(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】膨張に基づく非侵襲的血圧モニタのための膨張装置およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0225 20060101AFI20220111BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61B5/0225 G
A61B5/0225 B
A61B5/022 100B
(21)【出願番号】P 2020514728
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2018074435
(87)【国際公開番号】W WO2019052996
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-06-11
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウォエーアレ ダイター
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ラース
(72)【発明者】
【氏名】キューネン マールテン ペトルス ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】アレン ポール
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-014556(JP,A)
【文献】特開2018-130401(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107106045(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置において使用される膨張装置であって、前記膨張装置は、
前記膨張に基づくNIBP測定装置のカフに結合される出口と、
各ポンプがそれぞれのガスフローを前記出口に出力することで、前記カフを膨張させるためのガスフローを前記出口において生成する複数のポンプと、
制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、
(i)それぞれのガスフローを前記出口に出力するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にし、ここで、前記制御ユニットによって有効にされるポンプの数は、前記カフを膨張させるための前記出口における要求されるガス流量に基づき、及び/または、(ii)それぞれの流量で前記出口にそれぞれのガスフローを出力するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを制御し、ここで、前記複数のポンプのうちの前記少なくとも1つのポンプの前記それぞれの流量は、前記要求されるガス流量に基づき制御され
、
前記複数のポンプは、第1の流量範囲内のガスフローを出力する第1のポンプと、第2の流量範囲内のガスフローを出力する第2のポンプとを含み、前記第1の流量範囲は前記第2の流量範囲より高い流量を含み、前記制御ユニットは、前記要求されるガス流量で前記出口においてガスフローを提供するよう、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプの一方または両方を有効にする、膨張装置。
【請求項2】
前記要求されるガス流量は、前記カフにおける圧力の変化率、およびコンプライアンス値の少なくとも一方に基づいて決定される、請求項1に記載の膨張装置。
【請求項3】
前記第1のポンプおよび前記第2のポンプの少なくとも一方の有効化および/または無効化は徐々に実行される、請求項
1に記載の膨張装置。
【請求項4】
前記第1のポンプはダイアフラムポンプであり、前記第2のポンプはピエゾポンプである、請求項
1から3
の何れか一項に記載の膨張装置。
【請求項5】
前記複数のポンプの各ポンプは、ある流量範囲内のガスを出力し、前記制御ユニットは、それぞれのガスフローを出力するよう前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にし、また、前記要求されるガス流量で前記出口にガスフローを提供するよう、前記複数のポンプのうちの前記少なくとも1つのポンプの前記それぞれの流量を制御する、請求項1または2に記載の膨張装置。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記出口にそれぞれのガスフローを提供するよう、前記複数のポンプの各ポンプを有効にする、請求項
5に記載の膨張装置。
【請求項7】
前記制御ユニットは、同じまたは実質的に同じ流量のそれぞれのガスフローを出力するよう、前記有効化されたポンプのそれぞれを制御する、請求項
5または
6に記載の膨張装置。
【請求項8】
前記複数のポンプの各ポンプは、固定流量でそれぞれのガスフローを出力し、前記制御ユニットは、有効化されたポンプから、前記要求されるガス流量で前記出口においてガスフローを提供するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にする、請求項1または2に記載の膨張装置。
【請求項9】
前記複数のポンプの各ポンプは、同じまたは実質的に同じ固定流量のそれぞれのガスフローを出力する、請求項
8に記載の膨張装置。
【請求項10】
膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置であって、前記測定装置は、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の膨張装置と、
動作中、インフレータブルカフが身体の一部の周りに配置されているときに被検者の前記身体の一部における動脈振動を測定するセンサとを備え、前記カフは、前記膨張装置の前記出口に結合されて前記膨張装置によって膨張させられ、
前記膨張装置の前記制御ユニット、または前記膨張に基づくNIBP測定装置の処理ユニットは、前記センサから動脈振動の測定結果を受け取り、受け取った前記測定結果に基づいて前記被検者の血圧を決定する、膨張に基づくNIBP測定装置。
【請求項11】
前記カフを選択的に収縮させるために前記インフレータブルカフに接続された放出弁をさらに備える、請求項
10に記載の膨張に基づくNIBP測定装置。
【請求項12】
膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置とともに使用される膨張装置の制御方法であって、前記膨張装置は、前記膨張に基づくNIBP測定装置のカフに結合される出口と、各ポンプがそれぞれのガスフローを前記出口に出力することで、前記カフを膨張させるためのガスフローを前記出口において生成する複数のポンプとを備え、前記方法は、
制御ユニットが、
(i)それぞれのガスフローを前記出口に出力するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にするステップであって、前記制御ユニットによって有効にされるポンプの数は、前記カフを膨張させるための前記出口における要求されるガス流量に基づく、当該有効にするステップ、および/または
