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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】食器洗浄装置および食器洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/24 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A47L15/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2015097304
(22)【出願日】2015-05-12
(65)【公開番号】P2016209393
(43)【公開日】2016-12-15
【審査請求日】2018-02-20
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 富和
【合議体】
【審判長】佐々木 芳枝
【審判官】小川 恭司
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-111117(JP,A)
【文献】特開2011-206092(JP,A)
【文献】特開昭62-82933(JP,A)
【文献】特開2008-237773(JP,A)
【文献】特開2010-63806(JP,A)
【文献】特開平10-117988(JP,A)
【文献】実開昭59-61765(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも浸漬液中に浸漬をしながら洗浄液体の噴射による荒洗浄工程および洗浄液体の噴射による本洗浄工程を行い、食器かごに水平方向に重ね合わせて収納した複数の食器を搬送させながら洗浄を行う食器洗浄装置において、
前記食器かごに収納された食器を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記食器かごに収納された食器を、浸漬液中に部分的に浸漬する浸漬槽と、
前記浸漬槽の浸漬液中に浸漬されつつ前記搬送装置により搬送される前記食器かごに収納された食器に対し、洗浄液体を噴射する噴射装置と、を備え、
前記浸漬槽は、前記本洗浄工程より前工程に位置する前記荒洗浄工程内に設けられ、浸漬液を貯水可能であるように水平方向の所定の基準面から当該浸漬槽の底部に向けて窪んだ形状を有し、
前記搬送装置の一部が、前記浸漬槽の内部に入るように前記基準面から前記底部に向かって窪んだ凹状部を備え、
前記搬送装置は、前記所定の基準面および前記凹状部に沿って配置され、前記食器かごが載置されるベルト状の搬送コンベアを含み、
前記噴射装置が、前記凹状部の上方であり且つ搬送される食器の上方に配置され、一直線状に配列され洗浄液体を噴射する複数のノズルを含み、
前記一直線状に配列された複数のノズルから噴射された洗浄液体が前記食器かご内の隣合う食器と食器の間に入り込み、浸漬されていない部分の食器を洗浄液体で洗浄し、かつ浸漬されている部分の食器を洗浄液体が生じさせる浸漬液中の流水によって洗浄し、
前記浸漬槽の底部であって前記複数のノズルの下方付近には、前記底部の下方に設けられたタンクストレーナに通じる排出口が設けられ、前記食器から落とされたゴミが、前記排出口を通って前記タンクストレーナで回収される、
食器洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食器洗浄装置であって、
前記噴射装置の複数のノズルは、一直線状に配置された長手方向が、搬送装置による搬送方向と略平行となるように配置している、食器洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の食器洗浄装置であって、
前記噴射装置の複数のノズルは、前記搬送装置の搬送方向に対して略直交する方向に移動可能としている、食器洗浄装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の食器洗浄装置であって、
前記噴射装置の複数のノズルは、ノズル基板の長手方向に沿って一直線状に配列され、
前記ノズル基板は、前記搬送装置の搬送方向に対して前記ノズルの配列が略平行となるように配置され、且つ、前記搬送装置の搬送方向と略直交する方向に当該ノズル基板が複数個配置されたノズル基板列を構成している、食器洗浄装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の食器洗浄装置であって、
