(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ゴムストッパ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/08 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
F16F15/08 C
F16F15/08 E
F16F15/08 W
(21)【出願番号】P 2018058138
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 純一
(72)【発明者】
【氏名】川井 基寛
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-075006(JP,A)
【文献】特開2017-180723(JP,A)
【文献】特開2010-084918(JP,A)
【文献】実開平05-012796(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267090(US,A1)
【文献】特開2003-120737(JP,A)
【文献】特開2002-274145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
7/00- 8/00
16/00
F16F 1/00- 7/14
11/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振装置の変形量を制限するストッパ部に装着されるゴムストッパであって、
前記ストッパ部の当接面に重ね合わされるストッパ本体部から該当接面側に突出して該ストッパ部に設けられた取付用孔に挿し入れられる取付脚部を備えており、
該取付脚部は、該取付用孔内に位置せしめられる首部と、該取付用孔を貫通して該ストッパ部の裏面側に突出位置せしめられる突出部と、該首部と該突出部との間に位置して該突出部から該首部に向かって外周面が拡大されて該ストッパ部の裏面に係止される
中実の係止部とを、有していると共に、
該係止部には、外径を小さくされた切欠状部が周方向で部分的に設けられていることを特徴とするゴムストッパ。
【請求項2】
前記係止部における前記切欠状部の底部の径寸法が、前記首部の径寸法以上とされている請求項1に記載のゴムストッパ。
【請求項3】
前記係止部における前記切欠状部が、前記取付脚部の長さ方向において、該係止部の前記首部側の端面から前記取付脚部の長さ方向に延びており、且つ前記突出部までは至らない長さとされている請求項1又は2に記載のゴムストッパ。
【請求項4】
前記係止部における前記切欠状部が、該係止部の外周面に向かって拡開する断面形状をもって、前記取付脚部の長さ方向に延びる溝状とされている請求項1~3の何れか一項に記載のゴムストッパ。
【請求項5】
前記係止部における前記切欠状部が、前記ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向に対して直交する両側の少なくとも一方には位置するように設けられている請求項1~4の何れか一項に記載のゴムストッパ。
【請求項6】
前記係止部における前記切欠状部が、前記ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向に対して直交する両側に位置して一対設けられている請求項5に記載のゴムストッパ。
【請求項7】
前記取付脚部が、前記ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向の両側部分に位置して互いに対峙して一対設けられていると共に、各該取付脚部における前記係止部には、互いに対峙する内方側において周方向で所定幅の前記切欠状部が設けられている請求項1~5の何れか一項に記載のゴムストッパ。
【請求項8】
前記取付脚部が、前記ストッパ本体部に対する前記防振装置の当接位置を避けて設けられている請求項1~7の何れか一項に記載のゴムストッパ。
【請求項9】
前記ストッパ本体部の表面には、前記ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向に対して直交する方向に延びる凹溝が複数設けられている請求項1~8の何れか一項に記載のゴムストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置とは別部品とされて、防振装置の変形量を制限するストッパ部に装着されるゴムストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、防振装置として、例えばパワーユニットを防振支持せしめるエンジンマウントや、自動車のボデーを防振支持せしめるボデーマウント、サスペンション機構を構成するサスペンション部材を車両本体に防振連結するメンバマウントなどが知られている。このような防振装置では、防振装置を構成するゴムマウント等の変形量を制限して、防振連結対象の相対的な変位量を制限することなどを目的として、ストッパ機構が採用されることがある。
