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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】窓
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/10 20060101AFI20220111BHJP
   E06B 1/36 20060101ALI20220111BHJP
   E06B 3/32 20060101ALI20220111BHJP
   E05D 15/10 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E06B7/10
E06B1/36 Z
E06B3/32 A
E05D15/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021116019
(22)【出願日】2021-07-13
【審査請求日】2021-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512309392
【氏名又は名称】株式会社葉月建築事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100165434
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克行
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊宏
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-47543(JP,A)
【文献】特開2012-136926(JP,A)
【文献】特開2003-27856(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1160412(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-9/92
E06B 1/00-3/99
E05D 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設けられる窓であって、
室外側開口部が室内側開口部よりも広く設定された窓枠と
前記室外側開口部と前記室内側開口部との間を移動して前記室内側開口部を開閉する障子と、
前記障子と前記窓枠との間に介設され、前記障子を前記室外側開口部と前記室内側開口部との間で移動させる移動機構と、
前記窓枠の上枠の内側又は前記窓枠の下枠の内側であり、前記障子の開閉に伴って移動するための空間とは別の空間である余剰空間部と、を備え、
前記障子が前記室内側開口部から前記室外側開口部に移動して前記室内側開口部が開放されたとき、前記余剰空間部は記建物の室内側と室外側を連通させるとともに、前記窓枠の左枠及び右枠と前記障子との間の各間隙は前記上枠又は前記下枠と前記障子との間の間隙よりも狭く、前記左枠及び前記右枠と前記障子との間の各間隙は、前記左枠及び前記右枠の各内表面と前記障子の左框及び右框の各外周側面とがそれぞれ対向して構成され、対向する前記内表面と前記外周側面との間の隙間は前記外周側面の室内外方向の幅よりも狭い、
ことを特徴とする窓。
【請求項2】
前記余剰空間部は、縦断面視において、前記窓枠の前記室内側開口部の周縁から前記室外側開口部の周縁に向かって段状、斜線状若しくは円弧状又はそれらの組合せによって形成された前記窓枠の輪郭によって画定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の窓。
【請求項3】
前記窓枠は室内側に上背枠及び下背枠を備え、前記上背枠と前記下背枠の間に前記室内側開口部が設けられ、
前記余剰空間部は、前記窓枠の前記上枠の内側に形成される場合には、前記障子の上方にあって前記上枠、前記上背枠、前記右枠及び前記左枠によって囲われる空間であり、前記下枠の内側に形成される場合には、前記障子の下方にあって前記下枠、前記下背枠、前記右枠及び前記左枠によって囲われる空間である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の窓。
【請求項4】
前記移動機構は、前記障子が前記窓枠に対し平行して開放されるように、前記障子の全体をスライド可能に移動させる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の窓。
【請求項5】
前記余剰空間部は、前記窓枠の上枠内側又は下枠内側に設けられ、
前記移動機構は、前記障子が前記窓枠に対し上下方向に傾斜して開放されるように、前記障子の上部又は下部を回動可能に移動させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の窓。
【請求項6】
前記障子が前記窓枠の前記室内側開口部から前記室外側開口部に向かって移動して開放されたときに前記障子の移動に伴って移動し、前記余剰空間部における遮視性を向上させる遮視機構を更に備える、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の窓。
【請求項7】
前記窓枠の室外側に設けられた面格子又は網戸付き面格子を更に備える、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のコロナ禍において、室内の通風換気を定期的に行うことが重要となっているが、例えば、一戸建て住宅の1階で道路に面している部屋や、集合住宅の共用廊下に面している部屋では、窓のすぐ外側を人が通行することから、通行人の視線を気にして、窓を開放しての通風換気が疎かになりがちである。カーテンを引きまわしてから窓を開放することなどももちろんできるが、通行人の視線が気になることに変わりはなく、また、採光性などに影響が出る。