前記凹状部は、食器を前記所定の基準面から前記底部の一部を構成する平面部に向かって運ぶ第1傾斜部と、食器を前記平面部から前記所定の基準面に向かって運ぶ第2傾斜部とを含み、洗浄液体を噴射する前記噴射装置の複数のノズルが、前記平面部および前記第2傾斜部の上方に設けられる、食器洗浄装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の食器洗浄装置を用いた食器洗浄方法であって、
複数の食器を重ね合わせた状態で前記食器かごに収納し、前記食器かご中の食器の主たる被洗浄面が、前記搬送装置による搬送方向に略平行であって、かつ前記噴射装置の複数のノズルが一直線状に配列された長手方向に対し略平行である状態で、前記食器かごを搬送しつつ食器を洗浄する、食器洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄装置および食器洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食器類を大量に洗浄する食器洗浄装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された食器の洗浄方法および食器の収納器具には、水平方向に重ねた複数の食器を、当該食器の重ねた方向に沿ってノズルから洗浄水を順次噴射させ、接触した互いに隣り合う食器を離して離間させ、離間した間隔に流入した洗浄水の流動により複数の食器の洗浄を順次行い、食器の汚れを確実にかつ効率的に除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-173258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、食器に洗浄水(液体)を吹き付けて食器に付着している汚れの多くを落とすことが可能であるが、こびりついた汚れまで落とすことができないという問題があった。
【0005】
本発明は、食器に付着した汚れを確実に除去する食器洗浄装置および食器洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の食器洗浄装置は、食器を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される食器を、浸漬液中に浸漬する浸漬槽と、前記浸漬槽の浸漬液中に浸漬されつつ前記搬送装置により搬送される食器に対し、洗浄液体を噴射する噴射装置と、を備える。
【0007】
本発明の食器洗浄装置の一態様として例えば、前記搬送装置の少なくとも一部が、前記浸漬槽の内部に入るように所定の基準面から前記浸漬槽の底部に向かって窪んだ凹状部を備える。
【0008】
本発明の食器洗浄装置の一態様として例えば、前記搬送装置は、前記所定の基準面および前記凹状部に沿って配置され、食器が載置されるベルト状の搬送コンベアを含み、前記噴射装置が前記凹状部の上方に配置される。
【0009】
本発明の食器洗浄装置の一態様として例えば、前記凹状部は、食器を前記所定の基準面から前記底部の一部を構成する平面部に向かって運ぶ第1傾斜部と、食器を前記平面部から前記所定の基準面に向かって運ぶ第2傾斜部とを含み、洗浄液体を噴射する前記噴射装置のノズルが、前記平面部および前記第2傾斜部の上方に設けられる。
【0010】
本発明の食器洗浄方法は、前記食器洗浄装置を用いた食器洗浄方法であって、複数の食器を重ね合わせた状態で食器かごに収納し、前記食器かご中の食器の主たる被洗浄面が、前記搬送装置による搬送方向に略平行であって、かつ前記噴射装置からの洗浄液体の噴射方向に対し略平行である状態で、前記食器かごを搬送しつつ食器を洗浄する。
【0011】
本発明の食器洗浄方法の一態様として例えば、前記食器かごに収納された食器が、前記浸漬槽中の浸漬液中に部分的に浸漬されつつ搬送される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の食器洗浄装置は、食器を浸漬させた状態で噴射装置から洗浄液体を吹き付けているため、食器にこびりついている汚れをふやかしながら洗浄して洗い落とすことができる。また、食器を浸漬させることにより、浮力の力で重ね合わされた食器と食器との間の間隔を開け易くなるため、洗浄液体が食器の表面に当たり易くなり、無理な力を入れることなく汚れ落ちが向上する。更に、食器下方に流れ落ちた汚れが食器から離れやすくなり、汚れの分離がスムーズとなる。また、本発明の食器洗浄方法により、食器の搬送方向に対して洗浄液体の噴射方向が一致した方法で食器の主たる被洗浄面を洗浄するため確実に食器の汚れ洗浄が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る食器洗浄装置の一例を示す横断面模式図。
