、この動作は時間がかかり、有毒な一酸化炭素が環境大気中に放出される。従って、投与された一酸化炭素がガスボリュームを放置したままにはできないため、上記動作は、本発明に係る装置による測定が必須ではないドラフトの下で行われなければならない。また、一般的な方法において、一酸化炭素は、不必要に浪費され、測定のために使用できない。それとは反対に、本発明において、一酸化炭素貯蔵器に含まれ、密閉ガスボリュームに供給される一酸化炭素の量は、厳密に判定される。一般的な手法とは逆に、一酸化炭素量は、圧力及び温度を測定することで、厳密に判定されうる。ここでは、一酸化炭素貯蔵器は、金属、好ましくはアルミニウムで構成され、それにより、貯蔵器が供給する量を厳密に判定できる。しかし、プラスチック、ポリオキシメチレン等の他の適した材料を一酸化炭素貯蔵器に対して採用できる。供給された一酸化炭素の量を厳密に判定することにより、ヘモグロビンの判定精度も向上する。密閉ガスシステムを設けることで、供給された一酸化炭素以外の他のガスが貯蔵器に存在するはずがないため、一酸化炭素貯蔵器を「洗浄する」必要はなくなる。また、貯蔵器における圧力の上昇は、一酸化炭素の供給量と直接関連するため、貯蔵器における一酸化炭素の残留量を厳密に判定できる。一酸化炭素の温度を測定することにより、装置は、本発明によれば、更に確実にガス温度、従ってガスの量に影響を及ぼしうる環境温度とは無関係に、一酸化炭素の投与量を厳密に判定できるようにする。これにより、本発明に係る装置による測定に影響されやすい誤差を減らす。周囲から切り離された密閉ガスボリューム及び一酸化炭素貯蔵器により、患者が有毒な一酸化炭素を吸入する前又は吸入している間に、一酸化炭素が周囲に放出されることを防止する。従って、装置は、特定の更なる予防措置なしで動作するのに適しており、例えば個人開業で又はクリニックの一般的な処置室において採用されうる。そのため、一酸化炭素の投与量を厳密に判定することにより、ヘモグロビンを厳密に判定できるようになる。また、例えば病気の経過中、更には比較的より長期間にわたり患者の血液中のヘモグロビン量を測定できるように、種々の時点においてもヘモグロビンを容易且つ正確に判定できる。更に、部品を殺菌可能及び再利用可能に形成できるため、材料費が節約され、無駄がなくなる。吸口に後続して、抗菌性及び/又は抗ウィルス性のフィルタを配置できる。抗菌性及び/又は抗ウィルス性のフィルタは、患者の呼気が密閉ガスボリュームに入る前に患者の呼気を濾過する。それにより、密閉ガスボリュームがウィルス又は細菌汚染されることを防止する。
【0010】
ガスボリュームは湿度フィルタを更に備えうる。湿度フィルタは、密閉ガスボリュームの湿度を濾過して取り除くように構成される。放出される湿度が高く温かい空気は、例えばガスボリュームの内壁において液滴を形成しうるため、上述したような湿度フィルタの構成は好都合である。従って、水分又は湿潤環境を好む細菌又はカビによる装置の部品への損傷を防止できる。例えば、密閉ガスボリュームに到達する直前に、含有湿度を呼気から抽出できるように、湿度フィルタは吸口に近接して配置されうる。更に、電動送風機を密閉ガスボリュームに接続できる。従って、空気をガスボリュームに吹き込み、ガス出口を介してガスボリュームの外に導くことにより、測定の前後数分以内にガスボリュームを乾燥させることができる。
【0011】
好適な実施形態において、一酸化炭素を供給する手段は、規定量の一酸化炭素を密閉ガスボリュームに供給するように構成される。使用者が更に介入することなく一酸化炭素を自動で供給することにより、規定量の一酸化炭素をガスボリュームに供給できる。それにより、測定の精度及び再現性が向上する。一酸化炭素の供給は、一酸化炭素ガスをガスボリュームに供給する時点を自由に選択できるような使用者により手動で誘発されてもよい。それにより、種々の一般条件に対して、例えば種々の患者又は関係する更なる測定パラメータに対して、柔軟な測定につながる。
【0012】
