(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】銃弾用シングルベース推進粉末のための組成物、およびそのような組成物で提供される銃弾
(51)【国際特許分類】
F42B 5/16 20060101AFI20220111BHJP
C06B 45/28 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F42B5/16
C06B45/28
(21)【出願番号】P 2020520860
(86)(22)【出願日】2017-06-23
(86)【国際出願番号】 IT2017000130
(87)【国際公開番号】W WO2018235112
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】519455760
【氏名又は名称】シンメル・ディフェーザ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】SIMMEL DIFESA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・イウディチ
(72)【発明者】
【氏名】ミケーラ・ジロッティ
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ・レポーレ
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538231(JP,A)
【文献】特開2007-308367(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1649517(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 5/00
F41A 1/00
C06B 45/00
C06B 21/00-27/00
C06B 33/00,43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銃弾用シングルベース推進粉末の組成物であって、爆発性べースとしてのニトロセルロースと、不活性可塑剤成分と、少なくとも1つのニトロセルロース安定化成分と、任意のフラッシュ低減剤成分ならびに微量の1または複数の溶媒および水とで構成され、前記不活性可塑剤成分はセバシン酸ジブチル(DBS)で構成され、前記セバシン酸ジブチルが1重量%~10重量%の含有量で存在することを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記セバシン酸ジブチルが、2重量%~7重量%の含有量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セバシン酸ジブチルが、3重量%~5重量%の含有量で存在する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのニトロセルロース安定化成分が、ニトラミン、ニトロソアミン、尿素、
それらの誘導体またはそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのニトロセルロース安定化成分は、1,3-ジエチル-1,3-ジフェニル尿素で構成される、請求項1~4の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ニトロセルロース安定化成分が、1重量%~5重量%の含有量で存在する、請求項1~5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ニトロセルロース安定化成分は、2.5重量%~3.5重量%の含有量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ニトロセルロースは、82.5重量%~98重量%の含有量で存在する、請求項1~7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ニトロセルロースは、89重量%~94.5重量%の含有量で存在する、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのフラッシュ低減剤成分は、0.5重量%~2.5重量%の含有量で存在する、請求項1~9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフラッシュ低減剤成分は、硫酸カリウムで構成される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の組成物を有する推進粉末で提供されることを特徴とする銃弾。
【請求項13】
