(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ホイールファン、ホイールファン組み立てキット及びホイールファンの形成方法
(51)【国際特許分類】
B60B 7/02 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B60B7/02 F
(21)【出願番号】P 2017217251
(22)【出願日】2017-11-10
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】517161854
【氏名又は名称】森泉 宗次
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】森泉 宗次
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-199107(JP,A)
【文献】特開2002-264607(JP,A)
【文献】特開2010-216649(JP,A)
【文献】特開2004-052735(JP,A)
【文献】特開2005-096526(JP,A)
【文献】特開平08-020319(JP,A)
【文献】実開昭60-127203(JP,U)
【文献】登録実用新案第3062901(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第1747910(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のタイヤホイール内に設けられるホイールファンであって、
上記ホイールファンは、所定の形態に折り曲げられた板状部材を備えて構成されており、
上記板状部材は、
中心穴を有し、ホイール取付ハブと上記タイヤホイールとの間において固定されるとともに、ホイール軸心から所定の半径に設定された外周部を備える取付板部と、
上記外周部に所定の角度間隔で設けられるとともに、上記外周部からホイール軸方向に所定角度で立ち上がる複数の羽根部と、
上記外周部と上記羽根部との間に設けられて上記羽根部を立ち上がらせる折り曲げ部とを備え、
上記羽根部の周方向幅は、上記折り曲げ部の周方向幅より大きく設定されているとともに、
上記各羽根部は、上記羽根部の基端部を含む円錐面に対して、上記円錐面の外方又は内方に向けて所定角度で傾斜して構成されている、ホイールファン。
【請求項2】
上記板状部材に含まれるとともに、上記各羽根部の半径方向外周部を一体的に繋ぐ環状の外周補強部を備え、
上記外周補強部は、上記各羽根部の半径方向外方縁部の一部で連結されており、
上記外周補強部の所定の領域が折り曲げられて周方向寸法が減少させられているとともに、
上記折り曲げ部が、上記羽根部が上記取付板部から所定の角度で立ち上がるように折り曲げられている、請求項1に記載のホイールファン。
【請求項3】
上記羽根部の上記取付板部からの立ち上がり角度が、30~90度に設定されている、請求項1又は請求項2に記載のホイールファン。
【請求項4】
上記羽根部は、上記羽根部の基端部を含む円錐面に対して、5~45度の傾斜角度に設定されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のホイールファン。
【請求項5】
上記折り曲げ部の周方向幅寸法が、上記羽根部の半径方向内方縁部の周方向幅寸法の3分の1以下に設定されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のホイールファン。
【請求項6】
上記外周補強部の半径方向幅が10mm以下である、
請求項2に記載のホイールファン。
【請求項7】
上記外周補強部から延出する補助羽根部を備える、請求項2に記載のホイールファン。
【請求項8】
上記取付板部の上記中心穴の内周部に、位置決め凸部を備える、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のホイールファン。
【請求項9】
上記位置決め凸部は、ハブ軸方向に曲折されている、請求項8に記載のホイールファン。
【請求項10】
請求項1から請求項9に記載されたホイールファンを連結できるとともに、上記ホイール取付ハブと上記タイヤホイールの間で固定されるホイールファン取付アダプタを備える、請求項1から請求項9に記載されたホイールファン。
【請求項11】
折り曲げることによりホイールファンを構成できる板状部材を含むホイールファン組み立てキットであって、
上記板状部材は、ホイール取付ハブの取付面に対応した平面形態を有するとともに、中心穴を設けた取付板部と、
上記取付板部の半径方向外方の部位に所定の角度間隔で形成された複数の羽根部と、
上記取付板部から延出するとともに、上記各羽根部に繋がる折り曲げ部とを備え、
隣り合う上記折り曲げ部は、所定の切除部を介して離間して設けられており、
隣り合う上記羽根部は、上記切除部の一部から半径方向外方に延びる羽根部分離スリットで分離されているとともに、
上記羽根部の周方向幅が、上記折り曲げ部の周方向幅より大きく設定されている、ホイールファン組み立てキット。
【請求項12】
上記各羽根部の半径方向外方において、上記各羽根部を連結するように全周に連続して形成される環状の外周補強部を備え、
上記外周補強部は、上記各羽根部の基端部の外周縁部で連結されているとともに、
上記各羽根部との間に、上記羽根部分離スリットから連続するとともに、上記各羽根部の周方向先端側を上記基端部から立ち上げるように変位させて迎え角を設定する迎え角設定スリットが形成されている、請求項11に記載のホイールファン組み立てキット。
【請求項13】
1枚の板状部材を曲折して形成されるホイールファンの組み立て方法であって、
ホイール取付ハブとタイヤホイールとの間において固定される取付板部と、上記取付板部から半径方向外方に延出する羽根部と、上記取付板部と上記羽根部とを連結する折り曲げ部とを備える板状部材を準備する工程と、
上記羽根部を上記取付板部から、上記ホイール取付ハブの軸方向に向けて所定角度で折り曲げる羽根部立上工程と、