【0003】
一戸建て住宅、集合住宅をはじめ種々の建物においては、窓は、採光性、通風性、遮視性、防犯性、防虫性などの様々な機能性を考慮しながら、建物の置かれている環境、デザイン性、居住人又は利用者の意向により、様々なタイプが採用されている。例えば、引き違い窓、上げ下げ窓、開き窓、すべり出し窓、倒し窓、突き出し窓など、様々な窓のタイプが用意されている。これらのタイプの窓の中で、一般に多く用いられている引き違い窓に対し、遮視性に着目したものとして、建物の外壁よりも室外側に突出させて開放する平行突き出し窓が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-047543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、平行突き出し窓は、引き違い窓などに対して外部からの視線を遮る遮視性が優れているが、窓の開放時に障子を建物の室外側に突出させるため、すぐその外側を通行する通行人の邪魔になったり、左右横の隙間から室内を視認されたりするなどの問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、通行人を含め建物の外部に存する者の視線を気にすることなく、また、通行人の邪魔にならずに通風換気を行える窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明に係る第1の観点は、建物に設けられる窓であって、室外側開口部が室内側開口部よりも広く設定された窓枠と、前記室外側開口部が前記室内側開口部よりも広く設定されたことによって前記窓枠の内側に形成された少なくとも1箇所の余剰空間部と、前記室外側開口部と前記室内側開口部との間で前記室内側開口部を開閉する障子と、前記障子と前記窓枠との間に介設され、前記障子を前記室外側開口部と前記室内側開口部との間で移動させる移動機構と、を備え、前記障子が前記室内側開口部から前記室外側開口部に向かって移動して前記室内側開口部が開放されたとき、前記余剰空間部は、前記建物の室内側と室外側を連通させる、ことを特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)において、前記余剰空間部は、縦断面視において、前記窓枠の前記室内側開口部の周縁から前記室外側開口部の周縁に向かって段状、斜線状若しくは円弧状又はそれらの組合せによって形成された前記窓枠の輪郭によって画定されてもよい。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)において、前記余剰空間部は、前記窓枠の上枠内側及び/又は下枠内側に設けられてもよい。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記移動機構は、前記障子が前記窓枠に対し平行して開放されるように、前記障子の全体をスライド可能に移動させてもよい。
【0011】
(5)上記(1)又は(2)において、前記余剰空間部は、前記窓枠の上枠内側又は下枠内側に設けられ、前記移動機構は、前記障子が前記窓枠に対し上下方向に傾斜して開放されるように、前記障子の上部又は下部を回動可能に移動させてもよい。
【0012】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つにおいて、前記窓枠は、前記室外側開口部が前記建物の外壁の外面と実質的にほぼ同一面に位置するように設けられてもよい。
【0013】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、前記窓は、前記障子が前記窓枠の前記室内側開口部から前記室外側開口部に向かって移動して開放されたときに前記余剰空間部における遮視性を向上させる遮視機構を更に備えてもよい。
【0014】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つにおいて、前記窓は、前記窓枠の室外側に設けられた面格子又は網戸付き面格子を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通行人を含め建物の外部に存する者の視線を気にすることなく、また、通行人の邪魔にならずに通風換気を行える窓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る窓(閉鎖状態)を概念的に示す正面斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る窓(開放状態)を概念的に示す背面斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る窓の一例を構成する窓枠の正面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る窓の一例を構成する障子の背面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る窓の一例を示す縦断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る窓の一例を示す横断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る窓の一例に適用する防犯機構(面格子)の正面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る窓の他の例を示す縦断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る窓と通行人の視線を説明する図(その1)である。
図10】本発明の第1実施形態に係る窓と通行人の視線を説明する図(その2)である。
