(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】冷媒回路の弁装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20220111BHJP
F25B 41/24 20210101ALI20220111BHJP
【FI】
B60H1/22 651B
F25B41/24
(21)【出願番号】P 2020501513
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2018066627
(87)【国際公開番号】W WO2019011617
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】102017211891.1
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロスト、ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン、トビアス
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-166770(JP,A)
【文献】特開平05-133633(JP,A)
【文献】特開平10-197107(JP,A)
【文献】実開昭53-133222(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第1944535(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F25B 41/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのボール弁(20、30)を備えた冷媒回路(1)のための弁装置(10)であり、各ボール弁が作動要素としてのボール(24、34)と、関連するボール(24、34)を調節するためのアクチュエータ(28、38)とを備えた前記弁装置において、
前記少なくとも2つのボール弁(20、30)は、それぞれ、双方向の流路を有する3方弁であって3つの接続部(A1、B1、C1
;A2、B2、C2)を備え、
第1のボール弁(20)の第1のボール(24)は
T字形の穴(26)を有し、この穴は、3つの接続部(A1、B1、C1)のうちの2つの接続部(A1、B1;A1、C1)を連通させ、かつ3つの接続部(A1、B1、C1)のうちの1つの接続部(B1、C1)を遮断させるか、あるいは、3つの接続部(A1、B1、C1)を同時に連通させるかのいずれかを選択するものであり、
第2のボール弁(30)の第2のボール(34)はL字形の穴(36)を有し、この穴(36)は、3つの接続部(A2、B2、C2)のうちの2つの接続部(A2、B2;A2、C2)を連通させ、かつ3つの接続部(A2、B2、C2)のうちの1つの接続部(B2、C2)を遮断させるか、あるいは3つの接続部(A2、B2、C2)を遮断させるかのいずれかを選択するもので
あり、
第1の接続片(12.1)を備えた第1の接続ブロック(12)が、第1のボール弁(20)の第2の接続部(B1)を第2のボール弁(30)の第2の接続部(B2)に接続するものであり、
第2の接続片(14.1)を備えた第2の接続ブロック(14)が、第1のボール弁(20)の第3の接続部(C1)を第2のボール弁(30)の第3の接続部(C2)に接続するものであることを特徴とする弁装置(10)。
【請求項2】
ボール弁(20、30)は、それぞれ、流路を備えたバルブブロック(22、32)を有し、前記バルブブロックにおいては、接続部(A1、B1、C1、A2、B2、C2)が形成されるとともに、ボール(24、34)が回転可能に装着されていることを特徴とする請求項1記載の弁装置(10)。
【請求項3】
第1の接続ブロック(12)と、第2の接続ブロック(14)と、第1のバルブブロック(22)と、第2バルブブロック(32)とが互いに接続されていることを特徴とする請求項2記載の弁装置(10)。
【請求項4】
第1のボール弁(20)の第1の接続部(A1)が弁装置(10)の第1の流体接続部(P1)に接続され、第2のボール弁(30)の第1の接続部(A2)が弁装置(10)の第2の流体接続部(P2)に接続され、第1の接続片(12.1)が弁装置(10)の第3の流体接続部(P3)を備え、第2の接続片(14.1)が弁装置(10)の第4の流体接続部(P4)を備えていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の弁装置(10)。