40mm~155mmの内径、好ましくは40mm、76mm、100mmまたは155mmの内径を有する、請求項12に記載の銃弾。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銃弾(または砲弾;ammunition)用シングルベース(または単一系;single-base)推進粉末(または推進剤または発射薬または火薬;propelling powder)のための組成物およびそのような推進粉末用組成物で提供される銃弾に関する。
【0002】
特に、本発明に係る推進粉末のための組成物は、特に、40mm~155mmの内径(または口径;caliber)を有する銃弾で使用される火砲弾薬(または大砲弾薬;artillery ammunition)で使用され得る。
【背景技術】
【0003】
一般に、民生用および軍事用の両方の銃弾は、発射体のアッセンブリと、推進チャージ(または推進装薬;propelling charge)で構成されている。次に、推進装薬は、いわゆる推進粉末および添加システムで構成される。
【0004】
推進装薬の主要な要素は、推進粉末である。
【0005】
推進粉末は、それらを構成する活性成分(active component)の数、すなわち、言い換えると爆発性ベース(または爆発性基剤;explosive base)の数に従って分類される。「活性成分」または「爆発性ベース」は、推進エネルギーを発生できる化合物を意味することを意図している。
【0006】
爆発性ベースの数に応じて、従来の推進粉末は4つのタイプに分けられる:
【0007】
活性成分(単一のまたは主要な)がニトロセルロースであるシングルベース;
【0008】
ニトロセルロースに加えて、活性成分としてニトロエステル、典型的にはニトログリセリンも存在するダブルベース(double-base);
【0009】
活性成分がニトロセルロース、ニトロエステルおよびニトロアミン(例えば、ニトログアニジン)であるトリプルベース(triple-base);ならびに
【0010】
活性成分が典型的には4種であるマルチベース(multi-base):ニトロセルロース、ニトロエステルならびに2つのニトロアミン、すなわち一般的にニトログアニジンおよびシクロトリメチレントリニトロアミン(RDX)。
【0011】
一般に、高窒素含有のニトロセルロース(ガン綿(gun cotton)として知られている)および中程度の窒素含有のニトロセルロース(コロジオン綿(collodion cotton)として知られている)、典型的には、綿フレークまたは他の植物の形態、すなわち樹木(arboreal)ニトロセルロースから得られるものは、推進粉末の製造に使用される。
【0012】
活性成分に加えて推進粉末の組成物において、以下にリストされている特定の機能を有する他の成分が存在する:ニトロセルロースの作業性(または加工性;workability)を可能にする可塑剤;推進粉末の経時的な安全性および安定性を確保するように適合された安定化剤。いくつかの場合では、フラッシュ低減剤成分は、武器システムの銃身(barrel)の口にある、いわゆる銃口フラッシュ(muzzle flash)を低減するために、推進粉末に直接含めることもできる。
【0013】
シングルベース推進粉末で使用される可塑剤は不活性材料で構成されるが、他のファミリーでは、ニトロエステルは活性成分として作用することに加えて、ニトロセルロース可塑剤としても作用する。
【0014】
現在、シングルベース推進粉末で使用される可塑剤は、ジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)である。
【0015】
発癌性化合物として分類されるジニトロトルエン(DNT)は、すべての化合物と同様に、欧州化学物質庁(the European Chemicals Agency)(ECHA)のスクリーニングを受けており、2015年8月21日から、生産および使用の両方で強制的な方法で禁止され、軽視される可能性はない(委員会規則(EU)No.125/2012)。
【0016】
また、フタル酸ジブチル(DBP)は、検査を受けており、受胎能(または生殖能;fertility)および胎児に有害であると分類されている(委員会規則(Eu)No.143/2011および関連するコリジェンタ(Corrigenda))。しかしながら、この場合では、その使用の終了日、または2015年2月21日は、2027年2月21日に延期された。免責は一時的であり、DBPの交換/廃止まで有効である。
【0017】
銃弾分野では、使用される化学物質の職業上の安全性および環境への影響に関する理由から、2つの物質であるジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)を推進粉末から除去または交換することを目的とした研究プログラムを立ち上げる必要があるが、作業性および性能には影響しない。
【0018】
これまでジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)を含まず、同時にこれら2つの物質を含む推進粉末と同様の作業性および性能を保証する銃弾用のシングルベース推進粉末の組成物は、知られていなかった。「作業性」は、液体が分離することなく、ニトロセルロース塊がゼラチン状の状態(ゲル)に凝固するゼラチン化プロセスを受ける組成物の能力、および経時的に安定して均一に混合するために使用される材料の能力との両方を意味することを意図する。ただし、性能は、推進粉末について発熱量(calorific value)によって表される最終組成物のエネルギーに関連する。
【0019】
組成物に加えて、推進粉末が形成される粒子の形状も弾道性能(ballistic performance)に寄与する。一般的に言って、推進粉末の粒子は、典型的な寸法によって定義される(ケースごとに異なる):縦方向の貫通穴の数、穴の直径、外径および長さ。適切な弾道挙動のためには、穴が対称的で再現可能であることが不可欠である。
【0020】
明確な形状を有する推進粉末粒子の獲得は、組成物の作業性に直接関連する。これは、推進粉末組成物の作業性の重要性を裏付けている。
【0021】
したがって、銃弾分野では、ジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)を含まないが、同時に、これらの2つの物質を含む推進粉末と同様の作業性および性能を備える銃弾用シングルベース推進粉末のための組成物が強く必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の目的は、ジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)を含まない、銃弾用シングルベース推進粉末の組成物を提供することにより、前述の先行技術の欠点の全体または一部を排除することにあり、同時に、これらの2つの物質を含む従来のシングルベース推進粉末に匹敵する作業性および性能を保証することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、ジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)を含まず、これらの2つの物質を含む従来のシングルベース推進粉末に匹敵する生産コストで製造できる銃弾用シングルベース推進粉末のための組成物を提供することにある。
【0024】
本発明の技術的特徴は、以下に提供される特許請求の範囲の内容から明らかとなり、その利点は、以下の詳細な説明、特に1または複数の好ましい非限定的な実施形態を参照して明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、銃弾用シングルベース推進粉末のための組成物、およびそのような推進粉末用組成物で製造される銃弾に関する。
【0026】
特に、本発明に係る推進粉末用組成物は、火砲弾薬、特に、40mm~155mmの内径の銃弾に使用し得る。
【0027】
本発明の一般的な実施形態によれば、シングルベース推進粉末用銃弾は、以下からなる:
【0028】
爆発性ベースとしてのニトロセルロース;
【0029】
不活性ニトロセルロース可塑剤成分;
【0030】
少なくとも1つのニトロセルロース安定化成分;および
【0031】
任意の少なくとも1つのフラッシュ低減剤成分。
【0032】
推進粉末用組成物は、微量の1または複数の溶媒および水(traces of one or more solvents and water)を任意に含んでもよい。
【0033】
本発明によれば、前述の不活性可塑化成分は、セバシン酸ジブチル(dibutyl sebacate)(DBS)により構成される。セバシン酸ジブチルは、ニトロセルロース、ニトロセルロース安定化成分、不活性可塑剤成分、および存在する場合は、フラッシュ低減剤成分の総重量に基づいて、1重量%~10重量%の含有量で組成物中に存在する。
【0034】
ここで、および明細書の残りの部分では、単一成分の重量パーセント(%)(上記のセバシン酸ジブチルを含む)は、組成物の乾燥部分をいい、「乾燥成分」は、組成物の全成分に溶媒および水とが含まれていないことを意味する。溶媒および水の含有量は、「100中(out of a hundred)」、すなわち、他のすべての成分(組成物の乾燥部分)の合計100重量部当たりの重量部としてカウントされる。
【0035】
驚くべきことに、シングルベース推進粉末の組成物において、ニトロセルロース可塑剤の機能の場合、1重量%~10重量%の含有量のセバシン酸ジブチルは、組成物の作業性を損なうことなく、推進粉末の最終性能または時間経過に伴う安定性を損なうことなく、シングルベース推進粉末、すなわちジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)に使用される従来の可塑剤を完全に置き換えることができる。
【0036】