図11】本発明の第1実施形態に係る窓と通行人の視線を説明する図(その3)である。
図12】本発明の第1実施形態に係る窓と通行人の視線を説明する図(その4)である。
図13】遮視フラップの一例を示す縦断面図である。
図14】遮視フラップの一例の一部を拡大して示す斜視図である。
図15】遮視フラップの他の例を示す縦断面図である。
図16】遮視フラップの他の例の一部を拡大して示す斜視図である。
図17】本発明の第2実施形態に係る窓の一例を構成する窓枠の正面図である。
図18】本発明の第2実施形態に係る窓の一例を構成する障子の背面図である。
図19】本発明の第2実施形態に係る窓の一例を示す縦断面図である。
図20】本発明の第2実施形態に係る窓の他の例を構成する窓枠の正面図である。
図21】本発明の第2実施形態に係る窓の他の例を構成する障子の背面図である。
図22】本発明の第2実施形態に係る窓の他の例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態及び図面において、方向については、室外側を正面又は前面、室内側を背面又は後面として説明することがある(例えば、正面視、背面視、前後方向など)。左右については、室内側から見た状態(内観視)で説明する。
【0018】
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る窓10について、その全体概要を概念的に説明する。図1及び図2は、構造のすべてを表現しているわけではなく、窓10の全体概要を概念的に説明するためのものであるので、留意されたい。窓10のより詳しい構造については、図3から図7を参照して別途に後述する。図1は、閉鎖状態の窓10を概念的に示す正面斜視図であり、図2は、開放状態の窓10を概念的に示す背面斜視図である。
【0019】
窓10は、図1及び図2に示すように、窓枠20と、障子30とを備える。窓枠20は、上枠21、下枠22、右枠23、左枠24、上背枠25、下背枠27を含む。上枠21、下枠22、右枠23及び左枠24の周縁によって囲われた空間は室外側開口部29を形成し、上背枠25と下背枠27の間に拡がる空間は室内側開口部26を形成する。室内側開口部26の周囲には、エアタイトゴム28が設けられている。障子30は、上桟31、下桟32、右框33、左框34及びガラス(例えば、複層ガラス)35から形成される。
【0020】
窓10は、建物Bに設けられるが(後述する図9から図12参照)、図1及び図2に示すように、室外側開口部29が室内側開口部26よりも広く設定されており、室外側開口部29が室内側開口部26よりも広く設定されたことによって窓枠20の内側において余剰空間部21a,22aが形成される。障子30は、室内側開口部26と室外側開口部29との間で室内側開口部26を開閉する。後述するように、障子30は、障子30と窓枠20との間に介設された移動機構40によって、室外側開口部29と室内側開口部26との間で移動させられる。障子30が窓枠20の室内側開口部26から室外側開口部29に向かって移動して開放されたとき、余剰空間部21a,22aは、建物Bの室内側と室外側を連通させる。
【0021】
ここで、余剰空間部21a,22aは、少なくとも1箇所において形成されていればよい。すなわち、図1及び図2では、余剰空間部21a,22aについて、上枠21内側の余剰空間部21aと下枠22内側の余剰空間部22aの双方が形成されている態様を示しているが、後述するように、本発明の要旨は、双方が形成される態様に限られるものではなく、余剰空間部21aのみ、余剰空間部22aのみに形成されている態様も含むものである。すなわち、余剰空間部21a,22aは、上枠21内側及び/又は下枠22内側に設けられていればよい。
【0022】
窓枠20は、室内外方向(前後方向)に所定の奥行をもって形成されており、窓枠20の前面(室外側開口部29)は、窓10が設けられる建物Bの外壁の外面と実質的にほぼ同一面に位置するように配置される。障子30は、窓枠20の右枠23、左枠24に設けられている移動機構40の障子ガイドレール41に沿って、室内外方向(前後方向)に平行して移動可能であり(ここでは、スライド移動。図1及び図2中、実線白矢印参照)、障子30は、窓枠20の室外側で開放状態、窓枠20の室内側で閉鎖状態となる。
【0023】
窓枠20には、障子30の上方(窓枠20の上枠21側内部)において、上枠21、上背枠25、上背枠25に対応する位置の右枠23及び左枠24によって囲われた空間である余剰空間部21aが設けられている。同様に、障子30の下方(窓枠20の下枠22側内部)において、下枠22、下背枠27、下背枠27に対応する位置の右枠23及び左枠24によって囲われた空間である余剰空間部22aが設けられている。換言すると、余剰空間部21a,22aは、障子30が開閉に伴って移動するための空間とは別の空間を形成している。障子30を室内側開口部26から室外側開口部29に向かって移動して開放したときには(図2参照)、余剰空間部21a,22aと室内側開口部26を介して、窓10の室外側と室内側は連通し、通風換気が行われる。一方、障子30を室内側に閉鎖したときには(図1参照)、窓枠20の室内側開口部26が障子30によって塞がれ、窓10の室外側と室内側は遮断される。
【0024】
以下に、窓10のより詳しい構造について、図3から図7を参照して説明する。図3は窓枠20の正面図を、図4は障子30の背面図を、図5は窓10の縦断面図を、図6は窓10の横断面図を、図7は窓10の室外側に配置された防犯機構50(面格子)の正面図を、それぞれ示す。なお、本発明の要旨は図3から図7に示す態様に限定されるものではなく、種々の変形を加えることが可能である。
【0025】
