IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特許6998477カラードップラー超音波イメージングを行うための方法及びシステム
<>
  • 特許-カラードップラー超音波イメージングを行うための方法及びシステム 図1
  • 特許-カラードップラー超音波イメージングを行うための方法及びシステム 図2
  • 特許-カラードップラー超音波イメージングを行うための方法及びシステム 図3a
  • 特許-カラードップラー超音波イメージングを行うための方法及びシステム 図3b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】カラードップラー超音波イメージングを行うための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A61B8/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020572439
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019066567
(87)【国際公開番号】W WO2020002171
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】18290072.0
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ボー
(72)【発明者】
【氏名】ボンフォス オディール
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/129336(WO,A1)
【文献】特開2006-421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/141832(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/146952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを取得するステップと、
前記複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームのうちの現在のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを前処理するステップと、
前処理された前記現在のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームに基づいてベクトルフローを推定するステップであって、前記ベクトルフローを推定するステップは、最適化フレームワークを前記現在のスパースカラードップラー画像フレームに適用することによって、前記画像フレームの全視野内のフローベクトル場を解くステップを含み、前記最適化フレームワークは、前記現在のスパースカラードップラー画像フレーム内の観察されたカラードップラー測定値のスパース領域を画定するマスクを含み、これにより、解かれた前記フローベクトル場は前記マスク内の前記観察されたカラードップラー測定値と両立する、ステップと、
推定された前記ベクトルフローに基づいて新しいカラードップラー画像フレームを生成するステップと、
前記新しいカラードップラー画像フレームを含む出力画像を生成するステップと、
を含む、カラードップラー超音波イメージングの方法。
【請求項2】
前記最適化フレームワークは、平滑化項を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最適化フレームワークは、ゼロ発散抑制を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記最適化フレームワークは、推定境界速度を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マスクは、ピクセルごとの重み付けマスクであり、前記重み付けマスクは、観察されたカラードップラー測定値が存在しない前記現在のスパースカラードップラー画像フレーム内のピクセルの各々について、0の値を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記重み付けマスクは、観測されたカラードップラー測定値が存在する前記現在のスパースカラードップラー画像フレーム内のピクセルの各々について、0と1との間の範囲の値を有し、前記値は、各ピクセルにおける前記観測されたカラードップラー測定値の信頼度を反映している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記信頼度は、各ピクセルにおけるノイズレベルの関数である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記出力画像を生成するステップは、前記新しいカラードップラー画像フレームを前記現在のBモード超音波画像フレームにオーバーレイするステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記新しいカラードップラー画像フレームを生成するステップは、前記観察されたカラードップラー測定値が超音波ビーム方向に沿って取得されている当該超音波ビーム方向に、前記画像フレームの前記全視野で解かれた前記フローベクトル場を再投影するステップを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記前処理するステップは、前記現在のスパースカラードップラー超音波画像フレームに位相アンラッピングを行うステップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記前処理するステップは、前記現在のBモード超音波画像フレームにフロー境界セグメンテーションを行うステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記前処理するステップは、前記フロー境界セグメンテーションに基づいて、以前のBモード画像フレームと前記現在のBモードフレームとの間の境界の動きを導出するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記境界の前記動きの導出は、スペックル追跡に基づいている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のスパースカラードップラー超音波画像フレームは、3Dカラードップラー超音波画像ボリュームを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記3Dカラードップラー超音波画像ボリュームは、