【請求項5】
第1のボール(24)は、第1のボール弁(20)が第1の切換位置にあるときに、第1の接続部(A1)を第2の接続部(B1)に接続するとともに第3の接続部(C1)を遮断し、第1のボール弁(20)が第2の切換位置にあるときに、第1の接続部(A1)を第2の接続部(B1)および第3の接続部(C1)に接続し、第1のボール弁(20)が第3の切換位置にあるときに、第1の接続部(A1)を第3の接続部(C1)に接続するとともに第2の接続部(B1)を遮断するものであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の弁装置(10)。
【請求項6】
第1のボール弁(20)は、2つの切換位置間の切り換え中に流れに対して所定の最小流れ断面積を付与する補償手段を有することを特徴とする請求項5記載の弁装置(10)。
【請求項7】
第2のボール(34)が2つの半穴(36.1、36.2)を有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の弁装置(10)。
【請求項8】
2つの半孔(36.1、36.2)の軸が互いに垂直であり、これらの軸がボールの中心で交わっていることを特徴とする請求項7記載の弁装置(10)。
【請求項9】
第2のボール(34)は、第2のボール弁(30)が第1の切換位置にあるときに、第1の接続部(A2)を第2の接続部(B2)に接続するとともに第3の接続部(C2)を遮断し、第2のボール弁(30)が第2の切換位置にあるときに、第1の接続部(A2)と第2の接続部(B2)と第3の接続部(C2)とを遮断し、第2のボール弁(30)が第3の切換位置にあるときに、第1の接続部(A2)を第3の接続部(C2)に接続するとともに第2の接続部(B2)を遮断するものであることを特徴とする請求項7または8記載の弁装置(10)。
【請求項10】
車両用のヒートポンプ機能を備えた冷媒回路(1)であって、圧縮機(3)と、凝縮器(5)と、間接凝縮器(7)と、冷却器(8)と、蒸発器(9)と、2つの膨張要素(EO1、EO2)と、少なくとも2つのボール弁(20、30)を備えた弁装置(10)とを有し、これにより冷媒回路(1)の異なる動作モードを設定できるものにおいて、弁装置(10)は、請求項1から9までの少なくともいずれか1項記載の弁装置(10)によって構成されるものであることを特徴とする冷媒回路(1)。
【請求項11】
弁装置(10)の第1の流体接続部(P1)が圧縮機(3)の高圧側に接続され、弁装置(10)の第2の流体接続部(P2)が圧縮機(3)の吸込側に接続され、弁装置(10)の第3の流体接続部(P1)が凝縮器(5)に接続され、弁装置(10)の第4の流体接続部(P4)が間接凝縮器(7)に接続されていることを特徴とする請求項10記載の冷媒回路(1)。
【請求項12】
2つのボール弁(20、30)の第1の組み合わせ切換位置を介した冷却を設定可能であるか、または2つのボール弁(20、30)の第2の組み合わせ切換位置を介した加熱モードを設定調整可能であるか、または2つのボール弁(20、30)の第3の組み合わせ切換位置を介して、凝縮器(5)と間接凝縮器(7)とへの同時の流れの形成を設定可能であるか、あるいは2つのボール弁(20、30)のさらなる組み合わせ切換位置を介して、さまざまな方法による冷媒回路(1)への冷媒充填またはフラッシングを設定可能であることを特徴とする請求項11記載の冷媒回路(1)。
【請求項13】
ボール弁(20、30)は、冷媒回路(1)の動作モードを切り換えるために所定の順序で切り換え可能であることを特徴とする請求項12記載の冷媒回路(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の冷媒体回路用の弁装置と、そのような弁装置を備えた車両用のための、ヒートポンプ機能を備えた冷媒回路とに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の冷媒回路のための弁装置が、多くのバリエーションによって知られている。そのような弁装置は、例えば少なくとも2つのボール弁を備えることができ、その各々は、作動要素としてのボールと、関連するボールを調節するためのアクチュエータとを有する。この弁装置は、たとえば冷媒回路が、圧縮機、凝縮器、間接凝縮器、冷却器、蒸発器および2つの膨張装置を含むところの、車両用のヒートポンプシステムにおいて使用することができる。冷媒回路の異なる動作モードは、少なくとも2つのボール弁を備えた弁装置を介して設定できる。
