(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】タイヤトレッド用ゴム組成物及びこれを用いて製造したタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20220203BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220203BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20220203BHJP
C08L 57/00 20060101ALI20220203BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/36
C08L45/00
C08L57/00
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020120075
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0093784
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520258806
【氏名又は名称】ハンクック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】キム キヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リム キウォン
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-253051(JP,A)
【文献】特開2018-177908(JP,A)
【文献】特開2019-014796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ゴム100重量部と、
シリカ100ないし130重量部と、
炭化水素系樹脂5ないし100重量部と
水素化スチレン-ブタジエンゴム5ないし50重量部
と、を含み、
前記原料ゴムは、スチレン含量が10ないし30重量%であり、ブタジエン内のビニル含量が10ないし40重量%であり、重量平均分子量(Mw)が500,000ないし900,000g/molであり、ガラス転移温度が-70℃ないし-55℃である溶液重合スチレン-ブタジエンゴムであり、
前記溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、シリケートを使用してゴム鎖内に変成したものであり、
前記炭化水素系樹脂は、ヒドロカーボン基盤の重量平均分子量(Mw)が2,000g/mol以下で、ガラス転移温度が80℃以上であり、
前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、ガラス転移温度が-40℃ないし-20℃であることを特徴とする、
タイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、スチレン-ブタジエンゴムに対して水素化反応により、前記スチレン-ブタジエンゴムの主鎖内にある二重結合の数が前記主鎖内にある総結合数の2%以下であり、
前記水素化スチレン-ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は100,000ないし500,000g/molであり、
前記水素化スチレン-ブタジエンゴム内のビニル含量が1重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、スチレン含量が30ないし35重量%であり、
ビニル含量が25ないし40重量%であるスチレン-ブタジエンゴムに対して水素化反応により製造されたことを特徴とする請求項
2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項によるタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造したタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物及びこれを利用して製造したタイヤに関し、より詳細には、乾いた路面及び濡れた路面での制動性能を維持しながら耐摩耗性能を大きく向上させることができるため、夏用及びオールシーズンタイヤとして使用できるタイヤトレッド用ゴム組成物及びこれを利用して製造したタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
石油の枯渇による原油高の問題と共に、地球温暖化及び微小粒子状物質などにより全世界的に環境問題が大きなイシューとなり、自動車産業ではこのような環境問題の改善のために多くの努力を傾けている。2012年からヨーロッパを皮切りに全世界的にラベル表記制度が施行されることにより、濡れた路面における制動性能、燃費性能、騒音に対する等級を表記して消費者に提供し、国内もこのような世界的な傾向に合わせてエネルギー消費効率等級制度を実施している。
【0003】
これにより、タイヤ業界ではラベル表記性能を中心に製品開発に力を注いだため、1つの性能の向上のために他の性能が不利になるトレードオフ(trade-off)傾向が現れ、消費者の購買周期に影響を与える耐摩耗性能、氷雪制動性能及びハンドリング性能を左右するスノー(snow)性能とタイヤの長期安定性を決定する耐疲労性能がラベル表記性能に該当する。
【0004】
