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特許6998468ロックボルト用NPR鋼材料及びその生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ロックボルト用NPR鋼材料及びその生産方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20220111BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20220111BHJP
   C21D 8/06 20060101ALI20220111BHJP
   C21C 7/06 20060101ALI20220111BHJP
   C21C 7/064 20060101ALI20220111BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20220111BHJP
   B22D 11/00 20060101ALI20220111BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C22C38/00 302A
C22C38/58
C21D8/06 B
C21C7/06
C21C7/064 A
C21C7/064 Z
C21C7/00 F
B22D11/00 A
B22D11/16 104N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020545412
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 CN2018088060
(87)【国際公開番号】W WO2019222944
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-05-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520176038
【氏名又は名称】ファ,マンチャオ
【氏名又は名称原語表記】HE,Manchao
(73)【特許権者】
【識別番号】520176049
【氏名又は名称】シア,ミン
【氏名又は名称原語表記】XIA,Min
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ファ,マンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】シア,ミン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ホンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジウピン
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-215464(JP,A)
【文献】特開昭55-091956(JP,A)
【文献】特開2000-160233(JP,A)
【文献】特開昭55-104426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0128524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/00- 8/10
C21D 9/46- 9/48
C21C 7/00- 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックボルト用NPR鋼材料であって、
その組成及び重量パーセント含有量としては、
C:0.4~0.7%、Mn:15~20%、Si:≦0.1%、Cu:≦0.03%、Cr:≦0.01%、Ni:≦0.02%、S:≦0.001%、P:≦0.001%、
残りはFe及び不可避な不純物元素であり、
熱間圧延状態での降伏強度が500MPa~1100MPa、引張強度が950MPa~1200MPa、均一伸び≧10~80%であり、かつ、ポアソン比の値が0.003~0.01である、
ことを特徴とするロックボルト用NPR鋼材料。
【請求項2】
ロックボルト用NPR鋼材料の生産方法であって、
前記ロックボルト用NPR鋼材料は、熱間圧延状態での降伏強度が500MPa~1100MPa、引張強度が950MPa~1200MPa、均一伸び≧10~80%であり、かつ、ポアソン比の値が0.003~0.01であり、
前記ロックボルト用NPR鋼材料の組成及び重量パーセント含有量としては、
