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特許6998769ポリマー、該ポリマーを含有するレジスト組成物及びそれを用いたデバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ポリマー、該ポリマーを含有するレジスト組成物及びそれを用いたデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20220111BHJP
   C08F 220/38 20060101ALI20220111BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220111BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F220/38
G03F7/004
G03F7/031
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017543536
(86)(22)【出願日】2016-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2016078761
(87)【国際公開番号】W WO2017057537
(87)【国際公開日】2017-04-06
【審査請求日】2019-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2015195863
(32)【優先日】2015-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222691
【氏名又は名称】東洋合成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】榎本 智至
(72)【発明者】
【氏名】吉野 匠
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-181510(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208102(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019616(WO,A1)
【文献】特開2007-316600(JP,A)
【文献】特開平10-221852(JP,A)
【文献】特開2009-169406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
G03F 7/00-7/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーであって、
オニウム塩構造を有し、粒子線又は電磁波の照射により第1ラジカルを発生するユニットAと、
炭素原子と炭素原子との多重結合及び炭素原子とヘテロ原子との多重結合からなる群より選択される少なくとも1つの多重結合を含有するラジカル発生構造を有し、粒子線又は電磁波の照射により第2ラジカルを発生するユニットBと、を含み、
前記ラジカル発生構造中の多重結合はベンゼン系芳香族内に含まれる多重結合でない、
ポリマーであって、
前記ユニットBが下記一般式(III)又は(IX)の少なくともいずれかで示されるものであるポリマー。

(前記一般式(III)または(IX)中、Lは、カルボニルオキシ基、フェニレンジイル基、ナフタレンジイル基、フェニレンジイルオキシ基、ナフタレンジイルオキシ基、フェニレンジイルカルボニルオキシ基、ナフタレンジイルカルボニルオキシ基、フェニレンジイルオキシカルボニル基及びナフタレンジイルオキシカルボニル基からなる群より選択されるいずれかであり、
前記一般式(III)または(IX)中、Spは、直接結合;置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキレン基;及び、置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニレン基;のいずれかであり、前記Sp中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、
前記一般式(III)中、1は、水素原子;直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキル基;及び、直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニル基;からなる群より選択されるいずれかであり、該R1中の前記アルキル基及びアルケニル基中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、
前記一般式(III)中、は、それぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基;-R(Rは、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~12のアルキル基であり、R中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていていてもよい。);-OR;及び該R中の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが炭素-炭素二重結合に置換された基;及び、-R(Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数4~12のヘテロアリール基である。);からなる群より選択されるいずれかであり、
2つのR3は、単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群よ
り選択されるいずれかを介して、互いに環構造を形成してもよく、
前記一般式(III)中、は、-R;-R;-OR;-SR;-OR;-SR;-OC(=O)R;-OC(=O)R;-C(=O)OR;-C(=O)OR;-OC(=O)OR;-OC(=O)OR;-NHC(=O)R;-NRC(=O)R;-NHC(=O)R;-NRC(=O)R;-NRC(=O)R;-NRC(=O)R;-N(R2;-N(R2;-N(R)(R);-SO3;-SO3;-SO2;-SO2;該-R中の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが炭素-炭素二重結合に置換された基;及びニトロ基;からなる群より選択されるいずれかであり、
前記一般式(III)中、1は1~3の整数であり、n1が1のときm1は0~4の整数であり、n1が2のときm1は0~6の整数であり、n1が3のときm1は0~8の整数である。)
【請求項2】
前記ユニットAが下記式(I)で示される請求項1に記載のポリマー。
【化2】
(前記一般式(I)中、M+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンであり、
-は1価のアニオンであり、
Lは、カルボニルオキシ基、フェニレンジイル基、ナフタレンジイル基、フェニレンジイルオキシ基、ナフタレンジイルオキシ基、フェニレンジイルカルボニルオキシ基、ナフタレンジイルカルボニルオキシ基、フェニレンジイルオキシカルボニル基及びナフタレンジイルオキシカルボニル基からなる群より選択されるいずれかであり、
Spは、直接結合;置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキレン基;及び、置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニレン基;のいずれかであり、前記Sp中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、
1は、水素原子;直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキル基;及び、直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニル基;からなる群より選択されるいずれかであり、該R1中の前記アルキル基及びアルケニル基中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。)
【請求項3】
前記ユニットAが下記式(II)で示される請求項2に記載のポリマー。
【化3】
(前記一般式(II)中、R1、L、Sp及びX-は、前記一般式(I)のR1、L、Sp及びX-と同様であり、
2aは、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキレン基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニレン基;置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリーレン基;置換基を有していてもよい炭素数4~12のヘテロアリーレン基;及び直接結合;からなる群より選択されるいずれかであり、前記R2a中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、
2bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基;及び、置換基を有していてもよい炭素数4~12のヘテロアリール基からなる群より選択されるいずれかであり、前記R2b中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、
2a及び2つのR2bのうち2つは、単結合で直接結合に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、互いに環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
ユニットCをさらに含有し、該ユニットCが下記一般式(VI)~(VIII)で示される化合物が下記式(1)のSp基と結合したものである請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【化5】
(前記一般式(VI)~(VIII)中、
6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子;電子供与性基;及び、電子吸引性基;
からなる群より選択されるいずれかであり、
及びRのうち少なくとも一つは前記電子供与性基であり、
8のうち少なくとも一つは前記電子供与性基であり、
は、水素原子;置換基を有してもよいアルキル基;及び、置換基を有してもよいアルケニル基;からなる群より選択されるいずれかであり、前記R9中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、
10は、それぞれ独立に、水素原子;置換基を有してもよいアルキル基;及び、置換基を有してもよいアルケニル基からなる群より選択されるいずれかであり、2つのR10は互いに結合して環構造を形成してもよく、
Eは、直接結合;酸素原子;硫黄原子;及びメチレン基;からなる群より選択されるいずれかであり、
は、0又は1の整数であり、
及びnは、それぞれ0~2の整数であり、n+nは2であり、
が1のときnは0~4の整数であり、nが2のときnは0~6の整数であり、
が1のときnは0~4の整数であり、nが2のときnは0~6の整数であり、
は0~7の整数であり、
は1又は2であり、nが1のときnは0~5の整数であり、nが2のときn
は0~7の整数である。)
【化6】
(前記式(1)中、R1、L及びSpは、前記一般式(III)のR1、L及びSpと同様であり、*は前記一般