上記羽根部を、上記羽根部の基端部を含む円錐面に対して、上記円錐面の外方又は内方に向けて所定角度で傾斜するように変位させる迎え角設定工程とを含む、ホイールファンの形成方法。
【請求項14】
上記板状部材は、上記各羽根部の半径方向外方縁部の一部で連結されているとともに上記羽根部を囲むように形成された環状の外周補強部を備えて構成されており、
上記外周補強部の周方向長さを減縮させるように上記外周補強部の一部を折り曲げることにより上記羽根部立上工程が行われる、請求項13に記載のホイールファンの形成方法。
【請求項15】
上記外周補強部を折り曲げることにより、上記羽根部立上工程と上記迎え角設定工程とが同時に行われる、請求項14に記載のホイールファンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールファン、ホイールファン組み立てキット、及びホイールファンの組み立て方法等に関する。詳しくは、ホイール取付ハブ及びタイヤホイールの形態や寸法に応じて所要の形態を容易に、かつ安価に提供できるとともに、所要の効果を発揮できるホイールファンに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール取付ハブの外周あるいは軸方向内方に、ブレーキディスクが設けられる場合が多い。上記ブレーキディスクは、ブレーキキャリパによって制動力を発生させるものであるため摩擦熱によって高温になり、上記タイヤホイールを介してタイヤ等に悪影響を及ぼす。また、ブレーキ装置やその近傍が高温になると、ペーパーロック現象やフェード現象に代表される制動力の低下を招くことになる。このため、上記タイヤホイールの内部やホイール取付ハブの近傍に、上記ブレーキディスクやブレーキキャリパを冷却する目的で、ホイールファンが設けられることがある。上記ホイールファンは、上記ホイールとともに回転して、タイヤホイールの外部から空気を取り込んで流動させ、上記ブレーキディクスやブレーキキャリパを冷却する。また、ブレーキダストを除去する効果も期待できる。
【0003】
走行中のタイヤホイールの近傍における気流の動向は、車両全体の空力特性に影響を与える。すなわち、ホイール内外の空気の流動量や方向を変化させることにより、走行特性等が大きく変化する場合がある。この走行特性の変化は充分に解明されていないが、たとえば、操向安定性や、燃費が変化することが知られている。
【0004】
上記ホイールファンは、タイヤホイール近傍の気流を変化させるものであるため、上記ホイールファンを設けることにより、上記走行特性も変化すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、タイヤホイールの内部空間には、ブレーキディスクやブレーキキャリパが配置されるため、ホイールファンを設ける空間は非常に限られる。しかも、ホイール取付ハブやタイヤホイールの連結部の形態や寸法は、ホイール取付ハブやタイヤホイール等によって大きく異なる。このため、一定の形態寸法のホイールファンを種々の車両に適用することは困難である。
【0007】
また、ホイールファンを設ける効果として、ブレーキディスク等が冷却されることは明らかであるが、上述した空力特性に関する作用効果については、充分に解明されていない。
【0008】
特に、ホイールファンによって、ハブ軸の軸方向外方からタイヤホイール内方へ向かう気流を発生させた場合と、タイヤホイール内部からハブ軸の軸方向外方へ向かう気流を発生させた場合とで、空力特性上の作用効果が大きく異なることが知られている。しかしながら、上述したように、上記作用効果は充分に解明されておらず、また、車両本体やタイヤホイール等の形態によって上記作用効果も大きく異なると考えられる。このため、運転する者が望まない効果が出現する可能性もある。したがって、所望の効果を発揮できるホイールファンを得るには、車両やタイヤホイールの形態に応じて、上記気流の向かう方向等を設定するのが望ましい。
【0009】
ところが、上述したように、ホイール取付ハブやタイヤホイールの形態寸法は様々であり、これら形態寸法に応じたホイールファンを提供するのは非常に困難である。また、ホイールや車両の形態寸法に応じたホイールファンを構成することもできるが、多大な製造コストが必要であった。
【0010】
本願発明は、上述した課題を解決するために案出されたものであって、ホイール取付ハブやこれに装着されるタイヤホイールの形態寸法に合わせて、ユーザが容易に形態寸法を設定できるとともに、所望の効果を発揮できるホイールファンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明に係るホイールファンは、自動車のタイヤホイール内に設けられる。ホイールファンの全部がタイヤホイール内の空間に収容されている必要はなく、一部がタイヤホイールの内部空間から軸方向外方あるいは内方にはみ出ている場合も含まれる。上記ホイールファンは、所定の形態に折り曲げられた板状部材を備えて構成されている。上記板状部材の種類は特に限定されることはないが、ペンチ等で容易に折り曲げることができる厚みを有する金属材料から構成するのが望ましい。たとえば、アルミ合金、鉄、ステンレス等から形成された所定範囲の厚みを有する板状材料を用いることができる。また、耐熱性のある樹脂材料から構成することもできる。たとえば、熱処理前の炭素繊維強化樹脂等の熱硬化性樹脂板をタイヤホイール等の形態に応じて所定の形態に成形し、その後熱処理して硬化させることもできる。上記ホイールファンは、中心穴を有し、ホイール取付ハブと上記タイヤホイールとの間において固定されるとともに、ホイール軸心から所定の半径に設定された外周部を備える取付板部が設けられる。上記外周部には、所定の角度間隔で設けられるとともに、上記外周部からホイール軸方向に所定角度で立ち上がる複数の羽根部が設けられる。上記外周部と上記羽根部との間には、上記羽根部を立ち上がらせる折り曲げ部が設けられる。上記羽根部の周方向幅は、上記折り曲げ部の周方向幅より大きく設定されているとともに、上記各羽根部は、上記羽根部の基端部を含む円錐面に対して、上記円錐面の外方又は内方に向けて所定角度で傾斜して構成されている。