C:0.4~0.7%、Mn:15~20%、Si:≦0.1%、Cu:≦0.03%、Cr:≦0.01%、Ni:≦0.02%、S:≦0.001%、P:≦0.001%、残りはFe及び不可避な不純物元素であり、
前記ロックボルト用NPR鋼材料の組成比に合わせた合金元素を添加し、中間周波数製鋼プロセスによって製錬し、製錬中に活性石灰、蛍石を添加して造滓の調整を行い、完了後にオンライン成分分析を行い、合金元素を補充し、溶鋼の比例を設計比例に調整して、脱酸素、脱硫、脱燐を行う中間周波数製錬工程(S10)と、
中間周波炉で製錬された溶鋼を精錬炉に吊り込み、底部にアルゴンを3~60L/minのアルゴンガス量で吹かして精錬及び造滓を行い、フッ化カルシウム、石灰、脱滓剤を精錬炉に添加して、脱酸素、脱硫、脱燐をさらに行い、完了後にオンライン成分分析を行い、溶鋼の化学成分を微調整する精錬工程(S20)と、
精錬炉で精錬された溶鋼の出鋼温度を1560~1590°Cに制御して、精錬された溶鋼をタンディッシュに導入し、鋼型の予め保温しておく温度を200~250°Cに制御して鋳型鋳造し、自然冷却後に、離型する連続鋳型鋳造工程(S30)と、
鋳型鋳造工程後の冷却されたインゴットを加熱炉に入れて、1200°Cの炉内温度で2~4時間保温する加熱炉加熱工程(S50)と、
鋼スラブに対して熱間圧延処理を行い、そのうち、圧延開始温度が1050℃±50℃、圧延終了温度が850℃±50℃、圧延速度が8~10m/sに制御され、鋼スラブを熱間圧延処理後に、室温まで自然冷却する連続熱間圧延工程(S60)と、
熱間圧延丸鋼に対して連続冷間圧延を行い、異なった降伏強度及び伸びの需要に応じて、異なった焼鈍温度で1時間保温してから、炉外で自然冷却処理を行う連続冷間圧延工程(S70)と、
を含むことを特徴とするロックボルト用NPR鋼材料の生産方法。
【請求項3】
前記連続鋳型鋳造工程(S30)の後において、加熱炉加熱工程(S50)の前に、
鋼スラブの表面検出方法に従って、鋼スラブの表面欠陥を検出する鋼スラブ検査工程(S40)をさらに含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の生産方法。
【請求項4】
前記精錬炉は、LF精錬炉であることを特徴とする請求項2に記載の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱山機械用材料の技術分野に関し、特に、ロックボルト用NPR鋼材料及びその生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経済的建設におけるエネルギー需要量の増加及び採掘強度の継続的な増大につれて、浅層の資源がますます枯渇してしまい、中国国内外の鉱山は、次々と深層の採掘状態に入っている。現在、世界中の多くの金属鉱山は、その採掘深度が1000メートルを超えている。例えば、スイス、カナダ、オーストラリア、南アフリカなどの国のほとんどの金属鉱山では、その採掘深度が1000メートルを超えており、その中に、3000メートルを超えているケースもある。中国では、一部の金属及び非鉄金属鉱山は、800~1000メートルの範囲の深さで採掘されている。
【0003】
今後の20年間で、中国の多くの炭鉱の採掘深度が1000~2000メートルに達すると推定されている。深層の採掘では、地質応力が高く、地温が高く、カルスト水圧が高く、採掘外乱(「3つの『高』及び1つの外乱」)などの複雑な地質条件の影響を受け、工学的岩盤は、ほとんど、軟岩の大変形の力学的状態を示している。採掘工事開始後、坑道周辺の岩石はすべて、大変形破壊の特徴、具体的に、軟岩の大変形、岩破裂の大変形、ガス爆発の大変形などの特徴を示している。
【0004】
現在、中国国内外の鉱山の炭鉱坑道では、従来のロックボルト、ケーブル、U字型の鋼製伸縮式支持体などの従来の材料を基礎とした支持保護方式が広く使用されている。統計によると、中国の炭鉱坑道は、8000km/年の速度で増えており、そのうち、約80%がロックボルトで支えられており、毎年、数億本のロックボルトが、坑道周辺の岩石を支えるために使用されている。
【0005】
しかし、これらのロックボルトは、すべて、変形量が小さくて、強度、伸び及び伸縮量などの性能が低い塑性硬化材料である従来のポアソン比材料に属し、深層の坑道周辺の岩石の非線形大変形破壊の特徴に適応できなくなっており、衝撃荷重の作用下で、ロックボルトがその降伏強度に瞬時に達し、破断して無効になり、ベアリング能力及び保護能力が失われ、その結果、坑道が繰り返し修復され、鉄骨が歪んで変形し、キャストコンクリートがひび割れするなどの破壊現象をもたらしてしまう。
【0006】
