(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、送信方法、受信方法、送信プログラム及び受信プログラム
(51)【国際特許分類】
G08C 15/06 20060101AFI20220111BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G08C15/06 J
G08C15/00 E
(21)【出願番号】P 2018049409
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501158538
【氏名又は名称】三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】溝井国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】酒井亮佑
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120525(JP,A)
【文献】特開昭55-070709(JP,A)
【文献】特開2006-282108(JP,A)
【文献】特開平01-208096(JP,A)
【文献】特開2018-036087(JP,A)
【文献】国際公開第2011/104828(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集データの前回のデータ値と今回のデータ値とを比較する比較部と、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較部により抽出された場合に、今回を含む過去n(n≧3)回における前記収集データの
うちの最も古いデータ値と今回のデータ値
との差分である変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部により前
記変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定された場合に、前記収集データの識別子と、前記比較部により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、前記判定部の判定結果とを通知する通知情報を生成する通知情報生成部と、
前記通知情報生成部により生成された前記通知情報を送信する送信部とを有する送信装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較部により抽出された場合に、前
記変動幅が
前記変動幅閾値を超えるか否かの判定を行い、更に、
前記過去n回における前記収集データのデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値を超えるか否かの判定を行い、
前記通知情報生成部は、
前記判定部により前
記変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定され、
前記過去n回における前記収集データのデータ値の変化回数の実績が前記変化回数閾値を超えると判定された場合に、前記通知情報を生成する請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較部により抽出された場合に、前
記変動幅が前記変動幅閾値を超えるか否かの判定を行い、更に、
前記過去n回における前記収集データのデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値以下であるか否かの判定を行い、
前記通知情報生成部は、
前記判定部により前
記変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定され、
前記過去n回における前記収集データのデータ値の変化回数の実績が前記変化回数閾値以下であると判定された場合に、前記通知情報を生成する請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記通知情報生成部は、
前記収集データに対して前記比較部により差分値が抽出されていない場合は、前記収集データの識別子を通知する通知情報を生成する請求項1に記載の送信装置。
【請求項5】
前記通知情報生成部は、
複数の計測装置からの複数の収集データについて、今回のデータ値が取得された収集データの識別子が通知され、今回のデータ値が取得されなかった収集データの識別子は通知されない通知情報を生成する請求項1に記載の送信装置。
【請求項6】
複数の収集データの識別子を通知し、前記複数の収集データのうち前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データについて、抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを通知し、更に、前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって今回を含む過去n(n≧3)回
のうちの最も古いデータ値
と今回のデータ値との差分である変動幅が変動幅閾値を超えるとの判定結果である変動幅判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果が得られていることを通知する通知情報を、受信する受信部と、
前記通知情報で前記変動幅判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する選択部と、
前記選択部により選択された収集データの、前記通知情報で通知されている差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを用いた解析を行う解析部とを有する受信装置。
【請求項7】
前記受信部は、
前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって前記変動幅判定結果が得られ、更に、
前記過去n回におけるデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値を超えるとの判定結果である変動回数判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果及び前記変動回数判定結果が得られていることを通知する通知情報を受信し、
前記選択部は、
前記通知情報で前記変動幅判定結果及び前記変動回数判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
前記受信部は、
前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって前記変動幅判定結果が得られ、更に、
前記過去n回におけるデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値以下であるとの判定結果である変動回数判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果及び前記変動回数判定結果が得られていることを通知する通知情報を受信し、
前記選択部は、
前記通知情報で前記変動幅判定結果及び前記変動回数判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する請求項6に記載の受信装置。
【請求項9】
前記選択部は、
前記受信装置において把握している収集データの識別子のうち、前記通知情報で通知されてない識別子が存在する場合に、前記通知情報の送信元で、前記通知情報で通知されていない識別子に対応する収集データの今回のデータ値が取得されていないと判定する請求項6に記載の受信装置。
【請求項10】
前記受信装置は、
前記解析部の解析ルールが記述されたルールテーブルを更新するルールテーブル管理部を有する請求項6に記載の受信装置。
【請求項11】
コンピュータが、収集データの前回のデータ値と今回のデータ値とを比較する比較処理と、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較処理により抽出された場合に、前記コンピュータが、今回を含む過去n(n≧3)回における前記収集データの