既に予想されたように、「作業性」は、組成物がゼラチン化プロセスを受ける能力(これにより、ニトロセルロース塊は、液体が分離することなく、ゼラチン状の状態(ゲル)に凝固する)と、経時的に安定して均一にそれらを混合するために使用される材料の能力との両方を意味することを意図している。このように得られた材料は、明確な形状を与えるために、引き抜かれ/押し出され、その後切断プロセスにかけられてもよい。ただし、性能は、推進粉末について発熱量によって表される最終組成物のエネルギーに関連する。明確な形状(弾道性能を確保するために上記のように必須)を有する推進粉末粒子の取得は、組成物の作業性に直接関連している。一般的に言えば、すでに前述したように、推進粉末の粒子は典型的な寸法によって定義されている(ケースごとに異なる):縦方向の貫通穴の数、穴の直径、外径および長さ。適切な弾道挙動のためには、穴が対称的で再現可能であることが不可欠である。これは、推進粉末組成物が上記の意味で機能する場合にのみ達成できる。
【0037】
さらに、その性能は、発熱量により推進粉末について表される最終組成物のエネルギーに結び付けられる。
【0038】
明細書中の比較例から分かるように、本発明に係る推進粉末の組成物におけるセバシン酸ジブチルの重量含有率は、従来のシングルベース推進粉末に存在するジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)の重量含有量以下である。これは、(本発明に係る)これらの2つの化合物をセバシン酸ブチルで置き換えることは、組成物における重要によるニトロセルロース含有量の減少と、その結果、従来の推進粉末に対する発熱量(すなわち、最終的にはその性能)の低下とを必要としないことを意味する。
【0039】
国際安全規則は、健康に対する安全性の観点からセバシン酸ブチルの特定の使用制限を示していない。特に、セバシン酸ジブチルは、発癌性化合物としても、生殖能力および胎児に有害な化合物としても分類されていない。
【0040】
よって、上記で示されていることに照らして、セバシン酸ジブチルは、シングルベース推進粉末における不活性可塑剤として、ジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)の完全な置換に特に適した化合物である。
【0041】
特に、含有量が1重量%未満であると、セバシン酸ジブチルの可塑化作用は、粘性が高すぎるため生産フェーズ中での推進粉末の作業性を確保するのに十分ではない。10重量%を超えると、セバシン酸ジブチルの可塑化作用は、依然として有効であるが、発熱量はマイナスの影響を受けるため、推進粉末のエネルギー性能に影響する。さらに、DBSの割合が10重量%を超えると、押出後に膨潤現象が発生する場合がある。
【0042】
好ましくは、セバシン酸ジブチルは、組成物において2重量%~7重量%の含有量で存在する。さらにより好ましくは、セバシン酸ジブチルは、組成物において3重量%~5重量%の含有量で存在する。可塑剤の異なる割合は、押出中の混合物の可塑性に影響する。上記の好ましい範囲により、切断フェーズの後、押し出し機の出力でも押し出しの変形現象も引き起こさずに、組成物の的確な(または正確な;correct)押出と、推進粉末の粒子における押出の後続のサイズとをより簡単に得ることが分かった。
【0043】
既に上で強調したように、本発明に係る推進粉末用の組成物はシングルベースであり、爆発性ベース(または単一の活性成分)はニトロセルロースで構成されている。
【0044】
好ましくは、ニトロセルロースは、高窒素含有量のニトロセルロース(ガン綿として知られている)および中程度の窒素含有量のニトロセルロース(コロジオン綿として知られている)の中から選択され、典型的には、綿フレークまたは他の植物形態、すなわち、いわゆる樹木ニトリセルロースから得られる。
【0045】
好ましくは、ニトロセルロースは、82.5重量%~98重量%の含有量で存在する。さらにより好ましくは、ニトロセルロースは、89重量%~94.5重量%の含有量で存在する。推進粉末のエネルギー、すなわち発熱量が、その窒素含有量に加えて、ニトロセルロース含有量に直接関連している。
【0046】
既に上述したように、組成物は、少なくとも1つのニトロセルロース安定化成分を含む。
【0047】
有利には、前述のニトロセルロース安定化剤は、ニトラミン、ニトロソアミン、尿素、そのような化合物の誘導体またはそれらの混合物からなる群より選択される。
【0048】
好ましくは、ニトラミンの中で、前述のニトロセルロース安定化剤は、ジフェニルアミンおよびn-ニトロソジフェニルアミンから選択されてもよいが、それらの誘導体から選択されてもよく、2-ニトロジフェニルアミン、4-ニトロジフェニルアミン、N-ニトロソ-2-ニトロジフェニルアミン、N-ニトロソ-4-ニトロジフェニルアミン、2,2’-ジニトロジフェニルアミン、2,4-ジニトロジフェニルアミン、2,4’-ジニトロジフェニルアミン、4,4’-ジニトロジフェニルアミン、N-ニトロソ-2,4’-ジニトロジフェニルアミン、N-ニトロソ-4,4’-ジニトロジフェニルアミン、N-ニトロソ-2-ニトロジフェニルアミン、2,2’-ジニトロジフェニルアミン、2,4-ジニトロジフェニルアミン、2,4’-ジニトロジフェニルアミン、N-ニトロソ-4-ニトロジフェニルアミン、2,4-ジニトロジフェニルアミン、2,4’-ジニトロジフェニルアミン、4,4’-ジニトロジフェニルアミンから選択されてもよい。
