(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/75 20180101AFI20220128BHJP
F24F 11/62 20180101ALI20220128BHJP
F24F 110/00 20180101ALN20220128BHJP
F24F 130/00 20180101ALN20220128BHJP
F24F 140/00 20180101ALN20220128BHJP
【FI】
F24F11/75
F24F11/62
F24F110:00
F24F130:00
F24F140:00
(21)【出願番号】P 2017247010
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 敦
(72)【発明者】
【氏名】中北 直樹
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-158139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/75
F24F 11/62
F24F 110/00
F24F 130/00
F24F 140/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標給気温度の空調空気を生成する空調機と、
空調対象空間の空調状態に基づいて、前記空調機にて生成された空調空気の空調対象空間への給気風量を制御する可変風量ユニットと、
前記空調機にて生成する空調空気の目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御を実行する目標給気温度制御部とが備えられ、
前記可変風量ユニットは、前記目標給気温度制御部による前記目標給気温度制御の実行に伴って空調対象空間の空調状態が変化すると、その変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するように構成され
、
前記目標給気温度制御部は、空調対象空間の室内温度が所定範囲外であり且つ空調対象空間への給気風量が所定範囲外である状態が継続した場合に、前記目標給気温度制御の実行を停止して、空調対象空間への給気風量が所定範囲側に変更されるように目標給気温度を変更するように構成されている空調システム。
【請求項2】
目標給気温度の空調空気を生成する空調機と、
空調対象空間の空調状態に基づいて、前記空調機にて生成された空調空気の空調対象空間への給気風量を制御する可変風量ユニットと、
前記空調機にて生成する空調空気の目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御を実行する目標給気温度制御部とが備えられ、
前記可変風量ユニットは、前記目標給気温度制御部による前記目標給気温度制御の実行に伴って空調対象空間の空調状態が変化すると、その変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するように構成され、
前記目標給気温度制御部は、空調対象空間の室内温度が所定範囲外であり且つ空調対象空間への給気風量が所定範囲外である状態が継続した場合に、前記目標給気温度制御において、空調対象空間への給気風量が所定範囲側に変更されるように前記所定パターンを変更するように構成されている空調システム。
【請求項3】
前記目標給気温度制御における前記所定パターンは、空調対象空間の負荷状態に基づく基準目標給気温度と、基準目標給気温度を基準として設定されて基準目標給気温度とは異なる複数の設定用目標給気温度とに周期的に目標給気温度を変化させるパターンに設定され、
前記目標給気温度制御部は、前記目標給気温度制御において、前記基準目標給気温度を変更させることで、空調対象空間への給気風量が所定範囲側に変更されるように前記所定パターンを変更させるように構成されている請求項
2に記載の空調システム。
【請求項4】
目標給気温度の空調空気を生成する空調機と、
空調対象空間の空調状態に基づいて、前記空調機にて生成された空調空気の空調対象空間への給気風量を制御する可変風量ユニットと、
前記空調機にて生成する空調空気の目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御を実行する目標給気温度制御部とが備えられ、
前記可変風量ユニットは、前記目標給気温度制御部による前記目標給気温度制御の実行に伴って空調対象空間の空調状態が変化すると、その変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するように構成され、
前記目標給気温度制御部は、空調対象空間の室内温度と設定温度との偏差が所定範囲内であり且つ空調対象空間への給気風量が所定風量以下である場合に、前記目標給気温度制御を行うように構成されている空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機にて生成された空調空気を空調対象空間に給気する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような空調システムは、目標給気温度の空調空気を生成する空調機と、空調空気の空調対象空間への給気風量を制御する可変風量ユニットとが備えられている。可変風量ユニットは、空調対象空間の室内温度が使用者の人為操作等により設定された設定温度になるように、空調対象空間への空調空気の給気風量を制御している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のシステムでは、所定パターンにて設定温度を変化させて、空調対象空間の室内温度を上下にスイングさせることで、快適性の向上を図るようにしている。例えば、夏季の冷房運転において、設定温度を使用者等により要求されている温度よりも低い温度まで低下させることで、実際の温度以上の冷涼感を得ることができる。また、設定温度を緩やかに上昇させることで、要求されている温度とほぼ同じ冷感を得ることができる。
【0004】
所定パターンでは、設定温度をどのように変化させるかの設定温度の変化パターンに加えて、設定温度の変化に応じて可変風量ユニットによる給気風量をどのように変化させるかの給気風量の変化パターンが設定されている。これにより、設定温度だけでなく、空調対象空間への給気風量も所定パターンにて変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシステムでは、設定温度を使用者等が本来要求している温度よりも低い温度や高い温度に変化させているので、空調対象空間の室内温度が本来要求されている温度よりも低くなったり高くなったりして、空調対象空間の室内温度を本来要求されている温度に維持でき難くなる。よって、使用者等の要望に応えることができず、かえって快適性を損なう可能性がある。
