(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】OLEDアレイ基板及びその製造方法、OLED表示パネル及びOLED表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/24 20060101AFI20220111BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220111BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220111BHJP
H05B 33/28 20060101ALI20220111BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20220111BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20220111BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20220111BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220111BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220111BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H05B33/24
H05B33/14 A
H05B33/02
H05B33/28
H05B33/26 Z
H05B33/12 E
H05B33/22 Z
H01L27/32
H05B33/10
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2017534238
(86)(22)【出願日】2017-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2017070955
(87)【国際公開番号】W WO2017121351
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-08-13
(31)【優先権主張番号】201610026032.8
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】宋 泳▲錫▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 建▲業▼
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-272150(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0052810(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0066607(KR,A)
【文献】特開2002-170664(JP,A)
【文献】特開2013-004180(JP,A)
【文献】特開2011-139995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0181193(US,A1)
【文献】特開2004-235152(JP,A)
【文献】特開2004-253390(JP,A)
【文献】特開2015-011913(JP,A)
【文献】特開2014-027192(JP,A)
【文献】特開2009-134067(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1268534(KR,B1)
【文献】特開2002-175879(JP,A)
【文献】特開2006-003870(JP,A)
【文献】特開2015-065504(JP,A)
【文献】RIESS, W., et al.,Vertical-Cavity Organic Light-Emitting Diode Display,IBM TECHNICAL DISCLOSURE BULLETIN,米国,IBM Corp.,1997年09月,第40巻, 第9号,第165頁-第168頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/24
H01L 51/50 - 51/56
H05B 33/02
H05B 33/28
H05B 33/26
H05B 33/12
H05B 33/22
H05B 33/10
H01L 27/32
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々には、出射側から離れた第一の電極、出射側に近い第二の電極及び前記第一の電極と前記第二の電極との間に挟まれた有機発光層が備えられた発光部が含有された複数のサブ画素ユニットが含まれる複数の画素ユニットを含むOLEDアレイ基板であって、
