(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ミスト発生装置
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20220111BHJP
F24F 6/16 20060101ALI20220111BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F24F6/00 B
F24F6/16
F24F13/22 221
(21)【出願番号】P 2020117740
(22)【出願日】2020-07-08
(62)【分割の表示】P 2016229611の分割
【原出願日】2016-11-26
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 長
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-222156(JP,A)
【文献】特開2014-224617(JP,A)
【文献】特開平11-063584(JP,A)
【文献】特開2006-125743(JP,A)
【文献】特開平07-019520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
F24F 6/16
F24F 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体と、当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、当該送風ファンの近傍に形成され前記器具本体外の空気を吸入する吸入口と、当該吸入口を通過した空気が流通する送風経路と、当該送風経路内の空気が流入する貯水室流入口が一端に形成され水を貯水する貯水室と、当該貯水室内の水を回転により汲み上げて外周方向へ飛散させる回転体と、当該回転体を回転可能となるように軸支した駆動軸と接続するミストモータと、前記回転体により飛散した水が衝突することで微細ミスト及び大径水滴を発生させる衝突体と、前記貯水室の他端に流路が鉛直上向きとなるよう接続され前記貯水室内で発生した微細ミスト及び大径水滴を含む加湿空気が流通する気水分離風路と、当該気水分離風路内に設置され前記加湿空気に含まれる大径水滴を分離する気水分離手段と、
当該気水分離手段は、前記気水分離風路の対向する壁面に対し傾斜する傾斜面が互い違いとなるように複数設置され、前記気水分離風路の上端に接続され前記気水分離風路を通過した微細ミストを多く含む加湿空気が流通する上部空間と、当該上部空間の一側面に形成され微細ミストを多く含む前記加湿空気を前記器具本体外へ送風する送風口と、を備え、
前記送風経路から前記貯水室を介さず空気が流入可能なバイパス流入口を前記気水分離風路の
前記気水分離手段より下流側かつ前記上部空間の上流側に形成し
、前記バイパス流入口は、前記送風口と最も近い位置に設置された前記気水分離手段の前記傾斜面と対向する位置の前記気水分離風路に形成されたことを特徴とするミスト発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミストを含む加湿空気を室内へ供給するミスト発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものでは、貯水室内の水をミスト発生手段で破砕することでミストを発生させ、送風ファンにより送風口から器具本体外へミストを含んだ加湿空気を室内へ送風するミスト運転を実施するものがあり、室内の湿度や設定されたモードに応じて加湿量と風量を調節し、器具本体が配置された室内の相対湿度を変化させることで室内が設定湿度に保たれるようにしていた。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、貯水室及び気水分離風路を通過し圧損により送風口から送風される加湿空気の風量が低下するため、器具本体が設置された室内に対して大風量で加湿空気を送風することができず、室内の空気が極端に乾燥している場合に風量を最大にしたミスト運転を実施しても、室内の湿度が適度な値となるまで長時間かかる問題があった。
【0005】
