(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】壁面緑化装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20220111BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20220111BHJP
A01G 9/12 20060101ALI20220111BHJP
A01G 20/00 20180101ALI20220111BHJP
【FI】
A01G9/02 E
A01G9/02 103T
A01G27/00 502L
A01G27/00 502V
A01G9/12 A
A01G20/00
(21)【出願番号】P 2017149482
(22)【出願日】2017-08-01
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】江木 和泉
(72)【発明者】
【氏名】小畠 正至
(72)【発明者】
【氏名】屋祢下 亮
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0844108(KR,B1)
【文献】特開平09-051728(JP,A)
【文献】登録実用新案第3050745(JP,U)
【文献】特開平06-253684(JP,A)
【文献】特開2010-115117(JP,A)
【文献】特開2008-154512(JP,A)
【文献】特開平11-299356(JP,A)
【文献】特開2012-016291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0016784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00-9/02
A01G 31/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁面の前面に配置され、植物を植栽した箱状の
プランターであって、底部に形成し、水平排水管を外周方向から導入自在な凹部、及び底部の両側から突出した一組の支持脚片を有するプランターと、
前記プランターの底部に略水平状態に配置され、前記プランターの底部から排出される余剰の培養液を回収する水平排水管と、
基端部を建物の壁面に固定し、先端部側が略水平状態で建物の壁面から突出し、前記水平排水管を支持した一組以上の槍出支持金具と、
前記槍出支持金具の先端部と着脱自在に固定したスタンドと、
一片を一方の前記支持脚片の外面に固定した長尺の第1アングル部材と、
一片を他方の前記支持脚片の外面に固定した長尺の第2アングル部材と、を備え、
少なくとも一方の前記支持脚片は、前記水平排水管を前面から視認困難に、前記水平排水管を
覆い、
前記第1アングル部材及び前記第2アングル部材は、それらの他片を前記槍出支持金具に着脱自在に固定している、壁面緑化装置。
【請求項2】
前記プランターは、
鉛直方向に底部に貫通した一つ以上の排水孔と、
この排水孔に嵌合し、下端部側が前記プランターの底面から突出した鉛直排水管と、を有し、
前記水平排水管は、前記鉛直排水管の下端部側と接続自在な接続口を開口している、請求項1記載の壁面緑化装置。
【請求項3】
培養液を前記プランターに散水できる散水管を更に備えている、請求項1又は2記載の壁面緑化装置。
【請求項4】
前記プランターに植栽した植物がつる植物からなり、
前記スタンドは、前記つる植物が登攀できる緑化柵を建物の壁面と対向した状態で、配置している、
請求項1から3のいずれかに記載の壁面緑化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面緑化装置に関する。特に、植物を植栽したプランターを建物の壁面に沿って縦横に配置することで、直射日光から建物を遮蔽すると共に建物の景観を向上できる壁面緑化装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、建物の外壁に植物を植える壁面緑化がヒートアイランド現象の緩和及び省エネルギー化に役立つとして、注目されている。又、建物の外壁に沿って植物を配置することで、自然木などが少ない都市部の景観を向上できる。このような壁面緑化には、登攀式、下垂式、補助材式、又は、ユニット式などの様々な工法が提案又は実施されている。
【0003】
登攀式壁面緑化工法は、壁面などに付着自在な付着根を有するつる植物を壁面に自立登攀させることで、建物の壁面を緑化できる。登攀式壁面緑化工法は、低コストで緑化できるメリットを有しているが、付着根を有する付着性植物に限定されるという制約がある。