うちの最も古いデータ値と今回のデータ値
との差分である変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行う判定処理と、
前記判定処理により前
記変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定された場合に、前記コンピュータが、前記収集データの識別子と、前記比較処理により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、前記判定処理の判定結果とを通知する通知情報を生成する通知情報生成処理と、
前記コンピュータが、前記通知情報生成処理により生成された前記通知情報を送信する送信処理とを有する送信方法。
【請求項12】
複数の収集データの識別子を通知し、前記複数の収集データのうち前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データについて、抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを通知し、更に、前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって今回を含む過去n(n≧3)回
のうちの最も古いデータ値
と今回のデータ値との差分である変動幅が変動幅閾値を超えるとの判定結果である変動幅判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果が得られていることを通知する通知情報を、コンピュータが、受信する受信処理と、
前記コンピュータが、前記通知情報で前記変動幅判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する選択処理と、
前記コンピュータが、前記選択処理により選択された収集データの、前記通知情報で通知されている差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを用いた解析を行う解析処理とを有する受信方法。
【請求項13】
収集データの前回のデータ値と今回のデータ値とを比較する比較処理と、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較処理により抽出された場合に、今回を含む過去n(n≧3)回における前記収集データの
うちの最も古いデータ値と今回のデータ値
との差分である変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行う判定処理と、
前記判定処理により前
記変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定された場合に、前記収集データの識別子と、前記比較処理により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、前記判定処理の判定結果とを通知する通知情報を生成する通知情報生成処理と、
前記通知情報生成処理により生成された前記通知情報を送信する送信処理とをコンピュータに実行させる送信プログラム。
【請求項14】
複数の収集データの識別子を通知し、前記複数の収集データのうち前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データについて、抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを通知し、更に、前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって今回を含む過去n(n≧3)回
のうちの最も古いデータ値
と今回のデータ値との差分である変動幅が変動幅閾値を超えるとの判定結果である変動幅判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果が得られていることを通知する通知情報を、受信する受信処理と、
前記通知情報で前記変動幅判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する選択処理と、
前記選択処理により選択された収集データの、前記通知情報で通知されている差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを用いた解析を行う解析処理とをコンピュータに行わせる受信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収集された収集データの管理に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の施設に設置された多数のセンサーからの収集データを解析して、施設での異常を検出する監視システムがある。このような監視システムでは、大量の収集データを解析する必要があるため、解析処理に対する負担が大きい。
これに関して、先に送信したデータとこれから送信するデータとの差を抽出し、抽出した差分を送信するという方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を収集データの送信に用いると、収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との間との差分を送信するという構成が得られる。しかし、例えば、前々回のデータ値から前回のデータ値との差が「+1」であり、前回のデータ値と今回のデータ値との差が「-1」という場合では、前々回のデータ値と今回のデータ値は同値であり、実質的にデータ値は変動していない。前回のデータ値と今回のデータ値との間で差があった場合に必ず差分を送信するという方法では、このような実質的にデータ値に変動がない場合でも、差分が送信され、異常検出のための解析が行われる。つまり、実質的に解析が必要のないケースでも差分が送信され、また、異常検出のための解析が行われる。このように、従来の方法では、実質的に解析が必要のないケースでも通信帯域及び受信側の演算リソースが消費されており、非効率であるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決することを主な目的の一つとしており、通信帯域及び収集データの受信側の演算リソースの効率化を図ることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る送信装置は、
収集データの前回のデータ値と今回のデータ値とを比較する比較部と、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較部により抽出された場合に、今回を含む過去n(n≧3)回における前記収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部により前記過去n回における前記収集データのデータ値の変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定された場合に、前記収集データの識別子と、前記比較部により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、前記判定部の判定結果とを通知する通知情報を生成する通知情報生成部と、
前記通知情報生成部により生成された前記通知情報を送信する送信部とを有する。
【0007】
前記判定部は、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較部により抽出された場合に、前記過去n回における前記収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行い、更に、前記収集データのデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値を超えるか否かの判定を行い、
前記通知情報生成部は、
前記判定部により前記過去n回における前記収集データのデータ値の変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定され、前記収集データのデータ値の変化回数の実績が前記変化回数閾値を超えると判定された場合に、前記通知情報を生成する。
【0008】
