(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220128BHJP
【FI】
G01N27/416 371G
(21)【出願番号】P 2018043919
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/115855(WO,A1)
【文献】特開2012-127668(JP,A)
【文献】特開2017-090404(JP,A)
【文献】特開2005-077122(JP,A)
【文献】特開平05-256816(JP,A)
【文献】特開2013-064605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/416
G01N 27/419
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中に含まれる
、炭化水素、一酸化炭素、アンモニアのいずれかである検知対象ガス成分を検知して当該検知対象ガス成分の濃度を特定する混成電位型のガスセンサであって、
酸素イオン伝導性の固体電解質からなるセンサ素子と、
前記センサ素子の一先端部側の表面に設けられた、Pt-Au合金を含むサーメット電極である第1の検知電極と、
前記センサ素子の前記一先端部側の表面に設けられた、Ptを含むサーメット電極である第2の検知電極と、
前記センサ素子の内部に、大気と接触可能に設けられた基準電極と、
前記第1および第2の検知電極を覆う多孔質層である電極保護層と、
内部に前記センサ素子が固定されるハウジングと、
前記ハウジングに付設され、前記センサ素子の前記一先端部を囲繞するとともに内部に被測定ガスが流入可能とされてなる保護カバーと、
前記ガスセンサが前記被測定ガス中に配置された状態において、前記第1の検知電極と前記基準電極の間に前記検知対象ガス成分の濃度および酸素の濃度に応じて生じる電位差である第1のセンサ出力と、前記第2の検知電極と前記基準電極の間に酸素の濃度に応じて生じる電位差である第2のセンサ出力とを取得し、前記第1および第2のセンサ出力に基づいて、前記被測定ガス中の前記検知対象ガス成分の濃度を特定する濃度特定手段と、
を備え、
前記第1の検知電極と前記第2の検知電極とは、前記保護カバーの内部に流入する前記被測定ガスが前記第2の検知電極よりも前記第1の検知電極に先に到達する配置関係にて、前記センサ素子の前記一先端部側の表面に設けられてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサであって、
前記保護カバーが、内部に位置する前記センサ素子の前記一先端部側から前記被測定ガスが流入するように構成されており、
前記センサ素子においては、前記第1の検知電極の方が前記第2の検知電極よりも前記一先端部の近くに設けられてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載のガスセンサであって、
前記保護カバーが、内部に位置する前記センサ素子の側方から前記被測定ガスが流入するように構成されており、
前記センサ素子においては、前記第1の検知電極の方が前記第2の検知電極よりも前記保護カバーの内部への前記被測定ガスの流入位置の近くに設けられてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のガスセンサであって、
前記第1および前記第2の検知電極は、前記センサ素子の長手方向において、0.3mm以上0.5mm以下の間隔にて互いに離隔させて設けられてなる、
ことを特徴とするガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混成電位型のガスセンサに関し、特にその応答性に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素や一酸化炭素、アンモニアなどを検知対象とする混成電位型のガスセンサがすでに公知である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-033510号公報
【文献】特開2017-116371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
混成電位型ガスセンサは、被測定ガスと接触可能に設けられ、該被測定ガス中に存在する検知対象ガスの濃度に応じて電位が変動する検知電極と、略一定の電位を有するように設けられた基準電極との間に生じる電位差(センサ出力)が、被測定ガスにおける検知対象ガスの濃度と相関を有することを利用して、検知対象ガス成分の濃度を求めるものである。
【0005】
上述した炭化水素や一酸化炭素、アンモニアなどを検知対象とする場合において、被測定ガス中に、それら検知対象ガスに加え酸素が存在する場合、センサ出力は、酸素の干渉を受ける。すなわち、センサ出力値は被測定ガス中に存在する酸素の濃度に応じて変動するため、検知対象ガスの濃度を正確に求めるには、センサ出力あるいは検知対象ガスの濃度を、酸素濃度に基づいて補正する必要がある。
【0006】
例えば、自動車のエンジンなどの内燃機関からの排気経路において混成電位型ガスセンサにより炭化水素や一酸化炭素、あるいは、アンモニアを検知する場合には、酸素濃度は、当該混成電位型ガスセンサとは別個に設けられる酸素センサ、A/Fセンサ、NOxセンサなどからの出力値に基づいて特定することが可能である。
【0007】
しかしながら、これらのセンサは必ずしも混成電位型ガスセンサの近傍に設けられるわけではないため、検知対象ガスについての測定精度を高めるには、ガスの時間遅れを考慮する必要がある。ただし、内燃機関からの排ガスの流速は一定ではなく刻一刻と変化するので、酸素濃度に基づく補正を良好に行うことが必ずしも容易ではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、酸素の干渉下においても検知対象ガスを精度よく測定することができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、被測定ガス中に含まれる、炭化水素、一酸化炭素、アンモニアのいずれかである検知対象ガス成分を検知して当該検知対象ガス成分の濃度を特定する混成電位型のガスセンサであって、酸素イオン伝導性の固体電解質からなるセンサ素子と、前記センサ素子の一先端部側の表面に設けられた、Pt-Au合金を含むサーメット電極である第1の検知電極と、前記センサ素子の前記一先端部側の表面に設けられた、Ptを含むサーメット電極である第2の検知電極と、前記センサ素子の内部に、大気と接触可能に設けられた基準電極と、前記第1および第2の検知電極を覆う多孔質層である電極保護層と、内部に前記センサ素子が固定されるハウジングと、前記ハウジングに付設され、前記センサ素子の前記一先端部を囲繞するとともに内部に被測定ガスが流入可能とされてなる保護カバーと、前記ガスセンサが前記被測定ガス中に配置された状態において、前記第1の検知電極と前記基準電極の間に前記検知対象ガス成分の濃度および酸素の濃度に応じて生じる電位差である第1のセンサ出力と、前記第2の検知電極と前記基準電極の間に酸素の濃度に応じて生じる電位差である第2のセンサ出力とを取得し、前記第1および第2のセンサ出力に基づいて、前記被測定ガス中の前記検知対象ガス成分の濃度を特定する濃度特定手段と、を備え、前記第1の検知電極と前記第2の検知電極とは、前記保護カバーの内部に流入する前記被測定ガスが前記第2の検知電極よりも前記第1の検知電極に先に到達する配置関係にて、前記センサ素子の前記一先端部側の表面に設けられてなる、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るガスセンサであって、前記保護カバーが、内部に位置する前記センサ素子の前記一先端部側から前記被測定ガスが流入するように構成されており、前記センサ素子においては、前記第1の検知電極の方が前記第2の検知電極よりも前記一先端部の近くに設けられてなる、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様に係るガスセンサであって、前記保護カバーが、内部に位置する前記センサ素子の側方から前記被測定ガスが流入するように構成されており、前記センサ素子においては、前記第1の検知電極の方が前記第2の検知電極よりも前記保護カバーの内部への前記被測定ガスの流入位置の近くに設けられてなる、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1ないし第3の態様に係るガスセンサであって、前記第1および前記第2の検知電極は、前記センサ素子の長手方向において、0.3mm以上0.5mm以下の間隔にて互いに離隔させて設けられてなる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1ないし4の態様によれば、酸素の干渉性を排除した検知対象ガス成分濃度の特定が、応答性を確保しつつ好適な精度で行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の態様に係るガスセンサ100Aの要部の構成を概略的に示す断面模式図である。
【
図2】センサ素子101Aの表面Saにおける第1検知電極10Aと第2検知電極10Bの配置位置および両電極のサイズを説明するための平面図である。
【
図3】第1の態様に係るガスセンサ100Aにおけるセンサ素子101Aの周囲の構成を示す図である。
【
図4】第2の態様に係るガスセンサ100Bの要部の構成を概略的に示す断面模式図である。
【
図5】第2の態様に係るガスセンサ100Bにおけるセンサ素子101Bの周
囲の構成を示す図である。
【
図6】センサ素子101Aおよび101Bを作製する際の処理の流れを示す図である。
【
図7】検知対象ガス成分がアンモニア(NH
3)ガスである場合のガスセンサ100Aおよび100Bの感度特性を模式的に示す図である。
【
図9】並行タイプの電極配置を有するセンサ素子101の平面図である。
【
図10】第1検知電極10Aについての応答測定プロファイルを例示する図である。
【
図11】第2検知電極10Bについての応答測定プロファイルを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ガスセンサの概要>
本発明の実施の形態に係るガスセンサは、検知電極の配置態様と保護カバーの形状および構成との組み合わせが異なる、2通りの態様を取り得る。以下、それぞれの態様について、順次に説明する。
【0016】
(第1の態様)
図1は、第1の態様に係るガスセンサ100Aの要部の構成を概略的に示す断面模式図である。
【0017】
ガスセンサ100Aは、いわゆる混成電位型のガスセンサである。ガスセンサ100Aは、概略的にいえば、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質たるセラミックスを主たる構成材料とするセンサ素子101Aの表面に設けた第1検知電極10Aと、該センサ素子101Aの内部に設けた基準電極20との間に、混成電位の原理に基づいてそれぞれの電極近傍における検知対象たるガス成分(検知対象ガス成分)の濃度の相違に起因して電位差(起電力)が生じることを利用して、検知対象ガス成分の濃度を求めるものである。以降、第1検知電極10Aと、基準電極20と、両電極の間の固体電解質とを、第1混成電位セルと称する。
【0018】
より具体的には、ガスセンサ100Aは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関の排気管内に存在する排ガスを被測定ガスとし、該被測定ガス中の所定ガス成分(検知対象ガス成分)の濃度を、好適に求めるためのものである。検知対象ガス成分としては、C2H4、C3H6、n-C8などの炭化水素ガス、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH3)などが例示される。
【0019】
ただし、被測定ガス中にガスセンサ100Aが検知可能なガス種が複数種類存在する場合、第1検知電極10Aと基準電極20の間に生じる電位差はそれら複数種類のガス種の全てが寄与した値となるので、求められる濃度値も、それら複数種類のガス種の濃度の総和となる。特に、ガスセンサ100Aが使用される多くの局面において、被測定ガスたる排ガスは、上述した検知対象成分と同様、ガスセンサ100Aにおいて検知可能な、酸素を含んでいる。それゆえ、酸素以外のガス種を検知対象成分として想定している場合であっても、酸素の存在下では、第1混成電位セルにおいて第1検知電極10Aと基準電極20の間に生じる電位差は、被測定ガスの酸素濃度にも依存した値となってしまう。このように、被測定ガス中における酸素の存在により、第1混成電位セルにおいて電極間に生じる電位差さらには当該電位差に基づいて特定される検知対象ガス成分の濃度が影響を受けることを、O2干渉性があるなどと称する。検知対象ガス成分の測定精度を確保するには、係るO2干渉性を排除する必要がある。
【0020】
センサ素子101Aにおいては、係る目的を果たすために、第1検知電極10Aと同様、センサ素子101Aの表面に、第2検知電極10Bが備わっている。そして、検知対象ガス成分の濃度の特定に際し、第2検知電極10Bと基準電極20との間に被測定ガス中の酸素濃度に応じて生じる電位差を用いた補正を、行うようになっている。以降、第2検知電極10Bと、基準電極20と、両電極の間の固体電解質とを、第2混成電位セルと称する。
【0021】
さらに、センサ素子101Aは、上述した第1検知電極10A、第2検知電極10Bおよび基準電極20に加えて、基準電極20が配置される基準ガス導入空間30と、第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bを被覆する電極保護層40とを、主に備える。
【0022】
<<各構成要素の詳細>>
センサ素子101Aは、それぞれが酸素イオン伝導性固体電解質からなる第1固体電解質層1と、第2固体電解質層2と、第3固体電解質層3と、第4固体電解質層4と、第5固体電解質層5と、第6固体電解質層6との6つの層を、図面視で下側からこの順に積層した構造を有するものであり、かつ、主としてそれらの層間あるいは素子外周面に、電極その他の構成要素を設けてなるものとする。なお、それら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101Aは、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
【0023】
ただし、ガスセンサ100Aがセンサ素子101Aをこのような6つの層の積層体として備えることは必須の態様ではない。センサ素子101Aは、より多数あるいは少数の層の積層体として構成されていてもよいし、あるいは積層構造を有していなくともよい。
【0024】
以下の説明においては、便宜上、図面視で第6固体電解質層6の上側に位置する面をセンサ素子101Aの表面Saと称し、第1固体電解質層1の下側に位置する面をセンサ素子101Aの裏面Sbと称する。また、ガスセンサ100Aを使用して被測定ガス中の検知対象ガス成分の濃度を求める際には、センサ素子101Aの一方端部である先端部E1から少なくとも第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bを含む所定の範囲が、被測定ガス雰囲気中に配置され、他方端部である基端部E2を含むその他の部分は、被測定ガス雰囲気と接触しないように配置されるものとする。
【0025】