好適な実施形態において、二酸化炭素フィルタは、密閉ガスボリュームに配置され、密閉ガスボリュームから二酸化炭素を濾過して取り除くように構成される。ガスボリュームが閉じられるため、ガスボリュームは、患者がガスを吸入及び放出する間、二酸化炭素(CO2)で濃縮される。しかし、高すぎる二酸化炭素濃度は害になりうるため、二酸化炭素フィルタをガスボリュームに配置することで、測定動作中に過剰な二酸化炭素をガスボリュームから濾過して取り除けるのが好ましい。フィルタは、CO2に対するフィルタの貯蔵容量に到達した場合に容易に交換できるように、交換可能に設けられる。CO2を濾過して取り除くことにより、ガスボリュームにおいてCO2濃度が不都合に上がることなく、患者がより長期間にわたりガスボリュームに対して吸入又は放出することも可能になる。
【0013】
好適な実施形態において、装置は酸素を供給する手段を備え、手段は、密閉ガスボリュームに酸素を供給するように構成される。酸素が供給されることにより、酸素含有量がある特定の時間の後、不都合に低くなることなく、患者は、より長期間にわたりガスボリュームのガスを吸入及び放出できる。手段は、より低い酸素濃度で純酸素又は混合ガスをガスボリュームに供給できる。密閉ガスボリュームにおいて酸素濃度を一定に保てることが好ましい。このために、酸素を供給する手段は、ガスボリュームにおける酸素濃度を判定できるセンサを更に備えうる。酸素は、酸素濃度が既定の閾値を下回らないように、一定に又は間欠的に供給されうる。酸素を供給する手段は、酸素ガス容器等の高圧の酸素貯蔵器を装置に接続できるような1つ以上の減圧弁を更に備えうる。酸素を供給する手段は、任意に柔らかく又は硬く形成可能な1つ以上の管を介してガスボリュームに接続されうる。例えば種々の管は、装置が動作する間、例えば酸素を用いて密閉ガスボリュームを「洗浄する」間又は一酸化炭素を投与する間に酸素をガスボリュームに供給するために使用可能である。更に、酸素を供給する手段は、続いて混合ガスをガスボリュームに供給するために、供給された一酸化炭素と酸素を混合するように構成されうる。併給することには、種々のガスを同時にガスボリュームに供給できるという利点がある。それにより、測定中の動作時間を短縮できる。
【0014】
好適な実施形態において、酸素を供給する手段は弾性バルーンを含み、弾性バルーンは、動作中に6リットル、好ましくは4.5リットル、特に好ましくは3リットルの最大充填容量を有する。弾性バルーンは、種々の充填容量に柔軟に調整可能な高弾性を備えうる。例えば種々の肺容量を有する種々の患者を装置で測定する場合、弾性バルーンは高弾性を備える必要があるだろう。従って、バルーンは、子供用の小さな充填容量及び例えば大人用のより大きな充填容量に適している。更に、バルーンは、種々の容量のバルーンが装置に設けられるように、交換可能に設けられる。バルーンは、患者がガスを容易に吸入及び放出するのを促進するように構成されるのが好ましい。従って、膨らんだバルーンからのガスを患者がガスを放出した後に肺に戻す復元力は、不都合に大きくてはいけない。また、バルーンは、種々のバルーンを希望通りに使用できるように、交換可能に設けられる。バルーンは、患者がガスを吸入する間、可能な限りしぼませられ、一酸化炭素がバルーンに残留するのを回避するのが好ましい。バルーンは、動作中にその膜が地面等の規制面に接触しないように装置に設けられる。これには、バルーンの拡張が規制されないという利点がある。更に、バルーンの拡張及び収縮は、動作中に能動的に制御可能である。従って、患者によるガスの吸入及び放出も能動的に支援可能である。これは、自力で呼吸するのに問題がある患者にとっては特に利点となりうる。更に、例えば特定の期間の間のガスの吸入及び放出であるガスボリュームのガスを厳密に判定できるように、例えば規定の呼吸頻度又は呼吸量を介してバルーンを能動的に制御することにより、規定の呼吸が可能になる。それにより、測定の再現性が向上する。更に、バルーンは、バルーンの容量を対応して増加させる放出されたガス量を判定することにより、患者の肺容量を判定するために使用可能である。
【0015】
