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  • 特許-インク組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20220111BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20220111BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/101
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021080717
(22)【出願日】2021-05-12
(62)【分割の表示】P 2020193725の分割
【原出願日】2020-11-20
【審査請求日】2021-05-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】犬丸 雅基
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 保真
(72)【発明者】
【氏名】宇高 公淳
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100353(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070438(WO,A1)
【文献】特開2012-241057(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021352(WO,A1)
【文献】特表2019-505648(JP,A)
【文献】特開2019-183374(JP,A)
【文献】特開平10-219162(JP,A)
【文献】特開2018-100396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B41M 5/00
B41J 2/01
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法によって吐出される活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、
前記インク組成物は、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有し、
前記紫外線吸収剤は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、以下の方法で測定される該紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上であり、
色材の含有量は前記インク組成物全量中3.0質量%以下であり、
前記酸化防止剤は、NH型ヒンダードアミン化合物を含有する
インク組成物。
紫外線吸収剤を20ppmの濃度となるように1-プロパノールに溶解させて溶液Aを作成し、紫外線吸収剤を含有しない1-プロパノールをリファレンスとしてこれらの吸光度の差分を求めることで吸光度面積Abを測定する。
【請求項2】
前記インク組成物は、インクジェット法によって被体の表面に吐出される活性エネルギー線硬化型のインク組成物であり、
前記インク組成物は、前記被体が視認性を有したまま該被体に耐候性を付与する耐候層の積層に用いられるものである
請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
色材の含有量は前記インク組成物全量中1.0質量%以下である
請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
被体と、該被体の表面に形成された耐候層と、を備え、
前記耐候層は、請求項1からのいずれかに記載のインク組成物の硬化物である
印刷物。
【請求項5】
前記耐候層の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Ablは30.0以上である
請求項に記載の印刷物。
【請求項6】
インクジェット法によって活性エネルギー線硬化型のインク組成物を吐出する記録方法であって、
前記インク組成物は、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有し、
前記インク組成物の色材の含有量は、前記インク組成物全量中3.0質量%以下であり、
前記酸化防止剤は、NH型ヒンダードアミン化合物を含有し、
前記紫外線吸収剤は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、以下の方法で測定される該紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上である
記録方法。
紫外線吸収剤を20ppmの濃度となるように1-プロパノールに溶解させて溶液Aを作成し、紫外線吸収剤を含有しない1-プロパノールをリファレンスとしてこれらの吸光度の差分を求めることで吸光度面積Abを測定する。
【請求項7】
インクジェット法によって活性エネルギー線硬化型のインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、
前記インク組成物は、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有し、
前記インク組成物の色材の含有量は、前記インク組成物全量中3.0質量%以下であり、
前記酸化防止剤は、NH型ヒンダードアミン化合物を含有し、
前記紫外線吸収剤は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、以下の方法で測定される該紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上である
印刷物の製造方法。
紫外線吸収剤を20ppmの濃度となるように1-プロパノールに溶解させて溶液Aを作成し、紫外線吸収剤を含有しない1-プロパノールをリファレンスとしてこれらの吸光度の差分を求めることで吸光度面積Abを測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に被体の表面に吐出することで被体の耐候性を向上させるインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物の小ロット多品種化が進んでおり、従来のオフセット方式の印刷方法の代替として、オンデマンドプリントであるインクジェット方式の印刷方法が注目されている。インクジェット方式の印刷方法は、従来のオフセット方式の印刷方法と比較して、簡便であり、経済性や省エネルギー性等のメリットを有する。
【0003】
