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特許6998470FOLR1に特異的に結合する抗体及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】FOLR1に特異的に結合する抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220128BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220128BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220128BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K31/7105
A61K31/713
A61K47/68
G01N33/574 A
C12P21/08
C12N15/13
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020548657
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2019002911
(87)【国際公開番号】W WO2019177372
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0029762
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517432732
【氏名又は名称】アルテオジェン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】パク スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヘシン
(72)【発明者】
【氏名】イ ソンベ
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-500025(JP,A)
【文献】特表2008-508880(JP,A)
【文献】J. Mol. Biol., 1995, 254(3), pp.392-403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FOLR1(Folate receptor-α)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
i)配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号28の重鎖CDR3;配列番号29の軽鎖CDR1;配列番号30の軽鎖CDR2;及び配列番号8の軽鎖CDR3;
ii)配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号5の重鎖CDR3;配列番号29の軽鎖CDR1;配列番号30の軽鎖CDR2;及び配列番号8の軽鎖CDR3;
iii)配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号5の重鎖CDR3;配列番号29の軽鎖CDR1;配列番号7の軽鎖CDR2;及び配列番号8の軽鎖CDR3;
iv)配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号5の重鎖CDR3;配列番号6の軽鎖CDR1;配列番号30の軽鎖CDR2;及び配列番号8の軽鎖CDR3;又は
i)配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号28の重鎖CDR3;配列番号6の軽鎖CDR1;配列番号7の軽鎖CDR2;及び配列番号8の軽鎖CDR3;
を含む、抗体又はその抗原結合断片
【請求項2】
前記抗体又はその抗原結合断片は、FOLR1の生物学的活性を抑制することを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体又はその抗原結合断片は、FOLR1を発現する細胞の抗体依存性細胞傷害活性(antibody-dependent cellular cytotoxicity)を誘導することを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合断片は、FOLR1に対する結合分離定数(dissociation constant)が1×10-7M以下であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号32軽鎖可変領域
配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号33の軽鎖可変領域、
配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号34の軽鎖可変領域、
配列番号31の重鎖可変領域及び配列番号2の軽鎖可変領域、又は
配列番号31の重鎖可変領域及び配列番号32の軽鎖可変領域、
を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片に薬物が接合された抗体-薬物接合体。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合断片はリンカーを介して薬物と結合することを特徴とする、請求項に記載の抗体-薬物接合体。
【請求項8】
前記薬物は、化学療法剤、毒素、マイクロRNA(miRNA)、siRNA、shRNA又は放射性同位元素であることを特徴とする、請求項に記載の抗体-薬物接合体。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は請求項6~8のいずれか一項に記載の抗体-薬物接合体を含む、癌の予防又は治療用医学組成物。
【請求項10】
前記癌は、卵巣癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、結腸癌、脳癌、直膓癌、子宮頸癌又は子宮内膜癌であることを特徴とする、請求項に記載の癌の予防又は治療用医学組成物。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、疾病の診断用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FOLR1(folate receptor alpha)に特異的に結合してFOLR1の活性を遮断する抗体に関し、既存抗体の結合能を向上させることによって抗原に対する結合能を著しく増加させた変形抗体に関する。より詳細には、FOLR1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片、前記抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体、これを含む癌の予防又は治療用医学組成物及び疾病の診断用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
FOLR1(folate receptor alpha)は、正常上皮細胞では低-中等度の量で発現し、様々な癌腫、特に卵巣癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、結腸直膓癌、子宮内膜癌のような特定上皮由来癌で過多発現するタンパク質であり、特に卵巣癌の90%以上で過発現してそれを標的にする癌の治療に有用である(Sudimack and Lee,Adv.Drug Deliv.Rev.2000,41,147-162)。治療用抗体の代表例に、米国特許第2009/274697号(国際公開第2005/080431号)に記載されたファーレツズマブ(farletuzumab)(MORAb-003)は、FOLR1を標的にするヒト化された(humanized)単一クローン抗体であり、Morphotek Inc.で開発され、卵巣癌の潜在的な治療剤として報告されている。ファーレツズマブは略2nMのK値の結合親和度でFOLR1と結合するものと知られている(Grasso et al.,Cancer Immun.2007,7,6)。
【0003】