好適な実施形態において、装置は、弾性バルーンの充填容量を判定する手段を備え、手段は光学手段であることが好ましく、手段は、光学手段と弾性バルーンの膜との距離を検出するように構成される。充填容量を判定する手段は、動作中にガス量を検出できるように使用可能である。バルーンは、充填容量によって、定義された方法で拡張しうる。更に、バルーンの膜と充填容量を判定する手段との距離は、光学距離、例えば反射光パルスの通過時間を測定することで得られる。このため、バルーンの膜と充填容量を判定する手段との距離は、特定の距離が規定の充填容量に対応するように規定の充填容量にそれぞれ修正されうる。充填容量を判定する手段に対する制御は、例えば吸入又は放出処理を厳密に制御するために、酸素を供給する手段に対する制御及び/又は一酸化炭素を供給する手段に対する制御にも関連しうる。能動的に駆動されたバルーンに対して、呼吸中の充填容量を制御するために、バルーンの充填容量を判定する手段にも更に接続されうる。
【0016】
好適な実施形態において、光学手段は、少なくともレーザ及び検出器を含み、レーザ及び検出器は、装置において固定して配置される。バルーンの膜は、レーザが出す光パルスを検出器に戻して反射するのに適している。レーザ及び検出器は、装置に対して固定して配置されるため、バルーンまで規定の距離を有しうる。従って、バルーンは、例えばぶら下がった状態で装置において固定して配置されうる。それにより、バルーンは拡張又は収縮可能になるが、バルーンの装置に対する相対距離は一定に維持される。従って、バルーン、レーザ及び検出器の相対距離は互いに一定であるため、同様に固定して搭載されたレーザ及び検出器を使用する際、バルーンの充填容量を誤って判定することを防止する。
【0017】
好適な実施形態において、装置は、密閉ガスボリュームの一酸化炭素含有量を検出するように構成される一酸化炭素検出器を備える。一酸化炭素検出器は、例えば一酸化炭素が供給され、患者がガスを吸入及び放出した後にガスボリュームに残留する一酸化炭素含有量を測定できる。従って、供給された一酸化炭素を患者が摂取したことが確実になる。更に、患者が摂取した一酸化炭素の規定量をガスボリュームにおける一酸化炭素の残留量により訂正できる。それにより、ヘモグロビン値の判定誤差が減少する。
【0018】
好適な実施形態において、装置は更なるガス出口を備え、一酸化炭素検出器は、更なるガス出口に配置される。更なるガス出口により、患者は周囲にガスを吐出できるようになる。例えばこれは、患者が摂取しなかった一酸化炭素の残留量が測定される検出の終了時に利点となりうる。ここでは、全ての残留ガスをガスボリュームから周囲に排出できるように、弾性バルーンを完全にしぼますことができる。従って、更なるガス出口において、ガスボリュームが含有する一酸化炭素を厳密に検出できる。
【0019】
好適な実施形態において、一酸化炭素を供給する手段及び/又は酸素を供給する手段、並びに/あるいはガス出口は、弁を介して密閉ガスボリュームに接続され、弁は、別個に調整可能である。弁を別個に制御することにより、ガスのガスボリュームへの供給又はガスボリュームからの排出をそれぞれ制御できるようになる。従って、動作の種類によって、例えば酸素又は一酸化炭素を供給する間、あるいはガス量を低下させる間、種々の弁は、装置の動作中、異なる長さ又は異なる時間で開閉されうる。これにより、例えば種々の測定パラメータを用いて測定するために、動作中の柔軟な調整が可能になる。
【0020】
好適な実施形態において、一酸化炭素貯蔵器の少なくとも1つの圧力センサの測定誤差は、100mbarより小さく、好ましくは50mbarより小さく、特に好ましくは20mbarより小さい。好適な実施形態において、一酸化炭素貯蔵器の少なくとも1つの温度センサの測定誤差は、2℃より小さく、好ましくは1.2℃より小さく、特に好ましくは0.6℃より小さい。ここでは、圧力及び温度は電子的に測定されうる。一酸化炭素量は、使用者から独立して判定することができ、それにより、患者のヘモグロビン量の判定誤差は更に減少する。
【0021】
