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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】信号増幅器を含む検出法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/682 20180101AFI20220128BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20220128BHJP
   G01N 27/414 20060101ALI20220128BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20220128BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C12Q1/682 Z
C12M1/00 A
C12N15/115 Z
G01N27/414 301N
G01N27/414 301K
G01N27/00 J
G01N21/41 101
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016140489
(22)【出願日】2016-07-15
(65)【公開番号】P2017046684
(43)【公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-07-04
(31)【優先権主張番号】62/192,987
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517280753
【氏名又は名称】ヘリオス バイオエレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ハーディー ワイ ホン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ユー ショヨン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン イー チェン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0231790(US,A1)
【文献】特開2007-279028(JP,A)
【文献】特表2002-534434(JP,A)
【文献】合田 達郎,核酸アプタマーを用いた超高感度電位計測バイオセンサーによる腫瘍マーカー検出,科学研究費助成事業 研究成果報告書,2014年5月20日
【文献】Japanese Journal of Applied Physics,2012, Vol.51, No.6S, 06FD08,pp.1-4
【文献】Analytical Biochemistry,2008, Vol.381, No.2,pp.193-198
【文献】Lab on a Chip,2011, Vol.11,pp.52-56
【文献】有機合成化学,1990, 第48巻, 第3号,第180-193頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12M
C12N
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的分子の検出する方法であって、
標的分子と、親和性を持って標的分子を捕捉することができる認識分子とを含む捕捉複合体を形成すること;および
前記捕捉複合体と、信号増幅器とを結合すること、
を含む方法。ここで、捕捉複合体は、正味の電荷を有し;信号増幅器は、捕捉複合体に親和性を有しかつ正味の電荷を有し;認識分子は、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドおよび少なくとも1つの負電荷のヌクレオチドを含む部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドを含む
【請求項2】
捕捉複合体が、固体表面に接着し、または、固体表面から距離を開けて位置する、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
固体表面が、電界効果トランジスタのトランジスタ表面であるか、または、表面プラズモン共鳴の金属表面である、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
固体表面の材料が、多結晶シリコン、または、単結晶シリコンである、請求項2に記載された方法。
【請求項5】
前記信号増幅器が、オリゴヌクレオチド分子である、請求項1に記載された方法。
【請求項6】
信号増幅器が、オリゴヌクレオチド アプタマーである、請求項1に記載された方法。
【請求項7】
さらに、捕捉複合体と信号増幅器の結合に起因する、電位の変化をモニターすることを含む、請求項1に記載された方法。
【請求項8】
捕捉複合体と信号増幅器の結合に起因する、電位の変化を検出するための電気信号検出素子と、固体表面とを結合する、請求項2に記載された方法。
【請求項9】
前記電気信号検出素子が、電界効果トランジスタまたは表面プラズモン共鳴法である、請求項8に記載された方法。
【請求項10】
前記電気的に中性のヌクレオチドが、C1-C6アルキル基によって置換されたリン酸基を含む、請求項1に記載された方法。
【請求項11】
前記負電荷のヌクレオチドが、無置換のリン酸基を含む、請求項1に記載された方法。
【請求項12】
