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  • 特許-シーラント層及び吸音材層を含むタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】シーラント層及び吸音材層を含むタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/00 20060101AFI20220111BHJP
   B60C 19/12 20060101ALI20220111BHJP
   D04H 1/559 20120101ALI20220111BHJP
   D04H 1/593 20120101ALI20220111BHJP
【FI】
B60C5/00 F
B60C19/12 A
D04H1/559
D04H1/593
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020136156
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2021031056
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2020-08-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101824
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520258806
【氏名又は名称】ハンクック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】イ ジワン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ソクヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソ ビョンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク インジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ナムソク
(72)【発明者】
【氏名】チュン ヘクァン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンホン
(72)【発明者】
【氏名】ベ ヒュンア
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-043643(JP,A)
【文献】特開2009-137568(JP,A)
【文献】特開平08-188951(JP,A)
【文献】特開2020-097289(JP,A)
【文献】特開2005-246162(JP,A)
【文献】特開2017-109053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0048180(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0305210(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0092103(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 19/12
D04H 1/559
D04H 1/593
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内側面に付着された吸音材層と、
前記タイヤの内側面と前記吸音材層との間に配置され、前記吸音材層を前記タイヤの内側面に付着させるシーラント(sealant)を備えるシーラント層とを含み、
前記吸音材層は不織布を含み、
前記不織布は、エアスルー不織布であり、
前記シーラントは、ムーニー粘度ML1+8、125℃基準、25水準の粘度を有する低粘度ポリイソブチレン30重量部、100℃基準30,000cpsの粘度を有する流体状態のポリイソブチレン70重量部、カーボンブラック30重量部、加工オイル5重量部、及び加硫剤2重量部を混合したものであり、
前記不織布を構成するフィラメントの太さは1デニール(denier)以上、10デニール未満であり、
前記不織布の面密度は、200g/m ないし1,000g/m であることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記不織布は、セルロース系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリビニルクロライド系、ポリビニルアルコール系及びポリオレフィン系からなる群から選択されるいずれか1つ又はこれらのうち2種以上の混合物からなる繊維で製造されたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記不織布は、ステープル繊維を利用して製造されたウェブを積層した後、熱融着又はバインダーによる結合で構成された多層不織布層をさらに含み、
