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特許6998466クエン酸シンターゼの活性が弱化された変異型ポリペプチド及びそれを用いたL-アミノ酸生産方法
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  • 特許-クエン酸シンターゼの活性が弱化された変異型ポリペプチド及びそれを用いたL-アミノ酸生産方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】クエン酸シンターゼの活性が弱化された変異型ポリペプチド及びそれを用いたL-アミノ酸生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20220128BHJP
   C12N 9/10 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220128BHJP
   C12P 13/04 20060101ALI20220128BHJP
   C12P 13/08 20060101ALI20220128BHJP
   C12P 13/12 20060101ALI20220128BHJP
   C12P 13/06 20060101ALI20220128BHJP
   C12R 1/15 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12N15/54
C12N9/10 ZNA
C12N15/31
C12N1/21
C12P13/04
C12P13/08 A
C12P13/08 C
C12P13/12 A
C12P13/06 E
C12P13/06 C
C12R1:15
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020538107
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2019001697
(87)【国際公開番号】W WO2019160301
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0017400
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12154P
(73)【特許権者】
【識別番号】508139664
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CHEILJEDANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】CJ Cheiljedang Center,330,Dongho-ro,Jung-gu,Seoul,Republic Of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チェウォン
(72)【発明者】
【氏名】リ,カン ウ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨン ウク
(72)【発明者】
【氏名】リ,イムサン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0280542(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0214211(US,A1)
【文献】VAN OOYEN, J. et al., Improved L-Lysine Production WithCorynebacterium glutamicum and SystemicInsight Into Citrate Synthase Flux and Activity. Biotechnology and Bioengineering (2012), Vol.109, No.8, pp.2070-2081
【文献】 EIKMANNS, B. et al., Nucleotide sequence, expression and transcriptional analysis of the Corynebacterium glutamicum gltA gene encoding citrate synthase. Microbiology (1994), Vol.140, pp.1817-1828
【文献】KISPAL, G. et al., Metabolic Studies on Citrate Synthase Mutants of Yeast: A change in phenotype following transformation with an inactive enzyme. Journal of Biological Chemistry (1989), Vol.264, No.19, pp.11204-11210
【文献】AYED, A. et al., A stable intermediate in the equilibrium unfoldingof Escherichia coli citrate synthase. Protein Science (1999), Vol.8, pp.1116-1126
【文献】QUANDT, E.M. et al., Fine-tuning citrate synthase flux potentiates and refines metabolic innovation in the Lenski evolution experiment. eLife (2015), Vol.4, document No.e09696, pp.1-22
【文献】SHIIO, I. et al., Production of Aspartic Acid and Lysine by Citrate Synthase Mutants of Brevibacterium flavum. Agric. Biol. Chem. (1982), Vol.46, No.1, pp.101-107
【文献】BAUMGART, M. et al., Deletion of the Aconitase Gene in Corynebacterium glutamicum Causes Strong Selection Pressure for Secondary Mutations Inactivating Citrate Synthase. Journal of Bacteriology (2011), Vol.193, No.24, pp.6864-6873
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギン(asparagine)がアルギニン、プロリン、ロイシン、トレオニン、セリン、またはチロシンで置換されたクエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性を有する、変異型ポリペプチド。
【請求項2】
前記241番目のアスパラギンは、トレオニン(Threonine)、セリン(Serine)またはチロシン(Tyrosine)で置換される、請求項1に記載の変異型ポリペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載の変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1に記載の変異型ポリペプチドを含み、クエン酸シンターゼ活性を有する野生型ポリペプチドを含まない、コリネバクテリウム属(Corynebacteriumsp.)微生物。
【請求項5】
前記コリネバクテリウム属微生物は、L-アミノ酸を生産する、請求項4に記載のコリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物。
【請求項6】
前記コリネバクテリウム属微生物は、アスパラギン酸由来のL-アミノ酸を生産する、請求項4に記載のコリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物。
【請求項7】
前記コリネバクテリウム属微生物は、リジン、トレオニン、メチオニン、ホモセリンまたはその誘導体、及びイソロイシンからなる群から選択される1種以上のL-アミノ酸を生産する、請求項4に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項8】
前記コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)である、請求項4に記載のコリネバクテリウム属微生物。
【請求項9】
請求項4に記載の微生物を培地で培養する段階;及び
前記培養された微生物または培地からL-アミノ酸を回収する段階を含む、L-アミノ酸の生産方法。
【請求項10】
前記L-アミノ酸は、アスパラギン酸由来のL-アミノ酸である、請求項9に記載のL-アミノ酸の生産方法。
【請求項11】
前記L-アミノ酸は、リジン、トレオニン、メチオニン、ホモセリンまたはその誘導体、及びイソロイシンからなる群から選択される1種以上である、請求項9に記載のL-アミノ酸の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、クエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性が弱化された変異型ポリペプチド及びそれを用いてL-アミノ酸を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物、特に、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)は、L-アミノ酸及びその他の有用物質の生産に多く利用されているグラム陽性の微生物である。上記L-アミノ酸及びその他の有用物質を生産するために、高効率生産微生物及び発酵工程技術の開発のための様々な研究が行われている。例えば、L-リジン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を増加させたり、または生合成に不要な遺伝子を除去することのような目的物質特異的接近方法が主に用いられている(大韓民国登録特許第10-0838038号(特許文献1))。
【0003】
一方、L-アミノ酸の中でL-リジン、L-トレオニン、L-メチオニン、L-イソロイシン、L-グリシンは、アスパラギン酸由来のアミノ酸であり、アスパラギン酸の前駆体であるオキザロ酢酸(oxaloacetate)の合成水準が上記L-アミノ酸の合成水準に影響を与えうる。
【0004】
クエン酸シンターゼ(Citrate synthase; CS)は、微生物の解糖過程で生成されるアセチルCoAとオキザロ酢酸を重合してクエン酸を生成する酵素であり、また、TCA経路への炭素流入を決定する重要な酵素である。
【0005】
クエン酸シンターゼをコードするgltA遺伝子欠損によるL-リジン生産菌株のphenotypeの変化に関する内容は、先行文献に報告されている(Ooyen et al., Biotechnol. Bioeng., 109(8):2070-2081, 2012(非特許文献1))。しかし、gltA遺伝子欠損菌株の場合、菌株の生長が阻害されるだけでなく、糖消費速度が大幅に減少し、単位時間当たりのリジン生産量が低い欠点がある。したがって、効果的なL-アミノ酸の生産能の増加及び菌株の生長を共に考慮した研究が依然として必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国登録特許第10-0838038号公報
