IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ゲイツ コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特許-オービタル・テンショナ 図1
  • 特許-オービタル・テンショナ 図2
  • 特許-オービタル・テンショナ 図3
  • 特許-オービタル・テンショナ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】オービタル・テンショナ
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/12 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
F16H7/12 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020548930
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 US2019020793
(87)【国際公開番号】W WO2019177812
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】15/920,013
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】シン,スクディープ
(72)【発明者】
【氏名】キム,サンギュ
(72)【発明者】
【氏名】バラ,アニル
(72)【発明者】
【氏名】コプサー,マイケル
【審査官】筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-524879(JP,A)
【文献】特開平05-321995(JP,A)
【文献】特表2016-509174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0010670(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0131208(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03144562(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース10と、
前記ベースに係合するリング50とを備え、前記リングはベース開口内において中心Cの周りに回転可能であり、前記リングに軸支されたプーリ51を備え、
前記リングに揺動自在に係合するピボットアーム90と、前記ピボットアームに軸支されたプーリとを備え、前記ピボットアームの枢軸は中心Cからずれており、
前記ピボットアームを付勢するために、前記リングと前記ピボットアームの間に配置されたトーションスプリング53を備え、
前記ベースと前記リングの間に摩擦係合する減衰材料230と、前記減衰材料に垂直負荷を付与するスプリング250とを備え、
前記減衰材料はステンレス鋼ファイバを部分的に備え、0Ωより大きく10000Ωまでの範囲の抵抗を有する
テンショナ。
【請求項2】
前記減衰材料が重量で3%から5%のステンレス鋼ファイバを備える請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記減衰材料がさらに、ナイロン66を備える請求項2に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記スプリングがウェーブスプリングを備える請求項1に記載のテンショナ。
【請求項5】
前記ベースに取付けられた保持部材が前記リングを前記ベースに堅く固定する請求項1に記載のテンショナ。
【請求項6】
前記リングと前記ベースの間のブッシュをさらに備え、前記ブッシュはステンレス鋼ファイバと、0Ωより大きく10000Ωまでの範囲の抵抗とを有する請求項1に記載のテンショナ。
【請求項7】
前記抵抗が5000Ωより小さい請求項1に記載のテンショナ。
【請求項8】
前記ブッシュの抵抗が5000Ωより小さい請求項6に記載のテンショナ。
【請求項9】
前記ステンレス鋼ファイバが4mmから6mmの範囲の長さを有する請求項1に記載のテンショナ。
【請求項10】
前記ステンレス鋼ファイバが8ミクロンの直径を有する請求項1に記載のテンショナ。
【請求項11】
ベースと、
前記ベースに係合するリングとを備え、前記リングはベース開口内において中心Cの周りに回転可能であり、前記リングに軸支されたプーリを備え、