このような治療用抗体は典型的に低い免疫原性(immunogenicity)、高い親和度及び特異性、最適のエフェクター(effector)機能、優れた溶解度及び安定性のような生物学的、物理化学的性質を有するように広範囲に操作される。特に、抗体ヒト化(humanization)及び親和性成熟(affinity maturation)は、治療用抗体候補物質の開発において最も頻繁に適用される工程である。抗体ヒト化方法は、ヒト以外の動物抗体の相補性決定領域(complementarity determining region,CDR)をヒト抗体のCDRに置換する方法である。ヒト化抗体の問題点は、非ヒト動物抗体の高い免疫原性、低いエフェクター機能、短い血中半減期などのマウス抗体などが持つ問題である。このような問題を解決して単一クローン抗体を医薬品として開発しており、既に様々なヒト化抗体が治療用抗体として許可され販売されている。これらのヒト化抗体は実際に臨床である程度効果を示してはいるが、より効果の高い抗体医薬品が要求されている実情であり、本来、ヒト抗体に比べて抗原に対する結合能が劣ることも事実である。このような問題は、ヒト受容体配列上にマウスのCDRを直接移植することに起因する親和性の損失によって発生することがあるので、CDRやCDRループの構造を支持するフレームワーク領域(Frame region,FR)残基の突然変異がしばしば必要である。
【0004】
このような側面で抗体の効能向上のための抗体工学技術の応用が要求される。特に、抗原に対する抗体の親和度を成熟させる親和性成熟(affinity maturation)方法がある。親和性成熟は、無作為突然変異を抗体遺伝子に導入して抗原に対する抗体の結合親和性を増加させる技術のことを指し、効果的な治療及び診断用抗体新薬の開発に非常に有用に用いることができる。試験管内親和性成熟のために、一般的に3つの接近方法が用いられる。エラーを起こしやすいPCR(error-prone PCR)、退化されたオリゴヌクレオチドを使用する標的残基のランダム化及び鎖シャッフリング(chain shuffling)を含む。標的残基として選択できる部分はCDRであり、特にCDR-H3及びCDR-L3が抗体-抗原相互作用を支配する傾向があるので、無作為化のための論理的標的となる。標的となる抗体遺伝子CDR部位にあるアミノ酸を変化させることによって抗体の結合親和性を高めるわけである。この方法によってAKA(tumor-associated glycoprotein 72と結合するヒト化抗体)のCDR-H3にあるアミノ酸を変化させて結合親和性を22倍増加させた報告があり(Hong et al.,J.Biol.Chem.2006,281,6985-6992)、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)抗原に対して開発された抗体も結合親和性を6倍まで増加させた報告がある(Hong el al.,J.Microbiol.2007,45,528-533)。
【0005】
CDR部位に無作為に配置されたアミノ酸を持つ配列の集合をライブラリーということができ、ライブラリー内にそれぞれの抗体が存在するので、それらから抗体を選別する作業が必要である。ライブラリーから抗体を選別する方法の最も効果的な技術の一つは、ファージディスプレイ(phage display)技術である。この技術は、ファージ表現型とそれをカプセル化した遺伝子型間の直接的な連関性をベースにしていて、これはファージ表面上に分子ライブラリーの提示を誘導する。ファージディスプレイは、タンパク質-リガンド相互作用、受容体結合部位及びそれらの結合パートナーに対するタンパク質の親和性を改善又は変形させるのに用いられる。
【0006】
ファージディスプレイは、遺伝子型選択と表現型を連結する遺伝子配列が入っているファージコートタンパク質との融合によって繊維状ファージ表面から選択されたタンパク質の発現を伴う。抗体ライブラリーと結合するとき、ファージディスプレイは抗原特異的抗体の迅速な試験管内選択及び相応する暗号化配列の回収を許容する。大規模非免疫及び合成ヒトライブラリーは、単一個人免疫レパートリーキャプチャーに基づく、より小さい免疫ライブラリーと共に構築された。完全に体外処理過程は、動物免疫によって得られないものだけでなく、免疫原性の低い標的に対する抗体の分離を許容して接近法の有用性をさらに拡大させた。ファージ抗体ディスプレイは、抗体候補物質に対する高い処理量(high throughput)スクリーニングのために初期に開発された方法である。最近では、単一B細胞スクリーニング、次世代ゲノムシークエンシング及びヒト胚幹細胞B型肝炎遺伝子を持つ形質転換(transgenic)マウスのような完全ヒト治療用抗体の生成のための他の方法が開発された。これらはそれぞれ特別な利点を有するが、ファージディスプレイはin vitroで行われる過程という特性上、スクリーニング方法の容易性及び汎用性という側面においてヒト抗体発見のための核心方法として残っている。また、ファージディスプレイを用いて抗体を選別する方法であるパンニングは、免疫チューブに抗原を固定させた後、ファージ表面に発現した抗体ライブラリーを免疫チューブに添加し、洗浄及び溶出過程を経て結合した抗体だけを選別する過程をいう。抗原と結合したり結合しないFabを運搬するファージは洗浄を反復することによって分離される。抗原結合ファージはpH変化又はプロテアーゼ分解によって溶出され、抗原結合クローンが豊富な新しいライブラリーを製造可能な大腸菌に再び感染される。この過程を複数反復した後、抗体ライブラリーは十分に濃縮され、個別クローンを、単一クローンファージとして発現した大腸菌から分離し、試験し、配列化し、特異的抗体を発現させることができる。
【0007】
このような技術的背景下で、本発明者らは、FOLR1に対する抗体の効能を向上させるために、結合能に優れた抗体に対する開発が切実に要求されていることを認識し、相補決定領域に変異を導入してFOLR1との結合能が改善された抗体を発明した。親和性成熟を用いて親抗体の重鎖及び軽鎖可変領域内のCDR部位にアミノ酸変異を誘発させた抗体ライブラリーを作製し、ファージディスプレイ技術でFOLR1に対する結合親和度を向上させた個別抗体を選別することによって本発明を完成した。
【0008】
本背景技術の部分に記載された前記情報は単に本発明の背景に対する理解を向上させるためのものであり、したがって、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって既に知られた先行技術を形成する情報を含まないことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、FOLR1に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片、及び前記抗体に対して抗原との結合能がより改善された抗体を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片に、薬物が接合された抗体-薬物接合体を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体を含む癌の予防又は治療用医学組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体を投与することを特徴とする癌の治療方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、癌の治療のための前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体の用途、及び癌の治療用薬剤の製造のための前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体の使用を提供する。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記抗体又はその抗原結合断片を含む疾病の診断用組成物及び診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、FOLR1(folate receptor-α)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0016】