【文献】大韓民国登録特許第10-0924065号公報
【文献】大韓民国特許第2009-0094433号公報
【文献】大韓民国登録特許第10-0159812号公報
【文献】大韓民国登録特許第10-0073610号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Ooyen et al., Biotechnol. Bioeng., 109(8):2070-2081, 2012
【文献】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444
【文献】EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16:276-277
【文献】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443-453
【文献】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12:387 (1984)
【文献】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]:403 (1990)
【文献】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【文献】[CARILLO ETA/.](1988)SIAM J Applied Math 48:1073
【文献】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981)2:482
【文献】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)
【文献】Gribskov et al(1986)Nucl. Acids Res. 14:6745
【文献】J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989;
【文献】F.M. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York
【文献】Sambrook et al., supra, 9.50-9.51, 11.7-11.8
【文献】Van der Rest et al., Appl. Microbiol. Biotecnol. 52:541-545, 1999
【文献】Binder et al. Genome Biology, 2012, 13:R40
【文献】R. Winkels, S. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 45, 612-620, 1996
【文献】S. Morbach et al., Appl. Enviro. Microbiol., 62(12):4345-4351, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特定の水準にクエン酸シンターゼ活性を弱化させた新規な変異型ポリペプチドを利用する場合、菌株の成長速度の遅延なしにL-アミノ酸の生産量が増加することを確認することにより、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の一つの目的は、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギン(asparagine)が他のアミノ酸で置換されたクエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性を有する、変異型ポリペプチドを提供することにある。
【0010】
本出願の他の目的は、前記変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することにある。
【0011】
本出願の他の目的は、前記変異型ポリペプチドを含む、アスパラギン酸由来のL-アミノ酸を生産するコリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物を提供することにある。
【0012】
本出願の他の目的は、前記コリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階; 上記培養された微生物または培地からL-アミノ酸を回収する段階を含む、L-アミノ酸の生産方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0013】
本出願のクエン酸シンターゼ活性を弱化させた新規な変異型ポリペプチドを利用する場合、成長速度の遅延なしにアスパラギン酸由来のL-アミノ酸の生産量をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】gltA遺伝子欠損及び変異導入菌株の生長曲線を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これを具体的に説明すると次の通りである。一方、本出願で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本出願で開示された様々な要素の全ての組み合わせが本出願のカテゴリに属する??。また、下記記述された具体的な叙述により、本出願のカテゴリが制限されるとは見られない。
【0016】
上記目的を達成するための本出願の一つの態様は、配列番号1のアミノ酸配列において1つ以上の変異を含み、前記変異は、241番目のアスパラギン(asparagines)が他のアミノ酸で置換されたものを含む、クエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性を有する、変異型ポリペプチドを提供することである。
【0017】
具体的には、上記変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギンが他のアミノ酸で置換された、クエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性を有する、変異型ポリペプチドと記載することができる。
【0018】
本出願において、上記配列番号1は、クエン酸シンターゼ活性を有するアミノ酸配列を意味する。具体的には、gltA遺伝子によりコードされるクエン酸シンターゼ活性を有するタンパク質配列である。上記配列番号1のアミノ酸配列は、公知となったデータベースであるNCBIのGenBankからその配列を得ることができる。一例として、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)由来であってもよいが、これに制限されず、上記アミノ酸配列と同一な活性を有する配列は制限なく含むことができる。また、配列番号1のアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含むことができるが、これに制限されるものではない。具体的には、上記アミノ酸配列は、配列番号1及び前記配列番号1と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。また、そのような相同性または同一性を有し、上記タンパク質に相応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、本出願で使用され得ることは自明である。
【0019】
即ち、本出願において「特定の配列番号で記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質またはポリペプチド」、「特定の配列番号で記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質またはポリペプチド」と記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同一あるいは相応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、本出願で使用され得ることは自明である。例えば、「配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド」とは、それと同一あるいは相応する活性を有する場合であれば、「配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド」に属し得ることは自明である。また、本出願の変異型ポリペプチドと同一もしくは相応する活性を有する場合であれば、特定の活性を付与する前記241番目の変異またはそれに相応する位置の変異以外に、当該配列番号のアミノ酸配列前後の無意味な配列の追加または自然に発生し得る突然変異、あるいはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除くことではなく、そのような配列の追加、あるいは突然変異を有する場合でも、本願の範囲内に属することが自明である。
【0020】
本出願における用語「相同性(homology)」または「同一性(identity)」とは、2個の与えられたアミノ酸配列または塩基配列に関連する程度を意味し、パーセンテージで表示することができる。用語、相同性及び同一性は、しばしば相互交換的に利用することができる。
【0021】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列相同性または同一性は、標準配列アルゴリズムにより決定され、使用されるプログラムにより確立されたデフォルトのギャップペナルティが共に利用されてもよい。実質的には、相同性を有するか(homologous)、または同一な(identical)配列は、一般的に、配列全体または全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%により、中間または高い厳しい条件(stringent conditions)でハイブリッドすることができる。ハイブリッド化は、ポリヌクレオチドにおいてコドンの代わりに縮退コドンを含有するポリヌクレオチドも考慮される。
【0022】
