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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】カバーフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20220111BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20220111BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220111BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220111BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220111BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220111BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20220111BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20220111BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B7/022
B32B27/30 A
B32B27/32 Z
B32B27/34
B32B27/36
C08J7/046 A CEY
G02B1/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017213879
(22)【出願日】2017-11-06
(65)【公開番号】P2019084731
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】河野 寛生
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533676(JP,A)
【文献】国際公開第2006/028131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J7/04- 7/06
G02B1/10- 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリレート系ポリマー、ポリエステル、ポリイミドから選択される、透明の基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも一方の面に積層され、(メタ)アクリレートを含有する、ハードコート層と、
を備え、
前記ハードコート層の厚みが、30μm以上50μm以下であり、
紫外線の積算光量が0である初期状態から50J/cm2となった後のCIE規格の色度b*が3.0以下であり、且つ鉛筆硬度が6H以上である、カバーフィルム。
【請求項2】
紫外線の積算光量が0である初期状態と、積算光量が50J/cm2となった状態とのCIE規格の色度b*の差が1.5以下である、請求項1に記載のカバーフィルム。
【請求項3】
紫外線の積算光量が50J/cm2となった後の鉛筆硬度が8H以上である、請求項1または2に記載のカバーフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層の厚みが、35μm以上40μm以下である、請求項1から3のいずれかに記載のカバーフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPCなどのディスプレイの表面を保護する種々のカバーフィルムが提案されている。例えば、特許文献1には、フィルム基材と、その表面に形成されたハードコート層とを有するカバーフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-26826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したディスプレイは屋外で使用されることも多く、室内環境よりもカバーフィルムが受ける負荷が大きい。例えば、外力により傷が生じたり、光による劣化が生じるおそれがある。そこで、本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、適度な表面硬度と耐光性を両立することができる表示装置用のカバーフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.透明の基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも一方の面に積層されたハードコート層と、
を備え、
前記ハードコート層の厚みが、30μm以上であり、
紫外線の積算光量が0である初期状態から50J/cm2となった後のCIE規格の色度b*が3.0以下である、カバーフィルム。
【0006】
項2.紫外線の積算光量が0である初期状態と、積算光量が50J/cm2となった状態とのCIE規格の色度b*が1.5以下である、項1に記載のカバーフィルム。
【0007】
項3.紫外線の積算光量が50J/cm2となった後の鉛筆硬度が8H以上である、項1または2に記載のカバーフィルム。
【0008】
項4.前記ハードコート層の厚みが、35μm以上40μm以下である、項1から3のいずれかに記載のカバーフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るカバーフィルムによれば、適度な表面硬度と耐光性を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るカバーフィルムの一実施形態について説明する。本発明に係るカバーフィルムは、透明の基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方の面に積層されるハードコート層と、を備えており、例えば、スマートフォン、タブレットPC、各種ディスプレイ装置などの表示装置の表面に取付けられ、これを保護するものである。以下、各部材について、詳細に説明する。
【0011】
<1.基材フィルム>
本発明に係る基材フィルムは、透明の種々の材料で形成することができ、例えば、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリレート系ポリマー、ポリエステル、ポリイミドなどで形成することができる。特に、ポリイミドは、屈曲に対して強く、また、屈曲しても癖が付きにくいため、好ましい。また、この基材フィルムには、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。例えば、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0012】
