(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
A63B 22/14 20060101AFI20220111BHJP
A63B 22/16 20060101ALI20220111BHJP
A63B 22/18 20060101ALI20220111BHJP
A63B 23/04 20060101ALI20220111BHJP
A63B 22/04 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A63B22/14
A63B22/16
A63B22/18
A63B23/04 C
A63B22/04
(21)【出願番号】P 2017135849
(22)【出願日】2017-07-12
【審査請求日】2020-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】511177282
【氏名又は名称】セノー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(72)【発明者】
【氏名】稲泉 克行
(72)【発明者】
【氏名】木下 昭二
(72)【発明者】
【氏名】馬場 岳志
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3162160(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0014612(US,A1)
【文献】特開2002-200194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0113215(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に配置されるベースフレームと、
このベースフレームから垂直に起立しており、かつ垂直な回転中心軸線を有するように、上記ベースフレームに回転自在に支持された中央支柱と、
この中央支柱の両側に、当該中央支柱を含めた三者が互いに平行となるように対称に配置された一対の側部支柱と、
それぞれ水平な回転中心軸線に沿って、両端部が上記側部支柱の各々にそれぞれ回動可能に連結されるとともに中央部が上記中央支柱に回動可能に支持されており、上記一対の側部支柱がそれぞれ垂直姿勢を保ったまま上下に昇降可能となる平行リンク機構を構成する複数のリンクプレートと、
上記一対の側部支柱の上端にそれぞれ配置され、かつ垂直な回転中心軸線を有するように上記側部支柱にそれぞれ回転自在に支持された一対の足乗せプレートと、
を備えてなるトレーニング器具。
【請求項2】
利用者が把持する手摺りをさらに備え、この手摺りは、上記ベースフレームの端部から立ち上がって設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のトレーニング器具。
【請求項3】
上記リンクプレートは、相対的に上方に位置する上部リンクプレートと、相対的に下方に位置する下部リンクプレートと、を含み、
少なくとも上部リンクプレートは、上記側部支柱との連結点および上記中央支柱との連結点の高さ位置に比較してこれら連結点の間の中間部が下方に窪んだW字形状をなしている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のトレーニング器具。
【請求項4】
上記ベースフレームは、上記側部支柱の下端が当接する円環状のストッパを備えている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のトレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、いわゆるツイスト運動とバランス運動と足踏み運動の各々の要素を複合した形の運動を行うことができる新規なトレーニング器具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、利用者が両足を一緒に乗せて立つことができる比較的大きな円盤状部材を不安定に支持し、利用者がバランスを取りながら動くことでバランス感覚の向上や筋力の向上を図るようにしたトレーニング器具が開示されている。
【0003】
特許文献4,5には、左右の足が個々に回転動作し得るように左右一対の回転台を備え、利用者がこれら一対の回転台の上に立って下半身を捻るツイスト運動が行えるように構成したトレーニング器具が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献6,7には、踏段昇降に類似した足踏み運動を行うステッパーにおいて、左右の足乗せ台を個々に回転可能に支持し、足踏み運動に加えて下半身を捻るツイスト運動が行えるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-37974号公報