前記認識分子が、固体表面に接着されており、そして、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドが、固体表面に接着されている最初の部分を含み;その最初の部分の長さが、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの全長の50%であり;そして、最初の部分が、少なくとも1つの前記電気的に中性のヌクレオチドと、少なくとも1つの前記負電荷のヌクレオチドを含む、請求項1に記載された方法。
【請求項13】
標的分子を検出するためのキットであって、
親和性を持って標的分子を捕捉することができる認識分子であって、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドおよび少なくとも1つの負電荷のヌクレオチドを含む部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドを含む認識分子;
標的分子を含む捕捉複合体に親和性を有する信号増幅器(ここで、捕捉複合体は、正味の電荷を有し;信号増幅器は、正味の電荷を有する。);および
捕捉複合体と信号増幅器の結合に起因する、電位の変化を検出するための電気信号検出素子;
を含む、キット。
【請求項14】
捕捉複合体が、固体表面上に接着するか、または、捕捉複合体が、固体表面から距離を置いて位置する、請求項13に記載された、キット。
【請求項15】
固体表面が、電界効果トランジスタのトランジスタ表面または表面プラズモン共鳴の金属表面である、請求項14に記載された、キット。
【請求項16】
固体表面の材料が、多結晶シリコンまたは、単結晶シリコンである、請求項14に記載された、キット。
【請求項17】
信号増幅器が、オリゴヌクレオチド分子である、請求項13に記載された、キット。
【請求項18】
信号増幅器が、オリゴヌクレオチド アプタマーである、請求項17に記載された、キット。
【請求項19】
固体表面が、電気信号を検出するための、電気信号検出素子と結合している、請求項14に記載された、キット。
【請求項20】
電気信号検出素子が、電界効果トランジスタまたは表面プラズモン共鳴である、請求項19に記載された、キット。
【請求項21】
前記電気的に中性のヌクレオチドが、C1-C6アルキル基によって置換されたリン酸基を含む、請求項13に記載された、キット。
【請求項22】
前記負電荷のヌクレオチドが、無置換のリン酸基を含む、請求項13に記載された、キット。
【請求項23】
前記認識分子が、固体表面に接着されており、そして、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドが、固体表面に接着されている最初の部分を含み;その最初の部分の長さが、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの全長の50%であり;そして、最初の部分が、少なくとも1つの前記電気的に中性のヌクレオチドと、少なくとも1つの前記負電荷のヌクレオチドを含む、請求項13に記載された、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子検出技術に関する。特に、本発明は、信号増幅器を含む検出に関する。
【背景技術】
【0002】
分子の検出は、臨床診断および分子生物学の研究に重要な役割を果している。いくつかのシステムが、サンプル中の標的分子を検出および/または識別するために、分子の検出を実行するために、開発されている。
【0003】
電界効果トランジスタ(FET)は、表面電荷に非常に敏感である、半導体電子部品である。FETのいくつかの種類の中で、シリコン ナノワイヤ(SiNW)FET バイオセンサーは、シリコン ナノワイヤーの表面が、認識分子(recognizing molecule)で修飾された、センサ素子(sensing element)を指す。FETが、タンパク質、DNA、またはRNAなどの標的分子(target molecule)を含む水環境にさらされると、標的分子(target molecule)は、シリコン ナノワイヤ電界効果トランジスタの表面において、認識分子に結合する。この場合、標的分子によって運ばれる電荷によって形成される電界は、電導度の騰落(a rise or fall of electrical conductivity)の引き金を引く、SiNW-FETの電子の数または孔の数に影響する。電導度の変化をモニターすることによって、標的分子の存在、そして濃度でさえ、決定できる。
【0004】
電界効果トランジスタは、タンパク質-タンパク質結合と同様に、標的オリゴヌクレオチドを検出および/または特定するために用いられる。その両者は、試薬をラベリングする必要がなく、そして、FETセンサーの商業生産源が容易に得られる、という恩恵がある。FETセンサーの感度は、トランジスタ表面と実際の検出された分子の間の検出距離(デバイの長さ)に大きく依存する。FETの最新タイプは、遺伝子検出装置として、感度の面で、満足するものではない。これは、主に、DNA/DNAまたはDNA/RNAのハイブリダイゼーションのために、比較的高い塩濃度が必要なせいである。高度に電荷された生体分子のハイブリダイゼーションには、電荷の反発力を抑制するために、適切なイオン強度が必要である。残念ながら、ハイブリダイゼーション緩衝液中のイオンは、また、FETのデバイの長さ減じ、そして、それ故に、検出感度を減少させる。抗体-抗原結合の検出の場合には、他の生体分子と比較すると、大きいサイズの抗体は、また、FETの検出感度を低減する。たとえば、二次抗体を適用する検出において、センシング ゾーン(sensing zone)(デバイの長さ以内)における、二次抗体の正味電荷は、二次抗体の大きいサイズの観点から、より小さく、そして、電導率の変化が小さい;従って信号が弱い。抗体の表面電荷分布および、結合された抗体の結合方向(binding orientation)は、FET検出を解決し、定量的に分析することを困難にする。さらに、結合緩衝液中の塩の中間濃度も、また、デバイの長さを減じ、そして、次に、検出感度も下げる。