図2】本発明に係る食器洗浄装置の一例を示す正面図。
図3】本発明に係る食器洗浄装置の一例を示す図2の右側面図。
図4】本発明に係る食器洗浄装置の一例を示す図2の平面図。
図5】(a)本発明に係る食器洗浄装置の食器かごおよび食器の収納状態の一例を示す斜視図、(b)食器の食器かご内の配列の一例を示す概念図、(c)円形食器の洗浄状態を示す模式図。
図6】本発明に係る食器洗浄装置のノズル基板の斜視図。
図7】本発明に係る食器洗浄装置の食器搬送方向に対するノズル基板とノズルの配列の一例を示す概念図。
図8】本発明に係る食器洗浄装置の荒洗浄工程の具体的一例を示す横断面模式図。
図9図8の平面透視図。
図10】本発明に係る食器洗浄装置のノズル基板の移動例であり、カムが0°の時の状態を示す側方断面模式図。
図11図10に続くカム45°の時の状態を示す側方断面模式図。
図12図11に続くカム90°の時の状態を示す側方断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る食器洗浄装置および食器洗浄方法の好適な実施形態を、図1図12に基づいて詳述する。
【0015】
図1は食器洗浄装置の一例を示す断面模式図、図2は食器洗浄装置の正面図、図3図2の右側面図、図4図2の平面図である。図1図4を用いて食器洗浄装置を詳述する。
【0016】
本実施形態の食器洗浄装置1は、搬送装置10と、浸漬槽20と、噴射装置30と、洗浄室40と、機械室50とを備える。食器洗浄装置1は、食器かご2に複数重ね合わせた食器3を搬送装置10で搬送し、搬送しながら浸漬槽20に食器3を浸漬させ、噴射装置30により食器3を洗浄する。
【0017】
搬送装置10は、正面から見た食器洗浄装置1内の左右方向を横断する搬送コンベア11と、搬送コンベア11を所定方向に回転させ図示しない駆動部の駆動により回転するドライブプーリ12と、ドライブプーリ12に対応した搬送コンベア11の他端に設けられたテールローラ13とを備えている。尚、ヘッドドライブ式を説明したが、ドライブプーリと駆動部が独立したセンタードライブ式でも良い。本実施形態では、ベルト状の搬送コンベア11を一例としているが、搬送コンベア11は、食器3を収納する食器かご2を載置して所定方向に搬送するものであり、ベルトコンベア、チェーンコンベア、ローラーコンベア等を採用しても良い。
【0018】
浸漬槽20は、食器かご2に収納された食器3を浸漬液Sに部分的または全体的に浸漬するために荒洗浄工程100内に設けられ、底部21と、凹状部22とを備える。また、凹状部22は、搬送コンベア11の少なくとも一部が、浸漬槽20の内部に入るように所定の基準面23(図中破線参照)から底部21に向かって窪んだ形状をなし、底部21の一部を構成する平面部22aと、平面部22aに向かって食器3を運ぶ第1傾斜部22bと、食器3を平面部22aから所定の基準面23に向かって食器3を運ぶ第2傾斜部22cとを有する。
【0019】
そして、搬送装置10の搬送コンベア11は、所定の基準面23および凹状部22に沿って配置されている。また、平面部22aの下部には、浸漬槽20から排水されてきた洗浄液体に含まれたゴミを回収するタンクストレーナ25と、洗浄水回収槽26とが設けられている。
【0020】
噴射装置30は、搬送コンベア11で搬送される食器3の上部に設けられる洗浄室40内に配置されている。また、噴射装置30は、複数のノズル基板31と、ノズル基板31を支持する支持管32と、支持管32を固定する第1送水管33とを備えている。ノズル基板31は、食器かご2の搬送方向(図7の矢印A)と略直交する方向に3個配置されており、これらの3個のノズル基板31が、食器かご2の搬送方向に沿って2列並行するように配列されている。そして、この2列に配列している複数のノズル基板31は、支持管32を介して、第1送水管33に千鳥状になるよう固定されている。噴射装置30の詳細は後述する。また、機械室50内には、ノズル基板31を左右方向に駆動させる後述するノズル駆動部60が配置されている。
【0021】
洗浄室40と機械室50とは天板4で仕切られ、洗浄室40内で発生する湯気でノズル駆動部60が支障をきたさないように洗浄室40と機械室50とを遮蔽している。
【0022】
また、本実施形態の食器洗浄装置1は、図面右側から左側に向かって順に、食器3を効率よく洗浄させるために食器3を浸漬槽20に浸漬させながら噴射装置30により洗浄液体を噴射する荒洗浄工程100、荒洗浄工程100の後、食器3に洗浄液体を噴射する本洗浄工程101、本洗浄工程101の後、更に食器3に洗浄液体を噴射するすすぎ洗浄工程102、そして、すすぎ洗浄工程102の後、食器3の上方および下方から上水を噴射する噴射装置30の噴射部30aが設けられた仕上げ洗浄工程103が配列されている。