タイヤ産業は、ヨーロッパ市場の場合、夏用タイヤと冬用タイヤに分かれており、北米と国内はオールシーズンタイヤが主な販売市場である。最近は、夏用と冬用に二分化していた環境から北米市場の発達とともに次第にオールシーズンタイヤへと成長している。オールシーズンタイヤは、夏だけでなく、冬にもタイヤ交換なしに使用するため、濡れた路面での制動性能耐摩耗性能及び氷雪路面での制動性能が全て要求される。しかしながら、このような濡れた路面制動性能と耐摩耗性能及び氷雪路面での制動性能は相反する性能であり、濡れた路面での制動性能向上のためにゴム組成物のガラス転移温度(Tg)を高めるか、補強剤の含量を高めると、ゴム組成物の機械的物性は向上するが、氷雪路面での制動性能は低下する。
【0005】
1980年から燃費測定のためにNEDC(New European Driving Cycle)を使用したが、最近、一部のグローバル自動車メーカによる排出ガス操作事件により、2017年から新たにWLTP(Worldwide Harmonized Light Vehicle Test Procedure)基準で燃費を測定している。
【0006】
車両から発生する排出ガスを減らすためには、車両だけでなく車を構成する全ての構成品の軽量化が必須であり、タイヤも軽量化技術が必要な状況である。特に、タイヤは、車両の性能だけでなく搭乗者の安全と直結する問題であるため、様々な性能を考慮してタイヤ製造が行われなければならない。
【0007】
特に、制動性能は、自動車の安全性に直結する問題であり、耐摩耗性能は消費者の経済性に直結する問題であるので、タイヤメーカの主要な関心事であって、これを解決するための研究開発が活発に行われている。
【0008】
このような問題を解決するために、構造軽量化のためにはタイヤの性能を低下させることなく軽量化素材を適用する必要があり、路面と接する部分であるトレッド組成物の耐摩耗性能向上によりトレッド厚さを減少させてタイヤの重量を減らす技術開発が必須である。
【0009】
また、前記問題を解決するために、従来はブタジエンゴム含量を高めてトレッド用ゴム組成物のガラス転移温度を低く設計して製造していたが、乾いた路面又は濡れた路面での制動性能が低下するため、ブタジエンゴム含量を増加させる方法以外に、他の技術的アプローチが必要である。しかしながら、最近自動車メーカ及び消費者が要求する性能がより向上して制動性能及び燃費性能を維持すると同時に、耐摩耗性能も向上させなければならない。一般的に、耐摩耗性能を向上させるためには、適切な補強剤含量と低いガラス転移温度を有するスチレン-ブタジエンゴム及びブタジエンゴムの適切な使用が必要である。しかしながら、低いガラス転移温度を有するスチレン-ブタジエンゴムを使用する場合、加工性に問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、乾いた路面及び濡れた路面での性能を低下させることなく耐摩耗性能を極大化してオールシーズン及び夏用タイヤに適用できるタイヤトレッド用ゴム組成物及びこれを利用して製造したタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の一側面によるタイヤトレッド用ゴム組成物は、原料ゴム100重量部と、補強性充填剤50ないし200重量部と、炭化水素系樹脂5ないし100重量部と、水素化スチレン-ブタジエンゴム5ないし50重量部とを含む。
【0012】
このとき、前記原料ゴムは、スチレン含量が10ないし30重量%であり、ブタジエン内のビニル含量が10ないし40重量%であり、重量平均分子量(Mw)が500,000ないし900,000g/molであり、ガラス転移温度が-70℃ないし-55℃の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムである。
【0013】
また、前記補強性充填剤は、カーボンブラック、シリカ又はこれらの混合物であってもよい。
【0014】
そして、前記炭化水素系樹脂は、重量平均分子量(Mw)が2,000g/mol以下であり、ガラス転移温度が80℃以上のものであってよい。
【0015】
一方、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、スチレン-ブタジエンゴムに対して水素化反応により、前記スチレン-ブタジエンゴムの主鎖内にある二重結合の数が前記主鎖内にある総結合数の2%以下であり、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムの重量平均分子量は(Mw)は100,000ないし500,000g/molであり、前記水素化スチレン-ブタジエンゴム内のビニル含量が1重量%以下のものであってもよい。
【0016】
このとき、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、スチレン含量が30ないし35重量%であり、ビニル含量が25ないし40重量%であるスチレン-ブタジエンゴムに対して水素化反応により製造されたものであってもよい。
【0017】
そして、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、ガラス転移温度が-40℃ないし-20℃であるものであってもよい。
【0018】
本発明の他の側面によるタイヤは、前述した本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタイヤは、原料ゴム、特に、非常に低いガラス転移温度を有する原料ゴムの相容性改善のために、炭化水素系樹脂と水素化スチレン-ブタジエンゴムを含んでいるので、乾いた路面及び濡れた路面での性能の低下なしに耐摩耗性能を最大化してオールシーズン及び夏用タイヤに適用できるタイヤトレッド用ゴム組成物及びこれを利用して製造したタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は様々な相異なる形態で実現でき、ここで説明する実施例に限定されない。
