(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】異種金属用接合装置及び異種金属用接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20220111BHJP
B23K 26/323 20140101ALI20220111BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20220111BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20220111BHJP
【FI】
B23K26/21 G
B23K26/323
B23K26/21 W
B23K26/03
B23K26/082
(21)【出願番号】P 2021085726
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2021-05-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512044323
【氏名又は名称】前田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】笠原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】前田 利光
(72)【発明者】
【氏名】村田 憲治
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-330972(JP,A)
【文献】特開2004-322205(JP,A)
【文献】特開2019-000883(JP,A)
【文献】特開2010-105015(JP,A)
【文献】特開2020-062682(JP,A)
【文献】特開2005-169418(JP,A)
【文献】特開2008-023583(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112776348(CN,A)
【文献】特開2004-291090(JP,A)
【文献】特開昭64-018592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/20 - 20/26
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材質の異なる第一金属板及び第二金属板を接合する異種金属用接合装置であって、
前記第一金属板及び前記第二金属板が互いに上下に重なった接合対象部位を有する状態に載置される加工台と、
前記加工台上の上側の前記第一金属板及び下側の前記第二金属板に対して平行な加工進行方向に相対移動可能な取付台と、
前記取付台に取り付けられ、
前記第一金属板の上方から前記第一金属板の前記接合対象部位の上面に向けて垂直下方にレーザ照射を行って前記第一金属板を加熱するレーザ照射部と、
前記取付台に上下動可能に支持され、前記第一金属板における前記レーザ照射部によるレーザ照射により加熱される加熱部位よりも加工進行前側に位置する第一部位に当接した状態で、前記第一金属板を前記第二金属板に押圧して密着させる第一圧接ローラと、
前記取付台に上下動可能に支持され、前記第一金属板における前記加熱部位よりも加工進行後側に位置する第二部位に当接した状態で、前記第一金属板を前記第二金属板に押圧して密着させる第二圧接ローラと、
を備える、異種金属用接合装置。
【請求項2】
前記第一金属板は、銅板であり、
前記レーザ照射部は、グリーンレーザ又はブルーレーザのレーザ照射を行う、請求項
1に記載された異種金属用接合装置。
【請求項3】
材質の異なる第一金属板及び第二金属板を接合する異種金属用接合装置であって、
前記第一金属板及び前記第二金属板が互いに上下に重なった接合対象部位を有する状態に載置される加工台と、
前記加工台上の上側の前記第一金属板及び下側の前記第二金属板に対して平行な加工進行方向に相対移動可能な取付台と、
前記取付台に取り付けられ、前記第一金属板の前記接合対象部位の上面に向けて垂直下方にレーザ照射を行って前記第一金属板を加熱するレーザ照射部と、
前記取付台に上下動可能に支持され、前記第一金属板における前記レーザ照射部によるレーザ照射により加熱される加熱部位よりも加工進行前側に位置する第一部位に当接した状態で、前記第一金属板を前記第二金属板に押圧して密着させる第一圧接ローラと、
前記取付台に上下動可能に支持され、前記第一金属板における前記加熱部位よりも加工進行後側に位置する第二部位に当接した状態で、前記第一金属板を前記第二金属板に押圧して密着させる第二圧接ローラと、
を備え、
前記第一金属板は、銅板であり、
前記レーザ照射部は、グリーンレーザ又はブルーレーザのレーザ照射を行う、異種金属用接合装置。
【請求項4】
前記加工台上の前記第二金属板の前記接合対象部位の下面よりも下方に配置され、前記レーザ照射部による前記第一金属板の加熱時に前記第二金属板の前記接合対象部位を冷却する冷却装置を備える、請求項1
乃至3の何れか一項に記載された異種金属用接合装置。
【請求項5】
前記加熱部位
近傍の面の温度分布をモニタリングする温度モニタ部と、
前記温度モニタ部によりモニタリングされた前記
温度分布に基づいて、前記冷却装置による冷却をフィードバック制御する冷却制御部と、