前記多層不織布層が前記シーラント層と対面することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記不織布は、前記タイヤの断面幅を基準に、30ないし80%の幅で形成され、
前記不織布の厚さは、3mm以上、60mm未満であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤは、パンクの後、内部の空気が漏れ始めて10分が経った時点で初期に比べて85%以上の空気圧を維持することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記吸音材層は、前記タイヤが適用された自動車が10,000km走行した後、初期に比べて85%以上の厚さを維持することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント層及び吸音材層を含むタイヤに関し、より詳しくは、タイヤの内側面に塗布されたシーラント層の上に各種の有機高分子繊維素材からなる不織布を含む吸音材層を付着して、タイヤパンク発生の時、自己縫合ができるとともに、騒音低減性能を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車性能の発展は、高速走行に対する一般の運転者の欲望を刺激し、このために多くの自動車部品及び装置が共に発展してきた。高速走行の時、タイヤのパンクは運転者及び同乗者の安全を大きく脅かし、車両が操向力を失って周辺の他の人又は物事に危害を加える大きな事故に繋がる可能性がある。これを防止するために、タイヤの内側にパンクを縫合できるシーラント(Sealant)を入れる技術やパンクしたタイヤが崩れないように硬い補助物を加える技術(Run-flat)を使ったタイヤが開発されて商用化されている。
【0003】
一方、近年、車両技術自体の発展及び電気を動力とする車両又はハイブリッド車の発展により、タイヤの騒音が車両自体の騒音より目立つようになる状況となった。従って、タイヤの騒音を低減するために様々な試みがなされてきた。路面との接触による騒音を減らすためにトレッドパターンのピッチを調整したり、タイヤ内部に有機高分子素材の発泡体(Foam)を付着するなどの試みを行い、あるいはキャッププライの素材をポリエチレンナフタレート(PEN)コードとして利用してタイヤの騒音を減らそうとした試みもあった。
【0004】
ここで、トレッドパターンの形態とピッチを調整する方式は、既に広く知られている路面-タイヤ上の騒音を減らす方法であり、キャッププライの素材としてPENを適用する方式は投入費用に対して効果が大きくなくて、現在は死蔵された技術である。最近では、タイヤ損傷による空気圧の損失を防ぐために、タイヤの内部にシーラントと吸音材としての発泡物付着物を一緒に適用することがトレンドである。ここで、空気漏れ防止用シーラントは底粘度ブチルゴム(ムーニー粘度が低いブチルゴムコンパウンド)を使用し、その上に吸音材として発泡体を付着するケースが多い。
【0005】
しかしながら、シーラントと発泡体(多孔性発泡吸音材、例えば、発泡ウレタン/スポンジ)を使用する場合、トレッド部の外傷による空気漏れのとき、シーラントのみが損傷部位を埋めるべきであるが、空気内圧による空気漏れの速度によって、発泡体が損傷部位に一緒に浸透して、空気漏れを正確に防ぐことができず、シーラントとして空気圧保持効果を適切に発揮できなくなっる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤの内側面に塗布されたシーラント層の上に不織布を含む吸音材層を付着してパンクの発生時に自己縫合ができるとともに騒音低減の性能を有し、タイヤパンク損傷の時、損傷部位にシーラントのみが導入され、吸音材層の構成成分が損傷部位に導入されないようにすることにより、空気漏れ問題を効果的に防止できるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によるタイヤは、タイヤの内側面に付着された吸音材層と、前記タイヤの内側面と前記吸音材層との間に配置され、前記吸音材層を前記タイヤの内側面に付着させるシーラント(sealant)を備えるシーラント層とを含み、前記吸音材層は不織布を含む。
【0008】
ここで、前記不織布は、セルロース系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリビニルクロライド系、ポリビニルアルコール系及びポリオレフィン系からなる群から選択されるいずれか1つ又はこれらのうち2種以上の混合物からなる繊維で製造されたものであってもよい。
【0009】