(ii)それぞれの流量で前記出口にそれぞれのガスフローを出力するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを制御するステップであって、前記複数のポンプのうちの前記少なくとも1つのポンプの前記それぞれの流量は、前記要求されるガス流量に基づき制御される、当該制御するステップを含
み、
前記複数のポンプは、第1の流量範囲内のガスフローを出力する第1のポンプと、第2の流量範囲内のガスフローを出力する第2のポンプとを含み、前記第1の流量範囲は前記第2の流量範囲より高い流量を含み、前記(i)及び(ii)のステップにおいて、前記制御ユニットは、前記要求されるガス流量で前記出口においてガスフローを提供するよう、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプの一方または両方を有効にする、方法。
【請求項13】
コンピュータ可読コードが組み込まれたコンピュータ可読媒体に含まれるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータ可読コードは、膨張装置の制御ユニットによって実行されると、前記膨張装置が請求項
12に記載の方法を実行するように構成されている、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張に基づく非侵襲的血圧測定装置のための膨張装置およびその作動方法に関し、特に、サイズおよび材料が異なる多様なインフレータブルカフとの使用に適した膨張装置の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈血圧(BP)は最も重要なバイタルサインの1つであり、臨床診療で広く使用されている。非侵襲的動脈血圧(non-invasive arterial blood pressure:NIBP)は通常、被検者の上腕に巻き付けられたカフの圧力をゆっくりと変化させることで測定される。BPは、カフから遠位の音を測定するか(コロトコフ音に基づく聴診法)、または腕および上腕動脈の体積脈動によって引き起こされるカフの圧力脈動を測定し、圧力パルスのエンベロープから特徴を抽出する(オシロメトリック法)ことによって決定される。オシロメトリック法は容易に自動化することができ、広く使用されている。
【0003】
典型的な聴診法またはオシロメトリック法の原理を
図1および
図2に示す。
図1および
図2はそれぞれ、カフに加えられた圧力と時間との関係、およびインフレータブルカフにおいて測定された圧力と時間との関係を示す。y軸はカフ圧を示し、x軸は時間を示す。
【0004】
聴診法またはオシロメトリック法のいずれかを使用して収縮に基づくNIBP測定を実行するために、全ての血流が閉塞されるまで、被検者の上腕の周りでカフが膨らませられる。続いて、
図1に示すように、カフ圧を段階的にゆっくりと低下させたり、または他の種類の測定技術では直線的に低下させる。次に、カフ圧の低下中に測定された信号を使用して、収縮期血圧(SBP、すなわち心周期中の最大血圧)および拡張期血圧(DBP、すなわち心周期中の最小血圧)が決定される。このプロセスの間、被検者、例えば患者は不快感を覚えがちであり、
図1の線の下の領域にこれが表されている。時間と圧力の積は不快感のレベルを与え、言い換えれば、長時間にわたる高い圧力は被検者にとって不快であり、低い圧力であっても、より長い時間加えられれば同レベルの不快感をもたらす可能性がある。
【0005】
図2に示すように、聴診法では、SBPおよびDBPはコロトコフ音の発生および消失から決定される。コロトコフ音は、医療従事者によってカフの遠位の上腕動脈上に配置された聴診器を使用することで聞くことができる。オシロメトリック法では、SBPおよびDBPは、観察されるカフ圧の振動から決定される。カフ圧の振動の振幅は、カフ圧が平均動脈血圧に近いときに最大になる。SBPおよびDBPは通常、振動振幅が、ピーク振動振幅の特定のパーセント範囲(特性比)内にあるカフ圧として決定される。一般的な特性比は、DBPで約70~80%、SBPで約50~60%である。
【0006】
上記のような収縮に基づく技術の1つの問題は、被検者が受ける不快感である(
図1の線の下の領域によって表される)。あるレベルを超える圧力は、カフそのものによって及ばされる圧力、またはカフより遠位の肢の部分における静脈血の蓄積(静脈貯留)に起因して、不快感や痛みさえ引き起こす可能性がある。これらの圧力が被検者に加えられる時間が長いほど、被検者は不快感を覚える。
【0007】
収縮に基づくNIBP測定のもう1つの問題は、測定自体の時間が長いことである。収縮に基づくNIBP測定は、通常、単一の測定を完了するのに約40秒かかる。圧力レベルに起因する不快感のため、被検者(例えば患者)はこの持続時間が長すぎると認識する可能性があり、また、通常は複数の患者の血圧測定を行う医療従事者のワークフローにも影響するおそれがある。さらに、本来的に存在する経時的な血圧の変動は、カフの収縮中に血圧測定を歪める可能性がある。
【0008】
NIBP測定の快適性は、次の3つの領域、すなわち、合計測定時間(削減が望ましい)、到達する最大カフ圧(より低い最大圧力が望ましい)、およびカフ圧の時間積分(より小さい積分が望ましい)のいずれかまたは全てにおいて改善され得る。当然ながら、快適性の改善は、許容範囲を超える、NIBP測定の精度の犠牲を伴うものであってはならない。
【0009】
カフの収縮中にBPが測定される上記の種類の測定技術の他に、カフの膨張中にBPを測定可能な装置が開発されている。これにより、BP測定値の取得後に収縮が比較的早く起こることができるので、合計測定時間(場合によっては約20秒)を短縮することができ、結果として、被検者にとってより快適な測定となり得る(
図1の点線によって示される)。
【0010】
ある既存の測定装置はカフを膨張させるのに固定流量(すなわち、固定mL/s、可変mmHg/s)を使用し、別の装置は固定圧力レート(すなわち、固定mmHg/s、可変mL/s)を使用する。固定流量ソリューションについては、小さいカフでは膨張が速すぎる(すなわち、SBPおよびDBPの正確な推定値を得るには振動数が少なすぎる)おそれがあり、また大きいカフでは測定が遅くなるので、ごく一部のカフにしか対応しないデバイスとなる。固定圧力レート(すなわち、一定期間にわたる特定の圧力増加)ソリューションは、所望の圧力レートのために流量を変更することでこれらの問題に対処する。しかし、このソリューションの問題は、多様なカフとの使用に対応するには広範囲の流量を生成する必要があり、通常のポンプでは、新生児カフから大腿カフまでの範囲に及ぶ広範囲の流量を生成することが難しいことである。
【発明の概要】
【0011】
血圧カフの膨張に特定のポンプを使用する場合、特定の範囲のカフおよび/または他の設定についてしか望ましい膨張率が得られないおそれがある。すなわち、高い最大流量を生成できるポンプを選択した場合、低い流量を正確に生成できない可能性がある。全くポンピングが行われなかったり(ポンプストールと呼ばれる)、または血圧を求めるために測定されるべき動脈振動と不可分な振動を誘発したりすることに関連する問題が生じ得る。一方、低い流量を供給できるポンプを選択した場合、高い流量を生成できない可能性がある。これらの問題の結果、特定の範囲のカフサイズののみに対応可能な血圧測定デバイスとなる。最大流量が大きいポンプは、小さいカフについて有効な測定値を取得するのに使用できないおそれがあり、その逆も同様である。
【0012】