【0003】
ストッパ機構は、一般に、振動入力に際して相対変位せしめられる部材同士を、緩衝ゴムを介して緩衝的に当接させることによって実現され得る。ここにおいて、防振装置を構成するゴムマウント等において、マウントゴムと緩衝ゴムを一体成形することで、防振装置そのものに一体的にストッパ機構を設けることも可能である。しかし、防振装置に一体的にストッパ機構を設ける場合には、ストッパ機構が作用する防振装置の変形方向が制限される場合があるだけでなく、緩衝ゴムの材質や形状、大きさなどが制限されることで、目的とするストッパ機能の実現が難しい場合もある。
【0004】
そこで、振動入力に際して相対変位せしめられて当接により防振装置の変形量を制限するストッパ部を設けて、当該ストッパ部の当接部位に対して、防振装置とは別部品とされたゴムストッパを配設せしめたストッパ機構が提案されている。例えば特開平11-173370号公報(特許文献1)に記載のものが、それである。
【0005】
このように防振装置とは別部品とされたゴムストッパを採用する場合には、ブラケットなどに設けられるストッパ部に対してゴムストッパを重ね合わせて装着するに際して、加硫接着などよりも簡便な固定方法が要求される。
【0006】
かかる要求に対して、上記特許文献1には、シート状のゴムストッパに円錐状の返し部が付いた固定用突起を一体形成し、ストッパ部に設けた取付孔へ固定用突起を嵌め入れて、返し部をストッパ部の裏面に係止させて抜け止め固定したゴムストッパの固定構造が提案されている。
【0007】
ところで、防振装置への大荷重入力時に、ストッパゴムには、圧縮方向の外力だけでなく、ストッパ部への重ね合わせ面に沿った方向などにも大きな力が及ぼされることもあることから、ストッパゴムには、ストッパ部に対して十分な固定力が要求される。一方、特許文献1に記載された従来の固定用突起によるゴムストッパの固定構造において、ストッパ部に対する固定力を大きくするには、円錐状の返し部の外径を大きくして、ストッパ部への係止幅を大きくすることが考えられる。
【0008】
しかしながら、ストッパゴムにおいて、ストッパ部への固定力向上のために返し部の外径を大きくすると、背反として、ストッパ部の取付孔へ返し部を嵌め入れ難くなるために、製造時におけるストッパ部の組付作業性ひいては生産性が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、防振装置とは別部品とされてストッパ部に装着されるゴムストッパにおいて、ストッパ部への固定力の向上と、ストッパ部に対する良好な組付作業性とを、両立して達成し得る新たな技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0012】
本発明の第一の態様は、防振装置の変形量を制限するストッパ部に装着されるゴムストッパであって、前記ストッパ部の当接面に重ね合わされるストッパ本体部から該当接面側に突出して該ストッパ部に設けられた取付用孔に挿し入れられる取付脚部を備えており、該取付脚部は、該取付用孔内に位置せしめられる首部と、該取付用孔を貫通して該ストッパ部の裏面側に突出位置せしめられる突出部と、該首部と該突出部との間に位置して該突出部から該首部に向かって外周面が拡大されて該ストッパ部の裏面に係止される中実の係止部とを、有していると共に、該係止部には、外径を小さくされた切欠状部が周方向で部分的に設けられているゴムストッパを、特徴とする。
【0013】
本態様に従う構造とされたゴムストッパでは、ストッパ部の裏面に係止される係止部における縮径方向の弾性変形が、切欠状部を設けたことによって容易に許容され得る。それ故、係止部を備えた取付脚部をストッパ部の取付用孔へ挿し入れてゴムストッパをストッパ部へ組み付ける作業性を良好に保ちつつ、係止部の外径を大きくしてストッパ部の裏面に対する径方向の係止幅寸法を大きくすることで、ゴムストッパのストッパ部に対する固定力も十分に得ることが可能になる。
【0014】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るゴムストッパにおいて、前記係止部における前記切欠状部の底部の径寸法が、前記首部の径寸法以上とされているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされたゴムストッパでは、取付脚部における径寸法が切欠状部によって局所的に小さくなることが回避される。それ故、例えば取付脚部を取付用孔へ挿し入れる組付時や、ストッパ荷重の作用で取付脚部に引抜力が作用した際に、切欠状部の形成部位へ局所的な応力や歪が集中することも防止されて、優れた耐久性や耐荷重性も実現可能となる。