窓枠20は、図3に示すように、正面視において、例えば、縦横比で縦長の矩形に形成されている。窓枠20の正面視の形状は、これに限らず、設置される建物Bの条件や環境に応じて、輪郭において正方形、円形又は異形のものであってもよいし、縦横比で横長のものであってもよい。要するに、障子30を開放したときに窓10の室外側と室内側が連通するように、余剰空間部21a,22a及び室内側開口部26が設けられていればよい。余剰空間部21a,22a及び室内側開口部26の形状も、窓枠20及び障子30の形状に応じて適宜なものを採用することができる。
【0026】
窓10は、窓10の外側を通行する通行人からの視線を気にせずに通風換気のために開放できることに主眼としていることから、図3に示すように、余剰空間部21a,22aは、通行人の一般的な視線の高さに対応することとなる窓枠20の左右、すなわち、右枠23及び左枠24と障子30の間ではなく、通行人の一般的な視線の高さに対応しない窓枠20の上下、すなわち、上枠21及び下枠22と障子30の間に設けられている。
【0027】
障子30は、障子30と窓枠20との間に介設された移動機構40によって移動させられるが、第1実施形態では、移動機構40は、障子30が窓枠20に対し平行して開放されるように、障子30の全体をスライド可能に移動させる。
【0028】
具体的には、図3に示すように、窓枠20の左右、すなわち、右枠23及び左枠24と障子30の間には、障子30の移動に必要となる間隙が設けられており、この間隙の四隅(図中、室内側開口部26の四隅の外側近傍)には、障子30を移動させるための移動機構40として、障子ガイドレール41と、障子ガイドレール41に係合するハウジング42が配置されている。障子ガイドレール41は、右枠23及び左枠24の上下において余剰空間部21a,22aが確保される位置に設けられる。ハウジング42は、障子30の四隅にそれぞれ固定された状態で障子ガイドレール41に対しスライド可能に係合することとなり、ハウジング42に設けられているネジの締め付けによって障子ガイドレール41への係合ひいては摩擦力の強度を調節可能である。障子ガイドレール41は、室外側開口部29の周縁と上背枠25又は下背枠27との間に延在しており、障子30は、それらによって移動する範囲が規制される。
【0029】
第1実施形態では、移動機構40をスライド機構とした場合について説明しているが、移動機構40は、これに限定されるものではない。例えば、複数のリンク片を組み合わせたリンク機構や、前後方向に伸縮するアーム機構を採用してもよい。要するに、窓枠20の室外側と室内側を往復可能な移動機構40とすることも可能である。ただし、障子30の操作性、特に、前後方向の移動に要する力を調節可能な点でスライド機構が好ましい。
【0030】
障子30は、図4に示すように、背面視(正面視も同様)において、例えば、正方形に形成されている。ここでは、縦長の窓枠20に対して障子30を正方形としているが、障子30の背面視(正面視)の形状は、これに限らず、設置される建物Bの条件や環境に応じて、輪郭において矩形、円形又は異形のものであってもよいし、縦横比で縦長又は横長のものであってもよい。例えば、窓枠20が正方形である場合、その上下に余剰空間部21a,22aを確保すると、障子30は縦横比において横長の矩形となる。
【0031】
障子30の右框33及び左框34の背面の中央には、障子30を窓枠20にロックするとともに、前後方向に障子30を移動させるときの把手となるカムラッチハンドル36が設けられている。カムラッチハンドル36は、ハンドル本体が縦状態で「閉」、横状態で「開」となるように設けられており、縦状態において、ハンドル本体に交差する方向に延在する施錠片が窓枠20の背面に設けられている係止部材に係止することにより、障子30を窓枠20にロックする。
【0032】
なお、図4では、位置関係を説明するため、障子30の右框33及び左框34の上下には移動機構40としての障子ガイドレール41と、障子ガイドレール41に係合するハウジング42が図示されている。
【0033】
以上の構造を踏まえ、窓10における通風換気について説明する。障子30は、図5及び図6に示すように、窓枠20の室外側と室内側で前後方向に移動する(図5及び図6中、実線白矢印参照)。前述のとおり、窓枠20の前面(室外側開口部29)は、窓10が設けられる建物Bの外壁の外面と実質的にほぼ同一面に位置するように配置されるが、障子30も、最大限開放したときに、建物Bの外壁の外面と実質的にほぼ同一面に位置する。
【0034】
障子30が窓枠20の室内側開口部26から室外側開口部29に向かって移動して開放されたとき、余剰空間部21a,22aと室内側開口部26を介して、窓10の室外側と室内側は連通し、通風換気が行われる(図5中、破線白矢印参照)。障子30は、窓枠20の室内側と室外側との間で、窓枠20に対し無段階に停止可能に設けられている。通風換気に際しては、建物Bに設けられている他の窓などとの相対的関係によって、空気Aは、室外側から室内側へ、又は、室内側から室外側へ、流通することとなる。空気Aの流れは、余剰空間部21a,22aと室内側開口部26の上下の位置関係が平行ではないため、実際上は図中の破線白矢印で示したほどシャープではないものの、緩やかなクランク状となる。
【0035】
図5及び図6では、防犯機構50として、窓枠20の室外側に網戸付き面格子51を設けた例を示している。図7に、正面から見た網戸付き面格子51の外観を示す。網戸付き面格子51は、面格子51(狭義の意味で面格子51ということがある)と、面格子51に取り付けられた網戸52とから構成される。窓10は、最大限開放した状態の障子30が建物Bの外壁の外面と実質的にほぼ同一面に位置するように配置されることから建物Bの外壁の外面から外側に突出する態様の窓に比べて防犯性に優れているが、面格子51を付加することによって防犯性をより一層向上させることができる。また、網戸付き面格子51とすれば、特に夏季における防虫性を併せて達成することができる。ただし、面格子51と網戸52は、別々に設けてもよく、例えば、窓枠20の室外側には面格子51のみを設けておき、窓枠20の室内側に巻取り式の網戸52を設けるようにしてもよい。