複数の空間位置においてスパースカラードップラー超音波画像フレームのセットを取得し、
スパースカラードップラー超音波画像フレームの前記セットの取得フレーム間の画像データを補間し、
前記取得された画像フレーム及び前記補間された画像データに基づいて3Dカラードップラー画像ボリュームを生成することによって生成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を実施するコンピュータプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【請求項17】
超音波画像データを取得する超音波プローブと、
プロセッサと、
を含む、カラードップラー超音波イメージングを行う超音波システムであって、 前記プロセッサは、
複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを取得し、
前記複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームのうちの現在のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを前処理し、
前処理された前記現在のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームに基づいてベクトルフローを推定し、
推定された前記ベクトルフローに基づいて新しいカラードップラー画像フレームを生成し、
前記新しいカラードップラー画像フレームを含む出力画像を生成し、
前記ベクトルフローを推定することは、最適化フレームワークを前記現在のスパースカラードップラー画像フレームに適用することによって、前記画像フレームの全視野内のフローベクトル場を解くことを含み、
前記最適化フレームワークは、前記現在のスパースカラードップラー画像フレーム内の観察されたカラードップラー測定値のスパース領域を画定するマスクを含み、これにより、解かれた前記フローベクトル場は前記マスク内の前記観察されたカラードップラー測定値と両立する、超音波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波イメージングの分野に関し、特にカラードップラー超音波イメージングの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザは、カラードップラー超音波イメージングにより、超音波ビームに沿ったフロー情報を視覚化することができる。この機能は、今日の超音波検査システムに広く展開されている。
【0003】
広い視野においてカラードップラー超音波情報を視覚化することを望むときは、ますます多くの空間点で測定を行う必要があるので、典型的にはフレームレートが低下する。
【0004】
フレームレートペナリゼーションを低減するために、平面波又は発散波に基づく超高速走査方式に頼ることが以前から提案されている。しかし、これには、超高速取得シーケンスの再設計と、超高速使用のための超音波イメージングシステムのフロントエンドの適応とが必要である。したがって、この提案は、超高速走査機能のない既存のシステムでは容易に使用できない可能性がある。
【0005】
したがって、ハードウェアを著しく追加する必要なく、広い視野をイメージングできるカラードップラー超音波イメージング方法を提供する必要がある。
【0006】
EP3111850A1には、カラードップラー法で得られた血流速度情報を利用して、血流の3次元効果を推定することで、推定された3次元効果が反映されている診断情報を提示する超音波診断装置が開示されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、請求項によって規定される。
【0008】
本発明の一態様による実施例によれば、カラードップラー超音波イメージング方法が提供される。方法は、
複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを取得するステップと、
複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームのうちの現在のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを前処理するステップと、
前処理された現在のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームに基づいてベクトルフローを推定するステップと、
推定されたベクトルフローに基づいて新しいカラードップラー画像フレームを生成するステップと、
新しいカラードップラー画像フレームを含む出力画像を生成するステップとを含む。
【0009】
本発明のこの態様によれば、ベクトルフローの推定は、最適化フレームワークを現在のスパースカラードップラー画像フレームに適用することによって、画像フレームの全視野内の流れベクトル場を解くことを含む。さらに、最適化フレームワークは、現在のスパースカラードップラー画像フレーム内の観察されたカラードップラー測定値のスパース領域を画定するマスクを含み、これにより、解かれたフローベクトル場がマスク内の観察されたカラードップラー測定値と両立する。
【0010】
この方法は、広い視野のカラードップラー超音波イメージングを行うときのフレームレートを増加させる。
【0011】
