(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】キャッシュバック管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20220111BHJP
【FI】
G06Q30/02 320
(21)【出願番号】P 2019055733
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518411707
【氏名又は名称】株式会社AoyamaLab
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】山中 卓
【審査官】山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-312855(JP,A)
【文献】特開2008-112336(JP,A)
【文献】特開2006-267763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0217829(US,A1)
【文献】特開2009-143203(JP,A)
【文献】特開2006-072475(JP,A)
【文献】特開2016-051283(JP,A)
【文献】特開2012-042996(JP,A)
【文献】特開2008-021195(JP,A)
【文献】特開2007-280335(JP,A)
【文献】特開2002-304472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャッシュバック管理システムにおいて、
サービスを利用するユーザのそれぞれについて、サービス利用の対価の前払いとしてユーザにキャッシュバックされるキャッシュバック額に対して、サービスの利用によってユーザに付与される付与ポイント額を充当することによって算出される前払いポイント額を保持するポイント保持部と、
前記ポイント保持部によって保持された前払いポイント額を更新するポイント処理部とを有し、
前記ポイント処理部は、
ユーザがサービスに新規加入した場合、当該ユーザに対して、所定のキャッシュバック額のキャッシュバック処理を行うキャッシュバック処理部と、
ユーザがサービスを利用した場合、前記キャッシュバック額に対して前記付与ポイント額を充当することによって、当該ユーザに関する前払いポイント額を更新するサービス利用処理部と、
ユーザがサービスの解約を申し出た場合、当該ユーザに関して残存する前払いポイント額に応じて、解約手数料付きの解約処理を行う解約処理部と
を有することを特徴とするキャッシュバック管理システム。
【請求項2】
前記解約処理部は、前記付与ポイント額の累計によって前記キャッシュバック額の消化が完了していない場合、前記解約処理として、ユーザに対する解約手数料の請求を行うことを特徴とする請求項1に記載されたキャッシュバック管理システム。
【請求項3】
前記解約処理部は、前記前払いポイント額の残高と、予め定められた解約規約とに応じて、前記解約手数料を決定することを特徴とする請求項2に記載されたキャッシュバック管理システム。
【請求項4】
前記サービス利用処理部は、サービスを利用してユーザが商品を購入する毎に、前記キャッシュバック額に対して、購入に係る商品の標準価格と会員価格との差額相当のポイントを充当することを特徴とする請求項1に記載されたポイント管理システム。
【請求項5】
前記キャッシュバック処理部は、前記付与ポイント額の累計によって前記キャッシュバック額の消化が完了した場合、当該ユーザに対して、所定のキャッシュバック額を再度キャッシュバックすることを特徴とする請求項1に記載されたキャッシュバック管理システム。
【請求項6】
前記キャッシュバック処理部は、ユーザが希望するキャッシュバック額を審査することによって、前記キャッシュバック額を決定することを特徴とする請求項1または5に記載されたキャッシュバック管理システム。
【請求項7】