式(VI)~(VIII)で示される化合物との結合部位を示す。)
【請求項5】
ラジカルスカベンジャー構造を有するユニットDをさらに含有する請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項6】
Sn、Sb、Ge、Bi及びTeからなる群より選択される金属原子を有する有機金属化合物含有ユニットEをさらに含有する請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
-が、アルキルスルホネートアニオン、アリールスルホネートアニオン、アルキルカルボキシレートアニオン、アリールカルボキシレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフォネートアニオン、ジアルキルスルホニルイミドアニオン、トリアルキルスルホネートメチドアニオン、テトラキスフェニルボレートアニオン、ヘキサフルオロアンチモネート、1価の金属オキソニウムアニオン、及び、これを含む水素酸アニオンからなる群より選択されるいずれかであり、
-中のアルキル基及びアリール基の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されていてもよい請求項2~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマーを含有するレジスト組成物。
【請求項9】
下記一般式(VI)~(VIII)で示される化合物をさらに含有する請求項8に記載のレジスト組成物。
【化7】
(前記一般式(VI)~(VIII)中、
6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子;電子供与性基;及び、電子吸引性基;からなる群より選択されるいずれかであり、
及びRのうち少なくとも一つは前記電子供与性基であり、
8のうち少なくとも一つは前記電子供与性基であり、
は、水素原子;置換基を有してもよいアルキル基;及び、置換基を有してもよいアルケニル基;からなる群より選択されるいずれかであり、前記R9中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、
10は、それぞれ独立に、水素原子;置換基を有してもよいアルキル基;及び、置換基を有してもよいアルケニル基からなる群より選択されるいずれかであり、2つのR10は互いに結合して環構造を形成してもよく、
Eは、直接結合;酸素原子;硫黄原子;及びメチレン基;からなる群より選択されるいずれかであり、
は、0又は1の整数であり、
及びnは、それぞれ0~2の整数であり、n+nは2であり、
が1のときnは0~4の整数であり、nが2のときnは0~6の整数であり、
が1のときnは0~4の整数であり、nが2のときnは0~6の整数であり、
は0~7の整数であり、
は1又は2であり、nが1のときnは0~5の整数であり、nが2のときnは0~7の整数である。)
【請求項10】
有機金属化合物及び有機金属錯体のいずれかをさらに含有し、
前記金属は、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Xe、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、Rn及びRaからなる群より選択される少なくとも1種である請求項8又は9に記載のレジスト組成物。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載のレジスト組成物を用いて基板上レジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
粒子線又は電磁線を用いて、前記レジスト膜を露光するフォトリソグラフィ工程と、
露光されたレジスト膜を現像してフォトレジストパターンを得るパターン形成工程と、
を含むデバイスの製造方法。
【請求項12】
前記粒子線が電子線であり、前記電磁波は極端紫外線である、請求項11に記載のデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のいくつかの態様は、レジスト組成物に用いられるポリマーに関する。また、本発明のいくつかの態様は、上記ポリマーを含有するレジスト組成物、及び、該レジスト組成物を用いたデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトレジストを用いるフォトリソグラフィ技術を駆使して、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機ELディスプレイ(OLED)等の表示装置の製造並びに半導体素子の形成が盛んに行われている。上記の電子部品や電子製品のパッケージ等には、活性エネルギー線として波長365nmのi線、それより長波長のh線(405nm)及びg線(436nm)等の光が広く用いられている。
【0003】
デバイスの高集積化が進み、リソグラフィ技術の微細化に対する要求が高まっており、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、極短紫外線(EUV、波長13.5nm)及び電子線(EB)のような非常に波長の短い光が露光に使用される傾向にある。これらの波長の短い光、特にEUV又は電子線を用いたリソグラフィ技術はシングルパターニングでの製造が可能であることから、EUV又は電子線等に対し高い感応性を示すレジスト組成物の必要性は、今後更に高まると考えられる。
【0004】
露光光源の短波長化に伴い、レジスト組成物には、露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性のリソグラフィー特性の向上が求められている。このような要求を満たすレジスト組成物として化学増幅型レジストが知られている(特許文献1)。
しかしながら、従来の化学増幅型レジストにおいては、レジストの解像線幅が微細化するにつれて、レジストパターン倒れ及びラインパターンのラインエッジラフネス(LER)の低減を十分に抑制することは難しい。レジストパターン倒れを抑制するために、ネガ型化学増幅型レジストにおいては架橋密度を上げることが提案されている。しかし、現像時に膨潤してブリッジ等のディフェクトが発生することがある。レジストパターンの倒れやブリッジ形成の防止が強く求められているが、従来のEUV又は電子線等用の化学増幅型レジスト組成物は、EUV又は電子線の吸収が小さく、感度、解像度及びパターン性能の特性を同時に満たすことは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-90637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のいくつかの態様は、粒子線又は電磁波、特に電子線又はEUV等の吸収効率が大きく、感度、解像度及びパターン性能の特性に優れたレジスト組成物に用いるポリマーを提供することを課題とする。
本発明のいくつかの態様は、上記ポリマーを含有するレジスト組成物、及び、該レジスト組成物を用いたデバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、オニウム塩構造を有するユニットAと、特定の多重結合を有するユニットBと、を含むポリマーをレジスト組成物のポリマーとして用いることで、粒子線又は電磁波等を照射することにより上記ユニットAと上記ユニットBとの間で分子内架橋反応が起こり、高感度かつパターン倒れを抑制できることを見出し、本発明のいくつかの態様を完成するに至った。
【0008】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、オニウム塩構造を有し、粒子線又は電磁波照射により第1ラジカルを発生するユニットAと、炭素原子と炭素原子との多重結合及び炭素原子とヘテロ原子との多重結合からなる群より選択される少なくとも1つの多重結合を含有するラジカル発生構造を有し、粒子線又は電磁波照射により第2ラジカルを発生するユニットBと、を含み、前記ラジカル発生構造中の多重結合はベンゼン系芳香族内に含まれる多重結合でないことを特徴とするポリマーである。
【0009】
本発明の一つの態様は、上記ポリマーを含有するレジスト組成物である。
また、本発明の一つの態様は、上記レジスト組成物を用いて基板上レジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、粒子線又は電磁波を用いて、上記レジスト膜を露光するフォトリソグラフィ工程と、露光されたレジスト膜を現像してフォトレジストパターンを得るパターン形成工程と、を含むデバイスの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のいくつかの態様に係るポリマーは、レジスト組成物として用いたときに、粒子線又は電磁波等の吸収効率が大きく、感度、解像度及びパターン性能の特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、「粒子線又は電磁波」とは、電子線及び極端紫外線等を含む。
本発明において、「粒子線又は電磁波照射により」とは、ポリマーの少なくとも一部を粒子線又は電磁波に曝露することである。粒子線又は電磁波にポリマーの一部が曝露されることでポリマーの特定部分が励起又はイオン化され、活性種が生じる。該活性種により上記ユニットの一部が分解するか、該活性種が上記ユニットに付加するか、又は、該活性種により上記ユニットの水素が脱離されるか等の二次反応を起こし、ラジカルが発生する。ここで「活性種」とは、ラジカルカチオン、ラジカル及び電子等のことである。
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0012】
<1>ポリマー
本発明のいくつかの態様であるポリマーは、オニウム塩構造を有する第1のラジカルを発生するユニットAと、炭素原子と炭素原子との多重結合及び炭素原子とヘテロ原子との多重結合からなる群より選択される少なくとも1つの多重結合を含有するラジカル発生構造を有する、第2のラジカルを発生するユニットBと、を含むポリマーである。
【0013】
上記ユニットA及びユニットBを含むポリマーは、ポリマーの少なくとも一部に粒子線又は電磁波で曝露することで、上記ユニットAの還元により上記ユニットAからアニオンと第1のラジカルとが発生し、上記ユニットBからラジカルカチオンが生じ、該ラジカルカチオンからカチオンと第2のラジカルが発生する。第1のラジカルと第2のラジカルとが結合を形成し、上記ユニットA同士、ユニットB同士、もしくはユニットAとユニットBとの間で分子内架橋反応が起こり得る。
【0014】
(ユニットA)
上記ユニットAとしては、オニウム塩構造を有し、ポリマーの少なくとも一部に粒子線又は電磁波に曝露することにより極性変換するもの、すなわち、オニウム塩の還元によりアニオンとラジカルを発生させるものであれば特に制限はない。具体的には、例えば、下記式(I)で示されるものが挙げられる。
本発明において、「極性変換」とは、粒子線又は電磁波の照射により、直接的に又は間接的に、イオン性から非イオン性に極性が変化することを示す。
【0015】
【化1】
【0016】
上記一般式(I)中、M+はスルホニウムイオン又はヨードニウムイオンであり、X-は1価のアニオンである。
【0017】
Lは、ポリマーを構成する主鎖と上記オニウム塩構造とを結合できれば特に制限はないが、例えば、カルボニルオキシ基、フェニレンジイル基、ナフタレンジイル基、フェニレンジイルオキシ基、ナフタレンジイルオキシ基、フェニレンジイルカルボニルオキシ基、ナフタレンジイルカルボニルオキシ基、フェニレンジイルオキシカルボニル基及びナフタレンジイルオキシカルボニル基からなる群より選択されるいずれかが挙げられる。