任意の2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]:2444(非特許文献2)でのようなデフォルトのパラメータを使用して「FASTA」プログラムのような公知となったコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16:276-277(非特許文献3))(バージョン5.0.0またはそれ以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443-453(非特許文献4))が使用されて決定されることができる。(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12:387 (1984)(非特許文献5)), BLASTP, BLASTN, FASTA (Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]:403 (1990)(非特許文献6); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994(非特許文献7), 及び [CARILLO ETA/.](1988)SIAM J Applied Math 48:1073(非特許文献8)を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0023】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981)2:482(非特許文献9) に公知となっているように、例えば、Needleman et al. (1970), J Mol Biol.48 :443(非特許文献4)のようなGAPコンピュータプログラムを利用して配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列中、より短いものにおける記号の全体数で類似の配列された記号(即ち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトのパラメータは、(1)一進法比較マトリックス(同一性のために1そして非同一性のために0の値を含有する)及びSchwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)(非特許文献10)により開示されたように、Gribskov et al(1986)Nucl. Acids Res. 14:6745(非特許文献11)の加重された比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス); (2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5); 及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。
【0024】
また、任意の2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、定義された厳しい条件の下でサザン混成化実験により配列を比較することにより確認することができ、定義される適切な混成化条件は、当該技術の範囲内であり、当業者においてよく知られている方法(例えば、J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989(非特許文献12); F.M. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York(非特許文献13))で決定することができる。
【0025】
本出願における用語、「変異型ポリペプチド」とは、一つ以上のアミノ酸が保存的置換(conservative substitution)及び/または変形 (modification) において、上記列挙された配列(the recited sequence)と相違するが、前記ポリペプチドの機能(functions)または特性(properties)が維持されるポリペプチドを指す。変異型ポリペプチドは、数個のアミノ酸の置換、欠失または付加により識別される配列(identified sequence)と異なる。このような変異型は、一般に、上記ポリペプチド配列中の一つを変形し、前記変形されたポリペプチドの特性を評価して識別することができる。即ち、変異型の能力は、本来のタンパク質(native protein)に比べて増加したり、変わらなかったり、または減少されうる。このような変異型は、一般に、上記ポリペプチド配列中の一つを変形し、変形されたポリペプチドの反応性を評価して識別することができる。また、一部の変異型は、N末端リーダー配列または膜貫通ドメイン(transmembrane domain)のような1つ以上の部分が除去された変異型を含むことができる。他の変異型は、成熟タンパク質(mature protein)のN及び/またはC末端から一部分が除去された変異型を含むことができる。上記用語「変異型」とは、変異体、変形、変異されたタンパク質、変異型ポリペプチド、変異、などの用語(英語表現では、modification、modified protein、modified polypeptide、mutant、mutein、divergent、variantなど)が使用されてもよく、変異された意味として使用される用語であれば、これに制限されない。
【0026】
本出願における用語「保存的置換(conservative substitution)」とは、あるアミノ酸を類似の構造的及び/または化学的性質を有する他のアミノ酸で置換させることを意味する。上記変異型は、一つ以上の生物学的活性を依然として保有しながら、例えば、一つ以上の保存的置換を有することができる。このようなアミノ酸置換は、一般に、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性(amphipathic nature)における類似性に基づいて発生することができる。例えば、電荷を帯びた側鎖(electrically charged amino acid)を有するアミノ酸中、正に荷電された(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを、負に荷電された(酸性)アミノ酸は、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含み; 電荷を帯びない側鎖(uncharged amino acid)を有するアミノ酸中、非極性アミノ酸(nonpolar amino acid)は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリンを含み、極性(polar)または親水性(hydrophilic)アミノ酸は、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミンを含み、前記非極性アミノ酸中、芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンを含む。
【0027】
また、変異型は、ポリペプチドの特性と二次構造に最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加を含むことができる。例えば、ポリペプチドは、翻訳と同時に(co-translationally)または翻訳後に(post-translationally)タンパク質の移転(transfer)に関与するタンパク質N末端のシグナル(またはリーダー)配列とコンジュゲートすることができる。また、前記ポリペプチドは、ポリペプチドを確認し、精製し、または合成することができるように、他の配列またはリンカーとコンジュゲートすることができる。
【0028】
本出願の変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において1つ以上の変異を含み、241番目のアスパラギンが他のアミノ酸で置換されたものを含む、配列番号1のアミノ酸配列に比べて弱化されたクエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性を有する、変異型ポリペプチドであってもよい。上記変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギンが他のアミノ酸で置換された、配列番号1のアミノ酸配列に比べて弱化されたクエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性を有する、変異型ポリペプチドと記載することができる。
【0029】
上記「他のアミノ酸で置換」とは、置換前のアミノ酸と異なるアミノ酸であれば制限されない。即ち、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアミノ酸が他のアミノ酸で置換される場合、上記他のアミノ酸は、アスパラギン(asparagine)以外のアミノ酸であれば制限されない。
【0030】
本出願の変異型ポリペプチドは、変異前のポリペプチド、天然の野生型ポリペプチドまたは非変形ポリペプチドに比べてクエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性が減少または弱化されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0031】
具体的には、本出願の変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギン(asparagine)がグリシン(glycine)、アラニン(alanine)、アルギニン(arginine)、アスパラギン酸(aspartate)、システイン(cysteine)、グルタミン酸(glutamate)、グルタミン(glutamine)、ヒスチジン(histidine)、プロリン(proline)、セリン(serine)、チロシン(tyrosine)、イソロイシン(isoleucine)、ロイシン(leucine)、リジン(lysine)、トリプトファン(tryptophan)、バリン(valine)、メチオニン(methionine)、フェニルアラニン(phenylalanie)、またはトレオニン(threonine)で置換された、変異型配列であってもよい。より具体的には、上記変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギン(asparagine)がリジン以外の他のアミノ酸で置換された、変異型ポリペプチドであってもよいが、これに制限されない。または上記変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギン(asparagine)が酸性アミノ酸及び塩基性アミノ酸以外の他のアミノ酸で置換されたり、電荷を帯びない側鎖(uncharged amino acid)を有するアミノ酸で置換された、変異型配列であってもよいが、これに制限されない。または上記変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギン(asparagine)が非極性アミノ酸または親水性アミノ酸で置換された変異型配列であってもよく、具体的には、芳香族アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)または親水性アミノ酸(例えば、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、アスパラギン、グルタミン)で置換された、変異型配列であってもよいが、これらに制限されない。より具体的には、上記変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギンがトレオニン(Threonine)、セリン(Serine)またはチロシン(Tyrosine)で置換された、クエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性が減少したものであってもよいが、これに制限されない。より具体的には、上記変異型ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギンがトレオニン(Threonine)で置換されたものであってもよいが、これに制限されない。このような変異型ポリペプチドは、配列番号1の配列に比べて弱化されたクエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性を有する。上記配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアミノ酸が他のアミノ酸で置換された変異型ポリペプチドは、241番目に相応する位置のアミノ酸が他のアミノ酸で置換された変異型ポリペプチドを含むことは自明である。