これを解決する手段として、器具本体内に設置された送風ファンを大風量での出力が可能なものに置き換えることが考えられるが、出力の増大に伴い送風ファンが従来より大きくなることから、送風ファンの設置スペースが増大して器具本体の体積が大きくなり、器具本体の設置場所に制約が出ることや製品コストの上昇を招き、更に、大風量で送風ファンを駆動させると、貯水室内で発生したミスト内に含まれる粒径の大きな大径水滴が気水分離風路内で除去されず、送風口を構成する部材に結露水が付着して器具本体から落下し器具本体の設置面が濡れてしまうため、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、器具本体と、当該器具本体内に設置され空気を送風する送風ファンと、当該送風ファンの近傍に形成され前記器具本体外の空気を吸入する吸入口と、当該吸入口を通過した空気が流通する送風経路と、当該送風経路内の空気が流入する貯水室流入口が一端に形成され水を貯水する貯水室と、当該貯水室内の水を回転により汲み上げて外周方向へ飛散させる回転体と、当該回転体を回転可能となるように軸支した駆動軸と接続するミストモータと、前記回転体により飛散した水が衝突することで微細ミスト及び大径水滴を発生させる衝突体と、前記貯水室の他端に流路が鉛直上向きとなるよう接続され前記貯水室内で発生した微細ミスト及び大径水滴を含む加湿空気が流通する気水分離風路と、当該気水分離風路内に設置され前記加湿空気に含まれる大径水滴を分離する気水分離手段と、当該気水分離手段は、前記気水分離風路の対向する壁面に対し傾斜する傾斜面が互い違いとなるように複数設置され、前記気水分離風路の上端に接続され前記気水分離風路を通過した微細ミストを多く含む加湿空気が流通する上部空間と、当該上部空間の一側面に形成され微細ミストを多く含む前記加湿空気を前記器具本体外へ送風する送風口と、を備え、
前記送風経路から前記貯水室を介さず空気が流入可能なバイパス流入口を前記気水分離風路の前記気水分離手段より下流側かつ前記上部空間の上流側に形成し、前記バイパス流入口は、前記送風口と最も近い位置に設置された前記気水分離手段の前記傾斜面と対向する位置の前記気水分離風路に形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、送風ファンにより送風された空気が貯水室及び気水分離風路内を通過することで圧力損失により風量が低下しないよう、送風経路から貯水室を介さず空気が流入可能なバイパス流入口を形成したので、送風口から送風される風量が低下することがなく、ミスト運転時における風量不足を解消することができ、更に、気水分離風路内に設置した気水分離手段の少なくとも下流側にバイパス流入口を形成したことで、気水分離手段により加湿空気中の大径水滴が分離された後の加湿空気にバイパス流入口から流入する空気が合流するため、送風口まで達する大径水滴の量を減少させて結露水による器具本体の設置面の濡れを未然に防止することができる。
【0010】
また、気水分離手段は、気水分離風路の対向する壁面に対し傾斜する傾斜面が互い違いとなるように複数設置され、バイパス流入口は、送風口と最も近い位置に設置された気水分離手段の傾斜面と対向する位置の気水分離風路に形成されたので、送風ファンが駆動し気水分離風路内を加湿空気が流通した時、貯水室に近い位置に設置された気水分離手段によって多くの加湿空気中の大径水滴が分離するので、大径水滴の量が少ない送風口付近にバイパス流入口を形成したことで気水分離風路内の大径水滴について送風口まで達する量を大幅に減らすことができるため、ミスト運転時における風量不足を解消しつつ、送風口付近に結露水が付着し器具本体の設置面が濡れることを未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の一実施形態の外観を説明する斜視図
【
図5】同実施形態の運転開始から終了までの動作を説明するフローチャート
【
図6】同実施形態の加湿空気の流路を説明する斜視図
【
図7】同実施形態の加湿空気の流路を説明する側面視断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の一実施形態におけるミスト発生装置を図に基づいて説明する。
1は器具本体、2は器具本体1上部に形成され複数のルーバー3が設置された送風口、4は器具本体1の正面上部を構成する上面パネル、5は器具本体1の正面下部を構成する下面パネル、6は複数のスイッチが備えられ各種操作指令を行う操作部、7は図示しないブレーカーを隠すブレーカーカバーである。
【0013】
8は器具本体1内の略中段高さ位置にあって所定量の水を貯水する貯水室であり、この貯水室8内には、水に下端を水没させ駆動軸9に軸支された筒状の回転体10が備えられている。