【0005】
[発明の概要]
検出感度と検出限界を改善するために、信号増幅器を含む検出方法が提供される。
【0006】
本発明は、標的分子を含む捕捉複合体(capturing complex)を形成し;そして、信号増幅器と捕捉複合体を結合することを含む、標的分子を検出するための方法を提供する。ここで、捕捉複合体は、正味電荷を有し;信号増幅器は、捕捉複合体に親和性を有し、そして、捕捉複合体の正味電荷と同じ正味電荷を有する。
【0007】
本発明は、また、以下を含む、標的分子を検出するためのキットを提供する:
標的分子を含む捕捉複合体に親和性を有する、信号増幅器(ここで、捕捉複合体は、正味電荷を有し;信号増幅器は、捕捉複合体の正味電荷と同じ正味電荷を有する。);および
捕捉複合体と信号増幅器が結合することに起因する、電位変化を検出するための電気信号検出素子。
【0008】
本発明は、以下のセクションで詳しく説明する。本発明の、その他の特性、目的および利点は、発明の詳細な説明および特許請求の範囲で見い出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態における方法の概略図を示す。
図2図2は、本発明による、電気的に中性のヌクレオチドの1つの好ましい実施形態を示す。
図3図3は、6X ヒスチジン タグ抗原および抗6X ヒスチジン-タグ ウサギ抗体のプライマリー信号(primary signal)を増幅するための、信号増幅器として、R18 RNA アプタマーを用いた検出のI-V曲線を示す。
図4図4は、6X ヒスチジン タグ抗原および抗6X ヒスチジン-タグ ウサギ抗体のプライマリー信号(primary signal)を増幅するための、信号増幅器として、抗ウサギ ヤギ抗体を用いた検出のI-V曲線を示す。
図5図5は、6X ヒスチジン タグ抗原および抗6X ヒスチジン-タグ ウサギ抗体のプライマリー信号(primary signal)を増幅するための、信号増幅器として、R18 RNAアプタマーまたは抗ウサギ ヤギ抗体を用いた検出によって誘起された、閾値電圧シフトを示す。
【0010】
[発明の詳細な説明]
本発明は、標的分子を検出するための方法を提供し、標的分子を含む捕捉複合体を形成し;そして、信号増幅器と捕捉複合体を結合することを含む、標的分子を検出するための方法を提供する。ここで、捕捉複合体は、正味電荷を有し;信号増幅器は、捕捉複合体に親和性を有し、そして、捕捉複合体の正味電荷と同じ正味電荷を有する。
【0011】
ここで使用する、「検出」という用語は、標的分子の存在有無を発見または決定することを;そして、好ましくは、標的分子を識別することを指す。本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、検出は、サンプルの標的分子を定量化することを含む。ここに適用される反応は、オリゴヌクレオチド分子、タンパク質-タンパク質間相互作用、受容体リガンド結合、オリゴヌクレオチド-タンパク質間相互作用、多糖-タンパク質間相互作用、または小分子化合物-タンパク質間相互作用のハイブリダイゼーションを含むが、これらに限定されない。
【0012】
本明細書で使用される、「標的分子」という用語は、分子のプールから検出または特定されるべき、指定された小分子または高分子を指す。好ましくは、標的分子は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドなどの高分子である。標的分子は自然発生するまたは人工である。別の態様において、標的分子は、精製されたもの、または他のコンテンツと混在するものである。本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、標的分子の発現パターンは、正常な状態、および病気などの異常な状態において、異なる。本発明の異なる好ましい実施の形態において、標的分子の発現パターンは、異なる種類の細胞により相違する。本発明の別のさらに好ましい実施形態において、標的分子は、DNA分子、RNA分子、抗体、抗原、酵素、基質、リガンド、受容体、細胞膜関連タンパク質または細胞表面マーカーである。DNA分子は、好ましくは、遺伝子または転写されない(untranscripted)領域である。RNAの分子は、好ましくは、mRNA、マイクロ RNA、長い翻訳されないRNA、rRNA、tRNA、またはsiRNAである。
【0013】
本発明によるサンプルは、自然発生の起源から派生した、または、人工操作から派生したものである。好ましくは、サンプルは、抽出、体液、組織生検、液体の生検、または細胞培養などの、自然発生的起源から派生されたものである。別の態様では、サンプルは、検出に必要な反応に従って処理される。たとえば、サンプルのpH値またはイオン強度は調整されることができる。
【0014】