また、前記不織布は、ステープル繊維を利用して製造されたウェブを積層した後、熱融着又はバインダーによる結合により構成された多層不織布層をさらに含み、前記多層不織布層が前記シーラント層と対面するものであってもよい。
【0010】
また、前記不織布を構成するフィラメントの太さは1デニール(denier)以上、10デニール未満のものであってもよい。
【0011】
また、前記不織布は、前記タイヤの断面幅を基準に、30ないし80%の幅で形成され、前記不織布の厚さは、3mm以上、60mm未満のものであってもよい。
【0012】
また、前記不織布の面密度は、200g/mないし1,000g/mであってもよい。
【0013】
また、前記タイヤは、パンクした後に内部の空気が漏れ始めてから10分が経った時点において初期比べて85%以上の空気圧を維持するものであってもよい。
【0014】
また、前記吸音材層は、前記タイヤが適用された車が10,000km走行した後、初期に比べて85%以上の厚さを維持するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤは、タイヤの内側面に塗布されたシーラント層の上に不織布を含む吸音材層を付着して、タイヤにパンクが発生した時に自己縫合できるとともに騒音低減の性能を有し、タイヤパンク損傷の時、損傷部位にシーラントのみが導入され、吸音材層の構成成分が損傷部位に導入されないようにすることにより、空気漏れの問題を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例によるタイヤの切断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について添付した図面を参考して詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な相異なる形態で実現されることができ、ここで説明する実施例及び図面に限定されない。
【0018】
本発明の一実施例によるタイヤは、タイヤの内側面に付着された吸音材層と、前記タイヤの内側面と前記吸音材層の間に配置され、前記吸音材層を前記タイヤの内側面に付着させるシーラントを備えるシーラント層とを含み、前記吸音材層は不織布を含む。
【0019】
まず、本発明によると、車両走行の時、タイヤと路面との接触時の振動により発生する様々な帯域の周波数によるタイヤ騒音を、前記不織布を含む吸音材層により低減させることができる。
【0020】
一方、最近、既存のランフラットタイヤがサイドウォール部の内側を高硬度のゴム組成物で補強することにより、乗り心地と回転抵抗の不利さの発生を改善するために、トレッド部の内側に低粘度のブチルゴム組成物をシーラントで塗布して、外部損傷による損傷部位をシーラントで塞いで空気漏れを防止して、一種のランフラット効果を得る技術が広まっている。
【0021】
このような技術とともに、発泡体形態の多孔性高分子フォーム(Foam)吸音材をトレッドに付着する技術を使用するタイヤメーカーが増えている。ここで、シーラント自体が粘着性に優れているため、別途の接着剤塗布工程を必要としないことも長所であり、タイヤの変形率が吸音材に全て伝達されることを吸収して走行中に吸音材の接着/粘着面の分離が発生することを相対的に防止できる効果的な適用方法である。しかしながら、発泡体の特性上、機械的物性に優れず、付着面がシーラントと密着しているため、外傷による損傷の時、空気流出による空気の流れによりシーラントが損傷部位を埋める時に発泡体吸音材が破れてシーラントと共に損傷部位を埋めるようになり、結局、損傷部位に浸透した発泡体により、空気流出をしっかり防ぐことができず、急速な空気流出が発生する短所がある。すなわち、空気流出防止用のシーラントと発泡体を一緒に適用すると、シーラントによる空気流出防止性能が完全に発揮できないという問題があった。
【0022】
しかしながら、本発明によると、タイヤパンク損傷の時、損傷部位にシーラントだけが導入され、不織布を含む吸音材層の構成成分が損傷部位に導入されないようにすることにより、空気漏れの問題を効果的に防止することができる。
【0023】
そして、本発明によるタイヤは、インナーライナー内側面(タイヤのキャビティ)に特殊高分子物質を含むシーラント(sealant)が塗布されていてタイヤトレッド部位に、釘や鋭い異物によるパンクが発生した場合、前記シーラントがパンク部位を直ちに縫合して空気漏れを防いで、運転中に路肩に降りてタイヤを交換する必要なく走行ができる自己縫合(self-sealing)シーラントタイヤである。
【0024】
図1は、本発明の一実施例による空気圧タイヤの切断斜視図である。図1に示すように、本発明によるタイヤ1は、内側面に塗布されたシーラント層2及び前記シーラント層2の上に付着された不織布を含む吸音材層3を含む。
【0025】
前記シーラント層2は、前記タイヤ1の内側面に塗布され、前記タイヤ1が内側にインナーライナーを含む場合、前記シーラント層2は前記インナーライナー上に位置してもよい。