を備える、請求項
4に記載された異種金属用接合装置。
【請求項6】
前記加熱部位
近傍の面の温度分布をモニタリングする温度モニタ部と、
前記温度モニタ部によりモニタリングされた前記
温度分布に基づいて、前記レーザ照射部によるレーザ照射の出力をフィードバック制御する出力制御部と、
を備える、請求項1乃至
5の何れか一項に記載された異種金属用接合装置。
【請求項7】
前記接合対象部位は、帯状に延びており、
前記レーザ照射部は、
前記取付台の前記加工進行方向への移動に合わせて、照射位置が前記接合対象部位の帯幅方向に変化するようにレーザ照射をウィービング又はウォブリングさせる照射駆動部を有する、請求項1乃至
6の何れか一項に記載された異種金属用接合装置。
【請求項8】
材質の異なる第一金属板及び第二金属板を接合させる異種金属用接合方法であって、
加工台に前記第一金属板及び前記第二金属板が互いに上下に重なった接合対象部位を有する状態に載置された状態で、レーザ照射部が取り付けられた取付台を前記加工台上の上側の前記第一金属板及び下側の前記第二金属板に対して平行な加工進行方向に相対移動させながら、前記レーザ照射部を用いて
前記第一金属板の上方から前記第一金属板の前記接合対象部位の上面に向けて垂直下方にレーザ照射を行って前記第一金属板を加熱すると共に、前記取付台に上下動可能に支持された第一圧接ローラ及び第二圧接ローラを、前記第一金属板におけるレーザ照射により加熱される加熱部位の加工進行前後に位置する第一部位及び第二部位に当接させた状態で、前記第一金属板を前記第二金属板に押圧して密着させる、異種金属用接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属用接合装置及び異種金属用接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅及びアルミニウムなどの材質の異なる第一金属板及び第二金属板を接合する異種金属用接合装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された異種金属用接合装置は、二つの金属板が載置される加工台と、加工台上の二つの金属板に対して板面に平行な加工進行方向に相対移動可能な取付台と、を備えている。加工台には、第一金属板及び第二金属板が第一金属板が上側にかつ第二金属板が下側にそれぞれ配置された状態で載置される。
【0003】
また、異種金属用接合装置は、取付台に取り付けられたレーザ照射部と、取付台に上下動可能に支持された圧接ローラと、を備えている。レーザ照射部は、取付台上の第一金属板の上面に向けて斜め上方からレーザ照射を行って第一金属板を加熱する。また、圧接ローラは、第一金属板におけるレーザ照射部によるレーザ照射により加熱される加熱部位よりも加工進行前後のうちの一方側の部位のみに当接しており、第一金属板における加熱により溶融した部位を下側の第二金属板に押圧して密着させる。かかる構成においては、第一金属板の加熱後に圧接ローラにより第一金属板と第二金属板とが密着すると、第一金属板に加わった熱が第二金属板に伝達されて第一金属板と第二金属板とが溶融して、両金属板が互いに接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された異種金属用接合装置では、上記の如く、レーザ照射部が第一金属板に対して斜め上方からレーザ照射を行うので、レーザ照射部から第一金属板への入熱効率が悪く、エネルギロスが大きい。また、この異種金属用接合装置では、上記の如く、圧接ローラが、第一金属板におけるレーザ照射部によるレーザ照射により加熱される加熱部位よりも加工進行前後のうちの一方側の部位のみに当接しているだけであるので、第一金属板の加熱部位での第二金属板との密着性が低く、第一金属板から第二金属板への伝熱効率が低い。従って、材質の異なる二つの金属板同士を適切に接合させるうえでエネルギ効率が悪かった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、材質の異なる二つの金属板同士の接合をエネルギ効率良く実現することが可能な異種金属用接合装置及び異種金属用接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、材質の異なる第一金属板及び第二金属板を接合する異種金属用接合装置であって、前記第一金属板及び前記第二金属板が互いに上下に重なった接合対象部位を有する状態に載置される加工台と、前記加工台上の上側の前記第一金属板及び下側の前記第二金属板に対して平行な加工進行方向に相対移動可能な取付台と、前記取付台に取り付けられ、前記第一金属板の前記接合対象部位の上面に向けて垂直下方にレーザ照射を行って前記第一金属板を加熱するレーザ照射部と、前記取付台に上下動可能に支持され、前記第一金属板における前記レーザ照射部によるレーザ照射により加熱される加熱部位よりも加工進行前側に位置する第一部位に当接した状態で、前記第一金属板を前記第二金属板に押圧して密着させる第一圧接ローラと、前記取付台に上下動可能に支持され、前記第一金属板における前記加熱部位よりも加工進行後側に位置する第二部位に当接した状態で、前記第一金属板を前記第二金属板に押圧して密着させる第二圧接ローラと、を備える、異種金属用接合装置である。
【0008】