【0016】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るゴムストッパにおいて、前記係止部における前記切欠状部が、前記取付脚部の長さ方向において、該係止部の前記首部側の端面から前記取付脚部の長さ方向に延びており、且つ前記突出部までは至らない長さとされているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされたゴムストッパでは、取付脚部の取付用孔への挿し入れに際して大きく変形することになる係止部の大径側(首部側)に切欠状部が設けられて変形が容易とされていることから、ストッパ部への装着が一層容易となる。一方、係止部の小径側(突出部側)の先端には切欠状部が設けられていないことから、係止部の強度や耐久性が過度に小さくなることもない。
【0018】
本発明の第四の態様は、前記第一~第三の何れかの態様に係るゴムストッパにおいて、前記係止部における前記切欠状部が、該係止部の外周面に向かって拡開する断面形状をもって、前記取付脚部の長さ方向に延びる溝状とされているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされたゴムストッパでは、取付脚部の取付用孔への挿し入れに際して変形量が大きくなる係止部の外周側に向けて切欠状部が拡開形状とされていることにより、ストッパ部への装着に際しての係止部の変形がより容易に許容されて、作業性の更なる向上が図られ得る。なお、溝状の切欠状部は、取付脚部の軸方向に対して傾斜等していても良いし、取付脚部の長さ方向において断面形状が変化していても良く、部分的に又は断続的に設けられていても良い。
【0020】
本発明の第五の態様は、前記第一~第四の何れかの態様に係るゴムストッパにおいて、前記係止部における前記切欠状部が、前記ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向に対して直交する両側の少なくとも一方には位置するように設けられているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされたゴムストッパでは、大きな荷重が及ぼされ難い位置に対して、係止部における切欠状部を設けることができることから、取付用孔からの取付脚部の不用意な抜け出しによるストッパ部からの脱落を一層効率的に防止しつつ、ストッパ部への組付作業性の向上を図ることが可能になる。
【0022】
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に係るゴムストッパにおいて、前記係止部における前記切欠状部が、前記ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向に対して直交する両側に位置して一対設けられているものである。
【0023】
本発明の第七の態様は、前記第一~第五の何れかの態様に係るゴムストッパにおいて、前記取付脚部が、前記ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向の両側部分に位置して互いに対峙して一対設けられていると共に、各該取付脚部における前記係止部には、互いに対峙する内方側において周方向で所定幅の前記切欠状部が設けられているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされたゴムストッパでは、作用せしめられる荷重に対してストッパ本体部を一対の取付脚部によって効率的に位置決め保持することができると共に、各取付脚部の係止部において、大きな荷重が及ぼされ難い位置に切欠状部を設けることができることから、ストッパ部への優れた固定力と良好な組付作業性との両立が効果的に実現され得る。
【0025】
本発明の第八の態様は、前記第一~第七の何れかの態様に係るゴムストッパにおいて、前記取付脚部が、前記ストッパ本体部に対する前記防振装置の当接位置を避けて設けられているものである。
【0026】
本態様に従う構造とされたゴムストッパでは、取付脚部との境界部分や取付脚部自体において、ストッパ荷重の直接的乃至は集中的な作用とそれに伴うと大きな変形が回避されることとなり、その結果、取付脚部によるストッパ部への安定した固定状態が実現可能となる。
【0027】
本発明の第九の態様は、前記第一~第八の何れかの態様に係るゴムストッパにおいて、前記ストッパ本体部の表面には、前記ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向に対して直交する方向に延びる凹溝が複数設けられているものである。
【0028】