第1検知電極10Aは、検知対象ガス成分を検知するための電極である。第1検知電極10Aは、Auを所定の比率で含むPt、つまりはPt-Au合金と、ジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。第1検知電極10Aは、その構成材料たるPt-Au合金の組成を好適に定めることによって、所定の濃度範囲について、検知対象ガス成分に対する触媒活性が不能化されてなる。つまりは、第1検知電極10Aでの検知対象ガス成分の分解反応を抑制させられてなる。これにより、ガスセンサ100Aにおいては、第1検知電極10Aの電位が、当該検知対象ガス成分に対して選択的に、その濃度に応じて変動する(相関を有する)ようになっている。換言すれば、第1検知電極10Aは、検知対象ガス成分に対しては、それぞれ所定の濃度範囲において電位の濃度依存性が高い一方で、他の被測定ガスの成分に対しては電位の濃度依存性が小さいという特性を有するように、設けられてなる。
【0026】
より詳細には、第1検知電極10Aは、これを構成するPt-Au合金粒子の表面におけるAu存在比を好適に定めることで、電位の検知対象ガス成分および酸素の濃度に対する依存性が顕著であるように、設けられてなる。
【0027】
Au存在比は、例えばアンモニアガスが検知対象ガス成分である場合には0.4以上の値に定められるのが好適であり、炭化水素ガスが検知対象ガス成分である場合には0.3以上の値に定められるのが好適である。
【0028】
なお、本明細書において、Au存在比とは、第1検知電極10Aを構成する貴金属粒子(Pt-Au合金粒子)の表面のうち、Ptが露出している部分に対する、Auが被覆している部分の面積比率を意味している。これは例えば、貴金属粒子の表面に対しAES(オージェ電子分光法)分析を行うことで得られるオージェスペクトルにおけるAuとPtとについての検出値を用い、
Au存在比=Au検出値/Pt検出値・・・(1)
なる式にて算出することが可能である。あるいは、XPS(X線光電子分光法)により得られるAuとPtとについての検出ピークのピーク強度から、相対感度係数法を用いて算出する態様であってもよい。Ptが露出している部分の面積と、Auによって被覆されてなる部分の面積が等しいときに、Au存在比は1となる。
【0029】
第1検知電極10Aは、気孔率が10%以上40%以下であり、厚みが5μm以上35μm以下であるように形成されればよい。なお、本実施の形態において言及する種々の電極や層の気孔率は、対象となる電極や層の断面SEM像(2次電子像)の二値化画像から、公知の手法を用いて特定が可能である。
【0030】
一方、第2検知電極10Bは、酸素を検知するための電極である。第2検知電極10Bは、Ptとジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。第2検知電極10BはAuを含んでいないので、検知対象ガス成分に対しては触媒活性を有してなる。それゆえ、第2検知電極10Bは、電位の酸素濃度に対する依存性が顕著であるように、設けられてなる。
【0031】
第2検知電極10Bは、気孔率が10%以上40%以下であり、厚みが5μm以上35μm以下であるように形成されればよい。
【0032】
図2は、センサ素子101Aの表面Saにおける第1検知電極10Aと第2検知電極10Bの配置位置および両電極のサイズを説明するための平面図である。ただし、
図2においては、電極保護層40を省略している。また、素子長手方向のサイズをL0とし、これに直交する素子幅方向のサイズをw0としている。
【0033】
第1検知電極10Aと第2検知電極10Bは、ともに平面視矩形状をなしている。第1検知電極10Aは、センサ素子101Aの表面Saにおいて、素子長手方向の一方端部たる先端部E1から所定の距離d1離隔した位置に設けられており、第2検知電極10Bは、素子長手方向において前記先端部E1とは反対側に、第1検知電極10Aから所定の距離d2離隔した位置に、設けられてなる。係る配置は、外部から第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bへと到達する被測定ガスの流れを踏まえたものである。この点についての詳細は後述する。
【0034】
好ましくは、素子長手方向における第1検知電極10Aのサイズt1と第2検知電極10Bのサイズt2とは等しく、かつ、素子幅方向における第1検知電極10Aのサイズw1と第2検知電極10Bのサイズw2とは等しい。L0=45mm~70mm、w0=4mm~6mmである場合、t1=t2=0.5mm~1.5mmであり、w1=w2=2mmであり、d1=3mm~5mmであり、d2=0.3mm~0.5mmであるのが好適である。w1、t1、w2、t2の値が過度に大きい場合、検出感度は確保されるものの、それぞれの検知電極内で応答性(後述)にばらつきが生じる可能性が生じるため好ましくない。また、d2の過度に大きい場合、両検知電極が離れすぎるために被測定ガスの空間的な濃度ばらつきの影響を受ける可能性が高くなり、結果として、第2混成電位セルにおける電位差に基づく補正が、好適に行えなくなる可能性があるため、好ましくない。
【0035】
なお、ガスセンサ100Aが使用される際には、センサ素子101Aのうち、先端部E1から少なくとも、第1検知電極10Aを被覆する電極保護層40が設けられている部分までが、被測定ガスに対して露出する(直接に接する)態様にて配置される(
図3参照)。
【0036】
基準電極20は、センサ素子101Aの内部に設けられた、被測定ガスの濃度を求める際に基準となる平面視略矩形状の電極である。基準電極20は、Ptとジルコニアとの多孔質サーメット電極として形成されてなる。
【0037】
基準電極20は、気孔率が10%以上30%以下であり、厚みが5μm以上15μm以下であるように形成されればよい。また、基準電極20の平面サイズは、
図1に例示するように第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bに比して小さくてもよいし、第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bと同程度でもよい。
【0038】
基準電極20は、センサ素子101Aの内部に設けられた基準ガス導入空間30に露出させて配置されてなる。
【0039】
基準ガス導入空間30は、センサ素子101Aの基端部E2から所定の範囲に設けられた内部空間である。基準ガス導入空間30には、検知対象ガス成分濃度を求める際の基準ガスとしての大気(酸素)が外部より導入される。これにより、ガスセンサ100Aが使用される際には、基準電極20の周囲が絶えず大気(酸素)で満たされるようになっている。それゆえ、ガスセンサ100Aの使用時、基準電極20は、常に一定の電位を有してなる。
【0040】
なお、基準ガス導入空間30は周囲の固体電解質によって被測定ガスと接触しないようになっているので、第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bが被測定ガスに曝されている状態であっても、基準電極20が被測定ガスと接触することはない。
【0041】
図1に例示する場合であれば、センサ素子101Aの基端部E2の側において第5固体電解質層5の一部が外部と連通する空間とされる態様にて基準ガス導入空間30が設けられてなる。
【0042】
電極保護層40は、センサ素子101Aの表面Saにおいて少なくとも第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bを被覆する態様にて設けられた、アルミナからなる多孔質層である。電極保護層40は、ガスセンサ100Aの使用時に被測定ガスに連続的に曝されることによる第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bの劣化を抑制する電極保護層として設けられてなる。
【0043】
電極保護層40は、気孔率が30%~45%であり、厚みが5μm~25μmであるように設けられるのが好適である。
【0044】
なお、