また、本発明の一態様は、材質の異なる第一金属板及び第二金属板を接合させる異種金属用接合方法であって、加工台に前記第一金属板及び前記第二金属板が互いに上下に重なった接合対象部位を有する状態に載置された状態で、レーザ照射部が取り付けられた取付台を前記加工台上の上側の前記第一金属板及び下側の前記第二金属板に対して平行な加工進行方向に相対移動させながら、前記レーザ照射部を用いて前記第一金属板の前記接合対象部位の上面に向けて垂直下方にレーザ照射を行って前記第一金属板を加熱すると共に、前記取付台に上下動可能に支持された第一圧接ローラ及び第二圧接ローラを、前記第一金属板におけるレーザ照射により加熱される加熱部位の加工進行前後に位置する第一部位及び第二部位に当接させた状態で、前記第一金属板を前記第二金属板に押圧して密着させる、異種金属用接合方法である。
【0009】
これらの構成によれば、レーザ光が第一金属板の接合対象部位の上面にその上面に直交する垂直上方から入射されるので、レーザ光が第一金属板の接合対象部位の上面にその上面に対する斜め上方から入射される構成に比べて、エネルギ効率良くレーザ照射により第一金属板を加熱することができる。また、第一金属板が二つの圧接ローラにより加熱部位を挟んで加工進行方向X前後で下方へ加圧されて第二金属板に密着されるので、第一金属板へのレーザ照射時に第一金属板の加熱部位での第二金属板との密着性を安定して確保することができ、第一金属板から第二金属板への伝熱効率を上げることができる。従って、材質の異なる二つの金属板同士の接合をエネルギ効率良く実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る異種金属用接合装置の側面図である。
【
図2】実施形態の異種金属用接合装置を加工進行方向前側から見た際の正面図である。
【
図3】実施形態の異種金属用接合装置が備えるレーザ照射部によるレーザ照射により二つの異材金属板が接合される状態を表した図である。
【
図4】実施形態の異種金属用接合装置における冷却装置を含む構成図である。
【
図5】実施形態の異種金属用接合装置においてレーザ照射部がレーザ照射を行った金属板表面上の照射位置の軌跡の一例を表した図である。
【
図6】実施形態の異種金属用接合装置においてレーザ照射部がレーザ照射を行った金属板表面上の照射位置の軌跡の他の一例を表した図である。
【
図7】実施形態の異種金属用接合装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図7を用いて、本発明に係る異種金属用接合装置及び異種金属用接合方法の具体的な実施の形態について説明する。
【0012】
一実施形態の異種金属用接合装置1は、材質の異なる二つの金属板11,12同士を接合する装置である。この接合は、二つの金属板11,12が上下方向に重なった状態でレーザ照射とロール加圧との実行により実現されるレーザロール接合である。異種金属用接合装置1は、上板である金属板11に照射されたレーザ光による入熱を、加圧ローラにより金属板11に密着された下板である金属板12に伝熱させることにより、二つの金属板11,12を局部的に溶融・凝固させて接合する。尚、本明細書において、「上」及び「下」は、地面を基準にした方向を示すものであるとする。
【0013】
二つの金属板11,12のうち金属板11は接合時に上側に配置される上板であり、金属板12は接合時に下側に配置される下板である。以下、金属板11を第一金属板11と、金属板12を第二金属板12と、それぞれ称す。第一金属板11及び第二金属板12はそれぞれ、例えば平板であり、所定の厚さを有している。第一金属板11は、銅により形成されており、例えば無酸素銅(C1020)である。第一金属板11は、例えば0.5mmの板厚を有しており、例えば50mm×100mmの大きさを有している。第二金属板12は、例えばアルミニウムにより形成されており、例えばA1050である。第二金属板12は、例えば1.0mmの板厚を有しており、例えば50mm×100mmの大きさを有している。
【0014】
異種金属用接合装置1は、
図1、
図2、及び
図3に示す如く、加工台20と、取付台30と、レーザ照射部40と、ロール圧接部50と、を備えている。
【0015】
加工台20は、第一金属板11及び第二金属板12が載置される座部である。加工台20には、第一金属板11及び第二金属板12が互いに上下に重なった接合対象部位11a,12aを有する状態に載置される。接合対象部位11a,12aは、例えば5mm程度の幅で帯状に延びている。第一金属板11及び第二金属板12は、治具(図示せず)を用いて加工台20に固定される。
【0016】
取付台30は、レーザ照射部40及びロール圧接部50が取り付けられる部位である。取付台30は、加工台20の上面ひいては第一金属板11及び第二金属板12に対して平行な方向(すなわち、水平方向)に移動可能に構成されている。取付台30は、第一金属板11と第二金属板12との接合が開始される開始箇所からその接合が終了される終了箇所まで水平方向に移動する。以下、この移動方向を加工進行方向Xと称す。
【0017】