本態様に従う構造とされたゴムストッパでは、ストッパ本体部における実質的な自由表面積が大きくされてストッパ緩衝性能が向上されることに加えて、ストッパ本体部の面方向における主たる荷重作用方向において荷重入力部から取付脚部にまで伝達される外力を、ストッパ本体部の表面に設けられた凹溝の変形作用によって効率的に軽減することができて、取付脚部によるストッパ部への固定状態の安定性や信頼性の向上を図ることも可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、防振装置とは別部品とされてストッパ部に後から取り付けられて装着されるゴムストッパにおいて、ストッパ部への固定力の向上と、ストッパ部に対する良好な組付作業性とを、両立して実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第一の実施形態としてのゴムストッパを、防振装置への装着状態で示す斜視図。
【
図2】
図1に示されたゴムストッパの防振装置への装着状態の正面図。
【
図3】
図1に示されたゴムストッパの防振装置のブラケットへの装着状態の斜視図。
【
図4】
図3に示されたゴムストッパの防振装置のブラケットへの装着状態の正面図。
【
図5】
図1に示されたゴムストッパの単品を示す斜視図。
【
図12】
図1に示されたゴムストッパの特性を説明するためのグラフ。
【
図13】本発明の第二の実施形態としてのゴムストッパを示す、
図5に対応する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1~2には、本発明の第一の実施形態としてのゴムストッパ10が、防振装置12への装着状態で示されている。本実施形態は、自動車においてパワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるエンジンマウントが防振装置12とされている。かかる防振装置12においてパワーユニットが車両ボデーに対して鉛直下方に相対変位せしめられる際の防振装置12の弾性変形量を緩衝的に制限するストッパ機構14を備えている。ストッパ機構14は、パワーユニット側に取り付けられる第一のブラケット16と、車両ボデー側に取り付けられる第二のブラケット18との間に、鉛直方向で所定距離を隔てて対向位置して設けられた相互の当接部によって構成されており、かかる当接部における一方の当接面にゴムストッパ10が装着されることで、ストッパ機構14における当接部の当接時の衝撃がゴムストッパ10によって緩衝されるようになっている。なお、以下の説明中で上下方向は、原則として車両への装着状態で略鉛直方向とされる、
図2中の上下方向をいう。
【0033】
より詳細には、先ず本実施形態においてゴムストッパ10が装着される防振装置12について簡単に説明する。即ち、ゴムストッパ10が装着される防振装置12は特に限定されるものでないが、本実施形態では、いわゆるお碗型のゴムマウントが採用されている。具体的には、略円錐台形状の本体ゴム弾性体20を有しており、その中心軸方向で上側に位置する小径側端部に対して第一の取付部材22が固着されていると共に、中心軸方向で下側に位置する大径側端部に対して第二の取付部材24が固着されている。
【0034】
特に本実施形態では、第一の取付部材22が、金属などからなる略矩形枠形状の剛性材で構成されており、その中心孔を水平方向に開口させて、本体ゴム弾性体20の小径側端面に重ね合わされた状態で固着されている。また、第二の取付部材24は、金属などからなる略円筒形状又は有底円筒形状の剛性材で構成されており、その中心孔を上下方向に向けて、本体ゴム弾性体20の大径側端部の外周面に重ね合わされた状態で固着されている。これにより、防振装置12では、パワーユニットの静的支持荷重の入力方向となる上下方向で離隔配置された第一の取付部材22と第二の取付部材24が、本体ゴム弾性体20で弾性的に連結された構造とされている。
【0035】
さらに、第一の取付部材22には、金属などの剛性材からなる第一のブラケット16が固着されている。第一のブラケット16では、略矩形ブロック形状の圧入部26の基端側に、パワーユニット側への固定用のボルト孔を備えた固定部28が一体形成されている。そして、圧入部26の先端側から、第一の取付部材22の中心孔に圧入されることで固着されており、固定部28が、第一の取付部材22から外方に突出して位置せしめられている。
【0036】
また、第二の取付部材24には、第二のブラケット18が固着されている。第二のブラケット18は、プレス金具などによって形成されており、略門形の本体部30に対して、天板部32から後方に延びるプレート状の控え部34が溶接等で固着されている。また、本体部30の門形内スペースには、大径円筒形状の装着部36が溶接等で固着されている。かかる装着部36は、中心軸を上下方向に向けた状態で、周壁における一径方向の対向部分が、本体部30を構成する両側脚部38,38の高さ方向の中間部分にそれぞれ溶接等で固着されている。そして、第二の取付部材24が、装着部36に圧入等で固着されることによって、防振装置12が、マウント中心軸を上下方向に向けて、装着部36と同軸的に配されて、第二のブラケット18に対して固定的に装着されている。