【0007】
また、特許文献1に記載のシステムでは、給気風量を変化させるために、所定パターンにて、設定温度の変化に応じて可変風量ユニットによる給気風量をどのように変化させるかの給気風量の変化パターンも設定する必要があり、煩雑化を招くことになる。しかも、可変風量ユニットは、空調対象空間の室内温度が設定温度になるように、空調対象空間への空調空気の給気風量を制御するだけでなく、所定パターンにて設定された給気風量になるように、空調対象空間への空調空気の給気風量を制御することが必要となり、制御構成の複雑化を招くことになる。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、簡素な構成で給気風量を変化させることができながら、快適性の向上を図ることができる空調システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、目標給気温度の空調空気を生成する空調機と、
空調対象空間の空調状態に基づいて、前記空調機にて生成された空調空気の空調対象空間への給気風量を制御する可変風量ユニットと、
前記空調機にて生成する空調空気の目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御を実行する目標給気温度制御部とが備えられ、
前記可変風量ユニットは、前記目標給気温度制御部による前記目標給気温度制御の実行に伴って空調対象空間の空調状態が変化すると、その変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するように構成され、
前記目標給気温度制御部は、空調対象空間の室内温度が所定範囲外であり且つ空調対象空間への給気風量が所定範囲外である状態が継続した場合に、前記目標給気温度制御の実行を停止して、空調対象空間への給気風量が所定範囲側に変更されるように目標給気温度を変更するように構成されている点にある。
【0010】
本構成によれば、目標給気温度制御部が目標給気温度制御を実行すると、目標給気温度を所定パターンにて変化させるので、目標給気温度の変化に伴って空調対象空間の空調状態が変化する。可変風量ユニットは、変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するので、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。
【0011】
例えば、空調対象空間を冷房している場合に、目標給気温度が下降側に変化されると、空調対象空間への給気風量を低下側に変化させることができる。逆に、目標給気温度が上昇側に変化されると、空調対象空間への給気風量を増加側に変化させることができる。このようにして、目標給気温度を所定パターンにて変化させるという簡易な制御を行うだけで、可変風量ユニットの制御を利用して、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。しかも、可変風量ユニットは、空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するので、空調対象空間の負荷を適切に賄いながら、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。
【0012】
空調対象空間の負荷が小さい場合には、通常、可変風量ユニットの制御により空調対象空間への給気風量を低下させることになり、気流感が弱くなる可能性がある。このような場合でも、目標給気温度制御部が目標給気温度制御を実行することで、目標給気温度を上昇側に変化させることができ、その給気目標温度の変化に伴って、空調対象空間への給気風量を増加させることができる。よって、気流感が弱くなるのを防止することができ、使用者等の快適性の向上を図ることができる。また、空調対象空間への給気風量を増加させることで、空調対象空間における空気の混合及び空気の拡散を促進することができ、室内温度分布及び空気質分布を好適な状態とすることができる。更に、例えば、空調対象空間の還気に外気を混合して空調対象空間に給気するものでは、空調対象空間への給気風量を増加させることで、空調対象空間への給気風量の低下により外気供給不足となるのを防止することができ、十分な外気供給を行うことができる。
【0014】
更に、本構成によれば、目標給気温度制御部は、空調対象空間の室内温度が所定範囲外であり且つ空調対象空間への給気風量が所定範囲外である状態が継続した場合に、空調対象空間の空調を行うのに当たり不都合を生じているとして、目標給気温度制御の実行を停止して、目標給気温度を変更させることができる。この目標給気温度の変更により、空調対象空間への給気風量を所定範囲内に変更させることができ、空調対象空間の空調を適切に行うことができる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、目標給気温度の空調空気を生成する空調機と、
空調対象空間の空調状態に基づいて、前記空調機にて生成された空調空気の空調対象空間への給気風量を制御する可変風量ユニットと、
前記空調機にて生成する空調空気の目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御を実行する目標給気温度制御部とが備えられ、
前記可変風量ユニットは、前記目標給気温度制御部による前記目標給気温度制御の実行に伴って空調対象空間の空調状態が変化すると、その変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するように構成され、
前記目標給気温度制御部は、空調対象空間の室内温度が所定範囲外であり且つ空調対象空間への給気風量が所定範囲外である状態が継続した場合に、前記目標給気温度制御において、空調対象空間への給気風量が所定範囲側に変更されるように前記所定パターンを変更するように構成されている点にある。
【0016】
本構成によれば、目標給気温度制御部が目標給気温度制御を実行すると、目標給気温度を所定パターンにて変化させるので、目標給気温度の変化に伴って空調対象空間の空調状態が変化する。可変風量ユニットは、変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するので、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。
