(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-22
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】着用可能なカフと共に使用するための装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20220111BHJP
A61B 5/0225 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61B5/022 300A
A61B5/0225 G
(21)【出願番号】P 2021516796
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(86)【国際出願番号】 EP2019075444
(87)【国際公開番号】W WO2020064581
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-24
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】クーネン マールテン ペトルス ヨゼフ
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-261820(JP,A)
【文献】特開2018-015506(JP,A)
【文献】特開2008-228916(JP,A)
【文献】米国特許第06171254(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0078158(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263516(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02ー5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧を測定する際に着用可能なカフと共に使用するための装置であって、前記カフは、対象者の測定部位を加圧するよう膨張可能であり、前記装置は、
前記カフの現在の膨張の間に前記カフのサイズを推定し、
前記推定された前記カフのサイズを、前記カフの現在の膨張の直前の前記カフの膨張の間に推定された前記カフの以前のサイズと比較し、
前記推定された前記カフのサイズが、所定の量より大きく前記カフの以前のサイズと異なる場合、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変化させる
よう構成された、装置。
【請求項2】
前記装置は、前記推定された前記カフのサイズに基づいて、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変化させるよう構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、
前記推定された前記カフのサイズに基づいて前記対象者について予測される血圧範囲を決定し、
前記決定された前記対象者について予測される血圧範囲に基づいて、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変更する
よう構成されることにより、前記推定された前記カフのサイズに基づいて、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変化させるよう構成された、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、
前記推定された前記カフのサイズを、それぞれが対応する基準血圧範囲と共に保存された複数の前記カフの基準サイズと比較し、
前記推定された前記カフのサイズと同一であるか又は最も僅かに異なる前記カフの基準サイズと共に保存された基準血圧範囲として、前記対象者について予測される血圧範囲を決定する
よう構成されることにより、前記推定された前記カフのサイズに基づいて、前記対象者について予測される血圧範囲を決定するよう構成された、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の前記カフの基準サイズ及び対応する基準血圧範囲は、母集団から取得されたデータに基づく、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、前記推定された前記カフのサイズが、前記所定の量よりも小さい量だけ前記以前の前記カフのサイズと異なる場合、又は、前記推定された前記カフのサイズが、前記以前の前記カフのサイズと等しい場合、前記カフの現在の膨張の直前の前記カフの収縮の間に決定された血圧値に基づいて、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を決定するよう構成された、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記カフがベースライン圧力から所定の圧力まで膨張させられるのにかかる時間に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成された、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記カフが膨張する平均速度に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成された、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記カフが膨張する前記平均速度を、前記カフの現在の膨張の開始から所定の時間が経過したときに前記カフが膨張する平均速度として決定するよう構成された、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記カフの内部体積に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成された、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記カフへの流体の体積、及び前記カフが膨張させられる最大圧力に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成された、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記カフのコンプライアンスの尺度に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成された、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の装置と、
前記対象者の測定部位を加圧するよう膨張可能な前記カフと、
を有する、血圧を測定する際の使用のためのシステム。
【請求項14】
血圧を測定する際に着用可能なカフと共に使用するための装置を動作させる方法であって、前記カフは、対象者の測定部位を加圧するよう膨張可能であり、前記方法は、
前記カフの現在の膨張の間に前記カフのサイズを推定するステップと、
前記推定された前記カフのサイズを、前記カフの現在の膨張の直前の前記カフの膨張の間に推定された前記カフの以前のサイズと比較するステップと、
前記推定された前記カフのサイズが、所定の量より大きく前記カフの以前のサイズと異なる場合、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変化させるステップと、
を有する方法。
【請求項15】
コンピュータ
可読媒体であって、前記コンピュータ
可読媒体は、該媒体内に実施化されたコンピュータ
可読コードを持ち、前記コンピュータ
可読コードは、適切なコンピュータ又はプロセッサによる実行の際に、前記コンピュータ又はプロセッサが請求項14に記載の方法を実行させられるよう構成された、コンピュータ
可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧を測定する際に着用可能なカフと共に使用するための装置を動作させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧(BP)又はより正確には動脈血圧とは、動脈血管壁に血液を循環させることによってかけられる血圧である。患者の健康を確立することは重要なバイタルサインのひとつであり、従ってリスクのある患者についてモニタリングされる必要がある。血圧は周期的な信号であり、心臓の収縮のたびに上昇し、心拍と心拍の間で低下する。血圧は一般に収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)及び平均動脈血圧(MAP)によって記述され、ここで収縮期血圧は心臓周期中の最大血圧、拡張期血圧は心臓周期中の最小血圧、平均動脈血圧は心臓周期中の平均血圧である。
【0003】
血圧を測定することができる様々な技法が存在し、これらは侵襲的又は非侵襲的測定技法として分類されることができる。一般に、非侵襲性測定技術はカフベースであり、膨張可能なカフが対象者の肢(通常は上腕である)の周りに配置されることを必要とする。次いで、カフ内の圧力を変化させて、血圧を推測する。このようにカフを使用する2つの一般的な方法があり、本分野ではそれぞれ聴診法及び振動測定法と呼ばれる。
【0004】