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は6個の相補性決定領域(CDR)を含み、前記抗体又はその抗原結合断片は配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号5又は配列番号28の重鎖CDR3;及び配列番号6又は配列番号29の軽鎖CDR1;配列番号7又は配列番号30の軽鎖CDR2;配列番号8の軽鎖CDR3を含むことを特徴とし得る。
【0017】
本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合断片を含む抗体-薬物接合体を提供する。
【0018】
本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体を含む癌の予防又は治療用医学組成物を提供する。
【0019】
本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体を投与することを特徴とする癌の治療方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、癌の治療のための前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体の用途及び癌の治療用薬剤の製造のための前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体の使用を提供する。
【0021】
本発明はまた、前記抗体又はその抗原結合断片を含む疾病の診断用組成物及び診断方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】親抗体と変形抗体の重鎖可変領域の配列を比較したものであり、配列間一致する部分は星印で示されており、CDR-H3領域の配列中の一つのアミノ酸が異なるものを示す図である。
図2】親抗体と変形抗体の軽鎖可変領域の配列を比較したものであり、配列間に一致する部分は星印で示されており、CDR-L1とCDR-L2領域のアミノ酸配列が抗体間に異なることを示す図である。
図3】親和性樹脂クロマトグラフィーを用いて変形抗体を分離したカラム精製結果であり、クロマトグラムと断片(fraction)別SDS-PAGE分析結果を示す図である(M:marker、LS:loading sample、H:heavy chain、L:light chain、R:reducing condition)。
図4】親抗体と変形抗体の濃度によるFOLR1に対する結合能を示すELISA結果である。
図5】FOLR1に対する親抗体と変形抗体の結合能を比較するためにSPRで分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特に定義されない限り、本明細書で使われた技術的及び科学的用語はいずれも、本発明が属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われた命名法は、本技術分野でよく知られており、通常使用されるものである。
【0024】
抗体の抗原結合断片又は抗体断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。抗体断片のうち、Fabは、軽鎖及び重鎖可変領域と軽鎖の定常領域及び重鎖の最初の定常領域(CH1)を有する構造であり、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域だけを持っている最小の抗体片であり、Fv断片を生成する組換え技術はPCT国際公開特許出願WO88/10649、WO88/106630、WO88/07085、WO88/07086及びWO88/09344に開示されている。
【0025】
本発明で使用した抗体の可変領域は、抗体の重鎖部分に3個のCDR(CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)があり、抗体の軽鎖部分に3個のCDR(CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む。それらはいずれもループを構成しており、抗原と特異的に結合する部位である。
【0026】
本発明は一つの側面において、FOLR1(Folate receptor-α)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0027】
本発明において、前記抗体又はその抗原結合断片は、FOLR1の生物学的活性を抑制することを特徴とし得る。また、前記抗体又はその抗原結合断片は、FOLR1を発現する細胞の抗体依存性細胞傷害活性(antibody-dependent cellular cytotoxicity)を誘導することを特徴とし得る。また、前記抗体又はその抗原結合断片は、FOLR1に対する結合分離定数(dissociation constant)が1×10-7M以下であることを特徴とし得る。
【0028】
本明細書で使われる用語、“親抗体”とは、FOLR1に特異的に結合するFOLR1の抗体であり、先行出願特許(US2005/0232919A1)で出願された抗体を用いた。本明細書の“親抗体”は、前記先行出願特許で明記された抗体のうち、重鎖の配列は下の配列番号1に該当し、軽鎖の配列は下の配列番号2に該当する。

重鎖(配列番号1)
EVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCSASGFTFSGYGLSWVRQAPGKGLEWVAM
ISSGGSYTYYADSVKGRFAISRDNAKNTLFLQMDSLRPEDTGVYFCARHG
DDPAWFAYWGQGTPVTVSS

軽鎖(配列番号2)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCSVSSSISSNNLHWYQQKPGKAPKPWIY
GTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYYCQQWSSYPYMYT
FGQGTKVEIK
【0029】
本発明の範囲には、FOLR1に特異的に結合する完全な抗体形態(full length IgG)だけでなく、前記抗体分子の抗原結合断片(fragmented IgG)も含まれる。本発明で用いる親抗体は、配列番号3~8の配列で表示されるCDRを含む。
【0030】
したがって、本発明において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号5の重鎖CDR3;及び配列番号6の軽鎖CDR1;配列番号7の軽鎖CDR2;配列番号8の軽鎖CDR3を含むことを特徴とし得る。
【0031】
本発明において親抗体に基づくCDRライブラリーは、PCT国際公開特許出願WO16/114567DPに記載の通りに作製し、作製されたライブラリー遺伝子を導入したpComb3Xベクターはファージミドベクターであって、ファージ複製始点(phage origin of replication)を有するプラスミドDNAであり、またファージ表面タンパク質であるpIIIが含まれている。ライブラリー遺伝子はpIII遺伝子の5’末端にライゲーションされ、E.coliで融合タンパク質として発現される。VCSM13ヘルパーファージは、ファージミドがファージ粒子に組み立てられるように必要な遺伝情報を提供するファージであり、カナマイシンである抗生剤耐性遺伝子を含み、ヘルパーファージに感染されたE.coliを選択可能にしている。
【0032】
また、パンニングは、ファージ表面にディスプレイされた抗体などのタンパク質のライブラリーから特定分子に結合するクローンだけを選択的に増幅させる過程のことを指し、表面に固定された標的分子にファージライブラリーを加えて結合を誘導し、結合していないファージクローンを洗浄して除去した後、結合したファージクローンだけを溶出して再びE.coliに感染させ、ヘルパーファージを用いて標的結合ファージクローンを増幅する手順を経る。このような過程を反復して、表面固定された標的分子に対する標的結合ファージクローンの結合力が高いクローンを選別的に増幅させる。
【0033】
本発明において用語“変形抗体”は、“親抗体”を改変して作った抗体であり、また、本発明は変形抗体を分離及び精製する方法を提供する。前記抗体タンパク質を生産する条件で培養した培養液を遠心分離して不純物を除去し、その結果物を親和クロマトグラフィーを用いて精製できる。
【0034】