前記リングに揺動自在に係合するピボットアームと、前記ピボットアームに軸支されたプーリとを備え、
前記ピボットアームを付勢するために、前記リングと前記ピボットアームの間に配置されたトーションスプリングを備え、
前記ベースと前記リングの間に摩擦係合する減衰材料と、前記減衰材料に垂直負荷を付与するスプリングとを備え、
前記減衰材料は0Ωより大きく10000Ωまでの範囲の抵抗を有し、
前記減衰材料がステンレス鋼ファイバを備える
テンショナ。
【請求項12】
前記ステンレス鋼ファイバが重量で3%から5%のステンレス鋼ファイバを備える請求項11に記載のテンショナ。
【請求項13】
前記ステンレス鋼ファイバが4mmから6mmの範囲の長さを有する請求項11に記載のテンショナ。
【請求項14】
前記ステンレス鋼ファイバが8ミクロンの直径を有する請求項11に記載のテンショナ。
【請求項15】
ベースと、
前記ベースに係合するリングとを備え、前記リングはベース開口内において中心Cの周りに回転可能であり、前記リングに軸支されたプーリを備え、
前記リングに揺動自在に係合するピボットアームと、前記ピボットアームに軸支されたプーリとを備え、
前記ピボットアームを付勢するために、前記リングと前記ピボットアームの間に配置されたトーションスプリングを備え、
前記ベースと前記リングの間に摩擦係合する減衰アセンブリと、前記減衰アセンブリに垂直負荷を付与するスプリングとを備え、
前記減衰アセンブリは0Ωより大きく10000Ωまでの範囲の抵抗を有する減衰材料を備え、
前記減衰材料がステンレス鋼ファイバを備える
テンショナ。
【請求項16】
前記ステンレス鋼ファイバが重量で3%から5%のステンレス鋼ファイバを備える請求項15に記載のテンショナ。
【請求項17】
前記ステンレス鋼ファイバが4mmから6mmの範囲の長さを有する請求項15に記載のテンショナ。
【請求項18】
前記ステンレス鋼ファイバが6ミクロンから10ミクロンの範囲の直径を有する請求項15に記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテンショナに関し、より詳しくは、0Ωから約10000Ωまでの範囲の抵抗を有する減衰材料を有するテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトテンショナはベルトに負荷を付与するために使用される。一般的にベルトは、エンジンに協働する種々のアクセサリを駆動するために、エンジンアプリケーションに使用される。例えば、空調機のコンプレッサとオルタネータはベルト駆動システムによって駆動されるアクセサリの2つである。ベルトテンショナはベースに対して揺動自在であるアームに軸支されたプーリを有する。スプリングはアームとベースの間に連結される。スプリングはまた、減衰アセンブリに係合する。減衰アセンブリは相互に接触する摩擦面を有する。減衰アセンブリはベルト駆動の作用によって生じるアームの振動運動を減衰させる。これは延いては、可動要素における摩耗を最小限にすることによって、ベルト寿命の期待とテンショナ寿命の期待を高める。
【0003】
オービタル・テンショナは、同一ベルトの2つのスパンのいずれかまたは両方にテンションを付与するために、スタータジェネレータのような、負荷反転を有する単一のベルト駆動に用いられてきた。このようなテンショナは単一のベルトにおいて連携して作用するので、典型的には単一のトーションスプリングを有する。市場の需要は、車両重量を低下させることと、ボンネット下の部品点数を減少させることとによる、排気物の減少と燃費の増加を含む。
【0004】
これらの目標に向かって取られるアプローチは、スタータモータの機能とオルタネータの機能とを単一の装置とモータジェネレータすなわちMGU内に組込むことを含む。また、燃費を増加させる目標に向かって、MGUは「アイドルストップ」と呼ばれる特徴の使用を促進する。この特徴は、エンジンが普通にアイドリングするときに休止することを許容して、車両が走行を再開することが期待されるときに再起動することである。この特徴は、アクセサリベルト駆動における需要を実質的に増加させる。この種のアプリケーションにおいて、スタータ/ジェネレータはアクセサリベルト駆動を介してクランクシャフトに機械的に連動するように配置される。
【0005】