このようなインクジェット方式の印刷方法の中にも紫外線等の活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化型のインク組成物がある。活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、速乾性があるため、プラスチック、ガラス、コート紙等、インクを吸収しない又は殆ど吸収しない基材に印字する場合であっても、インクの滲みを防止できる。
【0004】
例えば、特許文献1には、所定量の重合性化合物と、重合開始剤と、光安定剤と、を含有する活性エネルギー線硬化型のインク組成物が開示されている。特許文献1には、このインク組成物は、インクジェットプリンタにおける吐出安定性に優れ、耐候性に優れた印刷物を得ることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-214603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、特許文献1には、印刷物を得るための着色材を含有するインク組成物に関する技術が記載されているにすぎない。このため、着色材を含有する着色層自体は暴露されることとなるので、印刷物を屋外に曝露するような場合には耐候性が十分ではないという問題があった。
【0007】
本発明は、耐候性が高い印刷物を得ることができるインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、所定の紫外線吸収剤を含有するインク組成物であれば上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1)インクジェット法によって吐出される活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、前記インク組成物は、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有し、前記紫外線吸収剤は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、該紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上であるインク組成物。
【0010】
(2)前記酸化防止剤は、NH型ヒンダードアミン化合物を含有する(1)に記載のインク組成物。
【0011】
(3)色材の含有量は前記インク組成物全量中1.0質量%以下である(1)又は(2)に記載のインク組成物。
【0012】
(4)被体と、該被体の表面に形成された耐候層と、を備え、前記耐候層は、重合性化合物の硬化物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有し、前記紫外線吸収剤は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、該紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上である印刷物。
【0013】
(5)前記耐候層の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Ablは30.0以上である(4)に記載の印刷物。
【0014】
(6)インクジェット法によって活性エネルギー線硬化型のインク組成物を吐出する記録方法であって、前記インク組成物は、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有し、前記紫外線吸収剤は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、該紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上である記録方法。
【0015】
(7)インクジェット法によって活性エネルギー線硬化型のインク組成物を吐出する印刷物の製造方法であって、
前記インク組成物は、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有し、
前記紫外線吸収剤は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、該紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上である印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインク組成物は、耐候性が高い印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】各紫外線吸収剤を所定の方法で測定した吸光度を示す吸光度曲線である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0019】
<1.インク組成物>
本実施の形態に係るインク組成物は、インクジェット法によって吐出される活性エネルギー線硬化型のインク組成物である。そして、このインク組成物は、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有している。このインク組成物は、被体の表面にインクジェット法によって吐出される。
【0020】
そして、被体の表面に吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射すると、被体の表面に重合性化合物の硬化物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有する耐候層が形成されて、この耐候層により被体の耐候性を向上させることができる。なお、重合性化合物の硬化物とは、インク組成物に含まれる重合性化合物の少なくとも一部が重合して形成された硬化物(高分子)を意味する。また、その硬化物に未反応(未硬化状態)の重合性化合物が含まれていてもよい。また、本明細書において、被体とは、記録媒体の表面そのものであっても、記録媒体の表面の一部又は全面に着色層が積層されたものであってもよく、特に限定されるものではない。また、詳しくは後述するが、本明細書において「着色層」とは、通常のインク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)を含有する層であり主に印刷物の画像(写真や文字等も含む)を表現する層を意味する。
【0021】