【0032】
具体的には、上記変異型ポリペプチド中、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギンが他のアミノ酸で置換された変異型ポリペプチドは、配列番号3、59、61からなるものであってもよく、より具体的には、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギンがトレオニン(Threonine)、セリン(Serine)またはチロシン(Tyrosine)で置換された変異型ポリペプチドは、それぞれ配列番号3、59、61からなるものであってもよいが、これに制限されない。また、前記変異型ポリペプチドは、配列番号3、59、61のアミノ酸配列又はこれと80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むことができるが、これに制限されるものではない。具体的には、本出願の上記変異型ポリペプチドは、配列番号3、59、61及び前記配列番号3、59、61と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有するポリペプチドを含むことができる。また、これらの相同性を有し、上記タンパク質に相応する効能を示すアミノ酸配列であれば、241番目の位置のアミノ酸配列以外に、一部の配列が欠失、変形、置換、または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も本出願の範囲内に含まれることは自明である。
【0033】
本出願の用語「クエン酸シンターゼ(Citrate synthase; CS)」とは、微生物の解糖過程で生成されるアセチルCoAとオキザロ酢酸を重合してクエン酸を生成する酵素であり、TCA経路への炭素流入を決定する重要な酵素である。具体的には、クエン酸合成酵素としてTCA回路の最初の段階で速度調節の役割をする。また、前記酵素は、アセチルCoAと4-炭素オキザロ酢酸の分子からの2-炭素アセテート残基の縮合反応を触媒し、6-炭素アセテートを形成する。本出願において、上記クエン酸シンターゼは、クエン酸合成酵素、Citrate synthaseまたはCSで混用することができる。
【0034】
本出願の他の一つの態様は、上記変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することである。
【0035】
本出願における用語、「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチド単量体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)で、一定の長さ以上のDNAまたはRNA鎖であり、より具体的には、上記変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド断片を意味する。
【0036】
本出願の変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本出願の弱化されたクエン酸シンターゼ活性を有する変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であれば制限なく含むことができる。本出願において、上記クエン酸シンターゼポリペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子はgltA遺伝子であり、具体的には、コリネバクテリウム・グルタミクム由来であってもよいが、これに制限されない。
【0037】
本出願のポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)により、または前記ポリペプチドを発現させようとする生物で好まれるコドンを考慮し、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない範囲内で、コード領域に多様な変形が行われてもよい。具体的には、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアミノ酸が他のアミノ酸で置換された変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であれば制限なく含むことができる。例えば、本出願のポリヌクレオチドは、本出願の変異型ポリペプチド、具体的には、上記配列番号3、59、61のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそれと相同性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であってもよいが、これに制限されるものではない。より具体的には、配列番号4、60、62と記載されたポリヌクレオチド配列で構成されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
また、公知となった遺伝子配列から調製されるプローブ、例えば、上記塩基配列の全体または一部に対する相補配列と厳しい条件の下でハイブリッド化し、配列番号1のアミノ酸配列の配列において241番目のアミノ酸が他のアミノ酸で置換された変異型ポリペプチドの活性を有するタンパク質をコードする配列であれば制限なく含むことができる。
【0039】
上記「厳しい条件」とは、ポリヌクレオチド間の特異的混成化を可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(例えば、J. Sambrook et al., 同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性が高い遺伝子同士、40%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には97%以上、特に具体的には99%以上の相同性を有する遺伝子同士ハイブリッド化し、それより相同性が低い遺伝子同士ハイブリッド化しない条件、または通常のサザンハイブリッド化の洗浄条件である60℃、1× SSC、0.1%SDS、具体的には、60℃、0.1× SSC、0.1% SDS、より具体的には、68℃、0.1× SSC、0.1%SDSに相応する塩濃度及び温度で、1回、具体的には、2回~3回洗浄する条件を列挙することができる。しかし、これに制限されるものではなく、その目的に応じて当業者により適切に調節することができる。
【0040】
混成化は、たとえ混成化の厳密度に応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であるとしても、2つのポリヌクレオチドが相補的配列を有することを要求する。用語、「相補的」とは、互いに混成化が可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するために使用される。例えば、DNAに関して、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願はまた、実質的に類似したポリヌクレオチド配列だけでなく、全体の配列に相補的な単離されたポリヌクレオチド断片を含むことができる。
【0041】
具体的には、相同性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値で混成化段階を含む混成化条件を使用し、上述した条件を使用して探知することができる。また、前記Tm値は60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに制限されるものではなく、その目的に応じて、当業者により適切に調節することができる。
【0042】
ポリヌクレオチドを混成化する適切な厳密度は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野においてよく知られている(Sambrook et al., supra, 9.50-9.51, 11.7-11.8(非特許文献14)参照)。
【0043】
本出願の他の一つの態様は、上記変異型ポリペプチドを含む、微生物を提供することである。具体的には、上記変異型ポリペプチドを含むL-アミノ酸を生産するコリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物を提供することである。より具体的には、上記変異型ポリペプチドを含む、アスパラギン酸由来のL-アミノ酸を生産するコリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)微生物を提供することである。例えば、上記微生物は、変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換された微生物を提供するものであってもよいが、これに制限されない。
【0044】
上記変異型ポリペプチドを含む微生物は、野生型ポリペプチドを含む微生物に比べて微生物の生育阻害または糖消費速度を阻害することなくL-アミノ酸の生産能が向上するため、これらの微生物からL-アミノ酸を高収率で得ることができる。具体的には、上記変異型ポリペプチドを含む微生物はクエン酸シンターゼの活性を調節することにより、TCA経路への炭素の流れとL-アミノ酸生合成の前駆体として使用されるオキザロ酢酸供給量との間の適切なバランスを取り、その結果としてL-アミノ酸の生産量を増加させることができると解釈できるが、これに制限されるものではない。
【0045】
本出願における用語「L-アミノ酸」とは、アミン基(amine functional group)とカルボキシル基(carboxyl functional group)を有する有機化合物であり、具体的にはα-アミノ酸、またはL-型の立体異性体の形態であるアミノ酸であってもよく、上記L-アミノ酸は、アスパラギン(asparagine)、グリシン(glycine)、アラニン(alanine)、アルギニン(arginine)、アスパラギン酸(aspartate)、システイン(cysteine)、グルタミン酸(glutamate)、グルタミン(glutamine)、ヒスチジン(histidine)、プロリン(proline)、セリン(serine)、チロシン(tyrosine)、イソロイシン(isoleucine)、ロイシン(leucine)、リジン(lysine)、トリプトファン(tryptophan)、バリン(valine)、メチオニン(methionine)、フェニルアラニン(phenylalanie)、またはトレオニン(threonine)であってもよく、また、L-アミノ酸の前駆体としてα-アミノ酸であるL-ホモセリンまたはその誘導体であってもよく、しかし、これらに制限されるものではない。上記L-ホモセリン誘導体は、例えば、O-アセチルホモセリン、O-スクシニルホモセリン、及びO-ホスホホモセリンからなる群から選択される1種以上を含むものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0046】
本出願における用語「アスパラギン酸(Aspartic acid)」とは、タンパク質の生合成に使用されるα-アミノ酸であり、アスパテートと混用されてもよい。一般に、アスパラギン酸は、その前駆体であるオキザロ酢酸から生成された後、生体内でL-リジン、L-メチオニン、L-ホモセリンまたはその誘導体、L-トレオニン、L-イソロイシンなどに変換することができる。