例えば、空調対象空間を冷房している場合に、目標給気温度が下降側に変化されると、空調対象空間への給気風量を低下側に変化させることができる。逆に、目標給気温度が上昇側に変化されると、空調対象空間への給気風量を増加側に変化させることができる。このようにして、目標給気温度を所定パターンにて変化させるという簡易な制御を行うだけで、可変風量ユニットの制御を利用して、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。しかも、可変風量ユニットは、空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するので、空調対象空間の負荷を適切に賄いながら、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。
空調対象空間の負荷が小さい場合には、通常、可変風量ユニットの制御により空調対象空間への給気風量を低下させることになり、気流感が弱くなる可能性がある。このような場合でも、目標給気温度制御部が目標給気温度制御を実行することで、目標給気温度を上昇側に変化させることができ、その給気目標温度の変化に伴って、空調対象空間への給気風量を増加させることができる。よって、気流感が弱くなるのを防止することができ、使用者等の快適性の向上を図ることができる。また、空調対象空間への給気風量を増加させることで、空調対象空間における空気の混合及び空気の拡散を促進することができ、室内温度分布及び空気質分布を好適な状態とすることができる。更に、例えば、空調対象空間の還気に外気を混合して空調対象空間に給気するものでは、空調対象空間への給気風量を増加させることで、空調対象空間への給気風量の低下により外気供給不足となるのを防止することができ、十分な外気供給を行うことができる。
更に、本構成によれば、目標給気温度制御部は、空調対象空間の室内温度が所定範囲外であり且つ空調対象空間への給気風量が所定範囲外である状態が継続した場合に、空調対象空間の空調を行うのに当たり不都合を生じているとして、所定パターンを変更させることができる。この所定パターンの変更により、空調対象空間への給気風量を所定範囲内に変更させることができ、空調対象空間の空調を適切に行うことができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、前記目標給気温度制御における前記所定パターンは、空調対象空間の負荷状態に基づく基準目標給気温度と、基準目標給気温度を基準として設定されて基準目標給気温度とは異なる複数の設定用目標給気温度とに周期的に目標給気温度を変化させるパターンに設定され、
前記目標給気温度制御部は、前記目標給気温度制御において、前記基準目標給気温度を変更させることで、空調対象空間への給気風量が所定範囲側に変更されるように前記所定パターンを変更させるように構成されている点にある。
【0018】
本構成によれば、基準目標給気温度を変更させるという簡易な制御により、所定パターンを変更させることができ、構成の簡素化を図ることができる。しかも、所定パターンにおいて、基準となる基準目標給気温度を変更させるので、空調対象空間への給気風量を所定範囲内とするためのパターンに所定パターンを適切に変更させることができ、空調対象空間の空調を適切に行うことができる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、目標給気温度の空調空気を生成する空調機と、
空調対象空間の空調状態に基づいて、前記空調機にて生成された空調空気の空調対象空間への給気風量を制御する可変風量ユニットと、
前記空調機にて生成する空調空気の目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御を実行する目標給気温度制御部とが備えられ、
前記可変風量ユニットは、前記目標給気温度制御部による前記目標給気温度制御の実行に伴って空調対象空間の空調状態が変化すると、その変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するように構成され、
前記目標給気温度制御部は、空調対象空間の室内温度と設定温度との偏差が所定範囲内であり且つ空調対象空間への給気風量が所定風量以下である場合に、前記目標給気温度制御を行うように構成されている点にある。
【0020】
本構成によれば、目標給気温度制御部が目標給気温度制御を実行すると、目標給気温度を所定パターンにて変化させるので、目標給気温度の変化に伴って空調対象空間の空調状態が変化する。可変風量ユニットは、変化後の空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するので、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。
例えば、空調対象空間を冷房している場合に、目標給気温度が下降側に変化されると、空調対象空間への給気風量を低下側に変化させることができる。逆に、目標給気温度が上昇側に変化されると、空調対象空間への給気風量を増加側に変化させることができる。このようにして、目標給気温度を所定パターンにて変化させるという簡易な制御を行うだけで、可変風量ユニットの制御を利用して、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。しかも、可変風量ユニットは、空調対象空間の空調状態に基づいて、空調対象空間への給気風量を制御するので、空調対象空間の負荷を適切に賄いながら、空調対象空間への給気風量を変化させることができる。
空調対象空間の負荷が小さい場合には、通常、可変風量ユニットの制御により空調対象空間への給気風量を低下させることになり、気流感が弱くなる可能性がある。このような場合でも、目標給気温度制御部が目標給気温度制御を実行することで、目標給気温度を上昇側に変化させることができ、その給気目標温度の変化に伴って、空調対象空間への給気風量を増加させることができる。よって、気流感が弱くなるのを防止することができ、使用者等の快適性の向上を図ることができる。また、空調対象空間への給気風量を増加させることで、空調対象空間における空気の混合及び空気の拡散を促進することができ、室内温度分布及び空気質分布を好適な状態とすることができる。更に、例えば、空調対象空間の還気に外気を混合して空調対象空間に給気するものでは、空調対象空間への給気風量を増加させることで、空調対象空間への給気風量の低下により外気供給不足となるのを防止することができ、十分な外気供給を行うことができる。