また、本発明の変形抗体は、FOLR1と結合する結合力(binding affinity)を有する。FOLR1結合力は、ELISA法、SPR(表面プラズモン共鳴法)などを用いて測定できる。具体的には、プレートに固定化されたFOLR1に抗体組成物を一定濃度間隔で反応させた後、その抗体を認識する標識抗体をさらに反応させ、FOLR1に結合した抗体組成物の結合可能濃度を計算することによって測定できる。この測定から、単一よりは多重CDRライブラリーから得た抗体の結合能がより多く改善されたことが確認できた。
【0035】
本発明の一実施例において、前記変形抗体は、親抗体から変形された配列番号28の重鎖CDR3;配列番号29の軽鎖CDR1;又は配列番号30の軽鎖CDR2を含むことを特徴とし得る。
【0036】
したがって、本発明において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3の重鎖CDR1;配列番号4の重鎖CDR2;配列番号5又は配列番号28の重鎖CDR3;及び配列番号6又は配列番号29の軽鎖CDR1;配列番号7又は配列番号30の軽鎖CDR2;配列番号8の軽鎖CDR3を含むことを特徴とし得る。
【0037】
本発明において、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1又は配列番号31の重鎖可変領域;及び配列番号2及び配列番号32~34からなる群から選ばれる軽鎖可変領域を含むことを特徴とし得る。好ましくは、配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号32の軽鎖可変領域;配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号33の軽鎖可変領域;配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号34の軽鎖可変領域;配列番号31の重鎖可変領域及び配列番号2の軽鎖可変領域;又は配列番号31の重鎖可変領域及び配列番号32の軽鎖可変領域を含むことを特徴とし得る。
【0038】
本発明は他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片に薬物が接合された抗体-薬物接合体(Antibody-drug conjugate,ADC)に関する。
【0039】
抗体-薬物接合体(ADC)は、ターゲット癌細胞に抗癌薬物を伝達するまで抗癌薬物が抗体に安定的に結合していなければならない。ターゲットに伝達された薬物は抗体から遊離してターゲット細胞の死滅を誘導する必要がある。そのためには、薬物が抗体に安定的に結合すると同時にターゲット細胞から遊離する時はターゲット細胞の死滅を誘導するに十分な細胞毒性を有する必要がある。
【0040】
本発明において、前記抗体又はその抗原結合断片と抗癌剤などの薬物を含む細胞毒性物質は互いに結合(例えば、共有結合、ペプチド結合など)して接合体(conjugate)又は融合タンパク質(細胞毒性物質及び/又は標識物質がタンパク質である場合)の形態で用いられ得る。前記細胞毒性物質は癌細胞、特に固形癌細胞に対して毒性を有する全ての物質であり得、放射線同位元素、細胞毒素化合物(small molecule)、細胞毒性タンパク質、抗癌剤などからなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。前記細胞毒素タンパク質は、リシン(ricin)、サポリン(saporin)、ゲロニン(gelonin)、モモルジン(momordin)、デブーガニン(debouganin)、ジフテリア毒素、緑膿菌毒素(pseudomonas toxin)などからなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。前記放射線同位元素は、131I、188Rh、90Yなどからなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。前記細胞毒素化合物は、ズオカルマイシン(duocarmycin)、モノメチルオーリスタチンE(monomethyl auristatin E;MMAE)、モノメチルオーリスタチンF(monomethyl auristatin F;MMAF)、N2’-ジアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)メイタンシン(N2’-deacetyl-N2’-(3-mercapto-1-oxopropyl)maytansine;DM1)、PBD(Pyrrolobenzodiazepine)ダイマーなどからなる群から選ばれる1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明において、前記抗体-薬物接合体は、本発明が属する技術分野によく知られた技術によるものであり得る。
【0042】
本発明において、前記抗体-薬物接合体は、前記抗体又はその抗原結合断片がリンカーで薬物と結合することを特徴とし得る。
【0043】
本発明において、前記リンカーは、切断性リンカー又は非切断性リンカーであることを特徴とし得る。
【0044】
前記リンカーは抗体と薬物とを連結する部位であり、例えば、前記リンカーは細胞内条件で切断可能な形態、すなわち、細胞内環境で抗体から薬物がリンカーの切断によって放出されるようにする。
【0045】
前記リンカーは、細胞内環境、例えば、リソソーム又はエンドソームに存在する切断剤によって切断されるものであり得、細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素、例えばリソソーム又はエンドソームプロテアーゼによって切断されるペプチドリンカーであり得る。一般的に、ペプチドリンカーは少なくとも2個以上のアミノ酸を有する。前記切断剤は、カテプシンB及びカテプシンD、プラスミンを含むことができ、ペプチドを加水分解して薬物を標的細胞内に放出できるようにする。前記ペプチドリンカーはチオール依存性プロテアーゼカテプシン-Bによって切断されることができ、これは癌組織で高発現し、例えばPhe-Leu又はGly-Phe-Leu-Glyリンカーが用いられ得る。また、前記ペプチドリンカーは、例えば細胞内プロテアーゼによって切断され得るものであり、Val-Citリンカー又はPhe-Lysリンカーであり得る。
【0046】
本発明において、前記切断性リンカーはpHに敏感であり、特定pH値で加水分解に敏感であり得る。一般的に、pH敏感性リンカーは、酸性条件で加水分解され得るものを示す。例えば、リソソームで加水分解され得る酸性不安定リンカー、例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シス-アコニットアミド(cis-aconitic amide)、オルソエステル、アセタール、ケタールなどであり得る。
【0047】
前記リンカーは還元条件で切断されてもよく、例えば、二硫化リンカーがそれに該当できる。SATA(N-succinimidyl-S-acetylthioacetate)、SPDP(N-succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)propionate)、SPDB(N-succinimidyl-3-(2-pyridyldithio)butyrate)及びSMPT(N-succinimidyl-oxycarbonyl-alpha-methyl-alpha-(2-pyridyl-dithio)toluene)を用いて様々な二硫化結合を形成できる。
【0048】
本発明において、前記薬物及び/又は薬物-リンカーは、抗体のリシンを介して無作為に接合されたり、或いは二硫化結合鎖を還元した時に露出されるシステインを介して接合され得る。場合によって、遺伝工学的に作製されたタグ、例えば、ペプチド又はタンパク質に存在するシステインを介してリンカー-薬物が結合してもよい。前記遺伝工学的に作製されたタグ、例えば、ペプチド又はタンパク質は、例えば、イソプレノイドトランスフェラーゼによって認識され得るアミノ酸モチーフを含むことができる。前記ペプチド又はタンパク質は、ペプチド又はタンパク質のカルボキシ末端で欠失(deletion)を持つか、ペプチド又はタンパク質のカルボキシ(C)末端にスぺーサーユニットの共有結合による付加を持つ。前記ペプチド又はタンパク質はアミノ酸モチーフと直接共有結合したり、或いはスぺーサーユニットと共有結合してアミノ酸モチーフと連結され得る。前記アミノ酸スぺーサーユニットは1~20個のアミノ酸で構成され、特にグリシン(glycine)ユニットが好ましい。