Lとしては、容易に合成できる点からカルボニルオキシ基等が好ましい。
【0018】
Spは、上記Lと上記オニウム塩とのスペーサとなり得るものであれば特に制限はないが、例えば、直接結合;置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキレン基;及び、置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニレン基;のいずれかであり、上記Sp中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
【0019】
Spの炭素数1~6の直鎖アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基及びn-ヘキシレン基等が挙げられる。
Spの炭素数1~6の分岐アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、tert-ペンチレン基、2-エチルへキシレン基等が挙げられる。
【0020】
Spの炭素数1~6の環状のアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基及びシクロヘキシレン基等が挙げられる。
Sp中の少なくとも1つのメチレン基が2価のヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。2価のヘテロ原子含有基としては、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-NHCO-、-CONH-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NH-、-N(RSp)-、-N(ArSp)-、-S-、-SO-及び-SO2-等からなる群より選ばれる基等が挙げられる。上記RSpとしては、直鎖、分岐又は環状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、ArSpとしては、フェニル基及びナフチル基等の炭素数12以下のアリール基が挙げられる。なお、上記Spのアルキレン基の炭素数は、Spが有してもよい置換基の炭素数は含まない。
【0021】
Spが有してもよい置換基としては、直鎖又は環状の炭素数1~12のアルキル基;該アルキル基の少なくとも1つのメチレン基に代えて-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-CO-O-、-NHCO-、-CONH-、-NH-CO-O-、-O-CO-NH-、-NH-、-N(RSp)-、-N(ArSp)-、-S-、-SO-及び-SO2-からなる群より選ばれる1種のヘテロ原子含有基を骨格に含んだアルキル基;アリール基;及びヘテロアリール基等が挙げられる。
Spの置換基としてのアルキル基、ヘテロ原子含有基を骨格に含んだアルキル基としては、上記Spと同様のものが挙げられる。
Spの置換基としてのアリール基としては、上記ArSpと同様のものが挙げられる。Spの置換基としてのヘテロアリール基としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン及びピラジン等の骨格を有する基が挙げられる。
Spは、直接結合でもよいが、ユニットAとユニットBとの架橋反応の点から、分子が動きやすいようにスペーサー構造となるものが好ましい。好ましくは、アルキレン基、アルキレンオキシ基及びアルキレンカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
1は、水素原子;直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキル基;及び、直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニル基;からなる群より選択されるいずれかであり、該R1中の上記アルキル基及びアルケニル基中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0023】
1の炭素数1~6の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基及びn-ヘキシル基等が挙げられる。
1の炭素数1~6の分岐アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、2-エチルエキシル基等が挙げられる。
1の炭素数1~6の環状のアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
1の直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニル基としては、上記に示す直鎖アルキル基、分岐アルキル基及び環状アルキル基の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが、炭素-炭素二重結合に置換されたものが挙げられる。
また、R1の上記アルキル基及びアルケニル基中の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子に置換されたフッ化アルキル基及びフッ化アルケニル基であってもよい。全部の水素原子がフッ素原子に置換されたものであってもよい。フッ化アルキル基としては、トリフルオロメチル基等が好ましい。
【0025】
+としては、Spに結合する結合手を有するスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンであり、具体的には、下記一般式(a1)及び(a2)に示されるもの等が挙げられる。
【0026】
【化2】
【0027】
上記一般式中、R2aは、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキレン基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニレン基;置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリーレン基;置換基を有していてもよい炭素数4~12のヘテロアリーレン基;及び、直接結合;からなる群より選択されるいずれかである。
2aの直鎖、分岐又は環状のアルキレン基としては、上記Spのアルキレン基と同様のものが挙げられる。
2aの直鎖、分岐又は環状のアルケニレン基としては、上記Spのアルケニレン基と同様のものが挙げられる。
【0028】
2aの炭素数6~14のアリーレン基としては、フェニレン基及びナフチレン基等が挙げられる。
2aの炭素数4~12のヘテロアリーレン基としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、プリン、キノリン、イソキノリン、クロメン、チアントレン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、フェノキサジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン及びカルバゾール等の骨格を有する基等が挙げられる。
2bのアルキル基、アルケニル基、アリール基及びヘテロアリール基としては、上記R2aのアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基及びヘテロアリーレン基が1価となったものが挙げられる。
【0029】
2a及びR2bの置換基としては、上記Spが有してもよい置換基と同様の直鎖又は環状の炭素数1~12のアルキル基;ヘテロ原子含有基を骨格に含んだアルキル基;アリール基;及びヘテロアリール基等が挙げられる。
上記式(a1)において、R2a及び2つのR2bのうちのいずれか2つが互いに結合して、これらが結合している硫黄原子と共に環構造を形成してもよい。
【0030】
+としてのスルホニウムカチオンとしては、例えば下記に示される構造を有し、いずれかの位置で上記Spと結合する結合手を有するものが挙げられる。なお、下記に示す化合物は、上記R2a及びR2bに相当する部分に上記置換基を有していてもよい。
【0031】
【化3】
【0032】
としては、アルキルスルホネートアニオン、アリールスルホネートアニオン、アルキルカルボキシレートアニオン、アリールカルボキシレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフォネートアニオン、ジアルキルスルホニルイミドアニオン、トリアルキルスルホネートメチドアニオン、テトラキスフェニルボレートアニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、1価の金属オキソニウムアニオン、及び、これを含む水素酸アニオンからなる群より選択されるいずれかが挙げられる。また、X中のアルキル基及びアリール基の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されていてもよい。
金属オキソニウムアニオンとしては、NiO 及びSbO 等が挙げられる。また、VO 3-、SeO 2-、SeO 2-、MoO 2-、SnO 2-、TeO 2-、TeO 2-、TaO 2-及びWO 2-等の2~3価のものに対し、H+、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン及び1~2価の金属カチオン等を適宜付加して価数を1価としたものであってもよい。上記1~2価の金属カチオンとしては、通常のものでよく、例えばNa+、Sn2+、Ni2+等が挙げられる。
【0033】
なお、Xが金属オキソニウムアニオンであるとき、該金属が、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Xe、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、Rn及びRaからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。理由としては、粒子線また電磁波に対する感度が向上するからである。金属オキソニウムアニオンとして具体的には、SbF 、SbO 、Sb(OH) 、 HWO 等が好ましく挙げられる。
【0034】
上記ユニットAとして、下記式(II)で示されるものが好ましい。
【0035】
【化4】
【0036】
上記一般式(II)中、L、Sp及びX-は、上記一般式(I)と同様であり、R2a及びR2bは、上記一般式(a1)と同様である。
【0037】
(ユニットB)
上記ユニットBは、炭素原子と炭素原子との多重結合及び炭素原子とヘテロ原子との多重結合からなる群より選択される少なくとも1つの多重結合を含有するラジカル発生構造を有するユニットであり、ポリマーの少なくとも一部に粒子線又は電磁波で曝露することで第2のラジカルを発生させるものであれば特に制限はない。
上記ユニットBにおける多重結合は、粒子線又は電磁波の影響でラジカルカチオンを発生し、該ラジカルカチオンが第2のラジカルとカチオンとに分解すれば特に制限はないが、ベンゼン系芳香族内に含まれるものでなく、且つ、下記に示される結合の少なくともいずれかであることが好ましい。ベンゼン系芳香族とは、ベンゼンだけでなく、ナフタレン及びアズレン等のベンゼン骨格を有する芳香族も含まれる。「ベンゼン系芳香族内に含まれる多重結合でない」とは、これら芳香族が有する多重結合でないことをいう。
【0038】
【化5】
【0039】