【0023】
各工程内にはノズル基板31を備えた噴射装置30が複数配置されているが、本実施形態に限定されることなく、ノズル基板31の数や配列位置等は洗浄効率等を考慮して適宜選択することが可能である。
【0024】
当該工程中に食器洗浄用の洗剤を使用しても良い。洗剤は荒洗浄工程100や本洗浄工程101で主に利用される。また、荒洗浄工程100、本洗浄工程101、すすぎ洗浄工程102で使用している洗浄液体は通常温湯が使用され、工程順に食器3の殺菌を兼ねて順次洗浄液体温度が高くなることが望ましい。
【0025】
食器洗浄装置1は、図2に示す通り略長方体形状をなす筐体5で全体が画体され、長手方向の一端に食器3を食器洗浄装置1内に投入するための投入口6が設けられ、他端に食器3を食器洗浄装置1内から取り出す取り出し口7が設けられている。食器洗浄装置1内を移動する搬送コンベア11は、食器洗浄装置1の長手方向に沿って配置され、上述した4つの工程100、101、102、103に食器3を順次搬送する。
【0026】
図5は、食器3の収納状態を示す一例で、(a)は食器かご2と収納される食器3の概念図、(b)は食器かご2と食器3の配置を説明する概念図、(c)は円形状の食器3の一例を示す概念図である。
【0027】
本実施形態の食器かご2は、上方が開口された略四角形状の容器であり、2列に配列され水平方向に重なり合う状態で複数の食器3を収納する(図5(a)参照)。また食器かご2は、収納した複数の食器3の重ね方向を、食器かご2の搬送方向に対して略直交する方向に向けるようにしている。また、食器3は、食器かご2の端面に対して所定の間隔dを保持して食器かご2内に収納されている(図5(b)参照)。間隔dを設けることにより、食器かご2に収納された複数の食器3が搬送コンベア11に搬送されている間に、噴射装置30のノズル基板31から噴射される洗浄液体が重ねられて隣接する食器3と食器3との間を離間させながら順番に入り込んで洗浄効率を向上させている。尚、食器3を2列に配列したことを説明したが1列でも3列でも良く、配列に限定されない。
【0028】
また、図5(c)に示されるように食器3が円形の場合、食器かご2内に設けられた、表面に樹脂加工が施され平滑面とした丸棒からなる複数の支持棒2aで食器3の縁部が摺動自在に支持される。このため、ノズル基板31から噴射される洗浄液体の力により食器3が搬送方向(矢印A)に移動しながら断続的に回転(矢印B)をする。即ち、洗浄液体は食器3の一端から当たり、徐々に食器3の中心に、そして他端に当たる。食器3が回転することにより、洗浄液体の当接位置が変化して食器3に付着した汚れを万遍なく洗浄することができる。尚、回転が可能であれば円形状に限定されない。
【0029】
図6は、ノズル基板31の一例を示す斜視図である。ノズル基板31は先端が細くなる断面略台形状の台形体であり、先端に洗浄液体が噴き出す複数のノズル31aが設けられている。ノズル基板31の内部では、小径で直線状の長い穴が複数形成され、それぞれの穴とノズル31aとを連通させていることにより、それぞれのノズル31aから噴出される洗浄液体は、広がりを抑えた状態で噴出されるようにしている。本実施形態では、ノズル31aはノズル基板31の長手方向に沿って一直線状に配列されているが、この配列に限定されない。
【0030】
図7は、ノズル基板31と食器3との配置状態を示す概念図である。食器3の搬送方向と略直交する方向に複数個を配置したものを搬送方向に沿って2列並行して配置し、搬送方向の上流側を一方のノズル基板列31A、搬送方向の下流側を他方のノズル基板列31Bとしている。一方のノズル基板列31A、他方のノズル基板列31Bは、食器かご2に収納された複数の食器3の搬送方向(矢印A)に対して、ノズル31aの配列が平行となるよう搬送コンベア11の上方に複数千鳥状に複数配置されている。即ち、洗浄液体が万遍なく食器3に当たるように一方のノズル基板列31Aおよび他方のノズル基板列31Bにあるそれぞれのノズル基板31が、食器3の搬送方向に沿って異なる位置に配置されている。また、ノズル基板31は、個々の食器3が効率よく洗浄できるよう、食器3の搬送方向に対して略直交方向に駆動自在(図面矢印C方向)に設けられている。
【0031】