したがって、鉱山の採掘深度の継続的な増加は、深層の坑道の支持保護材の研究にも厳しい挑戦をもたらし、今は、既に中国国内外の地盤力学及び地下工学分野の研究のホットスポットとなっている。
【0007】
従来のロックボルト用材料は、2点アンカー型ロックボルト(例えば、拡張シェルロックボルト)、フルレングスアンカー型ロックボルト(例えばねじ切り鉄筋、ねじ切り鉄筋は、高い支持保護抵抗を備えるが、変形量が小さくて、坑道周辺の岩石の大変形破壊に適応できず、破断して無効になってしまう)、摩擦型ロックボルト(ボルト本体と穴壁との間の摩擦作用により、周辺の岩石の弾性変形と塑性変形とに適応しているが、ベアリング力が小さくて、十分な支持保護抵抗を提供できない)との三つの種類に分かれる。
【0008】
したがって、理想的な坑道の支持保護システムは、十分な強度を有するだけでなく、深層の坑道周辺の岩石の非線形大変形破壊の特徴に適応するように大きい変形量を有する必要がある。過去の20数年間で、坑道周辺の岩石の大変形破壊を抑制するように、中国国内外の研究者は、エネルギー吸収型ロックボルトの研究に取り組み始めていた。
【0009】
現在、世界の主要なエネルギー吸収型ロックボルトには、錐形ボルト(Cone bolt)、Garfordロックボルト、Roffexロックボルト(定抵抗が80~90kN、最大変形量が300mmである)、MCBコーンボルト(最大180mmまでの伸び量)、D型ロックボルト(定抵抗が100~210kN、変形量が110~167mmである)などが含まれる。
【0010】
しかし、これらのエネルギー吸収型ロックボルトは、主にボルト本体の材料の変更又は摩擦構造によって支持保護性能を達成しているため、高い定抵抗と大きい変形量とを同時に提供することはできず、実際の工学的応用では、深層の坑道の軟岩の大変形、岩破裂の大変形等の工学的災害を抑えることはまだ不可能である。
【0011】
要約すると、従来技術におけるロックボルト用鋼は、その抱いている材料問題により、引張強度及び有効伸びの両方が低い。坑道支持過程において、従来技術におけるロックボルトは、周辺の岩石の大変形を抑制する要求を満たすことができず、使用中にロックボルトが破断してしまう場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の実施例は、従来技術におけるロックボルト用鋼の低引張強度及び低有効伸びという課題を解決するために、ロックボルト用NPR鋼材料及びその生産方法を提供している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一つの局面によれば、ロックボルト用NPR鋼材料を提供している。ロックボルト用NPR鋼材料の組成及び重量パーセント含有量としては、C:0.4~0.7%、Mn:15~20%、Si:≦0.1%、Cu:≦0.03%、Cr:≦0.01%、Ni:≦0.02%、S:≦0.001%、P:≦0.001%、残りはFe及び不可避な不純物元素であり、前記ロックボルト用NPR鋼材料は、熱間圧延状態での降伏強度が500MPa~1100MPa、引張強度が950MPa~1200MPa、均一伸び≧10~80%であり、かつ、前記ロックボルト用NPR鋼材料のポアソン比の値が0.003~0.01である。
【0015】
本発明のもう一つの局面によれば、ロックボルト用NPR鋼材料の生産方法を提供している。ロックボルト用NPR鋼材料は、熱間圧延丸鋼又は冷間圧延状態であり、ロックボルト用NPR鋼材料の熱間圧延状態での降伏強度が500MPa~1100MPa、引張強度が950MPa~1200MPa、均一伸び≧10~80%であり、かつ、ロックボルト用NPR鋼材料のポアソン比の値が0.003~0.01であり、
ロックボルト用NPR鋼材料の組成及び重量パーセント含有量としては、
C:0.4~0.7%、Mn:15~20%、Si:≦0.1%、Cu:≦0.03%、Cr:≦0.01%、Ni:≦0.02%、S:≦0.001%、P:≦0.001%、残りはFe及び不可避な不純物元素であり、
生産方法は、
ロックボルト用NPR鋼材料の組成比に合わせた合金元素を添加し、中間周波数製鋼プロセスによって製錬し、製錬中に活性石灰、蛍石を添加して造滓(造滓とは、スラグを生じることを指す)の調整を行い、完了後にオンライン成分分析を行い、合金元素を補充し、溶鋼の比例を設計比例に調整して、脱酸素、脱硫、脱燐を行う中間周波数製錬工程と、
中間周波炉で製錬された溶鋼を精錬炉に吊り込み、底部にアルゴンを3~60L/minのアルゴンガス量で吹かして精錬及び造滓を行い、フッ化カルシウム、石灰、脱滓剤を精錬炉に添加して、脱酸素、脱硫、脱燐をさらに行い、完了後にオンライン成分分析を行い、溶鋼の化学成分を微調整する精錬工程と、