【0049】
好ましくは、ニトロソアミンの中で、前述のニトロセルロース化安定剤は、ジメチルニトロソアミンおよびn,n-ジエチルニトロソアミンから選択されてもよい。
【0050】
好ましくは、尿素の中で、前述のニトロセルロース安定化剤は、エチルセントラライト(1,3-ジエチル-1,3-ジフェニル尿素)およびアラルダイド(TypeI:1,1-ジフェニル尿素;TypeII:1-メチル-3,3-ジフェニル尿素)から選択されてもよいが、それらの誘導体からも選択されてもよく、2-ニトロエチルセントラライト、4-ニトロエチルセントラライト、2,2’-ジニトロエチルセントラライト、2,4-ジニトロエチルセントラライト、2,4’-ジニトロエチルセントラライト、4,4’-ジニトロエチルセントラライト、N-ニトロソ-N-エチルアニリン、2-ニトロ-N-エチルアニリン、4-ニトロ-N-エチルアニリン、4-ニトロ-N-ニトロソ-N-エチルアニリン、2,4-ジニトロ-N-エチルアニリンから選択されてもよい。
【0051】
好ましくは、前述の少なくとも1つのニトロセルロース安定化成分は、エチルセントラライト(1,3-ジエチル-1,3-ジフェニル尿素)で構成されている。本発明の特に好ましい実施形態によれば、組成物は、エチルセントラライト(1,3-ジエチル-1,3-ジフェニル尿素)で構成される単一のニトロセルロース安定化成分を含む。
【0052】
安定化効果に加えて、実験的に検証されたエチルセントラライト(1,3-ジエチル-1,3-ジフェニル尿素/EC)はまた、可塑化効果を提供し、最終混合物の作業性に積極的に貢献する。このようにして、セバシン酸ジブチル(DBS)の重量含有量を減らすことができ、組成物中のこの成分の含有量を2重量%~7重量%の好ましい範囲、または3重量%~5重量%の特に好ましい範囲をより容易にもたらすことができる。
【0053】
好ましくは、前記ニトロセルロース安定化成分は、1重量%~5重量%の含有量で存在する。さらにより好ましくは、前記安定化成分は、2.5重量%~3.5重量%の含有量で存在する。上記の重量パーセントでは、長期にわたる最終製品の望ましい安定性を保証するために、安定剤を適切な量で最終組成物に組み込むことが可能である。
【0054】
有利には、組成物は少なくとも1つのフラッシュ低減剤成分を任意で含んでもよい。
好ましくは、提供される場合、前述の少なくとも1つのフラッシュ低減剤成分は、0.5重量%~2.5重量%の含有量で存在する。
【0055】
本発明の好ましい実施形態によれば、前述の少なくとも1つのフラッシュ低減剤成分は、硫酸カリウム(K2SO4)から構成される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、シングルベース推進粉末用組成物は、以下の処方を有する:
【0057】
ニトロセルロース:82.5重量%~98重量%;
【0058】
セバシン酸ジブチル(DBS):1重量%~10重量%;
【0059】
安定化成分(好ましくはエチルセントラライト):1重量%~5重量%;
【0060】
フラッシュ低減剤成分:0重量%~2.5重量%。
【0061】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、シングルベース推進粉末用組成物は、以下の処方を有する:
【0062】
ニトロセルロース:89重量%~94.5重量%;
【0063】
セバシン酸ジブチル(DBS):3重量%~5重量%;
【0064】
安定化成分(好ましくはエチルセントラライト):2.5重量%~3.5重量%;
【0065】
フラッシュ低減剤成分:0重量%~2.5重量%。
【0066】
既に予想されたように、推進粉末用組成物はまた、微量の1または複数の溶媒および水を任意に含んでもよい。溶媒および水の含有量は、組成物の他の成分の合計100部当たりの溶媒部分に関して、組成物の乾燥部分に加えた含有量として計算される。特に、溶媒(水を含む)の合計含有量は、組成物(ニトロセルロース、可塑剤、安定剤、および存在する場合は、フラッシュ低減剤)の乾燥部分100部当たり最大1.5部に達する場合がある。
【実施例】
【0067】
本発明に係る組成物の実施例
推進粉末の組成物は、異なるタイプの銃弾用に製造されてきた。
【0068】
特に、本発明に従って製造されたシングルベース推進粉末の前記組成物は、内径が報告されている4つの異なる火砲弾薬について以下に示されている。
【0069】
組成物のいくつかの実施例について、同じ銃弾に使用されるシングルベース推進粉末の従来の組成物の比較例を提供する。