図1においては電極保護層40が第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bの近傍にのみ形成されてなる場合を例示しているが、さらに広い範囲に電極保護層40を延在させてなる態様であってもよい。あるいは、先端部E1をも被覆する先端保護層として電極保護層40が設けられてもよく、電極保護層40を
図1に示すように形成したうえで、さらに該電極保護層40をも覆うように、先端保護層が設けられてもよい。後者の場合、応答性に影響を与えないために、先端保護層は電極保護層40よりも大きな気孔率にて形成される。なお、このような先端保護層は、後述するグリーンシートプロセスにて得られるセンサ素子101A(焼成体)に対し、プラズマ溶射、スプレーコーティング、ゲルキャスト、ディッピングなどの公知の手法により形成可能である。いずれの手法も、先端保護層の厚みを容易に制御することができる。
【0045】
また、
図1に示すように、ガスセンサ100Aにおいては、第1検知電極10Aと基準電極20との間の電位差を測定可能な第1電位差計60Aと、第2検知電極10Bと基準電極20との間の電位差を測定可能な第2電位差計60Bとが備わっている。なお、
図1においては第1検知電極10Aおよび基準電極20と第1電位差計60Aとの間の配線と、第2検知電極10Bおよび基準電極20と第2電位差計60Bとの間の配線とを、簡略化して示しているが、実際のセンサ素子101Aにおいては、基端部E2側の表面Saもしくは裏面Sbに図示しない接続端子がそれぞれの電極に対応させて設けられてなるとともに、それぞれの電極と対応する接続端子とを結ぶ図示しない配線パターンが表面Saおよび素子内部に形成されてなる。
図2においては、その一部であるリード線11A、11Bが例示されている。そして、第1検知電極10Aおよび基準電極20と第1電位差計60Aの間、および、第2検知電極10Bおよび基準電極20と第2電位差計60Bの間は、配線パターンおよび接続端子を通じて電気的に接続されてなる。
【0046】
以降、第1電位差計60Aで測定される第1検知電極10Aと基準電極20との間の電位差を第1センサ出力もしくはEMF1と、第2電位差計60Bで測定される第2検知電極10Bと基準電極20との間の電位差を第2センサ出力もしくはEMF2とも称する。第1センサ出力および第2センサ出力はともに、ガスセンサ100Aの動作を制御するコントローラ150に出力される。コントローラ150に与えられた第1センサ出力および第2センサ出力はさらに、内燃機関全体を制御するECU(電子制御装置)160に与えられ、ECU(電子制御装置)160がこれらの出力に基づく演算処理を行うことによって、センサ素子101A近傍の検知対象ガス成分の濃度が求められる。
【0047】
さらに、センサ素子101Aは、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101Aを加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ72と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。
【0048】
ヒータ72は、センサ素子101Aの内部に設けられた電気抵抗体である。ヒータ72は、センサ素子101Aの裏面Sb(
図1においては第1固体電解質層1の下面)に接する態様にて形成されてなる図示しないヒータ電極と接続されており、該ヒータ電極を通し
て給電されることにより発熱し、センサ素子101Aを形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0049】
図1に例示する場合であれば、ヒータ72は第2固体電解質層2と第3固体電解質層3とに上下から挟まれた態様にて、かつ、基端部E2から先端部E1近傍の第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bの下方の位置に渡って埋設されてなる。これにより、センサ素子101A全体を固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
【0050】
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2固体電解質層2とヒータ72との間の電気的絶縁性、および、第3固体電解質層3とヒータ72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0051】
圧力放散孔75は、第3固体電解質層3を貫通し、基準ガス導入空間30に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
【0052】
<<センサ素子の封止と保護カバー>>
図3は、第1の態様に係るガスセンサ100Aにおけるセンサ素子101Aの周囲(特に先端部E1の周囲)の構成を示す図である。
【0053】
ガスセンサ100Aにおいて、センサ素子101Aは、その先端部E1の近傍を除き、中空円筒状の部材であるハウジング102A内に収容されてなる。より具体的には、係る収容に先立ってセンサ素子101Aの外周にセラミックサポータ103Aや圧粉体104Aといった環装部品が環装され、さらにその外周にハウジング102Aが環装された後、外力の印加によって圧粉体104Aを圧縮させることによって、センサ素子101Aはハウジング102A内に固定されるとともに、先端部E1と基端部E2との間が気密に封止された状態が実現されてなる。係る固定は、円筒状をなしているハウジング102Aの内部空間の中心軸Cにセンサ素子101Aの中心軸を一致させる態様にてなされる。なお、
図3においては図示の簡単のため、セラミックサポータ103Aと圧粉体104Aとを一つずつのみ示しているが、実際には、これらは交互に複数個積層される。
【0054】
また、ハウジング102Aの外周には、スクリューナット120Aが環装されており、ガスセンサ100Aは、スクリューナット120Aの外周の雄ねじ部を用いて、測定位置にねじ止め固定されるようになっている。
【0055】
さらに、ガスセンサ100Aは、センサ素子101Aの先端部E1と第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bの形成位置とを含む所定範囲を囲繞する態様にてハウジング102Aの一先端部(
図3においては下端部)に付設されてなる、保護カバー105を備える。保護カバー105は、外側保護カバー105Aと、内側保護カバー105Bとの2層構造を有する。
【0056】
外側保護カバー105Aは、ガスセンサ100Aの使用時、直接に被測定ガスと接触する部位である。外側保護カバー105Aは、ハウジング102Aの図面視外周下端部への固定部分を含む円筒状の大径部106と、係る大径部106よりも縮径された有底円筒状の小径部107と、これら大径部106と小径部107とを接続する段差部108とから構成された、断面視段差形状を有してなる。大径部106および段差部108にはそれぞれ、被測定ガスが外側保護カバー105Aの内側に流入可能に設けられた貫通孔106h、108hが備わっている。貫通孔106h、108hはそれぞれ、周方向において適宜の間隔で複数設けられてなる。一方、小径部107およびその底部109には、被測定ガスが外側保護カバー105Aの内側から流出可能に設けられた貫通孔107h、109hが備わっている。貫通孔107hも、周方向において適宜の間隔で複数設けられてなる。
【0057】
一方、内側保護カバー105Bは、ハウジング102Aの図面視下端部への固定部分から延在する円筒状の第1の部分105B1と、第1の部分105B1の外側に付設されてなる第2の部分105B2とからなる。第2の部分105B2は、外側から加締め部110を設けることにより、第1の部分105B1との間に流路111が形成される態様にて第1の部分105B1に対し固定されてなるとともに、外側保護カバー105Aにおいて小径部107と段差部108とがなしている角部に係止されている。