上記多重結合を含有するラジカル発生構造としては、具体的には、アルキルフェノン骨格、アシルオキシム骨格及びベンジルケタールからなる群より選択されるいずれかを有するユニットが挙げられる。これら骨格を有すれば、任意の置換基を有してもよく、アルキルフェノン骨格を有するユニットとしてはα-アミノアセトフェノン骨格等も包含される。より具体的には、下記一般式(III)~(V)の少なくともいずれかで示されるものが好ましく挙げられる。
【0040】
【化6】
【0041】
上記一般式(III)~(V)中、R1、L及びSpは上記一般式(II)のL及びSpと同様のものが挙げられる。
は、それぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基;-R(Rは置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~12のアルキル基である。);-OR;及び該R中の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが炭素-炭素二重結合に置換された基;及び、-R(Rは置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基である。);からなる群より選択されるいずれかである。2つ以上のR3は、単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、環構造を形成してもよい。上記式(III)においては、3つのR3のうち1つがOHであってもよい。
【0042】
は、-R;-R;-OR;-SR;-OR;-SR;-OC(=O)R;-OC(=O)R;-C(=O)OR;-C(=O)OR;-OC(=O)OR;-OC(=O)OR;-NHC(=O)R;-NRC(=O)R;-NHC(=O)R;-NRC(=O)R;-NRC(=O)R;-NRC(=O)R;-N(R2;-N(R2;-N(R)(R);-SO3;-SO3;-SO2;-SO2;該-R中の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが炭素-炭素二重結合に置換された基;及びニトロ基;からなる群より選択されるいずれかである。
【0043】
1は1~3の整数であり、n1が1のときm1は0~4の整数であり、n1が2のときm1は0~6の整数であり、n1が3のときm1は0~8の整数である。
【0044】
は、置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~12のアルキレン基;置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~12のアルキレンオキシ基;置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~12のアルケニレン基;置換基を有していても良い直鎖、分岐又は環状の炭素数1~12のアルケニレンオキシ基;置換基を有していても良い炭素数6~14のアリーレン基;及び、置換基を有していてもよい炭素数4~12のヘテロアリーレン基;からなる群より選択されるいずれかである。)
【0045】
上記ユニットBとして、例えば具体的に、下記に示されるものが挙げられる。
【0046】
【化7】
【0047】
(ユニットC)
後述の一般式(VI)~(VIII)で示される化合物の少なくともいずれかが、該化合物のいずれかの位置で下記式(1)の*部分に結合したものをユニットCとしてポリマーに任意に含んでいてもよい。上記ポリマーが上記ユニットCを含有することで、粒子線又は電磁波に対する感度を向上させることが可能となる。
ユニットCとして一般式(VIII)で示される化合物の構造を含む場合、オニウム塩のXは酸性度の高いもの、例えば、フッ素含有アルキルスルホネートアニオン、BF 、PF 及びSbF 等を選択することが好ましい。それにより、一般式(VIII)で示される化合物が特に高い増感作用を有することとなる。
【0048】
【化8】
【0049】
上記式(1)中、R1、L及びSpは、上記一般式(I)と同様である。一般式(VI)~(VIII)で示される化合物については、後述する。
【0050】
(ユニットD)
本発明の一つの態様におけるポリマーは、上記ユニットA~Cの他に、ラジカルスカベンジャーユニット(以下、「ユニットD」ともいう)をさらに含有することも好ましい。上記ユニットDとしては、フェノール構造又はヒンダードアミン構造が該構造のいずれかの位置で上記式(1)の*部分に結合したユニットが好ましい。
ユニットDは、上記ユニットAとユニットBとが発生したラジカルを安定化できれば特に制限はないが、例えば具体的には、下記に示されるユニットが挙げられる。
【0051】
【化9】
【0052】
上記一般式中、R11aの各々は、独立して、水素原子及びアルキル基からなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。R11aとしてのアルキル基は置換基を有していてもよい。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ブチル基、ペンチル基等の炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
上記アルキル基が有しても良い置換基としては、ヒドロキシ基、スルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
n8は4である。
【0053】
上記一般式中、R11bは水素原子、オキシ基、置換基を有してもよいアルキル基及びアルコキシ基からなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。なお、R11bがオキシ基である場合、ユニットDは定常状態で安定なニトロキシドラジカルを有する。
上記R11bのアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ブチル基、ペンチル基等の炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
上記R11bのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1~15等のアルコキシ基が挙げられる。
11bが有しても良い置換基としては、ヒドロキシ基、スルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、シアノ基、アルコキシ基等が挙げられる。
上記式(III)において、2つ以上のR4は単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、環構造を形成してもよい。
【0054】
ユニットDとして具体的には、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート及び2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル(メタ)アクリレート等のモノマーから構成されるものが挙げられる。
上記ポリマーが上記ユニットDを含有することで、粒子線又は電磁波を照射した際に安定的に架橋を促進することが可能となる。
【0055】
(ユニットE) 本発明の一つの態様におけるポリマーは、上記ユニットA~Dの他に、Sn、Sb、Ge、Bi及びTeからなる群より選択される金属原子を有する有機金属化合物含有ユニットEを(以下、「ユニットE」ともいう)をさらに含有することも好ましい。
上記ユニットEに含有される金属原子は、EUV又は電子線に対して高い吸収を有するものであれば特に限定はされず、上記金属原子以外に周期表第10~16属の原子であってもよい。
上記ユニットEとしては、アルキル及びアリールスズ、アルキル及びアリールアンチモニー、アルキル及びアリールゲルマン、又はアルキル及びアリールビスムチン構造が該構造のいずれかの位置で上記式(1)の*部分に結合したユニットであることが好ましい。
ユニットEは、EUV照射による2次電子発生効率が高く上記ユニットA及びユニットBの分解効率を上げることが出来る。ユニットEとしては、EUV吸収の高い上記金属原子を含んでいれば特に制限はないが、例えば具体的には下記に示されるユニットが挙げられる。
【0056】
【化10】
【0057】
上記一般式中、R12aの各々は、独立して、水素原子及びアルキル基からなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。R12aとしてのアルキル基は置換基を有していてもよい。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ブチル基、ペンチル基等の炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
上記アルキル基が有しても良い置換基としては、ヒドロキシ基、スルホニルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
n9は4である。
【0058】
上記一般式中、R12bは、置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルキル基;置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~6のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基;置換基を有していてもよい炭素数4~12のヘテロアリール基;及び、直接結合;からなる群より選択されるいずれかである。
12bの直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、上記R2bのアルキル基と同様のものが挙げられる。
12bの直鎖、分岐又は環状のアルケニル基としては、上記R2bのアルケニル基と同様のものが挙げられる。
【0059】
12bの炭素数6~14のアリール基としては、上記R2bのアリール基と同様のものが挙げられる。R12bの炭素数4~12のヘテロアリール基としては、上記R2bのヘテロアリール基と同様のものが挙げられる。
2つ以上のR12aは単結合で直接に、又は、酸素原子、硫黄原子及びメチレン基からなる群より選択されるいずれかを介して、環構造を形成してもよい。また、3つのR12bのうちのいずれか2つが互いに結合して、これらが結合している金属原子と共に環構造を形成してもよい。
【0060】
ユニットEとして具体的には、4-ビニルフェニル-トリフェニルスズ、4-ビニルフェニル-トリブチルスズ、4-イソプロペニルフェニル-トリフェニルスズ、4-イソプロペニルフェニル-トリメチルスズ、アクリル酸トリメチルスズ、アクリル酸トリブチルスズ、アクリル酸トリフェニルスズ、メタクリル酸トリメチルスズ、メタクリル酸トリブチルスズ、メタクリル酸トリフェニルスズ、4-ビニルフェニル-ジフェニルアンチモニー、4-イソプロペニルフェニル-ジフェニルアンチモニー、4-ビニルフェニル-トリフェニルゲルマン、4-ビニルフェニル-トリブチルゲルマン、4-イソプロペニルフェニル-トリフェニルゲルマン及び4-イソプロペニルフェニル-トリメチルゲルマン等のモノマーから構成されるユニットが挙げられる。
上記ポリマーが上記ユニットEを含有することで、粒子線又は電磁波を照射した際に2次電子の発生効率を向上させることが可能となる。
【0061】
(その他のユニット)
本発明の一つの態様におけるポリマーは、上記ユニットA~Eの他に、本発明の効果を損なわない範囲で、レジスト組成物として通常用いられるユニットを有していてもよい。
例えば、上記式(1)の*部分にエーテル基、ラクトン骨格、エステル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基等を含有する骨格を有するユニット(以下、「ユニットF」ともいう)が挙げられる。