この技術の代表は欧州特許第2128489B1公報である。これはベルト駆動のベルトテンショニング装置を開示し、この装置は、駆動軸周りに駆動シャフトによって駆動可能な駆動ベルトプーリと、複数の他のベルトプーリとを有し、かつ駆動ベルトプーリと他のベルトプーリに掛け回された無端ベルトを有する駆動機構を備える。ベルトテンショニング装置は、2つのテンショニングアームが共通揺動軸の周りに揺動自在であるように支持されたハウジングを備え、テンショニングアームには駆動軸に平行に延びる回転軸を有するテンショニングローラが支持される。またテンショニングアームはスプリング手段によって相互に相対的に支持される。ハウジングは、駆動機構に取付けられた駆動ベルトプーリの存在において取付けられ、ハウジングは、駆動ベルトプーリの駆動シャフトを取り囲む環状領域において駆動機構に対して相対的に接触しない。テンショニングアームは駆動ベルトプーリの直径の内側に配置されることを特徴とする。
【0006】
MGUは動作中、電界を発生する。電界は電荷をテンショナのピボットアーム上において生じさせ、ピボットアームとグランドの間にスパークを導く。ピボットアームは典型的には、使用される減衰材料のために、グランドから電気的に遮断されている。多くの減衰材料は電気的に遮断され、非導電性であるプラスティックの形態である。これはピボットアームとグランドの間に電圧の発生を導く。
【0007】
必要なものは、0Ωから約10000Ωまでの範囲の抵抗を有する減衰材料を有するテンショナである。本発明はこの必要性に合致する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の主な特徴は、0Ωから約10000Ωまでの範囲の抵抗を有する減衰材料を有するテンショナを提供することである。
【0009】
本発明の他の特徴は、本発明の説明と添付された図面により明確になる。
【0010】
本発明は、ベースと、ベースに係合するリングとを備え、リングはベース開口内において中心Cの周りに回転可能であり、リングに軸支されたプーリを備え、リングに揺動自在に係合するピボットアームと、ピボットアームに軸支されたプーリとを備え、ピボットアームを付勢するために、リングとピボットアームの間に配置されたトーションスプリングを備え、ベースとリングの間に摩擦係合する減衰材料と、減衰材料に垂直負荷を付与するスプリングとを備え、減衰材料は0Ωより大きく約10000Ωまでの範囲の抵抗を有するテンショナである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
ここに組み込まれ、明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、その記述とともに、本発明の原理を説明するために役立つ。
図1】テンショナの斜視図である。
図2】テンショナの断面図である。
図3図2の詳細である。
図4】テンショナの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1はテンショナの斜視図である。テンショナ1000はベース10を備える。リング50はベース10において中心Cの周りに回転する。中心Cはベース開口12内にある。開口12は、MGU(図示せず)に取付けられたプーリを受容可能である。中心Cはテンショナの本体から突出しない。
【0013】
ピボットアーム90はリング50に揺動自在に取付けられる。プーリ51は固定具52によりリング50に軸支される。プーリ91は固定具92によりピボットアーム90に軸支される。ベース10は、エンジンモータージェネレータユニット(MGU)等の取付け面にテンショナを取付けるため、1以上の取付けボス11を有する。ベルト(図示せず)は典型的には、プーリ51からMGUプーリ(図示せず)を周りプーリ91へ経由する。MGUプーリの回転軸は中心Cに整列する。ピボットアーム90の揺動軸A-Aは中心Cには整列せず、中心Cからずれている。ピボットアーム90、ベース10およびリング50は、例えば鉄、アルミニウム、あるいは適当な合金である、従来公知の金属材料である。テンショナ1000はまた、オービタル・テンショナとも呼ばれる。
【0014】
図2はテンショナの断面図である。トーションスプリング53はピボットアーム90とリング50の間に係合する。トーションスプリング53はピボットアーム90を付勢して、ベルト(図示せず)に接触させる。ピボットアーム90はブッシュ97とブッシュ96においてシャフト93の周りに揺動する。ダストカバー95は異物がブッシュ96を汚染することを防止する。
【0015】
図3図2の詳細である。保持部材210はリング50をベース10に堅く固定する。保持部材210はベース10に圧入される。ブッシュ220はリング50の回転運動を容易にする。ウェーブスプリング250は均一に分散した垂直力を減衰アセンブリ240に付与して、これをリング50の面55に摩擦接触させる。減衰アセンブリ240は減衰材料230と金属背面板241を備える。本発明のテンショナにおいて、減衰材料230は導電性を有する。