【0026】
前記シーラント層2は、前記タイヤ1の内側面の一部面又は全体面に塗布されてもよく、好ましくは、前記タイヤ1の接地面に対応する内側面のみに塗布されてもよい。これは、前記タイヤ1が異物により主に貫通する部分が前記タイヤ1の接地面であるためである。従って、前記シーラント層2の幅は前記タイヤ1のトレッド部の幅に対して長さ100%ないし長さ120%であってもよい。
【0027】
また、前記シーラント層2の厚さは、1mmないし10mmであってもよい。前記シーラント層2の厚さが前記範囲内である場合、前記シーラントの流れ特性に影響を与えないとともに、釘又は突起により発生するパンクに対して確実に自己縫合することができる。
【0028】
前記シーラント層2はゴム成分を含むシーラント組成物を架橋反応させるか、架橋ゴム成分を含むシーラント組成物を架橋なしでも製造することができる。前記シーラント組成物としては、粘着性を有するものであれば限定されず、タイヤ1のパンクシーリングに用いられる通常のゴム組成物を使用してもよい。
【0029】
だたし、一例として、前記シーラント組成物は、ブチル系ゴムを主成分として含むシーラント組成物を使用してもよく、その他に天然ゴム系化合物、シリコン系化合物、ウレタン系化合物、スチレン系化合物又はエチレン系化合物を含むシーラント組成物を使用してもよい。
【0030】
前記ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)、又は臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)などを使用してもよい。
【0031】
また、前記シーラント組成物はゴム成分として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムなどをさらに含んでもよい。ただし、流動性などの観点から、前記ゴム成分100重量%に対して前記ブチル系ゴムの含量は90重量%以上であることが好ましい。
【0032】
前記シーラント組成物はポリイソブチレンをさらに含んでもよく、前記ポリイソブチレンは1,000g/molないし10,000g/molの重量平均分子量を有してもよい。また、前記ポリイソブチレンは、前記ゴム成分100重量部に対して100重量部ないし500重量部で含まれてもよい。前記ポリイソブチレンの含量が100重量部未満であると、物質の流れ性が低下する可能性があり、500重量部を超過すると、前記物質の形態安定性が低下する可能性がある。
【0033】
一方、前記シーラント組成物は液状ポリマーをさらに含んでもよい。前記液状ポリマーは、液状ポリブチレン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα-オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα-オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体などであってもよい。前記液状ポリマーは、前記ゴム成分100重量部に対して50重量部ないし1,000重量部で含まれてもよく、より詳しくは、150重量部ないし500重量部で含まれてもよい。前記液状ポリマーの含量が50重量部未満である場合、物質の流れ性が低下する可能性があり、1,000重量部を超過する場合は前記物質の形態安定性が低下する可能性がある。
【0034】
前記シーラント組成物は無機添加剤をさらに含んでもよい。前記無機添加剤は、前記シーラント組成物の補強性を調節するためのものであり、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ及びこれらの混合物からなる群から選択されるものを使用してもよい。ここで、前記無機添加剤は、前記ゴム成分100重量部に対して10重量部ないし100重量部で含まれてもよく、好ましくは、30重量部ないし60重量部で含まれてもよい。
【0035】
また、前記シーラント組成物は、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、接着剤及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含んでもよい。
【0036】
前記加硫剤は、前記シーラント組成物の架橋を助けるものであって、前記ゴム成分100重量部に対して1重量部ないし20重量部で含まれてもよく、好ましくは5重量部ないし10重量部で含まれてもよい。
【0037】
前記加硫剤としては、硫黄系加硫剤、有機過酸化物、ビスマレイミド類、ベンゾキノン誘導体、フェノール加硫剤、酸化マグネシウムなどの酸化金属酸化物が使用してもよい。前記硫黄系加硫剤は、粉末硫黄(S)、不溶性硫黄(S)、沈降硫黄(S)、コロイド(colloid)硫黄などの無機加硫剤を使用してもよい。
【0038】