【0021】
本発明の一実施例によるタイヤトレッド用ゴム組成物は、原料ゴム100重量部と、補強性充填剤50ないし200重量部と、炭化水素系樹脂5ないし100重量部と、及び水素化スチレン-ブタジエンゴム5ないし50重量部とを含む。
【0022】
本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物は、原料ゴム、特に、非常に低いガラス転移温度を有する原料ゴムの相容性改善のために炭化水素系樹脂と水素化スチレン-ブタジエンゴムを含んでいるので、乾いた路面及び濡れた路面での性能低下なしに耐摩耗性能を極大化することができ、このようなゴム組成物を利用して製造したタイヤはオールシーズン及び夏用タイヤに適している。
【0023】
ここで、前記原料ゴムは、スチレン含量が10ないし30重量%、好ましくは10ないし20重量%であり、ブタジエン内のビニル含量が10ないし40重量%、好ましくは20ないし30重量%であり、重量平均分子量(Mw)が500,000ないし900,000g/molであり、ガラス転移温度が-70℃ないし-55℃の溶液重合スチレン-ブタジエンゴムであるものであってもよく、このとき、前記溶液重合スチレンブタジエンゴムは回分式工程(batch process)により製造されたものであってもよい。
【0024】
前記回分式工程により製造された溶液重合スチレンブタジエンゴムは非常に低いガラス転移温度(Tg)を有し、低いスチレン含量と低いムーニー粘度により加工性が不利である。しかしながら、低いスチレン含量と低いガラス転移温度によりヒステリシスロスが低くなって回転抵抗面で有利であり、耐摩耗性能に優れているのに対して、乾いた路面又は濡れた路面での制動性能が不利になる可能性がある。
【0025】
そして、前記溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、テトラエチルオルソシリケートのようなシリケートを使用してゴム鎖内に変成したものであってもよい。
【0026】
一方、本発明の補強性充填剤は、カーボンブラック、シリカ又はこれらの混合物であってもよく、50ないし200重量部、好ましくは100ないし130重量部が使用されてもよい。このとき、本発明による前記カーボンブラックの代表例としては、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990又はN991などがある。
【0027】
そして、本発明による前記シリカは、BET表面積が160ないし180m2/gであり、DBP(パラフィンオイル)吸油量が180ないし210cc/100gである沈降性シリカを使用する場合、分散がより容易であるため耐摩耗性能の向上に有利であり、濡れた路面での制動性能をさらに向上させることができる。
【0028】
本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物は、炭化水素系樹脂5ないし100重量部、好ましくは20ないし70重量部を含む。本発明では、軟化剤として従来のプロセスオイルの代わりに炭化水素系樹脂を使用しているが、このときに使用される炭化水素系樹脂は、前記原料ゴムの加工性に不利な性質を補完する役割を果たす。さらに、ガラス転移温度(Tg)を高める効果を提供して、加工性だけでなく、前記原料ゴム及びシリカを含む補強性充填剤とともに前記炭化水素系樹脂を使用することにより、タイヤトレッド用ゴム組成物の制動性能を大きく向上させるとともに、耐摩耗性能も大きく向上させてタイヤトレッド用ゴム組成物として適合に使用することができる。
【0029】
本発明において使用される炭化水素係数樹脂は、シクロペンタジエン、ジクロロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなどの炭化水素レジンであって、重量平均分子量が約2,000g/mol以下で、ガラス転移温度が80℃以上であってもよい。
【0030】
しかしながら、前記炭化水素系樹脂を過量適用するには工程上の困難が存在するため、これを解決するための方策として本発明では、水素化スチレン-ブタジエンゴムを適用する。
【0031】
本発明による水素化スチレン-ブタジエンゴムは、スチレン-ブタジエンゴムに対して水素化反応により、前記スチレン-ブタジエンゴムの主鎖内にある二重結合の数が一般的なスチレン-ブタジエンゴムに比べてごく少なく、前記主鎖内にある総結合数の2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは0.3ないし0.7%である。
【0032】
前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、前記トレッド用ゴム組成物に添加して使用する場合、硫黄との架橋結合にごく一部のみが参加するか参加せず、トレッド用ゴム組成物に分散している形態で存在し、これにより、全体のトレッド用ゴム組成物内にゴムが占める含量増加により転がり抵抗特性改善の効果が発生する。
【0033】
前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、水素化により主鎖に存在する二重結合含量が減少することになって、存在するポリエチレン部分によりムーニー粘度が相対的に非常に高くなる傾向がある。この場合、加工性に不利になる可能性があるため、ビニル含量を高めて水素化する場合はムーニー粘度を下げる効果があり、水素化スチレン-ブタジエンゴムのガラス転移温度はスチレン含量とビニル含量の調節により合わせることが好ましい。
【0034】
一方、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムの水素化率が低くて、二重結合の数が多く存在する場合、架橋反応にさらに多く参加することができるため、その場合は添加物として判断されにくく、架橋システムに影響を与えて、機械的物性及び粘弾性の特性に逆効果が発生する可能性がある。
