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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ICタグ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
G06K19/077 156
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018021462
(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公開番号】P2019139459
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】島井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】清原 好晴
【審査官】松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-212198(JP,A)
【文献】特開2013-222411(JP,A)
【文献】特開2009-054088(JP,A)
【文献】特開2012-068810(JP,A)
【文献】特開2013-030069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと、
前記ICチップに格納された情報を電気的に送受信するアンテナと、
前記ICチップ及びアンテナを支持するシート状の基材と、
前記基材との間で、前記ICチップ及びアンテナを覆うシート状のカバーと、
前記カバーと基材とを接着する粘着剤と、
前記カバーまたは基材の少なくとも一方の上に配置され、前記アンテナにおいて、前記ICチップから当該アンテナの端部までの少なくとも一部を覆うように配置される補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、前記カバーと基材との隙間を埋めるように、当該カバー及び基材の外周縁の少なくとも一部に沿って配置されている、ICタグ。
【請求項2】
前記アンテナの少なくとも一部は、前記ICチップから前記基材の縁部まで延び、さらに、前記基材の周縁に沿って延びており、
前記補強部材の少なくとも一部は、前記アンテナが配置された前記基材またはカバーの少なくとも一方の周縁に沿って配置されている、請求項に記載のICタグ。
【請求項3】
前記補強部材は、エラストマーによって形成されている、請求項1または2に記載のICタグ。
【請求項4】
前記エラストマーは、ショアD硬度が63以下である請求項に記載のICタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICタグの1種として、インレットと呼ばれるプラスチックや紙からなるベースシート上に電波通信用のアンテナパターンとICチップが搭載された構成のものが提案されている。そして、このようなインレットを、樹脂で封止したものを物品へ取り付けたり、物品へ埋め込むことで物品の管理に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/011041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなICタグは、外力を受けるような過酷な環境で使用されることがあり、これによって、アンテナの一部が断線するおそれがある。そして、このような断線が生じると通信性能が低下したり、あるいは通信が不能になることもある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、アンテナの断線を防止することができる、ICタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るICタグは、ICチップと、前記ICチップに格納された情報を電気的に送受信するアンテナと、前記ICチップ及びアンテナを支持するシート状の基材と、前記基材との間で、前記ICチップ及びアンテナを覆うシート状のカバーと、前記カバーと基材とを接着する粘着剤と、前記カバーまたは基材の少なくとも一方の上に配置され、前記アンテナにおいて、前記ICチップから当該アンテナの端部までの少なくとも一部を覆うように配置される補強部材と、を備えている。
【0007】
上記ICタグにおいて、前記補強部材は、前記カバーと基材との隙間を埋めるように、当該カバー及び基材の外周縁に沿って配置することができる。
【0008】
上記各ICタグにおいて、前記アンテナの少なくとも一部は、前記ICチップから前記基材の縁部まで延び、さらに、前記基材の周縁に沿って延ばすことができ、前記補強部材の少なくとも一部は、前記アンテナが配置された前記基材またはカバーの少なくとも一方の周縁に沿って配置することができる。
【0009】
上記各ICタグにおいて、前記補強部材は、エラストマーによって形成することができる。
【0010】
上記ICタグにおいて、前記エラストマーは、ショアD硬度を63以下とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るICタグによれば、アンテナの断線を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るICタグの一実施形態を示す平面図である。
図2図1のICタグの断面図である。
図3図1のICタグの基材及びアンテナを示す平面図である。
図4図1のICタグの他の例を示す平面図である。