前記キャッシュバック処理部は、ユーザが希望するキャッシュバック額が審査で許容される額を超えている場合、消費者向けの融資によって補填することで、前記キャッシュバック額を決定することを特徴とする請求項6に記載されたキャッシュバック管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッシュバック管理システムに係り、特に、サービスの新規加入時におけるユーザへのキャッシュバックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、商品またはサービスの販売促進を図る携帯端末を用いた購入ポイント管理システムが開示されている。この管理システムでは、サービスの会員である顧客が商品またはサービスを購入した際、顧客に対して購入ポイントが付与される。このポイント数は、購入する商品等の価格に応じて決定される。顧客は、商品の購入を繰り返すことによってポイントを貯蓄していき、貯蓄されたポイントを消費することで、商品を安く購入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、商品を購入する毎にユーザにポイントを付与し、ポイントを貯めたユーザに対して特典を与えるスキームは、サービスへの新規加入を促進するための手段としては必ずしも有効ではない。なぜなら、ユーザは、ある程度のポイントが貯まって初めてその価値を見出す傾向があるが、新規加入の時点ではポイントが未だ保有されていないからである。そこで、サービスへの新規加入特典として、ユーザに対して所定額をキャッシュバックするスキームも存在する。しかしながら、この類いのスキームの大半は、キャッシュバックを無条件に行うものであり、その後のサービスの利用と結び付いているとは言い難い。また、キャッシュバックを提供するサービス運営者側にとって過度な負担とならないように、ユーザへのキャッシュバックと引き替えに、特段の根拠はない何らかの解約ペナルティをユーザに課すことも多く、これによって、契約継続を繋ぎ止めているのが実情である。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サービス運営者側に過度な負担を強いることなく、ユーザにとって魅力的な特典を与えることで、サービスへの新規加入の促進を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、ポイント保持部と、ポイント処理部とを有するキャッシュバック管理システムを提供する。ポイント保持部は、サービスを利用するユーザのそれぞれについて、前払いポイント額を保持する。この前払いポイント額は、サービス利用の対価の前払いとしてユーザにキャッシュバックされるキャッシュバック額に対して、サービスの利用によってユーザに付与される付与ポイント額を充当することによって算出される。ポイント処理部は、ポイント保持部によって保持された前払いポイント額を更新する。このポイント処理部は、キャッシュバック処理部と、サービス利用処理部と、解約処理部とを有する。キャッシュバック処理部は、ユーザがサービスに新規加入した場合、このユーザに対して、所定のキャッシュバック額のキャッシュバック処理を行う。サービス利用処理部は、ユーザがサービスを利用した場合、キャッシュバック額に対して付与ポイント額を充当することによって、このユーザに関する前払いポイント額を更新する。解約処理部は、ユーザがサービスの解約を申し出た場合、このユーザに関して残存する前払いポイント額に応じて、解約手数料付きの解約処理を行う。
【0007】
ここで、本発明において、上記解約処理部は、付与ポイントの累計によってキャッシュバック額の消化が完了していない場合、上記解約処理として、ユーザに対する解約手数料の請求を行うことが好ましい。この場合、上記解約手数料は、上記前払いポイント額の残高と、予め定められた解約規約とに応じて決定してもよい。
【0008】
本発明において、上記サービス利用処理部は、サービスを利用してユーザが商品を購入する毎に、キャッシュバック額に対して、購入に係る商品の標準価格と会員価格(会員に対して提供される割引価格)との差額相当のポイント数を充当することが好ましい。
【0009】
