(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】プライマー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220128BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220128BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220128BHJP
B32B 27/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 D
C09D7/20
B32B27/00 C
B32B27/00 E
(21)【出願番号】P 2017181074
(22)【出願日】2017-09-21
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2016191453
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中山 賢太
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141340(JP,A)
【文献】特開2004-027084(JP,A)
【文献】特開平07-171491(JP,A)
【文献】特開2002-187254(JP,A)
【文献】国際公開第2013/164976(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D, B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂基材の化粧シート貼着面に、接着剤が積層一体化されている化粧シートを上記接着剤を介して貼り合わせるときに用いられるプライマー組成物であって、上記合成樹脂基材と、上記合成樹脂基材に含まれている滑剤とを溶解し得る有機溶剤を含有し
、
上記合成樹脂基材が、塩化ビニル系樹脂を含有しており、
上記有機溶剤が、安息香酸とアルコールとのエステル、芳香族アルデヒド及び芳香族ケトンからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有していることを特徴とするプライマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家具、外装材及び内装材などの基材の化粧シート貼着面に化粧シートを接着剤を用いて貼り合わせることによって意匠性を付与することが行われている。
【0003】
化粧シートを基材の化粧シート貼着面に接着させるために用いられる接着剤としては、従来から、有機溶剤を含む接着剤及び湿気硬化型ホットメルト接着剤が用いられている。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、シックハウス症候群の原因とされる揮発性有機化合物(VOC)を含まず、作業衛生に優れ、環境汚染を抑制できることから多く用いられている。
【0004】
又、基材は、断熱効果に優れ、省エネルギー効果を奏することから、ポリ塩化ビニル系樹脂などの合成樹脂化が進んでいる。
【0005】
しかしながら、合成樹脂製の基材は接着性に劣る傾向があり、基材の化粧シート貼着面に化粧シートを接着させる場合には、基材の化粧シート貼着面にプライマー組成物を塗布するなどの前処理が行われることが多い。
【0006】
このようなプライマー組成物としては、特許文献1に、シリコーン変性アクリル樹脂1重量部に対して、ポリイソシアネート化合物0.5~10重量部、および1,4-ブタンジオール0.01~1.0重量部を添加したプライマー組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、基材の化粧シート貼着面に接着剤を介して化粧シートを貼り合わせる工程時に何らかの不具合が生じることがあり、このような場合、化粧シートを基材の化粧シート貼着面から剥離する必要がある。
【0009】
しかしながら、上記プライマー組成物は、接着剤との初期接着性に優れているために、化粧シートを基材の化粧シート貼着面から剥離すると、基材の化粧シート貼着面に固化した接着剤が残り、この残存した接着剤を溶剤などで除去しないと基材を再利用できないという問題があり、不良率の増加やリードタイムの悪化を招くという別の問題を生じる。
【0010】
又、基材の化粧シート貼着面に接着一体化された化粧シートは、その後の使用時においては、容易に剥がれないことが要求され、基材の化粧シート貼着面に化粧シートを接着一体化させる工程時に要求されることとは相反することが要求される。
【0011】
