(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】船舶の燃料消費を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B63H 3/10 20060101AFI20220111BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20220111BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20220111BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B63H3/10
B63H21/21
F02D29/02 B
F02D45/00 362
F02D45/00 364A
F02D45/00 360A
F02D45/00 364E
(21)【出願番号】P 2017555691
(86)(22)【出願日】2016-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2016058773
(87)【国際公開番号】W WO2016169991
(87)【国際公開日】2016-10-27
【審査請求日】2019-04-15
(32)【優先日】2015-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517366585
【氏名又は名称】リーン・マリン・スウェーデン・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホーカン・ダニエルソン
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】リヌス・イデスコグ
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-6531(JP,A)
【文献】実開昭57-59795(JP,U)
【文献】特開昭58-490(JP,A)
【文献】特開昭61-193995(JP,A)
【文献】特開昭47-6378(JP,A)
【文献】特開昭60-64094(JP,A)
【文献】特開昭59-8590(JP,A)
【文献】特開2012-30704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0067236(US,A1)
【文献】三原伊文,奥村宗行,根岸道明,武田幸男,“CPP船総合制御の一方式について”,日本舶用機関学会誌,日本,日本舶用機関学会,1980年04月,第15巻,第4号,p.353-360,DOI:10.5988/jime1966.15.353,ISSN 1884-4758(online),0388-3051(print)
【文献】澤野孝慈,吉井弘,菊池一孝,望月正治,“CRTを利用したCPPコントロールバックアップシステム”,日本舶用機関学会誌,日本,日本舶用機関学会,1983年02月,第18巻,第2号,p.181-187,DOI:10.5988/jime1966.18.181,ISSN 1884-4758(online),0388-3051(print)
【文献】鷲見倫一,桜井四郎,“可変ピッチプロペラを装備する船の自動負荷制御”,日本舶用機関学会誌,日本,日本舶用機関学会,1968年08月,第3巻,第4号,p.225-228,DOI:10.5988/jime1966.3.225,ISSN 1884-4758(online),0388-3051(print)
【文献】門井弘行,“舶用可変ピッチプロペラの設計と用法”,造船協會誌,日本,造船協会,1963年01月25日,第400号,p.1-6,DOI:10.14856/kyokaisi.400.0_1,ISSN 2433-1015(online),0386-1503(print)
【文献】永井巖,“可変ピッチプロペラの漁船への応用”,日本機械学会誌,日本,日本機械学会,1963年12月,第66巻,第539号,p.1683-1687,DOI:10.1299/jsmemag.66.539_1683,ISSN 2424-2675(online),0021-4728(print)
【文献】かもめプロペラ株式会社,“CPPの軸回転数と翼角の同時制御による船舶の省エネ技術の開発”,日本,2016年04月15日
【文献】西矢豊就,山路光徽,荒木猛,“舶用機関の省燃費運航に関する研究―I 基礎実験”,長崎大学水産学部研究報告,日本,長崎大学,1984年11月,第56号,p.33-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 3/10,21/21,
F02D 29/02,45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の燃料消費を制御するための方法であって、前記船舶が、エンジン(4.5)と可変ピッチプロペラ(4.7)とを備え、トルクおよびエンジン速度が出力設定点値に対応するように調整され、前記調整が、前記船舶の前記燃料消費が所望の燃料消費範囲内にもたらされかつ/または保持されるようなエンジン速度および前記可変ピッチプロペラのプロペラピッチを有する動作状態で前記エンジン(4.5)が動作されるようにするものであり、
前記エンジン(4.5)の排気温度が、測定され、前記エンジン(4.5)のトルクが、前記排気温度が閾値を超える場合、低減され、
前記エンジン速度が、前記排気温度が前記閾値を超える場合、
前記エンジンの出力が維持されるよう増加され
、
前記エンジン速度と、前記トルクとは、前記排気温度が前記閾値を超えた場合であっても、前記出力設定点に対応している、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記エンジン(4.5)が、前記エンジンの負荷限界曲線が許容する限り低いエンジン速度および高いプロペラピッチを有する動作状態で動作される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所望の燃料消費範囲が、前記負荷限界曲線が許容する動作範囲内の前記出力設定点に実現可能な最小燃料消費を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷限界曲線が、エンジン製造業者によって定義される、請求項
2または
3に記載の方法。
【請求項5】
出力設定点値、所望の燃料消費、または所望の速度が、前記船舶の乗組員によって設定され、前記設定が前記船舶の制御盤(4:1)から、または外部システムから行われる、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記燃料消費の制御が、システムが前記エンジン(4.5)の前記出力設定点値および前記負荷限界曲線から最低許容エンジン速度を計算しかつ前記最低許容エンジン速度に一致するように前記エンジン速度を調整することによって実施される、請求項
2から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プロペラピッチが、前記エンジンの出力が出力設定点に一致するように自動的に調整される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エンジン(4.5)の出力が、軸出力センサ(4.8)によって測定されるか、または燃料ラック位置およびエンジン速度から計算される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エンジン(4.5)のチャージ圧力が、測定され、前記エンジン(4.5)の前記トルクが、前記チャージ圧力が前記エンジン速度および圧力によって与えられる閾値よりも低い場合、低減される、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エンジン速度が、前記チャージ圧力が前記エンジン速度および圧力によって与えられる前記閾値よりも低い場合、増加される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
振動励起エンジン速度が評価され、前記振動励起エンジン速度が、前記船舶の少なくとも一部分において望ましくない振動を励起することがあるエンジン速度であり、前記エンジン速度が、現在のエンジン速度が前記振動励起エンジン速度を含む所定のエンジン速度範囲内で動作している場合、増加される、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記エンジン(4.5)の前記トルクが、前記現在のエンジン速度が前記振動励起エンジン速度を含む所定のエンジン速度範囲内で動作している場合、低減される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記振動励起エンジン速度が、前記船舶の少なくとも一部分において振動レベルを測定することによって決定される、請求項
11または
12に記載の方法。
【請求項14】
プログラムがコンピュータ上で起動されるときに請求項1から
13のいずれか一項に記載のステップを実施するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
プログラム製品がコンピュータ上で起動されるときに請求項1から
13のいずれか一項に記載のステップを実施するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを有するコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