さらなる問題は、ポンプを使用すると、目的の信号(すなわち、動脈によって引き起こされるカフ振動の測定値)に不要な振動が引き起こされ得ることである。特に低い流量の場合、これらの引き起こされた振動は動脈振動と同じ周波数帯域に存在し、これらの信号の分離は非常に困難となる。結果として、所望の信号にアーチファクトが生じ、血圧測定の精度が低下したり、場合によっては分析が不可能になったりし得る。
【0013】
上記の問題に対処する試みの1つは、ギアボックスを使用してポンプのモータの速度を下げることである。このアプローチの欠点は、ギアボックス内のギアのシフトがカフの膨張速度の不連続性を引き起こし、それがカフにおける振動の歪みを引き起こすおそれがあることである。
【0014】
したがって、上記の問題に対処しつつ、既存のポンプの複雑な適合または複雑な制御を伴わない、膨張に基づくNIBP測定装置で使用される膨張装置およびその作動方法へのニーズが存在する。
【0015】
第1の側面によれば、膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置において使用される膨張装置が提供され、前記膨張装置は、前記膨張に基づくNIBP測定装置のカフに結合される出口と、各ポンプがガスフローを前記出口に出力する複数のポンプと、前記カフを膨張させるための要求される流量に基づき、前記出口にガスフローを出力するよう前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にし、かつ/または、前記カフを膨張させるための要求される流量に基づき、前記出口にガスフローを出力するための前記複数のポンプのうちの少なくとも1つのポンプの流量を制御する制御ユニットとを備える。
【0016】
一部の実施形態では、前記要求される流量は、前記カフにおける圧力の変化率、およびコンプライアンス値の少なくとも一方に基づいて決定されてもよい。
【0017】
一部の実施形態では、前記複数のポンプは、第1の流量範囲のガスフローを出力する第1のポンプと、第2の流量範囲内のガスフローを出力する第2のポンプとを含み、前記第1の範囲は前記第2の範囲より高い流量を含み、前記制御ユニットは、前記要求される流量で前記出口において有効化されたポンプからガスフローを提供するよう、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプの一方または両方を有効にし得る。
【0018】
一部の実施形態では、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプの少なくとも一方の有効化および/または無効化は徐々に実行され得る。
【0019】
一部の実施形態では、前記第1のポンプはダイアフラムポンプであってもよく、前記第2のポンプはピエゾポンプであってもよい。
【0020】
一部の実施形態では、前記複数のポンプの各ポンプは、ある流量範囲内のガスを出力し、前記制御ユニットは、ガスフローを出力するよう前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にし、また、前記要求される流量で前記出口にガスフローを提供するよう、前記複数のポンプのうちの前記少なくとも1つのポンプの前記流量を制御し得る。
【0021】
一部の実施形態では、前記制御ユニットは、前記出口にガスフローを提供するよう、前記複数のポンプの各ポンプを有効にし得る。
【0022】
一部の実施形態では、前記制御ユニットは、同じまたは実質的に同じ流量のガスフローを出力するよう、前記有効化されたポンプのそれぞれを制御し得る。
【0023】
一部の実施形態では、前記複数のポンプの各ポンプは、固定流量でガスフローを出力し、前記制御ユニットは、有効化されたポンプから、前記要求される流量で前記出口にガスフローを提供するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にし得る。
【0024】
一部の実施形態では、前記複数のポンプの各ポンプは、同じまたは実質的に同じ固定流量のガスフローを出力し得る。
【0025】
第1の側面に関連する側面であって、第1の側面の任意の実施形態に適用可能な側面によれば、膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置において使用される膨張装置が提供され、前記膨張装置は、前記膨張に基づくNIBP測定装置のカフに結合される出口と、各ポンプがそれぞれのガスフローを前記出口に出力することで、前記カフを膨張させるためのガスフローを前記出口において生成する複数のポンプと、制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、(i)それぞれのガスフローを前記出口に出力するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にし、ここで、前記制御ユニットによって有効にされるポンプの数は、前記カフを膨張させるための前記出口における要求されるガス流量に基づき、及び/または、(ii)それぞれの流量で前記出口にそれぞれのガスフローを出力するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを制御し、ここで、前記複数のポンプのうちの前記少なくとも1つのポンプの前記それぞれの流量は、前記要求される流量に基づき制御される。
【0026】
第2の側面によれば、膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置が提供され、前記測定装置は、第1の側面または第1の側面に関連する上記側面に係る膨張装置と、被検者の身体の一部の周りに配置され、また、前記膨張装置の前記出口に結合されるインフレータブルカフと、前記カフが前記膨張装置によってっ膨張させられている間に前記被検者の前記身体の一部における動脈振動を測定するセンサとを備え、前記膨張装置の前記制御ユニット、または前記膨張に基づくNIBP測定装置の処理ユニットは、前記センサから動脈振動の測定結果を受け取り、受け取った前記測定結果に基づいて前記被検者の血圧を決定する。
【0027】
一部の実施形態では、前記膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置は、前記カフを選択的に収縮させるために前記インフレータブルカフに接続された放出弁をさらに備え得る。
【0028】
第3の側面によれば、膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置とともに使用される膨張装置の制御方法が提供され、前記膨張装置は、前記膨張に基づくNIBP測定装置のカフに結合される出口と、各ポンプがガスフローを前記出口に出力する複数のポンプとを備え、制御ユニットにおける前記方法は、前記カフを膨張させるための要求される流量に基づき、前記出口にガスフローを出力するよう前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にするステップ、および/または、前記カフを膨張させるための要求される流量に基づき、前記出口にガスフローを出力するための前記複数のポンプのうちの少なくとも1つのポンプの流量を制御するステップを含む。
【0029】
一部の実施形態では、前記方法はさらに、前記カフにおける圧力の変化率、およびコンプライアンス値の少なくとも一方に基づいて前記要求される流量を決定するステップを含み得る。
【0030】