ノズル31aの配列が、食器3の搬送方向に対して略平行であり、それぞれのノズル基板31の動きが食器3の搬送方向に対して略直交方向であることにより、重なり合った食器3のうち、隣接し合う食器と食器の間を順に離間するように洗浄液体が食器3の底部にまで噴射され、汚れ落ちが良くなる。また、図5(b)で説明したように、食器かご2の端面に対して所定の間隔dを保持しているため、隣接する食器3と食器3とが洗浄液体の水圧で離間しやすくなっている。そして、ノズル基板31が千鳥状に配列されており、さらには一方のノズル基板列31Aが食器3の搬送方向に対して移動する範囲と、他方のノズル基板列31Bが食器3の搬送方向に対して移動する範囲とが異なる範囲で設定されていることから、個々の食器3を万遍なく洗浄することができる。
【0032】
図8は、荒洗浄工程100における食器3の洗浄状態を示す横断面模式図、図9は、図8の平面透視図である。
【0033】
食器洗浄装置1内に搬入された食器3は食器かご2内に収納され、搬送コンベア11に載置されて最初に荒洗浄工程100に搬送される。荒洗浄工程100領域では、噴射装置30が凹状部22の上方に配置され、洗浄液体が各食器3に万遍なく噴射させるため、洗浄液体を噴射するノズル基板31のノズル31aが、平面部22aおよび第2傾斜部22cの上方に設けられている。
【0034】
なお、本実施形態では第1傾斜部22bの上方にノズル基板31のノズル31aを設けていないが、平面部22aおよび第2傾斜部22cと同様に設けて、各食器3に洗浄液体を噴射させるようにしてもよい。
【0035】
噴射装置30は、機械室50内に設けられている食器3の搬送方向(矢印A)に対し略直交する方向(幅方向)に延びて設けられている梁51に対して取り付けられている。機械室50内に配置されているノズル駆動部60は、ノズル基板31を移動させる移動機構61と、移動機構61を駆動させる図示しないモータ等の駆動部とを備え、移動機構61は、駆動部からの駆動を伝達する回転軸62と、回転軸62を中心として回転軸62の回転に連動して回転する断面略楕円形状のカム(楕円カム)63と、カム63の当接により移動するカム当接板64とを有している。そして、回転軸62は梁51の上部に回動自在に取り付けられている。なお、ノズル駆動部60において、駆動部および回転軸62は、1つのカムを回転させるだけでなく、複数のカムを同時に回転させるようにしてもよい。
【0036】
荒洗浄工程100内に設けられる浸漬槽20には、例えば洗浄する食器3を約半分浸漬できる程度の深さまで、浸漬液Sが凹状部22に貯水されている。搬送コンベア11に搬送された食器かご2内に収納された食器3は、凹状部22の浸漬液S中に浸漬して、食器3にこびり付いた汚れをふやかすようにしている。食器3は、浸漬された状態で食器3の上方に位置し、噴射装置30のノズル基板31に設けられた複数のノズル31aから洗浄液体が吹き付けられる。浸漬槽20の底部21におけるノズル基板31の下方付近には、搬送コンベア11の幅方向に沿ってスリット形状の排出口22dが複数形成されている。ノズル31aから食器3に向けて噴射された洗浄液体は、食器3に付着していた汚れを食器3から洗い落とすとともに、食器3より下方、つまり浸漬槽20の底部21へと押し流すようにしている。浸漬槽20内で食器3から落とされたゴミは、浸漬槽20全体へ拡散してしまう前に、排出口22dを通ってタンクストレーナ25で回収され、ゴミが除去された洗浄液体が洗浄水回収槽26に貯水される。その後、洗浄液体は図示せぬポンプを介して、ノズル基板31へと圧送され、循環使用される。
【0037】
投入口6から投入された食器3は、搬送コンベア11で水平方向に搬送されるが、第1傾斜部22bで傾きながら浸漬槽20に貯水された浸漬液S中に浸漬し、平面部22aで再び水平方向に移動する。その際、食器かご2中の食器3の主たる被洗浄面が搬送コンベア11による搬送方向に対して略平行となり、かつノズル基板31のノズル31aからの洗浄液体の噴射方向に対し略平行である状態で、食器3が浸漬液S中に部分的に浸漬されつつ食器かご2を搬送し、食器3が洗浄される。そして、浸漬状態での洗浄が完了した食器3を収納した食器かご2は、第2傾斜部22cを傾きながらノズル基板31のノズル31aからの洗浄液体で食器3が洗浄された後、所定の基準面23で再び水平方向に搬送され、本洗浄工程101に移動する。
【0038】
荒洗浄工程100では、投入口6から食器洗浄装置1内に投入された複数の食器3が収納された食器かご2を、搬送コンベア11に載せて搬送させながら食器かご2内の食器3に洗浄液体を吹き付けると共に、食器3を浸漬槽20の浸漬液S中に浸漬させて洗浄を行う。
【0039】