【0003】
ヒートポンプシステムは、電動車両で使用することができる。これらでは、冷媒回路を使用して車両内部を加熱できるという利点がある。したがって、電気補助ヒーターを使用した車両暖房と比較して、より低電力の消費で暖房を実現できる。これによって、電気的な範囲が広がる。冷媒回路のさまざまな機能を切り替えるために、遮断弁が使用される。これらは、冷房機能用の凝縮器を通る流れと、加熱機能用の間接凝縮器を通る流れとを選択的に切り換えるために使用される。これら2つの動作モードのそれぞれにおいて十分な量の冷媒を積極的に活用するためである。冷媒回路の一部を利用可能にするために、冷媒吸引機能もが使用される。冷媒は、アクティブでない熱交換器から抽出され、冷媒回路のアクティブ領域に供給される。冷房モードでは、車両の前面に位置する凝縮器に冷媒が流される。同時に、圧縮機によって間接凝縮器から冷媒が引き出される。加熱モードでは、間接凝縮器に冷媒が流れる。同時に、圧縮機によって凝縮器から冷媒が吸い出される。これを実現するために、4つの遮断弁が使用される。これらは円状に配置され、それぞれが、バルブ間のライン出口を有する。4つの弁は、同じ構造である。これらは、ボール弁の原理に従って動作する。4つの弁のそれぞれにボールが設けられており、ボールは、その軸に沿った穴を有する。ハウジングには、反対側の位置に2つの開口を有する。ボールはサーボモータで回転させることができる。ボールが回転して、その穴がハウジングの開口と揃うと、弁を通って媒体が流れることができる。穴がハウジングの開口と重ならないようにボールを回転させると、バルブが閉じ、よって媒体が弁を通過できなくなる。4つの弁を駆動するために4つの電動サーボモータが必要となり、この点は欠点と見なすことができる。4つの弁とそのサーボモータとを使用すると高価である。さらに、4つの弁の重量が、車両の燃料消費に悪影響を及ぼす。さらに、4つの弁に必要なスペースは、比較的大きい。
【0004】
ドイツ特許出願公開第102014105097号明細書(特許文献1)は、複数の弁、特に膨張弁および/または遮断弁のための、一般的なバルブブロック構造を開示している。このバルブブロック構造は、流体用の複数の流路を備えたバルブブロックと、関連する複数の駆動ユニットを備えた複数の調節ユニットとを備える。バルブブロックは、流路を備えた流路要素と制限要素との2つの部分で形成される。制限要素は、流路のカバーおよび境界として機能するとともに、さらに、流路要素に設けられ得る空洞または凹部としても機能する。調節ユニットは弁体を備えた弁として理解され、弁体は調節要素を介して移動される。ボール弁は、調節ユニットとして使用されることが好ましい。調節ユニットがボール弁として設計されている場合、それぞれの弁体はボールとして設計され、調節要素はボール上のピンのような接続体として設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】ドイツ特許出願公開第102014105097号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冷媒回路用の弁装置と、このような弁装置を有する車両用のヒートポンプ機能を備えた冷媒回路とを提供することにあり、それによって、冷媒サイクルにおける様々な機能、特にヒートポンプの機能を、大幅な低コストおよび大幅な軽量化と、より小さな設置スペースで実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する冷媒回路用の弁装置と、請求項13の特徴を有する車両用のヒートポンプ機能を有する冷媒回路とを提供することにより達成される。本発明の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項に明記されている。
【0008】
さまざまな機能、特にヒートポンプの機能を、非常な低コストと低重量とで、またより小さな設置スペースで実装できる冷媒回路の弁装置を提供するために、それぞれが作動要素となるボールと、関連するボールを調節するためのアクチュエータとを備えた少なくとも2つのボール弁が、それぞれ、3つの接続部を備えた双方向に流動可能な3方弁として設計される。ここで、第1のボール弁の第1のボールにはT字形の穴があり、この穴は、3つの接続部のうちの2つの接続部を通る選択的な流れ、および3つの接続部のうちの1つへの接続の遮断と、3つの接続部への同時の流れと、のいずれかを可能にする。第2のボール弁の第2のボールにはL字形の穴があり、この穴は、3つの接続部のうち2つの接続部を通る選択的な流れ、および3つの接続部のうちの1つへの接続の遮断と、3つの接続部への接続の遮断と、のいずれかを可能にする。