一部の実施形態では、前記複数のポンプは、第1の流量範囲のガスフローを出力する第1のポンプと、第2の流量範囲内のガスフローを出力する第2のポンプとを含み、前記第1の範囲は前記第2の範囲より高い流量を含み、前記方法はさらに、有効化されたポンプから、前記要求される流量で前記出口にガスフローを提供するよう、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプの一方または両方を有効にするステップを含み得る。
【0031】
一部の実施形態では、前記方法はさらに、前記第1のポンプおよび前記第2のポンプの少なくとも一方を徐々に有効化および/または無効化するステップを含み得る。
【0032】
一部の実施形態では、前記複数のポンプの各ポンプは、ある流量範囲内のガスを出力し、前記方法はさらに、ガスフローを出力するよう前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にし、また、前記要求される流量で前記出口にガスフローを提供するよう、前記複数のポンプのうちの前記少なくとも1つのポンプの前記流量を制御するステップを含み得る。
【0033】
一部の実施形態では、前記方法はさらに、前記出口にガスフローを提供するよう、前記複数のポンプの各ポンプを有効にするステップを含み得る。
【0034】
一部の実施形態では、前記方法はさらに、同じまたは実質的に同じ流量のガスフローを出力するよう、前記有効化されたポンプのそれぞれを制御するステップを含み得る。
【0035】
一部の実施形態では、前記複数のポンプの各ポンプは、固定流量でガスフローを出力し、前記方法はさらに、有効化されたポンプから、前記要求される流量で前記出口にガスフローを提供するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にするステップを含み得る。
【0036】
一部の実施形態では、前記方法はさらに、同じ固定流量でガスフローを出力するステップを含み得る。
【0037】
第3の側面に関連する側面であって、第3の側面の任意の実施形態に適用可能な側面によれば、膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置とともに使用される膨張装置の制御方法が提供され、前記膨張装置は、前記膨張に基づくNIBP測定装置のカフに結合される出口と、各ポンプがそれぞれのガスフローを前記出口に出力することで、前記カフを膨張させるためのガスフローを前記出口において生成する複数のポンプとを備え、制御ユニットにおける前記方法は、(i)それぞれのガスフローを前記出口に出力するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを有効にするステップであって、前記制御ユニットによって有効にされるポンプの数は、前記カフを膨張させるための前記出口における要求されるガス流量に基づく、ステップ、および/または(ii)それぞれの流量で前記出口にそれぞれのガスフローを出力するよう、前記複数のポンプのうちの少なくとも1つを制御するステップであって、前記複数のポンプのうちの前記少なくとも1つのポンプの前記それぞれの流量は、前記要求される流量に基づき制御される、ステップを含む。
【0038】
第4の側面によれば、コンピュータ可読コードが組み込まれたコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品が提供され、前記コンピュータ可読コードは、適切なコンピュータ、プロセッサ、または制御ユニットによって実行されると、前記コンピュータ、プロセッサ、または制御ユニットに、第3の側面または第3の側面に関連する上記側面に係る方法を実行させる。
【0039】
一部の実施形態では、適切なコンピュータ、プロセッサ、または制御ユニットは、複数のポンプに接続されている、または接続可能である。
【0040】
本発明の上記および他の側面は、以下に記載される実施形態を参照しながら説明され、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明のより良い理解のために、また、本発明が如何に実施され得るかをより明確に示すために、以下の例示に過ぎない添付図面を参照する。
【0042】
【
図1】
図1は、従来の聴診またはオシロメトリックNIBP測定装置について、および膨張に基づくNIBP測定装置について測定されたカフ圧対時間のグラフである。
【
図2】
図2は、従来の聴診またはオシロメトリックNIBP測定装置についてのカフ圧対時間の別のグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る膨張装置の図である。
【
図4】
図4は、膨張に基づくNIBP測定装置における本発明の実施形態に係る膨張装置の実装の回路図表示を示す。
【
図5】
図5は、膨張に基づくNIBP測定装置における本発明の他の実施形態に係る膨張装置の実装の回路図表示を示す。
【
図6】
図6は、本発明の一般的な実施形態に係る膨張装置の作動方法の例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図4に示される実施形態に係る膨張装置の作動方法の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
上記のように、肢の血流を防ぐのに十分なピーク圧力からカフを収縮させる間ではなく、カフの膨張中に被検者の血圧(BP)を測定することにより、BP測定をより素早く完了させることができ、これにより、被検者のBP測定の快適性が向上する。この測定プロセスの一環として、カフを専用膨張率で必要な圧力まで膨張させるべきであり、以下に説明する膨張装置は、ポンプの複雑な調整や複雑な制御手順の導入を必要としない、多様なカフのサイズおよび材料に適した膨張に基づくBP測定に関連する柔軟なソリューションを提供する。知られているように、カフは、被検者の身体の一部の周りに配置されまたは巻き付けられ、カフの下の身体部分に圧力を加えるために膨張させられる。
【0044】
本発明の一実施形態に係る、膨張に基づく非侵襲的血圧(NIBP)測定装置内で、またはそのような装置とともに使用される膨張装置を
図3に示す。膨張装置10は、要求されるまたは所望の流量で、膨張に基づくNIBP測定装置のカフにガスフローを提供するためのものである。膨張装置10は、出口110および複数のポンプ120を含む。制御ユニット130が複数のポンプ120に接続され、複数のポンプ120の動作を制御する。制御ユニット130は、複数のポンプ120のうちの少なくとも1つを制御して、出口110からの要求される流量に基づいてガス(例えば空気)フローを出力する。
【0045】
要求される流量は、カフ内の圧力の要求される変化率およびコンプライアンス値の少なくとも一方に基づいて決定されてもよい。コンプライアンス値は、カフのコンプライアンス、腕のコンプライアンス、およびカフの巻き付けの組み合わせであり得る全体的コンプライアンス値であり得る。カフのコンプライアンスは、カフへの空気流量を、カフ内の圧力増加率で割ったものとして定義される。この全体的コンプライアンス値は定数ではなくカフの圧力に依存する。したがって、コンプライアンス値は、カフ内の圧力、カフのサイズ、カフの材料の弾性、カフの下の組織の圧縮性、および身体の一部の周りのカフの巻き付けのきつさの少なくとも1つに基づいて決定され得る。コンプライアンス値、および/またはコンプライアンス値の決定の基礎となり得るファクタは、カフの膨張前または膨張中に決定されてもよい。要求される流量は、所望の圧力変化率と実際の圧力変化率に基づきフィードバックループを使用して制御され得る。