【0014】
前記回転体10は、中空逆円錐形で上方に向かって円周が徐々に拡大するものであり、駆動軸9に接続され回転体10を回転駆動させるミストモータ11を駆動させ、回転体10が回転することによる回転の遠心力で貯水室8の水を汲み上げ、回転体10の外壁および内壁を伝わせて水を押し上げて、回転体10の外壁を伝わせて押し上げた水を周囲に飛散させると共に、回転体10の内壁を伝わせて押し上げた水を回転体10の上端に形成された複数の図示しない飛散口から外周方向へ飛散させる。
【0015】
12は回転体10の上部外周に所定間隔を離間させて位置し、回転体10と共に回転する円筒状の多孔体で、該多孔体12には、その全周壁に多数のスリットや金網やパンチングメタル等から成る衝突体としての多孔部13が設置されている。
【0016】
前記ミスト発生部を構成するミストモータ11を駆動させ、回転体10を回転させたことで発生する遠心力で貯水室8内の水を汲み上げると共に空気を飛散させ、多孔部13を通過した水滴が破砕されることで、水を微細化して粒径がナノメートル(nm)サイズのミスト(以下、微細ミスト)が多量に生成されると共に、比較的粒径の大きな水滴(以下、大径水滴)とが生成され、水の微細化によるレナード効果によって微細ミストに負イオンが帯電し、大径水滴に正イオンが帯電した状態となる。
【0017】
14は下面パネル5内に設置され所定の回転数で駆動することで室内空気を吸引して器具本体1の上部方向へ送風する送風ファン、15は当該送風ファン14で送風された空気を貯水室8の上部の一端に形成されミストモータ11の側面を通過して貯水室8内へ空気が流入可能な貯水室流入口16まで案内する送風経路であり、器具本体1の下部から吸い込まれた空気が送風経路15を通過して器具本体1の上部へ案内され、貯水室8内へ流入する。
【0018】
17は貯水室8の上方の他端に流路が鉛直上向きとなるよう接続され貯水室8内で発生した微細ミスト及び大径水滴を含む加湿空気が内部を流通する気水分離風路、18は当該気水分離風路17内の途中に複数設置され鉛直上方へ傾斜する傾斜面Pを備えた気水分離手段としてのバッフル板であり、気水分離風路17内の上段に設置されたバッフル板18a、中段に設置されたバッフル板18b、下段に設置されたバッフル板18cで構成されている。
そして、気水分離風路17内に加湿空気が流入すると、各バッフル板18を蛇行するように加湿空気が流通することで加湿空気中の大径水滴が傾斜面Pにより分離され、分離された大径水滴が集まると重力の影響で傾斜面Pに沿ってバッフル板18の下端まで流動して貯水室8へ落下するため、送風口2へ案内される大径水滴の量を減少させると共に、微細ミストを多く含んだ加湿空気を送風口2へ案内する。
【0019】
また、前記バッフル板18a、18b、18cは前記気水分離風路17内の鉛直方向に対し互い違いとなるよう設置されており、貯水室8から上昇する加湿空気が各バッフル板18により塞がれた流路を避けるように蛇行して上昇し上端にまで至るので、各バッフル板18を加湿空気が十分に舐めて上昇することで、大径水滴を各バッフル板18で効果的に分離することができる。
【0020】
19は貯水室8内に設置され貯水を加熱する加熱ヒータであり、貯水室8の外壁に設置され貯水温度を検知する貯水温度センサ20で検知される温度が所定温度となるよう、ON/OFF状態が適宜切り替えられる。
【0021】
21は貯水室8内に設置されフロートが上下することで水位を検知する水位センサであり、貯水室8内の水位が低下して所定水位以下になったらOFF信号を出力し、水位が上昇して所定水位以上になったらON信号を出力し、更に水位が上昇して貯水室8内が満水となったら満水信号を出力する。
【0022】
22は貯水室8側面に接続され貯水室8内に市水を給水する給水管であり、該給水管22の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室8内への給水を制御する給水弁23と、給水圧を所定値まで減圧する減圧弁24とが備えられている。
【0023】
25は貯水室8底部に接続され貯水室8内の水を器具本体1外部に排水する硬質塩化ビニル管で構成された排水管であり、該排水管25の配管途中には、電磁弁を開閉して貯水室8内水の排水を制御する排水切り替え手段としての排水弁26が備えれている。
【0024】