【0009】
加えて、ヒートポンプ機能を備えた車両用の冷媒回路が提案される。これは、圧縮機と、凝縮器と、間接凝縮器と、冷却器と、蒸発器と、2つの膨張要素と、少なくとも2つのボール弁を備えた本発明による弁装置とを含む。この弁装置を介して、冷媒回路についての異なる動作モードを設定することができる。本発明に係る弁装置の実施形態においては、ヒートポンプの異なる機能を2つのボール弁のみで構成することが有利に可能である。このため、2つのアクチュエータのみが必要であり、これは、好ましくは、ヒートポンプの異なる機能を切り換えるための電動サーボモータとして設計される。さらに、本発明による弁装置の実施形態は、冷媒回路の複雑さを有利に低減する。その結果、ヒートポンプ機能を実施するための冷媒回路がより堅牢なものとなる。
【0010】
冷却器は、冷却材と冷媒との熱交換器であると理解される。冷却器は、ヒートポンプモードにおいては熱源として機能し、冷房モードにおいてはバッテリのような冷却ユニットとして機能する。
【0011】
本発明の弁装置の有利な実施形態では、ボール弁はそれぞれ、流路を備えたバルブブロックを有することができ、このバルブブロックに、接続部が形成されるとともに、ボールが回転可能に支持され得る。さらに、第1の接続片を備えた第1の接続ブロックは、第1のボール弁の第2の接続部を第2のボール弁の第2の接続部に接続でき、第2の接続片を備えた第2の接続ブロックは、第1のボール弁の第3の接続部を第2のボール弁の第3の接続部に接続できる。このようなボール弁の構造により、ヒートポンプのさまざまな機能を、特に省スペースで実現することができる。
【0012】
本発明による弁装置の別の有利な実施形態では、第1の接続ブロックと、第2の接続ブロックと、第1の接続片と、第2の接続片とを互いに接続することができ、好ましくは互いにねじ接合することができる。あるいは、第1の接続ブロックと、第2の接続ブロックと、第1の接続片と、第2の接続片とを、完全にまたは部分的に共通の流体ブロックに組み合わせて、組立工程を有利に簡素化することができる。
【0013】
本発明による弁装置のさらに有利な実施形態では、第1のボール弁の第1の接続部を弁装置の第1の流体接続部に接続することができ、第2のボール弁の第1の接続部を弁装置の第2の流体接続部に接続することができる。第1の接続部は、弁装置の第3の流体接続部を有することができ、第2の接続部は、弁装置の第4の流体接続部を有することができる。これにより、弁接続用の4つの流体接続が行われ、接続ラインを介して冷媒回路の他のコンポーネントに接続することができる。
【0014】
本発明による弁装置のさらに有利な実施形態では、第1のボールは2つの半穴と一つの貫通穴とを有することができる。2つの半穴の軸と一つの貫通穴の軸とは好ましくは互いに垂直で、ボールの中心で交わることができる。第1のボールのこのような設計により、回転軸の周りの調節動作と必要なシール機能とを特に簡単に実現することができる。第1のボールの第1の回転位置に対応する第1のボール弁の第1の切換位置では、第1のボールは、第1接続部を第2接続部に接続するとともに、第3接続部を遮断する。第1のボールの第2の回転位置に対応する第1のボール弁の第2の切換位置では、第1のボールは、第1の接続部を第2の接続部と第3の接続部とに接続する。第1のボールの第3の回転位置に対応する第1のボール弁の第3の切換位置では、第1のボールは、第1の接続部を第3の接続部に接続するとともに、第2の接続部を遮断する。
【0015】
本発明による冷媒回路の有利な実施形態では、弁装置の第1の流体接続部は圧縮機の高圧側に接続でき、弁装置の第2の流体接続部は圧縮機の吸込側に接続でき、弁装置の第3の流体接続部は凝縮器に接続でき、弁装置の第4の流体接続部は間接凝縮器に接続できる。2つのボール弁を用いて弁装置の内部を相互接続することにより、追加のヒートポンプ機能を使用して、冷媒回路において必要なすべての冷媒流れ方向を設定することができる。たとえば、2つのボール弁の最初の組み合わせ切換位置による冷却モード、または2番目の組み合わせ切換位置による冷媒回路の加熱操作モード、または2つのボール弁の3番目の組み合わせ切換位置による凝縮器と間接凝縮器とへの同時流れ、または、2つのボールバルブをさらに組み合わせた切換位置を介して、冷媒回路のさまざまな方法での冷媒充填またはフラッシングを設定できる。