血圧測定のための聴診法は、カフ圧が変化する期間中にカフの下の動脈によって生成される音の出現及び消失に基づく。これらの音は、本分野ではコロトコフ音と呼ばれる。コロトコフ音が出現し消滅する圧力は、DBPとSBPとの間の各心拍にコロトコフ音が出現するDBP及びSBPを示す。音の測定は、カフのすぐ下の動脈の上に配置された聴診器を用いて手動で、又はカフの下のマイクロフォンを用いて自動化された方法で、実行されることができる。
【0005】
血圧測定のためのオシロメトリック法では、収縮期及び拡張期血圧値は、各心拍によってカフに誘発される小さい体積振動又は圧力振動に基づく。これらの体積又は圧力振動の振幅は、カフ圧と実際の動脈血圧との間の差に依存する。収縮期血圧及び拡張期血圧は次いで、体積又は圧力振動が最大振動振幅のある割合の振幅を持つカフ圧として決定される。これらの割合は、一般にヒューリスティックに決定される。
【0006】
聴診法及び振動測定法の両方において、平均動脈圧は、典型的にはMAP=2/3*DBP+1/3*SBPとして算出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
振動測定及び聴診測定方法は、カフの膨張中又はカフの収縮中のいずれかに行うことができる。従来、収縮中の測定値が使用され、この測定値では、カフは、カフの下の動脈内の血流が遮断されるSBPより上のレベルまで急速に膨張され、その後、カフ圧力は徐々に又は段階的に減少される。収縮中、体積若しくは圧力振動又はコロトコフ音が測定される。収縮段階の測定値は十分に確立されているが、対象者に導入される不快感に問題が存在する。特に、対象者は、比較的高いカフ血圧に一定の時間さらされ、或るレベルを超える血圧は、カフ自体によって及ぼされる血圧又はクランプされた四肢における静脈血の蓄積(即ち静脈貯留)のいずれかのために、不快であり痛みさえあり得る。これらの圧力が対象者に加えられる時間が長ければ長いほど、対象者の不快レベルは高くなる。
【0008】
収縮に基づく血圧測定を利用することに伴う別の問題は、カフを膨張させ、次いでカフを収縮させるプロセスがかなり長くなり得ることであり、収縮中の各測定は、典型的には、完了するのに40秒かかる。また、規定された最大圧力レベルは、収縮工程が開始され得る前に達成される必要があるので、対象者は、血圧測定自体に必要とされる最大カフ圧よりも高い最大カフ圧にさらされる。更に、時間経過にともなう血圧の固有の変動性は、単一の血圧測定を歪める可能性がある。
【0009】
これらの問題は、適切に選択された圧力で血圧測定が開始されない場合、悪化し得る。始動圧力が低過ぎる場合、問題が検出される必要があり、続いてポンプがカフを更に膨張させなければならないので、血圧測定を必要以上に長くする可能性がある。同様に、開始圧力が高過ぎる場合、また血圧測定をより長く必要とし得、過度に高い圧力レベルは、対象者が経験する不快感を増大させ得る。例えば、高血圧の成人のための血圧測定は、200mmHgを超える開始圧力につながることがあり、このことは、後に血圧測定値が取得される、より若い対象者に、過度の不快感を引き起こすことがある。例えば、過度に高い開始圧力は、小児患者(例えば新生児、小児又は青年)において特に問題となり得る。
【0010】
血圧測定のための開始圧力は、過去の血圧測定に基づいて、特に、以前に測定された収縮期血圧値に基づいて決定されても良い。しかしながら、血圧測定のための開始圧力を決定するこの手法は、同じ対象者が測定されている場合にのみ良好に機能し、最後の血圧測定から対象者が変わったときにはいつでも適切な開始圧力を導かない。
【0011】
上述のように、血圧を測定するための既存の技術に関連する制限は、対象者が最後の血圧測定から変化したときに、対象者にとって適切な圧力で対象者の血圧測定を開始することが現在可能でないことである。また、対象者にとって適切でない圧力で血圧測定を開始することは、様々な問題を引き起こす可能性がある。従って、既存の技術に関連する制限に対処することは価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それ故、第1の態様によれば、血圧を測定する際に着用可能なカフと共に使用するための装置が提供される。該カフは、対象者の測定部位を加圧するために膨張可能である。本装置は、カフの現在の膨張中にカフのサイズを推定し、カフの推定されたサイズを、カフの現在の膨張の直前のカフの膨張中に推定されたカフの以前のサイズと比較するように構成される。本装置はまた、カフの推定されたサイズが、カフの以前のサイズと所定の量を超えて異なる場合、カフの収縮が開始する前にカフが膨張される圧力を変化させるように構成される。
【0013】
幾つかの実施例においては、前記推定された前記カフのサイズに基づいて、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変化させるよう構成されても良い。幾つかの実施例においては、該装置は、前記推定された前記カフのサイズに基づいて前記対象者について予測される血圧範囲を決定し、前記決定された前記対象者について予測される血圧範囲に基づいて、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変更するよう構成されることにより、前記推定された前記カフのサイズに基づいて、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変化させるよう構成されても良い。
【0014】
幾つかの実施例においては、該装置は、前記推定された前記カフのサイズを、それぞれが対応する基準血圧範囲と共に保存された複数の前記カフの基準サイズと比較し、前記推定された前記カフのサイズと同一であるか又は最も僅かに異なる前記カフの基準サイズと共に保存された基準血圧範囲として、前記対象者について予測される血圧範囲を決定するよう構成されることにより、前記推定された前記カフのサイズに基づいて、前記対象者について予測される血圧範囲を決定するよう構成されても良い。幾つかの実施例においては、前記複数の前記カフの基準サイズ及び対応する基準血圧範囲は、母集団から取得されたデータに基づくものであっても良い。
【0015】
幾つかの実施例においては、装置は、前記推定された前記カフのサイズが、前記所定の量よりも小さい量だけ前記以前の前記カフのサイズと異なる場合、又は、前記推定された前記カフのサイズが、前記以前の前記カフのサイズと等しい場合、前記カフの現在の膨張の直前の前記カフの収縮の間に決定された血圧値に基づいて、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を決定するよう構成されても良い。
【0016】
幾つかの実施例においては、該装置は、前記カフがベースライン圧力から所定の圧力まで膨張させられるのにかかる時間に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成されても良い。幾つかの実施例においては、該装置は、前記カフが膨張する平均速度に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成されても良い。幾つかの実施例においては、該装置は、前記カフが膨張する前記平均速度を、前記カフの現在の膨張の開始から所定の時間が経過したときに前記カフが膨張する平均速度として決定するよう構成されても良い。
【0017】
幾つかの実施例においては、該装置は、前記カフの内部体積に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成されても良い。幾つかの実施例においては、該装置は、前記カフへの流体の体積、及び前記カフが膨張させられる最大圧力に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成されても良い。幾つかの実施例においては、該装置は、カフのコンプライアンスの尺度に基づいて、前記カフの現在の膨張の間、前記カフのサイズを推定するよう構成されても良い。
【0018】
第2の態様によれば、血圧を測定する際に使用するためのシステムが提供される。該システムは、上述の装置と、対象者の測定部位を加圧するために膨張可能な着用可能なカフとを有する。
【0019】
第3の態様によれば、血圧を測定する際に着用可能なカフと共に使用するための装置を操作する方法が提供される。該カフは、対象者の測定部位を加圧するために膨張可能である。該方法は、前記カフの現在の膨張の間に前記カフのサイズを推定するステップと、前記推定された前記カフのサイズを、前記カフの現在の膨張の直前の前記カフの膨張の間に推定された前記カフの以前のサイズと比較するステップと、を有する。本方法はまた、前記推定された前記カフのサイズが、所定の量より大きく前記カフの以前のサイズと異なる場合、前記カフの収縮が開始する前に、前記カフが膨張させられる圧力を変化させるステップを有する。
【0020】
第4の態様によれば、コンピュータ読み取り可能な媒体を有するコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ読み取り可能な媒体は、該媒体内に実施化されたコンピュータ読み取り可能なコードを持ち、前記コンピュータ読み取り可能なコードは、適切なコンピュータ又はプロセッサによる実行の際に、前記コンピュータ又はプロセッサが以上に説明された方法を実行させられるよう構成された、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0021】