【0058】
また、第1の部分105B1の図面視下端部は開放されているのに対し、第2の部分105B2の図面視下端部はテーパー部112となっており、その先端部(下端部)に貫通孔112hが備わっている。センサ素子101Aの先端部E1は第1の部分105B1の図面視下端部からわずかに突出している。なお、先端部E1から外側保護カバー105Aの底部109までの距離は約10mmである。
【0059】
以上のような構成の保護カバー105を備えたガスセンサ100Aが使用される際、被測定ガスは、矢印AR1およびAR2にて示すように、貫通孔106h、108hを通じて外側保護カバー105Aと内側保護カバー105Bの間の空間に流入する。さらに、矢印AR3およびAR4にて示すように、内側保護カバー105Bの第1の部分105B1と第2の部分105B2の流路111を通じて、センサ素子101Aの先端部E1の近傍部分が存在する内側保護カバー105B内の空間に流入する。係る態様にて流入した被測定ガスの一部は、矢印AR5に示すように、先端部E1の側から第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bを覆う電極保護層40の近傍へと到達し、さらに該電極保護層40内を通過して、第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bへと到達する。
【0060】
このように、第1の態様に係る保護カバー105は、内部に位置するセンサ素子101Aの先端部E1側から被測定ガスが流入するように構成されている。係る構成の保護カバーを、「先端流入」タイプの保護カバーとも称する。
【0061】
なお、内側保護カバー105B内の被測定ガスは、適宜、貫通孔112hさらには貫通孔107hおよび109hを通じて、外部へと排出される。
【0062】
(第2の態様)
図4は、第2の態様に係るガスセンサ100Bの要部の構成を概略的に示す断面模式図である。ガスセンサ100Bは、第1の態様に係るガスセンサ100Aと同様、ジルコニア(ZrO
2)等の酸素イオン伝導性固体電解質たるセラミックスを主たる構成材料とするセンサ素子101Bを備える。ただし、センサ素子101Bは、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bの配置位置が、第1の態様に係るガスセンサ100Aが備えるセンサ素子101Aと反対であるほかは、センサ素子101Aと同じ構成を有する。すなわち、ガスセンサ100Bは、
図2に示した第1検知電極10Aと第2検知電極10Bの配置位置が入れ替わっており、それゆえ、リード線11Aおよび11Bを含む配線パターンの接続先が入れ替わっているほかは、第1の態様に係るガスセンサ100Aと同じ構成を有する。それゆえ、ガスセンサ100Aと同一の構成要素については、同じ符号を付して、意向において詳細な説明は省略する。
【0063】
図5は、第2の態様に係るガスセンサ100Bにおけるセンサ素子101Bの周囲(特に先端部E1の周囲)の構成を示す図である。
【0064】
ガスセンサ100Bにおいても、第1の態様に係るガスセンサ100Aと同様、センサ素子101Bは、その先端部E1の近傍を除き、中空円筒状の部材であるハウジング102B内に収容されてなる。係る収容の際の、セラミックサポータ103Bや圧粉体104Bといった環装部品によるセンサ素子101Bの固定と、先端部E1と基端部E2との間の気密封止の実現についても同様である。さらには、スクリューナット120Bの具備についても同様である。
【0065】
さらに、ガスセンサ100Bも、第1の態様に係るガスセンサ100Aと同様、センサ素子101Bの先端部E1を囲繞する態様にてハウジング102Bの一先端部(
図5においては下端部)に付設されてなる、保護カバー205を備える。保護カバー205は、第1の態様に係るガスセンサ100Aに備わる保護カバー105と同様、外側保護カバー205Aと、内側保護カバー205Bとの2層構造を有する。ただし、それぞれの構造については、保護カバー105を構成する外側保護カバー105Aおよび内側保護カバー105Bの構造とは若干異なっている。
【0066】
外側保護カバー205Aは、ハウジング102Bの図面視外周下端部への固定部分から延在する円筒状の大径部206と、係る大径部206よりも縮径された有底円筒状の小径部207と、これら大径部206と小径部207とを接続する段差部208とから構成された、断面視段差形状を有してなる。大径部206には、被測定ガスが外側保護カバー205Aの内側に流入可能に設けられた貫通孔206hが備わっている。貫通孔206hは、段差部208の近傍に、周方向において適宜の間隔で複数設けられてなる。一方、小径部207の底部209には、被測定ガスが外側保護カバー205Aの内側から流出可能に設けられた貫通孔209hが備わっている。
【0067】
一方、内側保護カバー205Bも、ハウジング102Bの図面視下端部への固定部分から延在する円筒状の大径部210と、係る大径部210よりも縮径された有底円筒状の小径部211と、これら大径部210と小径部211とを接続する段差部212とから構成された、断面視段差形状を有してなる。ただし、大径部210は外側保護カバー205Aの小径部207に嵌合されており、該小径部207内に内側保護カバー205Bの小径部211が位置している。
【0068】
また、大径部210および小径部211の側面にはそれぞれ、貫通孔210h、211hが備わっている。なお、貫通孔210hは、内側保護カバー205Bのハウジング102Bに対する固定部分の近傍に、周方向において適宜の間隔で複数設けられてなる。貫通孔211hも、周方向において適宜の間隔で複数設けられてなる。
【0069】
センサ素子101Bは、第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bの形成位置が貫通孔210hの形成位置よりも小径部211に近くなる位置にて、ハウジング102B内に固定されてなる。なお、先端部E1から外側保護カバー205Aの底部209までの距離は約10mmである。
【0070】
以上のような構成の保護カバー205を備えたガスセンサ100Bが使用される際、被測定ガスは、矢印AR6にて示すように、貫通孔206hを通じて外側保護カバー205Aと内側保護カバー205Bの間の空間に流入する。さらに、矢印AR7にて示すように、内側保護カバー205Bの側面に備わる貫通孔210hを通じて、センサ素子101Bが存在する内側保護カバー205B内の空間に流入する。係る態様にて流入した被測定ガスの一部は、矢印AR8に示すように、センサ素子101Bの側方から第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bを覆う電極保護層40の近傍へと到達し、さらに該電極保護層40内を通過して、第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bへと到達する。
【0071】
このように、第2の態様に係る保護カバー205は、内部に収容されたセンサ素子101Bの側面近傍(側方)から被測定ガスが流入するように構成されている。係る構成の保護カバーを、「側面流入」タイプの保護カバーとも称する。
【0072】
なお、内側保護カバー205B内の被測定ガスは、適宜、貫通孔211hさらには貫通孔209hを通じて、外部へと排出される。
【0073】
<センサ素子の製造プロセス>
次に、
図1および
図4に例示するような層構造を有する場合を例として、センサ素子101Aおよび101Bを製造するプロセスについて説明する。概略的にいえば、
図1に例示するセンサ素子101Aおよび