加えて、冷媒回路の動作モードを切り換えるために、ボール弁を所定の順序で切り換えることができる。T字形の穴を備えた第1のボール弁は、凝縮器または間接凝縮器に連通することができるし、またはその両方に同時に連通することもできる。L字形の穴を備えた第2のボール弁は、凝縮器または間接凝縮器から冷媒を抽出するか、または完全に閉じられた状態となる。2つのボール弁の切換位置は互いに一致しているため、たとえば、2つのボール弁を組み合わせて、間接凝縮器のみの流れが第1のボール弁を流れ、同時に間接凝縮器が第2のボール弁を介して吸引動作を受けるといった切換位置をセットすることは不可能である。このような切換の場合には、短絡が発生する。さらに、凝縮器のみが第1のボール弁からの流れを受け、同時に凝縮器が第2のボール弁を介して吸引動作を受けるように、2つのボール弁による組み合わせ切換位置をセットすることが、防止される。これも短絡の原因となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ヒートポンプ機能を備えた車両用のための、本発明による冷媒回路の例示的な実施形態の概略回路図である。
【
図2】
図1の冷媒回路用の本発明による弁装置の例示的な実施形態の概略回路図である。
【
図3】
図2の本発明による弁装置を上から見た概略立体図である。
【
図4】
図2および
図3の本発明による弁装置を下から見た概略立体図である。
【
図5】
図2から
図4までの本発明による弁装置の第1のボール弁のための第1のボールの概略立体図である。
【
図6】
図2から
図4までの本発明による弁装置の第2のボール弁のための第2のボールの概略立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から分かるように、図示の実施形態のヒートポンプ機能を備えた車両用の冷媒回路1は、圧縮機3と、凝縮器5と、間接凝縮器7と、冷却器8と、蒸発器9と、2つの膨張要素EO1、EO2と、本発明による弁装置10とを有する。弁装置10は、少なくとも2つのボール弁20、30を備え、これらのボール弁によって、冷媒回路1についての異なる動作モードを設定することができる。冷媒回路1における個々の構成要素は、図示のように相互接続されている。
【0018】
図1~
図6に示されるように、図示の例示的な実施形態の冷媒回路1の弁装置10は2つのボール弁20、30を有し、各ボール弁は、作動要素としてのボール24、34と、関連するボール24、34を調節するアクチュエータ28、38とを有する。本発明によれば、両方のボール弁20、30は、それぞれ3つの接続部A1、B1、C1と、A2、B2、C2とを備えた、通過流体を双方向へ流動させることが可能な3方弁として設計されている。ここで、第1のボール弁20の第1のボール24は、3つの接続部A1、B1、C1のうちの2つの接続部A1、B1;A1、C1を連通させるとともに1つの接続部B1、C1を閉じるすなわち遮断させるT字形の穴26を有する。あるいは、穴26は、接続部A1、B1、C1を同時に連通させる。第2のボール弁30の第2のボール34は、3つの接続部A2、B2、C2のうちの2つの接続部A2、B2;A2、C2を連通させるとともに1つの接続部B2、C2を遮断させるL字形の穴36を有する。あるいは、穴36は、3つの接続部A2、B2、C2を遮断させる。
【0019】
図3および
図4に示すように、ボール弁20、30は、それぞれ、流路を備えたバルブブロック22、32を有する。これらのバルブブロック22、32には、接続部A1、B1、C1、A2、B2、C2が形成されるとともに、ボール24、34が回転可能に装着されている。第1のT字形の接続片12.1を備えた第1の接続ブロック12は、第1のボール弁20の第2の接続部B1を第2のボール弁30の第2の接続部B2に接続する。さらに、第2の接続ブロック14は、第2のT字形の接続片14.1によって、第1のボール弁20第3の接続部C1を第2のボール弁30の第3の接続部C2に接続する。図示されている例示的な実施形態では、第1の接続ブロック12と、第2の接続ブロック14と、第1のバルブブロック22と、第2のバルブブロック32とは、ねじ接続部(詳細には図示せず)を介して互いにねじ止めされている。これに代えて、図示されていない例示的な実施形態では、第1の接続ブロック12と、第2の接続ブロック14と、第1のバルブブロック22と、第2のバルブブロック32とは、完全にまたは部分的に共通の流体ブロックに組み合わせることができる。