レーザ照射部40は、加工台20に載置された第一金属板11及び第二金属板12のうち第一金属板11に向けてレーザ照射を行う部位である。レーザ照射部40は、第一金属板11の上方から第一金属板11の上面にレーザ照射を行って第一金属板11を直接的に加熱する。レーザ照射部40によるレーザ照射は、レーザ光が第一金属板11に到達するときの幅、レーザ光の周波数、上記の加工進行方向Xに対するレーザ光の軌跡などを変えることにより、第一金属板11に与える入熱量を調整することが可能である。レーザ照射部40による第一金属板11の加熱は、第一金属板11が溶融して第二金属板12との接合が可能となるように行われる。レーザ照射部40は、取付台30に取り付けられている。レーザ照射部40は、レーザ発振器41と、伝送路42と、加工ヘッド43と、を有している。
【0018】
レーザ発振器41は、溶接用のレーザ光を発振する装置である。レーザ発振器41は、例えば、高出力化が可能なCO2レーザやYAGレーザ,ファイバーレーザ,半導体レーザなどを用いて構成されている。レーザ発振器41が発振するレーザ光は、第一金属板11での吸収率の高い波長を有している。具体的には、このレーザ光は、銅製の第一金属板11における波長と吸収率との関係に適した、グリーンレーザと呼ばれる波長が515nm近傍であるレーザ光又はブルーレーザと呼ばれる波長が450nm近傍であるレーザ光である。グリーンレーザに対する第一金属板11での吸収率は、35%~40%であって、近赤外のファイバーレーザに対する第一金属板11での吸収率に比べて8倍程度高い。
【0019】
レーザ発振器41で発振した溶接用レーザ光は、伝送路42を通じて加工ヘッド43内の光学系へ導かれる。伝送路42での伝送は、CO2レーザでは、ミラーによる折返しで行われる。また、伝送路42での伝送は、YAGレーザでは、ミラーによる折返し以外に、自在に湾曲可能な光ファイバによる伝送で行われることもある。伝送路42は、例えば光ファイバなどである。
【0020】
伝送路42の出口側は、加工ヘッド43の上端に接続されている。加工ヘッド43は、伝送路42から伝送されてきたレーザ光を第一金属板11の接合対象部位11aに導く装置である。加工ヘッド43は、上下方向に延在する筒状に形成された筐体からなる。加工ヘッド43は、塵や埃などから各種レンズを保護する保護ガラス43a,43b、伝送路42から放射状に広がりながら進行するレーザ光を平行に進行するレーザ光に変換するコリメートレンズ43c、ダイクロイックミラーを透過したレーザ光を第一金属板11の接合対象部位11aに集光するフォーカスレンズ43dなどを内蔵している。尚、加工ヘッド43は、レーザ発振器41から照射される上記波長のレーザ光のみを透過するダイクロイックミラーを含んでもよい。
【0021】
加工ヘッド43は、フォーカスレンズ43dから出射したレーザ光を加工ヘッド43の下端から鉛直下方へ照射し、レーザ発振器41の生成したレーザ光を適切なサイズに集光して第一金属板11の接合対象部位11aの上面に導く。レーザ照射部40は、加工台20上で上下に重ねられた第一金属板11及び第二金属板12のうち上側の第一金属板11に対する鉛直上方から、その第一金属板11の接合対象部位11aの上面に向けて鉛直下方にレーザ照射を行う。
【0022】
加工ヘッド43は、レーザ光を鉛直下方へ照射するものであるが、そのレーザ光の照射方向を鉛直方向を角度ゼロとして所定角度内で変化させて加工台20上の金属板11,12に対するレーザ光の照射位置を変化させることが可能である。尚、レーザ光が照射される「鉛直下方」とは、地面に対して直交する方向を含み、上記の所定角度の範囲内をも含む概念である。加工ヘッド43は、内蔵するミラーなどを駆動モータなどで角度調整することにより、加工台20上の金属板11,12に対するレーザ光の照射位置を変化させる。尚、加工ヘッド43は、取付台30に対して上下方向に移動可能に支持されていてよく更には水平軸を中心にして揺動可能に支持されていてもよい。
【0023】
加工ヘッド43は、取付台30が加工台20に対して加工進行方向Xに沿って直線的に移動する状態で、レーザ光を鉛直下方へ連続的に照射しつつ、その照射方向を加工台20に対する取付台30の加工進行方向Xに対して略直交する方向に沿って往復させて揺動させることにより、
図5に示す如く、第一金属板11の接合対象部位11aの上面におけるレーザ光の照射位置を正弦波状に変化させる(ウィービング)。
【0024】
尚、上記の正弦波状に代えて、加工ヘッド43は、取付台30が加工台20に対して加工進行方向Xに沿って直線的に移動する状態で、レーザ光を鉛直下方へ照射しつつ、その照射方向を鉛直方向に対して所定角度を一定に保って円旋回させることにより、
図6に示す如く、第一金属板11の接合対象部位11aの上面におけるレーザ光の照射位置を螺旋状に変化させることとしてもよい(ウォブリング)。
【0025】
第一金属板11がレーザ照射部40から照射されたレーザ光を受光すると、その第一金属板11におけるレーザ光の受光部位が加熱される。以下、この加熱された受光部位を加熱部位Hと称す。この加熱部位Hは、加工台20に対する取付台30の移動に伴って、第一金属板11の接合対象部位11aの上面において正弦波状又は螺旋状に進行する。
【0026】
レーザ光による金属板11,12同士の接合は、取付台30が加工台20に対して加工進行方向Xに直線的に移動しつつ加工ヘッド43からのレーザ光の照射方向を上記の如く変化させることにより金属板11,12に対するレーザ光の照射位置を変化させながら進行する。
【0027】