更に、本構成によれば、空調対象空間の室内温度と設定温度との偏差が所定範囲内であり且つ空調対象空間への給気風量が所定風量以下であるという好適な条件下において、目標給気温度制御部が目標給気温度制御を行うことができる。これにより、快適性の向上等、目標給気温度制御を実行することによる効果を十分に発揮することができ、使用者等にとって大変使い勝手のよい空調システムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】空調対象空間を冷房する際の動作を示すフローチャート
【
図3】目標給気温度制御における動作を示すフローチャート
【
図4】所定パターンとVAV風量の変化を示すグラフ
【
図5】目標給気温度制御における動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る空調システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、空調システムは、空調空気A1を生成する空調機2と、空調機2にて生成された空調空気A1を空調対象空間1に供給する給気路3と、空調空気A1の空調対象空間1への給気風量を制御する可変風量ユニット4と、空調機2にて生成する空調空気A1の目標給気温度を制御する目標給気温度制御部5とが備えられている。
【0023】
この実施形態では、
図1に示すように、空調対象空間1(1つの居室)が連通する状態で第1エリア1aと第2エリア1bとに分けられている。よって、給気路3の下流側部位が、第1エリア1aに対応する第1分岐給気路3aと第2エリア1bに対応する第2分岐給気路3bとに分岐されている。可変風量ユニット4は、第1分岐給気路3a及び第2分岐給気路3bの夫々に配置され、第1エリア1aに対応する第1可変風量ユニット4aと第2エリア1bに対応する第2可変風量ユニット4bとが備えられている。このように、エリアの数と給気路3における分岐路の数と可変風量ユニット4の数とは同数となるようにしている。空調対象空間1のいくつのエリアに分けるかは適宜変更が可能であり、エリアの数に応じて、分岐路及び可変風量ユニット4の数も変更可能である。
【0024】
空調機2は、例えば、空調対象空間1に隣接する空間等に配置されている。空調機2は、空調対象空間1からの還気A2を空調処理して目標給気温度の空調空気A1を生成する空調処理部21を備えている。空調機2は、外気A3を取入可能に構成されており、空調対象空間1からの還気A2だけでなく、取り入れた外気A3、又は、外気A3に還気A2を混合させた混合気を、空調処理部21にて空調処理可能に構成されている。
【0025】
空調機2には、空調対象空間1からの還気A2を空調機2に供給する還気路6が接続されている。還気路6は、空調対象空間1の天井空間7に開放されており、空調対象空間1からの還気A2を、天井空間7を通して空調機2に供給するように構成されている。還気路6の途中部位には、外気A3を取り入れる外気取入路8が接続されており、取り入れた外気A3、又は、外気A3に還気A2を混合させた混合気を、空調機2に供給するように構成されている。
【0026】
空調機2は、空調処理部21に加えて、空調ファン22が備えられている。空調機2は、空調ファン22を作動させることで、空気(還気A2のみ、外気A3のみ、還気A2と外気A3の混合気)を取り入れて空調処理部21にて空調空気A1を生成し、その生成された空調空気A1を空調対象空間1に供給するように構成されている。空調処理部21は、図外の熱源機から循環供給される熱媒体(例えば、冷水)と供給される空気とを熱交換させて、供給される空気を冷却処理する冷水コイルにて構成されている。ちなみに、空調処理部21は、供給される空気を冷却処理するだけでなく、熱源機から供給される熱媒体(例えば、温水)にて供給される空気を加熱処理する冷温水コイルとすることもでき、どのような構成とするかは適宜変更が可能である。
【0027】
空調機2には、図示は省略するが、空調処理部21の制御を行う空調機用制御部が備えられている。空調機用制御部は、空調処理部21に対して供給される熱媒体の供給量を制御することで、空調処理部21を制御している。空調機用制御部は、空調ファン22の作動状態を制御するとともに、生成する空調空気A1の温度が目標給気温度となるように、空調処理部21を制御している。
【0028】
可変風量ユニット4は、例えば、給気路3の流路面積を調整自在なダンパー等を備えており、給気路3の流路面積を調整することで、空調空気A1の空調対象空間1への給気風量を調整自在に構成されている。可変風量ユニット4は、空調対象空間1の空調状態(負荷状態)に基づいて、空調対象空間1の室内温度が設定温度になるように、空調空気A1の空調対象空間1への給気風量を制御している。ここで、空調対象空間1の室内温度は、空調対象空間1に配置された温度センサT1,T2の検出温度とすることができ、設定温度は、使用者のリモコン操作等により設定された温度となっている。
【0029】
この実施形態では、空調対象空間1が複数のエリア1a,1bに分けられているので、可変風量ユニット4は、各エリア1a,1bに対する給気風量を各別に制御している。第1エリア1aに対応する第1可変風量ユニット4aは、温度センサT1の検出温度が室内温度になるように、空調空気A1の第1エリア1aへの給気風量を制御している。第2エリア1bに対応する第2可変風量ユニット4bは、温度センサT2の検出温度が室内温度になるように、空調空気A1の第2エリア1bへの給気風量を制御している。
【0030】
この空調システムでは、空調対象空間1の負荷状態に基づいて、その負荷を賄うために、空調機2における目標給気温度を求めている。通常制御では、目標給気温度を求めると、空調機2が、その目標給気温度の空調空気A1を生成し、給気路3を通して空調空気A1を空調対象空間1に供給している。また、可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度が設定温度になるように、空調空気A1の空調対象空間1への給気風量を制御している。
【0031】
目標給気温度の求め方について説明を加えると、目標給気温度は、リモコン等を用いて使用者の人為操作により設定される設定温度と、空調対象空間1の室内温度と、設定温度と室内温度との偏差に対する目標給気温度の関係等を用いて求めることができる。設定温度と室内温度との偏差に対する目標給気温度の関係は、例えば、偏差の大きさに応じて、目標給気温度をどれぐらいにすべきかを示す関係であり、実験やその他各種の条件に基づいて予め設定されている。空調対象空間1の室内温度は、空調対象空間1に配置された温度センサT1,T2の検出温度から取得することができる。例えば、複数の温度センサT1,T2を備える場合には、各温度センサT1,T2の検出温度の平均値を求めることで、空調対象空間1の室内温度(平均値)を取得することができる。また、冷房を行う場合には、複数の温度センサT1,T2の検出温度のうち、一番高い検出温度を、空調対象空間1の室内温度として取得することもできる。