【0046】
出口110は、膨張に基づくNIBP測定装置のインフレータブルカフに結合されるように構成される。一部の実施形態では、出口110は、複数の異なるサイズを有するカフ(例えば、通常のアームカフ、新生児カフ、および大腿カフ)に対して着脱できるように構成される。
【0047】
複数のポンプ120はそれぞれ、ガス(例えば空気)フローを出口110に出力するように構成される。一部の実施形態では、各ポンプ120は、一定の出力流量でガスフローを供給するように構成される。すなわち、各ポンプ120が有効化(すなわち、作動)されると、ポンプ120は当該固定出力流量でガスフローを供給する(すなわち、ポンプ120の流量は可変ではない)。これらの実施形態では、各ポンプ120は同じ固定出力流量、あるいは、公差および/または較正等の違いによりポンプごとに出力流量が異なる可能性があるため、実質的に同じ固定出力流量でガスフローを出力することができる。あるいは、各ポンプ120は、それぞれの固定出力流量でガスフローを出力することができる(すなわち、1つまたは複数のポンプ120が他のポンプ120とは異なる固定出力流量を有し得る)。
【0048】
代替的実施形態では、複数のポンプ120のうちの少なくとも1つは、可変流量でガスフローを出力するように構成され得る。すなわち、複数のポンプ120の少なくとも1つは、ポンプ120が動作可能な流量範囲から選択されたある流量でガスフローを出力するように構成され得る。複数の流量から選択する代わりに、流量が動作範囲内で連続的であってもよい。ポンプ120の出力流量は制御ユニット130によって制御され得る。一部の実施形態では、各ポンプ120は、可変流量でガスフローを出力するように構成され得る。これらの実施形態では、各ポンプ120は、同じまたは実質的に同じ流量の動作範囲を有してもよく、または1つまたは複数のポンプ120が他のポンプ120と異なる流量の動作範囲を有してもよい。一部の実施形態では、異なる動作範囲は互いに一部または全てと重複してもよいが、他の実施形態では、異なる動作範囲は重複しなくてもよい。
【0049】
制御ユニット130はポンプ120に接続され、ポンプ120が要求される流量で出口110にガスフローを提供するようにポンプ120の動作を制御する。具体的には、制御ユニット130は、必要に応じて各ポンプ120を選択的に有効化および無効化(すなわち、起動および停止)するように構成される。複数のポンプ120のうちの1つまたは複数が可変流量を有する実施形態では、制御ユニット130は、(例えば、適切な制御信号を介して)当該ポンプ120の出力流量を適切な流量に制御するように構成される。
【0050】
以下で説明する様々な機能を実行するために、制御ユニット130は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアを用いて多様に実装され得る。制御ユニット130は、必要な機能を実行し、および/または制御ユニット130のコンポーネントを制御して必要な機能を実行するようにソフトウェアまたはコンピュータプログラムコードを使用してプログラムされ得る1つ以上のマイクロプロセッサまたはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を備え得る。制御ユニット130は、一部の機能(例えば、増幅器、前置増幅器、アナログデジタル変換器(ADC)および/またはデジタルアナログ変換器(DAC))を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つまたは複数のプログラムされたマイクロプロセッサ、コントローラ、DSP、および関連する回路)の組み合わせとして実装され得る。本開示の様々な実施形態において採用され得るコンポーネントの例は、限定はされないが、従来のマイクロプロセッサ、DSP、特定用途向け集積回路(ASIC)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0051】
様々な実装において、制御ユニット130は任意の種類のメモリ、例えばキャッシュ、または揮発性および不揮発性コンピュータメモリを含むシステムメモリ、例えばRAM、SRAM、DRAM、ROM、PROM、EPROM、およびEEPROM(登録商標)などを含む1つまたは複数のメモリユニット(図示されていない)と関連付けられたり、またはそのような1つまたは複数のメモリユニットを含み得る。制御ユニット130または関連付けられたメモリユニットは、本明細書に記載の方法を実行するために制御ユニット130内のプロセッサによって実行され得るプログラムコードを格納するためにも使用され得る。
【0052】
以下により詳細に説明するいくつかの具体的実施形態では、各ポンプ120は、可変出力流量でガスフローを出力するように構成され、制御ユニット130は、1つまたは複数のポンプ120を有効化してガスフローを提供するように、および、要求される流量に基づいて1つまたは複数の有効化されたポンプ120の流量を制御するように構成される。例えば、一部の実施形態では、複数のポンプ120は、第1の流量範囲内のガスフローを出力するように構成された第1のポンプと、第2の流量範囲内のガスフローを出力するように構成された第2のポンプとを含み、第1の範囲は第2の範囲よりも高い流量を含む。場合によっては、第1の範囲の流量が第2の範囲の流量よりも高くてもよい(すなわち、第1の範囲と第2の範囲が重ならないように)。制御ユニット130は、第1のポンプ120および第2のポンプ120の一方または両方を有効にすることで、要求される流量で有効化された1つまたは複数のポンプ120から出口110にガスフローを提供するよう出力流量を制御することができる。これらの実施形態の例示的な実装は、
図4および
図5に関連して説明される。
【0053】
他の実施形態では、各ポンプ120は、それぞれの固定出力流量でガスフローを出力するように構成され(それぞれの固定出力流量は同じまたは実質的に同じでもよく、あるいは異なり得る)、制御ユニット130は、少なくとも1つのポンプ120を有効にすることで、要求される流量で有効化されたポンプ120から出口にガスフローを提供するように構成される。例えば、一部の実施形態では、各ポンプ120は、同じまたは実質的に同じ固定流量を有するように構成され、制御ユニット130は、要求される流量を達成するために、複数のポンプ120のうちのいくつを有効にするかを決定するように構成され得る。これらの実施形態の例示的な実装は、
図5に関連して説明される。
【0054】
図3は、本発明の本側面を説明するために必要な構成要素のみを示しており、実際の実装では、膨張装置10は、図示された構成要素に加えて他の構成要素を備え得ることが理解されよう。例えば、膨張装置10は、安全上の理由のための1つまたは複数のバルブ、複数のポンプ120および制御ユニット130に電力を供給するためのバッテリーまたは他の電源、プログラムコードを格納するためのメモリモジュール、および/または、ユーザ(例えば被検者または医療専門家)が膨張装置10とインタラクトして膨張装置を制御することを可能にする1つまたは複数のインターフェース要素を備えてもよい。
【0055】