【0004】
下垂式壁面緑化工法は、屋上又はベランダに設置したプランターから植物を壁面に沿って垂らすことで、建物の壁面を緑化できる。補助材式壁面緑化工法は、ワイヤーなどの補助材を用いて、つる植物を登攀又は下垂させることで、建物の壁面を緑化できる。ユニット式壁面緑化工法は、植物を植栽したプランターなどのユニットを建物の壁面に沿って縦横に配置することで、建物の壁面を緑化できる。
【0005】
壁面緑化は、市街地に建設される建物に要求される傾向がある。そして、市街地に建設される建物は、その外壁面が隣地境界又は道路境界に接近した位置に配置される傾向がある。このため、下垂式又は補助材式により、外壁面を緑化する工法が一般に採用されている。しかし、このような緑化工法では、植物の種類の制約、給水方法の制約、栄養剤供給方法の制約、植物交換の困難性などの管理上の問題がある。
【0006】
一方、ユニット式壁面緑化工法は、プランターなどに植栽する植物の種類に比較的制約が少ないという特徴がある。又、ユニット式壁面緑化工法は、灌水などを自動化することが容易であり、一部の植物が枯渇しても、植物を育成したプランターを交換することで、景観を維持できるというメリットがある。
【0007】
このようなユニット式壁面緑化工法において、植物を植栽したプランターを建物の壁面に沿って縦横に配置した壁面緑化装置であって、灌水される水が各段において不均一となることを防止できると共に、上段側のプランターよりも下段側のプランターが過湿の状態になることを防止できる壁面緑化装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
又、このようなユニット式壁面緑化工法において、建物の壁面に取り付け可能なパネルの表面に半樋状のプランターを縦横に配置し、上方のプランターに溜まった水を下方のプランターに導く導水構造をパネルの長手方向に適当な間隔で設けた壁面緑化装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-19714号公報
【文献】特開2006-8号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7は、従来技術による壁面緑化装置に備わる緑化ユニットの構成を示す縦断面図である。
図8は、従来技術による壁面緑化装置の構成を示す正面図である。
図9は、従来技術の他の実施例による壁面緑化装置の構成を示す右側面図である。
【0011】
【0012】
図7から
図9を参照すると、従来技術による壁面緑化装置8は、植物Pを植栽した複数の箱状の内部プランター81と、これらの内部プランター81を内部に収容した複数の箱状の外部プランター82を備えている。内部プランター81は、植物Pを植栽するための培養土Sfを収容している(
図7又は
図9参照)。
【0013】
図7又は
図9を参照すると、内部プランター81は、T字状の導水部材85を内部に備えている。導水部材85は、その一片85aを内部プランター81の底面に載置している。又、導水部材85は、その他片85bを内部プランター81の底部から突出している。
【0014】
図7又は
図8を参照すると、外部プランター82は、前壁82aと後壁82bを有している。又、外部プランター82は、一対の側壁82c・82dと底壁82eを有している。前壁82aと底壁82eは、斜面壁82sで連続している。
【0015】
図7を参照して、内部プランター81を外部プランター82に収容すると、内部プランター81の底部の角部が斜面壁82sの内壁に当接することで、内部プランター81の底部が外部プランター82の底面から離れた状態で、内部プランター81を配置できる。
【0016】
図7又は
図9を参照すると、外部プランター82は、水Waを貯留できる貯水部821を底部に有している。導水部材85の他片85bは、貯水部821の水Waに浸漬している。導水部材85を介して、貯水部821の水Waを培養土Sfに導水できる。
【0017】
図7を参照すると、外部プランター82は、アングル部材822を後壁82bに固定している。一方、
図9を参照すると、建物の壁面Weには、複数のアングル部材823を固定している。アングル部材822をアングル部材823に載置し、アングル部材822をアングル部材823にボルト部材で固定することで、複数の外部プランター82を建物の壁面Weに沿って、高さ方向に多段に配置できる(
図8参照)。
【0018】