上述の態様及び実施例によれば、既存の技術の制限に対処する。特に、上記の態様及び実施例は、カフの現在の膨張中に推定されるカフのサイズが、カフの以前のサイズと所定量を超えて異なる場合に、カフの収縮が開始する前にカフが膨張される血圧が変更されることを確実にする。このようにして、カフの収縮が開始される圧力が、前回の血圧測定から対象者が変化した場合であっても、血圧測定が取得されるべき特定の対象者にとってより適切な圧力であることを保証することができる。事実上、カフの収縮が開始される圧力は、血圧測定値が取得されるべき特定の対象者に対して最適化され得る。カフの収縮が開始される圧力が対象者にとってより適切であるので、対象者が経験する不快感を低減すること、及び/又は対象者について血圧測定値を取得することができる速度を増大させることが可能である。
【0022】
それ故、前述の既存技術に関連する制限は、上述の態様及び実施例によって対処される。
【0023】
これら及び他の態様は、以下に記載される実施例から明らかであり、かつ、それを参照して解明されるであろう。
【0024】
例示的な実施例は、以下の図面を参照して、単に例として記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施例による着用可能なカフと共に使用される装置の簡略化された模式図である。
【
図2】一実施例による装置を動作させる方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここでは、血圧を測定する際に着用可能なカフ(又はクランプユニット)と共に使用するための装置が提供され、このことは、既存の技術の限界を克服する。ここで言及される着用可能なカフは、対象者(例えば患者)の測定部位を加圧するために膨張可能である。このようにして、着用可能なカフは、対象者の測定部位内の動脈を加圧することができる。典型的には、着用可能なカフには、着用可能なカフを膨張させるのに適した流体(例えば空気などの気体又は任意の他の流体)を供給することができる。
着用可能なカフは、着用可能なカフ内の流体の圧力で対象者の測定部位(従って対象者の測定部位内の動脈)を加圧するように膨張可能であり得る。
【0027】
着用可能なカフは、対象者の測定部位の上又は周囲に装着されるように構成される(例えば周囲に巻かれる、取り付けられる又は固定される)。対象者の測定部位は、動脈を持つ対象者の身体上の任意の部位など、対象者の血圧を測定する際に使用するのに適した対象者の身体上の任意の部位とすることができる。例えば、対象者の測定部位は、対象者の腕(例えば上腕又は前腕)などの対象者の四肢に位置しても良い。従って、着用可能なカフは、対象者の四肢の上又は周りに着用される(例えば対象者の四肢の周りに巻き付けられる、対象者の四肢に取り付けられる、又は対象者の四肢に固定される)ように構成されても良い。ここで言及される対象は、例えば成人又は小児の対象者、例えば、乳児、小児又は青年であっても良い。乳児は、例えば早産又は早産の乳児、満期の乳児、又は早産の乳児のような新生児であっても良い。
【0028】
手短に言えば、ここに記載される装置は、カフの現在の膨張中にカフのサイズ(又はカフサイズ)を推定し、カフの推定されたサイズを、カフ14の現在の膨張の直前のカフの膨張中に推定されたカフの以前のサイズと比較するように構成される。本装置はまた、カフの推定されたサイズが、カフの以前のサイズと所定の量を超えて異なる場合、カフの収縮が開始する前にカフが膨張される圧力を変化させるように構成される。カフの収縮が開始する前にカフが膨張する圧力は、「開始圧力」、「収縮のための開始圧力」、又はより具体的には「血圧測定のための開始圧力」とも呼ばれ得る。
【0029】
ここで説明される装置は、ここで説明される様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数の方法で実装され得る。特定の実現形では、装置は、ここで説明される方法の個々のステップ又は複数のステップを実行するようにそれぞれ構成された、又は実行するための複数のソフトウェア及び/又はハードウェアモジュールを有することができる。該装置は、ここで説明される様々な機能を実行するように(例えばソフトウェア又はコンピュータプログラムコードを使用して)構成又はプログラムされ得る、1つ以上のプロセッサ(1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のマルチコアプロセッサ及び/又は1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)など)、1つ以上の処理ユニット、及び/又は1つ以上のコントローラ(1つ以上のマイクロコントローラなど)を有しても良い。該装置は、幾つかの機能を実行するための専用ハードウェア(例えば増幅器、前置増幅器、アナログ・デジタル変換器(ADC)及び/又はデジタル・アナログ変換器(DAC))と、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、DSP及び関連する回路)と、の組合せとして実装され得る。
【0030】
図1は、例示的な実施例による、血圧を測定する際に着用可能なカフ14と共に使用される装置12を示す。従って、装置12及びカフ14を含むシステム10が提供される。先に述べたように、カフ14は、対象者18の測定部位20を加圧するために膨張可能である。
図1に示す例示的な実施例においては、対象者18の測定部位20は、腕、より具体的には、対象者18の上腕に位置する。従って、カフ14は、この例示的な実施例においては、被検体18の上腕の上又は周囲に着用される(例えば周囲に巻かれる、取り付けられる又は固定される)。
【0031】
前述のように、装置12は、カフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズを推定し、カフ14の推定されたサイズを、カフ14の現在の膨張の直前のカフ14の膨張中に推定されたカフ14の以前のサイズと比較するように構成される。また、装置12は、カフ14の推定されたサイズが、カフ14の以前のサイズと所定量より大きく異なる場合、カフ14の収縮が始まる前にカフ14が膨張される圧力を変化させるように構成される。
【0032】
図1に示されるように、幾つかの実施例においては、カフ14は、少なくとも1つの供給ライン(又は少なくとも1つの供給管)16を介して、装置12と結合又は接続されても良く、この供給管は、少なくとも1つの圧力供給ライン(又は少なくとも1つの圧力供給管)16とも呼ばれても良い。少なくとも1つの供給ライン16は、カフ14、ひいては対象者18の測定部位20を加圧するために配置することができる。少なくとも1つの供給ライン16は、カフ14を膨張及び/又は収縮させるために設けることができる。少なくとも1つの供給ライン16に代わるものとして、他の実施例(図示せず)では、装置12はカフ14に直接結合されても良い(例えば直接に取り付けられても良い)。先に述べたように、カフ14には、カフ14を膨張させるのに適した任意の流体を供給することができる。
【0033】
図1には図示されていないが、幾つかの実施例においては、システム10は、ポンプを有しても良い。該ポンプは、ここに記載される方法でカフ14を膨張させるように制御可能であり得る。幾つかの実施例においては、ここに記載の装置12が、該ポンプを有しても良い。代替として又はこれに加えて、該ポンプは、装置12の外部にあっても良い(例えば分離していても良いし遠隔にあっても良い)。従って、ポンプは、カフ14を膨張させるように制御可能な任意のポンプとすることができる。幾つかの実施例においては、ポンプは、装置12によって、又はより具体的には、ここに記載される様式でカフ14を膨張させるための装置12のコントローラ(
図1に図示せず)によって、制御可能であり得る。装置12(又は装置12のコントローラ)は、ポンプを制御するために任意の適切な方法でポンプと通信し、及び/又はポンプに接続することができる。
【0034】
図1には示されていないが、幾つかの実施例においては、システム10は収縮弁を有しても良い。収縮弁は、カフ14を収縮させるように制御可能であり得る。幾つかの実施例においては、ここに記載の装置12が、収縮弁を有しても良い。代替的に又は加えて、収縮弁は、装置12の外部にあっても良い(例えば分離していても良いし遠隔にあっても良い)。従って、収縮弁は、カフ14を収縮させるように制御可能な任意の弁とすることができる。幾つかの実施例においては、収縮弁は、カフ14を収縮させるために、装置12、又はより具体的には、装置12のコントローラ(
図1には図示せず)によって制御可能であり得る。装置12(又は装置12のコントローラ)は、収縮弁を制御するための任意の適切な方法で、収縮弁と通信し及び/又は収縮弁に接続することができる。
【0035】
同様に
図1には図示されていないが、幾つかの実施例においては、システム10は、少なくとも1つの圧力センサを有しても良い。少なくとも1つの圧力センサは、カフ14内の圧力を測定するように構成されても良い。幾つかの実施例においては、ここに記載の装置12が、カフ14内の圧力を測定するように構成された少なくとも1つの圧力センサを有することができる。代替として又は加えて、装置12の外部にある(例えば分離された又は遠隔にある)少なくとも1つの圧力センサが、カフ14内の圧力を測定するように構成されても良い。例えば、幾つかの実施例においては、カフ14自体が、カフ14内の圧力を測定するように構成された少なくとも1つの圧力センサを有しても良い。幾つかの実施例においては、少なくとも1つの圧力センサは、カフ14内の圧力を測定するために、装置12によって、又はより具体的には、装置12のコントローラ(