【0012】
本願発明に係るホイールファンは、所定の形態に折り曲げられた板状部材を備えて構成される。上記ホイールファンの全体を一枚の板状部材から構成することもできるし、他の部材と組み合わせることもできる。上記板状部材は、取り付ける車両のタイヤホイールやホイール取付ハブ等に合わせてユーザが容易に折り曲げ作業を行うことができるように構成される。このため、種々の車両のホイール取付ハブやタイヤホイールに適合する形態のホイールファンを形成することができるとともに、上記羽根部の立ち上がり角度や迎え角等を所望の値に設定することも可能となる。なお、取り付ける車両やホイールの形態が決まっている場合には、折り曲げの中間工程や折り曲げ作業が終了した形態及び寸法にあらかじめ加工しておくこともできる。
【0013】
上記取付板部は、ホイール取付ハブと上記タイヤホイールとの間において固定される。上記取付板部を、ホイール取付ハブと上記タイヤホイールとの間において固定する手法あるいは構造は特に限定されることはない。たとえば、上記取付板部をタイヤホイールの取付面とホイール取付ハブの取付面との間に直接挟み込むようにして固定することができる。また、上記タイヤホイールの取付面とホイール取付ハブの取付面との間に挟み込まれるホイールファン取付アダプタに本願発明に係るホイールファンを装着したり、上記ホイールファン取付アダプタとホイール取付ハブの取付面との間に挟み込むようにして固定することもできる。
【0014】
上記取付板部の形態は特に限定されることはなく、取付形態等に応じて設定できる。たとえば、ホイール取付ハブと上記タイヤホイールとの間に直接挟み込んで固定する場合、所定の挟圧面を確保するとともに、ホイール取付ボルトを通挿するためのボルト通挿穴を設けることができる。また、ホイール取付ハブと上記タイヤホイールとの間に挟み込まれるホイールファン取付アダプタを採用する場合は、上記ホイールファン取付アダプタと上記ホイール取付ハブとの間で挟圧するように固定することもできる。さらに、上記ホイールファン取付アダプタの外周等に連結できる形態の取付板部を採用することもできる。上記取付板部の外周部の形態も特に限定されることはなく、ホイール取付ハブ等の形態に応じて設定できる。なお、上記取付板部の上記外周部は、板状部材の羽根部に対応する部分を折り曲げて立ち上がらせることにより出現するものであり、折り曲げ前の状態では、外周部を構成するものではない。
【0015】
上記外周部の半径は、上記ホイール取付ハブの外周及び上記タイヤホイール取付面の外周より若干大きく設定するのが望ましい。なお、上記折り曲げ部の半径方向長さを大きく設定することにより、上記羽根部の半径方向の立ち上がり位置、すなわち上記外周部の半径を所要の値に設定することが可能となり、上記ホイール取付ハブと上記タイヤホイールとの間に固定される部分の半径方向寸法や、羽根部の位置を調節することができる。
【0016】
上記ホイール取付ハブのホイール取付面には、ホイール取付ボルト及びハブ軸の環状位置決部が軸方向に突出して設けられる。このため、上記取付板部には、少なくとも上記環状位置決部を収容あるいは通挿するための中心穴が設けられる。また、上記中心穴を上記環状位置決部に対して位置決めして固定することもできる。上記環状位置決部の周囲には、複数のホイール取付ボルトが立設されている。このため、上記取付板部が、上記ホイール取付ハブと上記タイヤホイールの取付面との間に挟持される場合は、ホイール取付ボルトを通挿するボルト通挿穴が設けられる。種々の形態や連結構造を備えるホイール取付ハブ及びタイヤホイールに適合するように、上記中心穴と上記ホイール取付ボルト通挿穴は、所要の形態より大きな開口部を設けたり、異なる本数のホイール取付ボルトに対応できるように、複数組のホイール取付ボルト通挿穴群を複合した開口形態にして設けることもできる。また、上記中心穴と上記ボルト通挿穴を一体的な開口部として構成することもできる。
【0017】
上記取付板部の上記外周部には、所定の角度間隔で設けられるとともに上記外周部からホイール軸方向に所定角度で立ち上がる複数の羽根部が設けられる。上記羽根部の数や形態寸法は特に限定されることはない。所定の外周寸法に対して、羽根部の数が少ない場合は大きな形態寸法の羽根部を形成できる一方、羽根部の数が多い場合は、小さな羽根部が形成される。また、上記羽根部を設ける角度間隔は等間隔である必要はなく、また、各羽根部の寸法や形態も同一である必要はない。
【0018】
上記取付板部の外周部と上記羽根部との間には、上記羽根部を立ち上がらせる折り曲げ部が設けられる。上記折り曲げ部は、上記羽根部をハブ軸の方向に容易に曲折できるように、上記羽根部の周方向幅より小さく設定される。たとえば、上記折り曲げ部の周方向幅を上記羽根部の周方向幅の1/3以下の寸法に設定するのが好ましい。上記折り曲げ部の周方向幅が羽根部の周方向幅の1/3を越えると、上記羽根部を立ち上がらせたり、ねじったりする場合の抵抗が大きくなり、組み立て加工が困難になる。また、取付板部等の変形が生じる恐れも高くなる。
【0019】
上記羽根部の上記取付板部からの立ち上がり角度は特に限定されることはない。たとえば、30~90度に設定することがでる。上記立ち上がり角度は、上記取付板部の径線方向に対する羽根部の基端部(上記折り曲げ部から半径方向外方への延長線を含む部分)の傾斜角度を意味する。したがって、90度に設定した場合には、上記ハブ軸に直交する平面に沿って、半径方向外方に向かうように気流を発生させることもできる。
【0020】
上記ホイールファンが設けられるホイール内部には、ブレーキディスクやキャリパ等が設けられるため、空いているスペースは限られる。上記立ち上がり角度は、上記ブレーキディスクやキャリパ等と干渉しないように設定する必要がある。本願発明では、上記羽根部の立ち上がり角度等を調整できるため、タイヤホイール内のスペースを有効に利用できるホイールファンを構成することが可能となる。
【0021】