図8を参照すると、外部プランター82は、水位保全管83を端部に備えている。水位保全管83は、貯水部821に貯留された水Waが所定の水位以上になると、水Waを排水できる。水位保全管83は、誘導管83pを接続している。貯水部821に貯留された水Waが所定の水位以上になると、上段の外部プランター82から下段の外部プランター82へ水Waを誘導できる。
【0019】
図8を参照すると、壁面緑化装置8は、給水管84を上部に配置している。給水管84の途上には、電磁弁84vを設けている。電磁弁84vを開くことで、最上段の外部プランター82に水Waを給水できる。
【0020】
又、
図8を参照すると、壁面緑化装置8は、水位センサ86sを最下段の外部プランター82の内部に配置している。水位センサ86sと電磁弁84vは、電線コード86cで接続している。
【0021】
図7又は
図8を参照して、貯水部821の水位が1cm以下になった状態が水位センサ86sで検知されると、電磁弁84vが開いて給水管84からの給水が開始される。一方、最下段の外部プランター82の貯水部821の水位が3cmを超えた状態が水位センサ86sで検知されると、電磁弁84vを閉じて給水管84からの給水を停止することができる。
【0022】
図8を参照すると、最下段の外部プランター82の下方には、上面を開口した樋部材86を配置している。樋部材86は、最下段の外部プランター82に取り付けた水位保全管83介して、最下段の外部プランター82に貯留された所定の水位以上の水Waを受容できる。
【0023】
次に、従来技術の他の実施例による壁面緑化装置の構成を説明する。
図9を参照すると、他の実施例による壁面緑化装置80は、
図8に示した誘導管83pに換えて、鎖樋83cを水位保全管83に接続している。
【0024】
図9を参照すると、鎖樋83cは、その上端部を水位保全管83に係留している。又、鎖樋83cは、その下端部を下段の外部プランター82の貯水部821に向けて、下垂している。これにより、鎖樋83cを介して、上段の外部プランター82から下段の外部プランター82に水Waを導水できる。他の実施例に開示した鎖樋83cは、日本建築に特有のもので、リングの美しさが建物に彩を添えることができる。
【0025】
従来技術による壁面緑化装置は、貯水部に貯留した水の水位が所定の高さを超えるまでは、一定量の水が外部プランターの貯水部に貯留され、水位が所定の高さを超えたときは、下段側の外部プランターの貯水部に順次誘導されるので、複数の外部プランターを高さ方向に多段に配置することで、各段の外部プランターに貯留された水の量が不均一となることを防止できる、としている。
【0026】
又、従来技術による壁面緑化装置は、貯水部に貯留した水を内部プランターの土壌に導水できる導水部材を備えているので、上段側の内部プランターの土壌よりも下段側の内部プランターの土壌が過湿の状態になることを防止できる、としている。
【0027】
しかし、
図7から
図9を参照すると、特許文献1による壁面緑化装置は、植物Pを育成するために、内部プランター81に収容した培養土Sfの養分に依存している。従来技術による壁面緑化装置は、植物Pを育成するための水は十分に供給できるが、植物Pを成長させ続けるためには、養分が不足する心配がある。又、上段のプランターにて養分が吸収、消費されてしまうと、上下段のプランターにて植物Pに生育差が生じる恐れがある。
【0028】
植物を植栽したプランターを建物の壁面に沿って縦横に配置した壁面緑化装置においては、植物が成長するために必要な養分を含んだ水、すなわち、培養液を循環させるように構成することが好ましい。この場合、
図9を参照して、鎖樋83cを介して、ドリップ管から上段のプランターの培養土に供給した培養液を下段のプランターの土壌に循環させる案が考えられるが、培養液で鎖樋83cが汚染されると、壁面緑化装置の景観を損なう心配がある。
【0029】
培養液を循環させるように構成した壁面緑化装置においては、プランターの底部から排出される余剰の培養液を回収するために水平方向に延びる排水管は必須であるが、この水平排水管をプラスチック管で構成し、プラスチック管を外部から視認可能に配置すると、壁面緑化装置の景観を損なう心配がある。培養液を循環させるように構成すると共に、意匠性を向上できる壁面緑化装置が求められている。
【0030】
図10は、他の従来技術による壁面緑化装置の構成を示す正面図である。
図11は、他の従来技術による壁面緑化装置の構成を示す平面図である。
図12は、他の従来技術による壁面緑化装置の構成を示す縦断面図である。なお、本願の
図10から
図12は、特許文献2の
図1から
図3に相当している。
【0031】
図10から