好適な実施形態において、装置は制御装置を備え、制御装置は、10mlより小さく、好ましくは5mlより小さく、特に好ましくは2.4mlより小さい測定誤差で、一酸化炭素貯蔵器における一酸化炭素の量を判定する。一酸化炭素の量、並びに/あるいは温度及び/又は圧力判定は、装置の外から読めるように配置されうる対応するディスプレイを介して実施されうる。装置は、例えば判定値をコンピュータに送信するためのインタフェースを更に備えうる。
【0022】
好適な実施形態において、吸口は交換可能である。従って、装置は、種々の患者に対して迅速且つ衛生的に構成されうる。例えば、抗菌性及び/又は抗ウィルス性のフィルタ等を備えうる滅菌使い捨て吸口が使用可能である。
【0023】
好適な実施形態において、一酸化炭素を供給する手段及び/又は酸素を供給する手段は、一酸化炭素又は酸素を供給あるいは排出するための少なくとも1つの調整可能部品を含む。一酸化炭素又は酸素は、ガス容器等のより高い容量又は圧力を有するガス貯蔵媒体を介して供給されうる。従って、装置は、接続されたガス貯蔵媒体を交換する必要なく、長時間動作可能である。ガス貯蔵媒体の制御可能ポートは、一酸化炭素供給手段及び/又は酸素供給手段を安全に充填できる減圧弁を備えうる。更に、制御可能ポートは、望ましくないガス漏れを防止できることで、動作又は貯蔵中の安全性を高めるガス貯蔵手段を閉じるよう働きうる。
【0024】
好適な実施形態において、吸口及び二酸化炭素フィルタを除く装置の全ての部品は、筐体に配置される。筐体における好都合な配置により、埃及び破片等の望ましくない外部の衝撃から装置の各部品を保護できる。筐体は、収容した部品を例えば打撃又は衝撃による損傷から保護するために、アルミニウム等の硬いと同時に軽量である材料から形成されうる。更に、筐体は、装置が無菌操作に適するように形成されうる。従って、必要に応じて筐体の外面を密封又はコーティングできるとよい。更に、装置は、望ましくない一酸化炭素の漏れを防止できるセキュリティ対策を備えうる。従って、筐体に配置される一酸化炭素の測定装置の測定閾値を超える場合、漏れを示しうる、充填中の一酸化炭素貯蔵器の圧力の上昇が遅すぎる場合又は一酸化炭素貯蔵器の圧力が閾値を超える場合に弁が閉じるように、弁を制御できる。
【0025】
本発明は、更に、前述の実施形態のうちの1つに係る装置を使用してヘモグロビン量を判定するための方法に関する。方法は、i)規定量の一酸化炭素を密閉ガスボリュームに供給する工程と、ii)患者によるガスを密閉ガスボリュームに吸入及び放出する工程と、iii)患者の血液中の一酸化炭素の量を判定する工程と、iv)患者の血液中の一酸化炭素の量に基づいてヘモグロビン値を判定する工程と、を備える。ここでは、ヘモグロビン値は、一酸化炭素を投与する前の少なくとも1つの血液サンプル及び一酸化炭素を投与した後の少なくとも1つの血液サンプルを採取することで判定されうる。採血の厳密な時点は変動しうる。ヘモグロビン値は、それぞれの血液サンプルの一酸化炭素含有量の違いから判定されうる。更に、血液中の一酸化炭素含有量は、例えば光学手段を介して非観血に判定することもできる。
【0026】
好適な実施形態において、患者の前記ヘモグロビン量は、2.5%より小さく、好ましくは1.5%より小さく、特に好ましくは1%より小さい誤差で判定される。そのような精度は、病気を診断する上で利点となりうる。更に、そのような精度は、例えば患者のヘモグロビン値に依存するために、患者のニーズに合わせて調整可能な治療を設計するために利点となりうる。従って、そのような精度により、例えば数年間にわたり患者を観察して、病気の経過をより正確に記述し、とりわけ治療が順調であるか否かを判定し、必要に応じて治療を調整するための長期間の測定も可能になる。
【0027】
好適な実施形態において、方法は、工程i)の前に、純酸素を密閉ガスボリュームに供給する工程と、患者が供給された純酸素を吸入及び放出する工程と、を備える。純酸素を用いたこのいわゆる「洗浄」には、一酸化炭素を投与する前に肺に投与された純酸素とヘモグロビンが結合するという利点がある。従って、患者の体内に可能な限り多くの酸素が存在することで、後続して一酸化炭素が投与される間に患者がガスを吸入及び放出するのを促進できる。また、一酸化炭素の投与により誘発されうる低酸素症の程度が低減する。従って、より広範囲の患者に一酸化炭素を投与できる。