そして、この活性エネルギー線硬化型のインク組成物は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、所定の条件で測定される波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上となるような紫外線吸収剤を含有することを特徴とする。このようなインク組成物により形成した耐候層を被体の表面に形成することで、被体の耐候性を向上させることができる。しかも、このインク組成物には所定の酸化防止剤を含有しており、これにより耐候層が長時間暴露されることによる耐候層の退色(黄変)を効果的に抑制することができる。
【0022】
よって、本実施の形態に係るインク組成物によって得られる印刷物は、長時間暴露されることによっても被体の外観が変化することがなく、耐候性が極めて高い。
【0023】
なお、詳しくは後述するが、本実施の形態に係るインク組成物によって形成される耐候層の厚さを敢えて不均一の厚さになるようにして表面を艶消し調やグロス調にすることや、凹凸が付けられた立体的で意匠性の高い耐候層としてもよい。
【0024】
以下、本実施の形態に係るインク組成物に含まれる各成分について各々説明する。
【0025】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤とは、紫外線領域に吸収波長を有する化合物(モノマー・オリゴマー・ポリマー)である。具体的には、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上である。
【0026】
紫外線吸収剤の吸光度面積Abは、次の方法で測定された吸光度面積により定義される。すなわち、測定対象の紫外線吸収剤を20ppmの濃度となるように1-プロパノールに溶解させて溶液(媒体A)を調製する。そして、紫外線吸収剤を含有する媒体Aをサンプル、紫外線吸収剤を含有しない媒体B(1-プロパノール)をリファレンス光として、それぞれを路長1cmの石英セルに注入して分光光度計(島津製作所:UV-1800)により各波長における吸光度を求める。そして、波長315nm以上400nm以下の領域での差分の吸光度の積分値をその紫外線吸収剤の吸光度面積Abと定義する。
【0027】
吸光度の積分値は、例えば測定波長の測定間隔を0.5nmとした場合に(((波長Xnmの吸光度Aλ)+(波長(X+0.5)nmの吸光度Aλ))×0.5/2から算出される四角形(台形)の面積をXが315nmから400nmの範囲で足し合わせた面積を意味する。なお、紫外線吸収剤の極大吸収波長についてもこの方法により得られる吸光度曲線により求めることができる。
【0028】
一般に、太陽光に含まれる紫外線のうちUV-CやUV-Bのような短波長の紫外線は、大気圏に存在するオゾン層によって殆ど吸収されるため、実際に地上に届く紫外線は、波長が315~400nm程度(いわゆるUV-A)である。そこで、紫外線吸収剤のうち、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤を本実施の形態に係るインク組成物に含有させることで、耐候層で実際に地上に届く波長が315~400nm程度の紫外線を吸収して被体にまで届く紫外線の量を抑制できるようになるので、被体の耐候性を効果的に向上させることが可能となる。
【0029】
図1に、紫外線吸収剤(a)(2-[4-([2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン)、紫外線吸収剤(b)(2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン)、紫外線吸収剤(c)(2,4,6-トリス[4-(1-オクチルオキシカルボニル)エトキシ-2-ヒドロキシフェニル]-1,3,5-トリアジン)、紫外線吸収剤(d)(イソオクチル2-[4-[4,6-ビス[(1,1’-ビフェニル)-4-イル]-1,3,5-トリアジン-2-イル]-3-ヒドロキシフェノキシ]プロパノエート)について上記の方法で求めた吸光度を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表より、紫外線吸収剤(c)または紫外線吸収剤(d)が波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、の吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤であると理解できる。
【0032】
このような波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシ-ベンゾフェノン、および1,4-ビス(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)-ブタンなどのベンゾフェノン化合物や2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2′-ヒドロキシ-3′-t-ブチル-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジーt-ペンチル-2-ヒドロキシフェニル-2-ベンゾトリアゾール、2-(2-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチロキシフェニル)-2-ベンゾトリアゾール、および2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-2-ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール化合物や、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、および2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのヒドロキシフェニルトリアジン化合物、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、およびヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤のうち波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤が挙げられる。中でもヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤のうち波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤が好ましい。
【0033】
この315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abは30.0以上であることが好ましく、40.0以上であることがより好ましく、45.0以上であることが特に好ましい。
【0034】