ここで使用される、「捕捉複合体」という用語は、少なくとも2つの分子を含む複合体を指し、そして、該捕捉複合体の分子の1つは、標的分子である。該捕捉複合体の他の分子の1つは、捕捉複合体を形成するために、標的分子に特異的に結合することができる、すなわち、親和性で標的分子を捕捉することができる。好ましくは、本発明による方法は、さらに、親和性で、標的分子を捕捉することができる、認識分子と捕捉複合体を形成することを含む。捕捉複合体の形成は、標的分子の存在有無を発見または決定する、プライマリー信号を提供する。認識分子の種類は、標的分子の種類に依存する。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、認識分子は、塩基相補性により、標的オリゴヌクレオチド分子と捕捉複合体を形成することができる、一本鎖のオリゴヌクレオチド分子である。捕捉複合体は、好ましくは、二本鎖構造を指し、そして、一本鎖の1つは、標的オリゴヌクレオチド分子であり、そして、他方の一本鎖は、認識分子である。好ましくは、認識分子は、標的オリゴヌクレオチド分子の配列にマッチする配列を有する;より好ましくは、標的オリゴヌクレオチド分子の配列に完全にマッチした配列を有する。捕捉複合体を形成することにより、標的オリゴヌクレオチド分子は、サンプルの混合物から捕捉することができる。捕捉工程は、また、標的オリゴヌクレオチド分子を特異的に選択し、そして、捕捉複合体の標的オリゴヌクレオチド分子を提示する、精製工程を指す。
【0016】
標的オリゴヌクレオチド分子は、一本鎖分子または二本鎖の分子でありえる。二本鎖標的オリゴヌクレオチド分子の一本鎖を得る方法は、たとえば、加熱する、または二本鎖標的オリゴヌクレオチド分子の環境のイオン強度を変更することであり得る。
【0017】
本発明の他の好ましい実施の形態において、標的分子は、抗原であり、そして、認識分子は、その抗体であり、そして、捕捉複合体は、抗原-抗体の親和性によって、形成される。本発明の好ましいまた別の実施形態において、標的分子は抗体であり、そして、認識分子がその抗原であり、そして、捕捉複合体は、抗原-抗体の親和性によって形成される。
【0018】
捕捉複合体の形成のための方法は、標的分子と認識分子の自然の性質に依存する。捕捉複合体の形成のための方法の例は、オリゴヌクレオチド分子、タンパク質-タンパク質間相互作用、受容体リガンド結合、オリゴヌクレオチドータンパク質間相互作用、多糖-タンパク質間相互作用、または小分子化合物-タンパク質間相互作用のハイブリダイゼーションを含み、これらに限定されない。
【0019】
本発明による、捕捉複合体は、溶液として、または固体表面に接着されて存在していてよい。好適には、捕捉複合体は、固体表面に接着されているか、または捕捉複合体は、固体表面と距離をあけて配置される(spaced apart from the solid surface by a distance)。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「固体表面」は、固体支持体(solid support)を指し、ポリマー、紙、布、またはガラスを含み、これらに限定されない。採用される固体表面は、検出される信号によって異なる。たとえば、方法が、信号をモニターするために、電界効果トランジスタを採用するとき、固体表面は、電界効果トランジスタのトランジスタ表面であり;方法が、表面プラズモン共鳴法を採用するとき、固体表面は、表面プラズモン共鳴の金属表面である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態で、固体表面の素材はシリコンであり;好適には、多結晶シリコンまたは、単結晶シリコンであり;より好ましくは、多結晶シリコンである。多結晶シリコンは、単結晶シリコンよりも安価であるが、多結晶は、より結晶粒界があるので、欠陥は、通常、電子伝達を阻害する粒界で発生する。このような現象は、固体表面を凹凸にし、そして、定量化を困難にする。さらに、イオンは多結晶の粒界に浸透し、溶液において、検出エラーを発生させる可能性がある。さらに、多結晶シリコンは、空気中で安定ではない。ただし、上記欠点は、本発明による方法の機能と干渉しない。
【0022】
固体表面に、捕捉複合体を接着する方法は、固体表面の材質および捕捉複合体の種類に依存する。本発明の一実施の形態で、捕捉複合体は、共有結合によって固体表面へリンクする。共有結合の例として、固体表面化学および標的分子または認識分子に応じて、以下の方法を含むが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、酸化シリコンが固体表面として使用されているとき、固体表面は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を使用して修飾される。APTESの分子におけるケイ素原子は、水酸基の酸素原子と共有結合をし、そして、表面のシラノール基(SiOH)をアミンに変換し;そして、認識する、一本鎖オリゴヌクレオチド分子の5’-アミノ基は、固体表面のアミン基と、グルタルアルデヒドによって、共有結合させられる(Roey Elnathan, Moria Kwiat, Alexander Pevzner, Yoni Engel, Larisa Burstein Artium Khatchtourints, Amir Lichtenstein, Raisa Kantaev, およびFernando Patolsky,「生体認識層工学:ナノワイア―ベースのFETデバイスの検出限界の克服」、Nano letters, 2012, 12, 5245-5254)。本発明の別の実施形態では、固体表面は、様々な化学反応によって、相補性のある(recognizing)一本鎖オリゴヌクレオチド分子の異なる官能基に共有結合でリンクする、異なった官能基を有する、自己集合する単層分子へと修飾される(Srivatsa Venkatasubbarao, 「マイクロアレイ-現状と展望」(Microarrays - status and prospects), TRENDS in Biotechnology Vol. 22 No. 12 December 2004; Ki Su Kim, Hyun-Seung Lee, Jeong-A Yang, Moon-Ho Jo およびSei Kwang Hahn, 「アプタマー修飾された、Si-ナノワイヤ FETバイオセンサの作製、特性および適応」(fabrication, characterization and application of aptamer-functionalized Si-nanowire FET biosensors), Nanotechnology 20 (2009))。