ロール圧接部50は、圧接ローラを加工台20上の第一金属板11に当接させて下動させることにより第一金属板11を第二金属板12に押圧して密着させる部位である。ロール圧接部50は、二つの圧接ローラ51,52と、二つの駆動装置53,54と、を有している。
【0028】
圧接ローラ51,52はそれぞれ、第一金属板11に当接する部位である。圧接ローラ51,52はそれぞれ、取付台30に上下動可能に支持されている。圧接ローラ51,52はそれぞれ、第一金属板11との当接が滑ることなく加工進行方向Xに進行するように水平軸回りに回転可能に構成されている。圧接ローラ51,52はそれぞれ、例えばSUS304などのステンレス鋼製のローラである。二つの圧接ローラ51,52は、第一金属板11におけるレーザ照射部40によるレーザ光の照射により加熱される加熱部位Hを加工進行方向Xで挟んでその第一金属板11に当接するように配置されている。圧接ローラ51,52はそれぞれ、第一金属板11の接合対象部位11aの幅方向中心に接するように配置されている。
【0029】
圧接ローラ51は、第一金属板11の接合対象部位11aにおけるレーザ光が照射される加熱部位Hよりも加工進行方向Xの前側に位置する第一部位A(
図1参照)に当接している。圧接ローラ52は、第一金属板11の接合対象部位11aにおける上記の加熱部位Hよりも加工進行方向Xの後側に位置する第二部位B(
図1参照)に当接している。以下、圧接ローラ51を第一圧接ローラ51と、圧接ローラ52を第二圧接ローラ52と、それぞれ称す。
【0030】
第一部位Aは、レーザ照射部40によるレーザ光の照射により既に加熱された側の部位である。第一部位Aは、上記の加熱部位Hから所定距離(例えば20mm)範囲内に位置している。また、第二部位Bは、レーザ照射部40によるレーザ光の照射により未だ加熱されていない側の部位であって今後の加工進行に伴って加熱される予定の部位である。第二部位Bは、上記の加熱部位Hから所定距離(例えば20mm)範囲内に位置している。
【0031】
尚、上記の所定距離は、例えば10mm~20mmであることが好ましく、例えば15mmであることが更に好ましい。また、第一部位Aと加熱部位Hとの所定距離は、レーザ照射部40から照射されるレーザ光を第一圧接ローラ51が遮ることが無いように設定されており、第一圧接ローラ51のローラ径に応じた距離に定められていてよい。また、第二部位Bと加熱部位Hとの所定距離は、レーザ照射部40から照射されるレーザ光を第二圧接ローラ52が遮ることが無いように設定されており、第二圧接ローラ52のローラ径に応じた距離に定められていてよい。
【0032】
駆動装置53,54はそれぞれ、圧接ローラ51,52が第一金属板11に付与する加圧力を発生させる装置である。駆動装置53,54はそれぞれ、エアシリンダなどにより構成されている。駆動装置53,54はそれぞれ、取付台30に取り付けられている。駆動装置53は、エアシリンダの下部に第一圧接ローラ51を保持しており、第一圧接ローラ51を上下動させることが可能である。駆動装置54は、エアシリンダの下部に第二圧接ローラ52を保持しており、第二圧接ローラ52を上下動させることが可能である。
【0033】
駆動装置53は、エア圧を変化させることにより、第一圧接ローラ51から第一圧接ローラ51が当接する第一金属板11の第一部位Aに付与される加圧力を調整することができる。駆動装置54は、エア圧を変化させることにより、第二圧接ローラ52から第二圧接ローラ52が当接する第一金属板11の第二部位Bに付与される加圧力を調整することができる。圧接ローラ51,52が第一金属板11に付与する加圧力は、例えば0.47MPaである。
【0034】
異種金属用接合装置1は、
図1、
図2及び
図4に示す如く、冷却装置60を備えている。冷却装置60は、レーザ照射部40による第一金属板11の加熱時に第二金属板12の接合対象部位12aを冷却する装置である。冷却装置60は、加工台20上の第二金属板12の接合対象部位12aの下面よりも下方に配置されている。冷却装置60は、加工台20の内部に形成された冷却通路61を有している。冷却通路61は、例えば、加工進行方向Xに沿って平行に延びる部位を有している。冷却装置60は、冷却通路61に水や空気,CO2ガスなどの冷媒が流通することにより第二金属板12の接合対象部位12aを冷却する。
【0035】
異種金属用接合装置1は、
図7に示す如く、制御装置70を備えている。制御装置70は、加工台20上の第一金属板11と第二金属板12とを接合させるうえで必要な各種制御を行う装置である。制御装置70は、加工台20に対する取付台30の移動速度すなわち第一金属板11と第二金属板12との加工進行方向Xへの加工速度の制御、レーザ照射部40のレーザ発振器41によるレーザ光の出力制御、加工ヘッド43によるレーザ光の照射位置制御、冷却装置60による冷却能力の制御などを行う。制御装置70は、温度モニタ部71と、ロードセル部72と、コントローラ73と、を有している。
【0036】
温度モニタ部71は、第一金属板11におけるレーザ照射部40によるレーザ光の照射位置近傍の温度をモニタリングする部位である。温度モニタ部71は、温度モニタリングカメラなどにより構成されている。この温度モニタリングカメラは、レーザ照射部40により照射されるレーザ光と同軸で第一金属板11におけるレーザ光の照射位置近傍を撮影するカメラであってもよいし、或いは、ロール圧接部50の側方からその照射位置近傍を撮影するカメラであってもよい。温度モニタ部71は、第一金属板11におけるレーザ光の照射位置近傍の温度を電気信号に変換して出力する。