【0035】
そして、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムの重量平均分子量(Mw)は、100,000ないし500,000g/molであり、好ましくは200,000ないし400,000g/molであってもいいが、このような数値範囲を満足することにより、耐摩耗性能確保及び加工性に優れた効果が発生する。
【0036】
また、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、一般的なスチレン-ブタジエンゴムの構造的特性とは異なり、ビニル含量が1重量%以下、好ましくは0.1重量%ないし0.7重量%であってもよい。前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、水素化によりスチレン-ブタジエン内のビニル基の二重結合が減少して、タイヤの耐摩耗性能を向上させることができる。
【0037】
また、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、スチレン含量が30ないし35重量%であり、ビニル含量が25ないし40重量%であるスチレン-ブタジエンゴムに対して水素化反応により製造されたものである。スチレン-ブタジエンゴムに対する水素化反応は一般的に公知された技術により行われる。
【0038】
さらに、前記水素化スチレン-ブタジエンゴムは、ガラス転移温度が-40℃ないし-20℃であり、好ましくは-40℃ないし-30℃のガラス転移温度を有するが、ガラス転移温度が-70℃ないし-55℃である原料ゴムに対して高いガラス転移温度を有するので、乾いた路面及び濡れた路面での制動性能向上に寄与することができる。
【0039】
一方、本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物は、一般的なタイヤのトレードオフ(Trade-off)問題を解決するために、天然オイルを使用することができるが、天然オイルのうち、不飽和脂肪酸を有する植物性オイルを適用することができる。植物性オイルをさらに含むことにより、耐摩耗性能及び氷雪路面の制動性能を向上させることができる。
【0040】
また、本発明に使用できる植物性オイルは、ヒマワリ油、大豆油、キャノーラ油、ブドウ種油及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、前記植物性オイルの全体重量に対して不飽和脂肪酸を60ないし90重量%で含むものであってもよい。
【0041】
前記植物性オイルは、不飽和脂肪酸内のリノレン酸に対するオレイン酸の割合が1:0.5ないし1:5.0であってもよいが、前記リノレン酸1重量部に対してオレイン酸が0.5重量部未満で含まれる場合は、氷雪路面制動性能及び耐摩耗性能に優れているのに対して濡れた路面での制動及び回転抵抗性能面でトレードオフが発生する可能性があり、5.0重量部を超えて含まれる場合は、逆にトレードオフ現象はほとんどなくなるのみ対してて、氷雪路面での制動性能及び耐性能効果が非常に低くなる可能性がある。
【0042】
また、前記天然オイルは、原料ゴム100重量部に対して10ないし30重量部で使用することが好ましい。天然オイルが10重量部未満で含まれる場合は、耐摩耗性能及び氷雪路面での制動性能が非常に低くなる問題が発生し、30重量部を超える場合は、回転抵抗及び濡れた路面での制動性能が過度に低下する問題が発生する可能性がある。
【0043】
通常、ゴム組成物において、シリカはシランカップリング剤との反応によりゴム内で親有機性に改質されてゴムと化学的に結合する。このように、シリカの表面化学的特性が変形した場合、ゴム内においてシリカの動きが制限されてヒステリシスが低くなり、その結果として、ゴム組成物の発熱及び回転抵抗が減少する。しかしながら、ゴム内でシリカの分散が十分に行われないと、発熱及び回転抵抗の減少が非常に小さくなってむしろ耐摩耗性が低下する可能性がある。
【0044】
従って、本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物には、シーランカップリング剤が含まれる。
【0045】
前記シランカップリング剤は、通常ゴム組成物においてシリカに対するカップリング剤として使用されるものであれば、特別な限定なく使用可能である。具体的には、スルフィド系シラン化合物、メルカプト系シラン化合物、ビニル系シラン化合物、アミノ系シラン化合物、グリシドキシ系シラン化合物、ニトロ系シラン化合物、クロロ系シラン化合物、メタクリル系シラン化合物及びこれらの混合物からなる群で選択されるものであってもよい。
【0046】
前記スルフィド系シラン化合物は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、
3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド及びこれらの混合物からなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0047】
前記メルカプト系シラン化合物は、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。前記ビニル系シラン化合物は、エトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。前記アミノ系シラン化合物は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0048】