典型的には、カラードップラー画像は、イメージングプロセス中の情報の損失によって、例えば、組織の動きから血流を分離するウォールフィルタによって不完全であるか又は疎(スパース)である。すなわち、スパースカラードップラー画像は、画像フレームの全視野についてのカラードップラー測定値を含まず、その視野内の減少したスパース領域のみについてのカラードップラー測定値を含むので、典型的には不完全である。
【0012】
ベクトルフローの推定を行うことによって、後処理を使用して、かなりの量の追加のフロントエンドハードウェアを必要とすることが多い超高速走査技法の使用を必要とすることなく、広い視野を有する完全なカラードップラー超音波画像を取得できる。
【0013】
スパース測定の領域にマスクを適用することによって、ベクトルフローの推定は、カラードップラー画像データが存在する領域に制限され、上記データが全体に存在しないBモード画像の領域には拡張されない。このようにして、データが全くない状態では推定が行われないので、最終カラードップラー画像の精度が増加する。換言すれば、推定されたベクトルフローは、観察されたカラードップラー超音波画像フレームと両立したままである。マスクは、測定されたドップラー信号が非ゼロであるカラードップラー画像フレームの領域であると定義される。
【0014】
一実施形態において、出力画像の生成は、現在のBモード超音波画像フレームに新しいカラードップラー画像フレームをオーバーレイすることを含む。
【0015】
このようにして、新しいカラードップラー画像フレームは、Bモード超音波画像フレームによって構造的なコンテキストを与えられ、これにより、ユーザが出力画像をより解釈し易くする。
【0016】
一実施形態において、新しいカラードップラー画像フレームの生成は、観察されたカラードップラー測定値が超音波ビーム方向に沿って取得されている当該超音波ビーム方向に、画像フレームの全視野内で解かれたフローベクトル場を再投影することを含む。
【0017】
このようにして、新しいカラードップラー画像フレームは、上記現在のスパースカラードップラー超音波画像フレームにおいて以前は欠けていたカラー情報が満たされる。
【0018】
一構成において、前処理は、現在のスパースカラードップラー超音波画像フレームに位相アンラッピングを行うことを含む。
【0019】
このようにして、ラップされた位相信号(典型的には2piの範囲に制約される)によって課される制限なしに、すべての受信信号の相対位相を評価できる。
【0020】
一実施形態において、前処理は、現在のBモード超音波画像フレームにフロー境界セグメンテーションを行うことを含む。
【0021】
さらなる実施形態において、前処理は、フロー境界セグメンテーションに基づいて、以前のBモード画像フレームと現在のBモードフレームとの間の境界の動きを導出することを含む。
【0022】
このようにして、視野内の構造、例えば心臓の壁の動きをモニタリングして、ベクトルフローに影響を及ぼす境界の動きを決定できる。これを考慮することにより、最終画像の精度が向上する。
【0023】
一構成において、境界の動きの導出は、スペックル追跡に基づいている。
【0024】
さらなる実施形態において、最適化フレームワークは平滑化項を含む。
【0025】
平滑化項は、フレーム内に存在する任意のイメージングアーチファクトを低減又は除去することによって、Bモード画像フレームの精度を増加させる。平滑化項は、数値解を生成すると、最適化フレームワークの安定性を増加させ、これにより、測定不正確性に対する最適化フレームワークのロバスト性を増加させる。
【0026】
さらなる実施形態において、最適化フレームワークはゼロ発散抑制を含む。
【0027】
ゼロ発散抑制は、追加の流体(血液)がシステムに誤って加えられることを防止する。つまり、流体の質量が保存される。
【0028】
さらなる又は他の実施形態において、最適化フレームワークは推定境界速度を含む。
【0029】
このようにして、推定されたベクトルフローは、境界速度(拍動する心臓において特に関連する)を考慮に入れ、これにより、最終画像の精度を増加させる。推定されたベクトルフローは、境界近傍の境界速度に一致するように制約される場合がある。
【0030】
さらなる実施形態において、マスクは、観察されたカラードップラー測定値が存在しない現在のスパースカラードップラー画像フレーム内のピクセルの各々について0の値を有するピクセルごとの重み付けマスクである。
【0031】
このような実施形態において、重み付けマスクは、好ましくは、観察されたカラードップラー測定値が存在する現在のスパースカラードップラー画像フレーム内のピクセルの各々について、0と1との間の範囲の値を有し、当該値は、各ピクセルにおける観察されたカラードップラー測定値の信頼度を反映している。いくつかの実施例において、観測されたカラードップラー測定値が存在する任意のピクセルについての重み付けマスクの値は、厳密にゼロより大きく、1より厳密に小さいことができ、一方、いくつかの他の実施形態において、当該値は、ゼロに等しい値から1に等しい値までの範囲であることができる。
【0032】
特に、信頼度は、各ピクセルにおけるノイズレベルの関数である。
【0033】
このようにして、フローベクトル場を解くための最適化フレームワークに対する(例えば、ノイズによる)観察されたカラードップラー測定値の信頼度が低いピクセルの寄与は、(例えば、重み付けマスクの値をゼロに等しくすることによって)低減又は抑制することができ、一方、(例えば、重み付けマスクの値を1に近づけるか、又は1に等しくすることによって)信頼度の高いピクセルの寄与を高めることができる。
【0034】
一構成において、複数のスパースカラードップラー超音波画像フレームは、3Dカラードップラー超音波画像ボリュームを含む。
【0035】
さらなる構成において、3Dカラードップラー超音波画像ボリュームは、
複数の空間位置においてスパースカラードップラー超音波画像フレームのセットを取得し、
スパースカラードップラー超音波画像フレームのセットの取得フレーム間の画像データを補間し、
取得された画像フレーム及び補間された画像データに基づいて3Dカラードップラー画像ボリュームを生成することによって生成される。
【0036】