前記判定部は、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較部により抽出された場合に、前記過去n回における前記収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行い、更に、前記収集データのデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値以下であるか否かの判定を行い、
前記通知情報生成部は、
前記判定部により前記過去n回における前記収集データのデータ値の変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定され、前記収集データのデータ値の変化回数の実績が前記変化回数閾値以下であると判定された場合に、前記通知情報を生成する。
【0009】
前記通知情報生成部は、
前記収集データに対して前記比較部により差分値が抽出されていない場合は、前記収集データの識別子を通知する通知情報を生成する。
【0010】
前記通知情報生成部は、
複数の計測装置からの複数の収集データについて、今回のデータ値が取得された収集データの識別子が通知され、今回のデータ値が取得されなかった収集データの識別子は通知されない通知情報を生成する。
【0011】
本発明に係る受信装置は、
複数の収集データの識別子を通知し、前記複数の収集データのうち前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データについて、抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを通知し、更に、前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって今回を含む過去n(n≧3)回におけるデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるとの判定結果である変動幅判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果が得られていることを通知する通知情報を、受信する受信部と、
前記通知情報で前記変動幅判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する選択部と、
前記選択部により選択された収集データの、前記通知情報で通知されている差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを用いた解析を行う解析部とを有する。
【0012】
前記受信部は、
前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって前記変動幅判定結果が得られ、更に、データ値の変化回数の実績が変化回数閾値を超えるとの判定結果である変動回数判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果及び前記変動回数判定結果が得られていることを通知する通知情報を受信し、
前記選択部は、
前記通知情報で前記変動幅判定結果及び前記変動回数判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する。
【0013】
前記受信部は、
前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって前記変動幅判定結果が得られ、更に、データ値の変化回数の実績が変化回数閾値以下であるとの判定結果である変動回数判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果及び前記変動回数判定結果が得られていることを通知する通知情報を受信し、
前記選択部は、
前記通知情報で前記変動幅判定結果及び前記変動回数判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する。
【0014】
前記選択部は、
前記受信装置において把握している収集データの識別子のうち、前記通知情報で通知されてない識別子が存在する場合に、前記通知情報の送信元で、前記通知情報で通知されていない識別子に対応する収集データの今回のデータ値が取得されていないと判定する。
【0015】
前記受信装置は、
前記解析部の解析ルールが記述されたルールテーブルを更新するルールテーブル管理部を有する。
【0016】
本発明に係る送信方法は、
コンピュータが、収集データの前回のデータ値と今回のデータ値とを比較する比較処理と、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較処理により抽出された場合に、前記コンピュータが、今回を含む過去n(n≧3)回における前記収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行う判定処理と、
前記判定処理により前記過去n回における前記収集データのデータ値の変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定された場合に、前記コンピュータが、前記収集データの識別子と、前記比較処理により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、前記判定処理の判定結果とを通知する通知情報を生成する通知情報生成処理と、
前記コンピュータが、前記通知情報生成処理により生成された前記通知情報を送信する送信処理とを有する。
【0017】
本発明に係る受信方法は、
複数の収集データの識別子を通知し、前記複数の収集データのうち前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データについて、抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを通知し、更に、前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって今回を含む過去n(n≧3)回におけるデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるとの判定結果である変動幅判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果が得られていることを通知する通知情報を、コンピュータが、受信する受信処理と、
前記コンピュータが、前記通知情報で前記変動幅判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する選択処理と、
前記コンピュータが、前記選択処理により選択された収集データの、前記通知情報で通知されている差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを用いた解析を行う解析処理とを有する。
【0018】
本発明に係る送信プログラムは、
収集データの前回のデータ値と今回のデータ値とを比較する比較処理と、
前記収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が前記比較処理により抽出された場合に、今回を含む過去n(n≧3)回における前記収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行う判定処理と、
前記判定処理により前記過去n回における前記収集データのデータ値の変動幅が前記変動幅閾値を超えると判定された場合に、前記収集データの識別子と、前記比較処理により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、前記判定処理の判定結果とを通知する通知情報を生成する通知情報生成処理と、
前記通知情報生成処理により生成された前記通知情報を送信する送信処理とをコンピュータに実行させる。
【0019】
本発明に係る受信プログラムは、