図4は、膨張に基づくNIBP測定装置における本発明の実施形態に係る膨張装置の実装の回路図表示である。この実施形態では、複数のポンプ120は第1のポンプ20および第2のポンプ22を含む。膨張に基づくNIBP測定装置12の実装のレイアウトは、出口110、膨張装置を形成する第1のポンプ20および第2のポンプ22、および放出弁140の間の接続を含む回路図として示されている。動作中、出口110はチューブ28に接続され、チューブ28はカフ30に接続されることで、ガスが第1のポンプ20および/または第2のポンプ22(第1のポンプ20および第2のポンプ22のいずれが有効化されるかに応じて)からカフ30に流れることができる。血圧測定が完了した後にカフ30を収縮させることができるよう、放出弁140がカフ30(図示せず)および/またはチューブ28、並びに大気に接続される。
図4に示される出口110および放出弁140の相対的配置は例示であり、図示されるものとは異なる配置を有し得ることが理解されよう(例えば、放出弁140は、出口110に対して、第1のポンプ20および第2のポンプ22の側ではなくカフ30側に配置されてもよい)。
【0056】
回路図では、放出弁140は、スイッチを介してグランド(例えば大気)に接続される抵抗器としてモデル化されており(すなわち、放出弁は、スイッチが閉じているときにガスが放出弁を通過することを可能にする)、チューブ28は抵抗器としてモデル化されており(チューブ28はその寸法に基づきガスフローにいくらかの抵抗を与えるので)、カフ30はコンデンサとしてモデル化されており(空気またはガスを格納するので)、ポンプ20、22はそれぞれ電流源としてモデル化されている(空気またはガスを回路に供給するので)。
【0057】
この実施形態では、第1のポンプ20は比較的大きな最大流量のガス(例えば、2~70mL/s)を供給できるポンプであり、第2のポンプ22は低流量範囲(例えば、0~3mL/s)内のガスフローを提供できるポンプである。第1のポンプ20はダイアフラムポンプであり、第2のポンプ22はピエゾポンプであり得るが、当業者は他のタイプのポンプも使用可能であることを理解するであろう。第1のポンプ20は第1の流量範囲内のガスフローを出力するように構成され、第2のポンプ22は第2の流量範囲内のガスフローを出力するように構成される。第1のポンプ20は第2のポンプ22よりも大きいので、第1の範囲は第2の範囲よりも高い流量を含む。一部の実施形態では、第1の範囲内の流量は第2の範囲内の流量よりも高い(すなわち、両範囲が重ならない)。ポンプ20、22のどちらが有効化されるか、および第1のポンプ20および第2のポンプ22の流量は、膨張装置の制御ユニット(
図4には図示せず)または膨張に基づくNIBP測定装置12のプロセッサ/制御ユニットによって制御される。制御ユニットまたはプロセッサは、カフ30内の圧力の変化率と、コンプライアンス値との少なくとも一方を受け取るように構成され得る。この情報は、外部デバイスから膨張装置12の通信モジュール(
図4には図示せず)を介して受信されてもよいし、あるいは装置12のユーザによって入力されてもよい。制御ユニットまたはプロセッサはさらに、受け取ったカフ30の圧力変化率およびコンプライアンス値の少なくとも一方に基づき要求される流量を決定し、それに応じて第1のポンプ20および第2のポンプ22の少なくとも一方の動作を制御するように構成されてもよい。
【0058】
要求される流量が第1の範囲内、すなわち第1のポンプ20の動作可能範囲内にある場合、制御ユニット130は第1のポンプ20を有効化し、要求される流量でガスフローを出力するように第1のポンプ20の流量を制御する。この場合、第2のポンプ22は、ガスフローを出力しないように無効化または停止される。同様に、要求される流量が第2の範囲内、すなわち第2のポンプ22の動作可能範囲内にある場合、制御ユニット130は第2のポンプ22を有効にし、要求される流量でガスフローを出力するように第2のポンプ22の流量を制御する。この場合、第1のポンプ20は、ガスフローを出力しないように無効化または停止される。場合によっては、要求される流量が第1のポンプ20の最大動作可能流量よりも高い場合、制御ユニット130は、第1のポンプ20と第2のポンプ22の両方を有効にして、両方のポンプに各々の流量でガスフローを出力させ、出口110において組み合わせられたガスフローを形成し得る(すなわち、第1のポンプ20からのガスフローと第2のポンプ22からのガスフローとの組み合わせ)。
【0059】
第1のポンプ20の出力流量を細かく制御することができない場合(例えば、出力流量をスムーズに調整することができず、段階的にしか変更できない場合)に有用であり得る一部の実施形態では、要求される流量が第1の範囲内であるが、第1のポンプ20によって出力可能な流量のうちの1つに等しくない場合、制御ユニットは、第1のポンプ20を有効にし、要求される流量未満の流量でガスを出力するように第1のポンプ20を制御するとともに、第2のポンプ22を有効にし、第1のポンプ20および第2のポンプ22からのガスの組み合わせられた流量が要求される流量に等しくまたは近くなるような流量でガスを出力するよう第2のポンプ22を制御し得る。
【0060】
したがって、この実施形態では、標準的な高流量ポンプおよび標準的な低流量ポンプを使用して、装置12の全体的流量範囲を拡大し、膨張装置を多様な異なるサイズのカフに結合できるようにすることができる。大腿カフなどの大きなカフの場合、第1のポンプ20を使用して(場合によっては第2のポンプ22と一緒に)、適切かつ妥当な速度でカフを膨張させる比較的高い流量を出力することができる。新生児カフなどの小さなカフの場合、第2のポンプ22を使用して(そして第1のポンプ20を停止または無効にして)、要求される圧力変化率でカフ30を膨張させるよう低い流量を出力し、カフ損傷のリスクを減らすことができる。
【0061】
また、一部の実施形態では、血圧測定を妨げる可能性のあるアーチファクトの誘発を回避するために、第1のポンプ20および第2のポンプ22の有効化または無効化を徐々に実行することができる。
【0062】
カフ30がポンプ20、22によって膨張されている間に、NIBP測定装置12内のセンサからの測定値を使用して血圧測定を行うことができる。センサは、カフ30が膨張されている間に被検者の身体の一部における動脈振動を測定するように構成される。このセンサは、カフ下の動脈内の動脈血の脈動に起因するカフ圧の変化を測定するように構成された圧力センサであってもよい。一部の実施形態では、センサは、膨張中に被検者の脈拍数を測定するように構成された脈拍数センサを備えてもよい。一部の実施形態では、センサは、PPG(photoplethysmography)センサ、および加速度計、またはECG(electrocardiogram)センサを備えてもよいが、当業者はカメラ、レーダー、インピーダンス・カルジオグラフィ、心音センサなどの他のタイプの心拍数センサを使用できることを理解するであろう。使用中、センサは、動脈振動を測定するために被検者の身体の適切な部分に取り付けられるか、または他の態様で接触し得る。一部の実施形態では、センサはカフと一体化され得る。これにより、被検者または医療専門家は、NIBP測定装置12の使用を開始するにあたりカフを身体の一部の周りに巻き付けるまたは配置するだけでよい。
【0063】
取得すべきBP測定結果のために十分な動脈振動測定をセンサが完了すると、被検者が経験する不快感を最小限に抑えるよう、インフレータブルカフ30内の圧力を迅速に解放するために放出弁140が開かれ得る。
【0064】