【0047】
本出願における用語「アスパラギン酸由来のL-アミノ酸」とは、アスパラギン酸(Aspartic acid)を前駆体として生合成する物質を意味し、アスパラギン酸を前駆体とし、生合成過程を通じて生産する物質であれば制限されない。上記アスパラギン酸由来のL-アミノ酸は、アスパラギン酸由来のL-アミノ酸だけでなく、その誘導体も含むことができる。例えば、L-リジン、L-トレオニン、L-メチオニン、L-グリシン、ホモセリンまたはその誘導体(O-アセチルホモセリン、O-スクシニルホモセリン、O-ホスホホモセリン)、L-イソロイシン、及び/またはカダベリンであり得るが、これらに制限されない。具体的には、L-リジン、L-トレオニン、L-メチオニン、ホモセリンまたはその誘導体、及び/またはL-イソロイシンであってもよく、より具体的には、L-リジン、L-トレオニン、及び/またはL-イソロイシンであってもよいが、これに制限されない。
【0048】
上記用語「ベクター」とは、適切な宿主内で目的タンパク質を発現させるように、適切な調節配列に作動可能に連結された上記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA製造物を意味する。上記調節配列は、転写を開始するプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含むことができる。ベクターは、適切な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムとは無関係に複製または機能することができ、ゲノムそのものに統合することができる。
【0049】
本出願で使用されるベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば、特に制限されず、当業界において知られている任意のベクターを利用することができる。通常使用されるベクターの例としては、天然の状態であるか、組換えられた状態のプラスミド、コスミド、ウイルス及びバクテリオファージを挙げることができる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとしてpWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを使用することができ、プラスミドベクターとしてpBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系及びpET系などを使用することができる。具体的には、pDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを使用することができる。
【0050】
本出願で使用可能なベクターは、特に制限されるものではなく、公知となった発現ベクターを使用することができる。また、細胞内の染色体挿入用ベクターを通じて染色体内に目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入することができる。上記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界において知られている任意の方法、例えば、相同組換えにより行われてもよいが、これに限定されない。上記染色体挿入有無を確認するための選択マーカー(selection marker)をさらに含むことができる。選択マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選択、即ち、目的ポリヌクレオチド分子の挿入有無を確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが使用されてもよい。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選択マーカーを発現する細胞のみが生存したり、または他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。
【0051】
本出願における用語「形質転換」とは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入して宿主細胞内で上記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現させることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現できさえすれば、宿主細胞の染色体に挿入されて位置するか、染色体外に位置するかに関係なく、これらの両方を含むことができる。また、前記ポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含む。上記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、如何なる形態で導入されるものであれ構わない。例えば、上記ポリヌクレオチドは、それ自体で発現されるのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されてもよい。上記発現カセットは、通常、上記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含むことができる。上記発現カセットは、それ自体の複製が可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されていてもよいが、これに限定されない。上記形質転換する方法は、ポリヌクレオチドを細胞内に導入する如何なる方法も含まれ、宿主細胞に応じて当分野において公知となったように、適切な標準技術を選択して行うことができる。例えば、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(Ca(H2PO42、CaHPO4、またはCa3(PO42)沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)沈殿、微細注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE-デキストラン法、カチオン性リポソーム法、及び酢酸リチウム-DMSO法などがあるが、これらに制限されない。
【0052】
また、上記における用語「作動可能に連結された」とは、本出願の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプロモーター配列と、上記ポリヌクレオチド配列が機能的に連結されていることを意味する。動作可能な連結は、当業界の公知となった遺伝子組換え技術を利用して製造することができ、部位特異的DNA切断及び連結は、当業界の切断及び連結酵素などを使用して製作することができるが、これに制限されない。
【0053】
本出願で使用される用語「変異型ポリペプチドを含む微生物」とは、変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むか、または変異型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換され、変異型ポリペプチドを発現することができる宿主細胞または微生物であってもよい。上記宿主細胞または微生物は、天然の野生型または自然的または人為的に遺伝的変形が起きたものであってもよい。具体的には、本出願における前記微生物は、配列番号1のアミノ酸配列において241番目のアスパラギンが他のアミノ酸で置換され、クエン酸シンターゼ(Citrate synthase)活性を有する、変異型ポリペプチドを発現する微生物であってもよいが、これに制限されない。また、上記変異型ポリペプチドを含む微生物は、L-アミノ酸を生産する微生物であってもよい。具体的には、上記変異型ポリペプチドを含む微生物は、天然型または非変形の親株に比べてL-アミノ酸生産能が増加した微生物であり得るが、これに制限されるものではない。また、上記変異型ポリペプチドを含む微生物はアスパラギン酸由来のL-アミノ酸を生産する微生物であることができる。具体的には、上記変異型ポリペプチドを含む微生物は、天然型または非変形された親株に比べてアスパラギン酸由来のL-アミノ酸生産能が増加した微生物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0054】
前記微生物は、具体的な例として、エシェリキア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、エルウィニア(Erwinia)属、エンテロバクテリア(Enterobacteria)属、サルモネラ(Salmonella)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属またはコリネバクテリウム(Corynebacterium)属などの微生物菌株が含まれてもよい。具体的にはコリネバクテリウム属微生物であってもよい。
【0055】
上記コリネバクテリウム属微生物は、例えば、コリネバクテリウム・グルタミクム、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)などであるが、必ずしもこれに制限されるものではない。より具体的には、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0056】
前記微生物は、具体的な例として、L-リジンを生産する微生物の場合、コリネバクテリウム属微生物に3種の変異pyc、hom、lysC遺伝子がコードするタンパク質の活性が増加し、L-リジン生産能の増加したコリネバクテリウム・グルタミクムにgltA変異が導入された微生物であってもよい。
【0057】
また、L-トレオニン、L-イソロイシンを生産する微生物の場合、L-トレオニン、L-イソロイシン生合成経路の共通的中間体であるホモセリン(homoserine)を生産するホモセリンデヒドロゲナーゼ(homoserin dehydrogenase)をコードする遺伝子に変異を導入し、その活性を強化した微生物であってもよい。特に、L-イソロイシンを生産する微生物の場合、さらに、トレオニンデヒドラターゼ(L-threonine dehydratase)をコードする遺伝子に変異を導入し、その活性を強化した微生物であってもよいが、これに制限されない。したがって、本出願の目的上、L-アミノ酸を生産する微生物は、上記変異型ポリペプチドをさらに含み、目的とするL-アミノ酸の生産能が増加したものであってもよい。
【0058】
本出願のもう一つの様態として、本出願は、上記微生物を培地で培養する段階; 及び前記培養された微生物または培地からL-アミノ酸を回収する段階を含む、L-アミノ酸の生産方法を提供することである。具体的には、上記L-アミノ酸は、アスパラギン酸由来のL-アミノ酸であってもよい。
【0059】
上記方法において、当業界において公知となった最適化した培養条件及び酵素活性条件で、当業者により容易に決定することができる。具体的には、微生物の培養は、特に制限されないが、公知となった回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法などにより行うことができる。そのとき、培養条件は、特に制限されないが、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例えば、リン酸または硫酸)を使用し、適正のpH(例えば、pH5~9、具体的にはpH6~8、最も具体的にはpH6.8)を調節することができ、酸素または酸素含有ガス混合物を培養物に導入させて好気性条件を維持することができる。培養温度は20~45℃、具体的には25~40℃を維持することができ、約10~160時間培養することができるが、これらに制限されるものではない。上記培養により生産されたL-アミノ酸は、培地中に分泌されたり、細胞内に残留することができる。