図12を参照すると、他の従来技術による壁面緑化装置9は、矩形のパネル板91と一組の半樋状のプランター92・92を備えている。パネル板91は、図示しない建物の壁面に着脱自在に固定できる。プランター92は、その上面を開口し、パネル板91の一方の面から箱状に突出した状態で、パネル板91と一体に形成している。パネル板91及びプランター92は、軽量部材からなることが好ましい。
【0032】
図10から
図12を参照すると、壁面緑化装置9は、プランター92の内部に土を入れて種又は苗を植栽できる。プランター92は、仕切り壁92wを中央部に設けている。プランター92の中央部に仕切り壁92wを設けることで、プランター92の内部に収容した土の重量に対して強度を補強している。
【0033】
図10から
図12を参照すると、上部のプランター92には、複数の排水孔92dを底部に開口している。排水孔92dは、パネル板91に近い位置に開口していることが好ましい。排水孔92dには、鉛直方向に排水パイプ92pを接続している。排水パイプ92pは、下部のプランター92に向かって延びている。排水パイプ92pは、上部のプランター92に供給した水を下部のプランター92に導水できる。
【0034】
図10から
図12を参照すると、パネル板91は、下部のプランター92の底部と連通した排水孔91dを一方の面に開口している。排水孔91dは、パネル板91の内部に形成した排水路911に連通している。排水路911は、パネル板91の下部に向かって開口している。排水路911は、下部のプランター92に供給した水を外部に導水できる。
【0035】
他の従来技術による壁面緑化装置は、灌水の効率化と清潔化を図り、軽量で安価な植栽用のプランターを提供できると共に、建物の壁面などに簡単に取り付けられる、としている。
【0036】
特許文献2による壁面緑化装置は、プランターには灌水が必要であるが、雨水を利用することで、ランニングコストを低減できる、としている。又、雨水を貯水槽などに貯留し、この雨水をポンプで適宜汲み上げて、最上段のプランターに供給するように構成すれば、効率的である、としている。
【0037】
しかし、
図10から
図12を参照すると、特許文献2による壁面緑化装置は、植物を育成するために、プランターに収容した土の養分に依存している。従来技術による壁面緑化装置は、植物を育成するための水は十分に供給できるが、植物を成長させ続けるためには、養分が不足する心配がある。
【0038】
植物を植栽したプランターを建物の壁面に沿って縦横に配置した壁面緑化装置においては、植物が成長するために必要な養分を含んだ水、すなわち、培養液を循環させるように構成することが好ましい。この場合、
図12を参照して、排水路911を介して、下部のプランター92から回収して培養液を上部のプランター92に循環させる案が考えられるが、培養液がパネル板91側に偏在する心配がある。
【0039】
培養液を循環させるように構成した壁面緑化装置においては、プランターの底部から排出される余剰の培養液を回収するために水平方向に延びる排水管は必須であるが、この水平排水管をプラスチック管で構成し、プラスチック管を外部から視認可能に配置すると、壁面緑化装置の景観を損なう心配がある。培養液を循環させるように構成すると共に、意匠性を向上できる壁面緑化装置が求められている。
【0040】
植物を植栽したプランターを建物の壁面に沿って縦横に配置した壁面緑化装置であって、これらのプランターに培養液を循環できると共に、景観の向上に寄与する意匠性に優れた壁面緑化装置が求められている。そして以上のことが本発明の課題といってよい。
【0041】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、植物を植栽したプランターを建物の壁面に沿って縦横に配置した壁面緑化装置であって、これらのプランターに培養液を循環できると共に、景観の向上に寄与する意匠性に優れた壁面緑化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明者らは、プランターの底部から排出される余剰の培養液を回収する水平排水管を前面から視認困難に、プランターの底部に形成した少なくとも一方の支持脚片で覆うことで、壁面緑化装置の景観を向上できると考え、これに基づいて、以下のような新たな壁面緑化装置を発明するに至った。
【0043】
(1)本発明による壁面緑化装置は、建物の壁面の前面に配置され、植物を植栽した箱状のプランターと、前記プランターの底部に略水平状態に配置され、前記プランターの底部から排出される余剰の培養液を回収する水平排水管と、を備え、前記プランターは、底部に形成し、前記水平排水管を外周方向から導入自在な凹部と、底部の両側から突出した一組の支持脚片と、を有し、少なくとも一方の前記支持脚片は、前記水平排水管を前面から視認困難に、前記水平排水管を覆っている。