このようにして、3Dカラードップラーイメージングを行うために必要とされる処理能力が低減され、これにより、上述の方法によって提供されるフレームレート向上が維持される。
【0037】
本発明の一態様による実施例によれば、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、上述の方法を実施するコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0038】
本発明の一態様による実施例によれば、カラードップラー超音波イメージングを行う超音波システムが提供される。超音波システムは、
超音波画像データを取得する超音波プローブと、
プロセッサとを含み、プロセッサは、
複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを取得し、
複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームのうちの現在のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを前処理し、
前処理された現在のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームに基づいてベクトルフローを推定し、
推定したベクトルフローに基づいて新しいカラードップラー画像フレームを生成し、
新しいカラードップラー画像フレームを含む出力画像を生成する。
【0039】
本発明のこの態様に従って、ベクトルフローを推定することは、最適化フレームワークを現在のスパースカラードップラー画像フレームに適用することによって、画像フレームの全視野内のフローベクトル場を解くことを含む。さらに、最適化フレームワークは、現在のスパースカラードップラー画像フレーム内の観察されたカラードップラー測定値のスパース領域を画定するマスクを含み、これにより、解かれたフローベクトル場がマスク内の観察されたカラードップラー測定値と両立する。
【0040】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかになり、これらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
添付図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0042】
図1図1は、一般的な動作を説明するための超音波診断イメージングシステムを示す。
図2図2は、本発明の方法を示す。
図3a図3aは、スパースカラードップラー画像フレームと、関連するBモード画像にオーバーレイされた対応する新しいカラードップラー画像フレームとの比較を示す。
図3b図3bは、スパースカラードップラー画像フレームと、関連するBモード画像にオーバーレイされた対応する新しいカラードップラー画像フレームとの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0044】
詳細な説明及び具体例は、装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示のみを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより良く理解されるであろう。図面は、概略的なものに過ぎず、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。また、同じ参照符号は、同じ又は類似の部分を示すために、図面全体にわたって使用されることを理解されたい。
【0045】
本発明は、カラードップラー超音波イメージング方法を提供する。方法は、複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームを取得することを含む。次に、カラードップラー及びBモード画像フレームは、これらのフレームに基づいてベクトルフローを推定する前に前処理される。この推定値に基づいて新しいカラードップラー画像フレームが生成され、出力画像に含められる。
【0046】
図1を参照して、まず、例示的な超音波システムの一般的な動作について説明するが、本発明はトランスデューサアレイによって測定される信号の処理に関するので、システムの信号処理機能に重点を置いて説明する。
【0047】
このシステムは、超音波を送信し、エコー情報を受信するためのトランスデューサアレイ6を有するアレイトランスデューサプローブ4を含む。トランスデューサアレイ6は、CMUTトランスデューサ、PZT又はPVDFなどの材料で形成された圧電トランスデューサ、又は任意の他の適切なトランスデューサ技術を含むことができる。この例では、トランスデューサアレイ6は、関心領域の2D平面か又は3次元ボリュームのいずれかを走査可能なトランスデューサ8の2次元アレイである。別の例では、トランスデューサアレイは1Dアレイであってもよい。
【0048】
トランスデューサアレイ6は、トランスデューサ素子による信号の受信を制御するマイクロビームフォーマ12に結合されている。マイクロビームフォーマは、米国特許第5,997,479号(Savord他)、第6,013,032号(Savord)、及び第6,623,432号(Powers他)に説明されているように、トランスデューサの、一般に「グループ」又は「パッチ」と呼ばれるサブアレイによって受信される信号の少なくとも部分的なビーム形成が可能である。
【0049】
マイクロビームフォーマは、完全にオプションであることに留意されたい。さらに、システムは、マイクロビームフォーマ12が結合可能で、送信モードと受信モードとの間でアレイを切り替え、また、マイクロビームフォーマが使用されず、メインシステムビームフォーマ20によってトランスデューサアレイが直接操作される場合に、高エネルギー送信信号からメインビームフォーマを保護する送信/受信(T/R)スイッチ16を含む。トランスデューサアレイ6からの超音波ビームの送信は、メイン送信ビームフォーマ(図示せず)及びT/Rスイッチ16によってマイクロビームフォーマに結合されているトランスデューサコントローラ18によって指示される。トランスデューサコントローラ18は、ユーザインターフェース又は制御パネル38のユーザ操作から入力を受け取ることができる。コントローラ18は、送信モード中にアレイ6のトランスデューサ素子(直接か又はマイクロビームフォーマを介して)を駆動するための送信回路を含むことができる。