本発明は、化粧シートなどの化粧シートを合成樹脂基材の化粧シート貼着面に接着剤を介して貼り合わせた直後は容易に化粧シートを合成樹脂基材の化粧シート貼着面から剥離することができると共に、時間の経過と共に化粧シートを接着剤を介して合成樹脂基材の化粧シート貼着面に強固に接着一体化させることができるプライマー組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に、接着剤が積層一体化されている化粧シートを上記接着剤を介して貼り合わせるときに用いられるプライマー組成物であって、上記合成樹脂基材と、上記合成樹脂基材に含まれている滑剤とを溶解し得る有機溶剤を含有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプライマー組成物は、上述の如き構成を有していることから、合成樹脂基材上にプライマー組成物を塗布し、接着剤が積層一体化されている化粧シートを接着剤を介して貼り合わせることによって、合成樹脂基材上に化粧シートを貼り合わせた直後は、化粧シートを合成樹脂基材上から容易に剥離して化粧シートの貼り合わせ状態の修正を容易に行うことができる(再剥離性)。
【0014】
更に、本発明のプライマー組成物によれば、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に接着剤を介して化粧シートを貼り合わせた後、接着剤の養生硬化後には合成樹脂基材の化粧シート貼着面に化粧シートを強固に接着一体化することができる(接着性)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のプライマー組成物は、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に、接着剤が積層一体化されている化粧シートを上記接着剤を介して貼り合わせるときに用いられるプライマー組成物であり、合成樹脂基材と、上記合成樹脂基材に含まれている滑剤とを溶解し得る有機溶剤を含有している。
【0016】
〔有機溶剤〕
本発明のプライマー組成物は、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に、接着剤が積層一体化されている化粧シートを上記接着剤を介して貼り合わせるときに用いられる。そして、プライマー組成物は、合成樹脂基材と、合成樹脂基材に含まれている滑剤とを溶解し得る有機溶剤を含有している。
【0017】
合成樹脂基材としては、接着剤を介して化粧シートを化粧シート貼着面に貼着させて用いられる成形品が挙げられる。成形品を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられ、物性や成形性や汎用性の観点より、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0018】
なお、塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルを単量体成分として含有している合成樹脂をいう。塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する単量体との共重合体、塩化ビニルを単量体成分として含有しない重合体(例えば、ポリオレフィン系樹脂など)に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体などが挙げられる。
【0019】
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα―オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなどのN-置換マレイミド類などが挙げられる。
【0020】
合成樹脂基材は、通常、原料となる合成樹脂を押出機に供給して溶融混練した上で、押出機の先端に取り付けた金型から所望形状に押出されて製造される。この時、溶融状態の合成樹脂の金型の表面に対する粘着性を抑制し、溶融状態の合成樹脂と金型表面との間の摩擦抵抗を軽減するために、原料となる合成樹脂と共に滑剤が押出機に供給される。
【0021】
滑剤としては、例えば、炭化水素系、シリコーン系、高級アルコール系、高級脂肪酸系及び高級脂肪酸エステル系の滑剤が好ましい。
【0022】
一方、滑剤は、成形された合成樹脂基材の化粧シート貼着面にブリードアウトし、滑剤が原因となって合成樹脂基材の化粧シート貼着面への接着性が低下している。
【0023】
そこで、プライマー組成物は、有機溶剤を含有している。有機溶剤は、合成樹脂基材と、合成樹脂基材に含まれている滑剤とを溶解することができ、合成樹脂基材の化粧シート貼着面にブリードアウトしている滑剤を有機溶剤に溶解させることによって合成樹脂基材の化粧シート貼着面に存在している滑剤を除去していると共に、合成樹脂基材の化粧シート貼着面を溶解することによって、合成樹脂基材と粘着剤層との馴染み性を向上させており、合成樹脂基材に対する接着剤の接着性を向上させている。
【0024】
ここで、有機溶剤が、合成樹脂基材及び滑剤を溶解するか否かは下記の要領で判断される。有機溶剤13.5gに、合成樹脂基材を構成している合成樹脂又は滑剤1.5gをビーカーに供給して25℃にて150rpmの回転速度で6時間攪拌した後、25℃にて30分間静置する。有機溶剤中に沈殿物が存在するか否かを目視観察し、沈殿物が存在しない場合には、有機溶剤は、合成樹脂基材又は滑剤を溶解すると判断し、沈殿物が存在する場合には、有機溶剤は、合成樹脂基材又は滑剤を溶解しないと判断する。
【0025】