【文献】特開2008-61942号公報
【文献】特表昭63-502081号公報
【文献】実用新案登録第3138597号公報
【文献】実用新案登録第3165558号公報
【文献】実用新案登録第3160386号公報
【文献】実用新案登録第3113950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3のようなトレーニング器具では、両足を揃えたままバランス運動を行うものであるため、骨盤や股関節周囲の運動を効率よく行うことはできない。
【0007】
また、特許文献4,5のトレーニング器具では、両足(踵からつま先部分)が同一平面上に位置したままツイスト運動を行うこととなるので、骨盤や股関節が基本的に水平面に沿って動くに過ぎず、やはり骨盤や股関節周囲の運動を効率よく行うことはできない。
【0008】
また、特許文献6,7のトレーニング器具では、足踏み運動をしながらツイスト運動を行うことができるが、バランス運動を同時に行えるものではない。また、ツイスト運動についても、例えば、体全体が正面を向いた状態で左右の足乗せ台が個々に回転するに過ぎないので、体全体を大きく捻るようなツイスト運動を行えず、いわゆる体幹の強化を効果的に行うことができない。
【0009】
このように、従来のトレーニング器具においては、多忙な現代人が限られた時間で効果的な運動を行う上で、なお改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るトレーニング器具は、
床面上に配置されるベースフレームと、
このベースフレームから垂直に起立しており、かつ垂直な回転中心軸線を有するように、上記ベースフレームに回転自在に支持された中央支柱と、
この中央支柱の両側に、当該中央支柱を含めた三者が互いに平行となるように対称に配置された一対の側部支柱と、
それぞれ水平な回転中心軸線に沿って、両端部が上記側部支柱の各々にそれぞれ回動可能に連結されるとともに中央部が上記中央支柱に回動可能に支持されており、上記一対の側部支柱がそれぞれ垂直姿勢を保ったまま上下に昇降可能となる平行リンク機構を構成する複数のリンクプレートと、
上記一対の側部支柱の上端にそれぞれ配置され、かつ垂直な回転中心軸線を有するように上記側部支柱にそれぞれ回転自在に支持された一対の足乗せプレートと、
を備えて構成されている。
【0011】
運動を行う利用者は、一対の足乗せプレートの上に左右の足を乗せて起立し、バランスを取りながら運動を行う。例えば、一対の足乗せプレートは、平行リンク機構により、水平な回転中心軸線を中心としていわゆるシーソーのように上下に自在に動く。また、個々の足乗せプレートは、側部支柱の上で垂直な回転中心軸線を中心として自在に回転する。さらに、両足を乗せている一対の足乗せプレートが、中央支柱における垂直な回転中心軸線を中心として自在に回転する。つまり、一対の足乗せプレートは、個々に自在に自転し、かつ中央支柱を中心として自在に公転する。従って、利用者が一対の足乗せプレートの上に起立したときに、上下方向や回転方向について非常に不安定な状態となり、ここで利用者がバランスを取るように動作するだけで、必要な筋力の強化やバランス感覚の強化がなされる。
【0012】
そして、典型的な一つの運動としては、上半身を特定の方向へ正対させたまま、両足を交互に前後(厳密には中央支柱を中心とした円弧に沿った方向)に動かしながら両足のバランスを取って踏み段昇降のように上下動させることで、骨盤や股関節周囲を3次元的に捻ることができる。例えば、右足を前に出しながら左足よりも高くなるようにし、次に、左足を前に出しながら右足よりも高くなるようにする、といった動作をバランスを取りながら繰り返すことで、骨盤や股関節周囲が3次元的に大きく捻られ、股関節等の可動域が大きくなるとともに、体幹の強化が図れ、かつ中殿筋を含む股関節周囲ないし下半身の筋肉が強化される。
【0013】
すなわち、垂直な回転中心軸線と水平な回転中心軸線とを組み合わせた自由度の高いトレーニング器具により、ツイスト運動とバランス運動と足踏み運動の各要素を複合した形の効果的な運動が可能となり、いわゆる足腰および体幹の強化に関し短時間で効果的なトレーニングを行うことができる。
【0014】
本発明の好ましい一つの態様では、トレーニング器具は、利用者が把持する手摺りをさらに備えており、この手摺りは、上記ベースフレームの端部から立ち上がって設けられている。