船舶の燃料消費を制御するための制御ユニットであって、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するように構成される制御ユニット。
【請求項17】
船舶の燃料消費を最小限に抑えるための方法であって、トルクおよびエンジン速度が、メインエンジンおよび測定負荷の負荷限界曲線に基づいて設定点値から調整され、前記調整は、前記メインエンジン(4.5)が、動作点であって、最低限の燃料消費を有し、要求された出力を有し、可能な限り前記負荷限界曲線に近い、動作点で動作されるように実施され、出力、所望の燃料消費、または所望の速度の設定点値が、乗組員によって設定され、前記設定が別個の制御盤(4:1)から、または外部システムから行われ、最適化が、システムが前記メインエンジンの前記設定点値および前記負荷限界曲線から最低許容エンジン速度を計算しかつ前記最低許容エンジン速度に合わせて前記エンジン速度を調整することによって実施され、プロペラピッチが、前記メインエンジンの出力が前記設定点値に一致するように自動的に調整され、前記メインエンジンの出力が、軸出力センサによって測定されるか、またはポンプロッド位置およびエンジン速度から計算され、前記メインエンジンの排気温度が、測定され、前記排気温度が閾値を超える場合、前記メインエンジンのトルクが低減され、
前記エンジンの出力が維持されるよう前記エンジン速度が増加され
、
前記メインエンジンのチャージ圧力が、測定され、前記排気温度が前記エンジン速度および圧力によって与えられる閾値よりも低い場合、前記メインエンジンのトルクが低減され、前記エンジン速度が増加され、
前記エンジン速度と、前記トルクとは、前記排気温度が前記閾値を超えた場合であっても、前記出力設定点に対応している
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
船舶用の可変ピッチプロペラが、羽根の迎え角を連続的に変化させることができるように設計される。このように、メインエンジンのトルクは変化させることができる。可変ピッチプロペラは、操縦性に対して中程度及び高程度の要件を有する中型船舶(50ml.b.p.~150ml.b.p.)には一般的である。
【背景技術】
【0002】
可変ピッチプロペラは、しばしば、変速機を介してメインエンジンに接続された軸発電機と組み合わせられる。そのような構成を動作させるとき、推進効果は、プロペラ羽根のピッチを変化させることによってのみ調整される。メインエンジンのエンジン速度は、発電機周波数を許容限度内に維持するために一定に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶がその設計速度近くで動作している限り、一定のエンジン速度は、効率の観点からは問題ではないが、船舶の低い速度において、エンジンの最高速度および低トルクは、全体として、推進システムの実質的に低い効率をもたらす。船舶の低い速度、いわゆる「減速航行」において、効率の観点からピッチおよびエンジン速度の両方を変化させること、いわゆる組合せ動作は適切である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
可変ピッチプロペラ用の現在の操作システムの大半は、ピッチおよびエンジン速度の両方を同じ操作レバーを使用して同時に制御することができる組合せ状態を有する。ピッチとエンジン速度との間の関係は一定であり、異なる負荷条件に対するマージンを設けて、およびエンジンの負荷限界曲線を超えないように計算される。組合せ状態における動作の間、軸発電機は使用することができないが、代わりに、船舶の補助エンジンのうちの任意の1つを使用して発電させることができる。
【0006】
一定の組合せ曲線は、エンジンの最大許容負荷に対するマージンを用いて計算されるという欠点を有する。これは、結果として、エンジンの最大効率を最大限でも1つの条件下で達成することができることになる。
【0007】
さらに、既存の制御システムのほとんどは、設定できる値を超えないようにピッチを制限するためにメインエンジンの最大トルクを制限する安全機能である「負荷制御」を有する。これにより、最適であるものよりも高いエンジン速度および低いトルクが提供される。特許文献1の船舶用エンジンの制御装置を参照。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】船舶用メインエンジンの典型的な負荷限界曲線を示すグラフである。
【
図2】正しい要求効果を得るためにエンジン速度の出力設定値およびトルクの制御の計算を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この提示される発明は、メイン機械の動作状態がエンジン製造業者の負荷限界曲線(