前記グリシドキシ系シラン化合物は、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。前記ニトロ系シラン化合物は、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。前記クロロ系シラン化合物は、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0049】
前記メタクリル系シラン化合物は、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つであってもよい。
【0050】
前記シランカップリング剤のうち、シリカに対するカップリング効果を考慮すると、スルフィド系シラン化合物が好ましく、そのうちでもビス-(3-(トリエトキシシリル)-プロピル)-ジスルフィド(bis-(3-(triethoxysilyl)-propyl)-disulfide:TESPD)又はビス-(3-(トリエトキシシリル)-プロピル)-テトラスルフィド(bis-(3-(triethoxysilyl)-propyl)-tetrasulfide:TESPT)がより好ましい。
【0051】
前記のようなシランカップリング剤は、原料ゴム100重量部を基準に、5ないし10重量部で含まれてもよい。シランカップリング剤の含量が5重量部未満であると、シリカに対する表面化学的特性変換効果が小さくてシリカの分散性が低下し、その結果として、タイヤの補強性及び耐久性が低下する可能性がある。また、シランカップリング剤の含量が10重量部を超過した場合、過量のシランカップリング剤の使用によりむしろタイヤの耐摩耗性及び燃費性能が低下する可能性がある。改善効果の顕著さを考慮すると、前記シランカップリング剤は原料ゴム100重量部を基準に5ないし7重量部で含まれることがより好ましい。
【0052】
そして、本発明によるタイヤトレッド用ゴム組成物は、補強性充填剤の分散性を増強させるための加工助剤をさらに含んでもよい。
【0053】
通常、シランカップリング剤は、シリカ表面のシラノール基と組成物の原料ゴムを連結する架橋の役割をして、シリカ単独で使用する時のシリカ-シリカ間の強い凝集力を解消させる役割を果たす。しかしながら、ゴム成分中のシリカ含量又はシリカの比表面積が増加すると、シランカップリング剤の添加にもかかわらず分散性が低下する場合が発生する可能性がある。
【0054】
これに関連して、本発明ではタイヤトレッド用ゴム組成物内に加工助剤として脂肪族化合物、具体的には、脂肪酸エステル系化合物、より具体的に、炭素数13ないし22の脂肪酸エステル系化合物に改質された金属塩を使用して、高比表面積のシリカの分散性を改善し、スコーチ安定性、耐久性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0055】
前記加工助剤は、金属イオンの親水性基と脂肪酸の疎水性基を同時に含む両親和性物質であって、前記金属イオンは、シリカ表面のシラノール基と反応して水素結合や双極子結合により互いに強く結合しているシリカ凝集(agglomerate)に対して分子間の表面エネルギーを減少させることにより混合工程中に脱凝集化(de-agglomerate)を誘導し、その結果として、タイヤトレッド用ゴム組成物の粘度を低めて流れ性(flow property)を増加させ、スコーチ安定性、耐久性及び耐摩耗性を向上させる。また、前記脂肪酸の炭化水素基はゴム鎖との優れた相溶性によりゴム鎖を弱化(diluting)させて工程性を向上させる可塑剤の役割を果たす。
【0056】
具体的に、前記加工助剤において金属塩は亜鉛石鹸(zinc soap)、ナトリウム石鹸(sodium soap)、カリウム石鹸(potassium soap)、又は亜鉛カリウム石鹸(zinc Potassium soap)などであってもよい。しかしながら、前記ナトリウム石鹸及びカリウム石鹸は強い極性を有するため、シリカとカップリング剤が反応する前にシリカと反応することにより、スコーチ安定性及び加硫時間を短縮させるおそれがある。これにより、前記金属塩としては亜鉛石鹸がより好ましい。
【0057】
また、前記亜鉛石鹸は、亜鉛石鹸総重量に対して亜鉛成分を1ないし5重量%含むことが好ましい。亜鉛石鹸内の亜鉛含量が1重量%未満であると、分散効果が少なく、亜鉛含量が5重量%を超過すると、亜鉛塩生成が増加してゴム組成物の性能が低下する恐れがある。
【0058】
また、前記脂肪酸エステルは、具体的に炭素数12ないし22の飽和又は不飽和脂肪酸のエステルであってもよく、より具体的には、脂肪族又は芳香族カルボキシル酸であってもよい。
【0059】
前記亜鉛石鹸に対する脂肪酸エステルの改質は、脂肪酸エステルを縮合反応させることにより行われ、このとき、加工助剤内の亜鉛石鹸と脂肪酸エステルの混合重量比は20:80ないし40:60であることが分散性向上の効果面で好ましい。
【0060】
前記加工助剤は、前記改質方法に従って製造されたものであってもよく、又は、Struktol HT 276などのように商業的にも入手可能である。
【0061】
また、前記のような加工助剤は、原料ゴム100重量部を基準に、0.5ないし5重量部で含まれることが好ましい。加工助剤の含量が0.5重量部未満であると、補強性充填剤の分散効果が不十分であり、加工助剤の含量が5重量部を超過すると、加工助剤使用量に対する効果の改善程度が低い。また、改善効果の顕著さを考慮すると、前記加工助剤は原料ゴム100重量部を基準に1ないし3重量部で含まれることがより好ましい。
【0062】