【0036】
なお、図5では、説明の便宜上、開放状態における障子30のカムラッチハンドル36を省略しているが、図6に示すように、カムラッチハンドル36は、横状態で位置している。
【0037】
余剰空間部21a,22aは、図5に示すように、縦断面視において、室外側開口部29の一部として、室内側から室外側に向かって開口する。余剰空間部21a,22aの外側の輪郭は窓枠20の輪郭によって画定されるが、その具体的な形状については種々のものとしてよい。図5では、室内側開口部26の周縁(上縁、下縁)から室外側開口部29の周縁(上縁、下縁)に向かって、段状(ここでは、L字状)とした場合を示している。補足すれば、略水平方向の上枠21と略垂直方向の上背枠25の二辺、及び、同じく略水平方向の下枠22と略垂直方向の下背枠27の二辺がそれぞれ交差することによって、余剰空間部21a,22aの外側の輪郭が段状(ここでは、L字状)となっている。
【0038】
この点、窓10では、前述のとおり、空気Aの流れが緩やかなクランク状となることから、図8に示すように、縦断面視において、風誘導面としての余剰空間部21a,22aの外側の輪郭を滑らかにすることを考慮し、室内側開口部26の周縁から室外側開口部29の周縁に向かって、上枠21及び下枠22を斜線状又は円弧状としてもよい。これにより、空気Aの流れを相対的にスムーズに誘導することが可能となる。なお、窓10のデザイン上の要請などにより、通風換気に支障のない範囲で、段状、斜線状又は円弧状の組合せによって上枠21及び下枠22を形成してもよい。
【0039】
以上、窓10の構成について説明したが、窓10が設置される条件や環境によっては、障子30の開放時に、余剰空間部21a,22a及び室内側開口部26を通して、建物Bの室内に通行人の視線が届くことも考えられる。そこで、図9から図12を参照して、窓10の遮視性について、説明する。
【0040】
図9から図12は、窓10と通行人P(身長H1を170cm程度と想定)の視線の関係について、4つのケースを図示している。
【0041】
図9は、窓10の上下長さLが相対的に長く(160cm程度と想定)、余剰空間部21a,22aが曲尺状(L字状)の場合を図示している。上下方向中心高さH2は150cm程度を想定している。この例では、上枠21内側の余剰空間部21aと室内側開口部26を通して建物Bの室内側が見える範囲(上の視界)は、視線U1(開放状態の障子30の上桟31の上縁と窓枠20の室内側開口部26の上縁とを結ぶ線)と視線U3(余剰空間部21aの室外側先端<室外側開口部20の周縁>と開放状態の障子30の上桟31の上縁とを結ぶ線)を境界線とする範囲となる。この範囲には、視線U2(余剰空間部21aの室外側先端と窓枠20の室内側開口部26の上縁とを結ぶ線)が含まれる。同様に、下枠22内側の余剰空間部22aと室内側開口部26を通して建物Bの室内側が見える範囲(下の視界)は、視線D1(開放状態の障子30の下桟32の下縁と窓枠20の室内側開口部26の下縁とを結ぶ線)と視線D3(余剰空間部22aの室外側先端と開放状態の障子30の下桟32の下縁とを結ぶ線)に囲われた範囲となる。この範囲には、視線D2(余剰空間部22aの室外側先端と窓枠20の室内側開口部26の下縁とを結ぶ線)が含まれる。
【0042】
この例では、図9に示すように、余剰空間部21a,22a及び室内側開口部26を通した視界が形成されるが、通常の通行人Pの視線は、窓10の上下ともに視界から外れることになる。この場合、障子30の上桟31及び下桟32の上下方向の幅を狭く設定することができる。
【0043】
図10は、図9に対し、窓10の上下長さLが相対的に短い(115cm程度と想定)場合を図示している。上下方向中心高さH2は140cm程度を想定している。この例では、窓10の上下の視界を規定する、余剰空間部21a,22aの室外側先端と、上桟31の上縁及び下桟32の下縁が通行人Pの視線の位置に近くなることから、通行人Pの身長H1によっては、余剰空間部21a,22aと室内側開口部26を通して建物Bの室内側が見える可能性が高まる。そこで、図10では、窓10の上下ともに視界が形成されないように、すなわち、境界線となる複数の視線が形成されないように、窓10の上については、視線U1(余剰空間部21aの室外側先端と開放状態の障子30の上桟31の上縁と窓枠20の室内側開口部26の上縁とを結ぶ線)に、窓10の下については、視線D1(余剰空間部22aの室外側先端と開放状態の障子30の下桟32の下縁と窓枠20の室内側開口部26の下縁とを結ぶ線)に、それぞれ一本化している。
【0044】
この例では、図10に示すように、障子30の上桟31及び下桟32の上下方向の幅を広く設定することにより、窓10の上下における視線を一本化し、余剰空間部21a,22a及び室内側開口部26を通した視界は形成されない。
【0045】
図11は、図10に対し、窓10の上下長さLが相対的に短い(97cm程度と想定)場合を図示している。上下方向中心高さH2は140cm程度を想定している。この例では、図10に示した視線の一本化を窓10の上に限っており、その趣旨は、通行人Pとして成人を想定し、身長H1の低い子供の視線にはあえて対処しない例ということができる。この例では、窓10の上については、視線U1(余剰空間部21aの室外側先端と開放状態の障子30の上桟31の上縁と窓枠20の室内側開口部26の上縁とを結ぶ線)に一本化することによって視界が形成されず、窓10の下については、視線D1(開放状態の障子30の下桟32の下縁と窓枠20の室内側開口部26の下縁とを結ぶ線)と視線D3(余剰空間部22aの室外側先端と開放状態の障子30の下桟32の下縁と窓枠20の室内側開口部26に対応する建物Bの額縁の室内側とを結ぶ線)に囲われた視界が形成されることとなる。
【0046】