図1)に従って常に最低許容エンジン速度および最大許容負荷出力を呈するように、メインエンジンのエンジン速度およびプロペラのピッチを適応的にかつ各瞬間に調整することができる。これは負荷、天候および現在の状態に関係なく実施される。方法は、例えば各時刻において、プロペラおよびメインエンジンの最大効率を提供する。これはエンジン製造業者の閾値に関して、エンジン製造業者の閾値を超えないで行われる。
【0010】
最も重要な特徴の1つは、メインエンジンのエンジン速度の制御が負荷限界曲線(
図1)を介して最低許容エンジン速度に対する出力設定点値を直接使用して実行されることである。
【0011】
並行して、実際の出力は、プロペラのピッチ(
図2、
図3)を変化させることによって負荷トルクを変更することによって出力設定点値に一致するように制御される。
【0012】
(実施例)
通常の状況では、説明する方法は、マイクロプロセッサベースの制御システム(
図4)において実現される。
【0013】
図4:
4.1 ブリッジユーザボード
4.2 制御キャビネット
4.3 ユーザボードエンジン室
4.4 メインエンジンのエンジン速度調節器
4.5 メインエンジン
4.6 ターボ組立体
4.7 プロペラ、および
4.8 軸出力センサ。
【0014】
本発明は、船舶の燃料消費を制御するための方法に関する。船舶は、メインエンジンとも呼ばれることがあるエンジン4.5と、可変ピッチプロペラ4.7と、を備える。本発明によれば、トルクおよびエンジン速度は、出力設定点値、例えば、所望または目標エンジン出力値に対応するように調整される。単に例として、出力設定値点はユーザボード4.1を使用して設定することができる。
【0015】
非限定的な例として、トルクおよびエンジン速度は、エンジンの測定負荷4.7に対応するように調整することもでき、エンジン負荷は、理論上の最大値のパーセンテージとしてのエンジンを流れる空気の量である。例えば、エンジンの負荷4.7は、1つ以上のエンジンセンサ(図示せず)によって測定され得る。
【0016】
トルクおよびエンジン速度の調整は、船舶の燃料消費が所望の燃料消費範囲内にもたらされかつ/または保持されるようなエンジン速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを有する動作状態でエンジンが動作されるようにするものである。
【0017】
したがって、エンジン速度およびプロペラピッチを一定の関係により設定するのではなく、本発明の方法は、所望の燃料消費範囲内の燃料消費に到達するためにエンジン速度とプロペラ速度との組合せが設定されることを提案する。例えば、上記の方法は、エンジン速度とプロペラピッチとの間の一定の関係に制約されない。
【0018】
図3は制御ロジックの図を示す。
図3の例は、エンジン速度およびプロペラピッチがどのように決定され得るのかを示す。
【0019】
エンジン速度は、エンジン制御デバイス、例えば電気的エンジン制御デバイスで制御することができる。さらに、プロペラピッチは、ピッチ設定装置を使用して設定することができる。単に例として、そのようなピッチ設定配装置は、そのそれぞれがプロペラの一部分を収容する溝(図示せず)を有する調整部材(図示せず)を備えることができる。調整部材は、縦方向に移動可能であり、それによって、プロペラのピッチを改変することができる。
【0020】
非限定的な例として、エンジンは、エンジンの負荷限界曲線が許容する限り低いエンジン速度および高いプロペラピッチを有する動作状態で動作される。そのような動作は、燃料消費が可能な限り低いことを示す。言い換えれば、所望の燃料消費範囲は、出力設定点値および負荷限界曲線に可能な最小燃料消費を含む。所望の燃料消費範囲は、相対的に狭い可能性があり、ある実施形態においては、最小燃料消費と、最小燃料消費を中心とした所定のマージンと、を含むだけである可能性がある。言い換えれば、エンジンは、結果として所与の出力設定点値に対して可変ピッチプロペラおよびエンジンの最大効率となる動作状態で動作される。
【0021】
図2は、エンジンの負荷限界曲線を示す。
図2に示すように、プロペラピッチを増加させ、したがって、エンジントルクを増加させることによって、エンジン速度を低減することが可能であるが、それにもかかわらず、負荷限界曲線の右側における、または右側の位置を維持しながら所望の出力を得ることが可能である。言い換えるなら、所望の出力を生じさせるエンジン速度およびエンジントルクに到達するために、プロペラピッチを増加させ、それによって、エンジントルクを増加させることによって、
図2の図の左に水平に移動することが可能である。
【0022】
単に例として、負荷限界曲線は、エンジン製造業者によって定義される。別の非限定的な例として、負荷限界曲線は、エンジンを所定の試験手順で動作させることによって設定することができる。