本発明において、上記キャッシュバック処理部は、付与ポイント額の累計によってキャッシュバック額の消化が完了した場合、このユーザに対して、所定のキャッシュバック額を再度キャッシュバックしてもよい。また、上記キャッシュバック処理部は、初回または2回目以降のキャッシュバックにおいて、ユーザが希望するキャッシュバック額を審査することによって、キャッシュバック額を決定してもよい。この場合、上記キャッシュバック処理部は、ユーザが希望するキャッシュバック額が審査で許容される額を超えている場合、消費者向けの融資によって補填することで、キャッシュバック額を決定してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サービスに新規加入したユーザに対して、サービス利用の対価の前払いとして所定のキャッシュバック額をキャッシュバックし、その後のサービス利用によってポイントが付加される毎に、キャッシュバック額に対してポイント額が充当される。ユーザがサービスの解約を申し出た場合、このユーザに関する残存する前払いポイント額に応じて、解約手数料付きの解約処理が行われる。すなわち、ユーザによるサービスの解約には一定の合理的な制限があり、解約の時点で残存する前払いポイント額を精算するための解約手数料の支払いが求められる。これにより、サービス運営者側に過度な負担を強いることなく、ユーザにとって魅力的なキャッシュバック額を柔軟に設定することが可能になり、サービスへの新規加入を効果的に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】キャッシュバック管理システムのブロック構成図
【
図4】サービス利用処理部によって実行される処理のフローチャート
【
図5】キャッシュバック処理部によって実行される処理のフローチャート
【
図6】解約処理部によって実行される処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、EC(Electronic Commerce)サービスの一例である会員制の定期配送サービスの説明図である。この定期配送サービスは、会員であるユーザAと、ECサイトBと、配送物の配送管理を行う配送業者Cとが主体となって構成されている。基本的な配送スキームは従来と同様であり、ユーザAがECサイトBにて商品を購入すると、配送業者Cによって商品がユーザAの手元に届けられる。定期配送サービスでは、定期配送スケジュールに基づいて、配送予定日が互いに異なる複数の定期配送P1~P3が予め設定されている。ECサイトBは、ユーザAによる商品の定期的な購入を受け付け、配送業者Cに対して、配送物a1~a3のそれぞれに対応した定期配送P1~P3を要求する。例えば、今週の土曜日の定期配送P1に配送物a1、翌週の土曜日の定期配送P2に配送物a2、翌々週の土曜日の定期配送P3に配送物a3をそれぞれ割り当てるといった如くである。
【0013】
ECサイトBとしては、典型的には、インターネット上の仮想店舗であるスーパーマーケットサイトが想定され、そこで販売される商品には、水、米、パン、果物、牛乳、卵、ジュース、ヨーグルト、納豆、豆腐といった日用食品が少なくとも含まれる。日用食品は、その特性として、家庭内でほぼ毎日消費されるといった高い定期購入性を有し、10~20種程度の食品は毎週同じものが定期的に購入される傾向がある。そこで、ECサイトBは、定期購入性の高い複数種の商品(日用食品を含む。)を提供し、ユーザAによって購入された商品の組み合わせを配送物a1~a3とした定期配送P1~P3を配送業者Cに要求する。
【0014】
ここで、スーパーマーケットサイトのビジネス上の特徴としては、以下の点が挙げられる。第1に、例えば、毎週土曜日の10~12時といった如く、定期的に日用食品を宅配(ネット注文)する。これにより、ユーザAは実店舗に足を運ばなくても商品を入手できるため、ユーザの負担を軽減できる。なお、通常会員は10商品、プレミアム会員は20商品といった如く、一回当たりの定期配送で指定できる日用食品の個数に所定の上限を設けてもよい。第2に、インターネット上の仮想店舗であるため、実店舗のような販売マージンが発生せず、実店舗よりも安価に日用食品をユーザに提供できる。第3に、ユーザから会費を定期的に徴収し、定期配送の費用は会費にて賄われる。これにより、運営主体がビジネスを継続するのに必要な原資を確保できる。そして、第4に、1種類の商品は1つのブランドに厳選されている。これは、食品メーカにとって、顧客を継続的に確保できるメリットがあるほか、定期ECサイト4上に広告を掲載することで、長期優良顧客との直接的なコミュニケーションが可能になるといったメリットもある。