【0037】
ロードセル部72は、第一金属板11に当接した圧接ローラ51,52の加圧力をモニタリングする部位である。ロードセル部72は、第一圧接ローラ51側の駆動装置53及び第二圧接ローラ52側の駆動装置54それぞれに設けられている。各ロードセル部72は、駆動装置53,54のエアシリンダの上部に取り付けられている。ロードセル部72は、圧接ローラ51,52の加圧力を電気信号に変換して出力する。
【0038】
コントローラ73は、温度モニタ部71及びロードセル部72に電気的に接続されている。コントローラ73は、温度モニタ部71からの電気信号に基づいて第一金属板11におけるレーザ光の照射位置近傍の温度を検出すると共に、ロードセル部72からの電気信号に基づいて圧接ローラ51,52の加圧力を検出する。コントローラ73は、例えば、第一金属板11におけるレーザ光の照射位置近傍の温度に基づいて、レーザ照射部40により照射されるレーザ光の出力強度を制御し、第一金属板11と第二金属板12との加工進行方向Xへの加工速度を制御し、或いは冷却装置60による冷却能力を制御する。また、コントローラ73は、圧接ローラ51,52の加圧力に基づいて、第一金属板11と第二金属板12とが最適な加圧力で密着されるように駆動装置53,54のエア圧を制御する。
【0039】
次に、図を用いて、異種金属用接合装置1の動作について説明する。
【0040】
まず、二つの金属板11,12が互いに上下に重なった接合対象部位11a,12aを有する状態で加工台20の上面に載置される。次に、二つの金属板11,12が加工台20に載置された状態で、取付台30上のレーザ照射部40が上側の第一金属板11の接合対象部位11aの上面に向けてレーザ光の照射を行う。このレーザ照射は、取付台30が加工台20に対して加工進行方向Xに移動しながら、レーザ照射が行われる。この取付台30の加工進行方向Xの移動速度は、第一金属板11へのレーザ照射によって金属板11,12同士の接合界面に金属間化合物が多量にかつランダムに生成されることがなく第二金属板12の母材部分から破断が生じて金属板11,12同士の接合面積が均一で比較的大きくその接合強度が高くなる、例えば10mm/sに設定されている。
【0041】
上記のレーザ照射は、ロール圧接部50の第一圧接ローラ51及び第二圧接ローラ52により第一金属板11における加熱部位Hの加工進行方向X前後の第一部位A及び第二部位Bがそれぞれ下方へ加圧されて第一金属板11と第二金属板12とが互いに密着した状態で行われる。尚、第二金属板12における第一金属板11との接合界面(表面)の酸化膜を除去するため、その接合界面部分にアルミニウムろう付け用フラックスを塗布することとしてもよい。また、金属板11,12同士の接合過程での酸化防止及びプルーム除去を図るため、シールドガスとしてアルゴンガスを流すこととしてもよい。
【0042】
上記の如くレーザ照射が行われると、第一金属板11のレーザ光が照射される加熱部位Hが所定温度(例えば1100℃)まで急速に加熱して溶融すると共に、第一金属板11の入熱がその第一金属板11に密着する第二金属板12に伝熱されることで第二金属板12における第一金属板11との接合面側が溶融する。これにより、第一金属板11及び第二金属板12が塑性変形して接合される。
【0043】
このように、異種金属用接合装置1において、レーザ照射部40は、加工台20上で上下に重ねられた第一金属板11及び第二金属板12のうち上側の第一金属板11の真上からその第一金属板11の接合対象部位11aの上面に向けて鉛直下方にレーザ照射を行う。この構成では、レーザ光が第一金属板11の上面にその上面に直交する鉛直上方から入射される。このため、異種金属用接合装置1によれば、レーザ光が第一金属板11の上面にその上面に対する斜め上方から入射される構成に比べて、エネルギ効率良くレーザ照射により第一金属板11を加熱することができる。
【0044】
ここで、仮にレーザ照射部40が照射するレーザ光が近赤外の波長(例えば1000nm近傍)を有するものとすると、近赤外のレーザ波長に対する銅の反射率は90%を超えるため、銅が溶融し難くなります。この際、銅を溶融させるためには、照射初期に上記の高い反射率を克服するための非常に高いパワー密度をレーザ光に照射することが必要である。一方、銅が溶融し始めると、近赤外のレーザ波長に対する銅の反射率が急落するので、溶融開始後に上記した照射初期の高いパワー密度のまま照射が継続すると、銅が蒸発して大きな気孔や孔が発生し他部材との溶接が困難になるおそれがある。
【0045】
これに対して、異種金属用接合装置1において、レーザ照射部40が照射するレーザ光は、そのレーザ光が照射される銅製の第一金属板11での吸収率が高い波長(具体的には、グリーンレーザやブルーレーザ)を有している。このレーザ波長に対する銅の吸収率は、近赤外のレーザ波長に対するものに比して高い。従って、異種金属用接合装置1によれば、第一金属板11を溶融させるために照射するレーザ光のパワー密度を下げることができ、高いパワー密度のレーザ光を照射することは不要であると共に、第一金属板11の表面にレーザ光の反射率を下げ吸収率を上げるためのカーボンブラック等の吸収剤を塗布することは不要である。このため、第一金属板11でのレーザ光の初期吸収の問題や過熱を生じさせることなく、更には、第一金属板11の表面に吸収剤を塗布することなく、安定して二つの金属板11,12同士の接合プロセスを実現することができる。