【0015】
これにより、利用者は手摺りを把持して下半身をより大きく動かすことが可能となる。また、初心者も安心して利用できることとなる。
【0016】
また、本発明の好ましい一つの態様では、上記リンクプレートは、相対的に上方に位置する上部リンクプレートと、相対的に下方に位置する下部リンクプレートと、を含み、
少なくとも上部リンクプレートは、上記側部支柱との連結点および上記中央支柱との連結点の高さ位置に比較してこれら連結点の間の中間部が下方に窪んだW字形状をなしている。
【0017】
このように上部リンクプレートがW字形状をなすことで、一方の足乗せプレートが最下点に位置したときの上部リンクプレートと足乗せプレートとの干渉が抑制される。そのため、足乗せプレートの上下ストロークを大きく確保することができるとともに、最下点に位置する足乗せプレートと上部リンクプレートとの間に十分な間隔を得ることができ、例えば靴が挟み込まれたりすることを抑制できる。
【0018】
また好ましくは、上記ベースフレームは、上記側部支柱の下端が当接する円環状のストッパを備えている。すなわち、足乗せプレートを支持した側部支柱は、中央支柱を中心として回転(公転)するが、このように円環状のストッパを備えることで、側部支柱がどのような位置にあっても、最下点位置でストッパに規制される。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、ツイスト運動とバランス運動と足踏み運動の各要素を複合した形の効果的な運動が可能となり、いわゆる足腰および体幹の強化に関し短時間で効果的なトレーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図1とは異なる方向から見たトレーニング器具の斜視図。
【
図3】この実施例のトレーニング器具の分解斜視図。
【
図6】トレーニング器具に利用者が立った状態を示す説明図。
【
図7】トレーニング器具を用いた運動の一例を示す説明図。
【
図8】トレーニング器具を用いた運動の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1~
図3は、この発明に係るトレーニング器具の一実施例を示している。このトレーニング器具は、トレーニングジム等の床面上に配置されるベースフレーム1を備える。ベースフレーム1は、偏平な断面形状を有する金属管をH字型に結合したもので、互いに平行な直線状をなすフロントビーム2およびリヤビーム3と、フロントビーム2の中央部とリヤビーム3の中央部とを互いに連結する直線状の中央ビーム4と、から構成されている。ベースフレーム1の一端部となる上記フロントビーム2には、手摺り5が垂直に立ち上がった状態に設けられている。この手摺り5は、断面円形の金属管からなり、垂直方向に延びる一対の支柱部6,6と、これら一対の支柱部6,6の上端を互いに連結するように水平方向に延びた手摺り部7と、を備えている。換言すれば、手摺り5は、全体として、上下に細長い略U字形をなしている。手摺り部7は、利用者が把持する部分であり、例えば硬質合成樹脂やゴム等の非金属材料で被覆してあることが好ましい。なお、
図3の分解斜視図に示すように、手摺り5は、梱包や搬送の際の便宜のために、いくつかの部分に分割して構成することができる。
【0022】
上記中央ビーム4の長手方向の中間部(より詳しくは相対的にリヤビーム3に近い位置)には、角柱形状をなす中央支柱10が取り付けられている。この中央支柱10は、中央ビーム4の上面から垂直に起立しており、垂直な回転中心軸線M1(
図2参照)を有するように、中央ビーム4に回転自在に支持されている。詳しくは、
図5の断面図に示すように、中央ビーム4側に、円環状のフランジ11aを内周面に備えた円筒状の軸受部材11が堅固に設けられている。中央支柱10の下端には、回転軸ともなるボルト12が堅固に取り付けられている。そして、フランジ11aを上下に挟むように一対のスラストベアリング13,13を配した状態でボルト12の軸部がフランジ11aの開口を貫通しており、先端に螺合したナット14を締め付けることで、一対のスラストベアリング13,13がフランジ11aを挟持している。このような軸受構造を介して、中央支柱10は、中央ビーム4に回転自在に支持されている。
【0023】
上記中央支柱10の両側には、一対の側部支柱15,15が中央支柱10を挟んで対称となるように配置されている。一対の側部支柱15,15は、中央支柱10と同じく垂直に延びており、中央支柱10を含めた三者が互いに平行となっている。側部支柱15,15と中央支柱10は、互いにほぼ等しい太さの正方形に近い断面を有する角柱形状をなしている。そして、側部支柱15,15の垂直方向の長さは、中央支柱10の垂直方向の長さよりも僅かに短いものとなっている。