図4に例示するセンサ素子101Bは、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含むグリーンシートからなる積層体を形成し、該積層体を切断・焼成することによって作製される。酸素イオン伝導性固体電解質としては、例えば、イットリウム部分安定化ジルコニア(YSZ)などが例示される。
【0074】
図6は、センサ素子101Aおよび101Bを作製する際の処理の流れを示す図である。センサ素子101Aおよび101Bを作製する場合、まず、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシート(図示せず)を用意する(ステップS1)。具体的には、センサ素子101Aおよび101Bの作製時には第1ないし第6固体電解質層1~6に対応する6枚のブランクシートが用意される。ブランクシートには、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。係るシート穴は、パンチング装置による打ち抜き処理などで、あらかじめ形成されている。なお、対応する層が基準ガス導入空間30を構成することとなるグリーンシートの場合、該基準ガス導入空間30に対応する貫通部も、同様の打ち抜き処理などによってあらかじめ設けられる。また、センサ素子101
Aおよび101Bの各層に対応するそれぞれのブランクシートの厚みは、全て同じである必要はない。
【0075】
各層に対応したブランクシートが用意できると、それぞれのブランクシートに対して種々のパターンを形成するパターン印刷・乾燥処理を行う(ステップS2)。具体的には、第1検知電極10A、第2検知電極10B、基準電極20などの電極パターンや、電極保護層40のパターンや、ヒータ72やヒータ絶縁層74などのパターンや、図示を省略している内部配線のパターンなどが、形成される。
【0076】
各々のパターンの印刷は、それぞれの形成対象に要求される特性に応じて用意したパターン形成用ペーストを、公知のスクリーン印刷技術を利用してブランクシートに塗布することにより行う。印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0077】
なお、第1検知電極10Aの形成に用いる導電性ペーストとしては、上述したAu存在比が好適に実現されるように調製されたものを使用する。例えば、Auの出発原料としてAuイオン含有液体を用い、該Auイオン含有液体を、Pt粉末と、ジルコニア粉末と、バインダーとを混合することによって作製された導電性ペーストを用いるのが好適である。あるいは、Ptの粉末にAuをコーティングしたコーティング粉末をPt-Au合金の出発原料として、導電性ペーストを作製するようにしてもよい。いずれも、公知の技術により実現可能である。
【0078】
パターン印刷が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS3)。接着用ペーストの印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能であり、印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
【0079】
続いて、接着剤が塗布されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて、所定の温度・圧力条件を与えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS4)。具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力・温度・時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう、適宜の条件が定められればよい。
【0080】
上述のようにして積層体が得られると、続いて、係る積層体の複数個所を切断してセンサ素子101Aおよび101Bの個々の単位(素子体と称する)に切り出す(ステップS5)。切り出された素子体を、所定の条件下で焼成することにより、上述のようなセンサ素子101が生成される(ステップS6)。すなわち、センサ素子101Aおよび101Bは、固体電解質層と電極との一体焼成によって生成されるものである。その際の焼成温度は、1200℃以上1500℃以下(例えば1400℃)が好適である。なお、係る態様にて一体焼成がなされることで、センサ素子101Aおよび101Bにおいては、各電極が十分な密着強度を有するものとなっている。
【0081】
このようにして得られたセンサ素子101および101Bは、
図3または
図5に示す態様にて、ハウジング102Aまたは102Bに収容される。
【0082】
<検知対象ガス成分濃度の特定>
次に、上述のような構成を有するガスセンサ100Aまたは100Bを用いて被測定ガスにおける検知対象ガス成分の濃度を求める場合について説明する。なお、被測定ガス中には、検知対象ガス成分の他に酸素が含まれているものとする。また、ガスセンサ100Aまたは100Bは、後述するように、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bにおける応答性の差を踏まえた構成となっているが、ここでは、説明の簡単のため、応答性についての議論は無視する。
【0083】
検知対象ガス成分の濃度の特定に際し、ガスセンサ100Aおよび100Bは、上述したように、センサ素子101Aおよび101Bのうち先端部E1から少なくとも第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bを含む所定の範囲のみを、被測定ガスが存在する空間(流入する空間)に位置する一方で、基端部E2の側は当該空間とは隔絶されるように、配置される。そして、基準ガス導入空間30に対し大気(酸素)は供給される。また、センサ素子101Aおよび101Bは、ヒータ72により450℃~700℃の適宜の温度(例えば650℃)に加熱される。ガスセンサ100Aおよび100Bの使用時における、ヒータ72によるセンサ素子101Aおよび101Bの加熱温度を駆動温度とも称する。
【0084】
係る状態においては、被測定ガスに曝されてなる第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bと大気中に配置されてなる基準電極20との間に電位差が生じる。ただし、上述のように、大気(酸素濃度一定)雰囲気下に配置されてなる基準電極20の電位は一定に保たれている一方で、第1検知電極10Aの電位は、被測定ガス中の検知対象ガス成分に対して濃度依存性を有するものとなっている。また、第2検知電極10Bの電位は、検知対象ガス成分に対しては濃度依存性を有さないが、酸素に対しては濃度依存性を有するものとなっている。それゆえ、検知対象ガス成分濃度と第1センサ出力(EMF1)の間には、一定の関数関係(これを感度特性と称する)が成り立つ。また、検知対象ガス成分濃度と第2センサ出力(EMF2)との間には依存性はないものの、第2センサ出力は被測定ガス中の酸素濃度に応じた値となる。
【0085】
なお、以降の説明においては、例えば第1センサ出力に関する感度特性を、第1の感度特性などと称することがある。
【0086】
実際に検知対象ガス成分濃度を求めるにあたっては、あらかじめ、それぞれの検知対象ガス成分濃度が既知である相異なる複数の混合ガスを被測定ガスに用いてそれぞれについて第1センサ出力および第2センサ出力を測定することで、第1および第2の感度特性をそれぞれ実験的に特定し、ECU160に記憶させておく。
【0087】
図7は、検知対象ガス成分がアンモニア(NH
3)ガスである場合のガスセンサ100Aおよび100Bの感度特性を模式的に示す図である。
図7(a)が第1の感度特性を例示しており、
図7(b)が第2の感度特性を例示している。なお、横軸のアンモニア(NH
3)ガス濃度は対数目盛にて示している。
【0088】
図7(a)に示すように、第1の感度特性は検知対象ガス成分(アンモニア(NH