【0046】
また、ロール圧接部50は、第一金属板11におけるレーザ照射部40によるレーザ照射により加熱される加熱部位Hを挟んで加工進行方向X前後に当接する二つの圧接ローラ51,52を有している。第一圧接ローラ51は、加熱部位Hよりも加工進行方向Xの前側の第一部位Aに当接しており、第一金属板11を加圧して第二金属板12に密着させている。また、第二圧接ローラ52は、加熱部位Hよりも加工進行方向Xの後側の第二部位Bに当接しており、第一金属板11を加圧して第二金属板12に密着させている。
【0047】
この構成においては、第一金属板11が二つの圧接ローラ51,52により加熱部位Hを挟んで加工進行方向X前後で下方へ加圧されて第二金属板12に密着される。このため、第一金属板11がレーザ照射される際にその第一金属板11の加熱部位Hが第二金属板12から浮いた状態になることは抑制され、第一金属板11の加熱部位Hでの第二金属板12との密着性が安定して確保される。従って、第一金属板11から第二金属板12への伝熱効率を上げ、材質の異なる二つの金属板11,12同士の接合をエネルギ効率良く実現することができる。
【0048】
また、異種金属用接合装置1は、第一金属板11及び第二金属板12の接合対象部位11a,12aを冷却する冷却装置60を備えている。第一金属板11の接合対象部位11aがレーザ照射により加熱されかつ第二金属板12の接合対象部位12aがその第一金属板11からの伝熱により加熱されるが、冷却装置60は、その第二金属板12を下面側から冷却する。
【0049】
上記の冷却装置60による冷却によれば、第二金属板12の上面と下面との温度勾配が大きくなり、第二金属板12に入った熱の内部拡散が効果的に行われ、第一金属板11と第二金属板12との接合界面の温度が緊急的に低下される。このため、異種金属用接合装置1によれば、第一金属板11と第二金属板12との接合界面にそれらの金属板11,12に比べて非常に脆い金属間化合物が生成されるのが抑制され、その接合界面が局所的に脆くなるのが抑制されるので、異種金属同士の第一金属板11と第二金属板12との接合強度を十分に確保することが可能である。
【0050】
また、異種金属用接合装置1は、冷却装置60による冷却能力を制御する制御装置70を備えている。制御装置70は、第一金属板11におけるレーザ照射部40によるレーザ光の照射位置近傍の温度をモニタリングする温度モニタ部71と、温度モニタ部71のモニタリングした温度に基づいて冷却装置60による冷却をフィードバック制御するコントローラ73と、を有している。温度モニタ部71のモニタリングする温度は、第一金属板11のレーザ光が照射される上面の温度分布であり、第一金属板11と第二金属板12との接合界面の温度は、上記した第一金属板11の上面温度に相関している。コントローラ73は、温度モニタ部71のモニタリングした温度に基づいて間接的に第一金属板11と第二金属板12との接合界面の温度を推定する。
【0051】
コントローラ73は、推定した第一金属板11と第二金属板12との接合界面の温度に基づいて、冷却装置60の駆動をフィードバック制御する。具体的には、その接合界面の温度が、脆い金属間化合物の生成が抑えられるような温度になるように冷却装置60での冷媒能力を変化させる。例えば、温度が所望温度に比して高いときは冷却通路61での冷媒速度が高くなるように或いは冷媒の流通量が多くなるようにフィードバック制御を行う。
【0052】
従って、異種金属用接合装置1によれば、冷却装置60を用いて第一金属板11と第二金属板12との接合界面の温度を適正な温度とすることができるので、異種金属同士の第一金属板11と第二金属板12との接合を高い接合強度で実現することができる。
【0053】
尚、コントローラ73は、冷却装置60の駆動に代えて或いはその駆動と共に、温度モニタ部71のモニタリングした温度に基づいて、レーザ照射部40によるレーザ照射の出力をフィードバック制御することとしてもよい。具体的には、そのモニタリングした温度が、第一金属板11を十分に溶融しつつ上記の接合界面において脆い金属間化合物の生成が抑えられるような温度になるようにレーザ照射の出力強度などを変化させることとしてもよい。例えば、温度が所望温度に比して高いときはレーザ照射の出力強度が抑えられるようにレーザ照射部40でのフィードバック制御を行う。
【0054】
従って、異種金属用接合装置1によれば、レーザ照射部40の出力制御により第一金属板11と第二金属板12との接合界面の温度を適正な温度とすることができるので、異種金属同士の第一金属板11と第二金属板12との接合を高い接合強度で実現することができる。
【0055】
更に、制御装置70は、第一金属板11に当接した圧接ローラ51,52の加圧力をモニタリングするロードセル部72を有している。コントローラ73は、ロードセル部72のモニタリングした圧接ローラ51,52の加圧力に基づいて、駆動装置53,54による圧接ローラ51,52が第一金属板11に付与する加圧力をフィードバック制御する。例えば、モニタリングした加圧力が所望加圧力に達していないときは、加圧力が増えるように駆動装置53,54でのフィードバック制御を行う。