27は送風口2の壁面に設置され送風口2から室内へ向けて送風される加湿空気の温度を検知する送風温度センサ、28は送風ファン14の近傍に設置され器具本体1の下部から吸い込まれた室内空気の温度を検知する吸気温度センサ、29は前記吸気温度センサ28の近傍に設置され器具本体1が設置された室内の湿度を検知する湿度センサであり、各センサで検知された温度や湿度に基づいて、ミストモータ11や送風ファン14の回転数を変化させ、加熱ヒータ19のON/OFF状態を切り替える。
【0025】
操作部6には、ミスト運転の開始及び停止を指示する運転切り替え手段としての運転スイッチ30と、加熱ヒータ19のON/OFF状態を切り替えることで貯水室8内の貯水温度を変化させ、送風口2から室内に送風される加湿空気に含有可能な水分量の割合を変化させた3段階の加湿レベルと、湿度センサ29で検知された湿度が予め設定された湿度となるよう前記加湿レベルを変化させるオートモードとから選択可能な加湿スイッチ31と、ミストモータ11と送風ファン14との回転数の大小を設定可能な三段階の風量レベルと、湿度センサ29で設定された湿度が予め設定された湿度となるよう前記風量レベルを変化させるオードモードとから選択可能な風量スイッチ32と、加湿空気を室内に供給するミスト運転の開始時間と停止時間とを設定するタイマー切替スイッチ33と、前記風量スイッチ32で設定された風量で送風ファン14のみを駆動させ室内の空気清浄を行う空清モードを実施する空清スイッチ34と、現在時刻を設定する時刻設定スイッチ35と、スイッチを操作することで運転停止以外の動作を禁止するチャイルドロックスイッチ36とが備えられている。
【0026】
また、操作部6の各スイッチ上部には各スイッチに対応したランプが備えられており、運転スイッチ30が操作されたら点灯する運転ランプ37と、ミスト運転が所定時間以上継続したら開始する除菌運転時に点灯する除菌ランプ38と、加湿スイッチ31で設定された加湿レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する加湿レベルランプ39と、風量スイッチ32で設定された風量レベルを1から3の数値とオートモードを示すAで表示する風量レベルランプ40と、タイマー切替スイッチ33でミスト運転の開始及び停止が設定されたら、それぞれのランプが点灯するタイマーランプ41と、空清スイッチ34が操作され空清モードが設定されたら点灯する空清モードランプ42と、時刻設定スイッチ35で設定された現在時刻を表示する時刻表示パネル43と、チャイルドロックスイッチ36が操作されたら点灯するチャイルドロックランプ44とが備えられている。
【0027】
45は各センサで検知された検知値や操作部6上に備えられた各スイッチでの設定内容に基づき、運転内容や弁の開閉を制御するマイコンで構成された制御部であり、ミストモータ11を所定の回転数で駆動させるミストモータ制御手段46と、送風ファン14を所定の回転数で駆動させる送風ファン制御手段47と、加熱ヒータ19のON/OFF状態を切り替えて貯水室8内の水温を制御する加熱ヒータ制御手段48とが備えられている。
【0028】
49は器具本体1の底面及び前面下方に形成され室内空気を器具本体1内に取り込む吸入口であり、当該吸入口49には、吸入口49の通過時に空気中の塵埃を捕集し清浄化させる空清フィルタ50が取り付けられている。
前記空清フィルタ50が吸入口49に取り付けられたことで器具本体1内に空気が流入する時における通風抵抗は増大するが、塵埃が取り除かれた空気を送風口2から送風可能となり、空気清浄能力が向上する。
【0029】
51は気水分離風路17の壁面を貫通し送風経路15を流通する空気の一部が流入可能なバイパス流入口であり、当該バイパス流入口51は、送風口2に最も近い位置にある気水分離風路17内の最上段に設置されたバッフル板18aの上方へ傾斜した傾斜面Pと対向し、かつ送風経路15と対面する気水分離風路17の壁面を貫通するように形成されており、バイパス流入口51から気水分離風路17内へ空気が流入することで、貯水室8から上昇してきた加湿空気の風量を増大させ、送風口2から室内へ送風される加湿空気の送風量を上昇させることができる。
【0030】
次に、この一実施形態での運転開始から終了までの動作について
図5のフローチャートに基づいて説明する。