また、上記各羽根部は、上記羽根部の基端部を含む円錐面に対して、上記円錐面の外方又は内方に向けて所定角度で傾斜するように構成されている。すなわち、上記各羽根部に、気流を発生させるための迎え角が設定される。たとえば、上記迎え角は、上記羽根部を、周方向に向かう方向からおこすように変形させることにより設定することができる。また、上記折り曲げ部をねじるように変形させることにより、上記羽根部の迎え角を設定することもできる。上記迎え角の設定方向も特に限定されることはない。タイヤホイールの回転方向に応じて、タイヤホイールの軸方向外方の空気を軸方向内側に流動させるように迎え角を設定することもできるし、タイヤホイールの内側の空気を軸方向外方に向けて流動させるように設定することもできる。また、上記羽根部の上記立ち上がり角度及び迎え角を調節することにより、流動する気流をハブ軸の半径方向に向けて流動するように設定することもできる。これら角度を調節して設定することにより、所望の特性を備えるホイールファンを構成できる。
【0022】
上記各羽根部の半径方向外周部を一体的に繋ぐ環状の外周補強部を設けることができる。上記外周補強部は、上記各羽根部の半径方向外方縁部の一部で連結されている。たとえば、各羽根部の上記基端部の外周部で連結するのが好ましい。上記外周補強部は、上記板状部材に含ませて上記羽根部と一体形成するのが望ましい。なお、環状の別部材を各羽根部の外周に連結して構成することもできる。上記板状部材に一体形成した外周補強部が曲折されると、板状部材の外周寸法が減少させられる。このため、各羽根部が上記取付板部から立ち上がるように変位させられる。本願発明では、上記折り曲げ部が設けられているため、変形が上記折り曲げ部に集中し、上記羽根部の形態を大きく変更することなく、上記羽根部を立ち上がらせることができる。上記外周補強部の曲折位置は特に限定されることはなく、少なくとも上記羽根部に連結された部位以外の部位を曲折することができる。
【0023】
羽根部を所要の位置に変位させるために、上記折り曲げ部の周方向幅を小さく設定すると、羽根部の保持強度が低下する。上記外周補強部を設けると、上記折り曲げ部の周方向幅寸法を小さく設定しても、羽根部の強度を確保することが可能となる。上記外周補強部を、上記板状部材に含ませて上記羽根部と一体形成した場合、上記外周補強部を折り曲げると、各羽根部の間隔が上記外周補強部によって拘束されるようにして折り曲げられる。また、上記外周補強部を所定の方向へ折り曲げるだけで、上記折り曲げ部が変形させられて、羽根部を上記取付板部から立ち上がるように変形させることができる。すなわち、上記外周補強部の所定箇所を所定量曲げ変形させるだけで、上記羽根部を均一に立ち上げることができる。このため、各羽根部の曲げ加工を非常に容易に行うことが可能となる。
【0024】
上記外周補強部を板状部材に一体的に設ける場合の上記外周補強部の半径方向幅寸法は特に限定されることはないが、10mm以下に設定するのが好ましい。10mmを越える半径方向幅寸法を設定すると、変形に要する力が大きくなって、折り曲げ加工が困難になる。
【0025】
上記外周補強部は、上記各羽根部の基端部の外周部分において、上記羽根部と連結するのが望ましい。各羽根部の基端部は、上記取付板部に対する立ち上がり角度の基準となる部位であり、上記折り曲げ部から半径方向外方に延びる延長線上に設定することができる。これにより、羽根部の周方向先端側を、板面から起こすように変形させて、上記羽根部の基端部を含む円錐面に対して、上記円錐面の外方又は内方に向けて所定角度で傾斜させることができる。本願発明では、上記羽根部の迎え角の程度を所望の値に設定できるだけでなく、羽根部の先端側を上記円錐面の外方又は内方に向けることにより、気流を発生させる方向をも設定できる。
【0026】
上記羽根部の基端部を含む円錐面に対する角度、すなわち迎え角の値は特に限定されることはない。たとえば、5~45度の傾斜角度に設定することができる。なお、円錐面に対する角度とは、各羽根部の基端部を含む円錐面の母線に沿って接する面上において上記母線と直交する線分と上記羽根部との間の角度を意味する。迎え角が5度未満では、充分な気流を発生させることができない。一方、迎え角の値を、45度を越えて設定すると、上記ファンを回転させる抵抗が大きくなるばかりでなく、気流を発生させる効率が低下する。
【0027】
上記外周補強部から延出する補助羽根部を設けることができる。上記外周補強部を設けることにより、各羽根部の変形強度が大きくなる。このため、上記各羽根部の外周側にさらに、補助羽根部を設けることが可能となる。上記補助羽根部の形成手法や形態は特に限定されることはない。また、上記補助羽根部の上記取付板部に対する立ち上がり角度や迎え角も、上記羽根部と異なる値を設定できる。このため、ホイール内に大きなスペースを確保できる場合、大きな気流を発生させるホイールファンを構成することが可能となる。
【0028】
上記補助羽根部は、板状部材に上記外周補強部と一体的に形成することもできるし、組み立て後の外周補強部に別部材を連結して構成することもできる。また、一体的に形成する場合、上記補助羽根部も、上記外周補強部から延出する細幅の折り曲げ部を介して設けるのが好ましい。上記折り曲げ部を介して上記補助羽根部を設けることにより、上記補助羽根部の折り曲げ加工が容易になる。なお、上記羽根部と同様に、上記補助羽根部の上記折り曲げ部の周方向幅寸法は、上記補助羽根部の周方向幅より小さく設定するのが望ましい。
【0029】
本願発明に係るホイールファンは、タイヤホイールとともに回転するものであるため、軸対象に取り付けないとホイールバランスを崩す恐れがある。このため、ホイールハブに対して中心軸を精度高く取り付けるのが望ましい。
【0030】
取付対象となるホイール取付ハブのタイヤホイール取付面の中心には、タイヤホイールの位置決めを行うための環状位置決部が所定の高さで設けられている。しかしながら、上記環状位置決部の外径は一定ではなく、車両や取り付けるタイヤホイールによって異なる。このため、種々の車両に対応するには、中心穴の内径が異なる種々のホイールファンを準備する必要が生じる。
【0031】