その中に、前記サブ画素ユニットは更に前記第二の電極の出射側に順次に設けられた有機フィルム層及び半反射ミラー層を含み、前記第一の電極は反射層を含み、前記第二の電極は透明な電極であり、前記第一の電極と前記半反射ミラー層との間の構造によりマイクロキャビティ構造が構成され、且つ、夫々の前記画素ユニットの異なる色の前記サブ画素ユニットの前記有機フィルム層は夫々の厚さを有し、
前記半反射ミラー層は規則的に配列される複数の孔が配置される金属層であ
り、
前記サブ画素ユニットは更に、前記第二の電極と前記有機フィルム層との間に配置され、3.0~3.5μmの厚さを有するパッケージ層を含み、前記マイクロキャビティ構造において前記パッケージ層が含まれる、
OLEDアレイ基板。
【請求項2】
前記有機フィルム層の厚さは前記マイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長、放射ピークのFWHM及びファブリー-ポロ式に基づいて設計され、
その中に、
前記マイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長
【数1】
は下記の式により算出され、
【数2】
その中に、
【数3】
は対応する前記発光部から射出される光の共振波長であり、Rは前記第一の電極の有効な反射率であり、
【数4】
は前記半反射ミラー層及び前記第一の電極を形成する二種の材料の屈折率の差であり、
【数5】
と
【数6】
は夫々第j層材料の屈折率と厚さであり、
【数7】
は光の前記半反射ミラー層における位相シフトであり、
【数8】
は前記第一の電極と前記半反射ミラー層との間に挟まれる全ての層を考え、
放射ピークのFWHM
【数9】
は下記の式により算出され、
【数10】
その中に、
【数11】
は対応する前記発光部から射出される光の共振波長であり、Rは前記第一の電極の有効な反射率であり、
【数12】
は式(1)に基づいて算出された前記マイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長であり、
【数13】
、
【数14】
は夫々前記第一の電極の鏡面反射率と前記半反射ミラー層の鏡面反射率であり、
ファブリー-ポロ式は下記の通りであり、
【数15】
その中に、mは非負の整数であり、
【数16】
と
【数17】
は夫々前記第一の電極の反射位相シフトと前記半反射ミラー層の反射位相シフトであり、その単位はラジアンであり、
【数18】
と
【数19】
は夫々第j層材料の屈折率と厚さであり、
【数20】
は前記発光部の平面に垂直する法線から測定される第j層における光の角度であり、
【数21】
は前記発光部から射出される光の共振波長であり、
【数22】
は前記第一の電極と前記半反射ミラー層との間に挟まれる全ての層を考える、
請求項1に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項3】
前記サブ画素ユニットは更に前記半反射ミラー層の出射側に配置されるカラーフィルム層を含み、そして、前記画素ユニットの異なる色の前記サブ画素ユニットの前記カラーフィルム層の色は夫々である、請求項1に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項4】
前記有機フィルム層は低温固体化材料により形成され、前記低温固体化材料の固体化温度は100℃より高くない、請求項1に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項5】
前記低温固体化材料はエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタンの一種或いは多種を含む、請求項4に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項6】
前記半反射ミラー層の厚さは100~150nmである、請求項1に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項7】
前記第一の電極の厚さは90~100nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項8】
前記第二の電極の厚さは100~150nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項9】
各前記サブ画素ユニットの前記第一の電極と前記有機発光層との間に配置される画素定義層が更に含まれ、その中に、前記画素定義層の厚さは1.0~1.5μmである、請求項1に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項10】
前記有機発光層の厚さは200~300nmである、請求項1に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項11】