この例では、図11に示すように、障子30の上桟31の上下方向の幅を広く設定することにより、窓10の上における視線を一本化し、余剰空間部21a及び室内側開口部26を通した視界は形成されない。一方、障子30の下桟32の上下方向の幅は狭く設定することにより、余剰空間部22a及び室内側開口部26を通した視界は形成される。
【0047】
図12は、窓10の上下長さLが相対的に短く(95cm程度と想定)、上枠21内側の余剰空間部21aが曲尺状(L字状)、下枠22内側の余剰空間部22aが斜線状の場合を図示している。上下方向中心高さH2は130cm程度を想定している。この例では、窓10の上においては、図10及び図11に対し、障子30の上桟31の上下方向の幅を広く設定していないため、視線U1(開放状態の障子30の上桟31の上縁と窓枠20の室内側開口部26の上縁とを結ぶ線)と視線U3(余剰空間部21aの室外側先端と開放状態の障子30の上桟31の上縁とを結ぶ線)を境界線とする視界が形成される。また、窓10の下においては、図11と同様に、視線D1(開放状態の障子30の下桟32の下縁と窓枠20の室内側開口部26の下縁とを結ぶ線)と視線D3(余剰空間部22aの室外側先端と窓枠20の室内側開口部26に対応する建物Bの額縁の室内側とを結ぶ線)を境界線とする視界が形成される。
【0048】
この例では、図12に示すように、障子30の上桟31の上下方向の幅をやや広めに設定することにより、余剰空間部21a及び室内側開口部26を通した視界を狭め、通行人Pが平均的な身長H1の成人であれば、その視線は、窓10の上の視界から外れることになる。一方、障子30の下桟32の上下方向の幅は狭く設定することにより、余剰空間部22a及び室内側開口部26を通した視界は形成される。
【0049】
窓10の遮視性については、上述したように、窓10と建物Bとの相対的な位置関係や窓10の仕様などによって種々の対応を取ることが可能であるが、通行人Pの視線がどうしても窓10の視界に含まれてしまうような場合に備えて、窓10の通風換気性と遮視性の両立を図る範囲で、障30が窓枠20の室内側開口部26から室外側開口部29に向かって移動して開放されたときに余剰空間部21a,22aにおける遮視性を向上させる遮視機構60を更に備えてもよい。
【0050】
図13から図16は、遮視機構60の例として、遮視フラップ62の2つのケースを図示している。図13は遮視フラップ62を示す縦断面図、図14はその一部を拡大して示す斜視図、図15は遮視フラップ62の他の例を示す縦断面図、図16はその一部を拡大して示す斜視図である。なお、これらの図は窓枠20の上枠21のみを図示しているが、必要に応じて、同様の遮視機構60を窓枠20の下枠22に設けてもよい。
【0051】
遮視機構60は、図13に示すように、窓枠20の右枠23及び左枠24の余剰空間部21aに対応する位置に設けられた一対のフラップガイドレール61と、フラップガイドレール61にスライド可能に係合し、障子30の前後方向の移動に伴ってフラップガイドレール61に沿って前後方向に移動する遮視フラップ62とを備える。
【0052】
フラップガイドレール61は、遮視フラップ62がカバーする範囲を残し、窓枠20の室内側から室外側に向かってやや下向きに傾斜するように延在している。左右一対のフラップガイドレール61の間には空間が拡がっており、通風換気の妨げにはならない。一方、遮視フラップ62は、板状の部材であり、視界を遮る。遮視フラップ62は、後述するように、障子30の上桟31の頂部に可倒に取り付けられており、障子30の閉鎖状態では、上背枠25に沿って起立しており、障子30の開放状態では、余剰空間部21aと室内側開口部26を通した視界の一部を遮るように室内側から室外側に向かってやや下向きに傾斜する。
【0053】
図13は、図9における視界を例として、障子30が室外側いっぱいに開放されたときの遮視フラップ62の遮視性を示している。遮視フラップ62は、余剰空間部21aにおいて、視線U1(開放状態の障子30の上桟31の上縁<遮視フラップ62の室外側先端>と窓枠20の室内側開口部26の上縁とを結ぶ線)、視線U3(余剰空間部21aの室外側先端と開放状態の障子30の上桟31の上縁<遮視フラップ62の室外側先端>とを結ぶ線)、視線U2(余剰空間部21aの室外側先端と遮視フラップ62の室内側先端と窓枠20の室内側開口部26の上縁とを結ぶ線)によって囲われた範囲の視界を遮ることとなる。
【0054】
図14は、遮視フラップ62の具体的な例を示している。遮視フラップ62は、その上端(障子30が開放されたとき<図中、実線表示>に室内側先端となる)に滑り部材64が設けられており、滑り部材64は、コの字状に形成されたフラップガイドレール61に沿ってスライド可能である。遮視フラップ62は、その下端(障子30が開放されたとき<図中、実線表示>に室外側先端となる)において丁番63を介して障子30の上桟31の頂部に取り付けられており、丁番30は、障子30の前後移動に応じて、遮視フラップ62を上桟31に対して可倒にする。これにより、遮視フラップ62は、障子30が開放されたとき<図中、実線表示>には視線を遮る方向に面するとともに、障子30が閉鎖されたとき<図中、破線表示>には上背枠25に沿って起立して、障子30の開閉の妨げにならない。
【0055】
図15及び図16は、遮視フラップ62の他の例を示している。遮視機構60は、窓10の通風換気性と遮視性の両立を図ろうとするものであるが、この他の例では、遮視フラップ62は板状の材質で形成されることを考慮し、遮視フラップ62自体に通風換気性を持たせようとするものである。
【0056】