【0024】
一対の側部支柱15,15は、上部リンクプレート17と下部リンクプレート18とによって構成される平行リンク機構により互いに連結されている。換言すれば、
図4から容易に理解できるように、一対の側部支柱15,15と上部リンクプレート17と下部リンクプレート18との4本のリンクが平行リンク機構を構成しており、これにより、一対の側部支柱15,15がそれぞれ垂直姿勢を保ったまま上下に昇降可能となっている。
【0025】
鋼板からなるリンクプレート17,18は、いずれも
図4に示すようにW字形状をなしており、長手方向の両端部が側部支柱15,15にそれぞれ回動可能に連結されるとともに、中央部が中央支柱10に回動可能に連結ないし支持されている。これらの連結点では、いずれも水平な回転中心軸線に沿って相対回転が可能である。
図2の線M3は、各連結点の回転中心軸線の代表として、上部リンクプレート17中央の中央支柱10に対する連結点における水平な回転中心軸線を示している。なお、上部リンクプレート17と下部リンクプレート18は、機構学上のリンクとしては、互いに平行なものとなっている。
【0026】
また、中央支柱10に対する中央の連結点は、側部支柱15,15に対する2つの連結点を結ぶ線上に位置している。つまり、リンクプレート17,18がそれぞれ水平姿勢にあるときに、側部支柱15,15に対する連結点と中央支柱10に対する連結点は、等しい高さ位置にある。そして、各々のリンクプレート17,18は、一端の側部支柱15に対する連結点と中央の中央支柱10に対する連結点との間の中央部が下方へ窪んだW字形に構成されている。なお、側部支柱15,15に対する連結点と中央支柱10に対する連結点とが上下に多少オフセットしている構成も可能である。
【0027】
図1~
図3に示すように、上部リンクプレート17は、実際には中央支柱10や側部支柱15,15を間に挟むようにして前後に2つ対称に存在する。下部リンクプレート18についても同様であり、2つの下部リンクプレート18が中央支柱10や側部支柱15,15を挟んで対称に配置されている。2つの上部リンクプレート17,17は、W字形の下部の頂点に相当する2箇所の位置において、水平方向に延びた連結管20によって互いに一体に連結されている。詳しくは、連結管20の両端が一対の上部リンクプレート17,17の互いの内側面にそれぞれ溶接されている。これにより、2つの上部リンクプレート17,17は、予め堅固な梯子状に構成されている。そして、中央支柱10および側部支柱15,15に対する連結点となる3箇所には、スペーサとして機能する中空管21を通して回転軸となる比較的細長いボルト22がそれぞれ挿通されている。このボルト22は、中央支柱10および側部支柱15,15に設けられた軸受孔23(
図3参照)を回転自在に貫通しており、先端にナット24が螺合することで、上部リンクプレート17,17に組み付けられている。上部リンクプレート17の各々と中央支柱10および側部支柱15,15との間には、スペーサとなる中空管21が介在しており、ボルト22の周面を覆っている。
【0028】
下部リンクプレート18についても同様の構成であり、2つの下部リンクプレート18,18が連結管20によって互いに一体化されており、かつボルト22を介して中央支柱10や側部支柱15,15に回転自在に連結されている。
【0029】
このように一対の側部支柱15,15が平行リンク機構によって連結されていることにより、一方の側部支柱15と他方の側部支柱15は、互いに連動して上下動する。つまり、水平な回転中心軸線M3を中心として自在に揺動し、かつ、平行リンク機構の機能により側部支柱15,15は常に垂直姿勢を維持する。
【0030】
上記のように平行リンク機構によって連結されている一対の側部支柱15,15の上端には、それぞれ円形の金属板からなる足乗せプレート26が配置されている。この一対の足乗せプレート26,26は、それぞれ垂直な回転中心軸線M2(
図2参照)を有するように、中心点において側部支柱15,15に回転自在に支持されている。足乗せプレート26,26を回転自在に支持する軸受構造は、前述した中央支柱10の軸受構造と基本的に同様のものであり、詳細には図示しないが、足乗せプレート26,26の下面中央にボルトが固定されており、側部支柱15,15の上端部に設けた円環状のフランジを一対のスラストベアリングを介して上記ボルトおよびナットにより挟持した構成となっている。一対の足乗せプレート26,26は、利用者が左右の足を個々に乗せるものであり、一般的な靴の長さよりも僅かに大きい程度の直径を有している。また、一対の足乗せプレート26,26の中心点の間の間隔つまり一対の側部支柱15,15の間隔は、一般的な成人の肩幅程度に設定されている。