【0023】
本発明の、他の好ましい実施の形態において、捕捉複合体は、固体表面から距離をあけて位置される(spaced apart from the solid surface by a distance)。電位変化(electrical change)検出素子は、捕捉複合体と信号増幅器の結合に起因する、電位変化(electrical change)を検出するために、適用されるので、捕捉複合体と固体表面との距離が、十分に短く、電位変化(electrical change)検出素子が、電位変化(electrical change)を検出できる限り、捕捉複合体が、固体表面に、直接結合する必要はない。好ましくは、固体表面と、捕捉複合体間の距離は、約0~約10nm;より好ましくは、約0~約5nmである。
【0024】
本発明の捕捉複合体は、正味電荷を有する。好ましくは、捕捉複合体の正味電荷によって生成される電気信号は、検出するのには弱すぎ、信号増幅器が必要である。
【0025】
本明細書で使用するとき、「信号増幅器」という用語は、捕捉複合体に親和性を有し、そして、捕捉複合体の正味電荷と同じ正味電荷を有する、分子を指す。もし、捕捉複合体の正味電荷が正の場合、同じ信号増幅器の正味の電荷も、また、正である;もし、捕捉複合体の正味電荷が負の場合、同じ信号増幅器の正味電荷も、また、負である。信号増幅器が、捕捉複合体の正味電荷と同じ正味電荷を有するけれども、信号増幅器と捕捉複合体の間の親和性結合は、これらの2つの正味電荷の間の反発力より強い。信号増幅器および捕捉複合体を結合することにより、捕捉複合体の正味電荷の信号は、信号増幅器に同じ正味電荷を導入することによって増幅される。
【0026】
好ましくは、信号増幅器は小さいサイズを有する。小さいサイズを用いると、結合した、信号増幅器と捕捉複合体は、電気信号検出素子の検出ゾーンに位置し、そして、増幅効果を最大化する。たとえば、電気信号検出素子として、FETを適用したとき、結合した信号増幅器と捕捉複合体は、デバイの長さ内に位置する。より好適には、信号増幅器の分子量は、約0.5kDaから約50kDaであり;更に一層好ましくは、約1.5kDaから約35 kDaである。
【0027】
別の態様では、信号増幅器は、豊富な正味電荷を有する。好ましくは、信号増幅器は、少なくとも1つ正味電荷を有し、より好ましくは、少なくとも5つの正味電荷を有し;更に一層好ましくは、少なくとも10の電荷を有する。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態の1つでは、信号増幅器は、高い正味電荷密度を有する。高い正味電荷密度を有する分子は、同一の分子量を有する分子と比較して、より多くの正味電荷を有する分子を意味する。より好ましくは、信号増幅器は、豊富な正味電荷と小さいサイズを有する。
【0029】
信号増幅器は、捕捉複合体の、標的分子または認識分子に親和性を有する。好ましくは、信号増幅器は、標的分子に親和性を有する。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態の1つで、信号増幅器は、一本鎖オリゴヌクレオチド分子と二本鎖オリゴヌクレオチド分子を含むオリゴヌクレオチド分子である。さまざまな配列および/または構造を有することで、オリゴヌクレオチドは、異なった分子に親和性を有することができる。本発明の、1つのより好ましい実施の形態では、信号増幅器は、オリゴヌクレオチドのアプタマーである。
【0031】
ここで使用される、「オリゴヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド分子」という用語は、ヌクレオチドのオリゴマーを指す。「ヌクレオチド」という用語は、窒素塩基、糖、および、1つまたは複数のリン酸基;好適には、1つのリン酸基から成る有機分子を指す。窒素塩基は、プリンやピリミジンの誘導体を含む。プリンは、置換若しくは無置換のアデニンと置換若しくは無置換のグアニンを含み;ピリミジンは、置換若しくは無置換のチミン、置換若しくは無置換のシトシン、および、置換若しくは無置換のウラシルを含む。糖は、好ましくは、5炭糖であり、より好ましくは、置換若しくは無置換のリボース、または、置換若しくは無置換のデオキシリボースである。リン酸基は、糖の2, 3、または5位の炭素、好適には、5位の炭素との結合を形成する。オリゴヌクレオチドを形成するために、1つのヌクレオチドの糖は、リン酸ジエステルの架橋で、隣接する糖に結合する。好適には、オリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNA;より好ましくは、DNAである。
【0032】
ここで用いられる、「オリゴヌクレオチド アプタマー」という用語は、特定分子に結合するオリゴヌクレオチド分子を指す。
オリゴヌクレオチド アプタマーは、SELEX(試験管内選択法)(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法、のような大規模なランダム配列プールから、それを選択することによって取得することができる。捕捉複合体に対応するときに、必要なオリゴヌクレオチド アプタマーを選択できる。