まず、操作部6の運転スイッチ30が操作されたか、もしくはタイマー切替スイッチ33で設定された運転開始時刻になったら、制御部45は、排水弁26を開放して貯水室8内の水を排水し、水位センサ21でOFF信号が検知されたら、給水弁23を開放して貯水室8内を水で洗い流すクリーニング動作を行い、所定時間経過したら排水弁26を閉止することで給水弁23から流入する水を貯水室8内に供給し、水位センサ21でON信号が検知されたら、所定量の水が貯水室8内に供給されたとして給水弁23を閉止する水入替モードを行う(ステップS101)。
【0031】
ステップS101の水入替モードが終了したら、制御部45は、貯水温度センサ20で検知される貯水温度が室温と同値になるまで加熱ヒータ制御手段48で加熱ヒータ19をON状態にして、ミストモータ11及び送風ファン14が所定の回転数となるようミストモータ制御手段46及び送風ファン制御手段47で制御する立ち上げ動作を実行する立ち上げモードを行う(ステップS102)。
【0032】
ステップS102の立ち上げモードが終了したら、制御部45は、加湿スイッチ31及び風量スイッチ32で設定された加湿レベルと風量レベルとに基づいて、ミストモータ11と送風ファン14とが所定の回転数で駆動するようミストモータ制御手段46と送風ファン制御手段47とで回転数を制御し、加熱ヒータ19のON/OFF状態を加熱ヒータ制御手段48で切り替えて制御して、加湿レベルと風量レベルとに合わせた所定の温度範囲内にするミスト運転を実行する通常運転モードを行う(ステップS103)。
【0033】
ステップS103の通常運転モード中に運転スイッチ30が操作され運転終了の指示があったと判断したら、制御部45は、ミストモータ11を停止させてから排水弁26を開弁して貯水室8内の水を排水し、所定時間経過したら給水弁23を開放して貯水室8内を洗浄してから排水弁26を閉止して貯水室8内に所定量だけ貯水する水入替運転を行い、その後、加熱ヒータ19をON状態にして水を加熱することで除菌を行う除菌運転を所定時間行い、その後、所定時間経過後に貯水室8内を冷却する冷却運転を実行し、貯水温度が所定温度以下になったら排水弁26を開放して排水するクリーニングモードを行う(ステップS104)。
【0034】
ステップS104のクリーニングモードが終了したら、制御部45は、送風ファン14が所定の回転数(例えば、800rpm)で駆動するよう送風ファン制御手段47で制御し、貯水室8や送風経路15に送風して乾燥させることで菌の増殖を防止する乾燥モードを行い(ステップS105)、送風ファン14の駆動時間が所定時間(例えば、3時間)をカウントしたか判断し、3時間カウントしたら、送風ファン14を停止させて運転を終了する。
【0035】
次に、ミスト運転時における加湿空気の流路、及びバイパス流入口51から流入する空気が加湿空気の流路に与える影響について詳述する。
まず、ミスト運転が開始されミストモータ11及び送風ファン14が所定の回転数で駆動すると、器具本体1の底面及び前面の吸入口49から室内の空気が吸い込まれ、空清フィルタ50を通過することで空気中の塵埃が除去された清浄な空気となる。
そして、空清フィルタ50を通過した空気は送風通路15を上昇し、貯水室流入口16及びバイパス流入口51とに分流して、貯水室8及び気水分離風路17の上方へそれぞれ流入する。
【0036】
貯水室8及び気水分離風路17へ流入するそれぞれの空気量については、貯水室流入口16とバイパス流入口51との開口面積によって変化し、開口面積の増大に比例して流入する空気量も増大するする。したがって、貯水室8内で発生する微細ミストとマイナスイオンとを含んだ加湿空気を送風口2まで十分に案内可能な風量を確保しつつ、室内へ送風される風量が適度に増大するよう、貯水室流入口16及びバイパス流入口51の開口面積を設計する。
【0037】
貯水室流入口16から貯水室8内へ流入した空気は、回転体10により汲み上げられ多孔部13によって破砕されることで発生した微細ミスト、大径水滴及びマイナスイオンを含んだ加湿空気として気水分離風路17を上昇する。
気水分離風路17を上昇する時、バッフル板18a、18b、18cによって流路が蛇行し、各バッフル板18の傾斜面Pを舐めるように流通することで加湿空気中の大径水滴が各バッフル板18の表面に付着し、傾斜した各バッフル板18の下端まで達すると、重力により水滴が貯水室8へ落下するため、送風口2まで運ばれる大径水滴の量を減少させることができる。
【0038】
そして、貯水室8から気水分離風路17を上昇した加湿空気と送風通路15で分流しバイパス風路51から流入した空気とが、気水分離風路17の下流側の端部と接続した上部空間52内で混合し、当該上部空間52内に設置された側面視略L字形状の案内板53によって送風口2方向へ加湿空気が案内され、微細ミストとマイナスイオンとを含む加湿空気が室内へ供給される。