【0060】
併せて、使用される培養用培地は、炭素供給源としては、糖及び炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、モラセス、澱粉及びセルロース)、 油脂及び脂肪(例えば、大豆油、ヒマワリの種油、ピーナッツ油及びココナッツ油)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸)、アルコール(例えば、グリセロール及びエタノール)及び有機酸(例えば、酢酸)などを個別に使用したり、または混合して使用することができるが、これに制限されない。窒素供給源としては、窒素含有有機化合物(例えば、ペプトン、酵母抽出液、ブイヨン、麦芽抽出液、トウモロコシ浸漬液、大豆粕粉及び尿素)、または無機化合物(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム)などを個別に使用したり、または混合して使用することができるが、これに制限されない。リン供給源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、それに相応するナトリウム含有塩などを個別に使用したり、または混合して使用することができるが、これに制限されない。また、培地には、その他の金属塩(例えば、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸及びビタミンのような必須成長促進物質を含むことができるが、これらに制限されない。
【0061】
本出願の上記培養段階で生産されたL-アミノ酸を回収する方法は、培養方法により、当該分野において公知となった適切な方法を用いて培養液から目的とするアミノ酸を収集することができる。例えば、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化及びHPLCなどが使用することができ、当該分野において公知となった適切な方法を用いて、培地または微生物から目的とするL-アミノ酸を回収することができる。
【0062】
また、前記回収段階は、精製工程を含むことができ、当該分野において公知となった適切な方法を用いて行うことができる。したがって、上記回収されるL-アミノ酸は、精製された形態またはL-アミノ酸を含有した微生物発酵液であってもよい。
【0063】
以下、本出願の実施例を通じてより詳しく説明する。しかし、これらの実施例は、本出願を例示的に説明するためのものであり、本出願の範囲がこれらの実施例に極限されるものではない。
【0064】
実施例1:gltA遺伝子ORF内変異導入用ベクターライブラリの製作
コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)のgltA遺伝子の発現量又はその活性が減衰された変異体を発掘することを目的として、以下の方法でライブラリを製作した。
【0065】
まず、gltA(1314bp)遺伝子を含むDNA断片(1814bp)のkb当り0-4.5個を変異を導入するための目的でGenemorphII Random Mutagenesis Kit(Stratagene)を使用した。コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032(WT)の染色体を鋳型とし、プライマー配列番号5及び6を用いてError-prone PCRを行った(表1)。具体的には、WT菌株の染色体(500 ng)、プライマー5及び6(それぞれ125 ng)、Mutazyme II reaction buffer(1Х)、dNTP mix(40 mM)、Mutazyme II DNA polymerase(2.5U)を含む反応液は94℃で2分間の変性後、94℃で1分間の変性、56℃で1分間のアニーリング、72℃で3分間の重合を25回繰り返した後、72℃で10分間の重合反応を行った。
【0066】
増幅された遺伝子断片は、TOPOTA Cloning Kit(Invitrogen)を用いてpCRIIベクターに連結し、大腸菌DH5αに形質転換してカナマイシン(25 mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。形質転換されたコロニーの20種を選別した後、プラスミドを取得し、塩基配列を分析した結果、0.5 mutations/kbの頻度で互いに異なる位置に変異が導入されたことを確認した。最終的には、約10,000個の形質転換された大腸菌コロニーを取り、プラスミドを抽出し、これをpTOPO-gltA(mt)ライブラリと命名した。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例2:gltA欠損株の製作及び成長速度に基づいたgltA変異株スクリーニング
野生型のコリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032においてgltA遺伝子が欠損した菌株を製作するために、以下のようにgltA遺伝子が欠損したベクターpDZ-ΔgltAを製造した。具体的には、gltA遺伝子の5'及び3'末端に位置するDNA断片が(各600bp)pDZベクター(大韓民国登録特許第10-0924065号(特許文献2))に連結された形態で製作された。報告されたgltA遺伝子の塩基配列(配列番号2)に基づいて5'断片及び3'断片に制限酵素XbaI認識部位を挿入したプライマー配列番号7及び8と、これらからそれぞれ600 bp離れた位置でプライマー配列番号9及び10を合成した(表2)。コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032の染色体を鋳型とし、5'末端遺伝子断片は、プライマー配列番号7及び9を用いてPCRを通じて製作した。同様な方法で、gltA遺伝子の3'末端に位置する遺伝子断片は、配列番号8及び10を用いてPCRを通じて製作した。PCR条件は、94℃で2分間の変性後、94℃で1分間の変性、56℃で1分間のアニーリング、72℃で40秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で10分間の重合反応を行った。
【0069】
一方、制限酵素XbaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDZベクターと上記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片をInfusion Cloning Kitを使用して連結した後、大腸菌DH5αに形質転換し、カナマイシン(25 mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。プライマー配列番号7及び8を用いたPCRを通じて目的の遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得し、そのプラスミドをpDZ-ΔgltAと命名した。
【0070】
【表2】
【0071】
上記製作されたベクターpDZ-ΔgltAをコリネバクテリウム・グルタミクムATCC13032に電気パルス法(Van der Rest et al., Appl. Microbiol. Biotecnol. 52:541-545, 1999(非特許文献15))で形質転換し、相同染色体の組換えによりgltA遺伝子が欠損した菌株を作製した。このように、gltA遺伝子が欠損した菌株をコリネバクテリウム・グルタミクムWT ::ΔgltAと命名した。
【0072】
また、WT ::ΔgltA菌株を対象に、pTOPO-gltA(mt)ライブラリを電気パルス法で形質転換し、カナマイシン(25 mg/l)が含まれた複合平板培地に塗抹し、約500個のコロニーを確保した。確保されたコロニーをそれぞれ200 uLの種培地が含まれた96ウェルプレートに接種し、32℃、1000rpmで約9時間培養した。
【0073】
<複合平板培地(pH7.0)>
グルコース10g、ペプトン10g、Beef extract 5g、酵母エキス5g、Brain Heart Infusion 18.5g、NaCl 2.5g、尿素2g、Sorbitol 91g、寒天20g(蒸留水1リットル基準)
【0074】
<種培地(pH7.0)>
グルコース20g、ペプトン10g、酵母エキス5g、尿素1.5g、KH2PO4 4g、K2HPO4 8g、MgSO4・7H2O 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl 1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチン酸アミド2000μg(蒸留水1リットル基準)
【0075】
培養中の細胞の成長は、UV-スペクトロフォトメーターマイクロ-リーダー(UV-spectrophotometer micro-reader、Shimazu)を用いてモニタリングした(図1)。WT及びWT ::ΔgltA菌株を対照区として用いた。野生型であるWT菌株に比べて菌体量が少ないながらWT ::ΔgltA菌株より成長速度が高く維持される菌株3種を選別した。上記選別された3種の菌株は、WT ::gltA(mt)-1~3と命名した。その他497種のコロニーは、対照区として用いられたWT及びWT ::ΔgltA菌株と類似し、または増加された菌体量を有したり、あるいは遅い成長速度を示した。
【0076】
実施例3:gltA変異株3種の塩基配列の確認
3種の選別菌株WT ::gltA(mt)-1~3のgltA遺伝子塩基配列を確認するために、実施例1に明示されたプライマーを(配列番号5及び6)用いて染色体内のgltA遺伝子を含むDNA断片をPCR増幅した。PCR条件は、94℃で2分間の変性後、94℃で1分間の変性、56℃で1分間のアニーリング、72℃で40秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で10分間の重合反応を行った。
【0077】
増幅された遺伝子の塩基配列を分析した結果、3種の菌株は、共通に、gltA遺伝子ORFの開始コドンから下位721~723bpの間に位置する塩基配列に1~2個の変異が導入されたことを確認した。即ち、WT ::gltA(mt)-1~3菌株は、721~723番目の塩基配列が、既存のAACからACCもしくはACTに変わった、N末端から241番目のアミノ酸であるアスパラギンがトレオニンで置換された形態のクエン酸シンターゼ(CS)変異体であることを確認した。
【0078】
実施例4:gltA遺伝子の241番目のアミノ酸であるアスパラギンが他のアミノ酸で置換された様々な菌株の製作
上記アミノ酸配列1において241番目のアミノ酸の位置に、野生型が有するアスパラギンを除く他のproteogenicアミノ酸への置換を試みた。
【0079】
実施例3で確認した変異であるN241Tを含む19種の異種性塩基置換変異を導入するために、それぞれの組換えベクターを下記の方法で作製した。
【0080】