エポキシ基、グリシジル基及びオキセタニル基等を含有する骨格を有するユニットは、上記ユニットAから発生する酸が強酸を用いた場合、すなわち、X-がCFSO 等の場合、カチオン重合も起こり得るため好ましい。
また、本発明の一つの態様におけるポリマーは、上記式(1)の構造を有しないスチレン、4-ヒドロキシスチレン、2-ヒドロキシ―6-ビニルナフタレン、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル等から構成されるユニット等を有していても良い。
【0062】
本発明の一つの態様におけるレジスト組成物は、粒子線又は電磁波の照射により分子内架橋反応が起こることを特徴とする。そのため、ユニットAから発生する酸として強酸を用いた場合、すなわち、XがCFSO 等の場合、酸の作用により水溶性現像液への溶解性が高まる酸解離性基を有するユニットを、本発明におけるポリマーのユニットとして含まないことが好ましい。
【0063】
本発明の一つの態様におけるポリマーは、上記ユニットAに対して、モル比でそれぞれ、上記ユニットBが0.2~4であることが好ましく、上記ユニットCが0~1であることが好ましく、上記ユニットDが0~0.5であることが好ましく、上記ユニットEが0~2であることが好ましく、上記ユニットFが0~4であることが好ましい。
本発明の一つの態様におけるポリマーは、上記それぞれのユニットを構成するモノマー成分を原料として用い、上記配合割合となるように通常の方法で重合することにより得ることができる。
【0064】
<2>レジスト組成物
本発明の一つの態様のレジスト組成物は、上記ポリマーを含有することを特徴とする。上記ポリマー以外に、増感化合物、有機金属化合物及び有機金属錯体等の成分を任意に含有していてもよい。以下、各成分について説明する。
(増感化合物)
本発明の一つの態様のレジスト組成物は、上記ポリマーのみ含有する構成であってもよいが、上記ポリマーに加えて、その他の成分、例えば下記一般式(VI)~(VIII)で示される化合物をさらに含有してもよい。レジスト組成物にこれらを含有することで、増感剤として作用し、粒子線又は電磁波に対する感度を高めることができる。
【0065】
【化11】
【0066】
上記一般式(VI)~(VIII)中、R6、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素原子;電子供与性基;及び、電子吸引性基;からなる群より選択されるいずれかである。R及びRのうち少なくとも一つは上記電子供与性基であることが好ましい。
8のうち少なくとも一つは上記電子供与性基であることが好ましい。
及びR10は、水素原子;置換基を有してもよいアルキル基;及び、アルケニル基;からなる群より選択されるいずれかであり、2つのR10は互いに結合してこれらが結合している2つの酸素原子と共に環構造を形成してもよい。
【0067】
Eは、直接結合;酸素原子;硫黄原子;及びメチレン基;からなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。
は、0又は1の整数であることが好ましい。n及びnは、それぞれ0~2の整数であることが好ましい。n+nは2であることが好ましい。
が1のときnは0~4の整数であり、nが2のときnは0~6の整数であり、nが1のときnは0~4の整数であり、nが2のときnは0~6の整数であることが好ましい。
は0~7の整数であることが好ましい。
は1又は2であり、nが1のときnは0~5の整数であり、nが2のときnは0~7の整数であることが好ましい。
【0068】
6、R7及びR8の電子供与性基としては、アルキル基(-R13)、該アルキル基(-R13)の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが炭素-炭素二重結合に置換されたアルケニル基;並びに、水酸基又はアセタール基に対して芳香環のオルト位又はパラ位に結合するアルコキシ基(-OR13)及びアルキルチオ基(-SR13);等が挙げられる。
【0069】
上記R13は、炭素数1以上のアルキル基であることが好ましい。炭素数1以上のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基及びn-デシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、2-エチルエキシル基等の分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンタン-1-イル基、アダマンタン-2-イル基、ノルボルナン-1-イル基及びノルボルナン-2-イル基等の脂環式アルキル基;これらの水素の1つがトリメチルシリル基、トリエチルシリル基及びジメチルエチルシリル基等のトリアルキルシリル基で置換されたシリル基置換アルキル基;上記アルキル基において、上記化合物(VI)~(VIII)が有する芳香環に直接結合していない炭素原子が持つ水素原子の少なくとも1つがシアノ基又はフルオロ基等で置換されたアルキル基;等が好ましく挙げられる。
【0070】
6、R7及びR8の電子吸引性基としては、-C(=O)R13a(R13aは置換基を有していてもよい直鎖、分岐又は環状の炭素数1~12のアルキル基である。);-C(=O)R13b(R13bは置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基である。);-C(=O)OR13a;-SO213a;-SO213b;ニトロ基;ニトロソ基、トリフルオロメチル基、水酸基又はアセタール基に対してメタ位に置換された-OR;水酸基又はアセタール基に対してメタ位に置換された-OR12b;水酸基又はアセタール基に対してメタ位に置換された-SR13a;水酸基又はアセタール基に対してメタ位に置換された-SR13b;及び上記-C(=O)R12a、-C(=O)OR、-SO213a及び-SR12a中の炭素-炭素一重結合の少なくとも1つが炭素-炭素二重結合に置換された基又は炭素-炭素三重結合に置換された基;等が挙げられる。
【0071】
上記一般式(VI)~(VIII)で示される化合物(以下、「増感化合物」ともいう)として、例えば具体的に下記に示されるものが挙げられる。
【0072】
【化12】
【0073】
上記増感化合物のレジスト組成物中の含有量としては、上記ユニットA及びユニットBの合量に対し、0~1モル当量であることが好ましい。
【0074】
上記増感化合物は、低分子量成分としてレジスト組成物中に加えた態様でもよいが、上述したように、上記ポリマーのユニットとして含有してもよい。すなわち、上記一般式(VI)~(VIII)で表される化合物のいずれかが、該化合物のいずれかの位置で上記式(1)の*部分に結合したユニットCとしてポリマーに含まれた態様であってもよい。その場合、上記式(1)の*部分に結合する位置は、R6、R7及びR8のいずれかが好ましい。例えば、上記一般式(VI)で表される化合物の場合、R6中の1つのHに代えて、上記式(1)の*部分に結合する結合手を有することが好ましい。
【0075】
上記増感化合物として一般式(VIII)で示される化合物を用いる場合、上記オニウム塩のXは酸性度の高いもの、例えば、フッ素含有アルキルスルホネートアニオン、BF 、PF 、SbF 等を選択することが好ましい。
【0076】
(有機金属化合物及び有機金属錯体)
本発明の一つの態様のレジスト組成物は、有機金属化合物及び有機金属錯体のいずれかをさらに含有することが好ましい。
上記金属は、Al、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Xe、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、At、Rn及びRaからなる群より選択される少なくとも1種であることが、上記ユニットA及び上記ユニットBを増感できることから好ましい。
【0077】
上記有機金属化合物としては、テトラアリール錫、テトラアルキル錫、ビス(アルキルホスフィン)白金等が挙げられる。
有機金属錯体としては、アクリル酸ハフニウム(IV)、アクリル酸ジルコニウム(IV)、アクリル酸ビスマス(III)、酢酸ビスマス(III)、シュウ酸スズ(II)等が挙げられる。
上記有機金属化合物及び有機金属錯体のレジスト組成物中の配合量は、ユニットAに対して0~0.5モル当量であることが好ましい。
【0078】
(その他の成分)
本発明の一つの態様のレジスト組成物は、いずれの態様においても、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を配合してもよい。配合可能な成分としては、公知の添加剤、例えば、含フッ素はっ水ポリマー、トリオクチルアミン等のクエンチャー、界面活性剤、充填剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、光安定剤、酸化防止剤、イオン補足剤及び溶剤等から選ばれる少なくとも1つを添加してもよい。
上記含フッ素はっ水ポリマーとしては、液浸露光プロセスに通常用いられるものが挙げられ、上記ポリマーよりもフッ素原子含有率が大きい方が好ましい。それにより、レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する場合に、含フッ素はっ水ポリマーのはっ水性に起因して、レジスト膜表面に上記含フッ素はっ水ポリマーを偏在化させることができる。
【0079】
<3>レジスト組成物の調製方法
本発明の一つの態様のレジスト組成物の調製方法は特に制限はなく、上記ポリマー及びその他の任意成分を混合、溶解又は混練する等の公知の方法により調製することができる。
上記ポリマーは、上記ユニットA及びユニットBを構成するモノマー、並びに、必要によりその他のユニットを構成するモノマーを通常の方法により適宜重合して合成できる。しかしながら、本発明に係るポリマーの製造方法はこれに限定されない。
【0080】
<4>デバイスの製造方法
本発明の1つの形態は、上記レジスト組成物を用いて基板上レジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、粒子線又は電磁波を用いて、前記レジスト膜をパターン状に露光するフォトリソグラフィ工程と、露光されたレジスト膜を現像してフォトレジストパターンを得るパターン形成工程と、を含むデバイスの製造方法である。
【0081】
フォトリソグラフィ工程において露光に用いる粒子線又は電磁波としては、それぞれ電子線、EUVが挙げられる。
光の照射量は、光硬化性組成物中の各成分の種類及び配合割合、並びに塗膜の膜厚等によって異なるが、1J/cm以下又は1000μC/cm以下であることが好ましい。
上記レジスト組成物は、ポリマー中に増感ユニット(ユニットC)として含むか、又は、増感化合物とし含む場合、粒子線又は電磁波の照射後に、紫外線等で第2の露光を行うことも好ましい。
【実施例
【0082】
以下、本発明のいくつかの態様を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
<ユニットAを構成する化合物A1の合成>
(合成例1)ジベンゾチオフェン-9-オキシドの合成
【0083】
【化13】
【0084】
ジベンゾチオフェン7.0gをギ酸21.0gに溶解して35℃とする。これに35質量%過酸化水素水4.1gを滴下して25℃で5時間撹拌する。冷却後、反応液を純水50gに滴下し固体を析出させる。析出した固体をろ別し、純水20gで2回洗浄した後、アセトンを用いて再結晶する。これをろ過した後に乾燥することでジベンゾチオフェン-9-オキシドを7.6g得る。
【0085】