上記有機溶剤としては、合成樹脂基材と、合成樹脂基材に含まれている滑剤とを溶解し得る限り、特に限定されず、例えば、芳香族アルデヒド、芳香族ケトン、安息香酸とアルコールとのエステルなどが挙げられ、塩化ビニル系樹脂を溶解する有機溶剤を含有していることが好ましい。なお、有機溶剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0026】
芳香族アルデヒドとしては、例えば、2-メトキシベンズアルデヒド、4-ブトキシベンズアルデヒド、α-ブチルシンナムアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、3-フェニルプロパナール、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド、2-エトキシベンズアルデヒド、4-エトキシベンズアルデヒド、1-エチル-2-ピロリルカルバルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、3-(2-フリル)-2-プロペナール、5-(2-フリル)-2,4-ペンタジエナール、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、2-フェニルプロパナール、2-ヒドロキシ-4-メチルベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、3-(2-フリル)-2-イソプロピル-2-プロペナール、2-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、4'-メトキシ-α-メチルシンナムアルデヒド、3-メトキシベンズアルデヒド、2'-メトキシシンナムアルデヒド、4'-メトキシシンナムアルデヒド、4-メトキシフェニルアセトアルデヒド、3-(5-メチル-2-フリル)ブタナール、5-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール、4-メチル-2-フェニル-2-ヘキセナール、4-メチル-2-フェニル-2-ペンテナール、5-メチル-2-チエニルカルバルデヒド、3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-2-メチルプロパナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-メチルフェニル)プロパナール、α-メチルシンナムアルデヒド、2-(4-メチルフェニル)プロパナール、(4-メチルフェニル)アセトアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、1-メチル-2-ピロリルカルバルデヒド、1-フェネチル-2-ピロリルカルバルデヒド、2-フェニル-2-ブテナール、2-フェニル-4-ペンテナール、3-フェニル-4-ペンテナール、フェニルアセトアルデヒド、2-ピロリルカルバルデヒド、サリシルアルデヒド、3-チエニルカルバルデヒド、2-チエニルカルバルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、4-エトキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2,3-ジメトキシベンズアルデヒド、α-エチルシンナムアルデヒド、5-メチル-2-ピロリルカルバルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられ、合成樹脂基材及び滑剤の溶解性、並びに、接着剤との相溶性に優れていることから、ベンズアルデヒドが好ましい。
【0027】
芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン及びアセトフェノンなどが挙げられ、合成樹脂基材及び滑剤の溶解性、並びに、接着剤との相溶性に優れていることから、アセトフェノンが好ましい。
【0028】
安息香酸とアルコールとのエステルとしては、例えば、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸アミル、安息香酸ヘキシル、安息香酸オクチル、安息香酸2-エチルヘキシルなどが挙げられ、合成樹脂基材及び滑剤の溶解性、並びに、接着剤との相溶性に優れていることから、安息香酸エチルが好ましい。
【0029】
有機溶剤の沸点は、50~300℃が好ましく、150~250℃がより好ましい。有機溶剤の沸点が50℃以上であると、有機溶剤の合成樹脂基材における滞留時間を調整し易く好ましい。有機溶剤の沸点が300℃以下であると、乾燥に要する時間を短縮することができ好ましい。
【0030】
〔ポリオール(多価アルコール)〕
プライマー組成物は、合成樹脂基材との密着性及び耐熱性を向上させるために、ポリオールを含有していることが好ましい。
【0031】
ポリオールは、合成樹脂基材との密着性及び耐熱性が向上するので、有機溶剤に溶解可能であることが好ましい。
【0032】
なお、ポリオールが有機溶剤に溶解可能か否かは下記の要領で判断される。有機溶剤13.5gに、ポリオール1.5gをビーカーに供給して25℃にて150rpmの回転速度で6時間攪拌した後、25℃にて30分間静置する。有機溶剤中に沈殿物が存在するか否かを目視観察し、沈殿物が存在しない場合には、有機溶剤は、ポリオールを溶解すると判断し、沈殿物が存在する場合には、有機溶剤は、ポリオールを溶解しないと判断する。