まず、WT菌株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、gltA遺伝子の721~723番目の位置から前後にそれぞれ約600bp離れた位置に5'断片及び3'断片に制限酵素XbaI認識部位を挿入したプライマー配列番号11及び12を合成した。19種の異種性塩基置換変異を導入するために、gltA遺伝子の721~723番目の塩基配列を置換するためのプライマー配列番号13~48を合成した(表3)。
【0081】
具体的には、pDZ-gltA(N241A)プラスミドは、gltA遺伝子の5'及び3'末端に位置するDNA断片が(各600bp)pDZベクター(大韓民国特許第2009-0094433号(特許文献3))に連結された形態で製作された。WT菌株の染色体を鋳型とし、5'末端の遺伝子断片は、プライマー配列番号11及び13を用いてPCRを通じて製作した。PCR条件は、94℃で2分間の変性後、94℃で1分間の変性、56℃で1分間のアニーリング、72℃で40秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で10分間の重合反応を行った。同様な方法で、gltA遺伝子の3'末端に位置する遺伝子断片は、配列番号12及び14を用いてPCRを通じて製作した。増幅されたDNA断片をQuiagen社のPCR Purification kitを使用して精製した後、ベクターを作成するための挿入DNA断片として使用した。
【0082】
一方、制限酵素XbaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDZベクターと上記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片をInfusion Cloning Kitを使用して連結した後、大腸菌DH5αに形質転換した。上記菌株をカナマイシン(25mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。プライマー配列番号11及び12を用いたPCRを使用して目的の遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得した。上記プラスミドはpDZ-gltA(N241A)と命名した。
【0083】
同様な方法で、プライマー配列番号11及び15、12及び16を利用してpDZ-gltA(N241V)、プライマー配列番号11及び17、12、及び18を利用してpDZ-gltA(N241Q)、プライマー配列番号11及び19、12及び20を利用してpDZ-gltA(N241H)、プライマー配列番号11及び21、12及び22を利用してpDZ-gltA(N241R)、プライマー配列番号11及び23、12及び24を利用してpDZ-gltA(N241P)、プライマー配列番号11及び25、12及び26を利用してpDZ-gltA(N241L)、プライマー配列番号11及び27、12及び28を利用してpDZ-gltA(N241Y)、プライマー配列番号11及び29、12及び30を利用してpDZ-gltA(N241S)、プライマー配列番号11及び31、12及び32を利用してpDZ-gltA(N241K)、プライマー配列番号11及び33、12及び34を利用してpDZ-gltA(N241M)、プライマー配列番号11及び35、12及び36を利用してpDZ-gltA(N241I)、プライマー配列番号11及び37、12及び38を利用してpDZ-gltA(N 241E)、プライマー配列番号11及び39、12及び40を利用してpDZ-gltA(N241D)、プライマー配列番号11及び41、12及び42を利用してpDZ-gltA(N241G)、プライマー配列番号11及び43、12及び44を利用してpDZ-gltA(N241W)、プライマー配列番号11及び45、12及び46を利用してpDZ-gltA(N241C)、プライマー配列番号11及び47、12及び48を利用してpDZ-gltA(N241F)、プライマー配列番号11及び49、12、50を利用してpDZ-gltA(N241T)を作製した。
【0084】
【表3】
【0085】
それぞれ製作されたベクターを、リジンを生産するコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11016P菌株(大韓民国登録特許第10-0159812号(特許文献4))に電気パルス法で形質転換した。このように、gltA遺伝子に異種性塩基置換変異が導入された菌株19種は、KCCM11016P ::gltA(N241A)、KCCM11016P ::gltA(N241V)、KCCM11016P ::gltA(N241Q)、KCCM11016P ::gltA(N241H)、KCCM11016P::gltA(N241R)、KCCM11016P ::gltA(N241P)、KCCM11016P ::gltA(N241L)、KCCM11016P ::gltA(N241Y)、KCCM11016P ::gltA(N241S)、KCCM11016P ::gltA(N241K)、KCCM11016P ::gltA(N241M)、KCCM11016P ::gltA(N241I)、KCCM11016P ::gltA(N241E)、KCCM11016P ::gltA(N241D)、KCCM11016P ::gltA(N241G)、KCCM11016P ::gltA(N241W)、KCCM11016P ::gltA(N241C)、KCCM11016P ::gltA(N241F)、KCCM11016P ::gltA(N241T)とそれぞれ命名した。
【0086】
実施例5:gltA変異株に対するリジン生産能の分析及びクエン酸シンターゼ(Citrate synthase; CS)活性の測定
既存に報告された方法(Ooyen et al., Biotechnol. Bioeng., 109(8):2070-2081, 2012(非特許文献1))を通じて前記選別された菌株を対象に、クエン酸シンターゼ(CS)活性を測定した。実施例1で使用した方法でKCCM11016Pの菌株にgltA遺伝子を欠損し、その菌株をKCCM11016P ::ΔgltAと命名した。KCCM11016P、KCCM11016P ::ΔgltA菌株を対照群として使用し、選別菌株19種を下記のような方法で培養し、糖消費速度、リジン生産収率、培養培地内の代表副産物であるグルタミン酸(Glutamic acid; GA)の濃度、及びCS酵素活性を測定した。
【0087】
まず、種培地25mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で20時間、200rpmで振とう培養した。その後、生産培地24mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに1mlの種培養液を接種し、32℃で72時間、200rpmで振とう培養した。上記種培地と生産培地の組成は、それぞれ下記の通りである。培養終了後、HPLC(Waters 2478)を用いてL-リジンとグルタミン酸の濃度を測定した。
【0088】
<種培地(pH7.0)>
グルコース20g、ペプトン10g、酵母エキス5g、尿素1.5g、KH2PO44g、K2HPO4 8g、MgSO4・7H2O 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl 1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチン酸アミド2000μg(蒸留水1リットル基準)
【0089】
<生産培地(pH7.0)>
グルコース100g、(NH4)2SO4 40g、大豆タンパク質2.5g、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids)5g、尿素3g、KH2PO4 1g、MgSO4・7H2O 0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチン酸アミド3000μg、CaCO3 30g(蒸留水1リットル基準)。
【0090】
CS酵素活性の測定のために遠心分離を通じて菌体を回収した後、100mM Tris-HCl(pH7.2、3mM L-cysteine、10 mM MgCl2)緩衝溶液で2回洗浄し、同じ緩衝溶液2mlに最終懸濁した。菌体懸濁液を、一般的なガラスビードボルテックス法で10分間、物理的に破砕した後、2回の遠心分離(13,000rpm、4℃、30分)を通じて上澄み液を回収し、CS酵素活性の測定のための粗酵素液(crude extract)として使用した。CS酵素活性の測定のために、酵素活性測定用反応液(50mMトリス、200mMのグルタミン酸カリウム、pH7.5、0.1mM 5,50-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸、DTNB)、0.2mMのオキザロ酢酸、0.15mM acetyl-CoA)の粗酵素液を添加して30℃で反応させた。CS活性は、親株比1分当り分解されるDTNBを吸光度412nmで測定し、その比率と定義し、リジンの生産能、糖消費速度、培養液成分及び酵素活性の測定結果は、表4の通りである。
【0091】
【表4】
【0092】
gltA遺伝子が欠損した菌株の場合、親株比リジン収率が約5.5%p増加したが、培養の後半まで糖を消費できなかった。即ち、gltA遺伝子が欠失してCS活性がほとんどない場合は、菌株の生長が抑制され、産業上、活用し難いと見られる。配列番号1の241番目のアミノ酸が他のアミノ酸で置換された変異型ポリペプチドを含むすべての菌株の場合、菌株の生長は、産業上活用可能なレベルに維持されながら、CS活性が弱化することを確認した。また、CS活性が弱化することにより、親株比リジン収率は3~5%p増加する傾向を示した。特に、CS活性が約30~60%に弱化した変異体中、特に、N241S、N241Y、N241Tの3種の場合、リジン収率が親株比3~5%p増加しながら、糖消費速度も類似した水準を示した。また、リジン収率が親株比増加した菌株は、培養液内のグルタミン酸(Glutamic acid; GA)の量が減少することを確認した。即ち、本出願の変異を導入する場合、リジン収率は向上させ、副産物は減少させる効果があると解釈することができる。
【0093】
その結果は、CS活性の調節を通じてTCA経路への炭素の流れとリジン生合成の前駆体として使用されるオキザロ酢酸の供給量間の適切なバランスを通じてリジンの生産量を増加させることを示す。特に、リジン培養時に副産物として多く生成されるグルタミン酸の量が減少したことからgltA遺伝子の弱化がTCA経路への炭素の流れを抑制し、これは、炭素の流れがリジン生合成の方向に誘導され、リジンの生産能の増加に大きな効果があることを確認した。
【0094】
上記製作された菌株中、KCCM11016P::gltA(N241T)は、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2017年11月20日付で名称をCA01-7513として寄託し、寄託番号KCCM12154Pが与えられた。
【0095】
実施例6:選別されたgltA変異株リジン生産能の分析