【0023】
上に示したように、出力設定点値、所望の燃料消費、または所望の速度は、船舶の乗組員によって設定され、これは船舶の制御盤4:1から、または外部システム(図示せず)から行われる。
【0024】
好ましくは、燃料消費の制御、好ましくは燃料消費の最適化は、システムがメインエンジンの出力設定点値および負荷限界曲線から最低許容エンジン速度を計算しかつこれに一致するようにエンジン速度を調整することによって実施される。
【0025】
好ましくは、プロペラピッチは、エンジンの出力が出力設定点に一致するように自動的に調整される。
【0026】
非限定的な例として、エンジンの出力は、軸出力センサ4.8によって測定され、または燃料ラック位置(エンジンに現在供給されている燃料の量を表す)およびエンジン速度から計算される。
【0027】
船舶の燃料消費が所望の燃料消費範囲内にもたらされかつ/または保持されるように、エンジン速度および可変ピッチプロペラのプロペラピッチを制御することに加えて、エンジン速度およびプロペラピッチは、追加の効果を考慮に入れて制御することもできる。少数の例を以下に提示する。
【0028】
第1の例として、メインエンジンの排気温度が、例えば、温度センサ(図示せず)を使用して測定され、温度が閾値を超える場合、メインエンジンのトルクが低減される。したがって、エンジンまたは処理システム(図示せず)後の排気の過熱の危険性を低減するために、エンジンの排気温度は、高い排気温度が検出された場合に、エンジントルクを減少させることによって低減することができる。
【0029】
さらに、エンジン速度は、温度が閾値を超える場合、増加される。エンジントルクを減少させるときにエンジン速度を増加させることによって、少なくとも実質的にエンジンの出力を維持することが可能である。
【0030】
第2の例として、船舶が吸気をチャージ圧力においてエンジンに提供するターボ組立体を備える場合、メインエンジンのチャージ圧力が測定され、メインエンジンのトルクが、チャージ圧力がエンジン速度および圧力によって与えられる閾値よりも低い場合、低減される。
【0031】
さらに、第1の例と同様に、エンジン速度は、チャージ圧力がエンジン速度および圧力によって与えられる閾値よりも低い場合、増加させることができる。
【0032】
第3の例として、振動励起エンジン速度が評価され、振動励起エンジン速度は、船舶の少なくとも一部分において望ましくない振動を励起することがあるエンジン速度であり、エンジン速度は、現在のエンジン速度が振動励起エンジン速度を含む所定のエンジン速度範囲内で動作している場合、増加される。
【0033】
一般に、所望の燃料消費範囲内の燃料消費が、しばしば、低いエンジン速度および高いプロペラピッチ(すなわち、大きなエンジントルク)を示す。したがって、振動励起エンジン速度を回避するために、一般に、エンジン速度を増加させることが好ましい。
【0034】
非限定的な例として、メインエンジンのトルクは、現在のエンジン速度が振動励起エンジン速度を含む所定のエンジン速度範囲内で動作している場合、低減される。
【0035】
振動励起エンジン速度および/または所定のエンジン速度範囲は、複数のやり方で決定することができる。単に例として、振動励起エンジン速度および/または所定のエンジン速度範囲は、共振周波数を決定するために船舶のFE解析などの解析を実施することによって決定することができる。別の代替として、振動励起エンジン速度および/または所定のエンジン速度範囲は、例えば、船舶の共振周波数が決定される試験手順で決定することができる。
【0036】
しかし、方法の好ましい実施形態において、船舶は、船舶の1つ以上の部分において振動を検出するように構成された1つ以上の振動センサ(図示せず)を備える。したがって、そのような実施形態においては、振動励起エンジン速度は、船舶の少なくとも一部分において振動レベルを測定することによって決定される。したがって、振動励起エンジン速度および/または所定のエンジン速度範囲は、使用中に決定することができる。
【0037】
上記の3つの例のうちの2つ以上を組み合わせることができることに留意されたい。
【0038】
本発明の第2の態様は、プログラムがコンピュータ上で起動されるときに上記の方法の実施形態のうちの任意の1つのステップを実施するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムに関する。
【0039】
本発明の第3の態様は、プログラム製品がコンピュータ上で起動されるときに上記の方法の実施形態のうちの任意の1つのステップを実施するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを有するコンピュータ可読媒体に関する。
【0040】