【0032】
この空調システムでは、通常制御を行うだけでなく、目標給気温度を積極的に変化させることで、空調空気A1の空調対象空間1への給気風量を変化させるための制御を実行可能に構成されている。そのために、空調機2にて生成する空調空気A1の目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御を実行する目標給気温度制御部5が備えられている。
【0033】
目標給気温度制御の動作については後述するが、所定パターンについて説明する。所定パターンは、例えば、
図4に示すように、基準目標給気温度と複数の設定用目標給気温度とに周期的(所定時間が経過する毎)に目標給気温度を変化させるパターンを設定することができる。基準目標給気温度は、空調対象空間1の負荷状態に基づいて求めることができる。例えば、上述の如く、設定温度、室内温度、及び、設定温度と室内温度との偏差に対する目標給気温度の関係等を用いて求めた目標給気温度を基準目標給気温度とすることができる。設定用目標給気温度は、基準目標給気温度を基準として、基準目標給気温度とは異なる温度が設定されている。
図4に示すものでは、例えば、設定用目標給気温度として、基準目標給気温度よりも所定温度(例えば、2℃)だけ高い温度の上昇側の設定用目標給気温度と、基準目標給気温度よりも所定温度(例えば、2℃)だけ低い温度の下降側の設定用目標給気温度とを設定している。これにより、基準目標給気温度を16℃、上昇側の設定用目標給気温度を18℃、下降側の設定用目標給気温度を14℃に設定しており、給気目標温度を、基準給気目標温度を中心として上下に変化させることができる。
【0034】
以下、空調対象空間1を冷房する際の動作について、
図2及び
図3のフローチャートに基づいて説明する。ちなみに、
図2は、空調対象空間1を冷房する際の空調システムの全体におけるフローチャートであり、
図3は、目標給気温度制御部5による目標給気温度制御の実行におけるフローチャートである。
【0035】
まず、使用者等の人為操作により空調対象空間1における設定温度の設定を行う(ステップ#1)。この設定温度の設定は、空調対象空間1の全体における全体設定温度を設定可能とし、その全体設定温度を設定温度として設定することができる。また、各エリア1a,1bにおけるエリア設定温度を設定可能とし、エリア設定温度の平均温度を設定温度として設定することもできる。更に、冷房する場合には、一番低いエリア設定温度を設定温度として設定することもできる。
【0036】
次に、目標給気温度制御における所定パターンの設定を行う(ステップ#2)。この所定パターンの設定では、例えば、目標給気温度を周期的に変化させるための所定時間、基準目標給気温度、及び、設定用目標給気温度の設定を行っている。例えば、
図4に示すものでは、所定時間を10分とし、ステップ#3にて求める目標給気温度を基準目標給気温度として設定している。また、設定用目標給気温度として、基準目標温度よりも所定温度(2℃)高い上昇側の設定用目標給気温度と、基準目標温度よりも所定温度(2℃)低い下降側の設定用目標給気温度とを設定している。所定パターンの設定は、使用者等の人為操作に基づいて行うことも可能であるが、目標給気温度制御部5が自動的に所定パターンを設定することも可能である。
【0037】
目標給気温度制御部5は、目標給気温度の演算を行う(ステップ#3)。空調対象空間1の目標空調状態として、空調対象空間1における設定温度を使用者等の人為操作により設定している(ステップ#1参照)。そこで、目標給気温度の求め方として上述した如く、目標給気温度制御部5は、設定された設定温度と空調対象空間1の室内温度との偏差、及び、その偏差に対する目標給気温度の関係等を用いて、目標給気温度を求めている。
【0038】
目標給気温度制御部5は、目標給気温度を求める際に、設定温度と室内温度との偏差を求めており、その偏差が所定範囲内であるか否かを判別している(ステップ#4)。また、目標給気温度制御部5は、求めた目標給気温度の空調空気A1を空調対象空間1に供給した場合に、空調対象空間1の負荷状態を賄うために必要となる可変風量ユニット4による空調対象空間1への給気風量(以下、可変風量ユニット4による空調対象空間1への給気風量を「VAV風量」と呼称する)を求めており、そのVAV風量が所定風量(80%)以下であるか否かを判別している(ステップ#5)。
【0039】
目標給気温度制御部5は、設定温度と空調対象空間1の室内温度との偏差が所定範囲内であり、且つ、VAV風量が所定風量(80%)以下である場合に、目標給気温度制御を行う(ステップ#4のYesの場合、ステップ#5のYesの場合、ステップ#6)。目標給気温度制御における動作については後述する。
【0040】
目標給気温度制御部5は、設定温度と室内温度との偏差が所定範囲外であるという条件、及び、VAV風量が所定風量(80%)を超えるという条件のいずれかの条件が満たされると、通常制御を行う(ステップ#4のNoの場合、ステップ#5のNoの場合、ステップ#7)。
【0041】
通常制御では、上述の如く、求めた給気目標温度の空調空気A1を空調対象空間1に供給しながら、空調対象空間1への給気風量を制御している。空調機用制御部が、空調空気A1の温度が求めた目標給気温度となるように、空調処理部21を制御することで、空調機2にて目標給気温度の空調空気A1を生成している。可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御している。
【0042】
図3に基づいて、目標給気温度制御における動作について説明する。
目標給気温度制御では、目標給気温度制御部5が、目標給気温度を所定パターンにて変化させる(ステップ#11)。例えば、
図4に示すように、所定パターンとして、基準目標給気温度(16℃)と上昇側の設定用目標給気温度(18℃)と下降側の設定用目標給気温度(14℃)とに周期的(設定時間(例えば10分)が経過する毎)に目標給気温度を変化させるパターンが設定されている場合について説明する。
【0043】
目標給気温度制御部5は、
図4に示すように、まず、目標給気温度を基準目標給気温度(例えば、16℃)に設定する。これにより、空調機2では、基準目標給気温度の空調空気A1を生成し、その空調空気A1を給気路3を通して空調対象空間1に供給する。このとき、可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御する。このようにして、基準目標給気温度の空調空気A1を空調対象空間1に供給しながら、空調対象空間1の負荷状態を賄うように、VAV風量を制御している。