なお、本実施の形態に係るインク組成物は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤とは異なる紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
【0035】
紫外線吸収剤の含有量は、インク組成物全量中1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、1.7質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、被体の耐候性をより効果的に向上させることができる。紫外線吸収剤の含有量は、インク組成物全量中10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、インク組成物に含有される紫外線吸収剤の溶解性が向上し、インク組成物のインクジェット吐出性が向上する。
【0036】
[酸化防止剤]
酸化防止剤とは、ヒドロペルオキシドを捕捉する化合物である。本実施の形態に係るインク組成物は、上述した所定の紫外線吸収剤とともに、所定の酸化防止剤を含有することに特徴がある。耐候層に含まれる重合性化合物の硬化物(ポリマー)に紫外線が照射されると、耐候層に含まれる紫外線吸収剤によって紫外線のエネルギーを熱エネルギーに変換される一方、熱エネルギーに変換されなかった一部の紫外線によって硬化物(ポリマー)がラジカル化し、空気中の酸素と結合してペルオキシドラジカル(ROO・)となる。すると、ペルオキシドラジカル(ROO・)が他のポリマーを攻撃することで連鎖的にヒドロペルオキシド(ROOH)が発生してしまい、耐候層が退色(黄変)することが本発明者らの研究により明らかとなった。
【0037】
そこで、ヒドロペルオキシドを捕捉する酸化防止剤を本実施の形態に係るインク組成物に含有させることにより、耐候層の退色(黄変)を効果的に抑制することが可能となる。
【0038】
このようなヒドロペルオキシドを捕捉する化合物としては、例えば、NH型ヒンダードアミン化合物を挙げることができる。NH型ヒンダードアミン化合物は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格の窒素原子に、水素原子が結合したピペリジン構造を、分子中に1又は2以上有する化合物であって、下記式のような構造を有しており、NH基によりヒドロペルオキシドを捕捉することが可能となる。
【0039】
【化1】
【0040】
このようなNH型ヒンダードアミン化合物としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]ヘキサメチル、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0041】
酸化防止剤としては、上述したNH型ヒンダードアミン化合物とは異なる酸化防止剤であってもよい。そのような酸化防止剤として例えば、チオエーテル系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも1つを使用することができる。チオエーテル系酸化防止剤とは、硫黄が有機基で置換された有機化合物からなる酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤とは、化学構造中にフェノール基を有する酸化防止剤である。チオエーテル系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも1つの酸化防止剤により、ヒドロペルオキシドを捕捉することが可能となる。
【0042】
チオエーテル系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、および、ペンタエリスリトールテトラ(β-アルキルチオプロピオン酸)エステル類等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、2,6-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、メチルハイドロキノン等のモノフェノール系酸化防止剤;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン等のビスフェノール系酸化防止剤;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のトリスフェノール系酸化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、テトラキス-[エチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のテトラキスフェノール系酸化防止剤;D-α-トコフェロール、L-α-トコフェロール、D-β-トコフェロール、L-β-トコフェロール、D-γ-トコフェロール、L-γ-トコフェロール、D-δ-トコフェロール、L-δ-トコフェロール等のトコフェロール類;D-α-トコトリエノール、L-α-トコトリエノール、D-β-トコトリエノール、L-β-トコトリエノール、D-γ-トコトリエノール、L-γ-トコトリエノール、D-δ-トコトリエノール、L-δ-トコトリエノール等のトコトリエノール類等が挙げられる。
【0043】
酸化防止剤の含有量は、インク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、被体の耐候性をより効果的に向上させることができる。酸化防止剤の含有量は、インク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、インク組成物に含有される酸化防止剤の分散性(又は溶解性)が向上し、インク組成物のインクジェット吐出性が向上する。
【0044】
[重合性化合物]
重合性化合物とは、活性エネルギー線を照射することにより重合されるエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。活性エネルギー線とは、遠紫外線、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線等が含まれる。
【0045】
重合性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に1個有する単官能重合性化合物であってもよいし、エチレン性不飽和二重結合が化合物中に2個以上有する多官能重合性化合物であってもよい。なお、重合性化合物は、その分子量によってはオリゴマーやポリマーとも称される化合物をも含む概念である。
【0046】