夫々の前記サブ画素ユニットの前記カラーフィルム層の出射側に配置され、3.0~3.5μmの厚さを有する二次パッケージ層が更に含まれる、請求項3に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項12】
前記二次パッケージ層には、アクリレート接着剤及びガラスカバープレートが含まれる、請求項
11に記載のOLEDアレイ基板。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載のOLEDアレイ基板が含まれる、OLED表示パネル。
【請求項14】
請求項
13に記載のOLED表示パネルが含まれる、OLED表示装置。
【請求項15】
複数のサブ画素ユニットが含まれる複数の画素ユニットを含むOLEDアレイ基板の製造方法であって、
前記OLEDアレイ基板の出射方向に沿い、ベース基板において、夫々の前記サブ画素ユニットに対応する第一の電極、有機発光層、第二の電極、有機フィルム層及び半反射ミラー層が順次に形成されることを含み、
その中に、前記第一の電極は反射層を含み、前記第二の電極は透明な電極であり、前記第一の電極と前記半反射ミラー層との間の構造によりマイクロキャビティ構造が構成され、且つ、夫々の前記画素ユニットの異なる色の前記サブ画素ユニットの前記有機フィルム層は夫々の厚さを有し、
前記半反射ミラー層は規則的に配列される複数の孔が配置される金属層であ
り、
前記サブ画素ユニットは更に、前記第二の電極と前記有機フィルム層との間に配置され、3.0~3.5μmの厚さを有するパッケージ層を含み、前記マイクロキャビティ構造において前記パッケージ層が含まれる、
製造方法。
【請求項16】
請求項
15に記載の製造方法であって、各前記サブ画素ユニットの前記有機フィルム層は下記のステップにより一体的に形成される:
低温固体化有機材料をスピンコーティングするステップと、
ハーフトーンマスクを用いて暴露及び現像により不均一な厚さを有する前記有機フィルム層を形成するステップ。
【請求項17】
前記有機フィルム層を形成するステップ期間中、プロセス温度は100℃により低い、請求項
16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示技術分野に関し、そして、具体的に、マイクロキャビティ構造が備えられた有機発光ダイオード(OLED)アレイ基板及びその製造方法、OLED表示パネル及びOLED表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)表示装置とは、有機半導体材料が電流の駆動により生じる可逆的な変色の現象を利用して、図形の表示を実現するデバイスである。OLED表示装置は、超軽量、超薄型、高輝度、大きな視野角、低電圧、低パワー消耗、迅速な応答、高い解像度、耐震性、曲げ可能、低コスト、簡単なプロセス、原材料の少ない使用、高発光効率及び幅広い温度範囲等の利点を備えるので、最も将来性のある新世代の表示技術と看做される。
【0003】
しかしながら、OLED発光材料の発光バンドが比較的に広く、要される光源の色純度を満たさないので、OLEDの発光効率及び輝度が制限され、これにより、対応的な表示装置のコントラストが低く、表示効果が物足りない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の一つはOLEDアレイ基板及びその製造方法、OLED表示パネル及びOLED表示装置を提供することであり、これにより、上記内容に言及された従来技術に存在する問題は少なくとも部分的に緩和され或いは解消される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の方面に基づき、OLEDアレイ基板の一種が提供され、該アレイ基板は複数の画素ユニットを含み、夫々の画素ユニットには複数のサブ画素ユニットが含まれ、夫々のサブ画素ユニットには発光部が含まれ、夫々の発光部は出射側から離れる第一の電極、出射側に近い第二の電極及び第一の電極と第二の電極との間に挟まれる有機発光層が備えられ、その中に、前記サブ画素ユニットは更に第二の電極の出射側に順次に設けられる有機フィルム層及び半反射ミラー層を含む。第一の電極は反射層を含み、第二の電極は透明な電極である。第一の電極と半反射ミラー層との間の構造によりマイクロキャビティ構造が構成され、且つ、夫々の画素ユニットの異なる色のサブ画素ユニットの有機フィルム層は夫々の厚さを有する。例えば、画素ユニットは代表的なRGB画素ユニットである場合に、赤色サブ画素ユニット(R)、緑色サブ画素ユニット(G)及び青色サブ画素ユニット(B)の有機フィルム層は夫々の厚さを有する。取替られる様に、画素ユニットはRGBG画素ユニットである場合に、2つの緑色サブ画素ユニット(G)の有機フィルム層は同じ厚さを有してもよい。
【0006】