3)ガス)の濃度および酸素濃度に応じたものとなるが、酸素(O
2)濃度一定という条件のもとでは、検知対象ガス成分の濃度の対数値に対して線型的である。一方、
図7(b)に示すように、第2の感度特性は酸素(O
2)濃度のみに応じたものとなり、検知対象ガス成分の濃度には依存しない。なお、
図7では酸素(O
2)濃度が1%、10%、および20%の場合の感度特性のみを例示しているが、一のガスセンサ100Aおよび100Bにつき、さらに多くの酸素濃度について感度特性が特定されてよい。
【0089】
そして、ガスセンサ100Aおよび100Bを実使用する際には、検知対象ガス成分の濃度に応じて時々刻々変化する第1センサ出力(EMF1)および第2センサ出力(EMF2)が、コントローラ150によって絶えず第1混成電位セルおよび第2混成電位セルから取得され、ECU160に与えられる。ECU160においてはまず、取得された第2センサ出力の値から被測定ガス中の酸素濃度が特定される。そして、この酸素濃度に相当する第1の感度特性を用いて、第1センサ出力の値から被測定ガス中の検知対象ガス成分濃度が特定される。なお、第2センサ出力の値に相当する酸素濃度を与える第2の感度特性がECU160に記憶されていない場合は、既存の第2の感度特性からの補間によって、被測定ガス中の酸素濃度を特定する。また、特定された酸素濃度に対応する第1の感度特性がECU160に記憶されていない場合も、既存の第1の感度特性からの補間によって、被測定ガス中の酸素濃度を特定する。
【0090】
このような処理を、第1センサ出力および第2センサ出力がコントローラ150さらにはECU160によって取得される都度、行うことで、ガスセンサ100Aおよび100Bにおいては、被測定ガス中に検知対象ガス成分に加え酸素が存在する場合であっても、酸素濃度に応じた第1の感度特性に基づき、検知対象ガス成分の濃度を特定することができる。係る場合において、コントローラ150およびECU160は、検知対象ガス成分の濃度を特定する濃度特定手段として機能していることになる。
【0091】
このように、本実施の形態においては、酸素濃度に応じて適用する感度特性を違えることで、検知対象ガス成分の濃度の酸素濃度に基づく補正を行うようになっている。係る補正を行うことで、本実施の形態に係るガスセンサ100Aおよび100Bにおいては、O2干渉性を排除した検知対象ガス成分濃度の特定が、行えるようになっている。
【0092】
<検知電極の配置と保護カバーのタイプ>
上述した態様での検知対象ガス成分濃度の特定は、O2干渉性を排除するという点において有効である。ただし、係る態様は、同一のタイミングで第1検知電極10Aと第2検知電極10Bとに生じる起電力(センサ出力)が検知対象ガス成分濃度の特定に用いられることを前提とするものの、厳密には、同一のタイミングで両電極に到達した被測定ガスについての第1センサ出力と第2センサ出力とでは、後者の方が早くコントローラ150から出力されることが、わかっている。換言すれば、同一のタイミングでコントローラ150に取得される第1センサ出力および第2センサ出力とは、異なるタイミングで第1検知電極10Aと第2検知電極10Bに到達した被測定ガスについての値となっている。これは、金属成分としてPt-Au合金を含む第1検知電極10Aの電極反応速度の方が、Ptのみを含む第2検知電極10Bの電極反応速度よりも遅いためである。
【0093】
それゆえ、第1検知電極10Aを含む第1混成電位セルから得られる第1センサ出力よりも第2検知電極10Bを含む第2混成電位セルから得られる第2センサ出力の方が、被測定ガスの成分の変化により迅速に応答して変化する。このことを、第1検知電極10A(あるいは第1検知電極10Aを含む第1混成電位セル)よりも第2検知電極10B(あるいは第2検知電極10Bを含む第2混成電位セル)の方が応答時間が短い、あるいは、応答性が(相対的に)よい、などと称する。
【0094】
仮に、このような応答時間あるいは応答性の差異が存在する状況で、同一のタイミングでコントローラ150に得られる第1センサ出力と第2センサ出力とに基づき上述の態様にて検知対象ガス成分の濃度を特定しようとすると、第2センサ出力に基づく酸素濃度の特定が、第1センサ出力が得られたときの被測定ガスと異なる被測定ガスに基づいて行われてしまい、その結果、最終的に得られる検知対象ガス成分濃度の信頼性が損なわれてしまうことが懸念される。
【0095】
ここで、本実施の形態における検知電極の応答時間の定義について説明する。
図8は、係る説明のための応答測定プロファイルを示す図である。
【0096】
本実施の形態においては、モデルガス中にガスセンサ100Aまたは100Bを配置した状態で、モデルガスの酸素濃度を、20%から1%に瞬時に変化させたときの各検知電極におけるセンサ出力(起電力)の変化を測定した結果に基づいて、各検知電極の応答時間を定めるものとする。モデルガスとしては、酸素のほかに、H2Oを5%含み、残余がN2であるものを用いる。モデルガスの温度は120℃とし、流量は200L/minとし、センサ素子101の駆動温度は650℃とする。以降、これらの応答時間を得るための条件を、応答時間測定条件と称する。
【0097】
具体的にいえば、
図8に示すように、モデルガスの酸素濃度が20%から1%に瞬時に変化させられると、これに応答して起電力値も変化する。係る場合に得られる、
図8に示すような起電力値の時間変化プロファイルを、応答測定プロファイルと称する。応答測定プロファイルにおいて、モデルガスの酸素濃度を変化させるタイミングを時刻t=0とし、モデルガスの酸素濃度を1%に変化させる前の起電力値(第1センサ出力または第2センサ出力)をV
0、t=0において酸素濃度を1%に変化させた後、起電力が安定したときの起電力値をV
100、起電力値がV
0からV
100まで変化する途中で、両者の差分値の10%変化したとき起電力値をV
10、同様に90%変化したとき起電力値をV
90とする。そのうえで、起電力値がV
10になったときの時刻をt=t
10とし、起電力値がV
90になったときの時刻をt=t
90とし、両者の差分値であるtr=t
90-t
10なる値を、検知電極についての応答時間と定義する。応答時間が小さいほど、応答性がよいということになる。
【0098】
本実施の形態においては、気孔率が30%~45%である電極保護層40を5μm~25μmの厚みに設けることにより、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bにおいて、10sec以下という応答時間が実現されてなる。なお、上述のように先端保護層が設けられることがあるが、係る先端保護層は、応答時間が増大することのない態様にて設けられる。
【0099】
加えて、本実施の形態においては、上述のような、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bとが組成の差異に起因して本来的に有する応答性の差異に鑑み、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bの配置と保護カバーのタイプとの組み合わせを工夫することで、第1混成電位セルと第2混成電位セルのそれぞれにおける応答時間の差の影響を、測定精度に照らして充分に小さくするようにしている。
【0100】
具体的には、先端流入型の保護カバー105が用いられてなる、第1の態様に係るガスセンサ100Aにおいては、
図3に示すように、第2検知電極10Bに比して応答性が相対的に劣っている第1検知電極10Aの方が、第2検知電極10Bよりもセンサ素子101Aの先端部E1に近い側に配置されている。換言すれば、第1検知電極10Aの方が第2検知電極10Bよりも内側保護カバー105の内部への被測定ガスの流入位置である流路111の近くに配置されている。一方、側面流入型の保護カバー205が用いられてなる、第2の態様に係るガスセンサ100Bにおいては、