図1には図示せず)によって、制御可能であり得る。装置12(又は装置12のコントローラ)は、少なくとも1つの圧力センサを制御するための適切な方法で、少なくとも1つの圧力センサと通信し及び/又は接続することができる。
【0036】
同様に
図1には示されていないが、幾つかの実施例においては、システム10は、通信インタフェース(又は通信回路)を含んでも良い。幾つかの実施例においては、ここで説明する装置12が、通信インタフェースを有することができる。代替として又はこれに加えて、通信インタフェースは、装置12の外部にあっても良い(例えば分離していても良いし遠隔にあっても良い)。通信インタフェースは、装置12又は装置12の構成要素が、1つ以上の他の構成要素、センサ、インタフェース、装置又はメモリ(ここで説明するものなど)と通信し、及び/又はそれらに接続することを可能にするためのものとすることができる。例えば、通信インタフェースは、装置12(又は装置12のコントローラ)が、前述のポンプ、収縮弁及び少なくとも1つの圧力センサのうちの任意の1つ又は複数と通信し、及び/又はそれらに接続することを可能にするためのものとすることができる。通信インタフェースは、装置12又は装置12の構成要素が、任意の適切な方法で通信及び/又は接続することを可能にし得る。例えば、通信インタフェースは、装置12又は装置12の構成要素が、無線で、有線接続を介して、又は任意の他の通信(又はデータ転送)メカニズムを介して、通信及び/又は接続することを可能にし得る。幾つかの無線の実施例においては、例えば、通信インタフェースは、装置12又は装置12の構成要素が、無線周波数(RF)、Bluetooth(登録商標)又は任意の他の無線通信技術を使用して、通信及び/又は接続することを可能にし得る。
【0037】
同様に
図1には示されていないが、幾つかの実施例においては、システム10はメモリを持つことができる。幾つかの実施例においては、ここで説明する装置12が、メモリを有しても良い。代替として又はこれに加えて、メモリは、装置12の外部にあっても良い(例えば分離していても良いし遠隔にあっても良い)。装置12(又は装置12のコントローラ)は、メモリと通信し、及び/又はメモリに接続するように構成されても良い。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、及び電気的消去可能PROM(EEPROM)などの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリを含む、キャッシュメモリ又はシステムメモリなどの任意のタイプの非一時的な機械可読媒体を持つことができる。幾つかの実施例においては、メモリは、装置12をここで説明される方法で動作させるためにプロセッサによって実行され得るプログラムコードを記憶するように構成され得る。
【0038】
代替として又はこれに加えて、幾つかの実施例においては、メモリは、ここで説明される方法によって必要とされる情報又はここで説明される方法から得られる情報を記憶するように構成されても良い。例えば、幾つかの実施例においては、メモリは、カフ14の推定されたサイズ、カフ14の以前のサイズ、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張される変化した圧力、ここに記載される装置12の使用中に対象者について決定される1つ以上の血圧値、又はここに記載される方法によって必要とされるか、若しくはここに記載される方法から生じる任意の他の情報、又は情報の任意の組み合わせのうちの任意の1つ以上を記憶するように構成されても良い。幾つかの実施例においては、装置12(又は装置12のコントローラ)は、ここで説明される方法によって必要とされる情報、又はここで説明される方法から得られる情報を記憶するようにメモリを制御するように構成されても良い。
【0039】
同様に
図1には示されていないが、システム10は、ユーザインタフェースを有しても良い。幾つかの実施例においては、ここで説明する装置12が、ユーザインタフェースを有しても良い。代替的に又は加えて、ユーザインタフェースは、装置12の外部にあっても良い(例えば分離していても良いし遠隔にあっても良い)。装置12(又は装置12のコントローラ)は、ユーザインタフェースと通信し、及び/又はユーザインタフェースに接続するように構成されても良い。ユーザインタフェースは、ここに記載する方法によって必要とされる、又はそれに起因する情報をレンダリング(又は出力、表示又は提供)するように構成されても良い。例えば、幾つかの実施例においては、ユーザインタフェースは、カフ14の推定されたサイズ、カフ14の以前のサイズ、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張される変化した圧力、ここに記載される装置12の使用中に対象者について決定される1つ以上の血圧値、又はここに記載される方法によって必要とされるか、又はここに記載される方法から生じる任意の他の情報、又は情報の任意の組み合わせのうちの1つ以上をレンダリング(又は出力、表示又は提供)するように構成されても良い。代替として又はこれに加えて、ユーザインタフェースは、ユーザ入力を受信するように構成されても良い。例えば、ユーザインタフェースは、ユーザが情報又は命令を手動で入力し、装置12と相互作用及び/又は制御することを可能にしても良い。従って、ユーザインタフェースは、情報のレンダリング(又は出力、表示、又は提供)を可能にし、代替的に、又は追加的に、ユーザがユーザ入力を提供することを可能にする任意のユーザインタフェースであっても良い。幾つかの実施例においては、装置12(又は装置12のコントローラ)は、ここに記載の方法で動作するようにユーザインタフェースを制御するように構成されても良い。
【0040】
例えば、ユーザインタフェースは、1つ以上のスイッチ、1つ以上のボタン、キーパッド、キーボード、マウス、タッチスクリーン、又はアプリケーション(例えばタブレット、スマートフォン又は任意の他のスマート装置上の)、ディスプレイ又は表示スクリーン、タッチスクリーンなどのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)、タッチスクリーンなどのグラフィカルユーザインタフェース、又は任意の他の視覚コンポーネント、1つ以上のスピーカ、1つ以上のマイクロフォン又は任意の他の音声コンポーネント、1つ以上のライト(発光ダイオードLEDライトなど)、触覚又は触覚フィードバックを提供するためのコンポーネント(振動機能など又は任意の他の触覚フィードバックコンポーネント)、拡張現実装置(拡張現実眼鏡又は任意の他の拡張現実装置など)、スマート装置(スマートミラー、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチ又は任意の他のスマート装置など)、又は任意の他のユーザインタフェース、又はユーザインタフェースの組合せを有することができる。幾つかの実施例においては、情報をレンダリングするように制御されるユーザインタフェースは、ユーザがユーザ入力を提供することを可能にするものと同じユーザインタフェースであっても良い。
【0041】
同様に
図1には示されていないが、装置12は、装置12に電力を供給するためのバッテリ又は他の電源、あるいは装置12を主電源に接続するための手段を有することができる。また、装置12は、ここに記載されたものに対する任意の他の構成要素、又は構成要素の任意の組み合わせを含んでも良いことが理解されるであろう。
【0042】
図2は、一実施例による、血圧を測定する際に着用可能なカフ14と共に使用するための、ここに記載の装置12を作動させる方法200を示す。先に述べたように、カフ14は、対象者18の測定部位20を加圧するために膨張可能である。方法200は、一般的に、前述の装置12(又は装置12のコントローラ)によって、又はその制御下で実行されることができる。
図2のブロック202では、カフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズ(又はカフのサイズ)が推定される。カフ14の膨張は、カフ14がベースライン圧力pbaseから所定の圧力p1まで膨張されるものである。
【0043】
幾つかの実施例においては、ベースライン圧力pbaseは、0乃至30mmHgの範囲の圧力、例えば5乃至25mmHgの範囲の圧力、例えば10乃至20mmHgの範囲の圧力とすることができる。例えば、基準圧力pbaseは、0mmHg、5mmHg、10mmHg、15mmHg、20mmHg、25mmHg、30mmHg、又はこれらの例示的な圧力の間の任意の整数値又は非整数値から選択される圧力であっても良い。
【0044】
幾つかの実施例においては、所定の圧力p1は、収縮のための直前の開始圧力であっても良い。収縮のための直前の開始圧力は、現在の膨張の直前の膨張中にカフ14が膨張された圧力である。他の実施例においては、所定の圧力p1は、基準圧力pbaseよりも大きい任意の圧力とすることができる。例えば、所定の圧力p1は、収縮のための直前の開始圧力よりも小さいが、基準圧力pbaseよりも大きい任意の圧力とすることができる。
【0045】