(合成例2)9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネートの合成
【0086】
【化14】
【0087】
上記合成例1で得たジベンゾチオフェン-9-オキシド4.0gとフェノール2.8gとをメタンスルホン酸19gに溶解して25℃とする。これに五酸化二リン1.5gを添加して室温で15時間撹拌する。その後純水60gを添加してさらに5分撹拌後、酢酸エチル20gで2回洗浄する。これを分液して、得られた水層にトリフルオロメタンスルホン酸カリウム3.9gと塩化メチレン30gとを添加して室温で2時間撹拌する。その後これを分液して、得られた有機層を純水40gで4回洗浄する。回収した有機層を濃縮し、ジイソプロピルエーテル100gに滴下して固体を析出させる。析出した固体をろ別して乾燥することで9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホンネートを5.6g得る。
【0088】
(合成例3)9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネート(化合物A1)の合成
【0089】
【化15】
(化合物A1)
【0090】
上記合成例2で得た9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネート5.0gとメタクリル酸クロライド1.6gとを塩化メチレン40gに溶解して25℃とする。これに、トリエチルアミン1.6gを塩化メチレン7gに溶解した溶液を滴下して25℃で2時間撹拌する。撹拌後、純水20gを添加してさらに10分撹拌した後に分液する。有機層を純水20gで2回洗浄した後に、回収した有機層を濃縮し、ジイソプロピルエーテル100gに滴下することで固体を析出させる。析出した固体をろ別した後に乾燥させて9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネート(化合物A1)を5.8g得る。
【0091】
<ユニットAを構成する化合物A2の合成>
(合成例4)9-(4-アクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネート(化合物A2)の合成
【0092】
【化16】
(化合物A2)
【0093】
メタクリル酸クロライドに代えてアクリル酸クロライドを用いる以外は上記合成例3と同様の操作を行うことで、9-(4-アクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネート(化合物A2)を4.4g得る。
【0094】
<ユニットAを構成する化合物A3の合成>
(合成例5)9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ベンゾエートの合成
【0095】
【化17】
【0096】
トリフルオロメタンスルホン酸カリウムに代えて安息香酸を用い、濃縮した有機層をカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール=70/30(体積比))により精製する以外は上記合成例2と同様の操作を行うことで、9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ベンゾエートを3.2g得る。
【0097】
(合成例6)9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ベンゾエート(化合物A3)の合成
【0098】
【化18】
【0099】
9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネートに代えて9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ベンゾエートを用い、メタクリル酸クロライドの代わりにメタクリル酸無水物を用いて濃縮した有機層をカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール=70/30(体積比))により精製する以外は上記合成例3と同様の操作を行うことで、9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ベンゾエート(化合物A3)を5.9g得る。
【0100】
<ユニットAを構成する化合物A4>の合成
(合成例7)9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ヘキサフルオロアンチモネート(化合物A4)の合成
【0101】
【化19】
【0102】
上記合成例6で得た9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ベンゾエート3.0gを塩化メチレン24gに溶解し、これにヘキサフルオロアンチモン酸カリウム1.5g、及び純水24gを添加して室温で15時間撹拌する。その後、分液して回収した有機層を純水24gで洗浄する。回収した有機層を濃縮し、得られた有機層をカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール=80/20(体積比))により精製することで、9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ヘキサフルオロアンチモネート(化合物A4)を2.1g得る。
【0103】
<ユニットAを構成する化合物A5>の合成
(合成例8)9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-アンチモネート(化合物A5)の合成
【0104】
【化20】
【0105】
ヘキサフルオロアンチモン酸カリウムに代えてアンチモン酸ナトリウム三水和物を用い、酢酸を添加しない以外は上記合成例7と同様の操作を行うことで9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-アンチモネート(化合物A5)を2.4g得る。
【0106】
<ユニットAを構成する化合物A6の合成>
(合成例9)(4-ヒドロキシ)フェニルジフェニルスルホニウム-トリフルオロメタンスルホネートの合成
【0107】
【化21】
【0108】
ジベンゾチオフェン-9-オキシドに代えてジフェニルスルホキシドを用いる以外は上記合成例2と同様の操作を行うことで、(4-ヒドロキシ)フェニルジフェニルスルホニウム-トリフルオロメタンスルホネートを5.2g得る。
【0109】
(合成例10)(4-メタクリルオキシ)フェニルジフェニルスルホニウム-トリフルオロメタンスルホネート(化合物A6)の合成
【0110】
【化22】
【0111】
9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネートに代えて(4-ヒドロキシ)フェニルジフェニルスルホニウム-トリフルオロメタンスルホンネートを用いる以外は上記合成例3と同様の操作を行うことで、9-(4-メタクリルオキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-ベンゾエート(化合物A6)を5.9g得る。
【0112】
<ユニットAを構成する化合物A7の合成>
(合成例11)5-(4-ヒドロキシナフチル)テトラメチレンスルホニウム―トリフルオロメタンスルホネートの合成
【0113】
【化23】
【0114】
ジベンゾチオフェン-9-オキシドに代えてテトラメチレンスルホキシドを用い、フェノールに代えて1-ナフトールを用いる以外は上記合成例2と同様の操作を行うことで、5-(4-ヒドロキシナフチル)テトラメチレンスルホニウム―トリフルオロメタンスルホネートを4.7g得る。
【0115】
(合成例12)5-(4-メタクリルオキシナフチル)テトラメチレンスルホニウム―トリフルオロメタンスルホネート(化合物A7)の合成
【0116】
【化24】
【0117】
9-(4-ヒドロキシフェニル)ジベンゾチオフェニウム-トリフルオロメタンスルホネートに代えて5-(4-ヒドロキシナフチル)テトラメチレンスルホニウム-トリフルオロメタンスルホンネートを用いる以外は上記合成例3と同様の操作を行うことで、(5-(4-メタクリルオキシナフチル)テトラメチレンスルホニウム-トリフルオロメタンスルホネート(化合物A7)を5.1g得る。
【0118】
<ユニットBを構成する化合物B1の合成>
(合成例13)1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンの合成
【0119】
【化25】
【0120】
あらかじめ水分を除去したフラスコにマグネシウム2.0gとTHF10gとを加える。これに、4-(2-エトキシ)エトキシフェニルブロミド 10.0gをTHF50.0gに溶解した溶液を室温で1時間かけて滴下する。滴下後に室温で1時間撹拌した後、得られた4-(2-エトキシ)エトキシフェニルマグネシウムブロミド溶液を別途準備したピバル酸クロライド 9.8gとTHF40gとを加えたフラスコ中に5℃で30分間かけて滴下する。滴下後、30分撹拌した後に3%塩酸150gを加えて、さらに10分間撹拌する。その後、THFを留去し、酢酸エチル150gを用いて抽出する。これを分液し、得られた有機層を純水60gで3回洗浄する。その後、分液して得られた有機層を溶媒留去した後にカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80(体積比))により精製することで、1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンを5.8g得る。
【0121】
(合成例14)1-(4-メタクリルオキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノン(化合物B1)の合成
【0122】
【化26】
【0123】
上記合成例13で得た1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノン4.0gとメタクリル酸無水物4.1gとを塩化メチレン32gに溶解して25℃とする。これに、トリエチルアミン2.7gを塩化メチレン7gに溶解した溶液を滴下して25℃で2時間撹拌する。撹拌後、純水20gを添加してさらに10分撹拌した後に分液する。有機層を純水20gで2回洗浄した後に回収した有機層を濃縮し、得られた有機層を溶媒留去した後にカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=10/90(体積比))により精製することで、1-(4-メタクリルオキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノン(化合物B1)を4.6g得る。
【0124】
<ユニットBを構成する化合物B2の合成>
(合成例15)1-(4-アクリルオキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノン(化合物B2)の合成
【化27】
【0125】
メタクリル酸無水物に代えてアクリル酸クロライドを用いる以外は上記合成例10と同様の操作を行うことで、1-(4-アクリルオキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノン(化合物B2)を5.3g得る。
【0126】
<ユニットBを構成する化合物B3の合成>
(合成例16)1-(6-ヒドロキシナフタレン-2-イル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンの合成
【0127】
【化28】
【0128】