単官能モノマーの例として、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(CTFA)、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)(メタ)アクリレート、(シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル))(メタ)アクリレート、アルキルシクロアルキルアクリレートである4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、クレゾールアクリレート、2-アクリロイロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-アクリロイロキシプロピルフタレート、パラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、1-アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3-3-5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルカプロラクタム、イミドアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及び、これらのアクリレートにアルコキシ変性、及びカプロラクトン変性等の各種変性を有するもの、を挙げることができる。
【0047】
多官能モノマーの例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート及びこれらの変性数違い、変性種違い、構造違いの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
[重合開始剤]
本実施の形態に係るインク組成物は必要に応じて重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によりインク組成物中の重合性化合物の重合反応を促進するものであれば特に限定されない。なお、本実施の形態に係るインク組成物においては、重合開始剤は必ずしも必須でなく、例えば活性エネルギー線として電子線を用いる場合には重合開始剤は用いなくてもよい。
【0049】
重合開始剤の具体例として、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α-アミノアルキルフェノン類、α-ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0050】
重合開始剤の含有量は、重合性化合物の重合反応を適切に開始できる量であればよく、インク組成物全量中1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましく、3.0質量%以上であることがさらに好ましい。又、インク組成物全量中20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましく、13.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
[重合禁止剤]
本実施の形態に係るインク組成物は、必要に応じて重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、特に限定されず、例えば、ジフェニルピクリルヒドラジド、トリ-p-ニトロフェニルメチル,p-ベンゾキノン、p-tert-ブチルカテコール、ピクリン酸、塩化銅、メチルハイドロキノン、メトキノン、tert-ブチルハイドロキノン、フェノチアジン類、ニトロソアミン類等の重合禁止剤を用いることができる。
【0052】
[光安定剤]
本実施の形態に係るインク組成物は、必要に応じて上記の紫外線吸収剤や酸化防止剤とは異なる光安定剤を含有してもよい。光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0053】
NOR型ヒンダードアミン化合物とは、下記式のような構造を有しており、上述した酸化防止剤と同様にNOR基によりヒドロペルオキシドを捕捉することが可能となる。
【0054】
【化2】
【0055】
このようなNOR型ヒンダードアミン化合物の具体例としては、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン、デカン二酸ビス(2.2.6.6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-1,3,5-トリアジン、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート等が挙げられる。
【0056】
なお、NOR型ヒンダードアミン化合物以外の光安定剤を含有してもよい。例えば、NR型ヒンダードアミン化合物等の従来公知の光安定剤が挙げられる。
【0057】
光安定剤の含有量はインク組成物全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。光安定剤の含有量はインク組成物全量中5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0058】
[その他の添加剤]
本実施の形態に係るインク組成物は、その他の添加剤として、溶剤、可塑剤、レベリング剤、樹脂、表面調整剤等、種々の添加剤を含有していても良い。
【0059】
なお、本実施の形態に係るインク組成物は、通常のインクジェット用のインク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)は含有してもよい。色材の含有量はインク組成物全量中3.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.2質量%以下であることが更になお好ましい。色材(染料・顔料)の含有量が少ないことにより、被体の視認性が向上する。
【0060】
<2.インク組成物の製造方法>
インク組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。インク組成物には、分散機を用いて、重合性化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を分散し、その後、必要に応じて重合開始剤、重合禁止剤、レベリング剤等を添加して均一に撹拌することにより、混合物を得て、その後フィルターで濾過することによってインク組成物が得られる。
【0061】
(インク組成物の粘度及び表面張力)
本実施の形態に係るインク組成物の粘度は、インクジェット吐出性、吐出安定性の点から、吐出温度(例えば40℃)での粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係るインク組成物の粘度は、3mPa・s以上であることが好ましく、4mPa・s以上であることがより好ましく、5mPa・s以上であることがさらに好ましい。