【0028】
好適な実施形態において、工程i)の前の酸素を吸入及び放出する工程は、第1継続時間にわたり実行され、工程ii)におけるガスを吸入及び放出する工程は、第2継続時間にわたり実行され、第1継続時間は、0.1分から6分、好ましくは1分から4分であり、第2継続時間は、1分から240分、好ましくは2分から10分、特に好ましくは6分から10分である。測定時間は、所望の測定方によって、あるいは患者によって適切に調整可能である。第1時間は、上述のヘモグロビンが適切に定義された方法で存在するように、状況に応じて適切に患者又は患者の血液中のヘモグロビンを準備するのに十分であり、更に第2時間は、ほぼ全ての投与された一酸化炭素がガスの吸入及び放出を通して患者に摂取されているように十分でありうることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明をより理解し、実用的な利用可能性を明確にするために、以下に参照用の図面を提供する。図面は、実施形態の一例を示すにすぎず、いかなる方法によっても本発明の範囲を定めるものではないことが理解されるべきである。
【0030】
【
図1】ヘモグロビン量を判定するための装置を概略的に示す配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下において、本発明の実施形態の一例を示す添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかし、以下に説明する実施形態が本発明の範囲を限定するためのものではない。異なる方法で本発明を規定することも可能である。説明する実施形態は、むしろ当業者に本発明の範囲を示すべきである。
【0032】
図1は、患者のヘモグロビン量を判定するための装置を概略的に示す配置図である。
図1において、CO供給源1は、第1減圧弁3を介してCO安全弁5に接続される。CO供給源1は、例えばCOガス容器であってよい。COガス容器において、大量のCOガスが高圧で圧縮される。CO供給源1とCO安全弁5とは、例えば気密弾性管を採用して接続されうる。気密弾性管により、CO供給源1を装置の他の部品から遠く離して配置することもできる。従って、CO供給源1が適切な貯蔵室等に貯蔵されうる一方で、装置の他の部品は共通の処理室に配置されうる。CO安全弁5は、次に第2CO減圧弁7に接続される。更に、第2CO減圧弁7は、第1スロットル9及び弁13を介してCO貯蔵器15に接続される。圧力は、第1スロットル9と弁13との間の圧力センサ11により検出される。上流弁及びスロットルにより、COガスが超過圧力で後続システムに供給されることを防止できる。従って、システムの後続部において、過剰圧力による損傷を防止できる。また、望ましくない有毒COガスの漏れを防止できる。
【0033】
圧力センサ11は、確実にCO貯蔵器15を適切な圧力で充填できるようにする。CO貯蔵器15におけるCOの温度及び圧力は、それぞれセンサ17、19により検出される。CO貯蔵器15の容量が分かっている場合、供給されたCOの厳密な量は、それに基づいて判定されうる。CO貯蔵器15は、次に第2スロットル21に接続される。CO貯蔵器15は、COを弁25を介して出口27に導くことにより、COで洗浄されうる。従って、CO貯蔵器15は、各動作の前に規定の初期状態にされうる。第2スロットル21は、弁23を介して密閉ガスボリューム100に更に接続される。従って、規定量のCOをCO貯蔵器15から密閉ガスボリューム100に導くことができる。更に、O2供給源29は、第1O2減圧弁31を介して第2O2減圧弁33に接続される。O2供給源29は、例えばO2ガス容器であってよい。O2ガス容器において、大量のCOガスが高圧で圧縮される。CO供給源1と同様に、O2供給源29も、O2供給源29を柔軟に配置する気密管を介して接続されうる。減圧弁31、33は、O2ガスが超過圧力で密閉ガスボリュームに供給されることを防止する。