一方、本願のタイヤトレッド用ゴム組成物は、選択的に追加的な加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、軟化剤、遅延剤又は粘着剤などの各種添加剤をさらに含んでもよい。前記各種の添加剤は、本発明の属する分野において通常使用されるものであればいずれも使用可能であり、これらの含量は通常のタイヤトレッド用ゴム組成物において使用される配合比に従い、特に限定されない。
【0063】
前記加硫剤としては硫黄系加硫剤を使用することが好ましい。前記硫黄系加硫剤は、粉末硫黄(S)、不溶性硫黄(S)、沈降硫黄(S)、コロイド(colloid)硫黄などの無機加硫剤が使用されてもよい。前記硫黄系加硫剤としては、具体的に元素硫黄又は硫黄を作り出す加硫剤、例えば、アミンジスルフィド(amine disulfide)、高分子硫黄などを使用してもよい。
【0064】
前記加硫剤は、前記原料ゴム100重量部に対して1.0ないし1.5重量部で含まれることが適切な加硫効果として原料ゴムが熱にあまり敏感でなく化学的に安定するという点で好ましい。
【0065】
前記加硫促進剤は、加硫速度を促進するか、初期加硫段階において遅延作用を促進する促進剤(accelerator)を意味する。
【0066】
前記加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを使用してもよい。
【0067】
前記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを使用してもよい。
【0068】
前記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)、2-メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールの銅塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2-2,6-ジエチル4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つのチアゾル系化合物を使用してもよい。
【0069】
前記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つのチウラム系化合物を使用してもよい。
【0070】
前記チオウレア系加硫促進剤としては、例えば、チアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素 及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つのチオウレア系化合物を使用してもよい。
【0071】
前記グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレート及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つのグアニジン系化合物を使用してもよい。
【0072】
前記ジチオカルバミン酸系加硫促進剤としては、例えば、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ピペリジンの錯塩、ヘキサデシルイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、オクタデシルイソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸セレニウム、ジエチルジチオカルバミン酸テルニウム、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウム及びこれかの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つのジチオカルバミン酸系化合物を使用してもよい。
【0073】
前記アルデヒド-アミン系又はアルデヒド-アンモニア系加硫促進剤としては、例えば、アセトアルデヒド-アニリン反応物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド-アンモニア反応物及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルデヒド-アミン系又はアルデヒド-アンモニア系化合物を使用してもよい。
【0074】
前記イミダゾリン系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物を使用してもよく、前記キサンテート系加硫促進剤としては、例えば、ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサンテート系化合物を使用してもよい。
【0075】
前記加硫促進剤は、加硫速度促進による生産性の増進及びゴム物性の増進を極大化するために、前記原料ゴム100重量部に対して2.0ないし3.0重量部で含まれてもよい。
【0076】
一方、前記加硫促進助剤は、前記加硫促進剤と併用してその促進効果を完全にするために使用される配合剤であり、無機系加硫促進助剤、有機系加硫促進助剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを使用してもよい。
【0077】
前記無機系加硫促進助剤としては、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸亜鉛(zinc carbonate)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉛(lead oxide)、水酸化カリウム及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを使用してもよい。前記有機系加硫促進助剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸、リノレイン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ジブチルアンモニウム-オレート(dibutyl ammonium oleate)、これらの誘導体及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを使用してもよい。