本文に使用された技術用語「半反射ミラー層」は反射性質及び透過性質を備え合わせる光学層に関する。それは「半」反射ミラー層と呼ばれたが、半反射ミラー層に入射された光は、夫々50%で反射され透過されるのに限定されるのではなく、任意の割合で反射され及び透過されてもよい。
【0007】
上記のアレイ基板において、有機発光層に生じる光は、第一の電極及び半反射ミラー層に区分けされるマイクロキャビティ構造の中に、反射、全反射、干渉、回折或いは散乱の過程を経た。部分的な光は半反射ミラー層から射出され、射出光の方向及び強度はマイクロキャビティ構造の性質によって決まり、言い換えれば、マイクロキャビティ構造のパラメータは有機発光層に生じる光の性質、及び要される射出光の方向及び強度に基づいて設計される。本発明に基づき、マイクロキャビティ構造の導入により、射出光の色純度が高められ、表示装置の発光効率及び輝度が強められ、更に、高コントラスト、低パワー消耗の表示装置が得られる。それと共に、マイクロキャビティ構造を介して射出された光は良好な方向性及び高い色純度を有し、従って、後続きのブラックマトリクスプロセスが要されなく、コストが節約されると共に表示装置の開口率が大幅に高められる。
【0008】
本文に使用される技術用語「マイクロキャビティ」或いは「マイクロキャビティ構造」とは、主に、ウィスパリングギャラリーモードが備えられたマイクロキャビティを指す。この様なマイクロキャビティはミクロンまたはサブミクロンのレベルの寸法を有する光学共振キャビティの一種であり、屈折率が不連続である界面上の反射、全反射、干渉、回折或いは散乱等の効果を利用して、光をきわめて小さな波長領域内に限定する。キャビティ長さの設計及びキャビティ内の各層の厚さの最適化により、発光中心はキャビティ内定在波場の波腹の付近にあり、そして、デバイス放射双極子とキャビティ内電界の結合効率が高められ、これにより、デバイスの発光効率及び輝度が高められる。
【0009】
本発明の実施例に基づき、前記有機フィルム層の厚さはマイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長、放射ピークの半値全幅(FWHM)及びファブリー-ポロ式に基づいて設計される。具体的に、マイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長
【数1】
は下記の式により算出され、
【数2】
その中に、
【数3】
は対応する発光部から射出される光の共振波長であり、Rは第一の電極の有効な反射率であり、
【数4】
は半反射ミラー層及び第一の電極を形成する二種の材料の屈折率の差であり、
【数5】
と
【数6】
は夫々第j層材料の屈折率と厚さであり、
【数7】
は光の半反射ミラー層における位相シフトであり、
【数8】
は第一の電極と半反射ミラー層との間に挟まれる全ての層を考える。
【0010】
放射ピークのFWHM
【数9】
は下記の式により算出され、
【数10】
その中に、
【数11】
は対応する発光部から射出される光の共振波長であり、Rは第一の電極の有効な反射率であり、
【数12】
は式(1)におけるマイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長であり、
【数13】
、
【数14】
は夫々第一の電極の鏡面反射率と半反射ミラー層の鏡面反射率である。
【0011】
上記公式(1)及び(2)において、マイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長
【数15】
、有機フィルム層の厚さ及び放射ピークのFWHM
【数16】
は未知的なものであり、他の数値は既知的なものであり或いは当業者にとって通常的な試験手段により得られる。
【0012】
有機フィルム層の厚さの数値範囲はファブリー-ポロ式に限定され、
【数17】
その中に、mは非負の整数(例えば、1、2等)であり、
【数18】
と
【数19】
は第一の電極の反射位相シフトと半反射ミラー層の反射位相シフトであり、その単位はラジアンである。
【数20】
と
【数21】
は夫々第j層材料の屈折率と厚さである。
【数22】
は発光部の平面に垂直する法線から測定される第j層における光の角度である。
【数23】
は発光部から射出される光の共振波長である。
【数24】
は第一の電極と半反射ミラー層との間に挟まれる全ての層を考える。
【0013】
上記公式(3)に限定される有機フィルム層の厚さの数値範囲において有機フィルム層の厚さを調節することにより、有効なキャビティ長及び放射ピークのFWHMが引き続き最適化され、更に、3つ未知数の最適値が設計される。
【0014】