基材フィルムの厚みは、例えば、25μm以上300μm以下であることが好ましく、75μm以上250μm以下であることがさらに好ましい。厚さが25μm未満であると、ハードコート層の表面において十分な耐擦傷性が得られず、300μmより大きいと十分な屈曲耐久性を得ることが困難となるからである。
【0013】
基材フィルムは、マルテンス硬さ試験で、200~600N/mm2の硬さを有するものであることが好ましく、250~500N/mm2の硬さであることがより好ましく、300~450N/mm2の硬さであることがより好ましい。これにより、耐擦傷性が向上する。
【0014】
マルテンス硬さは、ダイナミック超微小硬度計DUH-211((株)島津製作所)にて測定することができる。圧子として、稜間角115度の三角すい圧子を用い、押し込み深さ0.25μm、負荷速度0.15mN/secの条件で測定することができる。そして、具体的なマルテンス硬さは、以下の式により算出される値である。
マルテンス硬さ[N/mm2]=荷重[μN]/(24.5×(深さ最大値hmax(μm)2
【0015】
<2.ハードコート層>
次に、ハードコート層について説明する。ハードコート層は、電離放射線硬化型樹脂、光重合開始剤などを含有するハードコート層形成用樹脂組成物を硬化させたものである。また、この組成物には、必要に応じて、後述する添加剤を配合することもできる。
【0016】
<2-1.電離放射線硬化型樹脂>
電離放射線硬化型樹脂とは、電離放射線(紫外線または電子線)により高分子化または架橋反応するラジカル重合性を有する化合物を含み、例えば、構造単位中にエチレン性の不飽和結合を少なくとも1個以上含む化合物、またはこれらの混合物とすることができる。
【0017】
不飽和結合を1個含む単官能の化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0018】
また、不飽和結合を2個含む二官能の化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0019】
また、不飽和結合を3個以上含む多官能化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
【0020】
また、上記(メタ)アクリレート化合物には、ウレタン系樹脂を混合することができる。ウレタン系樹脂としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート系樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。
【0021】
ウレタン系樹脂の分子量は、1000~10000が好ましく、2000~5000がさらに好ましい。また、分子量の測定方法としては、GPC法を用いることができる。
【0022】
ここで、(メタ)アクリレート化合物とウレタン系樹脂とを含む混合物100重量部に対し、ウレタン系樹脂は5~20重量部であることが好ましい。このうち、ウレタン系樹脂の分子量は、2000~5000であることが好ましい。
【0023】
<2-2.光重合開始剤>
重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンジルメチルケタール類、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン類、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1等のα-アミノケトン類、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類、2,2‘-ビス(o-クロロフェニル)-4,4‘,5,5‘-テトラフェニル-1,1‘-ビイミダゾール、ビス(2,4,5-トリフェニル)イミダゾール等のビスイミダゾール類、N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類、4,4‘-ジアジドカルコン等の有機アジド類、3,3‘,4,4‘-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボキシル)ベンゾフェノン等の有機過酸化物類をはじめ、J.Photochem.Sci.Technol.,2,283(1987).に記載される化合物を挙げることができる。
【0024】
具体的には、鉄アレーン錯体、トリハロゲノメチル置換S-トリアジン、スルフォニウム塩、ジアゾニウム塩、フォスフォニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。また、ヨードニウム塩としては、Macromolecules,10,1307(1977).に記載の化合物、例えば、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p-アニシル)ヨードニウム、ビス(m-ニトロフェニル)ヨードニウム、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p -クロロフェニル)ヨードニウムなどのヨードニウムのクロリド、ブロミド、あるいはホウフッ化塩、ヘキサフルオロフォスフェート塩、ヘキサフルオロアルセネート塩、芳香族スルホン酸塩等や、ジフェニルフェナシルスルホニウム(n-ブチル)トリフェニルボレート等のスルホニウム有機ホウ素錯体類を挙げることができる。
【0025】
<2-3.添加剤>
ハードコート層形成用樹脂組成物には、必要に応じて添加剤を配合することができる。例えば、レベリング、表面スリップ性、低水接触角性等を付与するシリコーン系、フッ素系の添加剤(例えば、レベリング剤)を挙げることができる。このような添加剤を配合することにより、ハードコート層の表面の耐擦傷性を向上することができる。また、光重合の際に、紫外線を利用する場合は、上述した添加剤の空気界面へのブリードによって、酸素による樹脂の硬化阻害を低下させることができる。したがって、低照射強度条件下においても有効な硬化度合を得ることができる。これらの添加剤の配合量は、ハードコート層形成用樹脂組成物100重量部に対し、0.01~0.5重量部とすることができる。
【0026】
<3.ハードコート層の物性>