【0078】
特に、前記加硫促進助剤として、前記酸化亜鉛と前記ステアリン酸を同時に使用してもよく、この場合、前記酸化亜鉛が前記ステアリン酸に溶けて前記加硫促進剤と有効な複合体(complex)を形成して、加硫反応中に遊離した硫黄を作り出すことにより、ゴムの架橋反応を容易にする。
【0079】
前記酸化亜鉛と前記ステアリン酸を同時に使用する場合、適切な加硫促進助剤としての役割のために、それぞれ前記原料ゴム100重量部に対して1ないし5重量部及び0.5ないし3重量部で使用してもよい。前記酸化亜鉛と前記ステアリン酸の含量が前記範囲未満である場合は、加硫速度が遅くて生産性が低下し、前記範囲を超過する場合は、スコーチ現象が発生して物性が低下する可能性がある。
【0080】
一方、前記老化防止剤は、酸素によりタイヤが自動酸化する連鎖反応を停止させるために使用される添加剤である。前記老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、キノリン系、イミダゾール系、カルバミン酸金属塩、ワックス及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを適切に選択して使用すればよい。
【0081】
前記アミン系老化防止剤としては、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチル)-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロへキシルp-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-オクチル-p-フェニレンジアミン及びこれかの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを使用してもよい。前記フェノール系老化防止剤としては、フェノール系である2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-イソブチリデン-ビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1ずれか1つを使用してもよい。前記キノリン系老化防止剤としては、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン及びその誘導体を使用してもよく、具体的に、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-アニリノ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-ドデシル-2,2,4-ジヒドロキノリン及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つを使用してもよい。前記ワックスとしては、好ましく、ワックスハイドロカーボンを使用してもよい。
【0082】
また、前記老化防止剤は、老化防止作用のほか、ゴムに対する溶解度が大きくなければならず、揮発性が小さく、ゴムに対して非活性でなければならず、加硫を阻害してはならないなどの条件を考慮すると、前記原料ゴム100重量部に対して1ないし5重量部で含まれてもよい。
【0083】
一方、前記遅延剤としては、フタル酸無水物、サリチル酸、ナトリウムアセテート、N-シクロヘキシルチオフタルイミド及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれかを使用してもよい。前記遅延剤は、前記原料ゴム100重量部に対して0.1ないし0.5重量部であってもよい。
【0084】
また、前記粘着剤は、ゴムとゴムの間の接着(tack)性能をさらに向上させ、充填剤のようなその他の添加剤の混合性、分散性及び加工性を改善させてゴム組成物の物性向上に寄与する。
【0085】
前記粘着剤としては、ロジン(rosin)系樹脂又はテルペン(terpene)系樹脂のような天然樹脂系粘着剤と石油樹脂、コールタール(coal tar)又はアルキルフェノール系樹脂などの合成樹脂系粘着剤を使用してもよい。
【0086】
前記ロジン係樹脂は、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水素添加ロジンエステル樹脂、これらの誘導体及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。前記テルペン係樹脂は、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0087】
前記石油樹脂は、脂肪族系樹脂、酸改質脂肪族系樹脂、脂環族系樹脂、水素添加脂環族系樹脂、芳香族系(C9)樹脂、水素添加芳香族系樹脂、C5-C9共重合樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0088】
前記コールタールは、 クマロンインデン樹脂(coumarone-indeneresin)であり得る。
【0089】
前記アルキルフェノール樹脂は、p-テルト-アルキルフェノールフォルムアルデヒド樹脂又はレゾシノールホルムアルデヒド樹脂であり、前記p-テルト-アルキルホルムアルデヒド樹脂は、p-テルト-ブチル-フェノールホルムアルデヒド樹脂、p-テルト-オクチル-フェノールホルムアルデヒド及びこれらの組み合わせからなる群で選択されるいずれか1つであってもよい。