すなわち、この他の例では、図15及び図16に示すように、遮視フラップ62は、遮視フラップ62が傾斜したときに重力で自然に開放する通風板65を有している。通風板65は、遮視フラップ62が傾斜すると自然に鉛直方向に垂下するように、遮視フラップ62に回動可能に取り付けられる。これにより、垂下した通風板65によって遮視性が確保されるとともに、通風板65が開放したことによって生じた空間を通して、通風換気が行われる。図16に拡大して示すように、通風板65は、障子30が開放されたとき<図中、実線表示>には鉛直方向に垂下するとともに、障子30が閉鎖されたとき<図中、破線表示>には遮視フラップ62と一体的に上背枠25に沿って起立して、障子30の開閉の妨げにならない。
【0057】
以上、窓10について説明したが、次のような変形も可能である。すなわち、建物Bの同じ部屋又は別の部屋に設けられている他の窓などとの相対的関係によって、1つの窓10においては、上枠21内側の余剰空間部21aと下枠22内側の余剰空間部22aのいずれか1つを設けるような構成としてもよい。効率的な通風換気のためには、複数の窓、例えば、対角線上にある2つの窓を同時に開放することがあるため、そのような場合には、1つの窓10に上枠21内側の余剰空間部21aと下枠22内側の余剰空間部22aの双方を必ずしも設けなくてもよく、少なくとも1箇所の余剰空間部21a又は22aが設けられていればよい。
【0058】
また、上記の説明では、窓枠20の前面(室外側開口部29)や最大限開放したときの障子30の位置について、窓10が設けられる建物Bの外壁の外面と実質的にほぼ同一面に位置するように配置されるとしたが、窓10が設置される建物Bの仕様や建物Bの周囲の環境によっては必ずしもそのように限定しなくてもよい。例えば、窓枠20の前面(室外側開口部29)や最大限開放したときの障子30は、窓10と通行人Pとの距離が取れるよう場合には建物Bの外壁の外面から室外側に突出した位置に、また、外側の窓辺に花壇のスペースを設けるような場合には室内側に引き込まれた位置にくるように配置してもよい。
【0059】
(第2実施形態)
以上、第1実施形態及びその変形例に係る窓10を説明したが、次に、図17から図22を参照して、第2実施形態に係る窓10A,10Bを説明する。第1実施形態に係る窓10は、余剰空間部21a,22aが窓枠20の上枠21内側及び/又は下枠22内側に設けられる場合(すなわち、上枠21内側のみ、下枠22内側のみ、上枠21内側及び下枠22内側の双方の3つの態様)において、障子30が窓枠20に対し平行して開放されるように、移動機構40が障子30の全体をスライド可能に移動させる態様であるが、これに対し、第2実施形態に係る窓10A,10Bは、余剰空間部21a,22aが窓枠20の上枠21内側又は下枠22内側に設けられる場合(すなわち、上枠21内側のみ、下枠22内側のみの2つの態様)において、障子30が窓枠20に対し上下方向に傾斜して開放されるように、移動機構40が障子30の上部又は下部を回動可能に移動させるものである。
【0060】
図17は窓10Aの窓枠20の正面図を、図18は窓10Aの障子30の背面図を、図19は窓10Aの縦断面図を、図20は窓10Bの窓枠20の正面図を、図21は窓10Bの障子30の背面図を、図22は窓10Bの縦断面図を、それぞれ示す。なお、本発明の要旨は図17から図22に示す態様に限定されるものではなく、種々の変形を加えることが可能である。以下では、第1実施形態に係る窓10と異なる点を中心に説明する。
【0061】
まず、窓10Aでは、図17に示すように、窓枠20の上枠21内側の余剰空間部21aのみが設けられている。下枠22内側には、通風換気を積極的に行うための余剰空間部22aは設けられていない。障子30は、図18に示すように、下桟32の左右端に移動機構40としてのヒンジ43が設けられており、窓枠20の右枠23及び左枠24の下部に回動可能に取り付けられる。障子30の背面に設けられているカムラッチハンドル36は、右框33及び左框34の上下方向中央から上桟31寄りに位置している。
【0062】
以上の構造を踏まえ、窓10Aにおける通風換気について説明する。障子30は、図19に示すように、カムラッチハンドル36を室外側に押し込むと、下桟32に設けられているヒンジ43を支点として、障子30の上部である上桟31が室内側開口部26の周縁(上縁)から室外側へ回動可能に移動し(図19中、実線白矢印参照)、窓枠20に対し上下方向に傾斜して開放される。室外側へ移動した上桟31は、最大限開放された状態で、窓枠20の前面(室外側開口部29)、ひいては、窓10Aが設けられる建物Bの外壁の外面と実質的にほぼ同一面に位置する。
【0063】
障子30の上桟31が窓枠20の室内側開口部26から室外側開口部29に向かって移動して開放されたとき、余剰空間部21aと室内側開口部26を介して、窓10Aの室外側と室内側は連通し、通風換気が行われる(図19中、破線白矢印参照)。通風換気に際しては、建物Bに設けられている他の窓などとの相対的関係によって、空気Aは、室外側から室内側へ、又は、室内側から室外側へ、流通することとなる。空気Aの流れは、余剰空間部21aと室内側開口部26の上下の位置関係が平行ではないため、実際上は図中の破線白矢印で示したほどシャープではないものの、緩やかなクランク状となる。
【0064】
なお、ここでは、図示していないが、障子30の上桟31については、窓枠20に対し自由となるように構成してもよいし、拘束されるように構成してもよい。障子30の上桟31を窓枠20に対し自由とする場合には、窓枠20の上桟31が室外側開口部29の位置で規制されるように、室外側開口部29の周縁(上縁)に当接させるほか、窓枠20にストッパーを設けたり、窓枠20と障子30を伸縮自在のアームで接続したりしてもよい。一方、拘束する場合には、第1実施形態に係る窓10で示したような障子ガイドレール41を右枠23及び左枠24に室内側から室外側に向かって下方に傾斜するように設けることによってハウジング42を介してスライド可能としてもよい。この場合、障子ガイドレール41は、室外側開口部29の周縁と上背枠25との間に延在しており、障子30は、それらによって移動する範囲が規制される。
【0065】