図5図1のICタグの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<1.ICタグの概要>
以下、本発明に係るICタグの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係るICタグの平面図、図2図1の断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係るICタグは、長方形状に形成されたシート状の基材1と、この基材1上に配置されたICチップ2及びアンテナ3と、これらICチップ2及びアンテナ3を覆う矩形状に形成されたシート状のカバー4と、を有するインレット10を備えている。そして、基材1とカバー4とは、粘着剤5によって接着されている。さらに、このICタグは、インレット10の外周縁を囲むように補強部材6を備えている。以下、これら各部材について詳細に説明する。
【0014】
基材1とカバー4とは、同形状に形成されており、これらの間に粘着剤5が全面に亘って配置されている。すなわち、粘着剤5によって、ICチップ2及びアンテナ3が覆われ、基材1とカバー4との隙間からICチップ2やアンテナ3が露出しないようになっている。
【0015】
基材1及びカバー4を構成する材料は特には限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどで形成することができる。また、基材1及びカバー4の厚みは、例えば、25~200μmとすることが好ましく、25~100μmとすることがさらに好ましい。
【0016】
また、以下では、説明の便宜のため、図3に示すように、基材1及びカバー4の長手方向の辺を第1辺101、第2辺102と称し、短手方向の辺を第3辺103、第4辺104と称することとする。したがって、これらの辺は、第1辺101,第3辺103,第2辺102,及び第4辺104の順で連結されている。
【0017】
ICチップ2は、メモリ機能を有する公知のものであり、特には限定されないが、例えば、アルミニウムや銅などの導体で形成されたアンテナ3と、電気的に接続されている。アンテナ3は、公知のアンテナを用いることができるが、例えば、ダイポールアンテナで構成することができる。本実施形態では、一例として、図3に示すようなダイポールアンテナが用いられる。すなわち、このアンテナ3は、基材1の長手方向の中央付近に配置されたインピーダンス整合部31と、このインピーダンス整合部31から基材1の長手方向に延びる一対のダイポール部32と、を備えている。インピーダンス整合部31は、第1~第4辺を有する矩形の枠状に形成されている。より詳細には、インピーダンス整合部31の第1辺311は基材1の第1辺101からやや離れた位置に配置され、第2辺312は、基材1の第2辺102に沿うように配置されている。すなわち、インピーダンス整合部31は、第1辺311,第3辺313,第2辺312,及び第4辺314がこの順で連結されている。そして、ICチップ2は、インピーダンス整合部31の第1辺311の中央付近に配置されている。
【0018】
ダイポール部32は、左右対称な形状であるため、一方のみ説明する。ダイポール部32は、インピーダンス整合部31における第1辺311から、基材1の第1辺101に延び、そこから基材1の第1辺101、第3辺103、及び第2辺102に沿うように延び、さらに、インピーダンス整合部31の第3辺313に沿った後、基材1の第1辺101側に沿って基材1の長手方向の端部側に延びている。そして、ダイポール部32の端部325は、長手方向に延びる矩形状に形成されている。ここでは、ダイポール部32において、基材1の第1辺101、第3辺103、及び第2辺102に沿う部分をそれぞれ、第1部位321,第2部位322,及び第3部位323と称することとする。
【0019】
このような、アンテナ3は、基材1の一方の面にエッチングやスクリーン印刷などで形成することができ、その後、ICチップ2をボンディングなどによりアンテナ3上に取り付けることができる。そして、以上のようなアンテナ3により、例えば、UHF帯の電波によってICチップ2に格納された情報を送受信することができる。なお、ICチップ2は、例えば、電子部品用の公知のフリップチップ実装などでアンテナ3に固定することもできる。
【0020】
粘着剤5は、例えば、天然ゴムや合成ゴムを主成分とするゴム系粘着剤により形成することができる。粘着剤5の厚さは、特には限定されないが、28~500μmであることが好ましく、28~72μmであることがさらに好ましい。ゴム系粘着剤として用いられる合成ゴムは、特には限定されないが、例えば、スチレン―イソプレン―スチレンブロック共重合体、スチレン―ブタジエン―スチレンブロック共重合体、前記スチレン系ブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリイソブチレン(PIB)、ブチルゴム(IIR)などを挙げることができる。
【0021】
また、上記天然ゴム、合成ゴムに加えて、ゴム系粘着剤には、粘着付与剤を含んでいてもよい。粘着付与剤としては、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂の使用量は、粘着性能を損なわない範囲で適宜選択できる。さらに、ゴム系粘着剤には、上述した成分以外に、必要に応じて軟化剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの適宜な添加剤が含まれていてもよい。
【0022】
さらに、粘着剤5は、上記ゴム系粘着剤以外に、アクリル系、あるいはシリコーン系の粘着剤を用いることもできる。
【0023】