【0090】
前記粘着剤は、前記原料ゴム100重量部に対して2ないし4重量部で含まれてもよい。前記粘着剤の含量が前記原料ゴム100重量部に対して2重量部未満であると、接着性能が不利になる可能性があり、4重量部を超過すると、ゴム物性が低下する可能性がある。
【0091】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、通常の2段階の連続製造工程により製造される。すなわち、110ないし190℃に至る最大温度、好ましくは、130ないし180℃の高温で熱機械的処理又は混練させる第1段階(非生産段階という)及び架橋結合システムが混合されるフィニッシング段階中に典型的に110℃未満、例えば、40ないし100℃の低温で機械的処理する第2段階(生産段階という)を使用して適当な混合器内で製造できるが、本発明はこれにのみ限定されるものではない。
【0092】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、トレッド部のみに限定されることなく、トレッド(トレッドキャップ及びトレッドベース)などのタイヤを構成する様々なゴム構成要素に含まれる。前記ゴム構成要素としては、サイドウォール、サイドウォール挿入物、エイペックス(apex)、チェイファー(chafer)、ワイヤーコート又はインナーライナーなどがある。
【0093】
一方、本発明の他の側面によるタイヤは、前述したタイヤトレッド用ゴム組成物を用いて製造することを特徴とする。
【0094】
前記タイヤは、乗用車用タイヤ、レース用タイヤ、飛行機タイヤ、農機用タイヤ、オフロード(off-the-road)タイヤ、トラックタイヤ又はバスタイヤなどである。また、前記タイヤは、ラジアル(radial)タイヤ又はバイアス(bias)タイヤであってもよく、ラジアルタイヤであることが好ましい。
【0095】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な相異なる形態で実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0096】
[製造例:タイヤトレッド用ゴム組成物の製造]
【0097】
下記の表1に示すような組成を用いて下記の実施例及び比較例によるタイヤトレッド用ゴム組成物を製造した。前記ゴム組成物の製造は、通常のゴム組成物の製造方法に従う。
【0098】
【0099】
1)S-SBR:スチレン含量が15重量%であり、ブタジエン内のビニル含量が25重量%であり、ムーニー粘度50、ガラス転移温度-63℃である回分式工程により製造された溶液重合スチレン-ブタジエンゴム
【0100】
2)シリカ:BET表面積が160ないし180m2/gであり、DBP吸油量が180ないし210cc/100gである沈降性シリカ
【0101】
3)カップリング剤:Evonic製スルフィド系シランであって、商品名はSi69
【0102】
4)天然オイル:リノレン酸に対するオレイン酸の割合が0.5ないし5である天然オイル
【0103】
5)炭化水素系樹脂:シクロペンタジエン、ジクロロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなどのヒドロカーボン基盤の炭化水素レジンであって、分子量が約2,000以下で、ガラス転移温度は80℃以上である炭化水素系樹脂
【0104】
6)水素化S-SBR-1:重量平均分子量が390,000g/molであり、ビニル含量が0.4重量%であり、ガラス転移温度が-32℃で合成された水素化スチレン-ブタジエンゴム
【0105】
7)水素化S-SBR-2:重量平均分子量が330,000g/molであり、ビニル含量が0.5重量%であり、ガラス転移温度が-37℃で合成された水素化スチレン-ブタジエンゴム
【0106】
[実験例:トレッド用ゴム組成物の物性測定]
【0107】
前記実施例及び比較例で製造したゴム試片に対してムーニー粘度、硬度、300%モジュラス、粘弾性などをASTM関連規定に基づいて測定し、耐摩耗性能はDIN関連規定に基づいて測定し、その結果を下記表2に示す。
【0108】
【0109】
・ムーニー粘度(ML1+4(125度))はASTM規格D1646により測定した。
【0110】
・硬度はDIN53505により測定した。
【0111】
・300%モジュラスはISO 37、ASTM D412規格により測定した。
【0112】
・粘弾性は、ARES測定器を使用して0.5%変形(strain)に10Hz周波数(Frequency)下で-60℃から60℃までG’、G”、tanδを測定した。
【0113】
・耐摩耗性能は、LAT-100摩耗(abrasion)測定器を使用して測定した。
【0114】
前記表2において、ムーニー粘度は、未加硫ゴムの粘度を示す値であり、数値が低いほど未加硫ゴムの加工性に優れている。硬度は操縦安全性を示すもので、その値が高いほど操縦安定性に優れている。-30℃ G’は、氷雪路面での制動特性を示すもので、数値が低いほど制動性能に優れ、0℃ G”は乾いた路面又は濡れた路面での制動特性を示すもので、数値が高いほど制動性能に優れていることを示す。また、60℃ tanδは回転抵抗特性を示すもので、数値が低いほど性能が優れていることを示す。
【0115】
実施例1から実施例6まで炭化水素系樹脂の使用量の一部を添加剤としての水素化スチレン-ブタジエンゴムに代替して適用した場合、転がり抵抗特性を示す60℃ tanδ性能が向上し、耐摩耗性能を測定するLAT-100摩耗試験機の評価結果でも性能向上が20ないし35%改善する効果を確認した。
【0116】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属する。