図5に示すように、第1検知電極10Aの方が第2検知電極10Bよりもセンサ素子101Bの先端部E1から遠い側に配置されている。換言すれば、第1検知電極10Aの方が第2検知電極10Bよりも内側保護カバー205の内部への被測定ガスの流入位置である貫通孔210hの近くに配置されている。
【0101】
このようにすることで、すなわち、第1の態様に係るガスセンサ100Aおよび第2の態様に係るガスセンサ100Bのいずれにおいても、内側保護カバー105Bまたは205B内に流入した被測定ガスは、まず第1検知電極10Aの近傍に先に到達し、その後若干遅れて第2検知電極10Bに到達することになる。換言すれば、ガスセンサ100Aおよび100Bにおいてはいずれも、第1検知電極10Aの方が第2検知電極10Bよりも先に被測定ガスと接触するように、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bが配置されている。そして、ガスセンサ100Aおよび100Bにおいては、この両電極に対する被測定ガスの到達時間差にて、両電極における電極反応速度の差異に起因した応答性の差を相殺することで、O2干渉性を排除した検知対象ガス成分濃度の特定が、好適な精度で行われるようになっている。
【0102】
なお、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bとの応答時間差が2sec以下である場合には、ガスセンサ100Aおよび100Bにおいて、O2干渉性を排除した検知対象ガス成分濃度の特定が、優れた精度で行えるといえる。さらに、係る応答時間差が1sec以下である場合には、ガスセンサ100Aおよび100Bにおいて、O2干渉性を排除した検知対象ガス成分濃度の特定が、極めて優れた精度で行えるといえる。
【実施例】
【0103】
第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bの配置のタイプ(以下、電極配置タイプと称する)と、保護カバーのタイプの組み合わせを種々に違えた全6種類のガスセンサ(No.1~No.6)を作製した。なお、
図2に示した各部のサイズについては、L0=63mm、w0=4mm、t1=t2=1mm、w1=w2=2mm、d1=4mm、d2=0.5mmとした。
【0104】
ガスセンサにおける電極の配置タイプについては3水準に違えた。すなわち、第1の態様に係るガスセンサ100Aのように第1検知電極10Aの方が第2検知電極10Bよりも先端部E1に近いタイプ(以下、第1→第2タイプ)のガスセンサと、第2の態様に係るガスセンサ100Bのように第2検知電極10Bの方が第1検知電極10Aよりも先端部E1に近いタイプ(以下、第2→第1タイプ)のガスセンサとに加え、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bとが素子長手方向に沿って並行にかつ当該素子長手方向に関して対称に備わるタイプ(以下、並行タイプ)のガスセンサも用意した。
図9は、係る並行タイプの電極配置を有するセンサ素子101の平面図である。第1検知電極10Aと第2検知電極10Bの電極サイズは、第1→第2タイプおよび第2→第1タイプと同じとし、向きのみを違えた。その他の部分のサイズも、第1→第2タイプおよび第2→第1タイプと同様にした。
【0105】
一方、保護カバーのタイプは、先端流入タイプと側面流入タイプの2水準に違えた。
【0106】
No.3のガスセンサは第1の態様に係るガスセンサ100Aに相当し、No.5のガスセンサは第2の態様に係るガスセンサ100Bに相当する。
【0107】
一方、No.2のガスセンサはガスセンサ100Aにおける保護カバータイプはそのままに、電極配置タイプのみを第2→第1タイプに変更したものであり、No.6のガスセンサはガスセンサ100Bにおける保護カバータイプはそのままに、電極配置タイプのみを第1→第2タイプに変更したものである。No.2およびNo.6のガスセンサはともに、第2検知電極10Bの方が第1検知電極10Aよりも先に被測定ガスに接触するようになっている。
【0108】
また、No.1およびNo.4のガスセンサにおいてはともに、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bは被測定ガスの流れに対して等価となっている。
【0109】
得られたそれぞれのガスセンサについて、上述の応答時間測定条件に従い第1検知電極10Aと第2検知電極10Bの応答時間を測定し、応答時間差を求めた。その結果に基づいて、それぞれのガスセンサの応答性の良否を判定した。
【0110】
図10は、全6種類のガスセンサの、第1検知電極10Aについての応答測定プロファイルを例示する図である。
図10(a)にNo.1~No.3のガスセンサについての応答測定プロファイルを示し、
図10(b)にNo.4~No.6のガスセンサについての応答測定プロファイルを示している。また、
図11は、全6種類のガスセンサの、第2検知電極10Bについての応答測定プロファイルを例示する図である。
図11(a)にNo.1~No.3のガスセンサについての応答測定プロファイルを示し、
図11(b)にNo.4~No.6のガスセンサについての応答測定プロファイルを示している。さらに、表1には、全6種類のガスセンサについての、電極配置タイプと、保護カバー配置タイプと、応答測定プロファイルから求めた第1検知電極10Aおよび第2検知電極10Bにおける応答時間と、両応答時間の差分値である応答時間差と、その値に基づくガスセンサの応答性の良否の判定結果とを、一覧にして示している。
【0111】
【0112】
ガスセンサの応答性の良否の判定は、以下の基準により行った。
【0113】
「応答性が極めて優れている」(表1において○(丸)印):
応答時間差が1sec以下;
「応答性が優れている」(表1において△(三角)印):
応答時間差が1secを超えて2sec以下;
「応答性が劣っている」(表1において×(バツ)印):
上記2通り以外の場合。
【0114】
表1に示すように、No.1およびNo.3~No.5のガスセンサにおいて優れた応答性が実現されること、なかでも、No.3およびNo.5のガスセンサにおいては、応答時間差が0secという、極めて優れた応答性が実現されることが確認された。一方、No.2およびNo.6のガスセンサにおいては、2つの電極における応答時間の差が顕著となった。
【0115】
このことは、上述の実施の形態のように、第1検知電極10Aの方が第2検知電極10Bよりも先に被測定ガスと接触するように、第1検知電極10Aと第2検知電極10Bを配置することが、O2干渉性を排除しつつ応答性の優れた測定を行ううえにおいて好適であることを示している。
【符号の説明】
【0116】
1~6 第1~第6固体電解質層
10A 第1検知電極
10B 第2検知電極
11A、11B リード線
20 基準電極
30 基準ガス導入空間
40 電極保護層
60A、60B 電位差計
70 ヒータ部
100A、100B ガスセンサ
101、101A、101B センサ素子
102A、102B ハウジング
103A、103B セラミックサポータ
104A、104B 圧粉体
105、205 保護カバー
105A、205A 外側保護カバー
105B、205B 内側保護カバー
105B1 (内側保護カバーの)第1の部分
105B2 (内側保護カバーの)第2の部分
106、206 (外側保護カバーの)大径部
106h、107h、108h、109h、112h、206h、209h、210h、211h 貫通孔
107、207 (外側保護カバーの)小径部
108、208 (外側保護カバーの)段差部
109、209 (外側保護カバーの小径部の)底部
112 (内側保護カバーの第2の部分の)テーパー部
120A、120B スクリューナット
210 (内側保護カバーの)大径部
211 (内側保護カバーの)小径部
212 (内側保護カバーの)段差部