本願発明では、上記不都合を回避するため、上記取付板部の上記中心穴の内周部に、位置決め凸部を設けることができる。上記位置決め凸部の形態は特に限定されることはない。たとえば、上記中心穴の内周部から半径方向内方へ突出する突起状の位置決め凸部を設けることができる。上記位置決め凸部は、最も小さな環状位置決部に対応した内径寸法を確保できるように構成することができる。
【0032】
本願発明に係るホイールファンを取り付ける際、上記凸部を上記環状位置決部の外径に対応した寸法に均等に切断することにより、上記凸部の内方縁部を上記環状位置決部の外周部に当接させることができる。あるいは、上記位置決め凸部を、上記環状位置決部の外径に対応した寸法に均等にハブ軸方向に折り曲げることにより、上記位置決め凸部の内方縁部を上記環状位置決部の外周部に当接させることができる。これにより、上記ホイールファンをホイールの軸心に対応した位置に精度高く位置決めして取り付けることが可能となる。
【0033】
本願発明に係るホイールファンを取り付けるためのホイールファン取付アダプタを採用することもできる。上記ホイールファン取付アダプタは、本願発明に係るホイールファンを連結できるとともに、上記ホイール取付ハブと上記タイヤホイールの間に固定されるように構成される。
【0034】
上記ホイールファン取付アダプタを、上記ホイール取付ボルトによって位置決めできるように構成することにより、上記ホイールファンを軸心に合わせて精度高く取り付けることが可能となる。また、上記ホイールファン取付アダプタを採用すると、上記ホイール取付ハブとタイヤホイールの取付面との間の空間を拡大して、ホイールファンを取り付けるスペースを確保し、あるいはスペースを拡大することが可能となる。このため、所要の効果を期待できるホイールファンを構成することが可能となる。
【0035】
しかも、上記ホイールファンを上記ホイールファン取付アダプタによって、ホイール取付ハブに固定した状態で、折り曲げ加工を容易に行うことができるという効果も期待できる。
【0036】
上記ホイールファン取付アダプタの形態等は特に限定されることはないが、上記ホイール取付ハブの取付面とタイヤホイールの取付面との間に、上記ホイールファンとともに挟み込むようにして固定できるように構成できる。たとえば、スペーサあるいはホイール取付ボルト変換アダプタと兼用できるように構成し、ホイール取付ハブの取付面と上記ホイールファン取付アダプタとの間に、上記ホイールファンの取付板部を挟むようにして取り付けるように構成することができる。また、ホイールファン取付アダプタの外周部にホイールファンを連結できるように構成することもできる。
【0037】
また、上記ホイールファンと上記ホイール取付アダプタの連結方法も特に限定されることはない。ホイールファン取付アダプタの外周部に、上記取付板部の中心穴に対応した段部等を設けて嵌合させることができる。また、上記取付板部の上記中心穴の内周部に設けた位置決め凸部を利用して、上記ホイールファンを上記ホイールアダプタに連結できるように構成することもできる。
【0038】
本願発明に係るホイールファンは、板状部材を折り曲げることにより形成される。上記板状部材は、ホイールファン組み立てキットとして提供され、ホイール取付ハブ及びタイヤホイールの形態に応じて、ユーザ自身が折り曲げ作業等を行えるように構成される。
【0039】
上記板状部材は、ホイール取付ハブの取付面に対応した平面形態を有するとともに、中心穴を備える取付板部と、上記取付板部の半径方向外方の部位に所定角度間隔で形成された複数の羽根部と、上記取付板部から延出するとともに、上記各羽根部に繋がる折り曲げ部とを備え、隣り合う上記折り曲げ部は、所定の切除部を介して離間して設けられており、隣り合う上記羽根部は、上記切除部の一部から半径方向外方に延びる羽根部分離スリットで分離されているとともに、上記羽根部の周方向幅が、上記折り曲げ部の周方向幅より大きく設定されている。
【0040】
上記板状部材を構成する材料及び厚みは特に限定されることはないが、使用者がペンチ等を用いて容易に折り曲げて、組み立てることができる厚みに設定される。たとえば、アルミ板等の金属板状部材を採用する場合、1~3mmの厚みに設定できる。また、ステンレス材料の場合、0.2~1.0mmに設定することができる。さらに、樹脂材料から形成された板状部材を採用する場合、たとえば、熱処理によって硬化させることができるFRP板状材料を採用し、熱処理前に所定の形態に変形させる折り曲げ作業等を行った後に、全体を熱処理して硬化させることができる。
【0041】
上記各羽根部の半径方向外方において、上記各羽根部を連結するように全周に連続して形成される環状の外周補強部を設けることができる。上記外周補強部は、上記各羽根部の基端部の外周縁部で連結されているとともに、上記各羽根部との間に、上記羽根部分離スリットから連続するとともに、上記各羽根部の周方向先端側を上記基端部から立ち上げるように変位させて迎え角を設定する迎え角設定スリットが形成される。
【0042】
たとえば、金属板状材料を採用した上記ホイールファン組み立てキットは、以下の手順で折り曲げることにより組み立てられる。
【0043】
まず、上記羽根部を上記取付板部から、上記ホイール取付ハブの軸方向に向けて所定角度で折り曲げる羽根部立上工程が行われる。上記羽根部立上工程は、ペンチ等を用いて上記羽根部を上記取付板部からホイール軸方向に起こすように変形させることにより行われる。上記羽根部の基端部の半径方向内方には、上記羽根部より周方向幅の小さい折り曲げ部が形成されているため、上記羽根部を金属板状部材の表面から起こすように変位させると、上記折り曲げ部に変形が集中して、上記羽根部の形態を保持した状態で、上記羽根部を金属板状部材の表面から所要の角度で立ち上げることができる。
【0044】
次に、上記羽根部を、上記羽根部の基端部を含む円錐面に対して、上記円錐面の外方又は内方に向けて所定角度で傾斜するように変位させる迎え角設定工程が行われる。上記羽根部を周方向からねじるように変位させると、上記羽根部立上工程と同様に、上記折り曲げ部にねじり変形を集中させることができる。このため、上記羽根部を大きく変形させることなく、迎え角を設定できる。なお、上記迎え角は、上記円錐面の母線を含む接面と、上記羽根部の角度で定義することができるが、上記母線に沿って羽根部が立ち上がる必要はない。また、各羽根部の周方向の途中で迎え角が変化するように構成することもできる。