【0049】
前記リンカーはリソソームで多数存在したり、或いはいくつかの腫瘍細胞で過発現するベータ-グルクロニダーゼ(β-glucuronidase)によって認識されて加水分解されるベータ-グルクロニドリンカーを含むことができる。ペプチドリンカーとは違い、親水性(hydrophilicity)が大きいので、疎水性の性質が高い薬物と結合時に抗体-薬物複合体の溶解度を増加させることができるという長所がある。
【0050】
これに関連して、本発明では、大韓民国特許公開公報第2015-0137015号に開示されたベータ-グルクロニドリンカー、例えば自己犠牲基(self-immolative group)を含むベータ-グルクロニドリンカーを用いることができる。
【0051】
また、前記リンカーは、例えば非切断性リンカーであり得、抗体加水分解の一段階だけによって薬物が放出され、例えばアミノ酸-リンカー-薬物複合体を生産する。このような類型のリンカーは、チオエーテル基又はマレインアミドカプロイル(maleimidocaproyl)基であり得、血液内安定性を維持できる。
【0052】
本発明において、前記薬物は、化学療法剤、毒素、マイクロRNA(miRNA)、siRNA、shRNA又は放射性同位元素であることを特徴とし得る。前記薬物は薬理学的効果を示す製剤であり、抗体に結合し得る。
【0053】
前記化学療法剤は細胞毒性製剤又は免疫抑制剤であり得る。具体的に、マイクロチューブリン抑制剤、有糸分裂抑制剤、トポイソメラーゼ抑制剤、又はDNAインターカレーターとして機能が可能な化学療法剤を含むことができる。また、免疫調節化合物、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗バクテリア剤、抗真菌剤、駆虫剤又はこれらの組合せを含むことができる。
【0054】
前記薬物には、例えば、メイタンシノイド、オーリスタチン、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、サリドマイド、カンプトテシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメチルスルホニルヒドラジド、エスペラマイシン、エトポシド、6-メルカプトプリン、ドラスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、タキソール(taxol)、タキサン、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、メトトレキサート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、メルファラン、クロランブシル、ズオカルマイシン、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、シタラビン(cytarabine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、ニトロソウレア(nitrosourea)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、マイトマイシン(mitomycin;マイトマイシンA、マイトマイシンC)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、トポテカン(topotecan)、窒素マスタード(nitrogen mustard)、シトキサン(cytoxan)、エトポシド(etoposide)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、CNU(bischloroethylnitrosourea)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン(camptothecin)、ブレオマイシン(bleomycin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、プリカマイシン(plicamycin)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロランブシル(chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルファン(busuLfan)、トレオスルファン(treosulfan)、ダカルバジン(dacarbazine)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)、クリスナトール(crisnatol)、トリメトレキサート(trimetrexate)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、チアゾフリン(tiazofurin)、リバビリン(ribavirin)、EICAR(5-ethynyl-1-beta-Dribofuranosylimidazole-4-carboxamide)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、デフェロキサミン(deferoxamine)、フロキシウリジン(floxuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、シタラビン(cytarabine(ara C))、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)、フルダラビン(fludarabine)、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、メゲストロール(megestrol)、ゴセレリン(goserelin)、酢酸リュープロリド(leuprolide acetate)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、EB1089、CB1093、KH1060、ベルテポルフィン(verteporfin)、フタロシアニン(phthalocyanine)、光感作剤Pe4(photosensitizer Pe4)、デメトキシ-ヒポクレリンA(demethoxy-hypocrellin A)、インターフェロン-α(Interferon-α)、インターフェロン-γ(Interferon-γ)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ベルケイド(velcade)、レブリミド(Revlimid)、サロミド(thalomid)、ロバスタチン(lovastatin)、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(1-methyl-4-phenylpyridiniumion)、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ブレオマイシンA2(bleomycin A2)、ブレオマイシンB2(bleomycinB2)、ペプロマイシン(peplomycin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ベラパミル(verapamil)及びタプシガルギン(thapsigargin)、核酸分解酵素及び細菌や動植物由来の毒素からなる群から選ばれる一つ以上であるが、これに限定されない。
【0055】
本発明において、前記薬物は、リンカー及びリンカー試薬上の親電子性基と共有結合を形成するために反応可能なアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート、及びアリールヒドラジド基から構成された群から選ばれる一つ以上の親核基を含むことができる。
【0056】
本発明はさらに他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体を含む癌の予防及び/又は治療用医学組成物に関する。
【0057】
本発明はさらに他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体を予防又は治療が必要な患者に投与することを特徴とする癌の治療方法に関する。