代表的な有機発光ダイオード表示装置において、各画素ユニットに、赤色(R)サブ画素ユニット、緑色(G)サブ画素ユニット及び青色(B)サブ画素ユニットが含まれる。マイクロキャビティ構造において、共振波長の条件を満たす光は干渉により強化される。マイクロキャビティ構造における反射により、方向が無い光線は方向性がある光線になり、これにより、該特定方向における光の強度が強められる。従って、有機フィルム層の厚さは対応的なサブ画素ユニットに対応すべきであり、例えば、赤色サブ画素ユニットに対応する有機フィルム層は最も厚く、緑色サブ画素ユニットに対応する有機フィルム層は第2の厚さを有し、そして、青色サブ画素ユニットに対応する有機フィルム層は最も薄い。
【0015】
本発明のもう一つの実施例に基づき、サブ画素ユニットは更に前記半反射ミラー層の出射側に配置されるカラーフィルム層を含み、そして、画素ユニットの異なる色のサブ画素ユニットのカラーフィルム層の色は夫々である。各画素ユニットに、赤色(R)サブ画素ユニット、緑色(G)サブ画素ユニット及び青色(B)サブ画素ユニットが含まれることを例として、カラーフィルム層は赤色、緑色及び青色である。
【0016】
本発明のもう一つの実施例に基づき、有機フィルム層は低温固体化材料により形成され、その固体化温度は約100℃より高くない。
【0017】
本発明のもう一つの実施例に基づき、低温固体化材料はエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタンの一種或いは多種を含む。
【0018】
上記実施例において、ハーフトーンマスクプロセスにより不均一な厚さを有する有機フィルム層が導入される。本文に使用される技術用語「ハーフトーンマスクプロセス」とは、フォトリソグラフィプロセスにおいて、マスクにおけるパターンの厚さは夫々であるので、マスクにおける異なる位置の光通過量が夫々であり、これにより、対応的な有機フィルム層における異なる位置の暴露量は夫々であり、よって、不均一な厚さを有する有機フィルム層が得られる。
【0019】
本発明の例示的な実施例に基づき、半反射ミラー層の厚さは約100~150nmであってもよい。
【0020】
本発明のもう一つの実施例に基づき、半反射ミラー層は規則的に配列される複数の孔が配置される金属層であってもよい。孔の大きさ、密度及び配列方式は所望される出射方向に応じて設計され、つまり、孔の大きさ、密度及び配列方式は強化される光の方向を決める。その結果として、孔の大きさ、密度及び配列方式は有機フィルム層の厚さに関する。実践において、孔の大きさ、密度及び配列方式に応じて有機フィルム層の厚さが設計されてもよく、或いは、逆でも同じことが言える。
【0021】
選択的に、第一の電極層の厚さは約90~100nmであってもよい。
【0022】
選択的に、第二の電極層の厚さは約100~150nmであってもよい。
【0023】
本発明の実施例に基づき、サブ画素ユニットは更に、前記第二の電極と前記有機フィルム層との間に配置されるパッケージ層を含み、前記パッケージ層の厚さは約3.0~3.5μmである。該パッケージ層は平坦層の役割を果す。サブ画素ユニットにおいてパッケージ層が含まれる状況において、上記有機フィルム層の厚さの算出にはパッケージ層が考えられる。
【0024】
本発明のもう一つの実施例に基づき、OLEDアレイ基板には、各サブ画素ユニットの第一の電極と有機発光層との間に配置される画素定義層が更に含まれる。前記画素定義層の厚さは約1.0~1.5μmである。画素定義層は一般的に格子状の構造を有し、該格子状の構造の「編み目」は各サブ画素ユニットに対応し、編み目の境界は夫々のサブ画素ユニットの区分けに用いられる。従って、上記有機フィルム層の厚さの算出には画素定義層が考えられない。
【0025】
本発明のもう一つの実施例において、有機発光層の厚さは約200~300nmであってもよい。
【0026】
本発明のもう一つの実施例に基づき、OLEDアレイ基板には、夫々のサブ画素ユニットの前記カラーフィルム層の出射側に配置される二次パッケージ層が更に含まれ、前記二次パッケージ層の厚さは約3.0~3.5μmである。選択的に、前記二次パッケージ層には、アクリレート接着剤及びガラスカバープレートが含まれる。
【0027】
本発明の第2の方面に基づき、OLED表示パネルの一種が提供され、その中に、上記のOLEDアレイ基板が含まれる。
【0028】
本発明の第3の方面に基づき、OLED表示装置の一種が提供され、その中に、上記のOLED表示パネルが含まれる。
【0029】
本発明の第4の方面に基づき、有機発光ダイオードアレイ基板の製造方法の一種が提供され、前記OLEDアレイ基板は複数の画素ユニットを含み、夫々の画素ユニットには複数のサブ画素ユニットが含まれ、前記製造方法は
OLEDアレイ基板の出射方向に沿い、ベース基板において、夫々のサブ画素ユニットに対応する第一の電極、有機発光層、第二の電極、有機フィルム層及び半反射ミラー層が順次に形成され、
その中に、第一の電極は反射層を含み、第二の電極は透明な電極である。前記第一の電極と前記半反射ミラー層との間の構造によりマイクロキャビティ構造が構成され、且つ、夫々の画素ユニットの異なる色のサブ画素ユニットの有機フィルム層は夫々の厚さを有する。
【0030】