【0045】
上記羽根部と一体形成された環状の外周補強部を備える場合、上記外周補強部を変形させることにより、上記羽根部立上工程と上記迎え角設定工程とを同時に行うことができる。
【0046】
上記外周補強部は、上記羽根部の外周の一部と一体的につながっているため、上記外周補強部の周方向長さを減縮させるように、上記外周補強部の一部を折り曲げると、上記羽根部が、上記金属板状部材の表面から立ち上がるように変形させられる。この場合、上記羽根部と繋がっていない部分のみ変形させると、上記羽根部をねじることなく立ち上がらせることができる。また、羽根部と繋がった部分を含むように折り曲げると、上記羽根部を立ち上がらせるとともに、羽根部を周方向からねじるように変位させることもできる。すなわち、上記外周補強部の折り曲げ部位及び折り曲げ形態を調節することにより、上記羽根部立上工程と上記迎え角設定工程とを同時に行うことができる。
【0047】
上記羽根部立上工程と上記迎え角設定工程は、一度の折り曲げ作業によって行うものではなく、所要の羽根部の形態が得られるまで、外周補強部を複数回にわたって繰り返し変形させることにより行われる。このため、ホイール取付ハブやタイヤホイールの形態に合わせてユーザ自体が組み立て作業を行っても失敗することなく組み立てることができる。
【0048】
上述したように、本願発明に係るホイールファンは、使用者自身が板状部材を折り曲げることにより組み立てることができる。このため、上記板状部材を含むホイールファン組み立てキットとして提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0049】
ホイール取付ハブやこれに装着されるタイヤホイールの形態寸法に合わせて、ユーザが容易に形態寸法を設定できるとともに、所望の効果を発揮できるホイールファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】ホイールファンの取付形態の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示すホイールファンの取付構造の一部を破断して内部構造を示す組み立て斜視図である。
【
図3】
図1に示すホイールファンの取付構造の一部を破断して内部構造を示す組み立て斜視図である。
【
図4】ホイールファンを構成する板状部材の組み立て前の状態を示す正面図である。
【
図6】
図4に示す板状部材に折り曲げ加工を施す手法を示す正面図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図7に示す状態からの折り曲変形を示すVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】板状部材を折り曲げ変形させた状態を示す側面図である
【
図12】
図10におけるXII-XII線に沿う端面図である。
【
図13】
図9に示す状態からさらに折り曲げ変形させた状態を示す側面図である
【
図16】
図14におけるXVI-XVI線に沿う端面図である。
【
図17】
図13に示す状態からさらに折り曲げ変形させた状態を示す側面図である
【
図19】
図18におけるXIX-XIX線に沿う端面図である。
【
図21】板状部材の縁部の変形過程を、外周側からみた状態を模式的に示す図である。
【
図22】本願発明の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて具体的に説明する。
【0052】
図1に、本願発明に係るホイールファン3をホイール取付ハブ2と、タイヤホイール1との間に装着した場合の分解斜視図を示す。また、
図2及び
図3に、
図1に記載した部材を組み付けるとともに、その一部を破断して内部構造を示す斜視図を示す。
【0053】
図1及び
図2に示すように、ホイール取付ハブ2の外周には、ブレーキディスク6が装着されており、車両本体側に設けられるブレーキキャリパ5が、上記ブレーキディスク6の外周部を囲むように配置されている。
図3に示すように、本実施形態では、上記ブレーキディスク6の中央部が、車軸11の先端に設けられるホイール取付ハブ本体2aを覆うようにして一体化されて、上記タイヤホイール取付面2bを構成している。上記ブレーキディスク6及びブレーキキャリパ5は、タイヤホイール1の内側空間内に収容されるように配置されている。ホイールファン3は、上記ホイール取付面2bと上記タイヤホイール1の取付面1aとの間に挟まれるようにして固定され、上記タイヤホイール1とともに回転させられる。
【0054】
本実施形態に係る取付形態は、上記タイヤホイール1と上記ホイール取付ハブ2との間に介挿されるホイールファン取付アダプタ4を備えて構成されており、上記ホイールファン3の中央部分に設けられる取付板部3aが、上記ホイールファン取付アダプタ4と上記ホイール取付面2bとの間に挟まれるようにして固定される。なお、本実施形態では、ホイールファン取付アダプタ4を備えて構成したが、上記ホイール取付ハブ2(2a)と上記タイヤホイール1の取付面1aとの間に直接挟むようにして固定することもできる。
【0055】
上記ホイール取付ハブ2には、上記タイヤホイール1を取り付けるための複数のホイール取付ボルト7aが植設されている。本実施形態では、上記ホイール取付ボルト7aを、上記ホイールファン3の取付板部3aに設けたボルト通挿穴に通挿するとともに、上記ホイールファン取付アダプタ4のボルト通挿穴に通挿して、アダプタ取付ナット7bを螺合させることにより、上記ホイールファン取付アダプタ4及び上記ホイールファン3が、上記ホイール取付ハブ2のホイール取付面2bに固定される。
【0056】
上記ホイールファン取付アダプタ4にも、取付ボルト9aが植設されており、上記取付ボルト9aを、タイヤホイール1のボルト通挿穴1bに通挿して、ナット9bを螺合させることにより、上記タイヤホイール1が、上記ホイールファン取付アダプタ4を介して上記ホイール取付ハブ2に連結される。
【0057】