【0044】
(2)前記プランターは、鉛直方向に底部に貫通した一つ以上の排水孔と、この排水孔に嵌合し、下端部側が前記プランターの底面から突出した鉛直排水管と、を有し、前記水平排水管は、前記鉛直排水管の下端部側と接続自在な接続口を開口していることが好ましい。
【0045】
(3)本発明による壁面緑化装置は、培養液を前記プランターに散水できる散水管を更に備えていることが好ましい。
【0046】
(4)本発明による壁面緑化装置は、基端部を建物の壁面に固定し、先端部側が略水平状態で建物の壁面から突出し、前記水平排水管を支持した一組以上の槍出支持金具と、前記槍出支持金具の先端部と着脱自在に固定したスタンドと、一片を一方の前記支持脚片の外面に固定した長尺の第1アングル部材と、一片を他方の前記支持脚片の外面に固定した長尺の第2アングル部材と、を備え、前記第1アングル部材及び前記第2アングル部材は、それらの他片を前記槍出支持金具に着脱自在に固定していることが好ましい。
【0047】
(5)前記プランターに植栽した植物がつる植物からなり、前記スタンドは、前記つる植物が登攀できる緑化柵を建物の壁面と対向した状態で、配置していることが好ましい。
【発明の効果】
【0048】
本発明による壁面緑化装置は、建物の壁面の前面に配置され、植物を植栽した箱状のプランターと、プランターの底部から排出される余剰の培養液を回収する水平排水管と、を備え、プランターは、水平排水管を導入自在な凹部と、底部の両側から突出した一組の支持脚片を有し、一方の支持脚片は、水平排水管を前面から視認困難に、水平排水管を覆っているので、プランターに培養液を循環できると共に、景観の向上に寄与する意匠性に優れた壁面緑化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の一実施形態による壁面緑化装置の構成を示す正面図であり、つる植物を登攀可能な緑化柵を壁面緑化装置の前面に配置した状態図である。
【
図2】前記実施形態による壁面緑化装置の構成を示す正面図であり、つる植物を登攀可能な緑化柵を取り外した状態図である。
【
図3】前記実施形態による壁面緑化装置の構成を示す斜視分解組立図である。
【
図4】前記実施形態による壁面緑化装置に備わるプランターの構成を示す斜視図である。
【
図5】前記実施形態による壁面緑化装置に備わるプランターの構成を示す縦断面図である。
【
図6】前記実施形態による壁面緑化装置の要部を拡大した縦断面図である。
【
図7】従来技術による壁面緑化装置に備わる緑化ユニットの構成を示す縦断面図である。
【
図8】従来技術による壁面緑化装置の構成を示す正面図である。
【
図9】従来技術の他の実施例による壁面緑化装置の構成を示す右側面図である。
【
図10】他の従来技術による壁面緑化装置の構成を示す正面図である。
【
図11】他の従来技術による壁面緑化装置の構成を示す平面図である。
【
図12】他の従来技術による壁面緑化装置の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[壁面緑化装置の構成]
最初に、本発明の一実施形態による壁面緑化装置の構成を説明する。
【0051】
図1は、本発明の一実施形態による壁面緑化装置の構成を示す正面図であり、つる植物を登攀可能な緑化柵を壁面緑化装置の前面に配置した状態図である。
図2は、前記実施形態による壁面緑化装置の構成を示す正面図であり、つる植物を登攀可能な緑化柵を取り外した状態図である。
【0052】
図3は、前記実施形態による壁面緑化装置の構成を示す斜視分解組立図である。
図4は、前記実施形態による壁面緑化装置に備わるプランターの構成を示す斜視図である。
【0053】
図5は、前記実施形態による壁面緑化装置に備わるプランターの構成を示す縦断面図である。
図6は、前記実施形態による壁面緑化装置の要部を拡大した縦断面図である。
【0054】
(全体構成)
次に、本発明の一実施形態による壁面緑化装置の全体構成を説明する。
図1から
図6を参照すると、本発明の一実施形態による壁面緑化装置10は、複数のプランター1と一組の水平排水管2・2を備えている。水平排水管2は、腐食に強い塩化ビニル管で構成している。
【0055】
図2又は
図6を参照すると、プランター1は、建物の壁面Weの前面に縦横に配置されている。
図3から
図6を参照すると、プランター1には、植物を植栽できる。
図3又は
図5及び