【0050】
典型的なライン単位でのイメージングシーケンスでは、プローブ内のビーム形成システムは、次のとおりに動作する。送信中、ビームフォーマ(実装形態に応じて、マイクロビームフォーマでもよいし、メインシステムビームフォーマでもよい)は、トランスデューサアレイ、又はトランスデューサアレイのサブアパーチャを作動させる。サブアパーチャは、トランスデューサの1次元ラインでもよいし、より大きなアレイ内のトランスデューサの2次元パッチでもよい。送信モードでは、アレイ又はアレイのサブアパーチャによって生成される超音波ビームのフォーカシング及びステアリングは、以下に説明するように制御される。
【0051】
被験者からの後方散乱エコー信号を受信すると、受信信号は、受信信号を位置合わせするために(以下に説明するように)受信ビーム形成を受ける。サブアパーチャが使用される場合には、サブアパーチャが例えば1つのトランスデューサ素子だけシフトされる。その後、シフトされたサブアパーチャを作動させる。このプロセスは、トランスデューサアレイのすべてのトランスデューサ素子が作動されるまで繰り返される。
【0052】
各ライン(又はサブアパーチャ)について、最終超音波画像の関連するラインを形成するために使用される全受信信号は、受信期間中に所与のサブアパーチャのトランスデューサ素子によって測定された電圧信号の合計である。以下のビーム形成プロセスの後の結果として得られるライン信号は、通常、無線周波数(RF)データと呼ばれる。次いで、様々なサブアパーチャによって生成された各ライン信号(RFデータセット)が、最終超音波画像のラインを生成するために、付加的な処理を受ける。時間に伴うライン信号の振幅の変化は、深度に伴う超音波画像の輝度の変化に寄与し、高振幅ピークは、最終画像における明るいピクセル(又はピクセルの集合)に対応する。ライン信号の開始付近に現れるピークは、浅い構造からのエコーを表す一方で、ライン信号において進行的に後で現れるピークは、被験者内のより深い構造からのエコーを表す。
【0053】
トランスデューサコントローラ18によって制御される機能の1つは、ビームがステアリングされ、フォーカシングされる方向である。ビームは、トランスデューサアレイから真っ直ぐ前に(トランスデューサアレイに直交して)、又はより広い視野のために異なる角度でステアリングされてもよい。送信ビームのステアリング及びフォーカシングは、トランスデューサ素子の作動時間の関数として制御することができる。
【0054】
一般に、超音波データ取得では、平面波イメージングと「ビームステアリング」イメージングとの2つの方法が区別されるが、これら2つの方法は、送信モード(「ビームステアリング」イメージング)及び/又は受信モード(平面波イメージング及び「ビームステアリング」イメージング)におけるビーム形成の存在によって区別される。
【0055】
まず、フォーカシング機能を見ると、すべてのトランスデューサ素子を同時に作動させることによって、トランスデューサアレイは、被験者を通って移動するにつれて発散する平面波を生成する。この場合、超音波のビームは、フォーカスされないままである。トランスデューサの作動に、位置依存時間遅延を導入することによって、焦点ゾーンと呼ばれる所望の点でビームの波面を収束させることができる。焦点ゾーンは、横方向ビーム幅が送信ビーム幅の半分未満である点として画定される。このようにして、最終超音波画像の横方向の解像度が向上される。
【0056】
例えば、トランスデューサアレイの最も外側の素子から開始して中心の素子(複数可)において終了するように、時間遅延によってトランスデューサ素子を作動させる場合、焦点ゾーンは、中心素子(複数可)と一直線上で、プローブから離れた所与の距離で形成されるであろう。プローブからの焦点ゾーンの距離は、トランスデューサ素子作動のその後の各ラウンド間の時間遅延に応じて変化する。ビームは、焦点ゾーンを通過した後、発散し始め、遠視野イメージング領域を形成する。なお、トランスデューサアレイの近くの焦点ゾーンに対して、超音波ビームは、遠視野において迅速に発散し、最終画像におけるビーム幅のアーチファクトをもたらすことに留意されたい。典型的には、トランスデューサアレイと焦点ゾーンとの間にある近視野は、超音波ビームの大きな重複のために、ほとんど詳細を示さない。したがって、焦点ゾーンの位置を変化させることは、最終画像の品質に著しい変化をもたらす可能性がある。
【0057】
送信モードでは、超音波画像が複数の焦点ゾーン(それぞれが異なる送信焦点を有し得る)に分割されない限り、1つの焦点のみが画定されることに留意されたい。
【0058】
さらに、被験者内部からのエコー信号を受信すると、受信フォーカシングを行うために、上述した処理の逆を行うことができる。換言すれば、入来信号は、トランスデューサ素子によって受信され、信号処理のためにシステムに渡される前に電子的な時間遅延を受ける。この最も単純な例は、遅延和ビーム形成と呼ばれる。トランスデューサアレイの受信フォーカシングを、時間の関数として動的に調整することが可能である。
【0059】
次に、ビームステアリングの機能を見ると、トランスデューサ素子に時間遅延を正しく適用することによって、トランスデューサアレイを離れるときに、超音波ビームに所望の角度を付与することが可能である。例えば、トランスデューサアレイの第1の側のトランスデューサを作動させ、続いて、残りのトランスデューサを、アレイの反対側で終了するシーケンスで作動させることによって、ビームの波面は、第2の側に向かって角度が付けられることになる。トランスデューサアレイの法線に対するステアリング角度の大きさは、その後のトランスデューサ素子の作動間の時間遅延の大きさに依存する。
【0060】
さらに、ステアリングビームをフォーカスすることが可能であり、この場合、各トランスデューサ素子に適用される総時間遅延は、フォーカシング時間遅延とステアリング時間遅延との両方の和である。この場合、トランスデューサアレイは、フェーズドアレイと呼ばれる。