【0031】
一対の側部支柱15,15の間隔に対応して、ベースフレーム1は、金属管を円形に湾曲させて構成した円環状の堅固なストッパ28を備えている。このストッパ28は、中央支柱10の回転中心軸線M1を中心とする円をなすように形成されており、例えば中央ビーム4の上面に溶接されて固定されている。円環状をなすストッパ28の径は、中央支柱10を中心として回転(公転)する側部支柱15,15の位置、より詳しくは、一方の側部支柱15が下降したときの側部支柱15の下端位置に対応している。つまり、中央支柱10を中心とした側部支柱15,15の回転位置に拘わらず、一方の側部支柱15が下降したときに該側部支柱15の下端がストッパ28に当接し、その最下点が規定されるようになっている。
【0032】
上記のように構成されたトレーニング器具においては、まず、利用者が左右の足を個々に乗せる一対の足乗せプレート26,26が、平行リンク機構により連結されていて、いわゆるシーソーあるいは上皿天秤のように一方が上昇すると他方が下降する関係となっている。つまり、水平な回転中心軸線(例えば
図2の回転中心軸線M3)の回りを一対の足乗せプレート26,26が自在に上下揺動する関係となっており、左右の体重のバランスによって、左右の足の高さが変化する。このとき、各々の足乗せプレート26,26は水平状態を維持する。なお、上下動する一対の足乗せプレート26,26の上下ストローク(可能な左右の高低差)としては、10cm~20cm程度確保することが望ましい。
【0033】
また、左右の足を乗せた一対の足乗せプレート26,26は、中央支柱10を中心としてリンクプレート17,18を含む全体が自在に回転(公転)する。そして同時に、個々の足乗せプレート26,26が、側部支柱15,15を中心として自在に回転(自転)する。つまり、
図2に示すように、一対の足乗せプレート26,26は、両者が一体となった形で垂直な回転中心軸線M1を中心として自在に回転(公転)するとともに、個々に垂直な回転中心軸線M2を中心として自在に回転(自転)する。
【0034】
このように、上記トレーニング器具は、垂直な回転中心軸線M1,M2および水平な回転中心軸線M3に関する3つの自由度を組み合わせた構成となっており、これにより、ツイスト運動とバランス運動と足踏み運動の各要素を複合した形の効果的な運動が可能となる。
【0035】
次に、上記トレーニング器具を利用して行うことができる運動について、
図6~
図8を参照して説明する。
【0036】
図6は、利用者Hがトレーニング器具の上に立って左右のバランスを取っている状態を示している。なお、図示するように、トレーニング器具を利用する際に、利用者Hは手摺り5に正対するように立つ。このようにトレーニング器具の上に立っているときに、体の重心が僅かでも左右に片寄ると、足乗せプレート26,26が容易に上下に動いてしまう。また、重心が前後に片寄ったり一方の足に不用意に力を入れたりすると、中央支柱10(回転中心軸線M1)を中心として左右の足乗せプレート26,26が前後に離れるように回転してしまう。さらに、個々の足が乗っている足乗せプレート26,26も側部支柱15,15(回転中心軸線M2)を中心として容易に回転し、例えば左右のつま先が容易に拡がったりしてしまう。従って、
図6のような姿勢で動かずに直立しているためには、重心位置を中心に保つようにバランスを取りながら、回転中心軸線M1,M2を中心とする不用意な回転が生じないように下半身の各部に力を加えている必要がある。下半身の筋力が衰えていると、
図6のように直立姿勢を保つことはかなり困難である。そのため、
図6のように単に立っているだけでも、バランス感覚の向上や下半身の各部の筋力増強が図れる。
【0037】
次に、
図7(a),(b)は、
図6の状態から左右に重心を移動させながら左右の足乗せプレート26,26を交互に上下動させる足踏み運動を行っている様子を示している。このとき、一般的なステッパーのようにスプリングや液圧等の外部負荷は与えられていないが、左右の足乗せプレート26,26に自身の体重が作用しているので、側部支柱15がストッパ28に当接しないようにバランスを取りながら一方の足乗せプレート26を押し下げつつ他方の足乗せプレート26の足を持ち上げるには、かなりの筋力が必要となる。また、前述した中央支柱10(回転中心軸線M1)を中心とした左右の足乗せプレート26,26が前後に離れるような回転や、個々の足が乗っている足乗せプレート26,26の側部支柱15,15(回転中心軸線M2)を中心とした回転を、自身の筋力で抑制する必要があるので、