幾つかの実施例においては、所定の血圧p1は、60乃至100mmHgの範囲の血圧、例えば65乃至95mmHgの範囲の血圧、例えば70乃至90mmHgの範囲の血圧、例えば75乃至85mmHgの範囲の血圧であっても良い。例えば、所定の血圧p1は、60mmHg、65mmHg、70mmHg、75mmHg、80mmHg、85mmHg、90mmHg、95mmHg、100mmHg、又はこれらの例示的な血圧の間の任意の整数又は非整数値から選択される血圧であっても良い。幾つかの実施例においては、所定の血圧p1は、少なくとも60mmHg、例えば少なくとも65mmHg、例えば少なくとも70mmHg、例えば少なくとも75mmHg、例えば少なくとも80mmHg、例えば少なくとも85mmHg、例えば少なくとも90mmHg、例えば少なくとも95mmHg、例えば少なくとも100mmHgの血圧であっても良い。
【0046】
装置12は、任意の適切な方法でカフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズを推定するように構成されても良い。幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14の1つ以上の特性に基づいて、カフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズを推定するように構成されても良い。幾つかの実施例においては、例えば、装置12は、カフ14の現在の膨張中に、カフ14内の圧力に基づいてカフ14のサイズを推定し、任意にポンプ流も推定するように構成されても良い。
【0047】
例えば、幾つかの実施例においては、装置12は、前述の基準圧力pbaseから前述の所定の圧力p1までカフ14が膨張されるのに要する時間に基づいて、カフ14の現在の膨張中のカフ14の大きさを推定するように構成されても良い。
【0048】
代替的に又は追加的に、幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度)に基づいて、カフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズを推定するように構成されても良い。これらの実施例の幾つかでは、ポンプ流量は常に同じであると仮定することができる。幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14の現在の膨張の開始から所定の時間が経過した後にカフ14が一度膨張する速度(例えば平均速度)として、カフ14が膨張する速度を決定するように構成されても良い。
従って、幾つかの実施例によれば、カフ14の現在の膨張の開始後の所定の期間は、省略されても良く、又はカフ14が膨張する速度(例えば平均速度)の決定から除外されても良い。このようにして、少なくとも1つの供給ライン(又は少なくとも1つの供給管)16などのシステム10の構成要素からの抵抗に対する感度を低くすることができる。
【0049】
幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14の現在の膨張中に測定されたカフ14内の血圧の増大を、カフ14内の血圧の増大に要した時間で割ることによって、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度)を決定するように構成されても良い。ここで、カフ14内の血圧の増大は、前述のベースライン圧力pbaseから前述の所定の血圧p1までのカフ14内の血圧の増大である。即ち、幾つかの実施例においては、装置12は、以下の式を使用して、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度) s(t)を決定するように構成されても良い:
s(t)=(p(t)-p(t0))/(t-t0) (1)
ここで、p(t)-p(t0)、開始時刻t0からカフ14内の血圧の増大が測定される時刻tまでの時間にわたるカフ14内の血圧の変化であり、t-t0は、カフ14内の血圧の増大に要する時間であり、より具体的には、開始時刻t0からカフ14内の血圧の増大が測定される時刻tまでの時間である。幾つかの実施例においては、開始時間t0は、カフ14内の圧力が最初に前述のベースライン圧力pbaseを超える時間であっても良い。同様に、幾つかの実施例においては、カフ14内の血圧の上昇が測定される時間tは、カフ14内の血圧が前述の所定の血圧p1に達する時間とすることができる。このようにして、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度)の決定は、カフの巻き付けの違いにあまり敏感でないようにすることができる。
【0050】
幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14がカフ14の現在の膨張中に様々な血圧レベルで、例えば、先に説明したベースライン圧力pbaseから先に説明した所定の血圧p1までの範囲の様々な血圧レベルで膨張する速度(例えば平均速度)を決定するように構成されても良い。 これらの実施例の幾つかでは、装置12は、カフ14が様々な圧力レベルで膨張する、決定された速度(例えば平均速度)を記憶するように構成されても良い。例えば、装置12は、これらの実施例の幾つかにおいて、カフ14が様々な圧力レベルで膨張する、決定された速度(例えば平均速度)を記憶するように、先に記載されたメモリを制御するように構成され得る。
【0051】
幾つかの実施例においては、装置12は、前述の少なくとも1つの圧力センサから、カフ14内の圧力の測定された増大、及び任意に、測定された増加に要する時間も取得するように構成され得る。幾つかの実施例においては、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度)は、リアルタイムで決定されても良い。幾つかの実施例によれば、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度)が、カフ14のサイズを示し得る。例えば、より小さいカフは、より大きいカフよりも速く膨張される。従って、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度)が遅いほど、カフ14は小さい。同様に、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度)が速ければ速いほど、カフ14は大きい。
【0052】
代替的に又は追加的に、幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14の内部体積に基づいてカフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズを推定するように構成されても良い。幾つかの実施例においては、カフ14の内部体積は、カフ14を膨張させるように制御可能なポンプ(前述のポンプなど)によって実現される流体の流れの測定値を取得し、ポンプによって実現される流体の流れの測定値を時間で積分することによって決定されても良い。幾つかの実施例においては、ポンプによって実現される流体の流れの測定値は、(先に述べたもののような)メモリから、例えばメモリに記憶されたルックアップテーブルから、取得されても良い。例えば、メモリは、ポンプによって達成することができるカフ14内の圧力の関数としてポンプによって実現される流体の流れの測定値を(例えばルックアップテーブルの形成で)記憶しても良い。従って、幾つかの実施例においては、カフ14内の圧力は、測定された圧力についてメモリに格納された流体の流れを取得するために、測定され使用されても良い。
【0053】
幾つかの実施例においては、ポンプによって実現される流体の流れの測度は、ポンプの回転速度の測定値に基づいて取得されても良い。例えば、ダイヤフラムポンプの場合、ポンプの各回転は、固定数のポンプチャンバを空にする結果となる。各ポンプチャンバは、固定された体積を有し、従って、ポンプの単一の回転において理論的に変位され得る流体体積を決定することができる。ポンプの効率は、ポンプによって実現される流体の流れの尺度を決定するために、測定及び使用されても良い。例えば、ポンプによって実現される流体の流れの測度は、ポンプの回転速度にポンプの効率を乗じたものとして決定されても良い。代替としては、ポンプによって実現される流体の流れの測定値は、メモリ(前述のようなもの)から、例えばメモリに記憶されたルックアップテーブルから、取得されても良い。例えば、メモリは、ポンプの回転速度及びカフ14内の血圧の関数として、ポンプによって実現される流体の流れの測定値を記憶しても良い。従って、幾つかの実施例においては、カフ14内の圧力を測定し、ポンプの回転速度と共に使用して、測定された圧力及び回転速度についてメモリに記憶された流体の流れを取得することができる。
【0054】
代替的に又は追加的に、幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14内への流体の体積(又は流量)と、カフ14が膨張する最大血圧(例えばカフ14内で達成できる最大血圧)と、に基づいて、カフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズを推定するように構成されても良い。当業者は、カフ14内への流体の体積(又は流量)と、カフ14が膨張される最大圧力とに基づいてカフ14のサイズを推定する方法を認識するであろう。
【0055】