【0062】
また、吐出温度が室温(例えば25℃)の場合、インクジェット吐出性、吐出安定性の点から粘度が30mPa・s以下であることが好ましく、25mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係るインク組成物の粘度は、3mPa・s以上であることが好ましく、4mPa・s以上であることがより好ましく、5mPa・s以上であることがさらに好ましい。
【0063】
又、本実施の形態に係るインク組成物の表面張力は、インクジェットの吐出性、吐出安定性、基材へのレベリング性の点から、25℃での表面張力が17mN/m以上であることが好ましく、20mN/m以上であることがより好ましく、23mN/m以上あることがさらに好ましい。又、本実施の形態に係るインク組成物の表面張力は、40mN/m以下であることが好ましく、38mN/m以下であることがより好ましく、36mN/m以下であることがさらに好ましい。
【0064】
次に、本実施の形態に係るインク組成物により得られる印刷物について説明する。
【0065】
<3.印刷物>
上記の実施形態に係るインク組成物を使用して得られる印刷物は、少なくとも、被体と、この被体の表面に積層された耐候層と、を備える。そして、この耐候層は、上記の実施形態に係るインク組成物に含有される重合性化合物の硬化物と、紫外線吸収剤と酸化防止剤と、を含有していることを特徴としている。このような耐候層を被体の表面に形成することにより被体の耐候性を向上させることができる。さらに、耐候層が長時間暴露されることにより耐候層の退色(黄変)を効果的に抑制できる。なお、被体とは、記録媒体そのものであっても、その記録媒体の表面の一部又は全面に着色層が積層されたものであってもよい。
【0066】
以下、印刷物を構成する各層について説明する。
【0067】
[基材(記録媒体)]
基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属板ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0068】
非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂基材や、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を挙げることができる。
【0069】
吸収性基材としては、更紙、中質紙、上質紙、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を挙げることができる。
【0070】
表面塗工が施された基材としてはコート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙等を挙げることができる。
【0071】
[着色層]
印刷物は着色層を備えていてもよい。着色層とは、通常のインク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)を含有する層であり、主に基材の表面又は基材の表面に形成された層(プライマー層、コーティング層や受理溶液の層等)の表面に塗布されたインク組成物により形成される層である。この着色層を形成するインク組成物は、活性エネルギー線硬化型のインク組成物であっても、色材を含有し、溶剤を含有する溶剤型のインク組成物であっても、色材を含有し、水を含有する水性型のインク組成物であってもよい。また、この着色層は1層であってもよく、複数の層(例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクの層を含む複数の層等)であってもよい。着色層を記録媒体の表面の一部又は全面に形成された被体の表面に耐候層を形成することで、着色層の耐候性を極めて優れたものにすることができ、しかも、耐候層が長時間暴露されることによる耐候層の退色(黄変)を効果的に抑制できるので、画像の意匠性を変化させることがない。上記の実施の形態に係るインク組成物が塗布される被体は、記録媒体の表面そのものであってもよいが、上記の実施の形態に係るインク組成物は、着色層の表面に塗布されて耐候層を形成する態様が特に好ましいインク組成物である。
【0072】
着色層には樹脂が含有されていてもよい。着色層に樹脂が含有される場合、この樹脂は、インク組成物に含まれるバインダー樹脂や樹脂エマルジョンや高分子分散剤がそのままこのインク層の樹脂となってもよいし、インク組成物に含まれる重合性化合物が基材(記録媒体)の表面に吐出された後に活性エネルギー線を照射して重合されて形成された硬化物であってもよい。
【0073】
又、この着色層を形成するためのインク組成物の塗布方法は、特に限定されるものではない。例えば、スプレー法、コーター法、インクジェット法、グラビア法、フレキソ法等を挙げることができる。中でもインクジェット法により吐出(塗布)されることが好ましい。インクジェット法であれば、基材の任意の場所に吐出(塗布)することも、基材全面に吐出(塗布)することも容易である。
【0074】
着色層を形成するインク組成物の色材は、特に限定されるものではなく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよい。着色層の耐水性や耐光性等の耐性が良好である顔料系インク組成物を使用することが好ましい。着色層を形成するインク組成物に用いることのできる顔料は特に限定されない。従来のインク組成物に使用されている有機顔料又は無機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料等、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛等、その他の顔料として、カーボンブラック等が挙げられる。インク組成物に用いることのできる顔料は、複数の有機顔料や無機顔料を併用してもよく、顔料分散剤によって水溶性溶媒中に分散させた顔料分散体と自己分散型顔料を併用したものであってもよい。
【0075】
[耐候層]
耐候層は、上記の実施形態に係る重合性化合物の硬化物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有するインク組成物により形成される層である。具体的には、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有するインク組成物が被体の表面にインクジェット法によって吐出され、活性エネルギー線を照射することで形成される重合性化合物の硬化物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有する層である。
【0076】