【0015】
配送業者Cは、ECサイトBからの要求を受け付け、配送物の配送を管理・手配する。ECサイトBより定期配送スケジュールを受け付けた場合、この定期配送スケジュールに従って、時系列的に早い配送便の順で、定期配送P1、定期配送P2、定期配送P3が設定される。ECサイトBより複数の日用食品である配送物a1の配送要求を受け付け、その配送便として定期配送a1が指定された場合、配送物a1の配送便として定期配送P1が設定される。配送物a2,a3についても同様であり、配送物a2の配送便として定期配送p2、配送物a3の配送便として定期配送P3がそれぞれ設定される。
【0016】
なお、ECサイトB(フロントエンド)の機能が限定されており、配送業者C(バックエンド)とのネットワーク上の連携が乏しい場合には、フロントエンドの業者が、別途バックエンドの配送システムに便乗配送の指定を入力してもよい。また、これに代えて、電話やメールなどで配送業者Cに個別に連絡し、配送業者Cの方で便乗配送の指定を入力するようにしてもよい。また、ECサイトBのオペレータが、配送業者C側のサーバに接続されたクライアントを操作することによって、配送業者Cに対して、便乗配送の要求を行ってもよい。さらに、便乗配送の要求は、ECサイトBのみならず、ユーザAが配送業者C側のサーバに直接ログインして、ユーザAが直接行ってもよい。
【0017】
本実施形態では、本サービスの新規加入を促進すべく、新規加入時の特典としてユーザへの「キャッシュバック」を行う。本明細書において、「キャッシュバック」とは、経済的価値を有するものをユーザに付与する行為全般をいい、ユーザによる事前の支払いの有無は問わない。キャッシュバックの具体的な態様としては、例えば、現金の還元、ポイントの付与、クオカード等の金券の配布、ユーザの指定口座への現金の振り込み、家電製品などのプレゼント、所定額相当のカタログギフトなどが挙げられる。
【0018】
本サービスの特徴は、以下のとおりである。第1に、本サービスに新規に加入したユーザに対して、新規加入時に、商品購入などのサービスに利用可能な所定のキャッシュバック額をまとめて付与する。このようなキャッシュバックは、本サービスへの新規加入をユーザに促す上で、十分なインセンティブとなる。第2に、ユーザに付与されたキャッシュバック額に対して、本サービスに利用よってユーザに付与されるポイント額が充当される。第3に、ユーザがサービスの解約を申し出た場合、このユーザに関する残存する前払いポイント額に応じて、解約手数料付きの解約処理が行われる。このような解約システムにより本サービスの解約を抑止する効果が得られる。
【0019】
サービス運営者(ECサイトB)は、サービスの特性やインセンティブのインパクトなどを考慮した上で、キャッシュバック額を適宜決定する。一例として、本定期配送サービスでは3万円相当のキャッシュバックを想定している。これは次の計算に基づく。すなわち、1回の定期配送で8商品(計4千円程度)が購入されると想定した場合、1回当たりの割引額が2割引相当(800円)、1月当たりの割引額が3,200円(月4回配送)となる。そうすると、キャッシュバック分の3万円を消化するためには、約10ヶ月を要することになる。すなわち、サービス運営者としては、キャッシュバックを受けたユーザは本サービスを10ヶ月間程度継続することが期待できる。
【0020】
図2は、キャッシュバック管理システムのブロック構成図である。このキャッシュバック管理システム1は、上述したECサイトBの一部、または、ECサイトBのバックエンド側のシステムとして実現される。キャッシュバック管理システム1は、ポイント保持部2と、情報取得部3と、ポイント処理部4とを有する。
【0021】
ポイント保持部2は、本サービスを利用するユーザの保有ポイントをユーザ毎に保持・管理する。
図3は、ポイント保持部2が保持する管理内容の説明図であり、管理内容は、ポイントの出入りなどによって随時更新される。ポイント保持部2が管理する管理内容としては、「日付」、「ユーザ」、「キャッシュバック額」、「サービス利用」、「解約手数料」、「前払いポイント額」および「摘要」が存在する。「日付」は、前払いポイント額の変動(出入り)があった生じた日付であり、時間も含む日時を記入してもよい。「ユーザ」は、前払いポイント額の変動があったユーザを特定する識別情報(ID)である。「キャッシュバック額」は、サービス利用の対価の前払いとしてユーザにキャッシュバックされるキャッシュバック額(ポイント数)である。