患者が第1期間において純O2ガスを吐き出す(O2で「洗浄する」とも示される)間、第2減圧弁33と接続された弁35は開口し、O2は密閉ガスボリューム100に供給される。その後、COは密閉ガスボリュームに供給され、弁35は、流入O2による密閉ガスボリュームへの供給接続に潜在的に残留していたCOを洗浄するために短時間、開口されうる。患者が特定の第2期間中にCO濃縮ガスを吐き出す間、弁35は閉じ、密閉ガスボリューム100のガスにおいて所望の酸素濃度を得るまで、O2は、弁37を介して密閉ガスボリューム100に供給される。密閉ガスボリューム100のガスの温度は、温度センサ39により検出される。患者は、密閉ガスボリューム100において、吸口47を用いて密閉ガスボリューム100のガスを矢印の方向に吸入及び放出する。放出されたガスは、密閉ガスボリュームに配置されるCO2フィルタ51を介して濾過される。従って、CO2ガスが密閉ガスボリューム100に累積することを防止する。ガスを吸入及び放出する間、COが供給された後に第1弁43が開口する。それにより、接続された弾性バルーン41にガスを吸入及び放出できるようになる。一方、密閉ガスボリューム100を出口49に接続する密閉ガスボリューム100の第2弁45は、閉じられる。弾性バルーン41は、患者がガスを放出する間は拡張し、患者がガスを吸入する間は収縮する。光学距離検出器55により判定される弾性バルーン41の膜までの距離57により、弾性バルーン41に残留するガス量を判定できる。吸入されるガス量と放出されるガス量との差により、患者の肺容量も判定できる。更に、弾性バルーン41の一時的な容量変化により、患者の呼吸頻度を判定できる。患者が特定の時間密閉ガスボリューム100のCO濃縮ガスを吸入及び放出した後、密閉ガスボリューム100の第1弁43は閉じ、第2弁45は開口する。従って、密閉ガスボリューム100からのガスは、出口49を介して患者から放出される。
【0034】
第2弁45の上流に、放出されたガスのCO量を検出できるCO検出器53が配置される。放出されたガスのCOを検出することにより、患者が摂取しなかったCO量を判定できる。この値は、患者に投与されたCO量の値を訂正するために使用できる。装置の部品は筐体59に配置されうる。CO供給源及びO2供給源、並びに第1減圧弁3、31は、筐体59の外部に格納され、対応するポートを介して筐体59の内部の部品と接続されうる。これにより、CO供給源及びO2供給源を別個に格納できるため、CO供給源及びO2供給源を容易に交換できるようになる。不要な放出されたガスは、対応する出口27、49を介して筐体59の外に導かれうる。更に、バルーン41は、筐体59において固定して配置される光学距離検出器55までの距離を検出できるように、筐体59に配置される。それにより、弾性バルーン41の充填容量を判定できる。ヘモグロビン量を判定するために、COを投与する前に患者から採血し、ヘモグロビンと結合したCOの濃度を判定する。患者がCOを投与され、ある特定の時間CO濃縮ガスを吐き出した後、再度患者から採血し、ヘモグロビンと結合したCOの濃度を判定する。ヘモグロビンと結合するCOの濃度は、例えば光学的方法により非観血に判定することもできる。ヘモグロビンと結合するCOの観血及び非観血の双方で検出することより、患者の血液中のヘモグロビン量を続いて判定できる。
【符号の説明】
【0035】
1 CO供給源
3 第1CO減圧弁
5 CO安全弁
7 第2CO減圧弁
9 第1スロットル
11 貯蔵器の前の圧力センサ
13 貯蔵器の前の弁
15 CO貯蔵器
17 CO貯蔵器の圧力センサ
19 CO貯蔵器の温度センサ
21 第2スロットル
23 CO投与用の弁
25 CO洗浄用の弁
27 COで貯蔵器を洗浄するための出口
29 O2供給源
31 第1O2減圧弁
33 第2O2減圧弁
35 O2洗浄用の弁
37 O2投与用の弁
39 ガスボリュームの温度センサ
41 弾性バルーン
43 ガスボリュームの第1弁
45 ガスボリュームの第2弁
47 吸口
49 ガスボリュームの出口
51 CO2フィルタ
53 CO検出器
55 光学距離検出器
57 バルーンまでの距離
59 筐体
100 密閉ガスボリューム