この耐候層は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤と、所定の酸化防止剤で含有する。これにより被体の耐候性を向上させることができる。
【0077】
耐候層の厚さの下限は、特に限定されるものではないが、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μmであることがさらに好ましい。耐候層の厚さが10μm以上であることで、被体の耐候性をより効果的に向上させて、耐候性がより高い印刷物となる。耐候層の厚さの上限は、特に限定されるものではないが、印刷物の生産性やコストの観点から200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0078】
なお、本実施の形態のインク組成物により形成される耐候層は、所定の紫外線吸収剤を含有するものであることから、被体に高い耐候性を付与することができるものである。このため、本実施の形態のインク組成物により形成される耐候層であれば、例えば10μm程度の薄い耐候層であっても被体に十分に高い耐候性を付与することが可能となる。
【0079】
また、耐候層の厚さは均一の厚さ(例えば、上述した耐候層の厚さ)であってもよいが、敢えて不均一の厚さになるようにしてもよい。例えば、表面を艶消し調やグロス調にすることや、木目調、皮革調、麻調、落葉調などの凹凸が付けられた耐候層としてもよい。このような不均一の厚さの耐候層であれば、長時間暴露されることによる黄変やクラックの発生を効果的に抑制するとともに、意匠性の高い耐候層とすることができる。耐候層を不均一の厚さにするには、インク組成物の吐出量やインク組成物を吐出してから活性エネルギー線照射までの時間等の条件を調節することにより実現できる。
【0080】
このような不均一の厚さの耐候層は、1回のインク組成物の吐出量を吐出箇所によって増減させる方法であってもよく、同一箇所で複数のインク組成物を吐出することにより凹凸差をつけてもよい。
【0081】
また、この耐候層自体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Ablは、30.0以上であることが好ましく、35.0以上であることがより好ましく、40.0以上であることがさらに好ましい。吸光度面積が30.0以上であることで、被体の耐候性を向上させることができる。なお、耐候層自体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Ablは、印刷物から耐候層を剥離して波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度の積分値により求めることができる。吸光度の積分値は、例えば測定波長の測定間隔を0.5nmとした場合に(((波長Xnmの吸光度)+(波長(X+0.5)nmの吸光度))×0.5/2から算出される四角形(台形)の面積をXが315nmから400nmの範囲で足し合わせた面積を意味する。
【0082】
耐候層は、通常のインクジェット用のインク組成物の使用されるような色材(染料・顔料)は含有してもよい。色材の含有量は耐候層全量中3.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.2質量%以下であることが更になお好ましく、色材が含まれないことが最も好ましい。色材(染料・顔料)の含有量が少ないことにより、被体の視認性が向上する。
【0083】
特に、画像を形成する着色層の表面に耐候層を形成するような場合には、耐候層中の色材(染料・顔料)の含有量が少ないことにより、画像の視認性が向上するため特に好ましい。
【0084】
<4.記録方法>
上記の実施形態に係るインク組成物を用いて被体の表面に記録する記録方法は、インクジェット法によって活性エネルギー線硬化型のインク組成物を吐出する記録方法である。インクジェット法によってインク組成物を吐出することで小ロットの印刷物の製造に対応可能となる。
【0085】
インクジェット記録装置は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれのインクジェット記録装置にも適用することができる。
【0086】
そして、インクジェット法によって吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線は、遠紫外線、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線の活性エネルギー線を挙げることができる。活性エネルギー線を照射する光源は特に限定されるものではなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。省エネルギーであり、印刷装置の設計設備の自由度が高いという観点から光源としてLEDランプを用いることがより好ましい。
【0087】
この記録方法により、耐候性が高い印刷物を得ることができる。
【0088】
<5.印刷物の製造方法>
上記の実施形態に係るインク組成物を基材の表面に吐出する記録方法は、印刷物の製造方法として定義することもできる。
【0089】
この記録方法により、耐候性が高い印刷物を得ることができる。
【実施例
【0090】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0091】
1.インク組成物の製造
実験例及び比較例のインク組成物を製造した。具体的には、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、重合開始剤と、重合禁止剤と、光安定性剤と、を下記表の割合になるように実施例、比較例のインク組成物を調製した。表中の単位は質量%である。
【0092】
【表2】
【0093】
表中、紫外線吸収剤(c)は、トリアジン系紫外線吸収剤(2,4,6-トリス[4-(1-オクチルオキシカルボニル)エトキシ-2-ヒドロキシフェニル]-1,3,5-トリアジン)(CAS番号348144-62-7 極大吸収波長:350nm、吸光度面積Ab:32.1)である。
【0094】
表中、紫外線吸収剤(d)は、トリアジン系紫外線吸収剤(イソオクチル2-[4-[4,6-ビス[(1,1’-ビフェニル)-4-イル]-1,3,5-トリアジン-2-イル]-3-ヒドロキシフェノキシ]プロパノエート)(CAS番号204848-45-3 極大吸収波長:322nm、吸光度面積Ab:52.4)である。
【0095】
表中、紫外線吸収剤(a)は、トリアジン系紫外線吸収剤(2-[4-([2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン CAS番号153519-44-9 極大吸収波長:290nm、吸光度面積Ab:19.8)である。
【0096】