【0070】
実施例1
第1実施例(実施例1)は、40mmL70内径銃弾用のシングルベース推進粉末の組成物に関する。組成物値は、表1において提供される。
【表1】
【0071】
以下の表2は、同じ銃弾に使用されるシングルベース推進粉末の従来の組成物に関するデータを示す。
【表2】
【0072】
本発明に係る推進粉末の組成物は、最終製品を変更することなく、従来のもの(M1)と同じ生産ラインおよび同じ生産パラメータを使用して生産された。よって、本発明に係る組成物は、従来のものと同様の作業性を有する。
【0073】
本発明に係る組成物の発熱量は、参照(または基準;reference)(M1)、ならびに弾道特性(ballistic characteristic)、特に、推進システムが新しい推進粉末の使用を提供する銃弾によって、口(mouth)での速度および武器で発生する圧力と一致することが見い出された。
【0074】
本発明に係る推進粉末の組成物は、化学的物理的特性および弾道特性に付され、完全に成功した。これにより、本発明に係る推進粉末の組成物が従来のものと同様の性能を保証することを確認された。
【0075】
実施例2
第2実施例(実施例2)は、155mm内径銃弾用のシングルベース推進粉末、特に底部(bottom)推進粉末の組成物に関する。組成物値は、表3において提供される。
【表3】
【0076】
本発明に係る推進粉末の組成物は、化学的物理的特性および弾道特性に付され、完全に成功した。これにより、本発明に係る組成物が適切な作業性を有し、適切な性能を保証することが確認された。
【0077】
実施例3
第3実施例(実施例3)は、100mm内径銃弾用のシングルベース推進粉末の組成物に関する。組成物値は、表4において提供される。
【表4】
【0078】
この場合においても、本発明に係る推進粉末の組成物は、化学的物理的特性および弾道特性評価に付され、完全に成功した。これにより、本発明に係る組成物は、適切な作業性を有し、適切な性能を保証することが確認された。
【0079】
実施例4
第4実施例(実施例4)は、76mmL62内径銃弾用のシングルベース推進粉末の組成物に関する。組成物値は、表5において提供される。
【表5】
【0080】
以下の表6は、同じ銃弾に使用されるシングルベース推進粉末の従来の組成物に関するデータを示す。
【表6】
【0081】
本発明に係る推進粉末の組成物は、最終製品に変更を加えることなく、従来のもの(M6)と同じ生産ラインおよび同じ生産パラメータを使用して生産された。よって、本発明に係る組成物は、従来のものと同様の作業性を有する。
【0082】
本発明に係る組成物の発熱量、ならびに弾道特性は、参照(M6)、特に口での速度および銃弾により発生した圧力と一致することが見出され、その推進系は、本発明に係る推進粉末の使用を提供する。
【0083】
本発明に係る推進粉末の組成物は、化学的物理的特性および弾道特性に付され、完全に成功した。これにより、本発明に係る推進粉末の組成物は、従来のものと同様の性能を保証することが確認された。
【0084】
実施例5
第5実施例(実施例5)は、本発明に従って製造された155mm内径銃弾用のシングルベース推進粉末の組成物に関する。この実施例では、組成物は、フラッシュ低減剤成分を含まない。組成物値は、表7において提供される。
【表7】
【0085】
以下の表8は、同じ銃弾のために使用される従来の組成物のシングルベース推進粉末についてのデータを示す。
【表8】
【0086】
本発明に係る推進粉末の組成物は、最終製品を変更することなく、従来のものと同じ生産ラインおよび同じ生産パラメータで生産される。よって、本発明に係る組成物は、従来のものと同様の作業性を有する。
【0087】
本発明に係る組成物の発熱量ならびに弾道特性は、参照、特に、口での速度および銃弾によって武器において発生する圧力と一致することが見い出され、その推進システムは新しい推進粉末の使用を提供する。
【0088】
本発明に係る推進粉末の組成物は、化学的物理的特性および弾道特性に付され、完全に成功した。これにより、本発明に係る推進粉末の組成物は、従来のものと同様の性能を保証することが確認された。
【0089】
有利には、本発明に係る銃弾用のシングルベース推進粉末の組成物は、シングルベース推進粉末の従来の組成物を生産するために使用されるものと同じ生産プロセスによって得ることができる。
【0090】
特に、溶媒を使用したまたは溶媒を使用しない生産プロセスを使用し得る。
【0091】
特に、実施例1~5およびそれらの比較例の推進粉末の特定の組成物は、溶媒を使用した生産プロセスに従って生産された。
【0092】
より詳細には、そのような推進粉末は、以下の(純粋に非限定的な例として理解されるべき)生産スキームに従って生産された:
【0093】
ステップ1:ニトロセルロースの脱水;
【0094】
ステップ2:組成物の他の成分とのニトロセルロースの混合;