図3および
図4に示されるように、アクチュエータ28、38は、シャフト(図示せず)を介してボール24、34に連結されるサーボモータとして設計される。それぞれのアクチュエータ28、38は、関連するボール24、34を、その回転軸の周りで、シャフトを介して様々な切り替え位置に回転させることができる。
【0020】
特に
図2によってさらに示されるように、図示の弁装置10の例示的な実施形態では、第1のボール弁20の第1の接続部A1は、弁装置10の第1の流体接続部P1に接続されている。第2のボール弁30の第1の接続部A2は、バルブ装置10の第2の流体接続部P2に接続されている。さらに、第1のT字形の接続片12.1は、バルブ装置10の第3の流体接続部P3を有し、第2のT字形の接続片14.1は、バルブ装置10の第4の流体接続部P4を有する。
【0021】
図5に示すように、第1のボール24は、2つの半穴26.1、26.2および貫通穴26.3を有する。2つの半穴26.1、26.2および貫通穴26.3の軸は、互いに垂直であり、ボールの中心で交わっている。
【0022】
さらに
図6に示すように、第2のボール34は、2つの半穴36.1、36.2を有する。2つの半穴36.1、36.2の軸は互いに垂直であり、ボールの中心で交わっている。
【0023】
さらに、
図2から理解されるように、第1のボール弁20の第1の切換位置では、第1のボール24は第1のポートA1を第2のポートB1に接続し、第3のポートC1を遮断する。第1のボール弁20における図示の状態の第2の切換位置では、第1のボール24は、第1の接続部A1を第2の接続部B1および第3の接続部C1に接続する。第1のボール弁20の第3の切換位置では、第1のボール24は第1の接続部A1を第3の接続部C1に接続し、第2の接続部B1を遮断する。したがって、第1の接続部A1は入口開口部として機能し、第2の接続部B1および第3の接続部C1はそれぞれ出口開口部として機能する。ここで、第1の接続部A1は、切換位置に関係なく、第1の半穴26.1の開口部に接続される。第2の接続部B1は、第1の切換位置では第2の半穴26.2の開口部に接続され、第2の切換位置では貫通穴26.3の開口部に接続される。第3の接続部C1は、第3の切換位置では第2の半孔26.2の開口部に接続され、第2の切換位置では貫通孔26.3の開口部に接続される。
【0024】
さらに、
図2から理解されるように、第2のボール弁30の第1の切換位置では、第2のボール34が第1のポートA2を第2のポートB2に接続し、第3のポートC2を遮断する。第2のボール弁30における図示の状態の第2の切換位置では、第2のボール34は、第1の接続部A2と第2の接続部B2と第3の接続部C2を遮断する。第2のボール弁30の第3の切換位置では、第2のボール34は第1の接続部A2を第3の接続部C2に接続し、第2の接続部B2を遮断する。
【0025】
図1からも分かるように、弁装置10の第1の流体接続部P1は、圧縮機3の高圧側に接続されている。弁装置10の第2の流体接続部P2は、圧縮機3の吸入側に接続され、逆止弁RSVが、第2の流体接続部P2と圧縮機3との間に配置されている。弁装置10の第3の流体接続部P3は、凝縮器5の第1の接続部に接続されている。弁装置10の第4の流体接続部P4は、間接凝縮器7の第1の接続部に接続されている。
図1において、凝縮器5の第2の接続部は、逆止弁RSVを介して、膨張弁として設計された膨張要素EOの第1の接続部に接続されている。間接凝縮器5の第2の接続部も、逆止弁RSVを介して膨張要素EOの第1の接続部に接続されている。膨張要素EOの第2の接続部は、蒸発器の第1の接続部に接続されている。蒸発器9の第2の接続部は、圧縮機3の吸入側に接続されている。
【0026】