表中、紫外線吸収剤(b)は、トリアジン系紫外線吸収剤(2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン CAS番号137658-79-8 極大吸収波長:290nm、吸光度面積Ab:23.9)である。
【0097】
2.着色層用のインク化合物の調製
着色層用のインク組成物を製造した。具体的には、重合性化合物と、重合開始剤と、重合禁止剤と、レベリング剤と、顔料と、顔料分散剤と、を下記表の割合になるように着色層用のインク組成物を調製した。表中の単位は質量%である。
【0098】
【表3】
【0099】
3.印刷物の製造
実施例及び比較例のインク組成物を用いて印刷物1~6、8~14を製造した。具体的には、着色層用のインク化合物をインクジェット記録装置を使用して基材表面に吐出し、活性エネルギー線として波長385nmのLEDランプを照射することにより、着色層を形成した。次に実施例及び比較例のインク組成物をインクジェット記録装置を使用して、その着色層の上から基材表面に吐出し波長385nmのLEDランプを照射することにより印刷物1~6、8~14を製造した。このときの耐候層の厚さはいずれも20μmであった。なお、印刷物7は、実施例及び比較例のインク組成物を使用せずに、基材と着色層からなり耐候層を備えないものである。
【0100】
なお、印刷物1、印刷物3の耐候層について波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積を測定したところ、印刷物1での耐候層の吸光度面積は36であり、印刷物3での耐候層の吸光度面積は45であった。
【0101】
4.評価
(1)耐候性評価(被体の耐候性)
印刷物1~14の耐候性を評価した。具体的には、印刷物1~14について耐候性評価装置(岩崎電気株式会社製 アイ スーパー UVテスター)を使用して耐候層側からUVを照射して、出力:100mW/cmの試験条件で耐候性を試験した。
【0102】
試験後の印刷物1~14の着色層について、エックスライト社製x-rite eXactを用いてJISZ8722に準拠して測定した標準光源D50によるCIE系色座標におけるL、a、b値を測定し、同試験装置投入前と100時間照射後における、着色層の耐候劣化(退色)の程度を評価した。評価は、具体的には、下記の計算方法によって算出した色差ΔEを下記の評価規準に基づいて評価することにより行った。評価結果は「耐候性」として、表4に示す。
ΔEの計算方法:ΔE=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2
ΔL、Δa、Δbはいずれも、[試験装置投入後の値-試験装置投入前の値]
(評価基準)
5:色差ΔEが、19.9未満
4:色差ΔEが、20以上24.9未満
3:色差ΔEが、25.0以上29.9未満
2:色差ΔEが、30.0以上35.0未満
1:色差ΔEが、35.0以上
【0103】
(2)黄変評価(耐候層の黄変変化)
実施例及び比較例のインク組成物を用いて得られた印刷物の黄変を評価した。具体的には、上記の耐候性試験と同様に耐候性を試験し、同試験装置投入前と200時間照射後における印刷物における耐候層について上記の耐候性試験と同様に耐候劣化(黄変)の程度を評価した。評価は、具体的には、下記の計算方法によって算出した色差Δbを下記の評価規準に基づいて評価することにより行った。評価結果は「黄変」として、表4に示す。
Δbは、[試験装置投入後の値-試験装置投入前の値]
(評価基準)
5:色差Δbが、5.0未満
4:色差Δbが、5.0以上6.9未満
3:色差Δbが、7.0以上8.9未満
2:色差Δbが、9.0以上10.0未満
1:色差Δbが、10.0以上
【0104】
(3)クラック確認試験(着色層のクラック確認)
実施例及び比較例のインク組成物を用いて得られた印刷物のクラックを確認した。具体的には、上記の耐候性試験と同様に耐候性を試験し、同試験装置投入前と300時間照射後に印刷物における着色層および耐候層についてクラックの有無を目視で確認した。評価結果は「クラック」として、表4に示す。
(評価基準)
無し:クラックが確認できなかった
有り:クラックが確認された。
【0105】
【表4】
【0106】
表4から分かるように、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有する実施例1~6のインク組成物は、得られる印刷物の耐候性に優れ、その耐候層の黄変も少ないものであり、着色層のクラックも発生しなかった。
【0107】
その中でも、酸化防止剤としてNH型ヒンダードアミン化合物を含有する実施例1、3、4のインク組成物は、実施例のインク組成物と比較しても、耐候層の黄変が少なかった。さらに、光安定剤(NOR型ヒンダードアミン化合物)を含有する実施例4のインク組成物は、実施例のインク組成物と比較しても、耐候層の黄変が少なかった
【0108】
また、紫外線吸収剤の種類を除いて同様の組成である実施例1、を比較すると、実施例が最も黄変が少なくなっており、吸光度面積Abがより大きい紫外線吸収剤を含むインク組成物を使用することで、耐候層の黄変がより少なくなることが分かる。
【0109】
一方、紫外線吸収剤も酸化防止剤も含有していない比較例のインク組成物を使用して得られた印刷物は、着色層の耐候性が悪化し、クラックも発生した。また、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、吸光度面積Abが25.0以上である紫外線吸収剤を含有し、酸化防止剤を含有しない比較例のインク組成物を使用して得られた印刷物は、耐候層が大きく黄変し、クラックも発生した。さらに、吸光度面積Abが25.0未満である紫外線吸収剤を含有し、酸化防止剤を含有しない比較例3、4のインク組成物を使用して得られた印刷物は、耐候層が大きく黄変し、着色層の耐候性も悪化し、クラックも発生した。さらに、吸光度面積Abが25.0未満である紫外線吸収剤を含有し、酸化防止剤を含有する比較例5、6のインク組成物を使用して得られた印刷物は、耐候層が大きく黄変し、着色層の耐候性も悪化した。
【0110】
なお、耐候層を備えない印刷物は、耐候性が悪化しており、クラックも発生するものであった。
【要約】
【課題】耐候性が高い印刷物を得ることができるインク組成物を提供する。
【解決手段】インクジェット法によって吐出される活性エネルギー線硬化型のインク組成物であって、前記インク組成物は、重合性化合物と、紫外線吸収剤と、酸化防止剤と、を含有し、前記紫外線吸収剤は、波長315nm以上400nm以下の領域で極大吸収波長を有し、かつ、該紫外線吸収剤を20ppmの濃度で含有する媒体の波長315nm以上400nm以下の領域での吸光度面積Abが25.0以上であるインク組成物である。
【選択図】なし
図1