【0058】
本発明はさらに他の観点において、癌の治療のための前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体の用途に関する。
【0059】
本発明はさらに他の観点において、癌の治療用薬剤の製造のための前記抗体又はその抗原結合断片又は前記抗体-薬物接合体の使用に関する。
【0060】
本発明において、前記癌は、卵巣癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、結腸癌、脳癌、直膓癌、子宮頸癌又は子宮内膜癌であることを特徴とし得るが、これに制限されるものではない。
【0061】
本発明に係る抗体又はその抗原結合断片又は抗体-薬物接合体を含む医学組成物は有効成分としての前記抗体又はその抗原結合断片又は抗体-薬物接合体だけを含むものであってもよいが、通常、薬理学的に許容される一つ以上の担体と共に混合し、製剤学の技術分野で公知された任意の方法によって製造した医薬製剤として提供することが好ましい。
【0062】
本発明の医学組成物は単独で使用してもよく、上述した放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、タンパク質又は抗体医薬のうち少なくとも一つの治療薬を併用してもよい。また、前記医学組成物は、従来の治療剤と併用する用途に用いることができる。すなわち、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片、及びこれを含む医学的組成物は、既存の抗癌剤などの治療剤と同時に投与されたり、或いは順次に投与される用途に用いられ得る。
【0063】
投与経路は、治療時に最も効果的なものを用いることが好ましく、経口投与、又は口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内又は静脈内などの非経口投与が挙げられ、好ましくは静脈内投与が挙げられる。
【0064】
投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、坐剤、注射剤、軟膏又はテープ剤などが挙げられる。
【0065】
投与量又は投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢及び体重などによって異なるが、通常、成人1日当たり10μg/kg~10mg/kgである。
【0066】
本発明に係る前記抗体又はその抗原結合断片は、FOLR1(folate receptor-α)に特異的に結合するので、これを用いてFOLR1を検出又は確認することができ、FOLR1の発現は様々な疾病、例えば癌と関連している。
【0067】
したがって、本発明は、さらに他の観点において、前記抗体又はその抗原結合断片を含む疾病の診断用組成物に関する。
【0068】
本発明において、前記疾病はFOLR1関連疾病、例えば、癌でありえるが、これに制限されるものではない。
【0069】
また、本発明は、さらに他の観点において、対象から分離された生物試料に前記抗体又はその抗原結合断片を処理(投与)する段階を含む疾病の診断方法又は診断に情報を提供する方法に関する。
【0070】
本発明において、前記診断方法は、前記処理する段階以降に、抗原-抗体反応の有無を確認する段階をさらに含むことができる。前記方法において、抗原-抗体反応が探知される場合、前記生物試料又は前記生物試料が由来した患者にFOLR1関連疾病、例えば癌が存在すると決定(判断)できる。したがって、前記方法は、前記確認する段階後に、抗原-抗体反応が探知される場合、前記生物試料又は前記患者をFOLR1関連疾病患者、例えば癌患者と決定する段階をさらに含むことができる。前記生物試料は、哺乳類、例えばヒト(例えば癌患者)から得た(分離された)細胞、組織、体液、これらの培養物などからなる群から選ばれるものであり得る。
【0071】
前記抗原-抗体反応の有無を確認する段階は、当業界に公知の様々な方法によって行うことができる。例えば、通常の酵素反応、蛍光、発光及び/又は放射線検出を通じて測定でき、具体的に、免疫クロマトグラフィー(Immunochromatography)、免疫組織化学染色(Immunohistochemistry)、酵素結合免疫吸着分析(enzyme linked immunosorbent assay:ELISA)、放射線免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)、酵素免疫分析(enzyme immunoassay:EIA)、蛍光免疫分析(Floresence immunoassay:FIA)、発光免疫分析(luminescence immunoassay:LIA)、ウェスタンブロッティング(Western blotting)、マイクロアレイ、免疫沈降分析などからなる群から選ばれる方法によって測定できるが、これに制限されない。
【0072】
このとき、前記抗体又はその抗原結合断片は標識物質をさらに含むものであり得る。前記標識物質は、放射線同位元素、蛍光物質、クロモゲン(chromogen)、染色物質などからなる群から選ばれる1種以上であり得る。前記標識物質は、前記抗体又は抗原結合断片に通常の方法(例えば、共有結合、配位結合、イオン結合などの化学結合)で結合(連結)したものであり得る。前記抗体(又は、抗原結合断片)と標識物質との結合は、本発明が属する技術分野によく知られた技術によるものであり得る。
【0073】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0074】
実施例1:ライブラリークローン選別
FOLR1に対する結合能改善のための最適配列を確保するために、Fab断片を用いて親抗体に基づいてCDRライブラリーを構築した。
【0075】
実施例1-1:親抗体Fab鋳型作製
親抗体の軽鎖及び重鎖においてそれぞれ可変領域を合成し、pComb3X-TTから定常領域を合成した。PCR条件は、94℃で2分間、前変性化(pre-denaturation)し、94℃30秒、56℃30秒、72℃30秒で25サイクル反応した後、72℃で7分間反応した。PCR反応の鋳型が一つの場合、100ngを使用し、二つの場合、それぞれ3μLずつ混ぜた混合物を使用し、プライマーは20pM濃度で3μLずつ使用し、dNTPは0.05mM、Taq重合酵素は0.5μL(2.6unit)、反応体積は100μLである。反応完了後、増幅の有無は1%アガロースゲル電気泳動で確認し、Qiagenゲル抽出キットを用いて精製し、2次及び3次PCRは、前記増幅された部分を鋳型として次の重複型PCRを行った。PCR反応産物は、Qiagenゲル抽出キットを用いてアガロースゲルでDNAを精製し、SfiI制限酵素で切断した後、再びゲル抽出(gel extraction)を行った。SfiI切断された抗体遺伝子153ngとSfiI切断されたpComb3Xベクター136ngを混合した後、10X T4 DNAライゲーションバッファーとリガーゼ10unitを添加して室温で3時間反応した後、E.coli DH5αセルに42℃で45秒間ヒートショックを与え、37℃で1.5時間培養する方法で形質転換して得たコロニーから、50kDaサイズを有するFab断片からなる抗体ライブラリー作製用鋳型を確保した。
【0076】
実施例1-2:抗体ライブラリー作製
相補性決定領域に人為的に多様性を導入してライブラリーを作製した。(http://www.bioinf.org.uk/abs/)に記述された 内容から所定の抗体のCDR及びFRが確認できる。
【0077】
実施例1-1で作製された鋳型に基づいて親抗体のCDR配列をランダム化させたライブラリーを作製したが、親抗体の6個のCDRのうちCDR-H2は他のCDRに比べて長さが長いため実験に扱い難く、除外することにした。親抗体のCDR配列は表1の通りである。
【0078】
【表1】
【0079】
抗原との結合領域内特定位置をランダム化させるために混合塩基コード(Mix base code)を用いてプライマーを作製した(表2)。混合塩基コードは縮重プライマーであり、塩基配列上の類似性を考慮して類似の塩基配列に結合可能な1つの位置に2つ以上の塩基が存在するオリゴヌクレオチドをいう。プライマーを作製するに先立ち、ランダム化させる特定位置を決定するために親抗体のCDR配列分析を通じて保存(conserved)残基を確認し、また、この残基を除外した部分のコドンを多様化させるために混合塩基コードを用いたプライマーを作製した。