前記加硫促進のための加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサンテート系及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを使用してもよい。このとき、前記加硫促進剤は、前記ゴム成分100重量部に対して0重量部ないし10重量部で含まれてもよく、好ましくは、3重量部ないし5重量部で含まれてもよい。
【0039】
前記加硫促進助剤は、前記加硫促進剤と併用してその促進効果を完全にするために使用される配合剤であって、酸化亜鉛とステアリン酸をともに使用してもよい。前記酸化亜鉛と前記ステアリン酸を共に使用する場合、適切な加硫促進調剤としての役割のためにそれぞれ前記ゴム成分100重量部に対して1重量部ないし5重量部及び0.5重量部ないし3重量部で使用してもよい。
【0040】
また、前記シーラント組成物の接着力を向上させるための接着剤としては、フェノール系レジン、ロジン(rosin)系樹脂又はテルペン(terpene)系樹脂などの天然樹脂系と石油樹脂、コールタール(coal tar)又はアルキルフェノール系樹脂などの合成樹脂系を使用してもよい。このとき、接着剤は、前記ゴム成分100重量部に対して0重量部ないし10重量部で含まれてもよく、好ましくは、3重量部ないし5重量部で含まれてもよい。
【0041】
ここで、前記シーラントとして最も好ましくは、低粘度(Low Mooney)ポリイソブチレン(Poly isobutylene)ゴムとして、ムーニー粘度ML1+8、125℃基準、15ないし40水準の粘度を有するものを使用し、液体(Liquid)状態のポリイソブチレン(Poly isobutylene)ゴムとして、100℃基準、100~50,000cpsの粘度を有するものが使用してもよい。このとき、前記シーラントの組成範囲としては、底粘度ポリイソブチレンゴムは1ないし50重量部、液体状態のポリイソブチレンゴムは50ないし99重量部、ASTM等級のN660もしくはN330カーボンブラックは5ないし50重量部、加工性向上のためのオイルは1ないし10重量部などが使用してもよく、加硫剤(硫黄)は0.01ないし3重量部などを適用したゴム組成物であってもよい。
【0042】
一方、前記吸音材層3は不織布を含むことを特徴とする。このような吸音材層は、断層構造の不織布であってもよく、多層構造で積層された不織布であってもよい。ただし、タイヤパンクの時、空気漏れによりシーラントが自己縫合のために損傷部位を埋めるとき、前記吸音材層3を成す不織布を構成する繊維が前記損傷部位に投入されないことを特徴とする。
【0043】
このような不織布としては、天然繊維やステープル繊維(Staple fiber)をカーディング(Carding)してウェブ(Web)を構成した後、エアスルー工法やケミカルバインディングなどにより表面層を密度高く構成した不織布であることが好ましい。カーディング工法で製造された不織布の場合、繊維の繊度設定が容易で、エアスルー工法(又は、超音波やマイクロ波)による熱融着水準を多様にコントロールできるバインディング用低融点(Low Melting)繊維の混入量を調節することができ、ケミカルバインディングの時、バインダーの使用量を調節して、不織布の特性を調節することができる。このときに使用するステープル繊維及び天然繊維の種類としては、綿、麻、レーヨン、ライオセルなどのセルロース系と、セルロースアセテート系と、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、その他にセミ芳香族ポリエステル(semi aromatic polyester)、脂肪族ポリエステル(aliphatic polyester)などのポリエステル系と、脂肪族ポリアミド(N66、N6、N46など)、芳香族ポリアミド(ポリパラ-フェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリ(3,4’ジフェニルエーテル/パラ-フェニレンテレフタレート)(DPE/PPTA)、ポリm-フェニレンイソフタルアミド(Poly m-phenylene isophtalamide:PMIA))などのポリアミド系と、アクリル系(PAN、Modacryl)と、ポリビニルクロライド系と、ポリビニルアルコール系と、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系からなる群から選択されるいずれか1つ又はこれらのうち2種以上の混合繊維をステープル(staple)化して構成してもよい。
【0044】