【0061】
作動のためにDCバイアス電圧を必要とするCMUTトランスデューサの場合、トランスデューサコントローラ18は、トランスデューサアレイのためのDCバイアス制御部45を制御するために結合することができる。DCバイアス制御部45は、CMUTトランスデューサ素子に印加されるDCバイアス電圧を設定する。
【0062】
トランスデューサアレイの各トランスデューサ素子に対して、典型的にはチャネルデータと呼ばれるアナログ超音波信号が、受信チャネルを介してシステムに入る。受信チャネルでは、マイクロビームフォーマ12によってチャネルデータから部分的にビーム形成された信号が生成され、次いで、信号はメイン受信ビームフォーマ20に渡され、そこで、トランスデューサの個々のパッチからの部分的にビーム形成された信号は、無線周波数(RF)データと呼ばれる完全にビーム形成された信号に結合される。各段階で行われるビーム形成は、上述のように実行されても、追加の機能を含んでもよい。例えば、メインビームフォーマ20は、128個のチャネルを有し、その各チャネルは十数個又は数百個のトランスデューサ素子のパッチから部分的にビーム形成された信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイの数千のトランスデューサによって受信された信号は、単一のビーム形成された信号に効率的に寄与することができる。
【0063】
ビーム形成された受信信号は、信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、受信したエコー信号を、帯域通過フィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、並びに高調波信号分離(組織及びマイクロバブルから戻された非線形の(基本周波数の高次高調波)エコー信号の識別を可能にするように、線形信号と非線形信号とを分離するように作用する)など、様々なやり方で処理することができる。信号プロセッサはまた、スペックル低減、信号合成、及びノイズ除去などの追加の信号強化を行ってもよい。信号プロセッサ内の帯域通過フィルタは、追跡フィルタとすることができ、その通過帯域は、エコー信号が受信される深度が増加するにつれて、高い周波数帯域から低い周波数帯域へとスライドし、これにより、典型的には解剖学的情報がない大きな深度から、高い周波数のノイズを排除する。
【0064】
送信及び受信のためのビームフォーマは、異なるハードウェア内に実装され、異なる機能を有することができる。当然ながら、受信ビームフォーマは、送信ビームフォーマの特性を考慮するようにデザインされている。図1では、単純化のために、受信ビームフォーマ12、20のみが示されている。完全なシステムでは、送信マイクロビームフォーマ及びメイン送信ビームフォーマを有する送信チェーンも存在する。
【0065】
マイクロビームフォーマ12の機能は、アナログ信号経路の数を削減するために信号の最初の組み合わせを提供することである。これは、典型的にはアナログ領域で行われる。
【0066】
最終ビーム形成は、メインビームフォーマ20で、典型的にはデジタル化の後に行われる。
【0067】
送信及び受信チャネルは、固定周波数帯域を有する同じトランスデューサアレイ6を使用する。しかしながら、送信パルスが占める帯域幅は、使用される送信ビーム形成に応じて変化する。受信チャネルは、トランスデューサ帯域幅全体(これは古典的なアプローチである)を捕捉することができるか、又は、帯域通過処理を使用することによって、所望の情報(例えば、主高調波の高調波)を含む帯域幅のみを抽出することができる。
【0068】
次いで、RF信号は、Bモード(すなわち、輝度モード、又は2Dイメージングモード)プロセッサ26及びドップラープロセッサ28に結合される。Bモードプロセッサ26は、器官組織及び血管などの身体内の構造のイメージングのために、受信された超音波信号に対して振幅検出を行う。ライン単位でのイメージングの場合には、各ライン(ビーム)は、関連するRF信号によって表され、その振幅を使用して、Bモード画像内のピクセルに割り当てられる輝度値が生成される。画像内のピクセルの正確な位置は、RF信号に沿った関連する振幅測定の位置と、RF信号のライン(ビーム)番号とによって決まる。そのような構造のBモード画像は、米国特許第6,283,919号(Roundhill他)及び米国特許第6,458,083号(Jago他)に説明されているように、高調波若しくは基本画像モード、又は両方の組み合わせで形成されてもよい。ドップラープロセッサ28は、画像フィールド内の血球の流れなど、動く物質の検出のために、組織の動き及び血流から生じる時間的に異なる信号を処理する。ドップラープロセッサ28は、典型的には身体内の選択された種類の物質から戻されたエコーを通過させるか又は拒絶するように設定されたパラメータを有するウォールフィルタを含む。
【0069】
Bモードプロセッサ及びドップラープロセッサによって生成される構造信号及び動き信号は、走査変換器32及びマルチプレーナリフォーマッタ44に結合される。走査変換器32は、エコー信号を所望の画像フォーマットで受信した空間関係に配置する。換言すれば、走査変換器は、円筒座標系からのRFデータを、画像ディスプレイ40に超音波画像を表示するのに適したデカルト座標系に変換するように作用する。Bモードイメージングの場合、所与の座標におけるピクセルの輝度は、その位置から受信されるRF信号の振幅に比例する。例えば、走査変換器は、エコー信号を2次元(2D)セクタ形状形式又はピラミッド状の3次元(3D)画像に配置することができる。走査変換器は、画像フィールド内の点における動きに対応する色をBモード構造画像にオーバーレイすることができ、ドップラー推定速度は所与の色を生成する。組み合わされたBモード構造画像及びカラードップラー画像は、構造画像フィールド内の組織の動き及び血流を描写する。マルチプレーナリフォーマッタは、米国特許第6,443,896号(Detmer)に説明されているように、身体のボリュメトリック領域内の共通平面内の点から受け取ったエコーをその平面の超音波画像に変換する。米国特許第6,530,885号(Entrekin他)に説明されているように、ボリュームレンダラ42が、3Dデータセットのエコー信号を、所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0070】