【0033】
ポリオールとしては、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘクタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの1級水酸基を2つ持つ直鎖グリコール、ヒドロキノン、レソルシノールなどの二価の芳香族ポリオールなどが挙げられ、プライマー組成物の再剥離性及び接着性に優れていることから、二価の芳香族ポリオールが好ましく、レソルシノールが好ましい。なお、ポリオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。1級水酸基とは、1個の炭素原子が結合している炭素原子に結合している水酸基(-OH)をいう。
【0034】
1級水酸基を2つ持つ直鎖グリコールは、例えば、KHネオケム社から商品名「オクタンジオール」にて市販されている。二価の芳香族ポリオールは、例えば、和光純薬工業社から商品名「レソルシノール」にて市販されている。
【0035】
プライマー組成物中におけるポリオールの含有量は、有機溶剤100質量部に対して0.1~100質量部が好ましく、1~30質量部がより好ましく、5~20質量部が特に好ましく、7~15質量部が最も好ましい。ポリオールの含有量が0.1質量部以上であると、プライマー組成物の接着性が向上する。ポリオールの含有量が100質量部以下であると、プライマー組成物は適度な粘度を有し、プライマー組成物は優れた塗工性を有する。
【0036】
〔表面調整剤〕
プライマー組成物は、表面張力を調整して、合成樹脂基材上への塗工性を向上させるために表面調整剤を含有していてもよい。
【0037】
即ち、プライマー組成物が表面調整剤を添加することによって、プライマー組成物の表面張力(ぬれ性)を調整している。プライマー組成物の表面張力を調整することによって、合成樹脂基材上への均一塗工性を向上させ、合成樹脂基材の化粧シート貼着面への化粧シートの貼り合わせ時において、合成樹脂基材の化粧シート貼着面と化粧シートに積層一体化されている接着剤との間に液状のプライマー組成物を確実に介在させて再剥離性を向上させることができる。更に、合成樹脂基材に対する接着剤の硬化物の接着性も向上させることができる。
【0038】
表面調整剤しては、プライマー組成物の表面張力を調整することができれば、特に限定されず、例えば、フッ素系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤などが挙げられ、少量の添加で表面張力を調整可能であることから、フッ素系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤が好ましく、フッ素系表面調整剤がより好ましい。なお、表面調整剤(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0039】
フッ素系表面調整剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーが挙げられる。フッ素系表面調整剤としては、例えば、ビックケミー社から商品名「BYK-340」、大日本インキ工業社から商品名「F-474」及び「F-479」、AGCセイミケミカル社から商品名「サーフロンS-111N」、「サーフロンS-113」、「サーフロンS-121」、「サーフロンS-131」、「サーフロンS-132」、「サーフロンS-141」、「サーフロンS-381」、「サーフロンS-383」、「サーフロンS-651」及び「サーフロンS-243」にて市販されているものを用いることができる。
【0040】
シリコーン系表面調整剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンを変性した変性シリコーンなどが挙げられる。変性シリコーンとしては、具体的には、アルキル変性ポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0041】
具体的には、シリコーン系表面調整剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性(メタ)アクリロイル基含有ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0042】
シリコーン系表面調整剤は、例えば、東レ・ダウコーニング社から商品名「DC11PA」、「ST80PA」、「DC3074」、「DC3037」及び「SR2402」、信越化学工業社から商品名「KP-321」、「KP-324」、「KP-327」、「KR-9218」及び「X-40-9220」にて市販されているものを用いることができる。
【0043】
アクリル系表面調整剤としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルモノマーを原料として得られた重量平均分子量が300~50,000のアクリル重合体が挙げられる。また、シリコン変性されたアクリル重合体なども含まれる。シリコン変性したアクリル樹脂は、例えば、ケイ素(Si)を含有するアクリレートモノマーとアルキル(メタ)アクレートとを共重合することにより得られる。