L-リジンを生産するコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM10770P(大韓民国登録特許第10-0924065号(特許文献2))及びKCCM11347P(大韓民国登録特許第10-0073610号(特許文献5))に、実施例5で選別されたgltA遺伝子変異3種を導入した。上記3種は、CS活性が減少してリジン収率が増加し、糖消費速度が親株比同様のものを選別した。実施例4のpDZ-gltA(N241S)、pDZ-gltA(N241Y)、pDZ-gltA(N241T)のベクター3種を電気パルス法でコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM10770P及びKCCM11347P菌株2種に導入し、KCCM10770P::gltA(N241S)、KCCM10770P ::gltA(N241Y)、KCCM10770P ::gltA(N241T)、KCCM11347P ::gltA(N241S)、KCCM11347P ::gltA(N241Y)、KCCM11347P ::gltA(N241T)の菌株6種を製作した。対照群として使用されたKCCM10770P及びKCCM11347Pの菌株とgltA遺伝子の塩基置換変異導入菌株6種の上記菌株を実施例5と同様の方法で培養し、リジンの生産能、糖消費速度及び培養液の成分を分析した。
【0096】
一定時間培養した後、培養液リジンの生産能、糖消費速度及び培養液の成分を分析した。その結果は、下記の表5に示した。
【0097】
【表5】
【0098】
表5の結果のように、2種類のリジン生産菌株KCCM10770P及びKCCM11347PにおいてgltA配列の241番目のアミノ酸が他のアミノ酸で置換された変異を導入した場合、すべてリジン収率は増加し、副産物の収率は減少しながら、糖消費速度は親株と同様であった。そのうち、3種の変異中、241番目のアスパラギンがトレオニンで置換された変異(N241T)は、糖消費速度が親株と同様または小幅増加しながら、リジン収率が最大幅に増加することが確認できた。また、N241T変異は、親株比最大幅でグルタミン酸が減少することを確認した。そのことから、実施例6で見られた結果と同様に、gltA遺伝子が弱化しながら、TCA経路が減少したことが培養液内のグルタミン酸の減少量から確認された。
【0099】
実施例7:gltA変異株(N241T)が導入されたCJ3P菌株の製作及びリジン生産能の分析
L-リジンを生産する他のコリネバクテリウム・グルタミクムに属する菌株でも、上記と同様の効果があるかを確認するために、野生株に3種の変異[pyc(P458S)、hom(V59A)、lysC(T311I)]を導入し、L-リジン生産能を有するようになったコリネバクテリウム・グルタミクムCJ3P(Binder et al. Genome Biology, 2012, 13:R40(非特許文献16))を対象に、実施例6と同様の方法でgltA(N241T)変異が導入された菌株を作製した。上記製作された菌株は、CJ3 ::gltA(N241T)と命名した。対照群であるCJ3P菌株とCJ3 ::gltA(N241T)を前記実施例5と同様の方法で培養し、リジンの生産能、糖消費速度及び培養液の成分を分析して下記表6に示した。
【0100】
【表6】
【0101】
リジン生産能、糖消費速度及び培養液の成分中、グルタミン酸の濃度分析の結果、gltA(N241T)の変異体が導入された菌株で糖消費速度の類似水準でリジン収率が増加し、グルタミン酸の濃度が減少することを確認した。
【0102】
実施例8:gltA変異株(N241T)が導入されたトレオニン菌株製作及びトレオニン生産能の分析
gltA(N241T)変異導入によるL-トレオニン生産能の変化を明確に確認するために、L-トレオニン、L-イソロイシン生合成経路の共通中間体であるホモセリン(homoserine)を生産するホモセリンデヒドロゲナーゼ(homoserin dehydrogenase)をコードする遺伝子に変異を導入して強化した。具体的には、実施例7で使用されたCJ3P ::gltA(N241T)菌株に既に公知となったhom(G378E)変異(R. Winkels, S. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 45, 612-620, 1996(非特許文献17))が導入された菌株を作製した。また、その対照群としてCJ3Pにhom(G378E)変異のみが導入された菌株も製作した。変異導入のための組換えベクターは、以下のような方法で製作された。
【0103】
hom(G378E)を導入するベクターを製作するために、まず、WT菌株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、hom遺伝子の1131~1134番目の位置から前後にそれぞれ約600bp離れた位置に5'断片及び3'断片に制限酵素XbaI認識部位を挿入したプライマー配列番号51及び52を合成した。hom遺伝子の塩基配列を置換するためのプライマー配列番号53及び54を合成した(表7)。pDZ-hom(G378E)プラスミドは、hom遺伝子の5'及び3'末端に位置するDNA断片が(各600bp)pDZベクター(大韓民国特許第2009-0094433号(特許文献3))に連結された形態で製作された。WT菌株の染色体を鋳型とし、5'末端遺伝子断片がプライマー配列番号51及び53を用いたPCRを通じて製作された。PCR条件は、94℃で2分間の変性後、94℃で1分間の変性、56℃で1分間のアニーリング、72℃で40秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で10分間の重合反応を行った。同様な方法で、hom遺伝子の3'末端に位置する遺伝子断片が配列番号52及び54を用いたPCRを通じて製作された。増幅されたDNA断片をQuiagen社のPCR Purification kitを使用して精製した後、ベクターを作成するための挿入DNA断片として使用した。一方、制限酵素XbaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDZベクターと上記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片をInfusion Cloning Kitを使用して連結した後、大腸菌DH5αに形質転換し、カナマイシン(25 mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。プライマー配列の51及び52を用いたPCRを使用して目的の遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得し、hom(G378E)の塩基置換変異を染色体上に導入するためのベクターpDZ-hom(G378E)を作製した。
【0104】
【表7】
【0105】
pDZ-hom(G378E)ベクターをCJ3P及びCJ3P ::gltA(N241T)菌株に実施例6と同様の方法でhom遺伝子にヌクレオチド変異が導入された菌株、CJ3P ::hom(G378E)とCJ3P ::gltA(N241T)-hom(G378E)を獲得した。獲得した2種の菌株を、上記実施例5と同様の方法で培養し、トレオニン生産濃度、糖消費速度及び培養液の成分を分析して下記表8に示した。
【0106】
【表8】
【0107】
トレオニン生産能、糖消費速度及び培養液の成分中、グルタミン酸の濃度分析の結果、gltA(N241T)の変異体が導入された菌株で糖消費速度の類似水準でトレオニン濃度が増加し、グルタミン酸の濃度が減少することを確認した。
【0108】
実施例9:gltA変異株(N241T)が導入されたイソロイシン菌株の製作及びイソロイシン生産能の分析
gltA(N241T)変異導入によるL-イソロイシン生産能に及ぼす効果を確認するために、既に公知となったトレオニンデヒドラターゼ(L-threonine dehydratase)をコードする遺伝子に変異を導入し強化した。具体的には、実施例7で使用されたCJ3P ::gltA(N241T)-hom(G378E)菌株に既に公知となったilvA(V323A)変異(S. Morbach et al., Appl. Enviro. Microbiol., 62(12):4345-4351, 1996(非特許文献18))が導入された菌株を作製した。また、その対照としてCJ3P ::hom(G378E)にilvA(V323A)変異のみが導入された菌株も製作した。変異導入のための組換えベクターは、以下のような方法で製作された。
【0109】
ilvA(V323A)を導入するベクターを製作するために、まず、WT菌株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、ilvA遺伝子の966~969番目の位置から前後にそれぞれ約600bp離れた位置に5'断片及び3'断片に制限酵素XbaI認識部位を挿入したプライマー配列番号55及び56を合成した。また、ilvA遺伝子の塩基配列を置換するためのプライマー配列番号57及び58を合成した(表9)。pDZ-ilvA(V323A)プラスミドは、ilvA遺伝子の5'及び3'末端に位置するDNA断片が(各600bp)pDZベクター(大韓民国特許第2009-0094433号(特許文献3))に連結された形態で製作された。WT菌株の染色体を鋳型とし、5'末端遺伝子断片は、プライマー配列番号55及び57を用いてPCRを通じて製作した。PCR条件は、94℃で2分間の変性後、94℃で1分間の変性、56℃で1分間のアニーリング、72℃で40秒間の重合を30回繰り返した後、72℃で10分間の重合反応を行った。
【0110】
同様な方法で、ilvA遺伝子の3'末端に位置する遺伝子断片が配列番号56及び58を用いたPCRを通じて製作された。増幅されたDNA断片をQuiagen社のPCR Purification kitを使用して精製した後、ベクターを作成するための挿入DNA断片として使用した。一方、制限酵素XbaIで処理した後、65℃で20分間熱処理したpDZベクターと上記PCRを通じて増幅した挿入DNA断片をInfusion Cloning Kitを使用して連結した後、大腸菌DH5αに形質転換し、カナマイシン(25 mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。プライマー配列55及び56を用いたPCRを通じて目的の遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得し、ilvA(V323A)の塩基置換変異を染色体上に導入するためのベクターpDZ-ilvA(V323A)を作製した。
【0111】
【表9】
【0112】
pDZ-ilvA(V323A)ベクターをCJ3P ::hom(G378E)及びCJ3P ::gltA(N241T)-hom(G378E)菌株に実施例6と同様の方法でilvA遺伝子にヌクレオチド変異が導入された菌株、CJ3P ::hom(G378E)-ilvA(V323A)とCJ3P ::gltA(N241T)-hom(G378E)-ilvA(V323A)を獲得した。獲得した2種の菌株を、上記実施例5と同様の方法で培養し、イソロイシン生産濃度、糖消費速度及び培養液の成分を分析して下記表10に示す。
【0113】
【表10】
【0114】
イソロイシン生産能、糖消費速度及び培養液の成分中、グルタミン酸の濃度分析の結果、gltA(N241T)の変異体が導入された菌株で糖消費速度の類似水準でイソロイシン濃度が大幅に増加し、グルタミン酸の濃度が減少することを確認した。
【0115】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【0116】
図1
【配列表】
0006998466000001.app