複数の収集データの識別子を通知し、前記複数の収集データのうち前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データについて、抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを通知し、更に、前回のデータ値と今回のデータ値との間で差分値が抽出された収集データであって今回を含む過去n(n≧3)回におけるデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるとの判定結果である変動幅判定結果が得られている収集データについて、前記変動幅判定結果が得られていることを通知する通知情報を、受信する受信処理と、
前記通知情報で前記変動幅判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する選択処理と、
前記選択処理により選択された収集データの、前記通知情報で通知されている差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを用いた解析を行う解析処理とをコンピュータに行わせる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、過去n回におけるデータ値の変動幅が変動幅閾値以上である収集データのみを通知情報の対象としている。このため、本発明によれば、送信対象を解析を要する収集データに限定することで、通信帯域及び受信側の演算リソースの効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態1に係る監視システムの構成例を示す図。
【
図2】実施の形態1に係るデータ送信サーバ装置の機能構成例を示す図。
【
図3】実施の形態1に係るデータ受信サーバ装置の機能構成例を示す図。
【
図4】実施の形態1に係るデータ送信サーバ装置及びデータ受信サーバ装置のハードウェア構成例を示す図。
【
図5】実施の形態1に係るデータ送信サーバ装置で管理するテーブルの例を示す図。
【
図6】実施の形態1に係るデータ送信サーバ装置の動作例を示すフローチャート。
【
図7】実施の形態1に係る収集データの例を示す図。
【
図8】実施の形態1に係る収集テーブルの例を示す図。
【
図9】実施の形態1に係る前時刻テーブルの例を示す図。
【
図10】実施の形態1に係る差分テーブルの例を示す図。
【
図11】実施の形態1に係る過去テーブルの例を示す図。
【
図13】実施の形態1に係る変動回数の例を示す図。
【
図14】実施の形態1に係る通知情報の例を示す図。
【
図15】実施の形態1に係る収集データをそのまま送信する例を示す図。
【
図16】実施の形態1に係るデータ受信サーバ装置の動作例を示すフローチャート。
【
図17】実施の形態1に係るルールテーブルの例を示す図。
【
図18】実施の形態1に係るルールテーブルへのルール追加の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。以下の実施の形態の説明及び図面において、同一の符号を付したものは、同一の部分または相当する部分を示す。
【0023】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る監視システムの構成例を示す。
本実施の形態に係る監視システムは、センサー10と計測装置100とデータ送信サーバ装置200とデータ受信サーバ装置300で構成される。
【0024】
計測装置100には、複数のセンサー10が接続されている。
センサー10は、例えば、温度センサー、湿度センサー及び照度センサーである。
本実施の形態では、計測装置100は、生産ライン等の設備が複数ある工場に設置されているものとする。
計測装置100は、接続されているセンサー10から周期的にセンシング結果を収集する。そして、計測装置100は、周期的に、収集したセンシング結果をJSON(JavaScript(登録商標)Object Notation)ファイルに変換し、JSONファイルを収集データとしてデータ送信サーバ装置200に送信する。収集データには、計測装置100の識別子(計測装置100が1000台あれば識別子は1~1000まで)が付加される。収集データに付加される計測装置100の識別子はそのまま収集データの識別子として用いられる。
収集データは、生産ライン等の設備自体又は設備の周辺環境に関する物理量(温度、湿度、照度等)の計測結果であり、急激な環境の変化が発生しなければ、データ値は緩やかに変化する。
【0025】
データ送信サーバ装置200は、周期的に、計測装置100からJSONファイルである収集データを受信する。
データ送信サーバ装置200は、また、同じ識別子が付加されている収集データの前回のデータ値と今回のデータ値とを比較する。また、データ送信サーバ装置200は、前回のデータ値と今回のデータ値との間で差があった収集データについて、今回を含む過去n(n≧3)回におけるデータ値の変動幅が変動幅閾値以上であるか否かの判定を行う。
また、データ送信サーバ装置200は、データ受信サーバ装置300に送信する通知情報をJSONファイル形式にて生成する。
前回のデータ値と今回のデータ値との間で差がなかった収集データが存在する場合は、データ送信サーバ装置200は当該収集データについては、識別子のみが通知される通知情報を生成する。
前回のデータ値と今回のデータ値との間で差があった収集データが存在する場合は、データ送信サーバ装置200は当該収集データについては、識別子と差分値とを通知する通知情報を生成する。なお、この場合は、データ送信サーバ装置200は、通知情報に、差分値とともに今回のデータ値を含ませてもよい。
なお、前回のデータ値と今回のデータ値との間で差があった収集データであって、今回を含む過去n回におけるデータ値の変動幅が変動幅閾値以上である収集データが存在する場合は、データ送信サーバ装置200は、当該収集データについて、識別子と差分値と、変動幅が変動幅閾値以上であるとの判定結果(以下、変動幅判定結果ともいう)が得られたことが通知される通知結果を生成する。
そして、データ送信サーバ装置200は通知情報をデータ受信サーバ装置300に送信する。
データ送信サーバ装置200は送信装置に相当する。また、データ送信サーバ装置200により行われる動作は送信方法に相当する。
【0026】
データ受信サーバ装置300は、データ送信サーバ装置200から通知情報を受信する。
そして、データ受信サーバ装置300は、通知情報において変動幅判定結果が得られたことが通知されている収集データを抽出し、抽出した収集データに対してのみ解析を行う。つまり、データ受信サーバ装置300は、変動幅判定結果が得られていない収集データに対しては解析を行う必要がない。データ受信サーバ装置300は、解析として、例えば、収集データに対する閾値判定を行う。いずれかの収集データにおいて、今回のデータ値が閾値を超えている場合は、データ受信サーバ装置300は管理者400に今回のデータ値が閾値を超えている旨を通知する。例えば、データ受信サーバ装置300は、管理者400に電子メールを送信する。
データ受信サーバ装置300は受信装置に相当する。また、データ受信サーバ装置300により行われる動作は受信方法に相当する。
【0027】
図2は、本実施の形態に係るデータ送信サーバ装置200の機能構成例を示す。
図3は、本実施の形態に係るデータ受信サーバ装置300の機能構成例を示す。
図4は、データ送信サーバ装置200及びデータ受信サーバ装置300のハードウェア構成例を示す。
先ず、
図4を参照してデータ送信サーバ装置200及びデータ受信サーバ装置300のハードウェア構成例を説明する。
【0028】
本実施の形態に係るデータ送信サーバ装置200及びデータ受信サーバ装置300は、コンピュータである。
データ送信サーバ装置200及びデータ受信サーバ装置300は、ハードウェアとして、プロセッサ901、記憶装置902及び通信装置903を備える。
データ送信サーバ装置200の記憶装置902には、
図2に示す受信部201、比較部202、判定部203、通知情報生成部204及び送信部205の機能を実現するプログラムが記憶されている。このプログラムは送信プログラムに相当する。
そして、データ送信サーバ装置200のプロセッサ901がこれらプログラムを実行して、後述する受信部201、比較部202、判定部203、通知情報生成部204及び送信部205の動作を行う。
また、データ送信サーバ装置200の記憶装置902は、テーブル記憶部206を実現する。
また、データ受信サーバ装置300の記憶装置902には、