図6を参照すると、プランター1は、散水管11pから内部の培養土Sfに培養液を供給できる。
【0056】
図1から
図3を参照すると、壁面緑化装置10は、一組のプランター1・1を長手方向に沿って上段に連設している。又、壁面緑化装置10は、一組のプランター1・1を長手方向に沿って下段に連設している。
【0057】
図1から
図3を参照すると、水平排水管2は、一組のプランター1・1の底部に略水平状態に配置されている。
図3又は
図6を参照すると、水平排水管2は、プランター1の底部から排出される余剰の培養液をプランター1の底面に設けられた排水孔11dに嵌合されている鉛直排水管14を介して効率よく回収できる。そして、これらの水平排水管2で回収した培養液を散水管11pに供給することで、複数のプランター1に培養液を循環できる。
【0058】
図4から
図6を参照すると、プランター1は、凹部11cと一組の支持脚片11f・12fを底部に有している。凹部11cには、水平排水管2を外周方向から導入できる。一組の支持脚片11f・12fは、プランター1の底部の両側から突出している。
【0059】
図6を参照すると、一方の支持脚片11fは、水平排水管2を前面から視認困難に、水平排水管2を覆っている。これにより、壁面緑化装置10は、水平排水管2を外部に露出させないので、景観を向上でき、意匠性に優れている。
【0060】
図1から
図6を参照すると、実施形態による壁面緑化装置10は、建物の壁面Weの前面に配置され、培養液を内部の培養土Sfに供給自在に、植物を植栽した一つ以上の箱状のプランター1と、プランター1の底部から排出される余剰の培養液を回収する水平排水管2と、を備え、プランター1は、水平排水管2を導入自在な凹部11cと、底部の両側から突出した一組の支持脚片11f・12fを有し、一方の支持脚片11fは、水平排水管2を前面から視認困難に、水平排水管2を覆っているので、プランター1に培養液を循環できると共に、景観の向上に寄与する意匠性に優れた壁面緑化装置を提供できる。
【0061】
(架台の構成)
次に、壁面緑化装置10に備わる架台1Rの構成を説明する。
図1から
図3及び
図6を参照すると、架台1Rは、複数の槍出支持金具3、三つのスタンド4、及び、緑化柵5で構成している。槍出支持金具3は、図示しないボルト部材を用いて、その基端部を建物の壁面Weに固定している。又、槍出支持金具3は、その先端部側を略水平状態で建物の壁面Weから突出している。
【0062】
図1から
図3及び
図6を参照すると、槍出支持金具3は、水平方向に三列、鉛直方向に三段に配列している。列方向に配置された下段の槍出支持金具3は、管用のサドルバンド31bを用いて(
図3参照)、水平排水管2を支持している。同様に、列方向に配置された中段の槍出支持金具3は、管用のサドルバンド31bを用いて(
図3参照)、水平排水管2を支持している。
【0063】
図1から
図3及び
図6を参照すると、列方向に配置された上段の槍出支持金具3は、それらの先端部をスタンド4の上部に着脱自在に固定している。同様に、列方向に配置された中段の槍出支持金具3は、それらの先端部をスタンド4の中間部に着脱自在に固定している。更に、列方向に配置された下段の槍出支持金具3は、それらの先端部をスタンド4の下部に着脱自在に固定している。このように、架台1Rは、九つの槍出支持金具3と三つのスタンド4で骨組みしている。
【0064】
図3又は
図6を参照すると、架台1Rは、長尺の第1アングル部材11aと長尺の第2アングル部材12aを備えている。第1アングル部材11aは、その一片を一方の支持脚片11fの外面に固定できる。同様に、第2アングル部材12aは、その一片を他方の支持脚片12fの外面に固定できる。
【0065】
図3又は
図6を参照すると、第1アングル部材11a及び第2アングル部材12aは、それらの他片を槍出支持金具3に着脱自在に固定できる。列方向に配置した一組のプランター1・1を第1アングル部材11a及び第2アングル部材12aで固定後に、水平排水管2を跨ぐように、一組のプランター1・1を三つの槍出支持金具3に載置し、第1アングル部材11a及び第2アングル部材12aの他片を槍出支持金具3に固定することが好ましい。
【0066】
図2又は
図3及び
図6を参照すると、スタンド4は、C形チャンネル部材からなり、その前面に三つの短尺の受け金具41を高さ方向に配列している。一方、
図1又は
図3及び
図6を参照すると、緑化柵5は、複数のフックボルトで固定された複数のアングル部材51を裏面に有している。アングル部材51を複数の受け金具41に載置し、アングル部材51を複数の受け金具41にボルト部材で固定することで、緑化柵5を建物の壁面Weと対向した状態で配置できる。