代替として又はこれに加えて、幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14のコンプライアンスの尺度に基づいて、カフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズを推定するように構成されても良い。カフ14のコンプライアンスは、本分野では、カフ14の「カフコンプライアンス」とも呼ばれる。カフコンプライアンスは、カフ14の体積変化によるカフ14の圧力変化に関連する値として定義することができる。
【0056】
幾つかの実施例においては、カフコンプライアンスCCは、以下の式から決定されても良い:
CC(PC)=dVC/dPC (2)
ここで、VCはカフ14の体積であり、PCはカフ14内の圧力である。一次的には、カフコンプライアンスCcは、ボイルの法則を使用して決定することができる。カフコンプライアンスCcは、カフ14内の圧力に応じて変化する。幾つかの実施例においては、カフコンプライアンスは、カフ14への膨張流(即ちカフ14を膨張させるためのカフ14への流体の流入)をカフ14の膨張速度(即ちカフ14が膨張する速度)で割ったものとして決定されても良い。
【0057】
幾つかの実施例においては、準静的カフコンプライアンスCQSは、以下の手順を使用して決定されても良い。カフ14の現在の膨張中の時間にわたるカフ14内の圧力dP/dtが測定され得る。例えば、カフ14内の圧力は、圧力データの時系列を取得するためにアナログ-デジタル変換器によって測定されてデジタルドメインに変換され、時間にわたるカフ14内の圧力dP/dtを決定するために数値微分法が適用され得る。カフ14の現在の膨張中にカフに流入する流体の体積も測定され得る。カフ14の内部体積は、膨張の開始時には無視できると仮定することができ、又はカフ14の現在の膨張の開始時のカフ14の内部体積が決定されても良い。例えば、カフ14の現在の膨張の開始時におけるカフ14の内部体積は、カフへの流体流の体積の積分によって決定され得る。
【0058】
幾つかの実施例においては(例えばカフ14の現在の膨張が遅い場合)、準静的カフコンプライアンスCQSは、以下の式を使用して計算されても良い:
ここで、
は、カフ14内の血圧の時間微分であり、
は、カフ内への流体の流量の体積の時間微分である。
【0059】
幾つかの実施例においては、カフ14の体積VC及びカフ14内の圧力PCが既知である場合(例えば上述のように血圧測定値及び流量測定値の積分から)、圧力PCにおける準静的カフコンプライアンスCQSは、以下の式を使用して、既知のカフ体積-圧力関係から推定することができる:
【0060】
カフコンプライアンスが決定され得る方法の例が示されたが、当業者は、カフコンプライアンスが決定され得る他の方法を認識するであろう。更に、装置12がカフ14のサイズを推定するように構成され得る方法について例が示されたが、当業者は、装置12がカフ14のサイズを推定するように構成され得る他の方法、及び装置12がカフ14のサイズを推定するように構成され得る任意の組み合わせの方法が可能であることを認識するであろう。
【0061】
従って、
図2のブロック202では、カフ14のサイズ(又はカフサイズ)が概算される。一般に、特定のサイズの肢を持つ対象者は、特定のカフサイズに適格である。従って、カフサイズは、カフ14がその周りに装着される対象者18の肢のサイズを示すことができる。カフ14が装着される対象者18の四肢のサイズは、例えば、カフ14が装着される対象者18の四肢の周囲長又は周囲長範囲(例えば最小周囲長から最大周囲長までの範囲)であっても良い。種々のカフサイズについての肢(例えば腕)の可能な周囲長範囲の例は、以下の表に提供される。
【表1】
【0062】
カフ14が周囲に装着される対象者18の肢のサイズは、対象者18を他の対象者から区別するか、又は対象者18を1つ以上の対象者カテゴリに分類するために使用することができる、対象者18の特徴(例えば生体測定特徴)を示し得る。例えば、幾つかの実施例においては、対象者18の特徴は、対象者18の身体的特徴及び対象者18の人口統計学的特徴のうちの任意の1つ以上であり得る。対象者18の身体的特徴の例としては、対象者18の身長(又は身長範囲)、若しくは対象者18の任意の他の身体的特徴、又は対象者18の任意の身体的特徴の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。対象者18の人口統計学的特徴の例は、対象者18の年齢(又は年齢範囲)、対象者18の性別(又は性別範囲)、若しくは対象者18の任意の他の人口統計学的特徴、又は対象者18の人口統計学的特徴の任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施例によれば、対象者18の四肢のサイズ(例えば腕の周囲長)は、対象者18の身長に直接相関すると仮定されても良く、例えば、対象者の所与の年齢に対する比較的大きな腕の周囲長は、対象者の所与の年齢に対する比較的高い身長に関連付けられても良い。
【0063】
従って、
図2のブロック202において、カフ14の現在の膨張中にカフ14のサイズが推定される。次いで、
図2のブロック204において、カフ14の推定されたサイズが、カフ14の現在の膨張の直前のカフ14の膨張の間に推定されたカフ14の以前のサイズと比較される。
図2のブロック206において、カフ14の推定されたサイズが、カフ14の以前のサイズと所定の量よりも大きく異なる場合、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張される血圧が変更される。先に述べたように、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張する血圧は、「収縮のための開始血圧」と呼ぶことができる。斯くして、
図2のブロック206において、収縮のための開始圧力が変更される。幾つかの実施例においては、カフ14の推定サイズが、カフ14の以前のサイズと所定量よりも大きく異なる場合、カフ14の推定サイズは、カフ14の以前のサイズと有意に異なると示され得る。
【0064】
幾つかの実施例においては、カフサイズの推定及び比較が完了する前に、収縮のための直前の開始圧力に達した場合、カフ14の膨張は、カフサイズの推定及び比較が完了している間、収縮のための直前の開始圧力で一時停止されても良い。前述のように、収縮のための直前の開始圧力は、現在の膨張の直前の膨張中にカフ14が膨張された圧力である。カフ14の推定されたサイズが、予め定められた量を超えてカフ14の以前のサイズと異なる場合、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張される血圧(即ち、収縮のための開始血圧)は、これらの実施例によるカフサイズ推定及び比較の完了時に変更され得る。
【0065】
幾つかの実施例においては、カフサイズ推定及び比較の完了時に、収縮のための開始圧力が現在の圧力以下であると判定される場合、代わりに収縮のための開始圧力が現在の圧力に変更され得る。従って、これらの実施例においては、カフ14の膨張は停止され、カフ14の収縮は現在の圧力で始まる。
【0066】
幾つかの実施例においては、カフ14の推定サイズに基づいて、カフ14の収縮が始まる前にカフ14が膨張する血圧(即ち収縮のための開始血圧)を変化させるように、装置12が構成されても良い。従って、幾つかの実施例によれば、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張されるべき適切な圧力(即ち収縮のための適切な開始圧力)は、カフ14の推定されたサイズから推測され得る。例えば、幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14の推定サイズに基づいて対象者18の予測血圧範囲(又は予測血圧値)を決定し、決定された対象者18の予測血圧範囲に基づいてカフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張する圧力(即ち収縮の開始圧力)を変化させるように構成されることによって、カフ14の推定サイズに基づいてカフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張する圧力(即ち収縮の開始圧力)を変化させるように構成されても良い。幾つかの実施例においては、予測血圧範囲(又は値)は、予測収縮期血圧範囲(又は値)、例えば予測最大収縮期血圧範囲(又は値)を有し得る。
【0067】
幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14の推定サイズを、それぞれが対応する基準血圧範囲(又は値)と共に記憶されたカフ14の複数の基準サイズと比較し、カフ14の推定サイズと同一であるか又は最小限しか違わないカフ14の基準サイズと共に記憶された基準血圧範囲(又は値)として、対象者18に対する予測血圧範囲を決定することによって、カフ14の推定サイズに基づいて、対象者18に対する予測血圧範囲(又は値)を決定するように構成されても良い。幾つかの実施例においては、カフ14の複数の基準サイズ及び対応する基準血圧範囲(又は値)は、ルックアップテーブルの形で記憶されても良い。幾つかの実施例においては、カフ14の複数の基準サイズ及び対応する基準血圧範囲(又は値)は、母集団から取得されたデータに基づくことができる。従って、幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14の推定されたサイズ及び母集団データに基づいて、対象者18の予測血圧範囲(又は値)を決定するように構成されても良い。