【0022】
ここで、「サービス利用の対価の前払い」について説明すると、「サービス利用」とは、ユーザがサービス提供者のサービスを利用すること、たとえば、サービス提供者の提供するサービスを利用して商品を購入することをいう。サービス利用の「対価」とは、ユーザがサービスを利用することにより、サービス提供者より受領するもののことをいい、例えば、定期配送サービスでいえば、本サービスに加入することで、会員価格で定期購入できることをいう。また、対価の「前払い」とは、本来、サービス利用の都度、あるいはサービスの利用後に、ユーザが享受できるメリットを、サービスの利用の前に、例えば、新規加入時に一括して、ユーザが受け取れることをいう。
【0023】
本実施形態では、キャッシュバックを受けたユーザは、本来、サービス利用毎に享受できる割引のメリットを新規加入時に一括して受け取ってしまうため、その後は会員価格ではなく、標準価格で購入することになる。例えば、1回当たりの割引額が2割引相当(800円)とすると、都度割引者と比較して、800円高く購入することなる。当初の「キャッシュバック額」をその後の標準価格での購入で「充当」していくことになる。一方で、キャッシュバックを受けないユーザは、購入の都度、会員価格が適用されるため、キャッシュバック額に対する金利相当額への考慮を除けば、両者の経済的なメリットは同一となる。
【0024】
「サービス利用」は、サービスの利用によってユーザに付与されるポイント額である。例えば、サービスの利用形態として商品購入を想定した場合、「標準価格」、「会員価格」、「付与ポイント額」が管理される。ここで、「標準価格」は、購入に係る商品の標準価格であり、「会員価格」は、サービスに加入したユーザが会員特典として得られる購入に係る商品の会員価格(割引価格)である。したがって、本サービスのユーザは、本来「会員価格」での購入が可能だが、新規加入時にキャッシュバック額を得ることで、会員価格による購入のメリットを先取りしていることから、キャッシュバック選択後は「標準価格」での購入を継続することとなる。また、「付与ポイント額」は、商品の購入によってユーザに付与された額(典型的には、標準価格と会員価格(会員に対して提供される割引価格)との差額相当)、換言すれば、ユーザが獲得したポイントである。キャッシュバック額に対して、商品の購入によって得られた付与ポイント額が充当され、キャッシュバック額が消化されていく。
【0025】
「解約手数料」は、サービスの解約時に、一定の条件下で、残存する前払いポイント額を精算するために発生する額である。「前払いポイント額」は、「キャッシュバック額」に対して「付与ポイント額」を充当することによって算出されるポイント残高である。「キャッシュバック額」をマイナスで表記する場合には、「付与ポイント額」をプラスで表記し、両者を加算することによって、「前払いポイント額」が算出される。また、「摘要」は、前払いポイント額の変動が生じた要因などである。
【0026】
本実施形態では、「キャッシュバック額」をマイナス、「付与ポイント額」をプラスで表記し、「前払いポイント額」をマイナス側で管理している。その理由は、本来、ユーザが未だ保有していないポイントをキャッシュバックによって前払いしており、前払いした額をその後のサービス利用で充当していく関係上、「キャッシュバック額」および「前払いポイント額」をマイナス表記とした方が管理上適切だからである。ただし、「キャッシュバック額」をプラス、「付与ポイント額」をマイナスで表記し、「前払いポイント額」をプラス側で管理しても構わない。
【0027】
情報取得部3は、ネットワーク接続された外部システムからの情報や、本キャッシュバック管理システム1上で直接入力された各種情報を取得する。取得される情報としては、サービスの利用プロセスの途中で受け付けられる「ポイント照会」、サービスへの新規加入によって受け付けられる「新規加入」、サービスの利用によって受け付けられる「サービス利用」、ユーザによるサービスの解約の申し出に伴い受け付けられる「解約申出」などが挙げられる。
【0028】