食器3を浸漬させた状態で噴射装置30から洗浄液体を吹き付けることにより、食器3にこびりついている汚れをふやかしながら洗浄して洗い落とすことができる。また、食器3を浸漬させることにより、浮力の力で食器3と食器3との間の間隔を開け易くなるため、浸漬されていない部分では洗浄液体が食器3の表面に当たり易くなり、浸漬されている部分では、洗浄液体が直接当たらなくても洗浄液体の噴射によって浸漬液S中に激しく流水が生じて無理な力を入れることなく汚れ落ちが向上する。更に、食器3下方である浸漬液S中に流れ落ちた汚れが食器3から離れやすくなり、汚れの分離がスムーズとなる。尚、食器3が円形であれば回転させることが可能となり、食器3全体が浸漬液S中に浸漬状態となることができる。
【0040】
平面部22aで食器かご2が水平方向に搬送されているときに食器3に洗浄液体が当たる位置と、第2傾斜部22cで傾斜して搬送されているときに食器3に洗浄液体が当たる位置とが異なるため、食器3の汚れを落とす効率が向上する。また、水平方向に搬送されながら洗浄が行われたとき、食器3に付着していた汚れが食器3の下部に残されていたとしても、食器3と食器3の間を流れる洗浄液体の方向が変化することで、汚れが流れ落ちやすくなる。
【0041】
また、浸漬液Sの深さを食器3の大きさや形状に合わせて調整可能としても良い。食器3の種類毎に適切な浸漬状態を確保でき、どの食器3にも同じ様に洗浄効果を得ることが可能となる。
【0042】
上述のノズル駆動部60を含み、噴射装置30のノズル基板31の配列、搬送コンベア11との所定の基準面23との位置関係は、本洗浄工程101およびすすぎ洗浄工程102においても同様であるが、ノズル基板31の数は特に限定されない。
【0043】
図10~12は、投入口6側から見た食器洗浄装置1の横幅方向における噴射装置30のノズル基板31の移動状態を示す側方断面模式図で、図10が右側位置(カム0°)、図11が中央位置(カム45°)、図12が左側位置(カム90°)である。図10図12を用いてノズル基板31の移動状態の具体的な一例を詳述する。なお、図10~12で描かれている噴射装置30のノズル基板31は、左端のノズル基板31から一つ置きに示された3個のノズル基板31からなる一方のノズル基板列31Aと、左端より2番目のノズル基板31から一つ置きに示された3個のノズル基板31からなる他方のノズル基板列31Bの食器3の搬送方向に沿って2列に並行しているものを示している(図7参照)。
【0044】
噴射装置30は、上述のノズル駆動部60、天板4、ノズル基板31、ノズル31a、支持管32および第1送水管33に加えて、天板4の下部に形成される凹状天板4aと、梁51に摺動自在に支持され第1送水管33と一体化されているスライド軸34と、第1送水管33の一端に固定される摺動弁35と、第1送水管33と連結し摺動弁35内を摺動する第2送水管36と、一端が洗浄水回収槽26と連結し他端が第2送水管36と連結する第3送水管37とを有している。また、スライド軸34は天板4よりも下方に位置しているため、天板4の一部を凹状形状とした凹状天板4aが形成されている。
【0045】
移動機構61の回転軸62およびカム63の回転に合わせてカム63の外表面と当接しながら水平方向に移動するカム当接板64は第1送水管33と一体化され、カム当接板64に連動して第1送水管33は水平方向に移動する。また、第1送水管33と摺動弁35との接合部分と接合部分とは反対側の第1送水管33の先端部分には、第1送水管33とスライド軸34とを一体連結する一対の支持板38が設けられている。そして、スライド軸34はカム当接板64の下方に形成された貫通孔(図示せず)、梁51に固定された一対の軸受部4bおよび凹状天板4aに形成された貫通孔(図示せず)内を水平方向に移動する。即ち、カム当接板64、スライド軸34および第1送水管33は一体化され、第1送水管33またはカム当接板64の動きとそれぞれが連動している。
【0046】
カム63が水平方向(カム0°)に位置づけられている(図10参照)。カム63の先端Fとカム当接板64が当接状態にある。洗浄水回収槽26内のろ過された洗浄液体が図示しないポンプにより第3送水管37から第2送水管36を通って第1送水管33に圧送され、一方のノズル基板列31Aおよび他方のノズル基板列31Bとして並列されている複数のノズル基板31のノズル31aから噴射されつつ、第1送水管33内において洗浄液体は常に第1送水管33の先端を水圧で常に押圧している(図10矢印P参照)。
【0047】
そして、カム当接板64当接していたカム63の先端Fが上昇する方向へとカム63が回転すると、先端が水圧で押圧されている第1送水管33から当該押圧力が第1送水管33と一体化されたカム当接板64に伝達される。そして、カム63の回転に伴ってカム当接板64がカム63の側面を当接しながら食器3の搬送方向と略直交する方向である図面左側に移動(図11の矢印G参照)し、それに連動してスライド軸34およびノズル基板31が左側に移動する(図11参照:カム45°)。