【0056】
従って、異種金属用接合装置1によれば、二つの金属板11,12同士を接合するうえで実行されるロール圧接部50によるロール加圧を適正な値に調整することができるので、異種金属同士の第一金属板11と第二金属板12との接合を高い接合強度で実現することができる。
【0057】
尚、上記の実施形態においては、コントローラ73が冷却装置60による第二金属板12の冷却を制御することが特許請求の範囲に記載した「冷却制御部」に、コントローラ73がレーザ照射部40によるレーザ照射の出力を制御することが特許請求の範囲に記載した「出力制御部」に、加工ヘッド43が、取付台30が加工台20に対して加工進行方向Xに沿って直線的に移動する状態で、第一金属板11の接合対象部位11aの上面におけるレーザ光の照射位置を正弦波状又は螺旋状に変化させることが特許請求の範囲に記載した「照射駆動部」に、それぞれ相当している。
【0058】
ところで、上記の実施形態においては、レーザロール接合の対象である材質の異なる二つの金属板11,12が、銅製の第一金属板11とアルミニウム製の第二金属板12とである。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、レーザロール接合の対象である材質の異なる二つの金属板11,12として、低炭素鋼とアルミニウム合金との組み合わせ、低炭素鋼と銅との組み合わせ、低炭素鋼とチタンとの組み合わせ、チタンとアルミニウム合金との組み合わせなどに適用することとしてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態においては、レーザ照射部40及びロール圧接部50が取り付けられる取付台30が、第一金属板11及び第二金属板12が載置される加工台20に対して水平方向に移動可能である。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、取付台30の水平方向の移動は、加工台20ひいては第一金属板11及び第二金属板12に対して相対移動するものであればよく、取付台30が移動するものでなく、加工台20が移動するものであってもよい。
【0060】
また、上記の実施形態においては、レーザ照射部40によるレーザ照射が直線的な加工進行方向Xに連続して総じて直線的に行われて、金属板11,12同士の接合溶接が連続して総じて直線的に行われる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、レーザ照射の加工進行方向Xが曲線的なものであり、そのレーザ照射がその加工進行方向Xに連続して総じて曲線的に行われ、金属板11,12同士の接合溶接が連続して総じて曲線的に行われるものに適用されてもよい。また、レーザ照射が直線的や曲線的な加工進行方向Xに間欠的に行われ、金属板11,12同士の接合溶接が間欠的に行われるものに適用されてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態においては、「上」及び「下」が地面を基準にした方向を示すものであるものとし、レーザ照射部40が、加工台20に上下に重ねて載置された金属板11,12のうち上側の第一金属板11の上面に向けて鉛直下方にレーザ光を照射する。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、「上」及び「下」が加工台20の載置面を基準にした方向を示すものであってよく、加工台20の載置面が上向きである場合だけでなく、下向きや横向き,斜め向きなどの何れである場合にも適用されてよい。この変形形態の構成では、レーザ照射部40は、載置面が所定向きである加工台20に上下に重ねて載置された金属板11,12のうち上側の第一金属板11の上面に向けて垂直下方にレーザ光を照射するものとなる。
【0062】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:異種金属用接合装置、11:第一金属板、11a:接合対象部位、12:第二金属板、12a:接合対象部位、20:加工台、30:取付台、40:レーザ照射部、41:レーザ発振器、43:加工ヘッド、50:ロール圧接部、51:第一圧接ローラ、52:第二圧接ローラ、53,54:駆動装置、60:冷却装置、61:冷却通路、70:制御装置、71:温度モニタ部、72:ロードセル部、73:コントローラ。
【要約】
【課題】材質の異なる二つの金属板同士の接合をエネルギ効率良く実現すること。
【解決手段】異種金属用接合装置は、材質の異なる第一金属板及び第二金属板が互いに上下に重なった接合対象部位を有する状態に載置される加工台と、加工台上の上側の第一金属板及び下側の第二金属板に対して平行な加工進行方向に移動可能な取付台と、取付台に取り付けられ、第一金属板の接合対象部位の上面に向けて垂直下方にレーザ照射を行って第一金属板を加熱するレーザ照射部と、それぞれ、取付台に上下動可能に支持され、第一金属板を第二金属板に押圧して密着させる第一圧接ローラ及び第二圧接ローラと、を備える。第一圧接ローラは、第一金属板におけるレーザ照射部によるレーザ照射により加熱される加熱部位よりも加工進行前側に位置する第一部位に当接する。第二圧接ローラは、第一金属板における加熱部位よりも加工進行後側に位置する第二部位に当接する。
【選択図】
図1