2D又は3D画像は、走査変換器32、マルチプレーナリフォーマッタ44、及びボリュームレンダラ42から画像プロセッサ30に結合されて、画像ディスプレイ40に表示するために、さらに強調、バッファリング、及び一時記憶される。イメージングプロセッサは、例えば強い減衰子や屈折によって引き起こされる音響陰影、例えば弱い減衰子によって引き起こされる後方増強、例えば反射性の高い組織界面が近接して位置する場合の残響アーチファクトなどの特定のイメージングアーチファクトを最終超音波画像から除去する。さらに、画像プロセッサは、最終超音波画像のコントラストを改善するために、特定のスペックル低減機能を行ってもよい。
【0071】
ドップラープロセッサ28によって生成された血流値及びBモードプロセッサ26によって生成された組織構造情報は、イメージングに使用されることに加えて、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、器官のサイズ及び妊娠期間などの構造的測定に加えて、血流のボリュームレートなどの異なるフロー条件の測度を生成する。定量化プロセッサは、測定が行われるべき画像の解剖学的構造内の点など、ユーザ制御パネル38からの入力を受信してもよい。
【0072】
定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ40に画像と共に測定グラフィックス及び値を再生するため、及びディスプレイデバイス40からのオーディオ出力のために、グラフィックプロセッサ36に結合される。グラフィックプロセッサ36は、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイを生成することもできる。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像の日時、イメージングパラメータなどの標準的な識別情報を含むことができる。このために、グラフィックプロセッサは、患者名などの入力をユーザインターフェース38から受け取る。ユーザインターフェースはまた、送信コントローラ18に結合されて、トランスデューサアレイ6からの超音波信号の生成、したがって、トランスデューサアレイ及び超音波システムによって生成される画像の生成を制御する。コントローラ18の送信制御機能は、行われる機能のうちの1つに過ぎない。コントローラ18はまた、(ユーザによって与えられる)動作モードと、受信アナログ-デジタル変換器における対応する必要な送信構成及び帯域通過構成とを考慮する。コントローラ18は、固定状態を有するステートマシンとすることができる。
【0073】
ユーザインターフェースはまた、マルチプレーナリフォーマット(MPR)画像の画像フィールドにおいて定量化された測定を行うために使用される複数のMPR画像の平面の選択及び制御のために、マルチプレーナリフォーマッタ44にも結合される。
【0074】
図2は、本発明の方法100を示す。
【0075】
ステップ110及び120において、複数のスパースカラードップラー超音波画像フレーム及びBモード超音波画像フレームがそれぞれ取得される。画像フレームは、図1を参照して上述したように取得される。
【0076】
典型的には、カラードップラー画像フレームは、イメージングプロセス中の情報の損失によって、例えば、組織の動きから血流を分離するウォールフィルタによって不完全であるか又はスパースである。
【0077】
複数の取得されたカラードップラー及びBモード画像フレームのうち、各タイプの1つの画像フレーム(例えば、最近取得された画像フレーム)は、前処理ステップ130を受ける。
【0078】
現在のスパースカラードップラーフレームはmと示され、vと示される対応するBモードフレームにオーバーレイされる。Bモードフレーム上のカラードップラーフレームのオーバーレイは、Bモード画像に含まれる構造情報が、カラードップラーフレームに含まれるフロー情報と共に使用されることを可能にする。
【0079】
ステップ140において、ドップラーフレームmに対して位相アンラッピングが行われる。
【0080】
典型的には、時間変化関数の信号位相は、(-π,π)又は(0,2π)の区間で表され、この区間外の位相を有する信号は、一方の境界でカットオフされ、他方で再び始まる。これにより、信号にディラックデルタインパルスの形で不連続性が生じ、これは、最終画像にアーチファクトをもたらす可能性がある。位相アンラッピングを行うことにより、信号から抑制が除去され、これらの不連続性が回避される。位相アンラッピングは、K.Itohによる「Analysis of phase unwrapping problem」(Applied Optics、第21巻、第14号、2470頁、1982年7月15日)に説明されているように行われる。
【0081】
ステップ150において、Bモード画像フレームに対してフロー境界セグメンテーションが行われる。
【0082】
セグメンテーションは、カラードップラー画像フレームに示されるフローを制御する画像内の境界を特定する。これらの境界を特定することにより、将来のベクトルフロー推定を流体フローが可能な領域のみに限定することが可能となり、方法の効率が上がる。セグメンテーションは、信号強度閾値に基づいて、又は任意の他の適切な方法によって行われてよい。
【0083】
ステップ160において、セグメンテーションされたフロー境界の動きが、現在のBモード画像フレームと、現在のBモード画像フレームの直前に取得されたBモードフレームなどの以前のBモード画像フレーム170とに基づいて導出される。
【0084】
特にイメージングが心臓に対して行われているとき、フロー境界の動き(vと示す)は、領域のフルベクトルフローにおいて重要な役割を果たす。フロー境界の動きは、スペックル追跡に基づいてフレームごとに追跡される。
【0085】
ステップ180において、前処理されたカラードップラー画像フレームm及びBモード画像フレームvに基づいて、ベクトルフローレートが推定される。