図3に示す受信部301、選択部302、解析部303及びテーブル管理部305の機能を実現するプログラムが記憶されている。このプログラムは受信プログラムに相当する。
そして、データ受信サーバ装置300のプロセッサ901がこれらプログラムを実行して、後述する受信部301、選択部302、解析部303及びテーブル管理部305の動作を行う。
また、データ受信サーバ装置300の記憶装置は、テーブル記憶部304を実現する。
データ送信サーバ装置200の通信装置903は、計測装置100から収集データを受信し、データ受信サーバ装置300に通知情報を送信する。
また、データ受信サーバ装置300の通信装置903は、データ送信サーバ装置200から通知情報を受信し、管理者400の端末装置に電子メールを送信する。
【0029】
次に、
図2を参照して、データ送信サーバ装置200の機能構成例を説明する。
【0030】
受信部201は、通信装置903を介して、計測装置100から収集データを受信する。
【0031】
比較部202は、収集データの前回のデータ値と今回のデータ値とを比較する。
比較部202により行われる処理は比較処理に相当する。
【0032】
判定部203は、収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が比較部202により抽出された場合に、今回を含む過去n(n≧3)回における収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行う。
例えば、n=3とし、変動幅閾値=0とした場合は、1回目のデータ値が「25」、2回目のデータ値が「26」、3回目のデータ値が「25」であれば、過去3回のデータ値での変動幅は「0」であるので、当該収集データのデータ値の変動幅は変動幅閾値以下である。
nは3以上であれば、どのような値でもよい。また、変動幅閾値は0でなくてもよい。
また、判定部203は、収集データの前回のデータ値と今回のデータ値との差分値が比較部202により抽出された場合に、過去n回における収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えるか否かの判定を行い、更に、収集データのデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値を超えるか否かの判定を行ってもよい。
また、判定部203は、収集データのデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値以下であるか否かの判定を行ってもよい。
判定部203により行われる処理は判定処理に相当する。
【0033】
通知情報生成部204は、判定部203により過去n回における収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えると判定された場合に、収集データの識別子と、比較部202により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、判定部203の判定結果とを通知する通知情報を生成する。
また、通知情報生成部204は、判定部203により過去n回における収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えると判定され、更に、収集データのデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値を超えると判定された場合に、収集データの識別子と、比較部202により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、判定部203の判定結果とを通知する通知情報を生成するようにしてもよい。
また、通知情報生成部204は、判定部203により過去n回における収集データのデータ値の変動幅が変動幅閾値を超えると判定され、更に、収集データのデータ値の変化回数の実績が変化回数閾値以下であると判定された場合に、収集データの識別子と、比較部202により抽出された差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかと、判定部203の判定結果とを通知する通知情報を生成するようにしてもよい。
また、判定部203は、収集データに対して比較部202により差分値が抽出されていない場合は、当該収集データの識別子のみを通知する通知情報を生成する。このため、例えば計測装置100の故障により今回のデータ値が取得されなかった収集データの識別子は通知情報で通知されない。
通知情報生成部204により行われる処理は、通知情報生成処理に相当する。
【0034】
送信部205は、通知情報生成部204により生成された通知情報を通信装置903を介してデータ受信サーバ装置300に送信する。
送信部205により行われる処理は、送信処理に相当する。
【0035】
前述したように、受信部201、比較部202、判定部203、通知情報生成部204及び送信部205の機能を実現するプログラムはプロセッサ901により実行される。
図2では、プロセッサ901が受信部201、比較部202、判定部203、通知情報生成部204及び送信部205の機能を実現するプログラムを実行している状態を模式的に表している。
【0036】
テーブル記憶部206は、
図5に示すように、収集テーブル207、前時刻テーブル208、差分テーブル209及び過去テーブル210を記憶する。
【0037】
収集テーブル207は、収集データの今回のデータ値を管理するテーブルである。
図8は収集テーブル207の例を示す。
図8の詳細は後述する。
前時刻テーブル208は、収集データの前回(前時刻)のデータ値を管理するテーブルである。
図9は前時刻テーブル208の例を示す。
図9の詳細は後述する。
差分テーブル209は、収集データの今回のデータ値と前回のデータ値との差分値を管理するテーブルである。
図10は差分テーブル209の例を示す。
図10の詳細は後述する。
過去テーブル210は、変動幅及び変化回数の実績を管理するテーブルである。
図11は過去テーブル210の例を示す。
図11の詳細は後述する。
【0038】
次に、
図3を参照してデータ受信サーバ装置300の機能構成例を説明する。
【0039】
受信部301は、データ送信サーバ装置200から送信された通知情報を、通信装置903を介して受信する。
受信部301により行われる処理は、受信処理に相当する。
【0040】
選択部302は、通知情報で変動幅判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択する。
これに代えて、選択部302は、通知情報で変動幅判定結果及び変動回数判定結果が得られていることが通知されている収集データを解析対象として選択するようにしてもよい。
また、選択部302は、データ受信サーバ装置300において把握している収集データの識別子のうち、通知情報で通知されてない識別子が存在する場合に、通知情報の送信元であるデータ送信サーバ装置200で、通知情報で通知されていない識別子に対応する収集データの今回のデータ値が取得されていないと判定する。
選択部302により行われる処理は、選択処理に相当する。
【0041】
解析部303は、選択部302により選択された収集データの、通知情報で通知されている差分値及び今回のデータ値の少なくともいずれかを用いた解析を行う。
解析部303により行われる処理は、解析処理に相当する。
【0042】
テーブル記憶部304は、データ値テーブル及びルールテーブルを記憶する。
データ値テーブルには、計測装置100の識別子、つまり、収集データの識別子ごとに、今回のデータ値と前回のデータ値とが記述されている。
ルールテーブルには、収集データを選択する際のルール、データ値に対する解析を行う際のルール、及び解析結果に対する対処を行う際のルールが記述されている。
【0043】
テーブル管理部305は、ルールテーブルを管理する。
より具体的には、テーブル管理部305は、ルールテーブルを更新する。
【0044】
前述したように、受信部301、選択部302、解析部303及びテーブル管理部305の機能を実現するプログラムはプロセッサ901により実行される。