精錬炉で精錬された溶鋼の出鋼温度を1560~1590°Cに制御して、精錬された溶鋼をタンディッシュに導入し、鋼型の予め保温しておく温度を200~250°Cに制御して鋳型鋳造し、自然冷却後に、離型する連続鋳型鋳造工程と、
鋳型鋳造工程後の冷却されたインゴットを加熱炉に入れて、1200°Cの炉内温度で2~4時間保温する加熱炉加熱工程と、
鋼スラブに対して熱間圧延処理を行い、そのうち、圧延開始温度が1050℃±50℃、圧延終了温度が850℃±50℃、圧延速度が8~10m/sに制御され、鋼スラブを熱間圧延処理後に、室温まで自然冷却する連続熱間圧延工程と、
熱間圧延丸鋼に対して連続冷間圧延を行い、異なった降伏強度及び伸びの需要に応じて、異なった焼鈍温度で1時間保温してから、炉外で自然冷却処理を行う連続冷間圧延工程と、を含む。
【0016】
また、連続鋳型鋳造工程の後において、加熱炉加熱工程の前に、鋼スラブの表面検出方法に従って、鋼スラブの表面欠陥を検出する鋼スラブ検査工程をさらに含んでもよい。
【0017】
また、前記精錬炉は、LF(Ladle Furnace)精錬炉であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の技術案を適用すると、本発明によるロックボルト用NPR鋼材料は、従来技術における従来のロックボルト用NPR鋼材料に比べて、ロックボルト用NPR鋼材料の降伏強度が500MPa~1100MPa、引張強度が950MPa~1200MPa、均一伸び≧10~80%であり、かつ、前記ロックボルト用NPR鋼材料のポアソン比の値が0.003~0.01であるという技術的利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例による熱間圧延丸鋼のロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る実験曲線の模式図である。
図2】熱間圧延、冷間圧延、及び600℃で1時間連続焼鈍後の、本発明の実施例によるロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る実験曲線の模式図である。
図3】熱間圧延、冷間圧延、及び580℃で1時間連続焼鈍後の、本発明の実施例によるロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る実験曲線の模式図である。
図4】熱間圧延、冷間圧延、及び550℃で1時間連続焼鈍後の、本発明の実施例によるロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る実験曲線の模式図である。
図5】本発明の実施例によるロックボルト用NPR鋼材料の負のポアソン比効果の模式図である。
図6】本発明の実施例によるロックボルト用NPR鋼材料の生産方法のフロー図である。
図7】従来技術における通常のロックボルトを引っ張る実験曲線の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明を制限することを意図するものではない。
【0021】
本発明の実施例によれば、ロックボルト用NPR鋼材料が提供されており、NPRとは、負のポアソン比(Negative Poisson’s ratio)の材料を指し、前記ロックボルト用NPR鋼材料の組成及び重量パーセント含有量としては、
C:0.4~0.7%、Mn:15~20%、Si:≦0.1%、Cu:≦0.03%、Cr:≦0.01%、Ni:≦0.02%、S:≦0.001%、P:≦0.001%、残りはFe及び不可避な不純物元素である。
【0022】
C:鋼材料の強度を向上させるのに最も効果的な元素であり、0.4~0.7%を選択することによりその塑性及び靭性を元のレベルに保ち、衝撃性能が低下しないのを保証する。
Mn:主にフェライトに固溶して材料の強度を向上させるものであり、優れた脱酸素剤及び脱硫剤でもあり、一定量のマンガンを含むと、硫黄に起因した脆性を除去又は弱めることができ、これにより、鋼の加工性能が改善される。
Si:鋼中に炭化物を形成せず、フェライト又はオーステナイトに固溶体の形で存在し、鋼の弾性限界、降伏強度及び降伏比を大幅に向上させるものであるため、含有量が低く、従って、Siの選択範囲は0.1%以下にする。
Cu:微量の銅を添加すると、鋼の強度及び降伏比を高めることができる。
Cr:クロムは、圧延状態の炭素鋼の強度及び硬度を高め、伸び及び断面収縮率を低減することができ、一定量のクロムを含むと、鋼の強度を高めることができる。