【0037】
このような構造とされた防振装置12は、第一の取付部材22が第一のブラケット16を介して自動車のパワーユニット側に固定されると共に、第二の取付部材24が第二のブラケット18を介して自動車のボデー側に固定されることにより、マウント中心軸が略上下方向となる状態で装着される。かかる装着状態下では、パワーユニットの静的な分担支持荷重が略マウント中心軸方向に及ぼされることとなり、他のエンジンマウントと協働してパワーユニットの車両ボデーに対する防振支持機構を構成する。なお、装着状態では、パワーユニットの分担支持荷重が及ぼされることにより、防振装置12の本体ゴム弾性体20が弾性変形して、第一の取付部材22と第二の取付部材24が相対的に接近方向に変位して位置せしめられることとなる。
【0038】
一方、第二のブラケット18には、装着部36の上方の開口側に位置して、装着部36の外周部分に広がるストッパ部40が設けられている。かかるストッパ部40は、金属板などの剛性材で形成されており、防振装置12のマウント中心軸に略直交して水平方向に広がる平板形状とされている。そして、第二のブラケット18において略門形とされた本体部30の前後方向における一方の開口側において、左右両側の脚部38,38間に跨がるようにして配されている。
【0039】
かかるストッパ部40は、ストッパ機構14の当接面を構成する上面において略平坦な剛性面を備えていれば良く、具体的な形状や構造は限定されるものでない。本実施形態では、略平板形状とされており、第二のブラケット18の装着部36の上端面に重ね合わされて支持されていると共に、
図2,4中の左右方向となる長さ方向の両側部分に一体形成された下方に延びるリブ42,42が、第二のブラケット18の両側脚部38,38の各一方に固着されており、それによって、ストッパ部40に対する補強および支持強度の向上が図られている。
【0040】
そして、第二のブラケット18に設けられたストッパ部40の上方には、第一のブラケット16において第一の取付部材22から側方に突出した圧入部26の基端部分が位置せしめられており、ストッパ部40の水平な上面44が、圧入部26の水平な下面46に対して、上下方向で所定距離を隔てて対向している。
【0041】
これらストッパ部40と第一のブラケット16(固定部28)との対向面44,46間の距離は、自動車への装着状態下で及ぼされる振動荷重に伴い防振装置12の本体ゴム弾性体20が弾性変形することで変化する。そして、例えば自動車の段差乗越え等に際して上下方向に衝撃的な大荷重が入力された際には、ストッパ部40と第一のブラケット16(固定部28)との対向面が相互に打ち当たることにより、本体ゴム弾性体20の弾性変形量ひいては車両ボデーに対するパワーユニットの上下方向における相対的変位量が制限されることで、ストッパ機能が発揮されるようになっている。
【0042】
ここにおいて、ストッパ機構14を構成するストッパ部40と第一のブラケット16(固定部28)との対向面44,46が衝撃的に当接することを回避し、ストッパ作用時の衝撃や異音、振動の発生を軽減することを目的として、ストッパ部40と第一のブラケット16(固定部28)との当接面には、ゴムストッパ10が配設されている。
【0043】
なお、ストッパ機構14を構成するストッパ部40の対向面(当接面)44(上面44)に比して、第一のブラケット16の対向面(当接面)46(下面46)は、左右長手方向の寸法が小さくされており、ストッパ部40と第一のブラケット16との上下方向の相対変位では、第一のブラケット16の対向面46がストッパ部40の対向面44の長手方向中央部分だけに当接せしめられる。しかし、車両走行状態では、上下方向の大荷重入力に際して車両加減速等に伴う車両前後方向の荷重が
図2中の左右方向へ併せて入力されることがあり、そのような状況でも、第一のブラケット16の対向面46は、ストッパ部40の対向面44の長手方向の中央から何れか一方へ偏倚して当接することでストッパ機能が発揮され得る。
【0044】
本実施形態のゴムストッパ10は、
図5~11に詳細が示されているように、所定厚さの略平板形状乃至はブロック形状のストッパ本体部48を備えており、かかるストッパ本体部48が、ストッパ部40の上面44を略全体に亘って一定厚さで覆い得る形状及び大きさとされている。なお、ゴムストッパ10の材質や厚さ寸法は、要求される緩衝特性や使用環境条件下での耐久性などを考慮して適宜に設定され得る。
【0045】