次いで、センサによって測定された動脈振動は、膨張装置の制御ユニットまたはNIBP測定装置12の処理/制御ユニットにおいて受け取られ、受け取られた動脈振動測定結果に基づいて被検者の血圧が決定される。例えば、センサが加速度計を含む一部の実施形態では、制御ユニットまたは処理ユニットは、加速度計からの加速度信号を処理して、心拍/循環系における脈拍に起因する動きを抽出するように構成されてもよい。一部の実施形態では、センサと制御ユニットまたは処理ユニットとの間に有線接続があり、他の実施形態では、センサは制御ユニットまたは処理ユニットと無線通信し得る。
【0065】
図5は、膨張に基づくNIBP測定装置における本発明の他の実施形態に係る膨張装置の実装の回路図表示である。膨張に基づくNIBP測定装置14の実装のレイアウトは、出口110、膨張装置を形成する複数のポンプ31、32、34、36、38、および放出弁140の間の接続を含む回路図として示されている。動作中、出口110はチューブ28に接続され、チューブ28はカフ30に接続されることで、ガスが複数のポンプ31、32、34、36、38(複数のポンプのうちのいずれが有効化されるかに応じて)からカフ30に流れることができる。血圧測定が完了した後にカフ30を収縮させることができるよう、放出弁140がカフ30(図示せず)および/またはチューブ28、並びに大気に接続される。
図5は5つのポンプを示しているが、膨張装置は5つより多いまたは少ないポンプを有することができることが理解されよう。
【0066】
回路図では、放出弁140は、スイッチを介してグランド(例えば大気)に接続される抵抗器としてモデル化されており(すなわち、放出弁は、スイッチが閉じているときにガスが放出弁を通過することを可能にする)、チューブ28は抵抗器としてモデル化されており(チューブ28はその寸法に基づきガスフローにいくらかの抵抗を与えるので)、カフ30はコンデンサとしてモデル化されており(空気またはガスを格納するので)、ポンプ31、32、34、36、38はそれぞれ電流源としてモデル化されている(空気またはガスを回路に供給するので)。
【0067】
各ポンプ31、32、34、36、38はピエゾポンプであり得るが、他のタイプのポンプも使用され得ることが理解されるであろう。場合によっては各ポンプは同じタイプであり、他の場合では、1つまたは複数のポンプが他のポンプと異なり得る。
【0068】
図5に関連する第1の実施形態群では、複数のポンプ31、32、34、36、38はは同じ固定流量、あるいは、公差および/または較正等の違いによりポンプごとに出力流量が異なる可能性があるため、実質的に同じ流量でガスフローを出力するように構成される。例えば、高流量ピエゾポンプの場合、同じ固定流量は約4mL/sであり得る。各ポンプ31、32、34、36、38は、要求される流量に基づいて、膨張装置の制御ユニット(
図5には示されていない)または膨張に基づくNIBP測定装置14のプロセッサ/制御ユニットによって個別に有効化され得る。制御ユニットまたはプロセッサは、カフ30内の圧力の変化率と、コンプライアンス値との少なくとも一方を受け取るように構成され得る。この情報は、外部デバイスから膨張装置の通信モジュール(
図5には図示せず)を介して受信されてもよいし、あるいは装置14のユーザによって入力されてもよい。制御ユニットまたはプロセッサはさらに、受け取ったカフ30の圧力変化率およびコンプライアンス値の少なくとも一方に基づき要求される流量を決定し、それに応じて複数のポンプ31、32、34、36、38の少なくとも1つを有効化するように構成されてもよい。例えば、血圧測定のために40mL/sの流量が必要な場合、この流量を達成するには、10個の上記高流量ピエゾポンプを有効にする必要がある。
【0069】
この実施形態では、各ポンプ31、32、34、36、38が同じまたは実質的に同じ流量でガスフローを出力するように構成されているため、制御ユニットは、有効化されたポンプから出口110に要求される流量でガスフローを供給するためにいくつのポンプ31、32、34、36、38を有効化するかを決定し、そしてその数のポンプを有効化することができる。例えば、制御ユニットは、要求される流量Rを単一のポンプの固定出力流量Fで割ることにより、必要なポンプの数Nを決定することができる。各ポンプ31、32、34、36、38は、低い要求される流量に対応することができるよう、比較的低い固定流量を有し得るが、比較的高い要求される流量を達成するためには多数のポンプが必要となることが理解されよう。また、この実施形態群では、出口110に供給される流量の分解能は、膨張装置内のポンプの数および各ポンプの固定出力流量に依存することが理解されよう。
【0070】
したがって、この実施形態では、複数の標準的ポンプを使用して、膨張装置を広範囲の異なるサイズのカフに結合することを可能にする。大腿カフなどのより大きなカフについては、適切かつ合理的な速度でカフを膨張させるよう、出口110で比較的高い流量を集合的に出力するためにより多くのポンプが有効にされ得る。新生児カフなどの小さなカフの場合、要求される圧力変化率でカフ30を膨張させるよう、比較的低い流量を出力するためにより少ない(例えば1個)ポンプを有効にし、カフ損傷のリスクを減らすことができる。
【0071】
カフ30の膨張、およびカフ30の膨張中に実行される血圧測定が完了すると(これは、
図4を参照して上記したとおりであり得る)、被検者が経験する不快感を最小限にするために、カフ30内の圧力を迅速に解放するよう放出弁140が開かれ得る。
【0072】
各ポンプ31、32、34、36、38は同じまたは実質的に同じ固定流量でガスの流れを出力するように構成されると上記したが、他の実施形態群では、各ポンプ31、32、34、36、38は、ある流量範囲内の流量でガスフローを出力するように構成され得る(すなわち、各ポンプの出力流量は可変である)。各ポンプ31、32、34、36、38は、要求される流量に基づいて、膨張装置の制御ユニット(
図5には示されていない)または膨張に基づくNIBP測定装置14のプロセッサ/制御ユニットによって個別に有効化され、同様にそれぞれの出力流量も制御され得る。一部の実施形態では、制御ユニットはポンプ31、32、34、36、38の全てを有効にし、同じまたは実質的に同じ流量でガスフローを供給するように各ポンプ31、32、34、36、38を制御する(例えば、各ポンプ31、32、34、36、38に同じ制御信号を提供することにより)。したがって、制御ユニットは全てのポンプ31、32、34、36、38の出力流量を一緒に制御することで、要求される流量のガスフローを出口110において生成する。第1の実施形態群と同様に、各ポンプ31、32、34、36、38は、低い要求される流量に対応することができるよう、比較的低い固定流量を有し得るが、比較的高い要求される流量を達成するためには多数のポンプが必要となることが理解されよう。また、この実施形態群では、出口110に供給される流量の分解能は、膨張装置内のポンプの数および各ポンプの出力流量のステップサイズに依存することが理解されよう。また、この実施形態群では、出口110に供給される流量の分解能は、膨張装置内のポンプの数および各ポンプの固定出力流量に依存することが理解されよう。
【0073】
図6のフローチャートは、膨張に基づくNIBP測定装置で使用する膨張装置を制御するための方法の例を示す。この方法は、
図3~
図5のいずれかに示される膨張装置によって実施され得る。一部の実施形態では、膨張装置10は、制御ユニット130が当該方法を実行することを可能にするためのコンピュータプログラムコードを含み得ることが理解されよう。
【0074】