以下、本実施形態に係る上記ホイールファン3について、具体的に説明する。なお、本実施形態は、金属板状部材を用いてホイールファンを構成する場合についての実施形態である。
【0058】
本実施形態に係るホイールファン3は、
図4に示すように、所定の形態に打ち抜き加工された金属板状部材12を折り曲げ加工することにより形成される。上記金属板状部材12を構成する材料は特に限定されることはない。本実施形態では、厚み約2mmのアルミ合金板製の金属板状部材を採用している。なお、上記打ち抜き加工の手法は特に限定されることはなく、たとえば、レーザー加工やプレス加工を用いて上記金属板状部材を形成することができる。
【0059】
図4に示す金属板状部材12は、折り曲げ加工前のものである。
図1から
図3に示すホイールファン3は、上記金属板状部材12を所定の形態に折り曲げて形成される。上記金属板状部材12は、ホイール取付ハブ2の取付面2bに対応した平面形態を有するとともに、中心穴13及びホイール取付ボルト通挿穴19を備える取付板部3aと、上記取付板部3aの半径方向外方の部位に所定角度間隔で形成された複数の羽根部16と、上記取付板部3aから延出するとともに、上記各羽根部16に繋がる折り曲げ部15とを備えて構成される。
【0060】
隣り合う上記折り曲げ部15は、所定形態の切除部14を介して離間して設けられている。隣り合う上記各羽根部16は、上記切除部14の一部から半径方向外方に延びる羽根部分離スリット17で分離されている。また、上記羽根部16の周方向幅寸法S1が、上記折り曲げ部の周方向幅寸法S2より大きく設定されている。上記折り曲げ部15の周方向幅寸法S2を、上記羽根部16の半径方向内方縁部の周方向幅寸法S1の3分の1以下に設定するのが好ましい。本実施形態では、上記S2は、上記S1の約4分の1に設定されている。
【0061】
本実施形態では、上記各羽根部16の半径方向外方において、上記各羽根部16を連結するように全周に連続して形成される環状の外周補強部29が設けられている。上記外周補強部29は、上記各羽根部16の基端部の外周縁部で連結されている。上記各羽根部16の外周縁部と上記外周補強部29との間には、上記羽根部分離スリット17から連続するとともに羽根部16の基端部に向けて延び、上記各羽根部16を上記基端部から立ち上げるように折り曲げ可能とする迎え角設定スリット18が形成されている。羽根部16の基端部は、上記折り曲げ部15の半径方向延長線上に設定され、上記基端部を含む円筒面を、迎え角や立ち上がり角の基準となる部位としている。
【0062】
上記迎え角設定スリット18は、上記切除部14及び上記羽根部分離スリット17と共働して、各羽根部16を板面から起こすように変位させることができるように構成されている。また、上記迎え角設定スリット18の周方向長さを設定することにより、羽根部の迎え角や方向を調節できる。上記迎え角設定スリット18の基端側には、円形の開口部18aが形成されており、この部分に応力を集中させて上記外周補強部29を集中的に折り曲げることができる一方、上記迎え角設定スリット18以外の部位の変形を抑制できるように構成されている。
【0063】
本実施形態では、上記外周補強部29の上記迎え角設定スリット18を形成した部分の半径方法幅寸法は、上記迎え角設定スリット18を設けた部位の外側をペンチ等で挟んで容易に曲折できる範囲で設定することができる。たとえば、10mm以下の半径方向幅に設定するのが好ましい。一方、上記外周補強部29は、上記羽根部16の基端部側外周部で上記羽根部に連続するように構成されている。このため、上記迎え角設定スリット18の部分に変形を集中させることが可能となり、容易に折り曲げ加工を行うことができる。
【0064】
上記取付板部3aの上記中心穴13の内周部には、半径方向内方に向けて突出する位置決め凸部20が設けられている。また、ホイール取付ボルト通挿穴19は、種々の配置のホイール取付ボルトに対応できるように、複数種類の開口を複合した形態を備えて構成されている。
【0065】
本実施形態では、上記切除部14の半径方向寸法を大きく設定することにより、上記折り曲げ部15の半径方向長さが大きく設定されており、半径方向における折り曲げ位置を調節することにより、種々の半径方向寸法を備えるホイール取付ハブに対応できるように構成されている。上記折り曲げ部15の半径方向長さは特に限定されることはないが、10mm以上に設定するのが好ましい。
【0066】
図6及び
図7に示すように、たとえば、上記外周補強部29の上記迎え角設定スリット18を形成した部分29aをペンチで挟んで、
図8に示すように、上記外周補強部29の周方向長さを減縮させるようにしてねじり変形させることにより、羽根部16を板面から立ち上げる羽根部立上工程が行われる。上記外周補強部29の周方向長さが減縮させられると、上記外周補強部29が上記金属板状部材12の板面から上記板面に直交する方向に変位させられ、これに伴って、上記羽根部16が、上記板面から立ち上がるように変形させられる。本願発明では、周方向幅が小さい折り曲げ部15を設けているため、変形が上記折り曲げ部15に集中する。このため、上記羽根部が上記折り曲げ部15から立ち上がるように変位させられる。
【0067】
上記羽根部立上工程は、一度の変形操作によって最終の変形量まで変形させるのではなく、周方向に各羽根部16に対応する外周補強部29を順次変形させ、これを複数回繰り返すことにより行われる。上記羽根部立上工程における金属板状部材の変形過程を
図9から
図17に示す。なお、上記羽根部立上工程は、上記ホイールファン3を、治具等に固定して行うこともできる。また、ホイールファン取付けアダプタ4を採用することにより、ホイール取付ハブに装着した状態で行うこともできる。本実施形態では、上記外周補強部29の上記迎え角設定スリット18を形成した部分29aをペンチで挟んで変形させたが、羽根部の基端部外周側に力を加えて同様の変形操作を行うこともできる。
【0068】
図9から
図12は、上記羽根部立上工程の初期段階を示す。これらの図は、羽根部16を、取付板部3aからθ1=約10度立ち上げた状態を示す。上記迎え角設定スリット18を形成した部分29aを、