【0039】
このように、気水分離風路17の側面に送風通路15を流通する空気が流入可能なバイパス風路51を形成したことで、貯水室8及び気水分離風路17を通過し圧損により加湿空気の風量が低下しても、バイパス風路51から圧損の影響を受けない空気が流入し、上部空間52で加湿空気と混合して送風口2から室内へ供給されるため、吸入口49に空清フィルタ50を取り付けたことで通風抵抗が増しても、室内へ供給される加湿空気の風量が低減せず、加湿及び空清を効果的に実施することが可能となる。
【0040】
また、ミスト運転時に気水分離風路17を通過する加湿空気内に含まれる大径水滴は、微細ミストと比較して質量が大きいことから重力の影響により気水分離風路17を上昇し難く、貯水室8に近い気水分離風路17の下方の壁面やバッフル版18b、18cに付着しやすい。よって、バイパス流入口51を最も送風口2に近い気水分離風路17の最上部に位置するバッフル板18aの傾斜面Pと対向する位置に形成したことで、大径水滴が送風口2まで案内される量が減少し、送風口2付近が結露水により濡れて、器具本体1下部に水濡れが発生するのを未然に防止することができる。
【0041】
更に、気水分離風路17が鉛直上向きとなるよう設置したことで、バッフル板18に付着した大径水滴がバッフル板18の端部から落下すると貯水室8内に流入するため、器具本体1の外装から水が漏れ出すことがなく、器具本体1の設置面の濡れを防止することができる。
【0042】
以上のように、貯水室8と上部空間52とを結ぶ気水分離風路17の側面にバイパス流入口51を形成したことで、ミスト運転時に送風ファン14により送風経路15内を流通する空気が貯水室流入口16とバイパス流入口51とに分流し、貯水室8及び気水分離風路17を通過した加湿空気とバイパス流入口51から流入した空気とが上部空間52で混合して、送風口2から室内へ送風されるため、吸入口49に空清フィルタ50を設置したことでの通風抵抗増加や、貯水室8及び気水分離風路17を通過することで生じる圧力損失があっても、送風口2から室内へ供給する加湿空気の風量が低下しないことで、室内湿度を素早く向上させると共に空気清浄が効果的に実施される。
【0043】
また、バイパス流入口51を最も送風口2に近い気水分離風路17の最上段に位置するバッフル板18aの傾斜面Pと対向する位置の側壁に形成したことで、バイパス流入口51から流入した空気により気水分離風路17内を浮遊する大径水滴が送風口2まで運ばれる量を低減させることができるため、ミスト運転時に送風口2付近へ結露水が付着し、器具本体1の設置面を濡らす事態を未然に防止することができる。
【0044】
なお、本実施形態では気水分離風路17の側壁面にバイパス流入口51を形成した内容で説明したが、これに限らず、送風経路15から上部空間52へ空気が流入可能となるよう上部空間52の下面適所に貫通穴を形成し、ミスト運転時に送風経路15内を流通する空気が貯水室8と上部空間52とにそれぞれ分流して、気水分離風路17を通過した加湿空気とバイパス流入口51を通過した空気とが上部空間52で混合して送風口2から送風される構成であってもよく、つまり、貯水室8と気水分離風路17とを通過することでの圧損の影響を受けずに加湿空気と混合し、送風口2からの送風量が増大する構成であれば、貯水室8及び気水分離風路17をバイパスする流路の形成位置については特に指定しない。
【0045】
また、本実施形態では、気水分離手段としてバッフル板18を用いて説明したが、これに限られるものではなく、気水分離風路17内を流通する大径水滴を分離しつつ微細水滴を含む加湿空気を送風口2まで送風可能な構成であればよいものであり、例えば、気水分離風路17内に網状の板やパンチ穴が形成された板を複数設置する等、微細水滴を含む加湿空気が流通可能な通風性を確保しつつ大径水滴の分離が可能な構成であればよい。
【0046】
また、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 器具本体
2 送風口
8 貯水室
10 回転体
11 ミストモータ
13 多孔部(衝突体)
14 送風ファン
15 送風経路
16 貯水室流入口
17 気水分離風路
18 バッフル板(気水分離手段)
49 吸入口
50 空清フィルタ
51 バイパス流入口