上記方法により製造されるOLEDアレイ基板において、有機発光層に生じる光は、第一の電極及び半反射ミラー層に区分けされるマイクロキャビティ構造の中に、反射、全反射、干渉、回折或いは散乱の過程を経て、部分的な光は半反射ミラー層から射出され、射出光の方向は半反射ミラー層の性質によって決まる。本発明に基づき、マイクロキャビティ構造の導入により、色純度が高められ、表示パネルの発光効率及び輝度が強められ、更に、高コントラスト、低パワー消耗の表示装置が得られる。それと共に、マイクロキャビティ構造により射出された光は良好な方向性及び高い色純度を有し、従って、後続きのブラックマトリクスプロセスが要されなく、コストが節約されると共に表示装置の開口率が大幅に高められる。
【0031】
本発明の実施例に基づき、各サブ画素ユニットの有機フィルム層は下記のステップにより一体的に形成され、低温固体化有機材料をスピンコーティングし、ハーフトーンマスクを用いて暴露及び現像により不均一な厚さを有する有機フィルム層を形成する。
【0032】
本発明のもう一つの実施例に基づき、有機フィルム層を形成するステップ期間中、プロセス温度は約100℃により低く、これにより、既に形成された各層構造に対する破壊は避けられる。
【0033】
本発明の第2方面に基づいたOLED表示パネル、第3方面に基づいたOLED表示装置及び第4方面に基づいたOLEDアレイ基板の製造方法は、本発明の第1方面に基づいたOLEDアレイ基板と同じ或いは対応的な好適な実施例、長所とメリットを有するので、ここで、その内容を繰り返さないことにする。
【0034】
本発明のこれら及び他の方面は下記に記載される実施例から見れば自明なことであり、そして、下記に記載される実施例を参照して本発明のこれら或いは他の方面を述べる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施例に基づいた有機発光ダイオードアレイ基板のサブ画素ユニットの横断面の概略図である。
【
図2】本発明の実施例に基づいた有機発光ダイオードアレイ基板の横断面の概略図である。
【
図3】本発明の実施例に基づいた有機発光ダイオードアレイ基板を製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明には様々な形式を有する複数の実施例が認められるが、下記に理解される状況において、図面においてその特定な実施例が示され、そして、本文においてその特定な実施例が詳しく記載され、本発明は本発明の原理の例示的な説明と看做される。本発明を特定に説明される実施例に限定しようとはしない。
【0037】
指摘すべきものは下記の通りであり、下記の各図面及びその対応する記載において、トップエミッティン型OLEDアレイ基板を例として本発明が述べられるが、当業者に容易に分かった通りに、本発明は同じくボトムエミッティン型OLEDアレイ基板に適用される。
【0038】
図1は本発明の実施例に基づいたOLEDアレイ基板のサブ画素ユニットの横断面の概略図である。サブ画素ユニットは順次にベース基板5に配置される第一の電極1、有機発光層6及び第二の電極2、且つ、順次に第二の電極2に配置される有機フィルム層3及び半反射ミラー層4を含む。第一の電極は反射層を含み、例えば、第一の電極1は多層の積層構造であってもよく、その中に、第一の電極1の出射側から最も遠い一つ又は複数の層は反射層であり、それは、例えば、銀或いはアルミニウムの様な金属により作成される。取替られるに、第一の電極1は単層の反射層であってもよく、それは同じく、例えば、銀或いはアルミニウムの様な金属により作成される。第二の電極は透明な電極である(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)により作成される)。半反射ミラー層4と第一の電極1との間の構造によりマイクロキャビティ構造100が構成される。本実施例に基づき、OLEDアレイ基板においてマイクロキャビティ構造が導入され、これにより、色純度が高められ、発光効率及び輝度が強められ、更に、高コントラスト、低パワー消耗の表示装置が得られる。それと共に、マイクロキャビティ構造を介して射出された光は良好な方向性及び高い色純度を有し、従って、後続きのブラックマトリクスプロセスが要されなく、コストが節約されると共に表示装置の開口率が大幅に高められる。更に、該有機フィルム層は低温固体化材料により形成され、該材料の固体化温度は約100℃より高くない。低温固体化材料を選択して有機フィルム層3を形成するのは、有機発光層6の高温プロセスにおける破壊が避けられる。その中に、低温固体化材料はエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタンの一種或いは多種を含む。
【0039】
マイクロキャビティ構造100はマイクロキャビティ構造100の有効なキャビティ長、放射ピークのFWHM及びファブリー-ポロ式に基づいて設計される。具体的に、マイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長