【0033】
本発明によれば、標的分子がサンプルに存在する場合、認識分子は、標的分子と結合し、正味電荷を有する捕捉複合体を形成する。捕捉複合体は、正味電荷を運ぶために、正味電荷を導入することによる、捕捉複合体の形成のため、プライマリー信号として、電位変化が発生する。他方、標的分子がサンプルに存在しない場合、認識分子は、標的分子と結合できない。したがって、電気的環境が変化せず、そして、電位の変化は発生しない。その結果、捕捉複合体がサンプルに存在する場合、信号増幅器は捕捉複合体に結合する。信号増幅器は、捕捉複合体の正味電荷と同一の正味電荷を運ぶので、より多い正味電荷を導入することによる、信号増幅器の結合に起因して、増幅された電位の変化が起こる。電位の変化をモニターすることにより、標的分子は、それにより検出される。したがって、本発明の方法は、更に、捕捉複合体と信号増幅器の結合に起因する、電位の変更をモニターすることを含む。
【0034】
本発明による電位の変化は、正味電荷の上昇を含むが、これに制限されない。電位の変更は、電気信号として検出することができる。電気信号は、電導率、電界、電気容量、電流、電子、または電子孔の変化を含むが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、電位の変化は、閾値電圧シフト変更である。好ましくは、電位の変化は、電位変化検出素子によって検出される。
【0035】
好ましくは、固体表面は、電位の変化を検出するための、電位変化検出素子と結合される。好ましくは、電位変化検出素子は、電界効果トランジスタまたは表面プラズモン共鳴、より好ましくは、電界効果トランジスタである。電界効果トランジスタの例は、ナノワイヤ電界効果トランジスタ、ナノチューブ電界効果トランジスタ、およびグラフェン電界効果トランジスタを含むが、これらに限定されない。
【0036】
本発明によれば、信号増幅器のフリー体は、好適には、信号増幅器のフリー体によって運ばれる、電荷によって生成されるノイズを回避するため、電位の変化を検出する前に除去される。
【0037】
図1は、本発明の好ましい実施形態の概略を示す。まず、認識分子として、抗原を、FETチップの表面に固定化し、そして、標的分子として、最初の抗体が注入される。抗原および最初の抗体で、捕捉複合体が形成される。この実施態様では、捕捉複合体は、負の正味電荷を運ぶ。さらに、信号増幅器として、RNAアプタマーが注入され、捕捉複合体に結合する。RNAアプタマーは、より多くの負の正味電荷を運ぶので、信号は増幅される。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、認識分子は、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドと少なくとも1つの負電荷のヌクレオチドを含む、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドである。ヌクレオチドを、電気的に中性にする方法に制限はない。本発明の一実施形態では、電気的に中性のヌクレオチドは、アルキル基によって置換されたリン酸基を含む。好ましくは、アルキル基は、C1-C6アルキル基;より好ましくは、アルキル基は、C1-C3アルキル基である。C1-C3アルキル基の例は、メチル、エチルおよびプロピルを含むが、これに限定されない。図2は、本発明による、電気的に中性のヌクレオチドの1つの好ましい実施形態を示す。リン酸基の負電荷の酸素原子は、電荷のない中性の原子に変更される。アルキル基で、リン酸基を置換する方法は、一般的な化学反応に従って適用されることができる。
【0039】
本発明による、負電荷のヌクレオチドは、少なくとも1つの負電荷を有するリン酸基を含む。未修飾のヌクレオチドは、好ましくは、修飾または置換のない、天然ヌクレオチドである。本発明の好ましい実施の形態の1つでは、負電荷のヌクレオチドは、無置換のリン酸基を含む。
【0040】
本発明による、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、部分的に、電気的に中性にされる。配列または長さは、制限されず、そして、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの配列または長さは、本発明の開示に基づき、標的分子に従って設計できる。
【0041】
電気的に中性のヌクレオチドおよび負電荷のヌクレオチドの数は、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの配列と複合体成形条件に依存する。電気的に中性のヌクレオチドと負電荷のヌクレオチドの位置は、また、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの配列と複合体形成条件に依存する。電気的に中性のヌクレオチドおよび負電荷のヌクレオチドの数および位置は、本発明の開示に基づく利用可能な情報に従って、設計できる。たとえば、電気的に中性のヌクレオチドの数と位置は、二本鎖(ds)構造エネルギーに基づき、分子モデリング計算によって設計できる。そして、dsDNA/DNAまたはdsDNA/RNAの融解温度(Tm)は、その後、構造エネルギーを参照することによって決定できる。
【0042】