冷媒回路1の冷却動作モードは、2つのボール弁20、30における第1の組み合わせ切換位置を介して設定され、第1のボール弁20はその第1の切換位置にあり、第2のボール弁30はその第3の切換位置にある。したがって、冷却動作モードでは、凝縮器5の第1の接続部は、圧縮機3の高圧側に接続され、両者間の流れが作られる。同時に、間接凝縮器7の第1の接続部は、圧縮機3の吸入側に接続され、この圧縮機による吸い出しが行われる。これに代わるところの、冷媒回路1の加熱動作モードは、2つのボール弁20、30の第2の組み合わせ切換位置を介して設定され、第1のボール弁20はその第3の切換位置にあり、第2のボール弁30はその第1の切換位置にある。したがって、加熱モードでは、間接凝縮器7の第1の接続部が圧縮機の高圧側に接続されて、両者間の流れが作られる。同時に、凝縮器5の第1の接続部は、圧縮機3の吸入側に接続され、圧縮機3によって吸引される。2つのボール弁20、30の第3の組み合わせ切換位置では、第1のボール弁20が第2切換位置にあるとともに第2ボール弁30も第2切換位置にあり、凝縮器5および間接凝縮器7において同時に流れが作られる。2つのボール弁20、30のさらなる組み合わせ切換位置を介して、冷媒回路1についての異なる手法であるところの、冷媒充填またはフラッシングを設定することができる。2つのボール弁20、30についての望ましくない組み合わせ切換状態を回避するために、ボール弁20、30は、冷媒回路1の動作モードを切り替えるために所定の順序で切り換えられる。2つのボール弁20、30の組み合わせ切換位置は、たとえば、間接凝縮器7のみが第1のボール弁20を通った流れを受け、かつ同時に間接凝縮器7が第2のボール弁30を介して吸引されたり、または凝縮器5のみが第1のボール弁20を通った流れを受け、かつ同時に凝縮器5が第2のボール弁30を介して吸引されたりするような、これら2つのボール弁20、30の組み合わせ切換位置というものが不可能であるように、互いに設定されていることが好ましい。有利な手法においては、冷媒回路1の実施形態では、圧縮機3をオフにする必要なく動作モードを変更することを可能にする。この目的のために、第1のボール弁20は、図示されていない補償手段を有しており、2つの切換位置の間での切り換え中に、流体の流れに対して規定の最小流れ断面を提供する。例えば、第1のボール24は、第2の半穴26.2の開口と貫通穴26.3の開口との間にバイパスチャネルを有することができる。これらのバイパスチャネルは、第1のボール24のケーシングにおける溝および/またはノッチとして導入される。その結果、第1の切換位置から第2の切換位置を経由して第3の切換位置に向けてボールが回転している間に、またはそれとは逆の向きにボールが回転している間に、流体の流れに対して少なくとも1つの最小流路断面積が確保される。バイパスチャネルは、貫通穴26.3の2つの開口と第2の半穴26.2の開口とを接続する。バイパスチャネルの深さや幅を変えることにより、回転プロセス中に、効果的な最小流れ断面積を構成することができる。追加的にまたは代替的に、少なくとも貫通穴26.3の開口および第2の半穴26.2の開口は、それぞれ、第2の接続部B1および第3の接続部C1よりも大きい直径を有することができる。システムの観点から、上記の2つの建設的な対策に加えて、圧縮機3を完全にオフにする代わりに、切換操作中に圧縮機3の電力を制限することで、圧縮機3が稼働しているときの流れ断面積が狭くても、システムに許容できない高圧ピークを生成しないという選択肢がある。
【0027】
冷却モードから加熱モードへの変更を例として説明する。既に上述したように、冷媒回路1の冷却動作モードでは、第1のボール弁20はその第1の切換位置にあり、第2のボール弁30はその第3の切換位置にある。これにより、冷媒は凝縮器5を通って流れ、間接凝縮器7は吸引される。ここで、第2のボール弁30は、この第2のボール弁のすべての接続部A2、B2、C2が遮断され、冷媒がそれ以上は引き出されない第2の切換位置に切り換えられる。次に、第1のボール弁20は、凝縮器5および間接凝縮器7に冷媒が流れることができる第2の切換位置に切り換えられる。次に、第1のボール弁20は、第3の切換位置に切り換えられ、その場合は間接凝縮器7のみに冷媒が流れる。次に、第2の切換弁30がその第1の切換位置に切り換えられ、それにより凝縮器5が吸引状態とされる。
【符号の説明】
【0028】
1 ヒートポンプ機能を備えた1つの冷媒回路
3 圧縮機
5 凝縮器
7 間接凝縮器
8 冷却器
9 蒸発器
10 弁装置
12 第1の接続ブロック
12.1 第1の接続片
14 第2の接続ブロック
14.1 第2の接続片
20 第1のボール弁
22 第1のバルブブロック
24 第1のボール
26 T字形の穴
26.1 第1の半穴
26.2 第2の半穴
26.3 貫通穴
28 第1のアクチュエータ
A1、B1、C1 接続部
30 第2のボール弁
32 第2のバルブブロック
34 第2のボール
36 L字形の穴
36.1 第1の半穴
36.2 第2の半穴
38 第2のアクチュエータ
A2、B2、C2 接続部
P1、P2、P3、P4 流体接続部
RSV 逆止弁