任意選択的である最初のステップS601では、カフのために要求される流量が決定され得る。要求される流量は特定のカフについて事前に設定されていてもよいが、他の実施形態では、カフのための圧力変化率およびコンプライアンス値の少なくとも一方に基づいて決定されてもよい。この情報(要求される流量、カフの圧力変化率、および/またはコンプライアンス値)は、外部デバイス(例えばリモートコンピュータまたはリモートメモリ)から膨張装置10の制御ユニット130で受け取られてもよいし、または装置のユーザによって入力されてもよい。
【0075】
ステップS602において、制御ユニット130は、要求される流量に基づいて、膨張装置内の複数のポンプのうちどれを有効にするかを決定する。ポンプの出力流量が可変である場合、有効化されたポンプから必要とされる流量も決定される。そして、これに応じてポンプを有効化および/または制御して、要求される流量で出口においてガスフローが提供される。
【0076】
したがって、ポンプが固定流量でガスフローを出力するように構成される場合(すなわち、ポンプの流量は可変ではない)、ステップ602は、要求される流量で膨張装置の出口において組み合わせられたガスフローを提供するのに必要な数のポンプを有効にすることを含み得る。これらの実施形態では、方法は、要求される流量を集合的に達成するために有効化すべきポンプの数を決定するために、要求される流量を個々のポンプの固定流量で割ることによって、有効化すべきポンプの数を決定することを含み得る。
【0077】
複数のポンプのそれぞれが可変流量でガスフローを出力するように構成される他の実施形態では、ステップ602は、有効化すべき1つまたは複数のポンプ、および、有効化されたポンプが集合的に要求される流量を達成するために必要な流量を決定することと、決定された流量でその(それらの)ポンプを有効にすることとを含み得る。
【0078】
一部の実施形態では、要求される流量は時間とともに変化するので(コンプライアンスは圧力の関数として変化するので)、ポンプによって提供される流量を要求される流量に調整するために、ステップS601およびS602がフィードバックループの態様で繰り返し実行されてもよい。
【0079】
図7のフローチャートは、
図4の膨張装置の具体的実施形態に係る、膨張に基づくNIBP測定装置とともに使用される膨張装置を制御するための方法の例を示す。したがって、この方法は、
図4に示されるような膨張装置によって実装され、膨張装置は、第1の流量範囲内のガスフローを出力するように構成された第1のポンプと、第2の流量範囲内のガスフローを出力するように構成された第2のポンプとを含み、第1の範囲は第2の範囲よりも高い流量を含む。一部の実施形態では、膨張装置10は、制御ユニット130が当該方法を実行することを可能にするためのコンピュータプログラムコードを含み得ることが理解されよう。
【0080】
最初のステップS702では、カフのために要求される流量が決定され得る。要求される流量は特定のカフについて事前に設定されていてもよいが、他の実施形態では、カフのための圧力変化率およびコンプライアンス値の少なくとも一方に基づいて決定されてもよい。この情報(要求される流量、カフの圧力変化率、および/またはコンプライアンス値)は、外部デバイス(例えばリモートコンピュータまたはリモートメモリ)から膨張装置10の制御ユニット130で受け取られてもよいし、または装置のユーザによって入力されてもよい。
【0081】
ステップS703において、制御ユニット130は、要求される流量が第2の範囲内の流量よりも大きい(すなわち、第2のポンプが生成できる流量よりも大きい)か否かを決定する。要求される流量が第2の範囲内の流量よりも高いと決定された場合、方法はステップS704に進む。そうでない場合、すなわち、要求される流量が第2の範囲内の流量よりも高くないと決定された場合、方法はステップS707に進む。
【0082】
ステップS704において、制御ユニット130は、要求される流量が第1の範囲内(すなわち、第1のポンプによって生成できる流量の範囲内)であるか否かを決定する。要求される流量が第1の範囲内にあると決定された場合、方法はステップS705に進み、制御ユニット130は、要求される流量でガスフローを出力するよう第1のポンプを制御する。そうでなく、要求される流量が第1の範囲内にないと判定された場合、制御ユニット130はステップS706において、可能であれば、要求される流量のガスフローを集合的に出力するように第1のポンプおよび第2のポンプを制御する(すなわち、第1のポンプおよび第2のポンプの両方が有効にされる)(「可能であれば」とは、第1のポンプおよび第2のポンプの組み合わせられた出力流量が要求される流量と等しくなり得るならば、という意味である)。そうでなければ、それぞれの最大流量で出口にそれぞれのガスフローを出力するよう第1のポンプおよび第2のポンプを制御する。
【0083】
ステップS707において、制御ユニット130は、要求される流量でガスフローを出力するよう第2のポンプを制御する。
【0084】
一部の実施形態では、要求される流量は時間とともに変化するので(コンプライアンスは圧力の関数として変化するので)、ポンプによって提供される流量を要求される流量に調整するために、
図7の方法がフィードバックループの態様で繰り返し実行されてもよい。
【0085】
したがって、この具体的方法では、膨張に基づくNIBP測定装置のインフレータブルカフへの要求される流量は、第1のポンプおよび第2のポンプの少なくとも一方を有効にし、有効化されたポンプの流量を制御することにより達成される。
【0086】
したがって、ポンプの部品を変更したり、複雑な制御技術を実装したりする必要なく、広範囲の異なるカフサイズおよび材料に適合するように、かつ/または、振動アーチファクトの誘発を防ぐように、所望の流量に従ってカフを膨張させることを可能にする膨張に基づくNIBP測定装置のための膨張装置およびそのような膨張装置の作動方法が提供される。さらに、膨張装置には2つ以上のポンプが設けられているため、例えば、故障したポンプが修理されるまで装置内の他のポンプを有効にすることにより、ポンプの停止に関する問題を回避することができる。
【0087】
本発明は、図面および上記において詳細に図示および記載されているが、かかる図示および記載は説明的または例示的であり、非限定的であると考えられるべきである。本発明は、開示の実施形態に限定されない。
【0088】
開示の実施形態の変形例が、図面、開示、および添付の特許請求の範囲から、クレームされる発明に係る当業者によって理解および実施され得る。特許請求の範囲において、「含む」という用語は他の要素またはステップを排除するものではなく、単数形は複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが請求項に記載される複数のアイテムの機能を果たし得る。複数の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、これらの手段の組み合わせが好適に使用することができないとは限らない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共にまたは他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体またはソリッドステート媒体等の適切な媒体上で記憶および/または分配されてもよいし、インターネットまたは他の有線若しくは無線テレコミュニケーションシステムを介して等の他の形態で分配されてもよい。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。