ポイント処理部4は、ポイント保持部2によって保持された前払いポイント額の更新処理を行う。このポイント処理部4には、ユーザの新規加入時などに更新処理を行うキャッシュバック処理部4aと、ユーザのサービス利用時に更新処理を行うサービス利用部4bと、サービス解約時に更新処理を行う解約処理部4cとが存在する。これらの処理部4a~4cにおける処理結果は、処理の依頼元(例えばECサイトB)に通知される。
【0029】
キャッシュバック処理部4aは、ユーザがサービスに新規加入した場合、このユーザに対して、所定のキャッシュバック額をまとめてキャッシュバックする。例えば、
図3に示した管理内容R1は、ユーザAの新規加入に伴い、ユーザAに対して3万円相当(「キャッシュバック額」=-3万円)がキャッシュバックされ、これにより、ユーザAの「前払いポイント額」が-3万円に更新されたことを示す。上述したように、キャッシュバックの具体的な態様は任意であり、例えば、現金の還元、家電製品のプレゼントの場合、これらをユーザに付与することが「対価の前払い」の「キャッシュバック」に相当する。この場合、3万円の現金、3万円相当の家電製品を、ポイント換算して、ポイントとして管理し、ポイント分の利用をしたかを管理する形になる(利用しなければ、違約金が発生する。)。なお、後述するように、キャッシュバック処理部4aは、新規加入時の初回キャッシュバックのみならず、所定の条件を満たすことを前提に、2回目以降のキャッシュバックを行ってもよい。
【0030】
サービス利用処理部4bは、ユーザがサービスを利用する毎に、このユーザにキャッシュバックしたキャッシュバック額に付与ポイント額を充当することによって、前払いポイント額を更新する。例えば、
図3に示した管理内容R2は、サービス利用の一形態である定期配送a1の確定に伴い、「付与ポイント額」が800円発生し、これにより、ユーザAの「前払いポイント額」が800円分、すなわち、-30,000円から-29,200円に更新されたことを示す。このような付与ポイント額の充当に基づく前払いポイント額の更新は、定期配送a2以降についても同様に行われる。
【0031】
解約処理部4cは、ユーザがサービスの解約を申し出た場合、このユーザに関して残存する前払いポイント額に応じた解約処理(解約手数料の請求処理を伴う場合がある。)を行う。例えば、
図3に示したR5は、ユーザAの解約申出に伴う解約処理として、「前払いポイント額」が-39,520円から0円に更新されたことを示す。また、解約処理部4cは、残存する「前払いポイント額」と、予め定められた解約規約とに応じて、解約手数料の計算処理をした上で、解約処理として、解約手数料の請求に関する処理を行う。解約手数料の請求に関する処理としては、種々の方法がある。例えば、計算された解約手数料を、ユーザAの銀行口座(銀行口座は予め登録されている)から引き出す処理や、ユーザAのクレジットカードへの決済を請求する処理が考えられる。また、解約手数料を表示手段に表示する処理をし、当該表示に基づき、人的方法により、請求書を送付する等することが考えられる。さらに、解約処理部4cは、解約手数料とは別に、条件を満たした解約者に一律に請求する事務手数料や残存する「前払いポイント額」に解約までの期間を乗じた利息相当額等を解約手数料に付加し、請求処理をしてもよい。
【0032】
このように、「前払いポイント額」は、解約手数料を計算するための指標として用いられる。これは、キャッシュバックの態様が、現金の還元、ポイントの付与、クオカード等の金券の配布等の各種の態様によって、変わることはない。
【0033】
図4は、サービス利用処理部4bにおいて実行される処理のフローチャートである。まず、ステップ1において、サービス利用の一形態である商品購入の通知を受け付けられると、ステップ2において、上述した前払いポイント額の更新処理が行われる。これにより、
図3に示したように、定期配送a1~a3によって付加される「付加ポイント額」の充当によって、「前払いポイント額」は、-29,200円(定期配送a1)、-28,300円(定期配送a2)、-27,500円(定期配送a3)と順次更新されていく。
【0034】