ハードコート層の厚みは、30μm以上であることが好ましく、33μm以上がさらに好ましく、35μm以上が特に好ましい。これは、後述するように、ハードコート層の厚みが小さいと、十分な表面硬度が得られないからである。一方の厚みの上限としては、例えば、50μm以下が好ましく、45μm以下がさらに好ましく、40μm以下が特に好ましい。これは、後述するように、ハードコート層の厚みが大きいと高い表面硬度は得られるものの、耐光性が低下し、屋外での使用に支障を来すおそれがあることによる。すなわち、紫外線などの屋外環境でハードコート層が変色するのを防止することができる。
【0027】
また、ハードコート層に対し、UV照射器により、紫外線を照射し、積算光量が0である初期状態から50J/cm2のなった後のCIE規格の色度b*が3.0以下であることが好ましい。このようなb*の数値であれば、ハードコート層の着色を視認できない。このように、ハードコート層の色度b*の数値を低くすることにより表示装置のチューニングが不要になり工程を簡略化することできる。また、この条件での紫外線の照射前後での色度b*の差が、1.5以下であることが好ましい。このようなb*の差であれば、ハードコート層の色の変化を認識することができない。また、色度b*の紫外線照射前後の差を低減することによりコントラストの悪化を低減することができる。
【0028】
さらに、ハードコート層は、JIS5600-5-4(1999)で規定する表面鉛筆硬度試験で、6H以上であることが好ましい。これにより、ハードコート層の表面に傷が生じるのを防止することができる。なお、この6H以上という硬度は、上述した条件での紫外線の照射後においても維持されることが好ましい。
【0029】
<4.カバーフィルムの製造方法>
本発明に係るカバーフィルムの製造方法は、特には限定されないが、例えば、上記基材フィルムに、ハードコート層形成用樹脂組成物を塗布し、これを乾燥させた後、光重合により硬化させることで、カバーフィルムを得ることができる。
【0030】
ハードコート層形成用樹脂組成物の基材フィルムへの塗布方法としては、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等の公知の方法を採用することができる。
【0031】
塗布されたハードコート層形成用樹脂組成物を乾燥させる方法は特に限定されない。例えば、ハードコート層形成用樹脂組成物が塗布された基材フィルムを乾燥器内を通過させる方法が挙げられる。このときの乾燥温度は、例えば、40~100℃であることが好ましい。
【0032】
また、この塗膜の硬化には、電離放射線源として紫外線を使用することが好ましく、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源を利用することができる。
【0033】
<5.特徴>
本実施形態に係るカバーフィルムによれば、適度な表面硬度と耐光性とを両立することができる。したがって、例えば、スマートフォンやタブレットPC等の表示装置の表面に取付けられると、表示装置の表面を保護できるとともに、屋外で使用したときに、紫外線の照射などでハードコート層が変色するのを防止することができる。また、表面硬度が高いため、傷がつくのを防止することができる。
【実施例
【0034】
次に、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0035】
<1.実施例及び比較例の作製>
以下では、実施例1~4及び比較例1,2に係るカバーフィルムの作製について説明する。
【0036】
まず、基材フィルムとして、188μm厚のPETフィルム(東レ株式会社製ルミラーU48K-188)を準備した。
【0037】
次に、ハードコート層として、以下の組成を有する樹脂組成物を準備した。
・多官能モノマー:アクリル酸エステルを含むビニル化合物(分子量10万) 30重量部
・多官能モノマー:ウレタンアクリレート(分子量3000) 5重量部
・添加剤:コロイダルシリカ 20重量部
・光重合開始剤:イルガキュア184(BASFジャパン社製) 1重量部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル 50重量部
【0038】
そして、以下の厚みとなるように、ハードコート層形成用樹脂組成物を、基材フィルムの一方面に、ワイヤーバーコータを用いて塗工した。その後、ハードコート層形成用樹脂組成物を、80℃で2~5分間の熱処理で希釈溶媒を乾燥させた後、UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製高圧水銀UVランプ)を用いて、1000mJ/cm2の積算光量でUVを照射し、硬化させた。
【0039】
【表1】
【0040】
<2.耐光性試験>
上記のように作製した実施例1~4及び比較例1,2に対し、UV照射装置(アイグラフィックス株式会社製高圧水銀UVランプ)を用いて、1000mJ/cm2の積算光量で紫外線を50回照射した。これは、積算光量が50J/cm2の条件と等価である。そして、紫外線の照射の前後でCIE規格の色度b*を測定した。測定には、分光光度計(日立ハイテクノロジー社製U4100)を用い、透過色相測定モードにて行った。結果は、以下の通りである。
【表2】
【0041】
以上の結果からすると、ハードコート層の厚みが50μmより大きい比較例2では、いずれの視野角でも紫外線の照射前のb*が大きい。そして、紫外線の照射後にはこれが顕著となり、b*が3.0を超えている。そのため、比較例2は、目視でも十分に着色していることが分かった。さらに、紫外線の照射前後でb*の差が1.5以上となっているため、照射前後の比較例2を目視すると、その色の変化を視認することができた。その他の実施例1~4,及び比較例1では、紫外線の照射後の着色や照射前後の色の変化は目視では分からなかった。
【0042】
<3.鉛筆硬度評価試験>
実施例1~4及び比較例1,2のハードコート層に対し、JIS-K5600-5-4に準拠する表面鉛筆硬度試験を行った。すなわち、ハードコート層の表面に750gの荷重をかけた硬度2Hから9Hの鉛筆(三菱UNI)を順に用い、試験を行った。そして、ハードコート層の表面の傷による外観の変化を目視で評価した。また、この試験を、上述した条件による紫外線の照射後にも行った。以下の表3では、目視による傷が確認できなかったときの鉛筆硬度を示している。
【表3】
【0043】
以上の結果からすると、ハードコート層の厚みが30μmよりも小さい比較例1では、紫外線の照射前の鉛筆硬度が低く、紫外線の照射後には鉛筆硬度はさらに低くなった。すなわち、紫外線の照射により表面硬度が劣化していることが分かった。このような表面硬度の劣化は、他の実施例及び比較例でも生じているが、ハードコート層の厚みが大きい実施例3,4では、表面硬度の劣化が小さいことが分かった。
【0044】
以上の2つの評価試験により、本発明に係る実施例では、紫外線の照射によっても目視で気にならない程度にしか色が変化せず、また、紫外線の照射によっても、表面硬度の劣化が小さいことが分かった。