【0080】
【表2】
【0081】
親抗体CDR-L1、L2、L3、H1、H2部分のコドンランダム化はPCRで増幅し、これを、同様にPCR増幅されたCDR部位DNAと重複伸長PCR(overlap extension PCR)を通じて連結することによって、1つのCDRにのみ多様性を有する単一CDRライブラリーと2つのCDRに多様性を有する多重ライブラリーを作製した。PCR条件は、94℃で2分間、前変性化し、94℃で30秒、56℃で30秒、72℃で30秒で25サイクル反応した後、72℃で7分間反応した。ただし、72℃での延長時間は予測されるDNA切片結果物の長さによって1分30秒或いは2分に調整した。具体的に、予測される長さが500~1,500bpの場合には1分30秒、1,500~2,000bpの場合には2分の延長時間を使用した。これらの過程に使用した鋳型(template)、プライマー及び産物名を表3に整理した。作製された単一或いは多重CDRライブラリーは1%アガロースゲル電気泳動によって分離精製し、これをSfiI制限酵素で50℃で12時間以上処理して切断し、同じ方式でpComb3XファージミドベクターもSfiI制限酵素で切断した。
【0082】
【表3】
【0083】
ライゲーションは、SfiI切断されたベクターとインサートを同量混ぜて常温で一晩反応させた。ライゲーション産物体積が形質転換するには多い場合、EtOH沈殿を用いてライゲーション産物体積を減らすことができ、方法は次の通りである。50μLのライゲーション産物に5μL(1/10)の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)と110μL(2倍)の100%EtOHを入れ、-20℃で2時間以上DNAを沈殿させた。沈殿したDNAを12,000rpmで15分間遠心分離後に1mlの70%EtOHで洗浄し、同じ条件で遠心分離してペレットを乾燥させた後、10μLの純水で溶解させた。形質転換は電気穿孔法で行うが、ライゲーション産物10μLとE.coli TG1コンピテント細胞50μLを混合後に冷却させ、準備した0.2cmキュベットに入れて電気穿孔機に位置させた後、2.5kVで4~5msec間パルスを与えた。パルスの直後に、37℃に準備した2mLの回復培地を添加し、37℃で1時間培養した後、その1μLをSB培地で1000倍希釈して10μLと100μLをLB寒天平板に分注してライブラリーサイズ確認用に用意し、残りは一つの平板に全て分注して37℃で一晩培養した。翌日、希釈して分注した平板内コロニー数を確認してライブラリーサイズを確認した。また、希釈せずに全て分注した平板に5mLのSB培地を添加し、スプレッダーを用いて細胞を全て集めた後、0.5体積(volume)の50%グリセロールを添加して冷凍庫(deep freezer)(-75℃)に保管した。
【0084】
【表4】
【0085】
取得したライブラリーのサイズは変形(transformation)効率であり、個別クローン(individual clone)数を意味する。結果的に、ライブラリーサイズ程度の抗原結合多様性が存在するということができる。すなわち、CDR-L1ライブラリーは10、CDR-L2は10、CDR-L3は10、CDR-H1は10、CDR-H3は10、CDR-L3H3は10である多様性を持つライブラリーを作製した(表4)。
【0086】
実施例1-3:ファージディスプレイを用いたパンニング後にELISAによる選別
ヒトFOLR1と結合するライブラリークローンを選別するためにパンニングを行ったが、パンニング回数が増加するほど結合能が向上したクローンが得られた。
【0087】
ライブラリー増幅及びFab発現するバクテリオファージを回収するために、100uLのライブラリーが形質転換されたTG1ストックを20mLのSB/Amp+2%グルコース培養培地に接種し、37℃で220rpmで1.5~2時間ライブラリーをE.coli TG1細胞に発現させた。培養液を3500rpmで15分間遠心分離して上澄液を除去し、ペレットは20mlのSB/Amp培養培地で再懸濁させた。ここに0.5mLのヘルパーファージVCSM13(約1011pfu)を添加し、37℃で120rpmで1時間培養して感染させた後、70μg/mLとなるようにカナマイシン(50mg/mL)を添加して30℃で200rpmで16時間培養した。培養液を遠心分離してファージが含まれた上層液に5mLの5X PEG濃縮液を添加し、氷で30分間濃縮した。これを12,000rpmで15分間遠心分離して上澄液を除去し、ファージペレットを0.3mLのPBSで再懸濁してライブラリーファージを確保した(保管する場合、50%グリセロールを0.5volume添加して-75℃に保管)。
【0088】
確保したライブラリーファージを増幅させるために、E.coli TG1細胞ストックを10mL SB培地に接種して37℃培養器で220rpmで約4~5時間培養し、中期対数期(mid-log phase)(OD600=0.5~1.0)まで培養してコンピテント細胞を用意し、使用するまで4℃に保管した。次の方法でパンニングを行った。FOLR1を免疫試験管に1μg/mLでコーティング後にブロッキング溶液(3%スキムミルク)で1時間37℃でブロッキングし、ライブラリーファージ0.5mLにブロッキング溶液を1:1比率で0.5mL添加してブロッキングした後、固定された抗原と反応させた。1時間以上反応させた後、PBS-Tween20バッファーで洗浄段階で結合していないか弱く結合したファージを除去し、強く結合したファージを1mLのTEA(100mM)で10分間溶出させた後、0.5mLのTris-HCl(1M、pH7.4)で中性化させた。8.5mLのコンピテント細胞に1.5mLの溶出されたファージを入れて37℃培養器で120rpmで1時間感染させた後、ライブラリーサイズを確認するために2mL反応液中の1uLを1,000倍及び10,000倍に希釈してプレーティングし、残りは1つの平板に全てプレーティングして37℃で一晩培養した。
【0089】
形質転換された大腸菌ライブラリーを培養し、VCSM13ヘルパーファージで感染させてFabクローンが表面提示された抗体ファージライブラリーを得た。このライブラリーを免疫試験管表面に吸着させたFOLR1に対して3~5回パンニングを行って、FOLR1と強く結合するファージクローンだけを選別した。この過程によってFOLR1と弱く結合したり合成されたCDR配列内欠陥が生じてFOLR1と結合していないクローンは除去されるため、結果てきに欠陥がなく、既存配列に比べてより最適化されたCDR配列が選別できた。CDR-L1、CDR-L2ライブラリーは5次、CDR-L3、CDR-H3、CDR-L3H3ライブラリーは4次、CDR-H1ライブラリーは3次にわたってパンニングを実施し、各パンニング段階ごとにパンニングに使用したファージ(インプットファージ)に対する溶出されたファージ(アウトプットファージ)の比(O/I比)を計算して%Boundで表5に示した。パンニング回数が増加しても%Boundが類似の値で示されることは、FOLR1に対する結合能が飽和状態に達したことを意味する(表5)。このような結果が出るとそれ以上パンニングは行わず、溶出されたファージで次の段階を行う。パンニング結果の抗体ファージライブラリーの機能性を検証するために各CDRライブラリーから94個のクローンをELISAでスクリーニングした。背景信号に比して3倍以上の結合信号を示すELISA陽性クローンはそれぞれ、CDR-L1は92個、CDR-L2は66個、CDR-L3は19個、CDR-H1は94個、CDR-H3は48個、CDR-L3H3は63個を確認し、このうち、各8個を配列分析した(表6)。
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
実施例1-4:タンパク質発現菌株TOP10F’を用いたFab生産及び精製
選別したクローンのFOLR1に対する結合能を比較するためにそれぞれ精製を行った。精製を行うに先立ち、Fab部分だけを発現させるために宿主株をTG1からTOP10F’細胞に変えた。
【0093】
4mL SB/アンピシリン培養培地に選別したクローンに該当するコロニーを接種して37℃で一晩培養した。翌日、400mL SB/アンピシリン培養培地にO/N培養した培養液4mlを接種してOD600が0.5~1.0となる時点まで37℃培養器で約3~4時間培養し、クローンの発現のために最終濃度1mMとなるようにIPTGを処理して30℃で一晩培養した。ただし、発現確認だけをする場合は、SB/アンピシリン培養培地20mLだけを培養した。