Ni:ニッケルは、鋼の強度、靭性、焼入れ性を高めることができ、一定量のニッケルを含むと、強度及び靭性を改善することができる。
P、S:有害な元素として、その含有量が低いほど良い。Sの含有量が多すぎると、大量のMnS介在物が形成され、鋼材料の延性及び靭性が低下するため、含有量が低いほど良く、従って、Sの選択範囲は0.001%以下にし、また、Pは結晶粒界にて偏析しやすく、鋼の脆性を高め、衝撃性能を大幅に低下させるため、含有量が少ないほど良く、従って、Pの選択範囲は0.001%以下にする。
【0023】
図2には、本発明によるロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る実験曲線が示されており、図2から、熱間圧延、冷間圧延、及び600度で1時間連続焼鈍後の、ロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る前後の引張力-変位曲線が分かる。そのロックボルト用NPR鋼材料の降伏強度が17トン(170KN、600MPa)、引張強度が27.3トン(273KN、963MPa)であり、ロックボルト用NPR鋼材料の引張前の長さが810mm、最終伸長距離が463.98mm、均一伸び≧57%である。これで分かるように、本発明によるロックボルト用NPR鋼材料は、従来技術における従来のロックボルト用NPR鋼材料に比べると、ロックボルト用NPR鋼材料の降伏強度が600MPaに達し、引張強度が950MPaであり、また、高強度を維持するとともに57%の伸びも備えるという技術的利点を有する。図7は、従来技術において現在に幅広く使用されている通常のロックボルトを引っ張る実験曲線の模式図であり、その降伏強度が520MPa(200KN)、引張強度が700MPa(272KN)、伸びが15%である。
【0024】
また、本発明によるロックボルト用NPR鋼材料は、上記の利点を有するだけでなく、顕著な負のポアソン比効果を示すこともできる。図5を参照すると、通常のロックボルトの動的ポアソン比及びNPRロックボルト用材料(即ち、本発明によるロックボルト用NPR鋼材料)の動的ポアソン比の試験値が示されており、図中の陰影領域がNPRロックボルト用材料(即ち、本発明によるロックボルト用NPR鋼材料)の負のポアソン比効果領域であり、そのポアソン比の値が0.003であり、通常のロックボルトのポアソン比0.03に比べると、顕著な負のポアソン比効果を示している。
【0025】
要約すると、ロックボルト用NPR鋼材料は、熱間圧延状態での降伏強度が500MPa~1100MPa、引張強度が950MPa~1200MPa、均一伸び≧10~80%であり、かつ、ロックボルト用NPR鋼材料のポアソン比の値が0.003~0.01である。
【0026】
また、本発明には、ロックボルト用NPR鋼材料の生産方法の実施例がさらに提供されている。図6を参照すると、前記ロックボルト用NPR鋼材料は、熱間圧延丸鋼であり、その熱間圧延状態での降伏強度≧600MPa、引張強度≧950MPa、均一伸び≧57%であり、かつ、前記ロックボルト用NPR鋼材料のポアソン比の値が0.003である。図6図7とを比較すると、本発明によるロックボルト用NPR鋼材料は、より高い降伏強度、引張強度、伸び、均一伸び、及び明らかなネックインがないという特徴を有し、その性能は通常のロックボルトよりもはるかに優れていることがわかる。
【0027】
前記ロックボルト用NPR鋼材料の組成及び重量パーセント含有量としては、
C:0.4~0.7%、Mn:15~20%、Si:≦0.1%、Cu:≦0.03%、Cr:≦0.01%、Ni:≦0.02%、S:≦0.001%、P:≦0.001%、残りはFe及び不可避な不純物元素であり、
前記生産方法は、
前記ロックボルト用NPR鋼材料の組成比に合わせた合金元素を添加し、中間周波数製鋼プロセスによって製錬し、製錬中に活性石灰、蛍石を添加して造滓(造滓とは、スラグを生じることを指す)の調整を行い、完了後にオンライン成分分析を行い、合金元素を補充し、溶鋼の比例を設計比例に調整して、脱酸素、脱硫、脱燐を行う中間周波数製錬工程S10と、
中間周波炉で製錬された溶鋼をLF精錬炉に吊り込み、底部にアルゴンを3~60L/minのアルゴンガス量で吹かして精錬及び造滓を行い、フッ化カルシウム、石灰、脱滓剤をLF精錬炉に添加して、脱酸素、脱硫、脱燐をさらに行い、完了後にオンライン成分分析を行い、溶鋼の化学成分を微調整する精錬工程S20と、
LF精錬炉で精錬された溶鋼の出鋼温度を1560~1590°Cに制御して、精錬された溶鋼をタンディッシュに導入し、鋼型の予め保温しておく温度を200~250°Cに制御して鋳型鋳造し、自然冷却後に、離型する連続鋳型鋳造工程S30と、