また、ストッパ本体部48の上面には、左右長手方向に対して直交する方向である幅方向(
図7中の上下方向)に延びる凹溝50が、ストッパ本体部48の長手方向で互いに所定距離を隔てて複数設けられている。
【0046】
さらに、ゴムストッパ10には、ストッパ本体部48における左右長手方向の両側部分に位置して、裏面となる下方に向かって突出する取付脚部52が、それぞれ一体的に形成されている。そして、これらの取付脚部52,52が、ストッパ部40の対応する位置に形成された取付用孔54,54へ挿通されることにより、取付脚部52,52のストッパ部40に対する係止による固定作用をもって、ゴムストッパ10のストッパ部40への固定的な取り付けが実現されている。
【0047】
すなわち、各取付脚部52は、ストッパ本体部48の平坦な裏面から略垂直に下方に向かって突出する、全体として中実の略棒状とされている。また、前述のように本実施形態のストッパ機構14では、車両上下方向の荷重入力に加えて車両前後方向となる
図2中の左右方向にも荷重入力があり、ストッパ本体部48の面方向における主たる荷重作用方向が
図2中の左右方向となる長手方向とされている。そして、このストッパ本体部48の長手方向で対峙する状態で、一対の取付脚部52,52が設けられている。特に本実施形態では、一対の取付脚部52,52が、ストッパ本体部48に対する第一のブラケット16の対向面46の当接位置を長手方向両側外方に外れた位置に設けられている。
【0048】
また、かかる取付脚部52には、ストッパ本体部48に近い基端側から下方の突出先端側に向かって長さ方向(軸方向)で順次に、首部56、係止部58、突出部60が、互いに異なる形状及び/又は機能をもって一体的に形成されている。
【0049】
そして、
図6に仮想線でストッパ部40が示されているように、ストッパ部40の取付用孔54の上側開口に対して、取付脚部52の突出部60が突出先端側から挿し入れられる。更に、ストッパ部40の下方に突き出した突出部60が手指や機械などで把持されて下方に引っ張り下げられる。これにより、取付脚部52の突出部60と係止部58が、取付用孔54を通り抜けてストッパ部40の下方に引き出されて位置せしめられる。また、首部56が取付用孔54の内部に引き入れられて位置せしめられる。この状態で、係止部58の上端が、ストッパ部40の裏面における取付用孔54の下側開口周縁部に対して引っ掛かって係止されることで取付脚部52の取付用孔54から上方への抜け出しが阻止されており、ストッパ部40の上面44にストッパ本体部48の裏面が略密接して重ね合わされた状態に保持されることとなる。
【0050】
ここにおいて、取付脚部52の首部56は、短柱形状で軸方向下方に延びており、本実施形態では一定の円形断面で延びている。この首部56の外径D1は、取付用孔54の内径と略同じか小さくされていると共に、首部56の軸方向長さLがストッパ部40の厚さ寸法、即ち取付用孔54の長さ寸法と略同じに設定されることが望ましい。なお、ストッパ部40の取付用孔54は、取付脚部52の挿入作業性と係止部58の係止作用との両立を考慮して、上側開口よりも下側開口が小径とされていても良いし、首部56の上端外周の隅肉形状を考慮して、上端開口縁の角部に面取りが施されていても良い。
【0051】
また、取付用孔54が設けられたストッパ部40は剛性材であるが首部56はゴム弾性体であり、且つ、首部56は軸方向に引き延ばされて取付用孔54に挿入されることから、首部56が取付用孔54よりも多少太かったり短かくても取付用孔54へ挿し入れることができる。更に、首部56の太さを取付用孔54と同じか僅かに太くすることで、装着状態での取付用孔54内の隙間を回避できるし、首部56の長さを取付用孔54と同じか僅かに短くすることで、装着状態で係止部58の上端をストッパ部40の裏面に対して押し付けて密接状態で当接させることが可能になる。
【0052】
一方、取付脚部52の突出部60は、ストッパ部40の取付用孔54への挿入を容易とするために、取付用孔54の内径よりも小さな外径寸法D2を有するロッド形状で略上下方向に延びている。本実施形態の突出部60は、引張操作に際して局所的な応力集中を回避するために全長に亘って略一定の断面形状とされているが、取付用孔54への挿入操作を容易にするために先端だけは先細形状とされている。尤も、装着後に突出部60は不要であるから、装着後に切断することも可能であり、切断作業性を考慮して、長さ方向で局所的に小さな断面部からなる切断予定部を設けても良い。
【0053】
なお、本実施形態では、取付脚部52の首部56の外径D1が、取付用孔54の内径と同じに設定されている一方、突出部60の外径D2が取付用孔54の内径よりも小さくされていることにより、突出部60の外径D2が首部56の外径D1よりも所定寸法だけ小さくされている。
【0054】