4-(2-エトキシ)エトキシフェニルブロミドに代えて2-ブロモ-6-(2-エトキシ)エトキシナフタレンを用いる以外は上記合成例13と同様の操作を行うことで、1-(6-ヒドロキシナフタレン-2-イル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンを6.9g得る。
【0129】
(合成例17)1-(6-メタクリルオキシナフタレン-2-イル)-2,2-ジメチル-1-プロパノン(化合物B3)の合成
【0130】
【化29】
【0131】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンに代えて1-(6-ヒドロキシナフタレン-2-イル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンを用いる以外は上記合成例14と同様の操作を行うことで、1-(6-メタクリルオキシナフタレン-2-イル)-2,2-ジメチル-1-プロパノン(化合物B3)を5.3g得る。
【0132】
<ユニットBを構成する化合物B4の合成>
(合成例18)1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2,2-ジメチル-1-プロパノンの合成
【0133】
【化30】
【0134】
4-(2-エトキシ)エトキシフェニルブロミドに代えて4-(2-ビニルオキシ)エトキシフェニルブロミドを用いる以外は上記合成例13と同様の操作を行うことで、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2,2-ジメチル-1-プロパノンを6.3g得る。
【0135】
(合成例19)1-[4-(2-メタクリルオキシ)エトキシフェニル]-2,2-ジメチル-1-プロパノン(化合物B4)の合成
【0136】
【化31】
【0137】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンに代えて1-(2-ヒドロキシエトキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンを用いる以外は上記合成例14と同様の操作を行うことで、1-[4-(2-メタクリルオキシ)エトキシフェニル]-2,2-ジメチル-1-プロパノン(化合物B4)を5.6g得る。
【0138】
<ユニットBを構成する化合物B5の合成>
(合成例20)1-[4-(2-メタクリルオキシ)エトキシフェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン(化合物B5)の合成
【0139】
【化32】
【0140】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンに代えて1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア2959)を用いる以外は上記合成例14と同様の操作を行うことで、1-[4-(2-メタクリルオキシ)エトキシフェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン(化合物B5)を6.5g得る。
【0141】
<ユニットBを構成する化合物B6の合成>
(合成例21)フェニルグリオキシ酸クロライドの合成
【0142】
【化33】
【0143】
フェニルグリオキシ酸5.0gをアニソール35gに溶解して50℃とする。これに塩化オキサリル5.1gを10分間かけて滴下し50℃で2時間撹拌する。これを、70℃として過剰の塩化オキサリルを留去した後に減圧下でアニソールを留去し濃縮することで、フェニルグリオキシ酸クロライドのアニソール溶液を26.3g得た。
【0144】
(合成例22)1-(4-メトキシフェニル)-2-フェニルエタンジオンの合成
【0145】
【化34】
【0146】
合成例21で得たフェニルグリオキシ酸クロライドのアニソール溶液25.0gを塩化メチレン35gに溶解して0℃とする。これに塩化アルミニウム4.3gを添加して0℃で2時間撹拌する。これに純水35gを加えて10分間撹拌後に分液する。得られた有機層を純水30gで2回洗浄した後に回収した有機層を濃縮し、得られた有機層を溶媒留去した後にカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=10/90(体積比))により精製することで、1-(4-メトキシフェニル)-2-フェニルエタンジオンを5.6g得る。
【0147】
(合成例23)1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルエタンジオンの合成
【0148】
【化35】
【0149】
4-メトキシベンジル5.0gを酢酸95mlに溶解する。これに、48質量%HBr水溶液33.2gを70℃で10分間かけて滴下する。滴下後、110℃で70時間攪拌する。その後、水150gを添加して結晶化する。これをろ過し、結晶を水250gで洗浄した後、乾燥することで1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルエタンジオンを4.1g得る。
【0150】
(合成例24)2,2-ジメトキシ-1-(4-メタクリルオキシフェニル)エタン-1-オン(化合物B6)の合成
【0151】
【化36】
【0152】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルエタンジオン4.0gと硫酸0.10gとをメタノール12gに溶解して25℃とする。これにオルト蟻酸トリメチル2.2gを滴下して3時間攪拌する。トリエチルアミン0.6gを30℃で添加して5分間攪拌後、溶媒を留去する。得られた残渣にアセトニトリル25g、トリエチルアミン4.5g及びジメチルアミノピリジン0.11gを添加した後、アセトニトリル5.0gで希釈したメタクリル酸無水物6.8gを室温で滴下する。滴下後、25℃にて2時間攪拌した後、3質量%NaHCO水溶液64gを添加して5分間攪拌する。その後、酢酸エチル32gで抽出し、水10gで3回洗浄後に回収した有機層を濃縮し、得られた有機層を溶媒留去した後にカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=10/90(体積比))により精製することで、2,2-ジメトキシ-1-(4-メタクリルオキシフェニル)エタン-1-オン(化合物B6)を4.3g得る。
【0153】
<ユニットBを構成する化合物B7の合成>
(合成例25)9-フルオレノンO-メタクリルオキシム(化合物B7)の合成
【0154】
【化37】
【0155】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンに代えて9-フルオレノンオキシムを用いる以外は上記合成例14と同様の操作を行うことで、9-フルオレノンO-メタクリルオキシム(化合物B7)を4.5g得る。
【0156】
<増感化合物としての化合物1の合成>
(合成例26)2,2',4,4'-テトラメトキシベンゾフェノンの合成
【0157】
【化38】
【0158】
2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン6.0gとジメチル硫酸11.7gと炭酸カリウム12gとをアセトン36gに溶解する。混合物を還流温度で8時間攪拌する。混合物を25℃に冷却し、純水90gの添加後さらに10分攪拌し、沈殿物をろ過する。得られた沈殿物を酢酸エチル60gに溶解し、水10gで3回洗浄後に回収した有機層を濃縮し、エタノール48gを用いて再結晶することで2,2',4,4'-テトラメトキシベンゾフェノン6.5gを得る。
【0159】
(合成例27)2,2',4,4'-テトラメトキシベンゾヒドロール(化合物1)の合成
【0160】
【化39】
【0161】
2,2',4,4'-テトラメトキシベンゾフェノン4.0gをエタノール32gに溶解し、これに水素化ホウ素ナトリウム1.5gを添加し室温で3時間攪拌する。その後、純水120gの添加後さらに10分攪拌してから沈殿物をろ過する。得られた沈殿物を酢酸エチル80gに溶解し、水10gで3回洗浄後に回収した有機層を濃縮することで2,2',4,4'-テトラメトキシベンゾヒドロール3.5gを得る。
【0162】
<増感ユニットCを構成する化合物C1の合成>
(合成例28)2,4-ジメトキシ-4'-(2-ビニルオキシ)エトキシベンゾフェノンの合成
【0163】
【化40】
【0164】
2,4-ジメトキシ-4'-ヒドロキシ-ベンゾフェノン4.0gと2-クロロエチルビニルエーテル4.8gと炭酸カリウム6.4gとをジメチルホルムアミド24gに溶解する。混合物を110℃で15時間攪拌する。そして、混合物を25℃に冷却し、水60gの添加後さらに攪拌した後トルエン24gで抽出し、水10gで3回洗浄後に回収した有機層を濃縮し、得られた有機層を溶媒留去した後にカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=10/90(体積比))により精製することで、2,4-ジメトキシ-4'-(2-ビニルオキシ)エトキシベンゾフェノン5.4gを得る。
【0165】
(合成例29)2,4-ジメトキシ-4'-(2-ヒドロキシ)エトキシベンゾフェノンの合成
【0166】
【化41】
【0167】
2,4-ジメトキシ-4'-(2-ビニルオキシ)エトキシベンゾフェノン5.4gとピリジニウム-p-トルエンスルホン酸0.42gと純水4.2gとをアセトン36gに溶解する。混合物を35℃で12時間攪拌する。そして、3質量%炭酸ナトリウム水溶液添加後に混合物をさらに攪拌後に酢酸エチル42gで抽出し、水10gで3回洗浄後に回収した有機層を濃縮することで、2,4-ジメトキシ-4'-(2-ヒドロキシ)エトキシベンゾフェノン4.3gを得る。
【0168】
(合成例30)2,4-ジメトキシ-4'-(2-メタクリルオキシ)エトキシベンゾフェノンの合成
【0169】
【化42】
【0170】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンに代えて2,4-ジメトキシ-4'-(2-ヒドロキシ)エトキシベンゾフェノンを用いる以外は上記合成例14と同様の操作を行うことで、2,4-ジメトキシ-4'-(2-メタクリルオキシ)エトキシベンゾフェノンを5.4g得る。
【0171】
(合成例31)2,4-ジメトキシ-4'-(2-メタクリルオキシ)エトキシベンゾヒドロール(化合物C1)の合成
【0172】
【化43】
【0173】
2,2',4,4'-テトラメトキシベンゾフェノンに代えて2,4-ジメトキシ-4'-(2-メタクリルオキシ)エトキシベンゾフェノンを用い、濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=20/80(体積比))により精製すること以外は上記合成例27と同様の操作を行うことで、2,4-ジメトキシ-4'-(2-メタクリルオキシ)エトキシベンゾヒドロール(化合物C1)を3.7g得る。
【0174】
<増感ユニットCを構成する化合物C2の合成>
(合成例32)1-(2,4-ジメトキシ)フェニル-1-[4'-(2-ヒドロキシ)エトキシフェニル]-1,1-ジメトキシメタンの合成
【0175】
【化44】
【0176】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルエタンジオンに代えて2,4-ジメトキシ-4'-(2-ヒドロキシ)エトキシベンゾフェノンを用いる以外は上記合成例24と同様の操作を行うことで、1-(2,4-ジメトキシ)フェニル-1-[4'-(2-ヒドロキシ)エトキシフェニル]-1,1-ジメトキシメタンを3.3g得る。
【0177】