図3では、プロセッサ901が受信部301、選択部302、解析部303及びテーブル管理部305の機能を実現するプログラムを実行している状態を模式的に表している。
【0045】
***動作の説明***
次に、本実施の形態に係る監視システムの動作例を説明する。
【0046】
最初に、計測装置100の動作を説明する。
【0047】
本実施の形態に係る計測装置100は温度センサー、湿度センサー及び照度センサーといったセンサー10が取り付けられたマイクロコンピュータボード(Linux(登録商標)等で動作する小型のパーソナルコンピュータ)である。
計測装置100は、センサー10からセンシング結果を周期的(例:1分ごと)に収集し、そして、計測装置100は、周期的に、収集したセンシング結果をJSONファイルに変換し、JSONファイルを収集データとしてデータ送信サーバ装置200に送信する。
各計測装置100には識別子が割り当てられており、各計測装置100は、収集データに自身の識別子を追加する。
【0048】
次に、
図6のフローチャートを参照して、データ送信サーバ装置200の動作例を説明する。
以下では、30台の計測装置100から30件の収集データを1分ごとに収集している例を説明する。
【0049】
収集データの収集タイミングが到来すると、受信部201が各計測装置100から収集データを受信する(ステップS601)。
また、受信部201は、受信した収集データを受信フォルダ内に保管する。
図7は、受信部201が受信する収集データの例を示す。
本実施の形態では、
図7に示すように、1つの計測装置100から、温度センサーで計測された温度、湿度センサーで計測された湿度、照度センサーで計測された照度が示される収集データを受信するものとする。
図7において時刻は、収集データの送信時刻である。また、ID(Identifier)は、計測装置100の識別子である。前述したように、このIDは、収集データの識別子としても用いられる。
【0050】
次に、通知情報の生成タイミングになったら(例えば、1分周期)、受信部201が受信フォルダ内の収集データをWorkフォルダに移動させ、比較部202がWorkフォルダにある収集データをテーブル記憶部206内の収集テーブル207にレコードとして挿入する(ステップS602)。
図8は、収集テーブル207の例を示す。
図8では、
図7に示す収集データが収集テーブル207に挿入されている状態を示す。
また、
図8では、各レコードがIDによってソートされている。また、
図8では、前回のデータ値(1分前のデータ値)と比較して変化がある項目は黒地に白字で示している。なお、これは理解を容易にするためのものであり、ステップS602の段階では前回のデータ値との比較は未だ行われていないので、ステップS602の段階では前回のデータ値との差分値は抽出されていない。
【0051】
次に、比較部202は、収集テーブル207に挿入済みの収集データを読込み済フォルダに移動する(ステップS603)。なお、比較部202は、ステップS603に代えて、収集データを削除してもよい。
【0052】
比較部202は、ステップS602及びS603を全ての収集データに対して行う。
【0053】
次に、比較部202は、前時刻テーブル208をテーブル記憶部206から読み出して、収集テーブル207の値と前時刻テーブル208の値とをIDごとに比較する(ステップS604)。
図9は、前時刻テーブル208の例を示す。
前時刻テーブル208は収集テーブル207と同じ形式であるが、収集テーブル207ではデータ値が今回の値(最新の値)であるのに対して、前時刻テーブル208ではデータ値が前回の値(1分前の値)である点が異なる。
なお、
図9でも、1つ前のデータ値(現在の2分前のデータ値)と比較して変化がある項目は黒地に白字で示している。
比較部202は、ステップS604の比較に基づいて差分テーブル209を生成する。
図10は、差分テーブル209の例を示す。
図10において、「ID」と「時刻」は、
図8及び
図9に示すものと同様である。「温度」、「湿度」及び「照度」については、収集テーブル207と前時刻テーブル208の間で変化が無ければ「0」が示される。一方、収集テーブル207と前時刻テーブル208の間で変化があれば差分が示される。
図10では、「場所」についても「0」が示されるが、「場所」は
図8及び
図9と同様に「第一工程」等が記述されていてもよい。
【0054】
次に、判定部203が、比較部202により差分値が抽出されたIDについて、今回を含む過去n回における収集データのデータ値の変動幅と、変動幅閾値とを比較する(ステップS605)。
本実施の形態では、n=5とする。また、変動幅閾値を「+3」とする。更に、説明の簡便化のために、本実施の形態では、判定部203は、「温度」についてのみ変動幅と変動幅閾値とを比較するものとする。このような条件にて、ステップS605の動作の詳細を説明する。
先ず、判定部203は、過去テーブル210をテーブル記憶部206から読み出す。
図11は過去テーブル210の例を示す。
過去テーブル210の「前回変動幅(温度)」には、過去4回((n-1)回)におけるデータ値(温度)の変動幅がIDごとに示される。例えば、ID:1の「前回変動幅(温度)」の値は「0」であるため、ID:1の収集データの温度は過去4回の間に変動が無かった(又は変動したが結果的に元の値に戻った)ことがわかる。一方で、ID:3の「前回変動幅(温度)」の値は「-1」であるため、ID:3の収集データの温度は過去4回の間に結果的に1度下降したことがわかる。なお、
図11の「前回変化回数」には、前回までに、温度、湿度及び照度においてデータ値が変化した回数が記述される。
判定部203は、比較部202により差分値が抽出されたIDについて、過去テーブル210の「前回変動幅(温度)」の値と差分テーブル209の「温度」の差分値とを加算する。そして、判定部203は、加算値と変動幅閾値とを比較する。
図12は、
図11の「前回変動幅(温度)」と、
図10の「温度」に対応する「差分値(温度)」と、これらの加算値である「今回変動幅(温度)」とを表すテーブルである。
ID:3の「前回変動幅(温度)」の値は「-1」であり、「差分値(温度)」は「-1」であるため、加算値である「今回変動幅(温度)」は「-2」となる。変動幅閾値は「+3」なので、過去5回での変動幅(加算値)は変動幅閾値以下である。
一方、過去テーブル210のID:5の過去テーブル210の「前回変動幅(温度)」の値は「3」であり、「差分値(温度)」は「1」であるため、加算値である「今回変動幅(温度)」は「4」となる。変動幅閾値は「+3」なので、過去5回での変動幅(加算値)は変動幅閾値を超える。
このようにして、判定部203は、比較部202により差分値が抽出されたIDについて、変動幅(加算値)が変動幅閾値を超えるか否かを判定する。
図12に示すように、ID:5、ID:9、ID:10、ID:11、ID:14が変動幅閾値を超えると判定される。
【0055】
後述するように、データ受信サーバ装置300では、ルールテーブルとの照合により、温度が30度を超える場合は、管理者400にその旨を通知する。
今回を含む過去5回の計測において温度が4度以上上昇している場合は、温度が30度を超えている可能性がある。このため、判定部203は、データ受信サーバ装置300でのルールテーブルの照合の候補として、今回を含む過去5回の計測において温度が4度以上上昇しているIDを抽出する。
【0056】
次に、判定部203は、ステップS605において変動幅が変動幅閾値を超えると判定されたIDについて、今回のデータ値の変化を含む変化回数の実績と変化回数閾値とを比較する(ステップS606)。
本実施の形態では、また、変化回数閾値を「5」とする。
変化回数が多い(データの変化が激しい)場合は、生産ライン等に故障が発生している可能性がある。このため、変化回数の実績が変化回数閾値を超える収集データは、データ受信サーバ装置300での解析の対象とすることが望ましい。
このため、判定部203は、変化回数の実績が変化回数閾値を超える収集データを抽出する。
図12に示すように、
図10及び
図11の例では、ID:5、ID:9、ID:10、ID:11、ID:14が変動幅閾値を超える。
次に、これらについて、判定部203は、
図11の「前回変化回数」に、
図10の差分テーブルにおいて差分が抽出されている件数を加算する。
なお、