【0086】
ベクトルフロー推定を、最適化フレームワークを通して解く。フローベクトル場uを解くために、以下のフレームワークが最小化される。
【数1】
ここで、sは、カラードップラー画像フレーム測定値mが超音波ビーム方向に沿って取得されている当該超音波ビーム方向であり、Mは、カラードップラー画像フレーム内で観察される測定値のスパース領域を画定するマスク(信頼マスクとも呼ぶ)を示し、Bは、セグメンテーションによって与えられるフロー境界(組織)であり、それに対して境界速度vが推定され、λは、平滑化項
【数2】
の重みを表す。
【0087】
項||M[〈s,u〉-m]||は、ドップラー測定値mと両立するようにベクトル場uのフロー解を制限する。カラードップラー画像フレーム上の任意のピクセルxについて、u(x)が、解くべき当該ピクセルにおけるフローベクトルである。同じピクセルにおけるドップラービーム方向ベクトルs(x)上のフローベクトルu(x)の射影は、それらの内積〈s(x),u(x)〉によって記述される。この積は、所与のピクセルにおける真のドップラー測定値にできるだけ近いように計算される。項〈s,u〉-mは差分画像と呼ばれ、ドップラー測定値mと、フローベクトルu(x)及びドップラービーム方向ベクトルs(x)の内積との差を表す。
【0088】
Mは、カラードップラー画像フレーム上の各位置における各ドップラー測定値の信頼性を記述するピクセルごとの重み付けマスクである。これは、差分画像〈s,u〉-mに適用される。最も単純な場合、ピクセルxにおいて、M(x)は、0又は1のいずれかになる。すべてのピクセルにドップラー速度測定値があるわけではないため、利用可能な測定値があるピクセルのみがM(x)=1を有する。他は、(測定値がないため)0の値を有する。より一般的には、M(x)は、(例えばノイズレベルの関数として)ピクセルxにおけるドップラー測度に対する以前の信頼度を反映するように0と1との間の範囲である。この理由から、この第1項||M[〈s,u〉-m]||は最小化されるべきである。
【0089】

【数3】
は、方程式の数値解がより安定するように、正則化又は平滑化のためのものである。λは、両立性項(後述)と平滑化項との間のトレードオフを調整するスカラーである。
【0090】
両立性項とも呼ばれる制約u(B)=vは、フロー解が境界条件と両立することを必要とする。境界ピクセルセットは、Bによって指定される。vは、例えばスペックル追跡を使用して、上述したように導出され得る境界速度である。
【0091】
制約
【数4】
は、フロー解が、質量保存のために発散のないものであるべきであるという制限を反映する。
【0092】
方程式は、拡張ラグランジュ(Augmented Lagranigian)法を用いて解かれるが、投影勾配降下などの凸最小化のための他の標準的な数値法も適用できる。
【0093】
言い換えると、ベクトルフローは、ベクトルフローが信頼マスクM内の観察されたカラードップラー測定値と両立し、視野内の流体の質量保存がゼロ発散制約(
【数5】
)を通して配慮され、解は推定された境界速度(u(B)=v)と両立するように全視野において解かれる。境界速度は、ユーザ定義の心腔の自動追跡に基づいて推定することができる。
【0094】
ステップ190において、推定されたベクトルフローに基づいて、新しいカラードップラー画像フレームが生成される。
【0095】
全視野において、ベクトル場uが推定されると、フローベクトルは、ビーム方向sに再投影されて、前に欠落していたカラー情報が充填されている新しいカラードップラー画像フレームが形成される。次に、これを使用して、ステップ200において出力画像を形成することができる。
【0096】
ステップ210において、新しいカラードップラー画像フレームを、現在のBモード画像フレームにオーバーレイして、イメージング領域の構造的なコンテキストに加えて、完全なカラードップラー情報をユーザに提供する。
【0097】
これまでの方法で説明したように、画像フレームは、2Dであると仮定されているが、この方法は、必要とされる測定数が著しく多いために、フレームレートの影響がさらに顕著である3Dカラー取得に拡張され得る。
【0098】
この場合、複数のカラードップラー画像フレームは、3Dカラードップラー画像ボリュームを含む。
【0099】
3Dカラードップラーの取得を加速するために、スパースカラードップラー超音波画像フレームのセットが、複数の空間位置において取得される。
【0100】
次いで、スパースカラードップラーカラーデータは、例えばナビエ・ストークス(Navier Stokes)方程式によって、空間及び時間において補間され、取得されたフレームと組み合わせて使用されて、3Dカラードップラー画像ボリュームを形成する。これは、3Dカラードップラーイメージングを行うために必要な3D画像ボリュームを取得するために必要な測定の数を減少させ、結果として、フレームレートが高くなる。次いで、3Dカラードップラー画像ボリュームは、従来の3Dイメージングモードで取得された3DのBモード超音波ボリュームと組み合わせることができる。
【0101】
図3aは、カラー情報が心腔内で部分的にのみ測定されているスパースカラードップラー画像フレーム300の一例を示す。図3bは、新しいカラードップラー画像フレームのベクトル矢印の形のベクトルフロー推定値と、補充された色とを示す。今度は、心室領域全体がカラー情報で満たされていることが分かり、これは、図3aに示すスパース測定値と視覚的に一致する。この例では、画像取得中に収集された観察されたスパースカラー領域は、最終画像における完全に塗りつぶされたカラー領域の約25%を表す。
【0102】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された発明を実施する際に、当業者によって理解され、実施されることができる。特許請求の範囲において、単語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は、複数を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3a
図3b