図4に示すものでは、VAV風量について、当初、80%となっており、空調対象空間1に空調空気A1を供給することで、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)と設定温度との偏差が小さくなるので、VAV風量が徐々に低下している。
【0044】
目標給気温度を基準目標給気温度に設定してから所定時間(例えば、10分)が経過すると、目標給気温度制御部5は、目標給気温度を下降側の設定用目標給気温度(14℃)に変化させる。これにより、空調機2では、下降側の設定用目標給気温度の空調空気A1を生成し、その空調空気A1を給気路3を通して空調対象空間1に供給する。このときも、可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御する。
【0045】
目標給気温度制御部5が目標給気温度制御を実行することで、目標給気温度を基準目標給気温度(16℃)から下降側の設定用目標給気温度(14℃)に変化させると、空調対象空間1に供給される空調空気A1の温度が基準目標給気温度(16℃)から下降側の設定用目標給気温度(14℃)に低下するので、それに伴って空調対象空間1の空調状態が変化する。そこで、可変風量ユニット4は、目標給気温度を下降側の設定用目標給気温度に変化させるに伴って空調対象空間1の空調状態が変化すると、その変化後の空調対象空間1の空調状態に基づいて、VAV風量を制御することになる。
【0046】
空調対象空間1に供給する空調空気A1の温度が基準目標給気温度(16℃)から下降側の設定用目標給気温度(14℃)に低下すると、空調対象空間1の室内温度と設定温度との偏差が小さくなる。このとき、可変風量ユニット4が、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御するので、VAV風量を低下させることができる。
【0047】
目標給気温度を下降側の設定用給気温度に設定してから所定時間(例えば、10分)が経過すると、目標給気温度制御部5は、目標給気温度を基準目標給気温度(16℃)に変化させる。これにより、空調機2では、基準目標給気温度の空調空気A1を生成し、その空調空気A1を給気路3を通して空調対象空間1に供給する。このときも、可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御する。
【0048】
空調対象空間1に供給する空調空気A1の温度が下降側の設定用目標給気温度(14℃)から基準目標給気温度(16℃)に上昇すると、空調対象空間1の室内温度と設定温度との偏差が大きくなる。このとき、可変風量ユニット4が、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御するので、VAV風量を増加させることができる。
【0049】
目標給気温度を基準目標給気温度に設定してから所定時間(例えば、10分)が経過すると、目標給気温度制御部5は、目標給気温度を上昇側の設定用目標給気温度(18℃)に変化させる。これにより、空調機2では、上昇側の設定用目標給気温度の空調空気A1を生成し、その空調空気A1を給気路3を通して空調対象空間1に供給する。このときも、可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御する。
【0050】
空調対象空間1に供給する空調空気A1の温度が基準目標給気温度(16℃)から上昇側の設定用目標給気温度(18℃)に上昇すると、空調対象空間1の室内温度と設定温度との偏差が大きくなる。このとき、可変風量ユニット4が、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御するので、VAV風量を増加させることができる。
【0051】
目標給気温度制御部5が目標給気温度制御を実行すると、所定時間が経過する毎に目標給気温度を、基準目標給気温度→下降側の設定用目標給気温度→基準目標給気温度→上昇側の設定用目標給気温度の順に変化させており、この周期的な変化を繰り返し行うようにしている。給気目標温度の変化に伴って空調対象空間1の空調状態が変化し、可変風量ユニット4が、変化後の空調対象空間1の空調状態に基づいて、VAV風量を制御するので、VAV風量を低下側又は増加側に変化させることができる。
【0052】
このようにして、目標給気温度を所定パターンにて変化させるという簡易な制御を行うだけで、可変風量ユニット4の制御を利用して、空調対象空間1への給気風量(VAV風量)を変化させることができる。しかも、可変風量ユニット4は、空調対象空間1の空調状態に基づいて、VAV風量を制御するので、空調対象空間1の負荷を適切に賄いながら、VAV風量を変化させることができる。
【0053】
例えば、空調対象空間1の負荷が小さい場合には、空調対象空間1の室内温度と設定温度との偏差が小さくなるので、通常制御では、可変風量ユニット4の制御によりVAV風量を低下させることになり、気流感が弱くなる可能性がある。このような場合でも、目標給気温度制御を実行することで、例えば、下降側の設定用目標給気温度→基準目標給気温度、及び、基準目標給気温度→上昇側の設定用目標給気温度等のように、目標給気温度を上昇側に変化させると、その給気目標温度の変化に伴って、VAV風量を増加させることができる。よって、気流感が弱くなるのを防止することができ、使用者等の快適性の向上を図ることができる。また、VAV風量を増加させることで、空調対象空間1における空気の混合及び空気の拡散を促進することができ、室内温度分布及び空気質分布を好適な状態とすることができる。更に、この実施形態では、空調対象空間1の還気A2に外気A3を混合して空調対象空間1に給気可能としているので、VAV風量を増加させることで、VAV風量の低下により外気供給不足となるのを防止することができ、十分な外気供給を行うことができる。
【0054】
図4に示す所定パターンでは、基準目標給気温度→下降側の設定用目標給気温度→基準目標給気温度→上昇側の設定用目標給気温度の順に、給気目標温度を変化させているので、VAV風量を滑らかに変化させることができ、VAV風量の急激な変化によって使用者等に不快感を与えるのを防止することができる。しかも、基準目標給気温度を中心として、下降側の設定用目標給気温度と上昇側の設定用目標給気温度とに変化させるので、バランスよく給気目標温度を変化させることができ、冷え過ぎや冷却不足の発生を抑制しながら、空調対象空間1の冷房を適切に行うことができる。
【0055】