次に、窓10Bでは、図20に示すように、窓枠20の下枠22内側の余剰空間部22aのみが設けられている。上枠21内側には、通風換気を積極的に行うための余剰空間部21aは設けられていない。障子30は、図21に示すように、上桟31の左右端に移動機構40としてのヒンジ43が設けられており、窓枠20の右枠23及び左枠24の上部に回動可能に取り付けられる。障子30の背面に設けられているカムラッチハンドル36は、右框33及び左框34の上下方向中央から下桟32寄りに位置している。
【0066】
以上の構造を踏まえ、窓10Bにおける通風換気について説明する。障子30は、図22に示すように、カムラッチハンドル36を室外側に押し込むと、上桟31に設けられているヒンジ43を支点として、障子30の下部である下桟32が室内側開口部26の周縁(下縁)から室外側へ回動可能に移動し(図22中、実線白矢印参照)、窓枠20に対し上下方向に傾斜して開放される。室外側へ移動した下桟32は、最大限開放された状態で、窓枠20の前面(室外側開口部29)、ひいては、窓10Bが設けられる建物Bの外壁の外面と実質的にほぼ同一面に位置する。
【0067】
障子30の下桟32が窓枠20の室内側開口部26から室外側開口部29に向かって移動して開放されたとき、余剰空間部22aと室内側開口部26を介して、窓10Bの室外側と室内側は連通し、通風換気が行われる(図22中、破線白矢印参照)。通風換気に際しては、建物Bに設けられている他の窓などとの相対的関係によって、空気Aは、室外側から室内側へ、又は、室内側から室外側へ、流通することとなる。空気Aの流れは、余剰空間部22aと室内側開口部26の上下の位置関係が平行ではないため、実際上は図中の破線白矢印で示したほどシャープではないものの、緩やかなクランク状となる。
【0068】
なお、ここでは、図示していないが、障子30の下桟32については、窓枠20に対し自由となるように構成してもよいし、拘束されるように構成してもよい。障子30の下桟32を窓枠20に対し自由とする場合には、窓枠20の下桟32が室外側開口部29の位置で規制されるように、室外側開口部29の周縁(下縁)に当接させるほか、窓枠20にストッパーを設けたり、窓枠20と障子30を伸縮自在のアームで接続したりしてもよい。一方、拘束する場合には、第1実施形態に係る窓10で示したような障子ガイドレール41を右枠23及び左枠24に室内側から室外側に向かって上方に傾斜するように設けることによってハウジング42を介してスライド可能としてもよい。この場合、障子ガイドレール41は、室外側開口部29の周縁と下背枠27との間に延在しており、障子30は、それらによって移動する範囲が規制される。
【0069】
窓10A,10Bには、窓10と同様に、防犯機構50としての面格子51又は網戸付き面格子51を付加してもよく、また、遮視機構60を付加してもよい。遮視機構60については、上枠21内側の余剰空間部21aが形成される窓10Aのみならず、下枠22内側の余剰空間部22aが形成される窓10Bについても、それらが設置される条件や環境において通行人P等からの視線を遮断する遮視性を向上させる必要がある場合には、窓10Aでは障子30の上桟31に、窓10Bでは障子30の下桟32に設けることにしてもよい。
【0070】
以上、第2実施形態に係る窓10A,10Bについて説明したが、第1実施形態に係る窓10についても述べたように、効率的な通風換気のためには、複数の窓、例えば、対角線上にある2つの窓を同時に開放することがあるため、そのような場合には、窓10Aや窓10Bのように、上枠21内側の余剰空間部21aと下枠22内側の余剰空間部22aのいずれか一方のみを形成した態様でも十分な通風換気の効果を得ることができる。
【0071】
(実施形態の効果)
実施形態によれば、通行人Pを含め建物Bの外部に存する者の視線を気にすることなく通風換気を行える窓10を提供することができる。
【0072】
以上、窓10,10A,10Bの実施形態について、各種の変形例を含めて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や変形例に記載の範囲に限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0073】
10…窓
20…窓枠
21…上枠
21a…余剰空間部
22…下枠
22a…余剰空間部
23…右枠
24…左枠
25…上背枠
26…室内側開口部
27…下背枠
28…エアタイトゴム
29…室外側開口部
30…障子
31…上桟
32…下桟
33…右框
34…左框
35…ガラス
36…カムラッチハンドル
40…移動機構
41…障子ガイドレール
42…ハウジング
43…ヒンジ
50…防犯機構
51…面格子
52…網戸
60…遮視機構
61…フラップガイドレール
62…遮視フラップ
63…丁番
64…滑り部材
65…通風板
B…建物
P…通行人

【要約】
【課題】通行人を含め建物の外部に存する者の視線を気にすることなく、また、通行人の邪魔にならずに通風換気を行える窓を提供する。
【解決手段】建物Bに設けられる窓10は、室外側開口部29が室内側開口部26よりも広く設定された窓枠20と、室外側開口部29が室内側開口部26よりも広く設定されたことによって窓枠20の内側に形成された少なくとも1箇所の余剰空間部21a(及び/又は22a)と、室外側開口部29と室内側開口部26との間で室内側開口部26を開閉する障子30と、障子30と窓枠20との間に介設され、障子30を室外側開口部29と室内側開口部26との間で移動させる移動機構40と、を備え、障子30が室内側開口部26から室外側開口部29に向かって移動して室内側開口部26が開放されたとき、余剰空間部21a(及び/又は22a)は、建物Bの室内側と室外側を連通させる。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22