図7(a),(b)のような動作を繰り返すことで、バランス感覚の向上に加えて、体幹の強化や各部の筋力増強が図れる。つまり、
図7の運動は、バランス運動および足踏み運動の要素を含んでいる。
【0038】
次に、
図8(a),(b)は、バランス運動および足踏み運動の要素に加えてツイスト運動の要素を含む複合的な運動の例を示している。この運動は、(a)に示す右足を前に出すようにして下半身を一方(頭上から見て反時計回り方向)に捻る動作と、(b)に示す左足を前に出すようにして下半身を他方(頭上から見て時計回り方向)に捻る動作と、を交互に行うものである。上半身は、手摺り5に正対した姿勢を保持する。必要があれば、図示するように、利用者Hは手摺り5を把持して上半身の向きを保持することができる。さらに、
図7で説明した足踏み運動と同様に、(a)のように右足を前に出す際に、同時に、右足を左足よりも高くなるように持ち上げ(左足は逆に押し下げることとなる)、(b)のように左足を前に出す際に、同時に、左足を右足よりも高くなるように持ち上げる(右足は逆に押し下げる)ことで、足踏み運動の要素を付加することができる。
【0039】
(a)に示すように下半身を中央支柱10(回転中心軸線M1)を中心として捻る際に、左右の足が乗っている足乗せプレート26,26は個々に自在に回転(自転)し得るので、利用者Hは、体幹を中心に下半身を大きく捻ることが可能である。例えば、
図6のような初期位置から左右の足乗せプレート26,26の位置が入れ替わるような180°前後の捻り運動が可能である。同様に、(b)に示すように反対方向へ捻る際に、
図6のような初期位置から180°前後の捻り運動が可能である。従って、(a),(b)の動作の間では、下半身が360°前後捻られることとなる。
【0040】
この
図8に示す運動では、(a),(b)の動作をバランスを取りながら繰り返すことで、バランス感覚の向上が図れるのは勿論のこと、骨盤や股関節周囲が3次元的に大きく捻られ、股関節等の可動域が大きくなるとともに、体幹の強化が図れ、かつ中殿筋を含む股関節周囲ないし下半身の筋肉が強化される。
【0041】
なお、
図6~
図8の運動は、上記トレーニング器具を用いて行うことが可能な運動の一例に過ぎず、これら以外の態様の運動も勿論可能である。
【0042】
このように、上記トレーニング器具によれば、自由度の高いことによるバランス感覚の向上、足踏み運動の要素を含むことによる下半身の強化、ツイスト運動の要素を含むことによる骨盤や股関節周囲ならびに体幹の強化および可動域の拡大、といった運動効果を短時間で効率よく得ることができる。
【0043】
また上記実施例のトレーニング器具においては、ベースフレーム1が手摺り5を備えているので、利用者Hは手摺り5を把持して下半身をより大きく動かすことが可能となる。また、初心者も安心してトレーニング器具を利用できる。
【0044】
また上記実施例では、上部リンクプレート17が下部リンクプレート18とともにW字形状をなしているので、
図4のように一方の足乗せプレート26が最下点に位置したときの上部リンクプレート17と当該足乗せプレート26との干渉が抑制される。そのため、足乗せプレート26,26の上下ストロークを大きく確保することができるとともに、最下点に位置する足乗せプレート26と隣接する上部リンクプレート17との間に十分な間隔を得ることができ、例えば靴が挟み込まれたりすることを抑制できる。
【0045】
なお、下部リンクプレート18については足乗せプレート26との干渉回避の観点からはW字形状とする必要はないが、上記実施例では、下部リンクプレート18を上部リンクプレート17と同じW字形状とすることで、揺動時にW字形の各部が上部リンクプレート17の各部と平行な姿勢を保つようにしている。これにより、上部リンクプレート17と下部リンクプレート18との干渉が抑制される。
【0046】
また上記実施例では円環状のストッパ28によって、どのような回転位置にあっても側部支柱15,15が最下点で位置決めされる。従って、最初に片足を足乗せプレート26に乗せて
図6のように立ち上がる際に、最初に足を乗せた方の側部支柱15がストッパ28によって安定して保持され、利用者Hに不安感を与えることがない。また、側部支柱15下端による床面の傷付きを防止できる。
【符号の説明】
【0047】
1…ベースフレーム
5…手摺り
10…中央支柱
15…側部支柱
17…上部リンクプレート
18…下部リンクプレート
26…足乗せプレート
28…ストッパ