本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、部分的に中性の一本鎖ヌクレオチドは、複数の電気的に中性のヌクレオチドを含み、そして、少なくとも1つの負電荷のヌクレオチドは、2つの電気的に中性のヌクレオチドの間に位置する;より好ましくは、少なくとも2つの負電荷ヌクレオチドは、2つの電気的に中性のヌクレオチドの間に配置される。
【0043】
本発明によると、電気的に中性のヌクレオチドを導入することによって、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの、完全にマッチした二本鎖オリゴヌクレオチドと、不一致の二重鎖オリゴヌクレオチドの間の溶融温度差は、従来のDNAプローブのそれと比較して、より高い。理論に制限されることはないが、中性のオリゴヌクレオチドを導入することにより 2つの鎖の間の静電反発力は低下し、そして、溶融温度は、それにより、上昇すると推量される。電気的に中性のヌクレオチドの数と位置を制御することにより、溶融温度差を、より良い動作温度や、それにより、捕捉特異性が向上しる、完全一致と不一致のオリゴヌクレオチドを区別するために温度範囲を提供する、目的のポイントに調整される。このような設計は、1つのチップまたはアレイに統合された、異なる部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの溶融温度の一貫性を齎す。検出する反応の数は、高い特異性をもって、大幅に上げることができ、そして、より多くの検出ユニットが、単一の検出システムの中に組み込むことができる。設計は、より良いマイクロアレイ操作条件を提供する。
【0044】
本発明の好ましい実施の形態の1つで、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、固体表面に接着する、最初の部分を含み;その最初の部分の長さは、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの全長の約50%であり、そして、その最初の部分は、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドと、少なくとも1つの負電荷のヌクレオチドを含み;より好ましくは、最初の部分の長さは、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドの全長の約40%であり;更に一層好ましくは、最初の部分の長さは、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの全長の約30%である。
【0045】
本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、部分的に一本鎖のヌクレオチドは、さらに、上記最初の部分に隣接する、2番目の部分を含む。その2番目の部分は、固体表面に遠位端(in the distal end)にある。2番目の部分は、少なくとも 1つの電気的に中性のヌクレオチドと少なくとも1つの負電荷のヌクレオチドを含む。電気的に中性のヌクレオチドと負電荷のヌクレオチドの説明は、最初の部分のそれと同じなので、ここは繰り返さない。
【0046】
本発明の好ましい実施の形態の1つでは、その方法は、約50mMより低い、より好ましくは、約40mM、30mM、20mMまたは10mMよりも低いイオン強度の緩衝液中で、実行される。理論で制限されることはないが、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを適用することによって、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドと標的分子との間に形成される複合体は、部分的に電荷された半中性の一本鎖オリゴヌクレオチドとその標的の間の静電気の反発力を抑制する必要がなく、発生すると推測される。次いで、ハイブリダイゼーションが、塩基の組み合わせと各鎖の積み重ねの力(stacking force)によって、惹き起される(drive)。その結果、より低い塩状態で、二重鎖(duplex)が形成できる。FETを用いると、より低いイオン強度は、検出長(デバイの長さ)を大きくし、そして、次いで、検出感度を向上させる。
【0047】
本発明の一実施形態では、捕捉複合体を形成する改善された、ハイブリダイゼーションの特異性は、従来の検出と比較して FET検出の2つの側面において、主に見出すことができる。まず、溶解温度差が、より高いことである。第二に、緩衝液がより低い塩条件を有し、そして、FET検出長(デバイの長さ)が増加する。これらの違いの両方は、検出感度の改善を齎す。
【0048】
本発明は、また、以下を含む、標的分子を検出するためのキットを提供する。標的分子を含む捕捉複合体に対して、親和性を持つ信号増幅器(ここで、捕捉複合体は、正味電荷を有し;信号増幅器は、捕捉複合体の正味電荷と同一の正味電荷を有する);および捕捉複合体および信号増幅器の結合に起因して発生する電位の変化を検出するための電気信号検出素子。
【0049】
好ましくは、本発明のキットは、更に、前述の認識分子を含む。
【0050】
次の実施例は、本発明の実施において、当業者を支援するために提供される。
【0051】
[実施例]
認識分子として、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの合成:
デオキシ シチジン(n-ac)p-メトキシ ホスホロアミダイト、チミジン p-メトキシ ホスホロアミダイト、デオキシ グアノシン (n-ibu) p-メトキシ ホスホロアミダイトおよびデオキシ アデノシン(n-bz) p-メトキシ ホスホロアミダイト(全てを、ChemGenes株式会社、米国から購入した)は、固相リン酸トリエステル合成に基づき、または、アプライド バイオシステム 3900 高スループット DNAシンセサイザー(Genomics(R) Biosci & Techまたはミッション バイオテックによって提供される)を用いて、指定された配列に従って、オリゴヌクレオチドを合成するために、使用された。
【0052】
合成されたオリゴヌクレオチドは、24時間、室温で、トルエン中、弱アルカリと反応させ、そして、サンプルを、pH7にpH値を調整すべく、イオン交換クロマトグラフィーに付した。サンプルを、濃縮し、乾燥後、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドが得られた。
信号増幅器として、RNAアプタマーの合成
【0053】
cDNA R18 RNA アプタマーは、ポリメラーゼの連鎖反応(PCR)および転写反応により合成された。
【0054】
PCR反応液は次を含む、:
10X PCR緩衝液 2μL、
10mM dNTP 0.5μL、
10μM cDNAプライマー1 0.5μL(インテグラル デバイス テクノロジー(IDT)、米国から購入)、
10μM cDNAプライマー2 0.5 μL(インテグラル デバイス テクノロジー(IDT)、米国から購入)、
10μM cDNA R18 RNA アプタマー テンプレート 0.5μL(インテグラル デバイス テクノロジー(IDT)、米国から購入)、
Tag DNA ポリメラーゼ 0.5μL、および
DI-水 15.5μL。
PCRプログラム:1サイクル、95℃で1分、50℃で1分、そして、72℃で1分;95℃、45秒で、40サイクル、55℃で45秒、および72℃で45秒;および72℃、3分で、1サイクル。PCRの生産物は精製され、-20℃で保存された。
【0055】
精製されたPCR生産物は、転写反応に付された。反応混合物は、以下を含んだ:
2X緩衝液 25μL、
1μgのPCR生産物 2.5μL、
DI-水 17.5μL、および
酵素 T7 エクスプレス 5μL(T7 RiboMAXTM エクスプレス大規模RNA生産システム、Promega、米国)。
反応混合物は、37℃で、2時間反応した。転写産物を精製した。
【0056】
認識分子のアタッチメント(Recognizing molecule attachment):
Siナノワイヤ(SiNW)チップを、アセトン40mLで2回、エタノール40mLで2回およびDI-水40mLで2回洗浄した。表面を、窒素空気で乾燥し、30秒間、酸素プラズマで導入された。25%の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)80μLとエタノール4mLを含む溶液は、30分間、表面を修飾するために使用された。チップは、再度、エタノール40mLで2回洗浄され、120℃で、10分、加熱された。チップは、1時間、室温で、液体のグルタルアルデヒド(10mMのリン酸ナトリウム緩衝液3mLおよびグルタルアルデヒド1mL)に浸漬された。チップは、リン酸ナトリウム緩衝液で、2回洗浄された。
【0057】
0.33%の6X ヒスチジン-タグ ペプチド(アブカム、英国から購入)500μLを、認識分子とし、そして、チップ表面に滴下した。コートされたチップは、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液で洗浄され、そして、4mMのNaBH3CNに、30分、そして、1%のBSA ブロック緩衝液に、1時間浸漬された。窒素空気乾燥前に、チップは、10分間、2回、トリス-HClで、次いで、DI-水で、洗浄された。
【0058】
捕捉と信号増幅
チップは、マイクロ流体システムに装備され。1mMのビスートリス プロパンの5mL/hrを、チャネル(channel)に導入し、そして、信号は、ベースラインとしてモニターされた。
【0059】
抗-6X ヒスチジン-タグ ウサギ抗体の0.33%の標的分子は、10分間、5mL/hrで、チャネルに導入され、そして、それから、30分、インキュベートした。チャネルを、1mMのビス―トリス プロパン緩衝液で、10分洗浄し、そして、信号は、プライマリー信号として、モニターされた。
【0060】
R18 RNA アプタマーの信号増幅器は、10分間、5mL/hrで、チャネルに導入され、そして、それから、30分、インキュベートされた。チャンネルを、10分、1mMのビス-トリス プロパン緩衝液で洗浄し、そして、信号を、増幅された信号として、モニターした。結果を、図3に示す。シフト電圧は、122.6mV(Id1=-9で、ΔV=Vd1-Vd0)。
【0061】
比較として、抗ウサギ ヤギ抗体を、10分間、5mL/hrでチャネルに導入され、そして、次いで、30分、インキュベートした。10分間、1mMのビスートリス プロパン緩衝液で、チャネルを洗浄し、そして、比較信号として、信号をモニターした。結果を、図4に示す。シフト電圧は、20.9mV(Id1=-9で、ΔV=Vd1-Vd0)である。
【0062】
図5を参照すると、捕捉複合体のプライマリー信号は、信号増幅器を使用することで、成功裏に、劇的に増幅された。従来の二次抗体(抗ウサギ ヤギ抗体)と比較して、本発明による信号増幅器は、検出の感度と検出限界を向上させる。
【0063】
本発明は、上述のように、特定の実施態様と組み合わせて記載されたが、それに対する多くの選択肢及び、それの修飾およびそのバリエーションは、当業者に明らかである。このような全ての選択肢、修飾および変化は、本発明の範囲に含まれるとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5