【0048】
図12に示すように、カム63の長手方向が略垂直方向に位置づけられたとき(図10に対してカム90°)、第1送水管33およびノズル基板31は、最左側に移動する。図10から図12までの動きでは、カム63は水圧により回転しているため回転軸62の駆動を行うモータ等の駆動部への負荷が低減し、消費電力量も節約できる。
【0049】
そして、駆動部によりカム63はさらに先端Fが下降する方向に回転し、先端Fとは逆側のもう一方の先端側が上昇してカム当接板64と当接しながらカム当接板64を図面右側に移動させると共に第1送水管33、スライド軸34およびノズル基板31を右側に移動させる。このとき駆動部には水圧によって左側に押圧している第1送水管33を右側に向けて移動させるための負荷が加わることとなる。カム63の回転によりカム当接板64は食器3の搬送方向と略直交する方向で移動し(図面左右方向)、同時にノズル基板31もカム当接板64と同一方向に移動する。
【0050】
尚、本実施形態では、カム63が反時計回りに回転しているが、時計回りでも良い。
【0051】
上述の動きにより、ノズル基板31が食器3の搬送方向に対して略直交する方向に移動しながら、食器かご2内に収納され重ねられた複数の食器3と食器3との間に洗浄液体が順番に入り込んで食器3の洗浄を確実に行うことができる。
【0052】
また、複数の配列された各ノズル基板31の動きは同一であっても異なっていても良い。例えば、図12において、手前側に配列されている一方のノズル基板列31Aのノズル基板31Sと奥側に配列されている他方のノズル基板列31Bのノズル基板31Tとが食器3の搬送方向と略直交する方向へ移動できる範囲内において、オーバーラップしても良い。ノズル基板31の移動範囲、移動順序については、本実施形態に限定されることなく洗浄効率を加味して適宜選択可能である。
【0053】
また、第1送水管33の水圧を利用するカム63の回転を説明したが、モータ等の駆動部によるカム63の回転を利用して、ノズル基板31を移動させることも可能である。本実施形態の荒洗浄工程100においては、平面部22aの上方に位置する噴射装置30と第2傾斜部22cの上方に位置する噴射装置30が、同一の駆動部および回転軸62を共用している。例えば平面部22aの上方に位置するカム63が90°に位置し(図12参照)、第2傾斜部22cの上方に位置するカム63が0°に位置した状態(図10参照)から、双方のカムを回転させると、平面部22aの上方に位置するノズル基板31が駆動部によって移動し、第2傾斜部22cの上方に位置するノズル基板31が駆動部と第1送水管33の水圧の利用によって移動するようにしている。ノズル基板31の移動手段は、各工程内の噴射装置30等の配置関係等で選択可能である。
【0054】
尚、移動機構61のカム63が、回転することによって複数のノズル基板31は食器3の搬送方向に対して略直交する方向、つまり、搬送コンベア11の幅方向に移動することとなるが、両端に位置するそれぞれのノズル基板31は、搬送コンベア11の側部近傍まで移動することによって、搬送コンベア11の全域に洗浄液体を噴射することが可能である。したがって、食器かご2を搬送コンベア11の幅方向においてどこに載せて搬送させても食器かご2内に収納された複数の食器3は、隣接し合う食器3と食器3との間を離間させて洗浄することができる。
【0055】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る食器洗浄装置および食器洗浄方法は、食器の汚れを確実に洗浄する食器洗浄装置分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 食器洗浄装置
2 食器かご
3 食器
4 天板
4a 凹状天板
10 搬送装置
11 搬送コンベア
20 浸漬槽
21 底部
22 凹状部
22a 平面部
22b 第1傾斜部
22c 第2傾斜部
23 所定の基準面
30 噴射装置
31 ノズル基板
31a ノズル
32 支持管
33 第1送水管
34 スライド軸
35 摺動弁
40 洗浄室
50 機械室
51 梁
60 ノズル駆動部
61 移動機構
62 回転軸
63 カム
64 カム当接板
100 荒洗浄工程
101 本洗浄工程
102 すすぎ洗浄工程
103 仕上げ洗浄工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12