また、取付脚部52において首部56と突出部60との軸方向間に設けられた係止部58は、中心軸方向で外径寸法が変化して上方に向かって拡径する略逆向きの円錐台形状とされている。本実施形態では、係止部58の下端の小径部の外径が突出部60の外径D2と略同じとされている一方、係止部58の上端の大径部の外径D3が、首部56の外径D1よりも所定寸法だけ大きくされている。
【0055】
すなわち、本実施形態の係止部58は、下端の小径部の外径が、ストッパ部40の取付用孔54の内径よりも小さくされている一方、上端の大径部の外径が、取付用孔54の内径よりも大きくされている。これにより、係止部58を取付用孔54へ挿通する装着作業時には小径部から差し入れ易くなっていると共に、係止部58がストッパ部40の裏面側にまで取付用孔54を通過した装着状態では、係止部58の大径部が取付用孔54の開口周縁部に引っ掛かって上方へ抜け出し難くされている。
【0056】
なお、本実施形態では、逆円錐台形状とされた係止部58の大径側端部において、最大外径D3をもって軸方向に所定長さで延びる筒状外周面部分58aが設けられている。これにより、ストッパ部40の下面に対する係止部58の係止力の向上が図られている。
【0057】
さらに、取付脚部52の係止部58に、外周面上に開口する切欠状部62が設けられていることにより、取付脚部52の外径寸法が小さくされている。本実施形態の切欠状部62は、径方向外方に向かって周方向両側に拡開するV字形断面を有しており、係止部58の上端から下方に向かって直線的に延びる溝状を呈している。
【0058】
また、切欠状部62では、最も深くなった底部の径寸法が、首部56の外径寸法以上とされており、本実施形態では、切欠状部62におけるV字形断面の最深位置が、取付脚部52において首部56の外周面と同じか、それよりも大きな径方向位置を軸方向に延びている。これにより、切欠状部62を設けても、係止部58の引張強度や耐久性が、首部56に比して低下することが避けられている。なお、本実施形態では、
図10に示されているように、切欠状部62におけるV字形断面の最深位置の径寸法dが、取付脚部52において首部56の外径寸法D1よりも僅かに大きくされている。
【0059】
更にまた、本実施形態では、切欠状部62の底部の径寸法が上下方向の全長で略一定とされていることから、切欠状部62の周方向両側壁部の高さ寸法(切欠状部62の深さ寸法)が、係止部58の外径寸法に対応している。具体的には、係止部58の上端から下方に延びる切欠状部62は、その深さ寸法が係止部58の上端で最大とされて、下方に向かって次第に小さくなる係止部58の外径が首部56の外径と同じになる軸方向中間部分にまで達しており、係止部58の下端部分には切欠状部62が形成されておらず、切欠状部62が突出部60までは至っていない。
【0060】
更にまた、本実施形態では、このような切欠状部62が、係止部58の周方向において径方向一方向で対向位置して一対設けられている。そして、これら切欠状部62,62は、ストッパ本体部48における主たる荷重入力方向である
図8中の左右方向に対して直交する両側にそれぞれ位置せしめられている。即ち、
図8において、各取付脚部52に設けられた一対の切欠状部62,62は、
図8中の上下方向の両側に位置せしめられている。
【0061】
上述の如き構造とされたゴムストッパ10においては、係止部58の変形容易性が切欠状部62によって向上されている。特に係止部58の大径部分に切欠状部62が設けられていることから、大径部分を小径にする変形が容易とされている。特に本実施形態では、外周面に向かって次第に周方向両側に広がる略V字状断面で軸方向に延びる溝状の切欠状部62とされていることから、切欠状部62の周方向幅が小さくなるようにして、係止部58が小径になる弾性変形が一層容易に生ぜしめられる。
【0062】
従って、取付脚部52をストッパ部40の取付用孔54へ挿通してストッパ本体部48を防振装置12へ装着するに際して、係止部58が取付用孔54を通過する時に係止部58が取付用孔54の内周面によって容易に縮径変形され得ることとなり、以て、取付脚部52ひいてはゴムストッパ10をストッパ部40に対して容易に取り付けることが可能になる。
【0063】
一方、ストッパ部40における取付用孔54の下側開口周縁部に対する係止部58の係止力、換言すれば取付脚部52の抜け効力乃至はゴムストッパ10のストッパ部40に対する固定力は、係止部58の上端面がストッパ部40の下面に当接することにより、係止部58の軸方向の変形剛性によって発揮されることとなる。
【0064】
ここにおいて、係止部58に設けられた切欠状部62は、係止部58の外周面に開口するものであって、係止部58の軸方向端面に開口するものではないことから、係止部58に切欠状部62を設けたことに伴う、係止部58の縮径方向での変形剛性の低下に比して、係止部58の軸方向での変形剛性の低下は小さい。それ故、取付用孔54からの係止部58の抜け効力、即ちゴムストッパ10のストッパ部40に対する固定力を確保することができる。