(合成例33)1-(2,4-ジメトキシ)フェニル-1-[4'-(2-メタクリルオキシ)エトキシフェニル]-1,1-ジメトキシメタン(化合物C2)の合成
【0178】
【化45】
【0179】
1-(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-ジメチル-1-プロパノンに代えて2,4-ジメトキシ-4'-(2-ヒドロキシ)エトキシベンゾフェノンを用いる以外は上記合成例14と同様の操作を行うことで、1-(2,4-ジメトキシ)フェニル-1-[4'-(2-メタクリルオキシ)エトキシフェニル]-1,1-ジメトキシメタン(化合物C2)を3.7g得る。
【0180】
<ユニットEを構成する化合物E1の合成>
(合成例34)4-ビニルフェニル-トリフェニルスズ(化合物E1)の合成
【0181】
【化46】
【0182】
あらかじめ水分を除去したフラスコにマグネシウム1.2gとTHF6gとを加える。これに、4-ビニルブロモベンゼン6.0gをTHF12.0gに溶解した溶液を1時間かけて滴下する。滴下後に1時間撹拌した後、得られた4-ビニルフェニルマグネシウムブロミド溶液を別途準備した塩化トリフェニルスズ 7.3gとTHF36gとを加えたフラスコ中に5℃で30分間かけて滴下する。滴下後、30分撹拌した後に1%塩化アンモニウム水溶液600gを加えて、さらに10分間撹拌する。その後、THFを留去し、トルエン60gを用いて抽出する。これを分液し、得られた有機層を純水60gで3回洗浄する。その後、分液して得られた有機層を溶媒留去した後にカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=5/95(体積比))により精製することで、4-ビニルフェニル-トリフェニルスズ(化合物E1)を5.6g得る。
【0183】
<ユニットEを構成する化合物E2の合成>
(合成例35)4-イソプロペニルフェニル-トリフェニルスズ(化合物E2)の合成
【0184】
【化47】
【0185】
4-ビニルブロモベンゼンに代えて4-イソプロペニルブロモベンゼンを用いる以外は上記合成例34と同様の操作を行うことで、4-イソプロペニルフェニル-トリフェニルスズ(化合物E2)を7.1g得る。
【0186】
<ユニットEを構成する化合物E3の合成>
(合成例36)4-ビニルフェニル-トリブチルスズ(化合物E3)の合成
【0187】
【化48】
【0188】
塩化トリフェニルスズに代えて塩化トリブチルスズを用いる以外は上記合成例34と同様の操作を行うことで、4-ビニルフェニル-トリブチルスズ(化合物E3)を5.1g得る。
【0189】
<ユニットEを構成する化合物E4の合成>
(合成例37)4-ビニルフェニル-トリフェニルゲルマン(化合物E4)の合成
【0190】
【化49】
【0191】
塩化トリフェニルスズに代えて塩化トリフェニルゲルマニウムを用いる以外は上記合成例34と同様の操作を行うことで、4-ビニルフェニル-トリブチルゲルマン(化合物E4)を3.1g得る。
【0192】
<ポリマー1の合成>
(合成例38)ポリマー1の合成
【0193】
【化50】
【0194】
ユニットAを構成する化合物A1を6.9g、ユニットBを構成する化合物B1を5.1g、ユニットFを構成するα-メタクリルオキシ-γ-ブチロラクトン(モノマーF1)3.0g及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート(モノマーF2)2.8g、並びに、重合開始剤としてジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)0.81gと2-メルカプトエタノール0.16gとを、メタノール12gとγ-ブチロラクトン12gとの混合溶液に溶解して脱酸素する。これをあらかじめ70℃に加熱したγ-ブチロラクトン4gとメタノール4gとの混合液に4時間かけて滴下する。滴下後に2時間撹拌してその後に冷却する。冷却後に90gのジイソプロピルエーテルに滴下することで再沈殿する。これをろ過し、真空乾燥することで目的のポリマー1を7.4g得る。
上記にポリマーのユニット比の開示があるが、本発明のいくつかの態様のポリマーはこれに限定されない。
【0195】
<ポリマー1~19の合成>
(合成例39)ポリマー2~19の合成
上記合成例34に倣い、ユニットAを構成する上記化合物A1~A6、ユニットBを構成する化合物B1~B6、増感化合物である化合物1、増感ユニットCを構成する化合物C1~C2、ユニットDを構成するモノマーD、ユニットEを構成する化合物E1~E4及び、ユニットFを構成するF1~F5を用いて、ポリマー2~19を合成した。合成した各ポリマーの詳細を表1に示す。
モノマーD:4-ヒドロキシフェニルメタクリレート
モノマーF1:α-メタクリルオキシ-γ-ブチロラクトン
モノマーF2:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
モノマーF3:4-tert-ブトキシスチレン
モノマーF4:2-ヒドロキシエチルアクリレート
モノマーF5:グリシジルメタクリレート
【0196】
【表1】
【0197】
<レジスト組成物の調製>
上記ポリマーのいずれか400mgをγ-ブチロラクトン4mlとシクロヘキサノン4mlとの混合溶媒に溶解して、実施例1~8及び比較例1~2のレジスト組成物サンプル1~10を調製する。用いたポリマーを表2に示す。
【0198】
<現像液の調製>
上記ポリマー1~19が15質量%溶解するように、純水、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及びメチルエチルケトンをそれぞれ組成が0~70質量%の範囲になるように配合し、それぞれのポリマーに合わせた現像液を調製する。
【0199】
<電子線感度評価>
あらかじめヘキサメチレンジシラザンを修飾したシリコンウェハ上に上記レジスト組成物サンプル1をスピンコートする。これを110℃のホットプレート上に1分間プレベークすることで、厚さ200nmの塗布膜が形成された基板を得る。該基板の塗布膜に対し、電子線描画装置(JSM-6500F、日本電子(株)製)を用いて、30keVの電子線により2μmのラインアンドスペースパターンとなるように描画する。電子線照射後の基板を、上記現像液を用いて1分間現像し、その後に純水でリンスすることで2μmのラインアンドスペースパターンを得る。このときの照射量をEmax[μC/cm]として電子線照射による感度を求める。
上記サンプル2~10に対しても、上記と同様にして感度評価を行う。結果を表2に示す。
【0200】
【表2】
【0201】
表2の実施例1~3により、オニウム塩の極性変換を利用した場合、酸強度の異なる化合物A1と化合物A3のどちらを用いても感度に大きな差は見られないことがわかる。一方、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオンを持つ化合物A4を用いた場合、アンチモンを含むことで膜の密度が大きく向上するため電子線に対して高感度化する。アンチモン等の金属原子は、水素、炭素、酸素、フッ素等の有機原子よりも電子線に対して吸収が大きいためである。そのため、EUVにおいても同様の効果が期待できる。
【0202】
実施例1~2と比較例1~2の比較より、ユニットA及びユニットBを両方含む実施例1~2は、ユニットBを含まない比較例1~2と比べて、オニウム塩の極性変換と同時に発生したラジカルを利用して架橋反応しうるため、大幅に高感度化することがわかる。化合物B1と同様に、ラジカル発生効率が高いαアミノアセトフェノン骨格、N-アシルオキシム骨格、ベンジルケタール骨格を含むユニットBを含有するポリマーも同様の効果が期待できる。
【0203】
実施例1と実施例4の比較より、化合物B4のようにスペーサー構造を持つことで分子が動きやすく架橋しやすくなり、スペーサー構造を持たない化合物B1よりも高感度化することがわかる。スペーサー構造とは、上記式(III)~(V)におけるSp部分に相当する。
【0204】
実施例1と実施例5との比較より、モノマーE4のようにアクリル基を持つモノマーは、電子線の照射により主鎖にラジカルを発生することで架橋するため、実施例1よりも架橋密度が上がり高感度化することがわかる。スチレン等も同様に架橋するため高感度化することが期待される。
【0205】
実施例1と実施例6との比較より、モノマーDのようにフェノキシ基を持つモノマーは、電子線の照射により生じたラジカルをトラップしてより安定なフェノキシラジカルを生成することが推測される。寿命が長い安定なラジカルが生成することでラジカルの再結合反応による架橋の効率が上がり高感度化することがわかる。ヒンダードアミン類も同様の効果が期待される。
【0206】
実施例1と実施例7との比較より、モノマーF5のようにグリシジル基を持つモノマーは、電子線の照射により分解したオニウム塩から発生する酸によりカチオン重合するため、架橋密度が上がり高感度化することが推測される。化合物A1のように分解により強酸を発生するオニウム塩を用いた場合、カチオン重合性の官能基を持つことで高感度化することが期待できる。
【0207】
実施例6と実施例8との比較より、モノマーE1のようにスズを持つモノマーは、膜の密度が向上するため電子線に対して高感度化する。さらにアリールスズから生じるラジカルカチオンが分解することで生成する活性種が架橋することで、架橋密度が上がり高感度化することが推測される。スズ及びアンチモン等の金属原子は、水素、炭素、酸素、フッ素等の原子よりも電子線に対して吸収が大きいため、EUVにおいても同様の効果が期待できる。
【0208】
<光増感評価>
電子線評価と同様の方法で2μmのラインアンドスペースパターンとなるように電子線を用いて描画した後に、取り出したウェハーをバンドパスフィフィルターを用いて露光波長が365nm±5nmとなるようにしたブラックライト(FL8BL、日立アプライアンス(株)製)を用いて、真空中でウェハー全面に100mJ/cm照射する。UV照射後の基板を上記現像液を用いて1分間現像し、その後に純水でリンスすることで2μmのラインアンドスペースパターンを得る。このときの照射量をEmax[μC/cm]として電子線照射による感度を求める。結果を表3に示す。
【0209】
【表3】
【0210】
表3の実施例9と実施例12との比較より、レジスト組成物に化合物1を添加して電子線露光後のUV照射を行うことにより、高感度化していることがわかる。これは化合物1が電子線照射時にオニウム塩を還元することで、2,2',4,4'-テトラメトキシベンゾフェノンを生成し、次いでUV照射することで該ベンゾフェノンがスルホニウム塩を還元するためであると考えられる。
実施例10は、ポリマーのユニットCを構成するモノマーとして、電子線照射時にオニウム塩の分解により生じた酸の作用により酸解離性基が分解してベンゾフェノン誘導体となるモノマーを用いている。それにより、実施例9と同様にUV照射時に該ベンゾフェノン誘導体がスルホニウム塩を還元するため高感度化していると考えられる。
【0211】
実施例11は実施例9と比較して高感度化している。ベンゾヒドロール誘導体をユニットCとしてポリマー中に含むことで、電子線照射時に生じるラジカルにより水素引き抜きが起こり、ベンゾヒドロール誘導体からケチルラジカルが生じる。そのケチルラジカルは寿命が長いため、スルホニウム塩を還元しない場合でも再結合反応によって架橋することとなり、高感度化するためと考えられる。
【0212】
実施例13も、UV照射によって増感されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明のいくつかの態様により、EUV等の粒子線又は電磁波の吸収効率が大きく、感度、解像度及びパターン性能の特性に優れたポリマー、該ポリマーを含有するレジスト組成物を提供することができる。