【0094】
培養液400mLからペリプラズムを回収するために培養液を遠心分離して上層液を除去後、4℃に維持した16mLの1X TES溶液を処理し、4℃で1時間静置をすることによって細胞を溶解させた。さらに24mLの0.2X TES溶液を処理して1時間静置をした後、遠心分離して上層液を回収し、EDTAを除去するために5mM MgClを添加した。試料をロードする前に、Ni-NTA His-Bind(R)レジン0.5mLをパッキングしたカラムを溶出緩衝液(300mM Imidazole in PBS、pH7.4)20CVで洗浄後、PBSを20CV流した。試料をカラムにロードして通過画分(flow-through)を集め、ロードを終えると、洗浄緩衝液(20mM Imidazole in PBS、pH7.4)20CVで流して洗浄分画(washing through)を集めた後、溶出緩衝液10CVで流して溶離液(eluent)を集めた。精製過程中に段階別に集めた試料を12%SDS-PAGEにウェル当たり15μLずつロードして電気泳動(150V、1時間)した。クマシーブルー染色を通じてバンド(band)を確認した。
【0095】
実施例1-5:FOLR1に選別したクローンの濃度別直接結合様相の確認
1次選別したクローンの結合能を相対的に比較する目的でELISAをクローン濃度別に行った。方法は次の通りである。FOLR1を1μg/mLで25μLずつ96ウェルプレートに分注してRTで1時間コーティングした後、3%スキムミルク180μLでRTで1時間ブロッキングさせた。ブロッキングする間に1次抗体として使用する試料を準備した。1次抗体としてはスクリーニングで選別した試料を使用したが、0.1~100nM(0、0.1、0.3、1、3、10、30、100nM)に希釈して準備し、使用するまで冷蔵保管した。ブロッキング後に3%スキムミルクを除去し、1次抗体を25μLずつ添加してRTで1時間以上反応させた。反応が終わった後、PBS-Tween20(0.1%)バッファーで3回洗浄し、2次抗体でHA-HRPを3%スキムミルクで3,000倍希釈して25μLずつ添加し、RTで1時間以上反応させた。反応が終わった後、PBS-Tween20(0.1%)バッファーで3回洗浄し、基質TMBを25μLずつ添加して発色を確認した。約5分経過後、1M HSOを25μLずつ添加して反応を止め、450nmの波長で吸光度を測定した。測定結果は、GraphPad Prism7プログラムを通じてEC(Effector concentration)値を求めた。
【0096】
選別したクローンとFOLR1との結合親和度を測定するために、Biacore3000を用いてSPR測定を行った。試料を注入する前にCM5センサーチップを0.1M NHS/0.4M EDCで活性化(activation)させ、FOLR1(20μg/mL in 10mM acetate pH5.0)で固定化させた後、反応していないNHSは1Mエタノールアミンで非活性化させた。試料は、1、2、5、10、20、40nMで250μLずつ用意して30μl/minで流しながら結合と解離センサグラムを確認し、10mMグリシン(pH2.1)でセンサーチップを再生した。得られたセンサグラムはBIA評価用ソフトウェアで分析してK値を計算した。
【0097】
実施例1-6:抗体ライブラリー配列分析
ファージライブラリーのELISAを通じて選別したクローンのランダム化させた相補性決定領域の配列を糾明した。96ウェルプレートに培養したクローンから選別した各クローンの培養液1uLを鋳型としてpC3X-f及びpC3X-bプライマーを用いて94℃で2分間前変性化し、94℃で30秒、56℃で30秒、72℃で2分で25サイクル反応した後、72℃で7分間反応した。増幅の有無は、1%アガロ-スゲル電気泳動で確認し、増幅されたPCR産物をQIAvac 96を用いてDWで精製して配列分析を依頼した。ベクター内リーダー配列を用いて相補性決定領域の配列を糾明した。
【0098】
実施例2:変形抗体(vAb)の作製
抗体ライブラリー作製方法と同一にして最終クローンpvAbを作製し、使用した鋳型とプライマーは表7に、vAb抗体配列情報は表8~表10に整理した。
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】
【0101】
上記見つけたCDR配列の組合せ(combination)によって変形抗体vAb1、vAb2、vAb3、vAb4、vAb5を作製した。vAb1はCDR-H3とCDR-L1、CDR-L2が全て反映された変形抗体であり、vAb2はCDR-L1及びCDR-L2、vAb3はCDR-L1、vAb4はCDR-L2、vAb5はCDR-H3が反映された変形抗体である。
【0102】
【表9】
【0103】
【表10】
【0104】
実施例3:変形抗体(vAb)の発現及び精製
変形抗体(vAb)を生産するために、expiCHO細胞に変形抗体(vAb)タンパク質をコーディングする遺伝子を含むベクター(pc3.4-vAbL、pc3.4-vAbH)を形質感染させて培養し、親和性クロマトグラフィー(affinity chromatography)を用いて精製した。親和性樹脂であるMabSelect SuReTM(GE Healthcare)をXK16カラムに充填し、バッファーA(25mMトリス、pH7.0、25mM NaCl)を流してカラムを平衡化した後、培養液を流して親和性樹脂と結合させてバッファーB(25mMクエン酸、pH3.5)で変形抗体(vAb)タンパク質を溶出させた。精製の終わったカラムは0.5M NaOHで洗浄した後、20%エタノールで満たして冷蔵保管した。溶出された試料に1Mのトリス(pH9.0)を適正量添加して試料のpHを6.0に調整した。試料の状態は10%SDS-PAGEを通じて確認した。こうして得た変形抗体(vAb)タンパク質は10mMコハク酸ナトリウム、30mMスクロースpH6.0の組成を持つバッファーで透析(dialysis)によってバッファー交換を行った。
【0105】
実施例4:ELISA方法を用いた変形抗体(vAb)結合能確認
実施例2で製造した変形抗体(vAb)の結合能を親抗体と比較するために、ELISAを抗体濃度0.006~6250ng/mL条件で行った。方法は、実施例1-5に記述の内容と同様にした。測定の結果、変形抗体であるvAb1~vAb5は親抗体に比べて4.48~1.42倍さらに強くFOLR1と結合することが測定された(表11)。各測定は親抗体に対比して個別の実験から得た測定値である。
【0106】
【表11】
【0107】
実施例5:SPR方法を用いた変形抗体(vAb)結合能確認
FOLR1に対する実施例2で製造した変形抗体であるvAb1の結合親和度を測定するためにBiacore3000を用いてSPR方法を行った。実行方法は、実施例1-5に記述の内容と同様にした。結果は、BIA評価用ソフトウェアを用いてセンサグラム分析してK値を計算した。変形抗体vAb1は0.24nMのK値であり、親抗体に比べて4倍も高い結合親和度を示した(表12)。これは、ELISAを用いて得た値の相対的比と類似している。
【0108】
【表12】
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る変形抗体は、親抗体の基本構造を保存しながら、親抗体本来の抗原結合部位が抗原とよりよく結合するアミノ酸に置換された配列を提供し、これによって抗原との結合能を高めた。なお、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、癌の予防又は治療用途に利用可能であり、また疾病の診断用途に利用可能である。
【0110】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は好ましい実施様態にすぎず、これによって本発明の範囲が制限されるわけではない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえよう。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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