次に、補強部材6について説明する。補強部材6は、基材1とカバー4の外周縁に沿って延びる周縁部位61と、基材1及びカバー4の短手方向に延びる一対の中央部位62と、を備えている。周縁部位61は、基材1とカバー4との外周縁の隙間を埋めるように、これらの外周縁に沿って配置されている。より詳細に説明すると、周縁部位61は、インレット10の外周の端面のほか、アンテナ3のダイポール部32の第1部位321、第2部位322、及び第3部位323を覆うように、基材1上及びカバー4上に配置されている。また、中央部位62は、アンテナ3のインピーダンス整合部31の第3辺313及び第4辺314を覆うように、基材1上及びカバー4上の短手方向に延びている。
【0024】
補強部材6を構成する材料は特には限定されないが、例えば、熱可塑性のエラストマー又はゴム等の弾性体により形成することが出来る。具体的には、熱可塑性のエラストマーは、エステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどを用いることが出来る。一方、ゴムは、シリコーンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、EPDMゴム、ウレタンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴムなどを用いることが出来る。また、このような補強部材6は、適度な柔軟性を有することが好ましく、例えば、ショアD硬度が63以下の材料を用いることが好ましい。
【0025】
また、補強部材6の製造方法は、特には限定されないが、例えば、インレット10を成形型に収容し、射出成形によってインレット10上に成形することができる。
【0026】
<2.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、インレット10において、アンテナ3が配置された部位に補強部材6が配置されているため、アンテナ3の断線を防止することができる。特に、アンテナ3のダイポール部32において、ICチップ2に近い側の大半、つまり、第1部位321、第2部位322、及び第3部位323が補強部材6に覆われている。すなわち、アンテナ3の通信性能に重要な部分が補強部材6によって覆われているため、この部分の断線を防止し、例えば、外力が頻繁に作用するような過酷な環境でICタグを用いても、アンテナ性能の低下を防止することができる。
【0027】
また、インレット10の外周縁の基材1とカバー4との隙間を埋めるように補強部材6が配置されているため、これらの隙間から、例えば、水、薬品などの液体が浸入するのを防止することができる。これにより、アンテナ3やICチップ2が損傷するのを防止することができる。また、インレット10から基材1やカバー4が剥がれるのを防止することもできる。
【0028】
さらに、補強部材6には、基材1の中央付近で短手方向に延びる中央部位62を設けているため、射出成形をする場合には、ゲートから基材1及びカバー4の外周縁全体に亘って樹脂材料を行き渡らせやすくなる。
【0029】
補強部材6は、基材1やカバー4の全面に亘って形成されていないが、これにより、コストを低減したり、重量増加を防止することができる。さらに、外力が作用した場合、インレット10が柔軟に変形することにも寄与する。
【0030】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。そして、以下に示す複数の変形例は適宜組合わせることが可能である。
【0031】
<3-1>
アンテナ3は、種々のものを用いることができ、上記のようなダイポールアンテナを用いたもの以外に、パッチアンテナを用いたものでもよい。すなわち、アンテナ3の形状等は特には限定されず、種々の形態が可能である。また、ICタグの形状、つまり、基材1やカバー4の形状も特には限定されず、上記のような長尺状のほか、矩形状、円形状、多角形状など、用途に合わせて種々の形状にすることができる。また、基材1とカバー4とを同形状にしなくてもよい。
【0032】
そして、これに合わせて、補強部材6を配置すればよい。例えば、必ずしも、中央部位62を設けなくてもよい。また、補強部材6の周縁部位61は、基材1及びカバー4の外周縁全体に配置する必要はなく、例えば、アンテナ3において、ICチップ2に近い部分のみ、例えば、図4に示すように、ダイポール部32の第1部位321及び第2部位322、または、図5に示すように、第1部位321のみなど、アンテナ3において、通信性能に寄与する重要な部分のみを覆うこともできる。また、基材1上またはカバー4上のいずれか一方のみに設けることもできる。さらに、基材1とカバー4との隙間であるインレットの外周の端面にも、補強部材を必ずしも設けなくてもよい。
【0033】
また、補強部材6をインレット10上に設ける場合、補強部材6とインレット10との密着性を向上させるために、基材1やカバー4の表面に、適宜、コーティングなどの表面処理を行うこともできる。
【0034】
<3-2>
上記実施形態では、基材1とカバー4との間の全面に亘って、粘着剤5が塗布されているが、これに限定されるものではない。例えば、基材1とカバー4の周縁にのみ粘着剤を塗布し、ICチップ2及びアンテナ3が粘着剤5によって囲まれるようにすることもできる。これによっても、ICチップ2及びアンテナ3が、基材1とカバー4との間から外部に露出するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 基材
2 ICタグ
3 アンテナ
4 カバー
5 粘着剤
6 補強部材
図1
図2
図3
図4
図5