【0068】
前述のように、カフ14の推定サイズは、カフ14が周囲に装着される対象者18の肢のサイズを示すことができ、カフ14が周囲に装着される対象者18の肢のサイズは、対象者18を他の対象者から区別するか、又は対象者18を1つ以上の対象者カテゴリに分類するために使用することができる対象者18の特徴(例えば生体測定特徴)を示すことができる。従って、他の実施例においては、装置12は、カフ14の推定されたサイズに基づいて、対象者18を他の対象者から区別するか、又は対象者18を1つ以上のカテゴリに分類し、次いで、対象者18の判定された特徴に基づいて対象者18の予測血圧範囲(又は値)を決定するために使用することができる、対象者18の特徴(例えば生体測定特徴)を決定するように構成されることによって、カフ14の推定されたサイズに基づいて、対象者18の予測血圧範囲(又は値)を決定するように構成されても良い。例えば、小児対象者(例えば乳児、小児、青少年)は、成人対象者よりも血圧が低い、又は血圧範囲が低いことが一般に知られている。
【0069】
幾つかの実施例においては、装置12は、対象者18の決定された特徴を、それぞれが対応する基準血圧範囲(又は値)と共に記憶された複数の基準特徴と比較し、対象者18の決定された特徴と同じであるか又は最小限しか違っていない基準特徴と共に記憶された基準血圧範囲(又は値)として、対象者18の予測される血圧範囲を決定するように構成されることによって、対象者18の決定された特徴に基づいて、対象者18の予測される血圧範囲(又は値)を決定するよう構成されても良い。幾つかの実施例においては、複数の基準特徴及び対応する基準血圧範囲(又は値)は、ルックアップテーブルの形で記憶されても良い。幾つかの実施例においては、複数の基準特徴及び対応する基準血圧範囲(又は値)は、母集団から取得されたデータに基づくことができる。従って、幾つかの実施例においては、装置12は、決定された特徴及び母集団データに基づいて、対象者18の予測血圧範囲(又は値)を決定するように構成されても良い。
【0070】
母集団データ(例えば複数の基準特徴及び対応する基準血圧範囲又は値)は、装置12のメモリ内などにローカルに、及び/又は一般的な患者データベース(例えば看護ポストの隣のサーバなどのサーバ上に配置される)などの装置12の外部(例えば離れている又はリモートの)メモリ内に記憶されても良い。従って、幾つかの実施例によれば、装置12(又は装置12のコントローラ)は、1つ以上のメモリから母集団データを取得するように構成されても良い。装置12(又は装置12のコントローラ)は、任意の適切な方法、例えば、前述した通信インタフェースを介して、1つ以上のメモリと通信し、及び/又は接続することができる(例えば結合することができる)。1つ以上のメモリに記憶された母集団データは、定期的に(例えばソフトウェア特徴として)更新されても良い。幾つかの実施例においては、装置12(又は装置12のコントローラ)は、母集団データを取得するための1つ以上のメモリを選択することができる。例えば、幾つかの実施例においては、装置12(又は装置12のコントローラ)は、最新の母集団データを持つ1つ以上のメモリを選択することができる。幾つかの実施例においては、メモリに記憶された母集団データが更新されている間に、装置12(又は装置12のコントローラ)は、別のメモリから母集団データを取得することができる。母集団データは、幾つかの実施例によれば、ルックアップテーブルの形で記憶されても良い。
【0071】
幾つかの実施例においては、収縮のための開始圧力は、80乃至180mmHgの範囲の圧力、例えば85乃至175mmHgの範囲の圧力、例えば90乃至170mmHgの範囲の圧力、例えば100乃至165mmHgの範囲の圧力、例えば105乃至160mmHgの範囲の圧力、例えば110乃至155mmHgの範囲の圧力、例えば115乃至150mmHgの範囲の圧力、例えば120乃至145mmHgの範囲の圧力、例えば125乃至140mmHgの範囲の圧力、例えば130乃至135mmHgの範囲の圧力であっても良い。例えば、収縮の開始圧力は、80mmHg、85mmHg、90mmHg、95mmHg、100mmHg、105mmHg、110mmHg、115mmHg、120mmHg、125mmHg、130mmHg、135mmHg、140mmHg、145mmHg、150mmHg、155mmHg、160mmHg、165mmHg、170mmHg、175mmHg、180mmHg、又はこれらの例の圧力間の任意の整数又は非整数値であっても良い。
【0072】
幾つかの実施例において、収縮のための開始圧力は、少なくとも80mmHg、例えば少なくとも85mmHg、例えば少なくとも90mmHg、例えば少なくとも95mmHg、例えば少なくとも100mmHg、例えば少なくとも105mmHg、例えば少なくとも110mmHg、例えば少なくとも115mmHg、例えば少なくとも120mmHg、例えば少なくとも125mmHg、例えば少なくとも130mmHg、例えば少なくとも135mmHg、例えば少なくとも140mmHg、例えば少なくとも145mmHg、例えば少なくとも150mmHg、例えば少なくとも155mmHg、例えば少なくとも160mmHg、例えば少なくとも165mmHg、例えば少なくとも170mmHg、例えば少なくとも175mmHg、例えば180mmHgの圧力であって良い。
【0073】
幾つかの実施例においては、収縮のための開始圧力は、対象についての予測血圧、又はより具体的には収縮期血圧に等しい(又は略等しい)圧力であっても良い。幾つかの実施例によれば、全ての対象者(例えば新生児対象者を除く)について、対象者の予測血圧(又は収縮期血圧)は、少なくとも100mmHgであっても良い。例えば、幾つかの実施例においては、小児対象者(例えば新生児対象者を除く)の予測血圧(又は収縮期血圧)は、100乃至120mmHg (例えば110mmHg)の範囲であっても良い。同様に、例えば、幾つかの実施例においては、成人対象者の予測血圧(又は収縮期血圧)は、120乃至180mmHg (例えば150mmHg)の範囲であっても良い。幾つかの実施例においては、新生児対象者の予測血圧(又は収縮期血圧)は、70乃至100mmHg (例えば85mmHg)の範囲であっても良い。新生児対象者についての予想される血圧(又は収縮期血圧)は、年齢及び/又は妊娠期間に依存することができ、例えば、最も若い及び/又は最も小さい新生児対象者は、約70mmHgの予想される血圧(又は収縮期血圧)を有し得、最も年長の及び/又は最も大きい新生児対象者は、幾つかの実施例によれば、約100mmHgの予想される血圧(又は収縮期血圧)を有し得る。
【0074】
例示的な実施例においては、カフ14の推定サイズは、対象者18が15cmまでの腕周囲(対象者18の肢のサイズである)を有し、15cmまでの腕周囲は、対象者18が4.5歳までの年齢であることを示す(メモリに記憶された母集団データから抽出され得る)。従って、この例におけるカフ14の推定サイズに基づいて、装置12は、対象者18の特徴、即ち対象者18が4.5歳までの年齢であることを決定する。決定された特徴を、メモリにそれぞれ記憶されている複数の基準特徴と、この例では対応する基準血圧値とを比較することによって、装置12は、メモリから、4歳の男児に対応する血圧が110mmHgであり、4歳の女児が107mmHgであることを決定する(又は抽出する)。従って、この例では、装置12は、対象者18に対する予測血圧値が100mmHg以下(最も可能性が高い)である(即ちより高くない)ことを(メモリに記憶された母集団データから)決定することができる。従って、この例では、カフ14の推定サイズが、カフ14の以前のサイズと所定量を超えて異なる場合、装置12は、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張する圧力を、90mmHg乃至110mmHgの範囲の値に変更することができる。幾つかの実施例においては、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張される圧力は、予想される収縮期血圧に等しいか、又は略等しい(例えばわずかに高い)値に設定されても良い。従って、実施例のような子供用カフについては、カフ14の収縮が始まる前にカフ14が膨張される血圧は、例えば、100mmHg又は110mmHgに設定されても良い。
【0075】
斯かる実施例の別の例では、カフ14の推定サイズは、対象者18が少なくとも28cm (対象者18の四肢のサイズである)の腕周囲長を持つことを示し、少なくとも28cmの腕周囲長は、対象者18が成人対象者であることを示す。従って、この例では、カフ14の推定サイズに基づいて、装置12は、対象者18が成人対象者であるという対象者18の特徴を決定する。決定された特徴を、メモリにそれぞれ記憶された複数の基準特徴と、この例では対応する基準血圧値と比較することによって、装置12は、成人に対応する血圧が120乃至180mmHgの範囲の血圧(例えば150mmHgの血圧)であることをメモリから決定(又は抽出)する。
【0076】
カフ14のサイズをデフォルトの開始圧力(即ち、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張されるべき圧力)にマッピングする例示的なルックアップテーブルが、以下に示される。
【0077】