このように、目標給気温度制御部5が目標給気温度制御を行うことで、目標給気温度を所定パターンにて変化させているが、目標給気温度制御の実行中に、空調対象空間1の室内温度が所定範囲外であり且つVAV風量が所定範囲外である状態が継続した場合には、空調対象空間1の負荷を賄えない状態(冷却不足)となったり、空調対象空間1の冷え過ぎを招く可能性がある。
【0056】
そこで、目標給気温度制御部5は、空調対象空間1の室内温度が所定範囲外であり且つVAV風量が所定範囲外である状態が継続している場合に、冷却不足や冷え過ぎを解消するための制御を行っている。
【0057】
図3に戻り、目標給気温度制御部5は、目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御の実行中に(ステップ#11)、VAV風量が100%であり且つ室内温度が設定温度よりも高いか否か、及び、VAV風量が下限風量であり且つ室内温度が設定温度よりも低いか否かを判別することで(ステップ#12、ステップ#15)、空調対象空間1の室内温度が所定範囲外であり且つVAV風量が所定範囲外である状態が継続しているか否かを判別している。
【0058】
VAV風量が100%であり且つ室内温度が設定温度よりも高い場合には、VAV風量を100%にしても、室内温度が設定温度まで低下しておらず、空調対象空間1の負荷を賄えていない状態(冷却不足)となっている。そこで、VAV風量が100%であり且つ室内温度が設定温度よりも高い場合には、目標給気温度制御部5が、目標給気温度制御を停止して、VAV風量が所定範囲側に変更されるように目標給気温度を変更している(ステップ#12のYesの場合、ステップ#13、ステップ#14)。目標給気温度制御部5は、現在の目標給気温度が下降側の設定用目標給気温度でなければ、目標給気温度を下げている(ステップ#13のNoの場合、ステップ#14)。目標給気温度を下げる手法としては、現在の目標給気温度がどのような温度であるかによって異なり、現在の目標給気温度が基準目標給気温度であれば、下降側の設定用目標給気温度に下げ、現在の目標給気温度が上昇側の設定用目標給気温度であれば、基準目標給気温度に下げている。
【0059】
目標給気温度を下げると、空調対象空間1に対して、これまでよりも低い目標給気温度の空調空気A1を供給するので、室内温度を設定温度まで低下させることができ、空調対象空間1の冷房不足を解消することができる。可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御しているので、目標給気温度の低下に伴って空調対象空間1の室内温度と設定温度の偏差が小さくなり、VAV風量が100%から徐々に低下されて所定範囲(例えば、40%~80%の範囲)内となる。
【0060】
目標給気温度制御部5は、現在の目標給気温度が下降側の設定用目標給気温度であれば、目標給気温度を下げることなく、通常制御に移行している(ステップ#13のYesの場合、ステップ#19)。
【0061】
VAV風量が下限風量であり且つ室内温度が設定温度よりも低い場合には、VAV風量を下限風量にしても、室内温度が設定温度よりも低い温度まで低下しており、空調対象空間1が冷え過ぎとなっている。そこで、VAV風量が下限風量であり且つ室内温度が設定温度よりも低い場合には、目標給気温度制御部5が、目標給気温度制御を停止して、VAV風量が所定範囲側に変更されるように目標給気温度を変更している(ステップ#15のYesの場合、ステップ#16、ステップ#17)。目標給気温度制御部5は、現在の目標給気温度が上昇側の設定用目標給気温度でなければ、目標給気温度を上げている(ステップ#16のNoの場合、ステップ#17)。目標給気温度を上げる手法としては、現在の目標給気温度がどのような温度であるかによって異なり、現在の目標給気温度が基準目標給気温度であれば、上昇側の設定用目標給気温度に上げ、現在の目標給気温度が下降側の設定用目標給気温度であれば、基準目標給気温度に上げている。
【0062】
目標給気温度を上げると、空調対象空間1に対して、これまでよりも高い目標給気温度の空調空気A1を供給するので、室内温度を設定温度まで上昇させることができ、空調対象空間1の冷え過ぎを防止することができる。可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御しているので、目標給気温度の上昇に伴って空調対象空間1の室内温度と設定温度の偏差が大きくなり、VAV風量が下限風量から徐々に増加されて所定範囲(例えば、40%~80%の範囲)内となる。
【0063】
目標給気温度制御部5は、現在の目標給気温度が上昇側の設定用目標給気温度であれば、目標給気温度を上げることなく、通常制御に移行している(ステップ#16のYesの場合、ステップ#19)。
【0064】
目標給気温度制御部5は、目標給気温度制御の実行中に、目標給気温度制御を解除するための解除信号があれば、目標給気温度制御を解除して、通常制御に移行している(ステップ#18のYesの場合、ステップ#19)。目標給気温度制御を解除するための解除信号については、例えば、リモコン等を用いて使用者の人為操作等に基づいて、解除信号を出力することができる。また、例えば、目標給気温度制御を開始してから設定時間が経過する等、解除信号用の条件を予め定めておき、その条件が満たされることで、解除信号を出力することもできる。
【0065】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、上記第1実施形態において、目標給気温度制御の実行中に冷却不足や冷え過ぎ等の不都合を生じた場合に、冷却不足や冷え過ぎを解消するための制御として、どのような制御を行うかの別実施形態である。
【0066】
上記第1実施形態では、目標給気温度制御の実行中に冷却不足や冷え過ぎ等の不都合を生じると、目標給気温度制御部5は、目標給気温度制御を停止して、空調対象空間1への給気風量が所定範囲側に変更されるように目標給気温度を変更する制御を行っている。それに対して、第2実施形態では、目標給気温度制御の実行中に冷却不足や冷え過ぎ等の不都合を生じると、目標給気温度制御部5が、目標給気温度制御の実行を継続しながら、目標給気温度制御において、空調対象空間1への給気風量が所定範囲側に変更されるように所定パターンを変更する制御を行う。
【0067】
このように、第2実施形態では、冷却不足や冷え過ぎを解消するための制御が上記第1実施形態と異なるだけであるので、
図5のフローチャートに基づいて、上記第1実施形態と異なる制御のみ説明を加え、その他の構成等については説明を省略する。ちなみに、
図5のフローチャートは、上記第1実施形態における
図3のフローチャートに代わるものであり、
図2のフローチャートにおける動作等は、第2実施形態においても同様の動作を行う。
【0068】