つぎに、ステップ3において、更新後の前払いポイント額(残高)に基づいて、キャッシュバック額の消化が完了したか否かが判定される。キャッシュバック額の消化が完了した状態とは、厳密には、付加ポイント額の累積的な充当によって、前払いポイント額の残高が0円になった状態をいうが、サービス利用に供し得ない端数が前払いポイント額として残存するケースなどが起こり得る。そこで、キャッシュバック額の消化の有無を判定するためのしきい値を設定し、前払いポイント額の残高と、判定用のしきい値とを比較することによって、キャッシュバック額の消化の有無が判定される。
図3の例において、定期配送a1~a3については、「前払いポイント額」の残高(-29,200円、-28,300円、-27,500円)がしきい値(例えば、-500円)を未だ上回っていないので、ステップ3の判定結果は否定となる。この場合、ステップ4のキャッシュバック処理を行うことなく、一連の処理が終了する。
【0035】
なお、「前払いポイント額」をプラス側で管理する場合、判定用のしきい値としては、例えば+500円といった如く、プラスの額として設定される。この場合、前払いポイント額の残高がこのしきい値を下回ったことを以て、キャッシュバック額の消化が完了したものと判定される。
【0036】
その後、定期配送などのサービス利用が繰り返されることによって、キャッシュバック額が消化される方向(残高が0円に向かう方向)に、前払いポイント額が随時更新されていく。
【0037】
そして、前払いポイント額としきい値との比較によって、キャッシュバック額の消化が完了した場合、ステップ3の判定結果が肯定となり、キャッシュバック処理が実行される(ステップ4)。
【0038】
図5は、キャッシュバック処理部4aによって実行される処理(ステップ4のキャッシュバック処理)のフローチャートである。まず、ステップ11において、ユーザがキャッシュバックを希望するか否かが判定される。ユーザがキャッシュバックを希望しない場合、再度のキャッシュバックは実行されない。この場合、以後のサービス利用については、標準価格ではなく会員価格(割引価格)ベースで行われ、購入の都度割引のメリットを享受することになる。一方、ユーザがキャッシュバックを希望する場合、ユーザは、自己が希望するキャッシュバック額を指定し、この希望キャッシュバック額が受け付けられる。
【0039】
つぎに、ステップ13において、希望キャッシュバック額が審査され、希望キャッシュバック額が審査で許容される範囲内であるか否かが判定される(ステップ14)。希望キャッシュバック額が審査で許容される範囲内である場合、ユーザが希望する額面どおりにキャッシュバック額が決定される(ステップ17)。
【0040】
これに対して、希望キャッシュバック額が審査で許容される範囲を超えている場合、ユーザに対して、消費者向け融資(利息の支払いを伴う。)を利用するか否かが問い合わせられる(ステップ15)。ユーザが消費者向け融資の利用を選択した場合には、希望キャッシュバック額の全部、あるいは、その一部(例えば超過分)が消費者向け融資にて補填され(ステップ16)、ユーザが希望する額面どおりにキャッシュバック額が決定される(ステップ17)。一方、ユーザが消費者向け融資の利用を選択しない場合には、審査で許容される範囲内でキャッシュバック額(希望キャッシュバック額よりも少額)が決定される(ステップ17)。
【0041】
そして、ステップ17で決定されたキャッシュバック額に基づいて、ユーザへのキャッシュバックが再度実行される。
図3の例は、管理内容R3に示すように、定期配送aiによって「前払いポイント額」がしきい値を上回り、これによって、管理内容R4に示すキャッシュバックが再度実行されたケースを示している。キャッシュバックの具体的な額は、今後の購入額やサービス利用状況などを考慮した上で、サービス提供者側が事案毎に判断する。
【0042】
ここで、キャッシュバックの実行については、キャッシュバック管理システム1の指示の下、人手を主体に行ってもよい。例えば、キャッシュバックの対象が現金やクオカードの場合、キャッシュバック管理システム1は、作業者に対して、誰にいくら送金するのか、誰にいくらのクレジットカードを郵送するのかといった表示を表示手段に表示させる出力をし、作業者が表示に基づく作業をすることが想定される。キャッシュバックの実行とは、作業者に対してキャッシュバック管理システム1が指示を出すことも含まれる。
【0043】
なお、