【0044】
アクリル系表面調整剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社から商品名「BYK-350」、「BYK-352」、「BYK-354」、「BYK-355」、「BYK-358N」、「BYK-361N」及び「BYK-392」、楠本化成社から商品名「DISPARLON LF-1980」、「DISPARLON LF-1982」、「DISPARLON LF-1983」、「DISPARLON LF-1984」、「DISPARLON LF-1985」及び「DISPARLON NSH-8430HF」にて市販されているものを用いることができる。
【0045】
プライマー組成物中における表面調整剤の含有量は、有機溶剤100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。表面調整剤の含有量が上記範囲内であると、プライマー組成物は、再剥離性及び接着性を両立することができる。
【0046】
〔他の成分〕
プライマー組成物は、その物性を損なわない範囲内において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0047】
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルべンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。なお、酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
〔紫外線吸収剤〕
紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。なお、紫外線吸収剤は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0049】
〔充填剤〕
充填剤としては、例えば、雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー及び澱粉などが挙げられる。
【0050】
次に、プライマー組成物の使用要領について説明する。プライマー組成物は、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に、接着剤が接着一体化されている化粧シートを上記接着剤を介して貼り合わせて接着一体化させて化粧基材を製造するために用いられることが好ましい。
【0051】
プライマー組成物を用いて合成樹脂基材の化粧シート貼着面に化粧シートを接着一体化させて化粧基材を製造する方法としては、
例えば、
合成樹脂基材の化粧シート貼着面に、接着剤が積層一体化されている化粧シートを上記接着剤を介して接着一体化させて化粧基材を製造する化粧基材の製造方法であって、
上記合成樹脂基材の化粧シート貼着面に、上記合成樹脂基材と、上記合成樹脂基材に含まれている滑剤とを溶解し得る有機溶剤を含有している液状のプライマー組成物を塗布する工程と、
上記合成樹脂基材の化粧シート貼着面に塗布された液状のプライマー組成物上に、上記化粧シートを上記接着剤がプライマー組成物側となるように貼り合わせる工程と、
上記合成樹脂基材の化粧シート貼着面に上記接着剤によって上記化粧シートを接着一体化させる工程とを含んでいる化粧基材の製造方法が好ましい。
【0052】
詳細には、裏面に接着剤が積層一体化されている化粧シートを用意する。化粧シートとしては、合成樹脂基材の化粧シート貼着面を加飾するために用いられる公知の化粧シート(例えば、塩化ビニル系樹脂シート、オレフィン系樹脂シートなど)を用いることができる。化粧シートの裏面(化粧面とは反対側の面)に積層一体化されている接着剤は、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に化粧シートを貼着一体化させるために用いられる公知の接着剤(例えば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤、溶剤型接着剤など)を用いることができる。
【0053】
合成樹脂基材の化粧シート貼着面に液状のプライマー組成物を塗工する。プライマー組成物が好ましくは液状を維持している状態において、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に、化粧シートを接着剤が合成樹脂基材側となるように、ラッピングマシンなどを用いて貼り合わせる。なお、本発明において、プライマー組成物が液状であるとは、一定の形をもたず、流動性があり、ほぼ一定の体積を有する形態の他に、ゲルのように、流動性はないものの、力を加えることによって変形する形態も含まれる。
【0054】
合成樹脂基材の化粧シート貼着面に化粧シートを貼り合わせた直後においては、合成樹脂基材の化粧シート貼着面と、化粧シートに積層一体化された接着剤との間には、液状のプライマー組成物が介在しており、合成樹脂基材の化粧シート貼着面と接着剤とは殆ど接触していない。従って、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に貼り合わせられた化粧シートは、接着剤の糊残りを殆ど生じさせることなく、化粧シートを合成樹脂基材の化粧シート貼着面から円滑に剥離した上で、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に化粧シートを再度貼り合わせることができ、不良率の低減及びリードタイムの低下を図ることができる。