斯くして、一般的に、1つ以上のメモリは、複数のデフォルト開始圧力(即ち、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張される複数の圧力)と、複数のデフォルト開始圧力のそれぞれに対応するカフ14のサイズと、を(例えばルックアップテーブルに)記憶することができる。このようにして、カフ14のサイズが推定されると、装置12(又は装置12のコントローラ)は、1つ以上のメモリから、そのサイズのカフ14の対応するデフォルト開始圧力を決定(又は抽出)することができる。幾つかの実施例においては、複数の記憶されたデフォルト開始圧力は、最小デフォルト開始圧力(即ち、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張される最小圧力) pmin及び最大デフォルト開始圧力(即ち、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張される最大圧力) pmaxを有し得る。従って、これらの実施例においては、最小デフォルト開始圧力pmin及び最大デフォルト開始圧力pmaxは、最小デフォルト開始圧力pmin及び最大デフォルト開始圧力pmaxの各々に対応するカフ14のサイズと共に記憶されても良い。最小デフォルト開始圧力pminは、最小カフ(例えば小児、子供、若しくは青年のような小児患者のためのカフ14)のためのものであっても良く、最大デフォルト開始圧力pmaxは、最大カフ(例えば成人のためのカフ14)のためのものであっても良い。
【0078】
1つ以上のメモリに記憶された複数のデフォルト開始圧力の値は、(カフ14の体積の関数として)母集団にわたる血圧(又はより具体的には収縮期血圧)分布に依存する。1つ以上のメモリに記憶された複数のデフォルト開始圧力の値は、その値が母集団の大部分、例えば母集団の90%の血圧(又はより具体的には収縮期血圧)よりも(例えばわずかに)大きくなるように選択することができる。一例として、最小のカフ(例えば乳児、小児、又は青年のような小児対象者のためのカフ14のための)の最小デフォルト開始圧力pminは、100mmHg (又は80乃至110mmHgの範囲の値)であるように選択されても良い。同様に、一例として、最大のカフ(例えば成人用のカフ14)の最大デフォルト開始圧力pmaxは、150mmHg (又は120乃至180mmHgの範囲の値)になるように選択されても良い。
【0079】
幾つかの実施例においては、1つ以上のメモリはまた、複数のデフォルト開始圧力の各々に対応するカフ14の現在の膨張中のカフ14の1つ以上の特性を(例えばルックアップテーブルに)記憶しても良い。カフ14の現在の膨張中のカフ14の1つ以上の特性は、カフ14がベースライン圧力から所定の圧力まで膨張するのに要する時間、カフ14が膨張する速度(例えば平均速度)、カフ14の内部体積、カフ14内への流体の体積、及びカフ14が膨張する最大圧力、カフ14のコンプライアンスの測定、及び/又はカフ14の現在の膨張中のカフ14の任意の他の特性など、前述の特性のうちの任意の1つ又は複数を持つことができる。
【0080】
かくして、カフ14の推定サイズがカフ14の以前のサイズと所定量以上異なる場合に、装置12が構成される態様を、
図2を参照して説明した。一方、幾つかの実施例(
図2には図示せず)では、装置12は、カフ14の推定されたサイズが、カフ14の以前のサイズと所定の量未満だけ異なる場合、又はカフ14の推定されたサイズが、カフ14の以前のサイズと同じである場合、カフ14の現在の膨張の直前のカフ14の収縮中に決定された血圧値(例えば収縮期血圧値)に基づいて、カフ14の収縮が開始する前にカフ14が膨張する圧力を決定するように構成されても良い。カフ14の推定されたサイズが、カフ14の以前のサイズと所定の量未満だけ異なるか、又はカフ14の推定されたサイズが、カフ14の以前のサイズと同じである場合、カフ14における推定されたサイズは、カフ14の以前のサイズと同様であると示され得る。
【0081】
幾つかの実施例においては、ここで言及される所定の量は、少なくとも10%、例えば少なくとも15%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも25%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも35%、例えば40%、例えば少なくとも45%、例えば少なくとも50%であっても良い。幾つかの実施例においては、ここで言及される所定の量は、10%乃至50%の範囲、例えば15%乃至45%の範囲、例えば20%乃至40%の範囲、例えば25%乃至35%の範囲の量であっても良い。例えば、ここで言及される所定の量は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%から選択される量、又は言及された値の間の任意の非整数量、又は10%乃至50%の範囲にある任意の他の量であっても良い。
幾つかの例がここで言及される所定の量について提供されているが、ここで言及される所定の量は、少なくとも10%であるか、又は10%乃至50%の範囲にある任意の量であっても良いことが理解されるであろう。
【0082】
図2には示されていないが、幾つかの実施例においては、装置12は、カフ14の収縮中にカフ14内で検出された圧力振動を示す信号を取得するように構成されても良い。これらの実施例の幾つかでは、装置12(又は装置12のコントローラ)は、取得された信号に基づいて対象者18の血圧値を決定(又は測定)するように構成することもできる。代替としては、装置12の外部の(例えば分離された又はリモートの)モジュールは、カフ14の収縮中にカフ14内で検出された圧力振動を示す信号を取得し、取得された信号に基づいて対象者18の血圧値を決定(又は測定)するように構成されても良い。従って、装置12(又は外部モジュール)は、幾つかの実施例によれば、カフ14の収縮中に対象者18の血圧値を決定するように構成されても良い。
【0083】
幾つかの実施例においては、カフ14の収縮中にカフ14内で検出された圧力振動を示す信号が、徐々に又は段階的に取得(又は測定)されても良い。例えば、幾つかの段階的な実施例においては、カフ14の収縮中にカフ14内で検出された圧力振動を示す信号は、プラトー圧力で取得(又は測定)されても良く、カフ14内の圧力は、プラトー圧力間で段階的に低減されても良い。プラトー圧力は、圧力振動を示す信号が測定される一定の圧力レベルとして、例えば、血圧測定の一部として定義されても良い。
【0084】
対象者18の血圧値は、カフ14の収縮中(又は収縮段階)に取得された信号に基づいて決定することができるので、装置12は、収縮に基づく血圧測定に使用するためのものである。また、この技術は非侵襲的である。従って、より具体的には、装置12は、収縮に基づく非侵襲性血圧(NIBP)測定に使用するためのものである。幾つかの実施例においては、取得された信号は、例えば、30拍/分乃至300拍/分の心拍数範囲に対応する周波数範囲にあっても良い。例えば、取得された信号は、幾つかの実施例によれば、0.5Hz乃至5Hzの周波数範囲内とすることができる。
【0085】
ここに記載される実施例のいずれにおいても、装置12が実行するように構成されるステップの少なくとも1つ又は全てを自動化することができる。
【0086】
コンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品も提供される。コンピュータ可読媒体は、そこに具体化されたコンピュータ可読コードを持つ。コンピュータ読み取り可能コードは、適切なコンピュータ又はプロセッサによる命令実行時に、コンピュータ又はプロセッサがここに記載する方法を命令実行するように構成される。コンピュータ可読媒体は、例えば、コンピュータプログラム製品を担持することが可能な任意のエンティティ又は装置であっても良い。例えば、コンピュータ可読媒体は、ROM(CD-ROMや半導体ROMなど)や磁気記録媒体(ハードディスクなど)などのデータ記憶装置を含んでも良い。更に、コンピュータ可読媒体は、電気又は光ケーブルを介して、あるいは無線又は他の手段によって搬送され得る、電気又は光信号などの伝送可能な担体であっても良い。コンピュータプログラムプロダクトが斯かるシグナルで実施化される場合、コンピュータ可読媒体は、斯かる有線又は他の装置又は装置によって構成されても良い。代替として、コンピュータ可読媒体は、コンピュータプログラム製品が埋め込まれた集積回路であっても良く、集積回路は、ここに記載の方法を実行するように適合されているか、又はその実行に使用される。
【0087】
従って、既存技術に関連する制限に対処する装置、方法、及びコンピュータプログラム製品がここで提供される。
【0088】
図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する変形が理解され実行され得る。請求項において、「持つ(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又はその他のユニットが、請求項に列記された幾つかのアイテムの機能を実行しても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又は固体媒体のような適切な媒体上で保存/配布されても良いが、インターネット又はその他の有線若しくは無線通信システムを介してのような、他の形で配布されても良い。請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。