【0016】
動作において、MGUの電界により、電圧(静電荷)がベース10とリング50の間に生じる。電荷蓄積の結果、放電あるいはスパークがベース10とリング50の間に生じる。スパークは車両の運転とテンショナの寿命に有害であり、車両の運転手を不安にさせる。
【0017】
スパークを生じさせないため、導電性の減衰材料230は、MGUを介してリング50をエンジンへ接地させるために導電性の成分を有する。例えば、導電性の減衰材料が使用されたとき、減衰材料230の電気抵抗は約800GΩから約5KΩよりも小さくなる。著しく低下した電気抵抗はピボットアームとベースの間のスパークを減少させる電気経路をもたらす。減衰材料230の電気抵抗の範囲は0Ωより大きく、約10000Ωまでである。好ましくは、抵抗は約5000Ωより小さい。
【0018】
電気抵抗はベース20上の点とリング50上の点との間において測定される。これらの点は減衰アセンブリ240にわたって、概略的に相互に近接しており、したがって抵抗は減衰アセンブリと減衰材料にわたって測定される。
【0019】
導電性材料としてカーボンファイバを用いることが知られているが、カーボンファイバはグラスファイバあるいはアラミドファイバよりも約10倍よりもコストが高く、したがってカーボンファイバはコスト面で有効ではない。他方、本発明の耐摩耗性導電性減衰材料は、低価格のグラスファイバあるいはアラミドファイバと組み合わせたときに減衰材料を十分に導電性にさせる、最小限のステンレス鋼ファイバ(約3%から約5%)である。
【0020】
重量で、減衰材料は次の概算量である。アラミドファイバは約10%、PTFEと二硫化モリブデンは約17%、ステンレス鋼ファイバは約3%から約5%、ステンレス鋼ファイバの量に依存した残りのナイロン66は(約70%から約68%)である。ステンレス鋼ファイバ以外の各成分の量の約±2%までの変化が等しい成功率で可能である。グラスファイバが等しい成功率でアラミドファイバの代わりに用いられてもよい。
【0021】
ステンレス鋼ファイバのアスペクト比は、低い充填重量で、簡単に電気を通すのに十分に大きく、かつマトリクスポリマー材料を最終パーツに容易に成型するのに十分に小さくなければならない。したがって、約8ミクロンの直径を有し、約3mmから約13mmの範囲の呼び長さを有するステンレス鋼ファイバが選定される。より長い鋼ファイバもまた、減衰アセンブリの設計によっては使用可能である。直径は、等しい成功率で約6ミクロンから約10ミクロンの範囲であってもよい。
【0022】
ブッシュ96、ブッシュ97およびブッシュ220はそれぞれ、すなわち全て、同様な導電性の減衰材料である。このことは、電荷をグランドに散逸させるための他の経路を提供することにより、スパークする傾向をさらに低減させる。
【0023】
導電性の減衰材料は静電荷を放電する目的のために、如何なる構成のテンショナでも使用可能である。
【0024】
図4はテンショナの分解図である。ウェーブスプリング250はリング50とベース10の間に保持される。ウェーブスプリング250は減衰アセンブリ240を押圧してリング50に接触させ、垂直力を発生させる。このように減衰アセンブリに付与される垂直力は、延いては、ベース10に対するリング50の相対移動を減衰させる摩擦力を生じさせる。
【0025】
保持部材210はリング50をベース10にクランプさせる。保持部材210はベース10に固定され、リング50とともに回転しない。固定具92はプーリ91をピボットアーム90に取付ける。固定具52はプーリ51をリング50に取付ける。ダストシールド54は異物がベアリング56に侵入するのを防止する。ダストシールド94は異物がベアリング99に侵入するのを防止する。
【0026】
ロックピン98はピボットアーム90とリング50の間に取り外し可能に係合する。取付け工程において、ピン98はピボットアーム90を、リング50に対する所定位置にロックする。例えば、テンショナがMGUに取付けられ、ベルトが掛け回されると、ピン98が外されてピボットアーム90が自由になり、ベルト(図示せず)に係合する。ベルトとの係合はベルト負荷を与え、これは、例えばベルトによる、エンジンのクランクシャフトからMGU(図示せず)への動力伝達を可能にする。
【0027】
本発明の一形態を説明したが、ここに記載された発明の精神と範囲から逸脱することなく、構成と関連した部分を変形することは当業者にとって自明である。
図1
図2
図3
図4