図11の「前回変化回数」は、前回までの収集データで、温度、湿度及び照度で差分が抽出された合計回数を示す。例えば、
図11のID:1では、温度、湿度及び照度で合計2回差分が抽出されたことを示す。
比較部202は、
図11の「前回変化回数」の値と
図10の差分テーブルにおいて差分が抽出されている件数とを加算することで、今回の収集データでの変化を含む変化回数を求めることができる。
また、比較部202は、加算により得られた変化回数で
図11の「前回変化回数」を上書きする。なお、比較部202は、既定のタイミング(例えば、毎日定刻)に「前回変化回数」をゼロクリアーする。
図13は、ID:5、ID:9、ID:10、ID:11、ID:14について、
図11の「前回変化回数」と
図10の差分テーブルでの差分の抽出件数である「差分件数」と、これらの加算値である「今回変化回数」とを表すテーブルである。
ID:5の「前回変化回数」の値は「5」であり、「差分件数」の値は「1」であるため、「今回変化回数」は「6」となる。変化回数閾値は「5」なので、変化回数の実績は変化回数閾値を超える。
このようにして、判定部203は、変動幅が変動幅閾値を超えたIDについて、変化回数が変化回数閾値を超えるか否かを判定する。
図13に示すように、ID:5及びID:14が変化回数閾値を超えると判定される。
【0057】
次に、判定部203は通知情報を生成する(ステップS607)。
より具体的には、判定部203は、以下の(1)~(4)に従って、通知情報を生成する。
(1)判定部203は、「時刻」として代表値を1つ通知情報に記述する。
(2)差分が抽出されなかったIDについては、判定部203は、通知情報において、IDのみを通知する。
(3)差分が抽出されたが、変動幅が変動幅閾値以下であったID又は変動幅が変動幅閾値を超えたが、変化回数が変化回数閾値以下であったIDについては、判定部203は、通知情報において、IDと項目名(温度、湿度、照度)と差分値と今回のデータ値とを通知する。
(4)差分が抽出され、変動幅が変動幅閾値を超え、更に、変化回数が変化回数閾値を超えたIDについては、判定部203は、通知情報において、IDと特殊記号と、項目名(温度、湿度、照度)と差分値と今回のデータ値とを通知する。
なお、差分が抽出されなかった場合でも、通知情報にIDを記述する理由は、データ受信サーバ装置300において、IDが記述されていない計測装置100でデータのロスト又は計測装置100の故障等が発生していることを検知できるようにするためである。
通知情報生成部204は、生成した通知情報を送信フォルダに格納する。
【0058】
図14にステップS607で生成される通知情報の例を示す。
図14では、作図上の理由から、ID:7までしか示されていないが、実際には、ID:30まで示されているものとする。
図14では、ID:1~ID:4及びID:6は、差分が抽出されたが、変動幅が変動幅閾値以下であるため、IDと項目名と差分値と今回のデータ値とが通知される。
ID:5は、差分が抽出され、変動幅が変動幅閾値を超え、更に、変化回数が変化回数閾値を超えているため、IDと特殊記号と、項目名と差分値と今回のデータ値とが通知される。
図14では、特殊記号は、ID:5の横に示されている「§」である。つまり、特殊記号「§」は、対応するIDの収集データでは過去5回の変動幅が変動幅閾値を超えているとの判定結果が得られたこと、更には変化回数の実績が変化回数閾値を超えているとの判定結果が得られたことを通知するシンボルである。なお、特殊記号としてどのような記号を用いてもよい。
ID:7は、差分が抽出されなかったため、IDのみが通知される。
なお、図示を省略しているが、
図14の通知情報において、ID:14についても、特殊記号「§」が付記される。
【0059】
図15は、計測装置100から送信された収集データをそのまま統合して送信する例を示す。
図15と比べて、
図14の通知情報では、大幅に情報量が圧縮されている。
【0060】
最後に、通知情報の送信タイミングになったら(例えば、1分周期)、送信部205が送信フォルダに格納されている通知情報をデータ受信サーバ装置300に送信する(ステップS608)。
【0061】
次に、
図16のフローチャートを参照して、データ受信サーバ装置300の動作例を説明する。
【0062】
通知情報の受信タイミングが到来すると、受信部301がデータ送信サーバ装置200から通知情報を受信する(ステップS1601)。
受信部301は、受信した通知情報を受信フォルダ内に保管する。
【0063】
次に、通知情報の選択及び解析処理のタイミングになったら、受信部301が、受信フォルダの通知情報をWorkフォルダに移動させ、選択部302がWorkフォルダにある通知情報から、IDを1つずつ読み出す。そして、選択部302は、読み出したIDに特殊記号(「§」)が含まれるか否かを判定する(ステップS1602)。
【0064】
読み出したIDに特殊記号(「§」)が含まれる場合は、選択部302は、当該IDを解析対象として選択する(ステップS1603)。
つまり、選択部302は、当該IDと、当該IDに対応付けられている項目名、今回のデータ値及び差分値を解析部303に出力する。
一方、読み出したIDに特殊記号(「§」)が含まれない場合は、選択部302は、通知情報内の次のIDを読み出す。
【0065】
図14の通知情報の場合は、選択部302は、ID:1~4については、ステップS1602でNOと判定し、ID:5について、ステップS1602でYESと判定する。そして、選択部302は、ID:5と、項目「温度」、今回のデータ値「21」及び差分値「1」を解析部303に出力する。
【0066】
次に、解析部303は、選択部302から出力されたIDがルールテーブルに含まれているか否かを判定する(ステップS1604)。
当該IDがルールテーブルに含まれている場合は、解析部303はルールテーブルの条件が成立するか否かを解析する(ステップS1605)。より具体的には、通知情報で通知されている今回のデータ値によりルールテーブルの条件が成立するか否かを判定する。また、通知情報で差分値だけが通知されている場合は、解析部303は、通知情報で通知された差分値をデータ値テーブルに記載の今回のデータ値(実質的には前回のデータ値になっている)に適用して今回のデータ値を算出して、ルールテーブルの条件が成立するか否かを判定する。
一方、当該IDがルールテーブルに含まれていない場合は、解析部303はその旨を選択部302に通知する。選択部302は、通知情報内の次のIDを読み出す。
【0067】
ステップS1604においてルールテーブルの条件が成立する場合は、解析部303は、ルールテーブルに記載のActionを実行する(ステップS1606)。
一方、ルールテーブルの条件が成立しない場合は、解析部303はその旨を選択部302に通知する。選択部302は、通知情報内の次のIDを読み出す。
【0068】
図17は、ルールテーブルの例を示す。
ルールテーブルには、イベント処理の内容が示される。
図17に示されるように、ルールテーブルには、[ID,項目,演算子,値,Action]の列が存在する。
IDの列には、計測装置100の識別子、すなわち、収集データの識別子が示される。
項目の列には、項目名(温度、湿度、照度)が示される。
演算値の列には、「<」、「>」、「=」等が示される。
値の列には、閾値が示される。
演算子と値の組合せにより、条件が示される。
Actionの欄には、条件が成立した場合の動作が示される。
図17の例では、計測された温度が30度を超える場合に、プログラム(Mail_send.exe)が実行されることが定義されている。プログラム(Mail_send.exe)は、管理者400にメールを送信するためのプログラムである。
温度が30度を超えている場合は、対応する生産ライン等において故障が発生している可能性がある。このため、温度が30度を超えている場合は、解析部303は、管理者400に故障の可能性があることをメールにて通知する。
図14の通知情報では、ID:5の温度及びID:14の温度のいずれも、30度を超えていないので、
図17のルールテーブルの条件は成立しない。
【0069】
図15に示すように、収集データの値がそのまま送信される場合は、選択部302は、30個のIDの各々に対して温度の値とルールテーブルの条件とを照合する必要がある。
本実施の形態では、