【0055】
プライマー組成物は、後述するように、化粧シートに積層一体化された接着剤に徐々に吸収される。なお、プライマー組成物の一部分は合成樹脂基材にも吸収される。一方、プライマー組成物は、合成樹脂基材を構成している合成樹脂を溶解するので、プライマー組成物中には合成樹脂基材を構成している合成樹脂が徐々に溶け込んだ状態となっており、この合成樹脂の存在によって、接着剤中へのプライマー組成物の吸収は、急速に行われることなく徐々に行われる。従って、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に化粧シートを貼り合わせた後の所定時間に亘って、合成樹脂基材の化粧シート貼着面と接着剤との間には液状のプライマー組成物が確実に介在した状態が維持され、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に貼り合わせられた化粧シートを合成樹脂基材の化粧シート貼着面から剥離して化粧シートの貼り合わせ状態の修正を行う修正時間を十分に確保することができる。
【0056】
そして、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に化粧シートを貼り合わせた状態で放置すると、プライマー組成物は、合成樹脂基材に含まれている滑剤も溶解するため、合成樹脂基材の化粧シート貼着面にブリードアウトしている滑剤が液状のプライマー組成物中に溶解されることによって、合成樹脂基材の化粧シート貼着面から除去される。更に、滑剤を溶解している液状のプライマー組成物は、接着剤に徐々に吸収される。プライマー組成物が接着剤に吸収されるにしたがって、合成樹脂基材の化粧シート貼着面と接着剤との間に介在しているプライマー組成物が徐々に消失し、接着剤が合成樹脂基材の化粧シート貼着面に接触した状態となり、化粧シートは接着剤を介して合成樹脂基材の化粧シート貼着面に強固に接着一体化された状態となる。このように、プライマー組成物を用いることによって、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に化粧シートを接着剤によって正確に且つ美麗に接着一体化させて外観に優れた化粧基材を容易に製造することができる。
【0057】
上述のように、プライマー組成物は、接着剤に直ちに吸収されることなく、合成樹脂基材の化粧シート貼着面と接着剤との間に介在しているので、合成樹脂基材上に貼り合わせた化粧シートの貼り合わせ状態の修正を容易に行うことができ、優れた再剥離性を有している。
【0058】
更に、プライマー組成物は、合成樹脂基材に含まれている滑剤を溶解するため、合成樹脂基材の化粧シート貼着面にブリードアウトしている滑剤を溶解、除去し、合成樹脂基材の化粧シート貼着面の接着性を改善しており、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に接着剤を介して化粧シートを強固に接着一体化することができ、優れた接着性を有している。よって、合成樹脂基材の化粧シート貼着面に貼り合わせ一体化された化粧シートは長期間に亘って優れた加飾効果を維持する。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0060】
(実施例1~4、比較例1、2)
アセトフェノン(沸点:202℃)、ベンズアルデヒド(沸点:178.1℃)、安息香酸エチル(沸点:-34℃)、2-ブトキシエタノール、2-エチルへキサン酸及びレソルシノール(和光純薬工業社製 商品名「レソルシノール」)を表1に示した量ずつガラス瓶に供給し、シェイカーを用いて均一に混合してプライマー組成物を作製した。
【0061】
アセトフェノン、ベンズアルデヒド及び安息香酸エチルは、ポリ塩化ビニル及びミリスチン酸ミリスチルを溶解可能であった。
【0062】
2-ブトキシエタノールは、ポリ塩化ビニルを溶解することができず、ミリスチン酸ミリスチルも溶解することはできなかった。
【0063】
2-エチルヘキサン酸は、ポリ塩化ビニルを溶解できなかったが、ミリスチン酸ミリスチルを溶解可能であった。
【0064】
レソルシノールは、安息香酸エチルに溶解可能であった。
【0065】
得られたプライマー組成物の再剥離性、常態接着強度及び耐熱クリープを下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0066】
(再剥離性)
ポリ塩化ビニル及び滑剤としてミリスチン酸ミリスチルを押出機に供給して170℃にて溶融混練し、押出機の先端に取り付けたTダイから押出して、厚みが2.5mmの長尺状のポリ塩化ビニル製の板を製造した。長尺状のポリ塩化ビニル製の板から縦150cm×横50cmの平面長方形状の合成樹脂基材を切り出した。この合成樹脂基材の化粧シート貼着面全面にプライマー組成物を厚み50μmにて塗工した。
【0067】