鋼スラブの表面検出方法に従って、鋼スラブの表面欠陥を検出する鋼スラブ検査工程S40と、
鋳型鋳造工程後の冷却されたインゴットを加熱炉に入れて、1200°Cの炉内温度で2~4時間保温する加熱炉加熱工程S50と、
鋼スラブに対して熱間圧延処理を行い、そのうち、圧延開始温度が1050℃±50℃、圧延終了温度が850℃±50℃、圧延速度が8~10m/sに制御され、鋼スラブを熱間圧延処理後に、室温まで自然冷却する連続熱間圧延工程S60と、
熱間圧延丸鋼に対して連続冷間圧延を行い、異なった降伏強度及び伸びの需要に応じて、異なった焼鈍温度で1時間保温してから、炉外で自然冷却処理を行う連続冷間圧延工程S70と、を含む。
【0028】
前記のロックボルト用NPR鋼材料の生産方法は、製錬成分が単純であり、制御が安定で、生産効率が高く、生産コストが低くて、従来技術によるロックボルトの生産方法又は生産プロセスにおける複雑な手順、高い生産コスト、及び低い生産効率の問題が解決される。前記生産方法に従って得られたロックボルト用NPR鋼材料は、従来技術における従来のロックボルト用NPR鋼材料に比べると、ロックボルト用NPR鋼材料の降伏強度が600MPaに達し、引張強度が950MPaであり、また、高強度を維持するとともに57%の伸びも備えるという技術的利点を有する。
【0029】
さらに、ここで提供されたロックボルト用NPR鋼材料に基づいて、本発明によるロックボルト用NPR鋼材料は、異なる降伏強度及び伸びの需要に応じて変形量を20%以内に制御でき、ロックボルト用NPR鋼材料の降伏強度が500~1100MPaの範囲内で調整可能であり、伸びが10~80%の範囲内で調整可能である、という利点をさらに有する。
【0030】
具体的には、図1図4を参照する。そのうち、図1は、熱間圧延丸鋼のロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る前後の引張力-変位曲線であり、当該ロックボルト用NPR鋼材料は熱間圧延状態であり、冷間圧延焼鈍処理を経ていない。
【0031】
図2は、熱間圧延丸鋼を冷間圧延、及び600℃で1時間連続焼鈍後の、本発明の実施例によるロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る実験曲線の模式図である。
【0032】
図3は、熱間圧延丸鋼を冷間圧延、及び580℃で1時間連続焼鈍後の、本発明の実施例によるロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る実験曲線の模式図である。
【0033】
図4は、熱間圧延丸鋼を冷間圧延、及び550℃での1時間連続焼鈍後の、本発明の実施例によるロックボルト用NPR鋼材料を引っ張る実験曲線の模式図である。図1~4から、別々の直径のロックボルト用NPR鋼材料及び冷間圧延後の異なる焼鈍温度の場合でも、ロックボルト用NPR鋼材料の降伏強度が500~1100MPaの範囲内に、伸びが10~80%の範囲内に維持できることがわかる。
【0034】
本明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものだけであり、本願による例示的な実施形態を制限することを意図するものではないことに留意されたい。本明細書で使用される単数形は、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、複数形も含むことを意図している。また、本明細書で「含む」及び/又は「含める」という用語が使用される場合、それらは、特徴、ステップ、操作、デバイス、コンポーネント、及び/又はそれらの組み合わせがあることを示すことも理解されたい。
【0035】
本願の明細書、特許請求の範囲、及び上述した図面における「第1」及び「第2」などの用語は、類似した対象を区別するために使用されるものであり、特定の順序又は前後順序を説明するために必ずしも使用されないことに留意されたい。このように使用されているデータは、本明細書に記載の本願の実施形態が、本明細書に図示又は説明したもの以外の順序でも実施できるように、適切な状況下で入れ替えることが可能であることを理解されたい。
【0036】
むろん、以上は本発明の好ましい実施例である。当業者にとって、本発明の基本原理から逸脱することなく、何らかの改良及び修正を行うことができ、これらの改良及び修正も本発明の保護範囲内と見なされることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7