【0067】
図6を参照して、ビナンカズラ(美男葛)などのつる植物をプランター1に植栽することで、緑化柵5につる植物を登攀できる。緑化柵5をつる植物で覆うことで、いわゆる、グリーンカーテンを形成することで、直射日光から建物の壁面Weを遮蔽できる。
【0068】
(プランター及び水平排水管の構成)
次に、実施形態によるプランター1及び水平排水管2の構成を説明する。
図4から
図5を参照すると、プランター1は、合成樹脂からなることが好ましく、合成樹脂を成形して、二つの仕切り板13・13で内部が区画された直方体状のプランター1を得ることができる。
【0069】
図4又は
図5を参照すると、プランター1は、半円弧状の溝部11sを両端部の上面に形成している。これらの溝部11s・11sには、散水管11pを載置できる(
図3又は
図6参照)。
図6を参照すると、散水管11pは、培養液をプランター1に散水できる。
【0070】
図5を参照すると、プランター1は、長手方向に沿って、一方の支持脚片11fに雌ねじ部111を連設している。第1アングル部材11aの一片に開口したボルト穴を介して、ボルト部材を雌ねじ部111に締結することで、第1アングル部材11aの一片を一方の支持脚片11fの外面に固定できる(
図6参照)。
【0071】
図5を参照すると、プランター1は、長手方向に沿って、他方の支持脚片12fに雌ねじ部121を連設している。第2アングル部材12aの一片に開口したボルト穴を介して、ボルト部材を雌ねじ部121に締結することで、第2アングル部材12aの一片を他方の支持脚片12fの外面に固定できる(
図6参照)。
【0072】
図5又は
図6を参照すると、プランター1は、鉛直方向に貫通した複数の排水孔11dを底部に有している。余剰の培養液が排水孔11dに流下し易いように、プランター1の底面は、排水孔11dに向かって下り傾斜している(
図6参照)。
【0073】
図5又は
図6を参照すると、排水孔11dには、鉛直排水管14を嵌合させている。鉛直排水管14は、その下端部側がプランター1の底面から突出している。一方、水平排水管2は、鉛直排水管14の下端部側と接続自在な接続口2cを外周に開口している(
図6参照)。これにより、一組のプランター1・1を三つの槍出支持金具3に載置すると、鉛直排水管14と水平排水管2を導水可能に接続できる。
【0074】
[壁面緑化装置の作用]
次に、実施形態による壁面緑化装置10の構成を補足しながら、壁面緑化装置10の作用及び効果を説明する。
図1又は
図2を参照すると、上段の水平排水管2は、その一端部側が閉塞され、他端部側が鉛直排水パイプ21に接続している。同様に、下段の水平排水管2は、その一端部側が閉塞され、他端部側が鉛直排水パイプ21に接続している。水平排水管2は、鉛直排水パイプ21に向かって、僅かに下り傾斜するように配置することが好ましい。
【0075】
図1又は
図2を参照して、鉛直排水パイプ21の延長先にポンプ(図示せず)を設置して、余剰の培養液を回収すると共に、この培養液を散水管11pに供給することで、複数のプランター1に培養液を循環できる。
【0076】
図1から
図6を参照すると、実施形態による壁面緑化装置10は、建物の壁面Weの前面に縦横に配置され、培養液を内部の培養土Sfに供給自在な複数の箱状のプランター1と、プランター1の底部から排出される余剰の培養液を回収する水平排水管2と、を備えている。プランター1は、水平排水管2を導入自在な凹部11cと、底部の両側から突出した一組の支持脚片11f・12fを有している。一方の支持脚片11fは、水平排水管2を前面から視認困難に、水平排水管2を覆っているので、プランター1に培養液を循環できると共に、景観の向上に寄与する意匠性に優れた壁面緑化装置を提供できる。
【0077】
図6を参照して、実施形態による壁面緑化装置10は、つる植物をプランター1に植栽することで、緑化柵5につる植物を登攀できる。緑化柵5をつる植物で覆うことで、いわゆる、グリーンカーテンを形成することで、直射日光から建物の壁面Weを遮蔽できる。
【0078】
本発明による壁面緑化装置は、次のような効果がある。
(1)景観の向上に寄与する意匠性に優れた壁面緑化装置を提供できる。
(2)プランターと水平排水管の接続が容易である。
(3)つる植物を登攀させた緑化柵を建物の壁面の前面に配置することで、建物の景観を向上できる。
(4)培養液の循環及び改修が容易である。
【符号の説明】
【0079】
1 プランター
2 水平排水管
10 壁面緑化装置
11c 凹部
11f 一方の支持脚片
12f 他方の支持脚片
Sf 培養土
We 建物の壁面