本発明の第4の態様は、船舶の燃料消費を制御するための制御ユニットに関し、制御ユニットは、上記の方法の実施形態のうちの任意の1つのステップを実施するように構成される。
【0041】
別の実施形態例を以下に提示する。
【0042】
システムは、通常、ブリッジユーザボード4.1から制御される。これにより、ユーザは、設定値、例えば、出力、対地速度、または消費を調整することができる。選択された設定値は、出力設定値に変換されるか、または調整される。ユーザボード4.1は、設定パラメータおよび実際のパラメータを読み取ることができるグラフィックインターフェースを有する。
【0043】
ユーザボード4.1からの信号は、すべての計算が実施される制御キャビネット4.2に送られる。制御キャビネット4.2は、メインエンジン4.5、エンジン速度調節器4.4、ターボ組立体4.6、プロペラ4.7および場合により軸出力センサ4.8からの測定データおよび制御データ用の電子インターフェースを備える。エンジン室またはその制御室においては、追加のユーザボード4.3が、システムおよびデータ読取りのセットアップのために存在する。
【0044】
ユーザインターフェースはブリッジユーザボード4.1であり、それを使用して、通常動作の間、出力できる所望の値、消費または速度が設定される。
【0045】
特許が求められている方法は、システムの制御キャビネット4.2において正しいエンジン速度を計算することによって適用される。計算は、電子制御ユニットによって実施される。計算された設定値は、メインエンジンのエンジン速度調節器4.4に送られ、次いで、メインエンジンのエンジン速度調節器4.4は、エンジン速度を正しい値に合わせて調整する。正しい出力は、制御キャビネット4.2において計算される。計算は、電子ユニットによって実施される。実際の出力は、システムがプロペラ4.7のピッチを調整するので、設定値に一致するように制御される。
【0046】
実際の出力の測定は、軸出力センサ4.8からのトルクおよびエンジン速度またはメインエンジンのエンジン速度調節器4.4からのポンプロッド位置およびエンジン速度の信号を読取るシステムの制御キャビネット4.2を用いて実施される。
【0047】
システムは、安全機構を備え、メインエンジン4.5の排気温度が、測定され、閾値と比較される。実際の温度が閾値を超える場合、負荷は、エンジン速度を増加させ、トルクを低減することによって低減される。
【0048】
システムは、安全機構を備え、ターボ組立体4.6のチャージ圧力が、閾値と比較される。閾値は、圧力およびエンジン速度に応じて定義される。実際の圧力がこの閾値よりも低い場合、負荷は、エンジン速度を増加させかつトルクを低減することによって低減される。
【0049】
非限定的な例として、本発明の実施形態は、以下の項目のうちの任意の1つにより説明することができる。
【0050】
項目1 船舶の燃料消費を最小限に抑えるための方法であって、トルクおよびエンジン速度が、出力設定点値および測定負荷に対応するように連続的に調整され、調整が、エンジン製造業者によって定義された負荷限界曲線が許容する限り低いエンジン速度および高いプロペラピッチを有する動作状態でエンジンが動作されるようにするものであることを特徴とする、方法。
【0051】
項目2 項目1に記載の方法であって、出力設定点値、所望の燃料消費、または所望の速度が、乗組員によって設定され、この設定は別個の制御盤(4:1)から、または外部システムから行われることを特徴とする、方法。
【0052】
項目3 項目2に記載の方法であって、最適化が、システムが最低許容エンジン速度を計算することによって実施されることを特徴とする、方法。
【0053】
項目4 項目3に記載の方法であって、プロペラピッチが、メインエンジンの出力が出力設定点に一致するように自動的に調整されることを特徴とする、方法。
【0054】
項目5 項目4に記載の方法であって、メインエンジンの出力が、軸出力センサによって測定されるか、またはポンプロッド位置およびエンジン速度から計算されることを特徴とする、方法。
【0055】
項目6 項目5に記載の方法であって、メインエンジンの排気温度が、測定され、温度が閾値を超える場合、メインエンジンのトルクが低減され、エンジン速度が増加されることを特徴とする、方法。
【0056】
項目7 項目5に記載の方法であって、メインエンジンのチャージ圧力が測定され、温度がエンジン速度および圧力によって与えられる閾値よりも低い場合、メインエンジンのトルクが低減され、エンジン速度が増加されることを特徴とする、方法。
【符号の説明】
【0057】
4.1 ブリッジユーザボード
4.2 制御キャビネット
4.3 ユーザボードエンジン室、追加のユーザボード
4.4 メインエンジンのエンジン速度調節器
4.5 メインエンジン
4.6 ターボ組立体
4.7 可変ピッチプロペラ、エンジンの測定負荷
4.8 軸出力センサ