図8に示すように、ねじるように折り曲げると、外周補強部29の周方向長さが減縮されるため、
図11に示すように、各羽根部16が取付板部3aから立ち上がるように変形させられる。また、上記迎え角設定スリット18、上記切除部14及び上記羽根部分離スリット17が形成されているため、各羽根部16の周方向の基端部、すなわち、上記折り曲げ部から半径方向外方に位置する部分に対して、羽根部の周方向先端側が半径方向に相対変位させられる。すなわち、各羽根部16が板面に対して立ち上がるように変形させられるとともに、上記羽根部16に、上記基端部を含む円筒面に対する迎え角αが設定される。具体的には、上記迎え角αは、上記基端部を含む円筒面Qにおいて、上記基端部を含む母線に接する面に対する角度として定義できる。
図9から
図11に示す形態では、
図12に示す上記迎え角がα1=約5度となる。
【0069】
上記羽根部立上工程の初期段階を終えた後、上記外周補強部29をさらに変形させる。
図13から
図16は、各羽根部16を板面、すなわち取付板部3aからθ2=約30度まで立ち上げた状態を示す。
図16に示すように、上記立上角度θ2が大きくなると、各羽根部の迎え角α2も大きり、
図13から
図16に示す実施形態では、α2=12~13度となっている。
【0070】
図17から
図20は、上記
図13から
図16に示す形態からさらに変形量を増加させた場合を示す。これらの図に示す立ち上がり角度θ3は、約60度に設定されている。また、羽根部16の迎え角θ3もさらに増加し、θ3=約25度となっている。
【0071】
図21に、上記外周補強部29の縁部の形態の変化過程を、上記外周補強部29の縁部の外方(
図11、
図15及び
図19における矢印Y方向)から見た状態を示す。
図8に示すように、上記外周補強部29の上記迎え角設定スリット18を形成した部分29aをねじるように変形させると、上記外周補強部29の周方向長さが減縮させられて、上記羽根部16が上記板面に対して立ち上がるように変位させられる。また、同時に、上記羽根部16の先端側が、上記羽根部16の基端部29bを含む円筒面Qから離れるように変位させられる。
図21の(a)~(c)に示すように、これら各部の変位あるいは変形は、上記迎え角設定スリット18を形成した部分29aのねじり変形とともに増加する。これによって、上記羽根部16が上記金属板状部材12から立ち上がると同時に、迎え角α1~α3が設定されるのである。
【0072】
図9から
図20に、羽根部の変形程度に応じた羽根部立上工程及び迎え角設定工程を順次示したが、羽根部の立ち上がり角度及び迎え角は、
図9から
図20に示す角度に限定されることはない。金属板状部材の途中の変形量においても所要の効果を発揮させることができる。また、羽根部の立ち上がり角度と迎え角の関係も、上記の各図に示すものに限定されることはなく、上記外周補強部29の曲折形態や、上記迎え角設定スリット18等の方向や長さを調節することにより、変更することができる。また、上記実施形態では、上記迎え角設定スリット18を形成した部分29aをペンチで挟んで、外周補強部29を変形させたが、各羽根部の基端部側の縁部に力を加えて変形させることもできる。
【0073】
また、本実施形態では、各羽根部16は、上記折り曲げ部15の半径方向外方に設定される基端部29bの周方向片側のみに設けたが、上記基端部29bの両側に羽根部を設けて、上記円錐面Qの内方及び外方に延出するよう構成することもできる。
【0074】
図22及び
図23に、本願発明の他の実施形態を示す。これらの図に示す実施形態は、ホイールファン103を、上記ホイール取付ハブ2と上記タイヤホイール1の取付面間に固定されるホイールファン取付アダプタ104に対して一体的に連結したものである。上記ホイールファン取付アダプタ104は、アルミ合金等で形成された厚肉円盤状に形成されており、スペーサあるいはホイール変換アダプタと兼用することができる。
【0075】
図22に示すように、本実施形態に係るホイールファン103は、
図4に示す位置決め凸部20が、ホイールファン取付アダプタ104の内周面104aに沿って折り曲げられるとともに、上記位置決め凸部20を上記内周面104aとの間に挟み込む固定リング31が、上記ホイールファン取付アダプタ104の内周部に嵌合されている。上記構成によって、上記ホイールファン103が、上記ホイールファン取付アダプタ104と一体化される。
【0076】
上記固定リング31の内周部は、ホイール取付ハブ2の本体11aから延出する環状位置決部11bの外周部と嵌合できるように構成されている。このため、上記固定リング31の内周面を上記環状位置決部11bの外周に嵌合するだけで、上記ホイールファンを上記ホイール取付ハブに対して位置決めして装着することができる。したがって、ホイールファン103の着脱を容易に行うことができる。
【0077】
また、上記ホイール取付アダプタ104は、ホイールファン103に比べて剛性が高いため、上記ホイール取付アダプタ104を万力等に容易に固定できる。このため、折り曲げ加工する前の金属板状部材112を上記ホイール取付アダプタ104に装着しておくことにより、曲げ加工を容易に行うことができる。
【0078】
本願発明は、上述した実施形態に限定されることはない。実施形態では、ホイールアダプタを設けたが、ホイール取付ハブとタイヤホイールとの間に直接挟み込んで固定することもできる。また、金属板状部材の材料や厚み、折り曲げ形態は、実施形態のものに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
形態寸法が異なるホイール取付ハブやタイヤホイールに容易に取付け可能なホイールファンを、安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 タイヤホイール
2 ホイール取付ハブ
3 ホイールファン
3a 取付板部
3b 外周部
12 金属板状部材
13 中心穴
19 ボルト通挿穴
16 羽根部
15 折り曲げ部
S1 羽根部の周方向幅
S2 折り曲げ部の周方向幅
Q 羽根部の基端部を含む円錐面