【数25】
は下記の式により算出され、
【数26】
その中に、
【数27】
は発光部から射出される光の共振波長であり、Rは第一の電極の有効な反射率であり、
【数28】
は半反射ミラー層4及び第一の電極1を形成する二種の材料の屈折率の差であり、
【数29】
と
【数30】
は夫々第j層材料の屈折率と厚さであり、
【数31】
は光の半反射ミラー層4における位相シフトであり、
【数32】
は第一の電極1と半反射ミラー層4との間に挟まれる全ての層を考え、
図1に示されるサブ画素ユニットを例として、有機発光層6、第二の電極2及び有機フィルム層3が含まれる。説明すべきものは下記の通りに、本文に使用される技術用語「有効なキャビティ長」は、マイクロキャビティ構造100を構成した各層の厚さの簡単な加算ではなく、マイクロキャビティ構造100の反射意味における有効な長さである。
【0040】
放射ピークのFWHM
【数33】
は下記の式により算出され、
【数34】
その中に、
【数35】
は発光部から射出される光の共振波長であり、Rは第一の電極1の有効な反射率であり、
【数36】
は式(1)により算出されるマイクロキャビティ構造の有効なキャビティ長であり、
【数37】
、
【数38】
は夫々第一の電極1の鏡面反射率と半反射ミラー層4の鏡面反射率である。
【0041】
ファブリー-ポロ式は下記の通りであり、
【数39】
その中に、mは非負の整数(例えば、1、2等)であり、
【数40】
と
【数41】
は第一の電極1の反射位相シフトと半反射ミラー層4の反射位相シフトであり、その単位はラジアンである。
【数42】
と
【数43】
は夫々第j層材料の屈折率と厚さである。
【数44】
は発光デバイスの平面に垂直する法線から測定される第j層における光の角度である。
【数45】
は発光部から射出される光の共振波長である。
【数46】
は第一の電極1と半反射ミラー層4との間に挟まれる全ての層を考える。同じく、
図1に示されたサブ画素ユニットを例として、有機発光層6、第二の電極2及び有機フィルム層3が含まれる。
【0042】
上記公式(3)に限定される有機フィルム層の厚さの数値範囲において有機フィルム層の厚さを調節することにより、有効なキャビティ長及び放射ピークのFWHMが引き続き最適化され、更に、3つ未知数の最適値が設計される。
【0043】
図2は本発明の実施例に基づいた有機発光ダイオードアレイ基板の横断面の概略図である。図面に示された通りに、アレイ基板には複数の画素ユニットが含まれ(
図2において、1つの画素ユニットが概略的に示される)、各画素ユニットは複数のサブ画素ユニット200を含み、各サブ画素ユニット200は更に半反射ミラー層4に配置されるカラーフィルム層7-1、7-2、7-3を含み、その中に、異なる色のサブ画素ユニット200のカラーフィルム層7-1、7-2、7-3の色は夫々である。本実施例に基づき、カラーフィルム層をマイクロキャビティ構造100に直接に作成することにより、カラーフィルム層とサブ画素ユニットとの位置合わせの精度が高められる。それと共に、OLEDアレイ基板の厚さが薄くなる。
【0044】
図面に示される通りに、異なる色のカラーフィルム層7-1、7-2、7-3に対応するサブ画素ユニット200の有機フィルム層3は夫々の厚さを有する。各画素ユニットに、赤色(R)サブ画素ユニット、緑色(G)サブ画素ユニット及び青色(B)サブ画素ユニットが含まれることを例として説明する。マイクロキャビティ構造において、共振の条件を満たす波長の光は干渉により強化される。マイクロキャビティ構造における反射により、方向が無い光線は方向性がある光線になり、これにより、該特定方向における光の強度が強められる。従って、有機フィルム層の厚さは対応的なサブ画素ユニットに対応すべきであり、例えば、赤色サブ画素ユニットに対応する有機フィルム層は最も厚く、緑色サブ画素ユニットに対応する有機フィルム層は第2の厚さを有し、そして、青色サブ画素ユニットに対応する有機フィルム層は最も薄い。
【0045】
半反射ミラー層4は複数の孔が配置される金属層により形成される(
図2において示されない)。孔の大きさ及び密度は所望される出射方向に応じて設計され、つまり、孔の大きさ及び密度は強化される光の方向を決める。その結果として、孔の大きさ及び密度は有機フィルム層の厚さに関する。実践において、孔の大きさ及び密度に応じて有機フィルム層の厚さが設計されてもよく、或いは、逆でも同じことが言える。複数の孔は金属層において規則的に配列される。同じく、孔の配列方式は所望される出射方向に応じて設計されてもよい。
【0046】
図2に示される通りに、サブ画素ユニット200は更に、第二の電極2と有機フィルム層3との間に配置されるパッケージ層8を含み、該パッケージ層8は平坦層の役割を果す。OLEDアレイ基板には、各サブ画素ユニット200の第一の電極1に配置される画素定義層10が更に含まれる。この状況において、マイクロキャビティ構造100の設計には、パッケージ層8が考えられる。