カーディング工程によるウェブの構成方式は、前記天然又は人工繊維類に対して、仮撚り(False Twist)や、押込法(Stuffer-box method)、空気噴射法(Air-jet texturing method)などの工程でクリンプを付与した後、単位長10mmないし200mm水準に切断して原綿(綿のかたまり)を製造する。このとき、エアスルー工法を使用するためには、溶融温度が相対的に低い低融点PET(LM-PET)のようなバインダーの役割をする繊維類を0.5ないし30重量%水準で混入して原綿を用意する。用意された原綿は、カーディング工程によりウェブを構成し、希望する厚さになるように積層する。積層されたウェブはエアスルー工法により、前述の混入した低融点の繊維が溶融し、不織布を構成する繊維類を固定するようになる。このとき、低融点バインダー素材の選定に応じて、100ないし250℃の間の温度で熱風を加えて、積層されたウェブが不織布により繊維間が固定された形態で得られる。低溶融温度方式で、液状の接着剤をウェブに塗布して化学的にそれぞれの繊維をバインディングするケミカルバインディング方法もあり得る。繊維-テクスチャリング加工-切断-カディング-積層-接合(バインディング)の順に製造することが最も好ましい。その他にも、単繊維で製造された繊維をエアレイド(Air Laid)及びウェットレイド(Wet Laid)などの方式で積層してもよい。
【0045】
前記のように、先に確保された繊維を別の工程によりウェブを形成する理由は、スパンボンド/メルトブロー方式の放射法基盤の不織布に比べて、バルキー(Bulky)性(体積感)を確保することが容易であるためである。また、エアスルー工法やケミカルバインディングを利用する理由は、ウェブ構成で確保されたバルキー性の維持が容易であるためである。スパンレース及びニードルパンチングの場合、物理的な交絡を構成して不織布を作るので、押されることによりバルキー性の確保が難しい問題点があり、最も重要な部分は繊維間のバインディングが物理的に行われているため、繊維が不織布の表面から離脱しやすいという問題点がある。特に、このように不織布の表面からフィラメントが容易に離脱する場合、前述のシーラントの自己縫合特性を阻害して、タイヤ損傷による空気漏れを効果的に制御することができない。タイヤ損傷の時、初期の空気漏れとともにシーラントで損傷部分が埋められるべきであるが、フィラメントが吸い込まれる可能性があるためである。このように不織布を構成するフィラメントが空気漏れとともにシーラントが損傷部位を迅速かつ正確に埋める作用を妨げる可能性があるため、一般的なメルトブロー方式の不織布は使用することが困難である。
【0046】
また、走行中に発生する熱と遠心力は、不織布からなる吸音材層が圧着してバルキー性を失いやすいため、不織布の製造方法及び不織布を構成する繊維の弾性回復率(Resiliance)が重要な因子になり得る。
【0047】
不織布を含む吸音材層3が体積感を持続的に維持して吸音性能を維持できるようにするためには、不織布を構成する短繊維であるフィラメント(Filament)は最低限の機械的物性を持てるように、1デニール(denier)以上、10デニール未満の太さを有することが好ましい。単に吸音性能のみを考慮すると、ウェブを構成する不織布の繊度が細くなるほど表面積が増えて、重量に対比して吸音性能が有利になるが、共鳴音に該当する低周波特性は遮音材層/吸音材層の厚さと密接な関係があるので、厚さを均一に維持できるように、屈曲弾性率を有する適正水準の繊維の太さが必要である。
【0048】
前記フィラメントの太さが1デニール未満である場合、重量に対する初期吸音効果には優れているが、バルキー性を失いやすいため、使用期間に従って、吸音材層の厚さの減少とともに吸音特性が低下する可能性がある。また、フィラメント1本に対する機械的物性の絶対値が下がらざるを得ないため、空気漏れの時にフィラメントが一緒に破れていくことにより、シーラントの自己縫合を妨げる可能性がある。フィラメントの太さが10デニール以上である場合、長期間バルキー性を維持することはできるが、重量に対して比表面積が低いため、空気粘性による空気摩擦特性により吸音材層の構成に不利な点があり、気孔のサイズが大きくなる可能性があり、不織布の重量が増加するという短所がある。
【0049】
このような太さを有するフィラメント間に強くバインディングされた、バルキー性を確保した不織布をシーラント層の上に配置することにより、タイヤ損傷の時、空気漏れによるシーラント自己縫合が効果的に行われ、吸音性能及び流通及び使用中のシーラント塗布面の汚染を防止することができる。
【0050】
一方、前記不織布の面密度は、200g/mないし1,000g/mであってもよいが、200g/m未満である場合、吸音性能が十分でなく、1,000g/mを超過する場合、タイヤの重量が増加して回転抵抗が増加する可能性があるため、好ましくない。
【0051】
そして、前記不織布を含む吸音材層3の厚さは、3mm以上、60mm未満であってもよいが、3mm未満である場合、タイヤ騒音を十分に吸収できず、60mm以上である場合、騒音吸収には有利であるが、タイヤ重量が大きく増加し、タイヤの内部に付着しにくいという問題がある。
【0052】