図5に示したキャッシュバック処理は、2回目以降の再キャッシュバックに限定されるものではなく、サービスへの新規加入時に実行される初回キャッシュバックにおいて行ってもよい。これにより、初回キャッシュバックにおいても、ユーザの希望を考慮または反映した柔軟なキャッシュバック額の設定が可能になる。
【0044】
図6は、解約処理部6によって実行される処理のフローチャートである。まず、ステップ21において、本サービスの解約の申出が受け付けられると、ステップ22において、ポイント保持部2を参照して、解約を申し出たユーザに関する前払いポイント額を特定する。そして、ステップ23において、前払いポイント額が所定の解約条件を満たすか否か、具体的には、付加ポイント額の累計によってキャッシュバック額の消化が完了したか否かが判定される。ユーザへのキャッシュバックは、本サービスの運営者の直接的な負担となるため、加入直後または十分なサービス利用がなされていない状態でユーザの解約を無制限に認めると、サービス運営者の負担が大きい。したがって、本サービスの解約に一定の合理的な制限を設けることは、本サービスの適切かつ継続的な運営を図る上で重要である。なお、解約条件としては、上述した前払いポイント額の残存状態に加えて、新規加入時を基準とした時期的な制約を加えてもよい。
【0045】
キャッシュバック額の消化が完了している場合、ユーザに解約手数料を伴わない解約処理が行われる(ステップ24)。これに対して、キャッシュバック額の消化が完了していない場合、解約手数料を伴う解約処理が行われる(ステップ25)。この場合、解約手数料の請求自体については、キャッシュバック管理システム1の指示(解約手数料の算出および表示手段への解約手数料の出力)の下、人手を主体に行ってもよい。サービスの規約に従い、解約手数料として要求する。その際、利息相当額や事務手数料などの金額を付加してもよい。
【0046】
このように、本実施形態によれば、サービスに新規加入したユーザに対して、サービス利用の対価の前払いとして所定のキャッシュバック額をキャッシュバックし、その後のサービス利用によってポイントが付加される毎に、キャッシュバック額に対してポイント額が充当される。ユーザがサービスの解約を申し出た場合、このユーザに関する残存する前払いポイント額に応じて、解約手数料付きの解約処理が行われる。すなわち、ユーザによるサービスの解約には一定の合理的な制限があり、解約の時点で残存する前払いポイント額を精算するための解約手数料の支払いが求められる。これにより、サービス運営者側に過度な負担を強いることなく、ユーザにとって魅力的なキャッシュバック額を柔軟に設定することが可能になり、サービスへの新規加入を効果的に促進することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、ECサイト(仮想店舗)による定期配送サービスを例に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、様々な商品購入サービスに広く適用することができる。例えば、定期配送(定期購入)ではなく、会員制のECサイト上において、ユーザが希望する物を希望する時にその都度購入するサービス形態(例えば、カタログ通販などの随時購入)であってもよい。また、商品を販売する主体はECサイトではなく、実店舗であってもよい。さらに、本明細書において、サービスが取り扱う「商品」とは、取引の対象となり得るものを広く含み、無形のサービスも包含する意味で用いられる。
【0048】
また、上述した実施形態では、使途が限定されない現金、または、現金相当の支払手段を提供するキャッシュバックを想定しているが、本発明はこれに限らず、サービス運営者側が使途可能範囲を限定したポイント、特定の商品、または、サービスであってもよい。
【0049】
さらに、上述した実施形態では、標準価格と会員価格(会員に対して提供される割引価格)との差額を付与ポイント額として想定しているが、本発明はこれに限らず、商品購入やサービス利用に応じてサービス運営者側が規定する付与ポイントであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 キャッシュバック管理システム
2 ポイント保持部
3 情報取得部
4 ポイント処理部
4a キャッシュバック処理部
4b サービス利用処理部
4c 解約処理部