一方、湿気硬化型ホットメルト接着剤(積水フーラー社製 商品名「エスダイン9627」)を用意した。湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃に加熱して溶融させた。溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を平面長方形状(縦150cm×横50cm)で且つ厚みが160μmのポリオレフィン系樹脂シートの一面全面に塗工厚みが50μmとなるように室温にて塗工した。
【0068】
次に、プライマー組成物が塗工された合成樹脂基材を80℃にて30秒加熱した後、40℃まで冷却し維持した。表面温度を40℃に保持した合成樹脂基材の化粧シート貼着面上に塗工されたプライマー組成物上に、ポリオレフィン系樹脂シートを湿気硬化型ホットメルト接着剤が合成樹脂基材側となるように重ね合わせた後、ポリオレフィン系樹脂シート上にゴムロールを転動させて、合成樹脂基材の化粧シート貼着面にプライマー組成物及び湿気硬化型ホットメルト接着剤を介してポリオレフィン系樹脂シートを貼り合わせて試験片を作製した。
【0069】
試験片を10℃の雰囲気下にて10分間放置した後、ポリオレフィン系樹脂シートを合成樹脂基材の化粧シート貼着面から手で勢いよく剥がした。ポリオレフィン系樹脂シートを合成樹脂基材の化粧シート貼着面から剥離した後の合成樹脂基材の化粧シート貼着面に残った湿気硬化型ホットメルト接着剤の総面積S1を測定した。湿気硬化型ホットメルト接着剤の総面積をS0として下記式に基づいて残存率(%)を算出した。
残存率(%)=100×S1/S0
【0070】
(常態接着強度)
再剥離性の測定時と同様の要領で合成樹脂基材を作製した。合成樹脂基材の化粧シート貼着面全面にプライマー組成物を厚み50μmにて塗工した。
【0071】
一方、湿気硬化型ホットメルト接着剤(積水フーラー社製 商品名「エスダイン9627」)を用意した。湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃に加熱して溶融させた。溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を平面長方形状(縦150cm×横50cm)で且つ厚みが160μmのポリオレフィン系樹脂シートの一面全面に塗工厚み50μmで塗工した。
【0072】
次に、表面温度を40℃に保持した合成樹脂基材の化粧シート貼着面に塗布されたプライマー組成物上に、ポリオレフィン系樹脂シートを湿気硬化型ホットメルト接着剤が合成樹脂基材側となるように重ね合わせた後、ポリオレフィン系樹脂シート上にゴムロールを転動させて、合成樹脂基材の化粧シート貼着面にプライマー組成物及び湿気硬化型ホットメルト接着剤を介してポリオレフィン系樹脂シートを貼り合わせて試験片を作製した。
【0073】
試験片を、温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させた。その後、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1週間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を湿気硬化させた。そして、合成樹脂基材の化粧シート貼着面からポリオレフィン系樹脂シートを、剥離角度180°、剥離速度50mm/分で剥離し、この時の平均の剥離強度を常態接着強度(N/20mm)として測定した。
【0074】
(耐熱クリープ)
常態接着強度と同様の要領で試験片を作製した。次に、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させた。次に、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1週間放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を湿気硬化させた。
【0075】
70℃の温度環境下において、ポリオレフィン系樹脂シートが下面となるようにして試験片を水平に設置した後、ポリオレフィン系樹脂シートの長さ方向における一方の端部に、垂直方向に800g/20mmの加重をかけた。この状態のまま1.5時間経過後、ポリオレフィン系樹脂シートが合成樹脂基材の化粧シート貼着面から剥離した長さ(mm)を測定した。
【0076】
比較例1は、試験開始直後にポリオレフィン系樹脂シート全体が合成樹脂基材の化粧シート貼着面から剥離、脱落したため、測定することができなかった。
【0077】
【0078】
表1において、実施例と比較例との対比より、プライマー組成物は、再剥離性と接着性に優れていることがわかる。具体的には、合成樹脂基材に含まれている滑剤を溶解することができない2-ブトキシエタノールを有機溶剤として用いた比較例1は、合成樹脂基材の化粧シート貼着面にブリードアウトした滑剤を除去することができなかったため、常態接着強度が低下していることが分かる。合成樹脂基材を構成している合成樹脂を溶解することができない2-エチルヘキサン酸を有機溶剤として用いた比較例2は、合成樹脂基材を構成しているポリ塩化ビニルを溶解することができないため、プライマー組成物が湿気硬化型ホットメルト接着剤に急速に吸収されてしまったために再剥離性が低下していた。