また、前記不織布としては、1つの種類でのみ使用せず、複合化して適用することもできる。例えば、厚さ3mm程度のスパンボンド不織布と、厚さ30mm程度のエアスルー不織布を積層して使用してもよい。また、前記シーラント層2と接触する面の不織布としては、PETエアスルー20mm不織布を適用し、その上にPPエアスルー20mm不織布を積層して使用してもよい。ここで、前記スパンボンド不織布と前記エアスルー不織布の繊維太さとバルキー性を異なるようにするか、前記PET不織布と前記PP不織布の繊度と緻密性(バルキー性)を異なるようにする場合、吸音できる周波数帯域が多様になるため、効果的な吸音性能を誘導することができる。このように製造された不織布を高分子発泡体と複合化すると、吸音周波数帯域がさらに広くなることができる。この場合、シーラント層に付着する面が不織布になることがある。このように、複数の不織布を複合化する方法は、超音波ウェルディング、エアスルー工法、接着剤によるケミカルバインディング、ステッチングなどの方式を用いてもよく、又はシアノアクリル(Cyano acryl)系を使用するか、合成ゴム系の接着剤、あるいはアクリル系レジンなどを使用してもよく、本特許において接着剤の種類を限定することではない。
【0053】
本発明の不織布を含む吸音材層3は、タイヤの断面幅、すなわち、NSW(Norminal Section Width)の30ないし80%水準の幅で付着されてもよく、前記吸音材層3は、前記タイヤ1の円周方向に延長されたシート形状であってもよい。すなわち、前記吸音材層3は、シート形状で前記タイヤ1の円周方向に沿って延長され、その両端が会って前記タイヤ1のようにリング形状となり得る。また、前記吸音材層3の付着時に形成される始点と終点が5mm~80mm水準の間隔を置いて離隔して付着されてもよい。
【0054】
一次的に粘度が高く、粘着性(Tack)が高いシーラントがタイヤの内側面に塗布された後に不織布を付着するため、別途の粘着/接着剤を使用しなくても付着が可能であり、必要に応じて粘着/接着剤をさらに使用して付着してもよい。
【0055】
前述したように、前記不織布を含む吸音材層は、3mm以上、60mm未満の厚みを有し、また、6ヶ月又は10,000kmの走行後には、初期吸音材層の厚さに比べて85%以上の厚みを維持できることが好ましい。
【0056】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多様な相異なる形態で実現されることができ、ここで説明する実施例に限らない。
【0057】
[製造例:タイヤの製造]
【0058】
ムーニー粘度ML1+8、125℃基準、25水準の粘度を有する低粘度ポリイソブチレン30重量部、100℃基準30,000cpsの粘度を有する流体状態のポリイソブチレン70重量部、ASTM等級のN660カーボンブラック30重量部、一般的に使用される加工オイル5重量部、及び加硫剤(硫黄)2重量部を混合してシーラント組成物を製造して、これをシーラント組成物として使用し、タイヤとしては225/45R17規格のタイヤを使用した。
【0059】
下記の表1において、比較例1は現用のタイヤであり、比較例2はシーラント層のみが塗布されたタイヤであり、比較例3はシーラント層とポリウレタン発泡体(PU Foam)が吸音材層として適用されたタイヤであり、実施例1ないし3はシーラント層の塗布後、それぞれに該当する不織布からなる吸音材層をタイヤ内部のトラッド内側に付着したタイヤである。
【0060】
【表1】
【0061】
[実験例:タイヤの性能測定]
【0062】
前記実施例及び比較例において製造されたタイヤが装着された自動車の荒い路面走行条件下において、釘が貫通した後の空気漏れ速度、吸音材厚さ維持率及びタイヤ騒音を測定し、これに対する結果を下記の表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
荒い路面走行条件において、60kphで走行するとき、比較例1は68dBのpeak dBを示しているが、実施例1は64dB、実施例2と3は、それぞれ63dBを示している。
【0065】
吸音材層として使用された不織布の厚みが厚くなるほど、吸音効果が大きくなる傾向を確認することができる。類似する面密度と厚みを有するとき、不織布を構成する繊維の正量繊度が低いほど、吸音効果が有利になるが、一定期間使用した後、厚みが減少する割合が相対的に大きい。実施例1ないし3が全て空気漏れの速度において比較例3と比較して有利な様子を見せているが、これはシーラントが自己縫合作用をするにおいて、不織布からなる吸音材が大きく関与していないためであると判断される。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、請求の範囲において定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0067】
1:タイヤ
2:シーラント層
3:吸音材層
図1