【0047】
選択的に、有機発光層6は更に電子注入層(示されない)が含まれる。この場合に、マイクロキャビティ構造100の設計には、電子注入層が考えられる。
【0048】
更に、
図2に示された通りに、OLEDアレイ基板には、夫々のサブ画素ユニットのカラーフィルム層7に配置される二次パッケージ層9が更に含まれる。選択的に、二次パッケージ層9には、アクリレート接着剤及びガラスカバープレートが含まれる。二次パッケージ層9の厚さは約3.0~3.5μmである。
【0049】
例示的な設計の一種において、半反射ミラー層4の厚さは約100~150nmであり、第一の電極1の厚さは約90~100nmであり、画素定義層10の厚さは約1.0~1.5μmであってもよく、有機発光層6の厚さは約200~300nmであり、第二の電極2の厚さは約100~150nmであり、パッケージ層8の厚さは約3.0~3.5μmである。これにより、有機フィルム層3の異なる色のサブ画素に対応する領域における厚さは算出される。本実施例に基づき、OLEDアレイ基板においてマイクロキャビティ構造が導入され、これにより、色純度が高められ、発光効率及び輝度が強められ、更に、高コントラスト、低パワー消耗の表示装置が得られる。それと共に、マイクロキャビティ構造を介して射出された光は良好な方向性及び高い色純度を有し、従って、後続きのブラックマトリクスプロセスが要されなく、コストが節約されると共に表示装置の開口率が大幅に高められる。
【0050】
図3において、本発明の実施例に基づいた上記有機発光ダイオードアレイ基板の製造方法のフローチャートは示される。
図3に示された通りに、該方法は下記のステップを含み、
S1:基準的な方法を用いて透明なガラスのベースを洗い、
S2:洗われた透明なガラスのベースにおいて、薄膜トランジスタ層を作成し、これにより、アレイ基板を形成し、
S3:形成されたアレイ基板において、スパッタリング、スピンコーティング、暴露及び現像、エッチング及びストリッピングなどの方式により、パターン化される第一の電極を形成し、該第一の電極は良好な反射性(例えば、金属層が含まれる)を備え、且つ、その厚さは約90~100nmであってもよく、
S4:スピンコーティング及び暴露及び現像の方式により、パターン化される画素定義層を獲得し、その厚さは約1.0~1.5μmであってもよく、
S5:蒸発プロセスにより有機発光層を作成し、その厚さは約200~300nmであってもよく、
S6:スパッタリング、スピンコーティング、暴露及び現像、エッチング及びストリッピングなどの方式により、パターン化される第二の電極を獲得し、該第二の電極は良好な透過性(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)等の透明な導電材料により作成される)を備え、且つ、その厚さは約100~150nmであってもよく、
S7:パッケージ層を作成して、その厚さは3.0~3.5μmであってもよく、
S8:スピンコーティング及びハーフトーンマスクプロセスによって暴露及び現像する方式により、厚さが不均一、パターン化される有機フィルム層を獲得し、その中に、発光層に対する損壊を避けるために、有機フィルム層は低温固体化材料を選択し、且つ、該ステップのプロセス温度は約100℃より低く、有機フィルム層の厚さは上記に言及された方式により算出され、
S9:スパッタリング、スピンコーティング、暴露及び現像、エッチング及びストリッピングなどの方式により、パターン化される半反射ミラー層を獲得し、該半反射ミラー層の一部分は良好な光透過性を備え、もう一つの部分は良好な反射性を備え、そして、その厚さは約100~150nmであってもよく、
S10:カラーフィルム層を作成し、カラーフィルム層はサブ画素ユニットと逐一に対応し、
S11:二次パッケージ層を作成し、その厚さは約3.0~3.5μmであってもよい。
【0051】
半反射ミラー層を獲得するステップS9は下記のサブステップを含み、
S91:有機フィルム層において金属材料をスパッタリングし、
S92:パターン化プロセスにより金属層において複数の孔を形成する。
【0052】
本発明は図面及び前記記載において、詳しく示され及び記載されたが、この様な図面及び記載は制限性のものではなく、説明性或いは例示性のものと看做される。本発明は開示された実施例に限定されない。当業者は保護される発明を実践する場合に、図面の研究、内容の開示及び請求の範囲の添付により、開示される実施例の他の変型を理解及び実現られる。例えば、上記記載された方法には、記載された特定な順次のステップで所望を満たす結果を実現するのは要求されない。他のステップを提供し、或いは、記載された方法からステップを除去してもよく、且つ、他のコンポーネントは記載された装置に添加され、或いは、記載された装置から除去されてもよい。他の実施例は本発明の範囲内にあってもよい。