【0095】
ステップ3:押出;
【0096】
ステップ4:溶媒除去;
【0097】
ステップ5:乾燥;
【0098】
ステップ6:均質化。
【0099】
脱水は、ニトロセルロース(NC)を使用可能にするために必要である。事実、輸送するために、NCは約30%の水含有量を有する。相の混合を効率的に実行するために、NCをゼラチン化できる溶媒のみが存在する必要がある。特に、シングルベース粉末の場合、NCのゼラチン化は、エチルエーテルおよびエタノールを65/35の比率で使用して行われる。ゼラチン化は、ニトロセルロースの部分可溶化(partial solubilization)が発生するプロセスであり、巨大分子の超構造(macromolecular superstructure)が生成すると、蒸発が完成し、推進粉末の粒子の最終構造をもたらす。
【0100】
組成物の他の成分とのニトロセルロースの混合(ステップ1)は、成分混合物のゼラチン化を可能にし、その結果としてその作業性能(または加工性能;workability)を可能にするため、溶媒(特に、水、アルコールおよびエーテル)の存在下で行われた。ゼラチン化は発熱現象であるため、水冷系で混合器内の温度を制御する必要がある。
【0101】
押出ステップ(ステップ3)は、用途、すなわち推進粉末への用途を定められた銃弾のタイプに応じて特定の金型を使用して行われる。ダイの速度は、粉末の粒子の最終構造に影響を与えることができる。所望の長さの粉末の粒子を得るには、切断速度を正確に調整する必要がある。ダイ用の金型の設計は、非常に重要であり、正確な供給、金型に伝わる応力、および乾燥後の推進粉末の収縮を考慮する必要がある。このステージでは、可塑剤(DBS)の作用が決定的であり、ダイ・ブッシング(die bushing)を通して推進混合物を押し出すことができるため、最終粒子が設計フェーズで確立された幾何学的特性を維持し、これにその後の使用の弾道特性が関連付けられる。
【0102】
均質化ステージ(ステージ6)
【0103】
ステージ4および5は、生産の様々なステージで使用されるすべての揮発性物質の含有量の最終製品における低減に関連する。これには、最終製品の弾道特性を保持し、包装フェーズ後に製品をより安全にするという二重の目的がある。
【0104】
本発明に係る推進粉末の組成物が溶媒を用いたプロセスにより生産される場合、生産プロセスで使用される微量の溶媒および水が含まれる場合がある。溶媒、すなわち生産プロセスで使用される溶媒および水の合計含有量は、長期間にわたって化学的および性能の安定性を妨げない程度です。特に、溶媒(水を含む)の合計含有量は、組成物の他の成分(ニトロセルロース、可塑剤、安定剤、および存在する場合はフラッシュ低減剤)100部あたり最大1.5重量部に達する場合がある。
【0105】
均質化ステージ(ステージ6)は、生産バッチから始まる粉末のバッチを可能にする。このステージでは、粉末の粒子を混合して粉末のバッチの均質性(または均一性;homogeneity)を確保し、適切な容器に詰める。
【0106】
特に、本発明に係る推進粉末の組成物は、展開(development)の一般的な長手方向を有する押し出された粒子の形態である。好ましくは、そのような粒子には、複数の縦方向の貫通穴が設けられている。
【0107】
本発明の目的は、本発明に係る組成物、特に前述の組成物を有する推進粉末が提供されるという事実によって特徴づけられる銃弾でもある。
【0108】
有利には、前述の銃弾は、40mm~155mmの内径を有する。好ましくは、銃弾は、40mm、76mm、100mmまたは155mmの内径を有する。
【0109】
本発明は、すでに部分的に説明された多くの利点を提供する。
【0110】
本発明に係る銃弾用シングルベース推進粉末のための組成物は、ジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)を含まず、同時に、これら2つの物質を含む従来のシングルベース推進粉末と同様の作業性および性能を保証する。
【0111】
銃弾用シングルベース推進粉末の組成物は、ジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)を含まず、従来のシングルベース推進粉末を得るために使用されるプロセスと同様のプロセスによって達成され得る。したがって、生産コストは、ジニトロトルエン(DNT)およびフタル酸ジブチル(DBP)を含む従来のシングルベース推進粉末に匹敵する。
【0112】
したがって、このように着想された本発明は、前述の目的を達成する。
【0113】
明らかに、その実際の実施において、それはまた、この理由から現在の保護範囲から逸脱することなく、上記のもの以外の形態および構成をとることができる。
【0114】
加えて、すべての詳細は、技術的に同等の要素に置き換えることができ、使用される寸法、形状、および材料は、必要に応じてどのようなものでもよい。