図5に示すように、目標給気温度制御では、目標給気温度制御部5が、目標給気温度を所定パターンにて変化させる(ステップ#21)。この目標給気温度を所定パターンにて変化させる動作について、上記第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0069】
目標給気温度制御部5は、目標給気温度を所定パターンにて変化させる目標給気温度制御の実行中に(ステップ#21)、VAV風量が100%であり且つ室内温度が設定温度よりも高いか否か、及び、VAV風量が下限風量であり且つ室内温度が設定温度よりも低いか否かを判別することで(ステップ#22、ステップ#24)、空調対象空間1の室内温度が所定範囲外であり且つVAV風量が所定範囲外である状態が継続しているか否かを判別している。
【0070】
VAV風量が100%であり且つ室内温度が設定温度よりも高い場合には、目標給気温度制御部5が、基準目標給気温度を下げることで、VAV風量が所定範囲側に変更されるように所定パターンを変更している(ステップ#22のYesの場合、ステップ#23)。基準目標給気温度を下げる手法として、例えば、基準目標給気温度を所定温度(例えば、2℃)下げており、基準目標給気温度の低下に伴って、上昇側の設定用目標給気温度及び下降側の設定用目標給気温度も所定温度(例えば、2℃)下げることになる。つまり、
図4に示すものでは、基準目標給気温度が16℃→14℃、上昇側の設定用目標給気温度が18℃→16℃、下降側の設定用目標給気温度が14℃→12℃に変更されることになる。
【0071】
基準目標給気温度、上昇側の設定用目標給気温度、及び、下降側の設定用目標給気温度を下げると、空調対象空間1に対して、これまでよりも低い目標給気温度の空調空気A1を供給するので、室内温度を設定温度まで低下させることができ、空調対象空間1の冷房不足を解消することができる。可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御しているので、目標給気温度の低下に伴って空調対象空間1の室内温度と設定温度の偏差が小さくなり、VAV風量が100%から徐々に低下されて所定範囲(例えば、40%~80%の範囲)内となる。
【0072】
VAV風量が下限風量であり且つ室内温度が設定温度よりも低い場合には、目標給気温度制御部5が、基準目標給気温度を上げることで、VAV風量が所定範囲側に変更されるように所定パターンを変更している(ステップ#24のYesの場合、ステップ#25)。基準目標給気温度を上げる手法として、例えば、基準目標給気温度を所定温度(例えば、2℃)上げており、基準目標給気温度の上昇に伴って、上昇側の設定用目標給気温度及び下降側の設定用目標給気温度も所定温度(例えば、2℃)上げることになる。つまり、
図4に示すものでは、基準目標給気温度が16℃→18℃、上昇側の設定用目標給気温度が18℃→20℃、下降側の設定用目標給気温度が14℃→16℃に変更されることになる。
【0073】
基準目標給気温度、上昇側の設定用目標給気温度、及び、下降側の設定用目標給気温度を上げると、空調対象空間1に対して、これまでよりも高い目標給気温度の空調空気A1を供給するので、室内温度を設定温度まで上昇させることができ、空調対象空間1の冷え過ぎを防止することができる。可変風量ユニット4は、空調対象空間1の室内温度(温度センサT1,T2の検出温度)が設定温度になるように、VAV風量を制御しているので、目標給気温度の上昇に伴って空調対象空間1の室内温度と設定温度の偏差が大きくなり、VAV風量が下限風量から徐々に増加されて所定範囲(例えば、40%~80%の範囲)内となる。
【0074】
目標給気温度制御部5は、目標給気温度制御の実行中に、目標給気温度制御を解除するための解除信号があれば、目標給気温度制御を解除して、通常制御に移行している(ステップ#26のYesの場合、ステップ#27)。
【0075】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0076】
(1)上記実施形態では、空調対象空間1を複数のエリア1a,1bに分けているが、例えば、空調対象空間1を複数のエリアに分けなくてもよい。
【0077】
(2)目標給気温度制御における所定パターンについて、
図4に示すものに限らず、各種のパターンを設定することができる。例えば、基準目標給気温度を16℃とすると、設定用目標給気温度として、基準目標給気温度よりも所定温度(例えば、2℃)だけ高い温度の第1設定用目標給気温度(例えば、18℃)と、基準目標給気温度よりも所定温度の2倍高い温度の第2設定用目標給気温度(例えば、20℃)とを設定することができる。このパターンを設定した場合には、目標給気温度を、16℃→18℃→20℃の順で徐々に上昇させる形態で変化させることができる。
【0078】
また、基準目標給気温度と複数の設定用目標給気温度とに周期的に目標給気温度を変化させるに当たり、一定の所定時間が経過する毎に目標給気温度を変化させているが、第1所定時間が経過すると目標給気温度を変化させ、その後、第1所定時間とは異なる第2所定時間が経過すると目標給気温度を変化させることもできる。
【0079】
このように、所定パターンとしては、目標給気温度をどのような温度に変化させるか、複数の温度のうち、目標給気温度をどのような順序で変化させるか、目標給気温度をどのようなタイミングにて変化させるか等、各種の要素を適宜設定することができる。
【0080】
(3)上記実施形態では、目標給気温度制御部5が、目標給気温度制御を停止して、VAV風量が所定範囲側に変更されるように目標給気温度を変更する場合に、目標給気温度を、基準目標給気温度や設定用目標給気温度に変更しているが、基準目標給気温度や設定用目標給気温度とは異なる温度に目標給気温度を変更することもでき、どのような温度に目標給気温度を変更させるかは適宜変更可能である。
【0081】
(4)上記実施形態では、目標給気温度制御部5が、基準目標給気温度を変更することで、VAV風量が所定範囲側に変更されるように所定パターンを変更しているが、例えば、所定パターンにおける所定時間を変更することで、VAV風量が所定範囲側に変更されるように所定パターンを変更することもできる。また、所定パターンにおいて目標給気温度を変化させる温度の順序を変更することでも、VAV風量が所定範囲側に変更されるように所定パターンを変更することもできる。このように、所定パターンにおけるどの要素を変更することで、VAV風量が所定範囲側に変更されるように所定パターンを変更するかは適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 空調対象空間
2 空調機
4 可変風量ユニット
5 目標給気温度制御部