図14に示す通知情報が送信される。
図14の通知情報では、前述したように、ID:5、及びID:14に特殊記号「§」が付記されており、選択部302は、これら2つのIDのみを解析対象として選択する。このため、解析部303は、残り28個のIDについてはルールテーブルとの照合を不要とすることができる。
【0070】
全てのIDについてステップS1602~S1606が完了した場合は、選択部302は、通知情報を用いてデータ値テーブルを更新する(ステップS1607)。
【0071】
以上のように、変動幅が変動幅閾値を超える場合及び変化回数が変化回数閾値を超える場合は、生産ライン等で故障が発生している可能性がある。例えば、過去5回の計測において4度以上温度が上昇している場合は、
図17のルールテーブルに示す閾値である30度に達している可能性がある。また、変化回数が多い場合も故障が発生している可能性が高く、このため、閾値である30度に達している可能性がある。従って、このような収集データについてはデータ受信サーバ装置300においてルールテーブルとの照合を行う必然性が高い。
一方で、変動幅が変動幅閾値を超えない場合及び変化回数が変化回数閾値を超えない場合は、故障の可能性が低いと考えられる。従って、このような収集データについてはデータ受信サーバ装置300においてルールテーブルとの照合を行う必然性が低い。
本実施の形態に係るデータ送信サーバ装置200は、変動幅が変動幅閾値を超え、変化回数が変化回数閾値を超えるため、故障の可能性がある生産ライン等に関する計測装置100(収集データ)を選別してデータ受信サーバ装置300に通知する。このため、本実施の形態によれば、解析を要する収集データのみをデータ受信サーバ装置300に通知することで、通信帯域及びデータ受信サーバ装置300の演算リソースの効率化を図ることができる。
【0072】
なお、上記では、変動幅が変動幅閾値を超え、かつ、変化回数が変化回数閾値を超えるIDのみをデータ受信サーバ装置300に通知することとしていた。
これに代えて、変化回数の多寡にかかわらず、変動幅が変動幅閾値を超えるIDを全てデータ受信サーバ装置300に通知するようにしてもよい。この場合は、上記の例では、ID:5、ID:9、ID:10、ID:11、ID:14の全てがデータ受信サーバ装置300に通知されることになる。
また、上記と異なり、変動幅が変動幅閾値を超え、かつ、変化回数が変化回数閾値以下のIDのみをデータ受信サーバ装置300に通知するようにしてもよい。この場合は、少ない変化回数で急激に温度が上昇しているとも考えられるため、データ送信サーバ装置200は、このようなIDをデータ受信サーバ装置300に通知するようにしてもよい。この場合は、D:9、ID:10、ID:11のみがデータ受信サーバ装置300に通知されることになる。
【0073】
また、上記では、通知情報において今回のデータ値と差分値の両者が通知されている。これに代えて、通知情報において今回のデータ値及び差分値のいずれか一方のみが通知されるようにしてもよい。
【0074】
また、データ受信サーバ装置300のテーブル管理部305は、ルールテーブルに新たなイベント処理のルールを追加してもよい。
例えば、ID:1の照度が一定値(例えば、700)を超えた場合に管理者400の端末装置の表示画面にアラートを表示するイベントを追加する場合を考える。
テーブル管理部305は、例えば、
図18の符号1801で示すように、照度についてのルールを追加することができる。
符号1801のルールでは、ID:1の収集データに示される照度が700を超えている場合に、アラートを表示するためのプログラム(Alert.exe)を実行するというルールが示される。
このように、計測装置100及びデータ送信サーバ装置200の動作に影響を与えることなく、故障検出のための新たなルールを追加することができる。
【0075】
***ハードウェア構成の説明***
最後に、データ送信サーバ装置200及びデータ受信サーバ装置300のハードウェア構成の補足説明を行う。
図4に示すプロセッサ901は、プロセッシングを行うIC(Integrated Circuit)である。
プロセッサ901は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等である。
図4に示す記憶装置902は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等である。
図4に示す通信装置903は、データの通信処理を実行する電子回路である。
通信装置903は、例えば、通信チップ又はNIC(Network Interface Card)である。
【0076】
また、データ送信サーバ装置200の記憶装置902には、OS(Operating System)も記憶されている。
そして、OSの少なくとも一部がプロセッサ901により実行される。
データ送信サーバ装置200のプロセッサ901はOSの少なくとも一部を実行しながら、受信部201、比較部202、判定部203、通知情報生成部204及び送信部205の機能を実現するプログラムを実行する。
プロセッサ901がOSを実行することで、タスク管理、メモリ管理、ファイル管理、通信制御等が行われる。
また、受信部201、比較部202、判定部203、通知情報生成部204及び送信部205の処理の結果を示す情報、データ、信号値及び変数値の少なくともいずれかが、記憶装置902、プロセッサ901内のレジスタ及びキャッシュメモリの少なくともいずれかに記憶される。
また、受信部201、比較部202、判定部203、通知情報生成部204及び送信部205の機能を実現するプログラムは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD等の可搬記録媒体に記録されてもよい。
【0077】
また、データ受信サーバ装置300の記憶装置902には、OS(Operating System)も記憶されている。
そして、OSの少なくとも一部がプロセッサ901により実行される。
データ受信サーバ装置300のプロセッサ901はOSの少なくとも一部を実行しながら、受信部301、選択部302、解析部303及びテーブル管理部305の機能を実現するプログラムを実行する。
プロセッサ901がOSを実行することで、タスク管理、メモリ管理、ファイル管理、通信制御等が行われる。
また、受信部301、選択部302、解析部303及びテーブル管理部305の処理の結果を示す情報、データ、信号値及び変数値の少なくともいずれかが、記憶装置902、プロセッサ901内のレジスタ及びキャッシュメモリの少なくともいずれかに記憶される。
また、受信部301、選択部302、解析部303及びテーブル管理部305の機能を実現するプログラムは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD等の可搬記録媒体に記録されてもよい。
【0078】
また、受信部201、比較部202、判定部203、通知情報生成部204及び送信部205の「部」を、「回路」又は「工程」又は「手順」又は「処理」に読み替えてもよい。
同様に、受信部301、選択部302、解析部303及びテーブル管理部305の「部」を、「回路」又は「工程」又は「手順」又は「処理」に読み替えてもよい。
また、データ送信サーバ装置200及びデータ受信サーバ装置300は、処理回路により実現されてもよい。処理回路は、例えば、ロジックIC(Integrated Circuit)、GA(Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)である。
なお、本明細書では、プロセッサと処理回路との上位概念を、「プロセッシングサーキットリー」という。
つまり、プロセッサと処理回路とは、それぞれ「プロセッシングサーキットリー」の具体例である
【符号の説明】
【0079】
10 センサー、100 計測装置、200 データ送信サーバ装置、201 受信部、202 比較部、203 判定部、204 通知情報生成部、205 送信部、206 テーブル記憶部、207 収集テーブル、208 前時刻テーブル、209 差分テーブル、210 過去テーブル、300 データ受信サーバ装置、301 受信部、302 選択部、303 解析部、304 テーブル記憶部、305 テーブル管理部、400 管理者。