【0065】
従って、上述の如きゴムストッパ10によれば、ストッパ部40への固定力の向上と、ストッパ部40に対する良好な組付作業性とを、両立して実現することが可能になる。
【0066】
なお、実車でのゴムストッパ10の装着状態下では、ストッパ部40の取付用孔54から係止部58を抜き出す外力は、ストッパ部40を上方に引張り上げる力ではなく、前述のストッパ本体部48の面方向における主たる荷重作用方向(
図2中の左右方向)への外力として、ストッパ部40に及ぼされる。かかる外力の作用時には、係止部58が傾斜するこじり方向に変形変位せしめられつつ、取付用孔54から抜け出すこととなるが、その際に取付用孔54の下側開口周縁部に当接して有効に係止されるのは、係止部58の上端面のうちで、ストッパ本体部48の面方向における主たる荷重作用方向に位置せしめられる
図8中の左右両側部分である。それに直交する
図8中の上下両側部分は、傾動の略中心軸上に位置することとなり、係止作用への寄与が小さい。
【0067】
本実施形態のゴムストッパ10では、この係止作用への寄与が小さい、係止部58における上下両側部分に切欠状部62が設けられていることから、切欠状部62による取付脚部52の取付用孔54への挿入組付作業の容易化を実現しつつ、切欠状部62を設けたことに伴う係止部58による係止作用による抜け効力の低下をより小さく抑えて、ゴムストッパ10のストッパ部40に対する固定強度を一層効率的に確保することが可能になる。
【0068】
因みに、係止部58に切欠状部62を設けた本実施形態に従う構造の取付脚部52と、切欠状部を有しない係止部からなる比較例構造の取付脚部とについて、本発明者が実験および検討の結果から推定した各特性の考察結果を、
図12にグラフをもって示す。かかるグラフは、同一の取付用孔54を備えたストッパ部40に対して係止部を圧入することで取付脚部をストッパ部40へ装着する際に必要とされる突出部へ加える引張力を縦軸にし、且つ、ストッパ部40への装着状態にあるゴムストッパに対してストッパ本体部48の面方向における主たる荷重作用方向(
図2中の左右方向)への外力を及ぼした際に、係止部を備えた取付脚部の取付用孔54からの抜け出しが阻止される最大の力である抜け効力を横軸として、特性の考察結果としての概略特性を直線で表したものである。このグラフからでも、係止部に切欠無しよりも切欠有りの方が、同じ一定の抜け抗力をもたせる際に、係止部の圧入に必要な引張力を下げられることがわかるので、本実施形態のゴムストッパ10は、ゴムストッパ10のストッパ部40に対する固定力を確保しつつ、組付作業性を良好にさせることができる。
【0069】
なお、抜け効力の調節は、例えば係止部58の大径側の外径寸法を大きくして取付用孔54の下側開口周縁部に対する係止面を大きくしたり、係止部58の外周面のテーパ角度を小さくして軸方向剛性の向上を図ることなどによって実現され得る。また、本実施形態に従う切欠有りの態様の特性を表す直線グラフの傾きは、切欠状部62の形状や大きさなどを変更することによって調節することができる。
【0070】
さらに、本実施形態のゴムストッパ10では、切欠状部62が係止部58の下端までは至らない長さで形成されており、係止部58において切欠状部62が周方向だけでなく軸方向でも部分的に設けられている。それ故、係止部58のストッパ部40に対する係止作用による抜け効力が、切欠状部62によって過度に低下することが一層効果的に防止されて、より安定した抜け効力が発揮されることとなる。
【0071】
また、本実施形態のゴムストッパ10では、ストッパ本体部48の上面において幅方向(
図7中の上下方向)に延びる凹溝50の複数本が形成されて、低荷重時のばね特性が柔らかくされることで、ストッパ機構14における当接初期の緩衝作用の向上が図られている。特に本実施形態では、かかる凹溝50が、取付脚部52の取付用孔54からの引き抜き外力の作用方向であるストッパ本体部48の面方向における主たる荷重作用方向に対して、略直交する方向に延びている。それ故、これら複数の凹溝50によってストッパ本体部48の左右長手方向の変形剛性が低下せしめられて、ストッパ本体部48への第一のブラケット16の当接による荷重入力部から取付脚部52にまで伝達される外力が軽減されることとなり、取付脚部52によるストッパ部40への固定状態の安定性の向上も図られ得る。
【0072】
次に、
図13~18には本発明の第二の実施形態としてのゴムストッパ70が示されている。なお、本実施形態のゴムストッパ70は、第一の実施形態で例示した第一及び第二のブラケット16,18を備えた防振装置12に対して装着されて用いられ得るものであり、装着状態の詳細な説明は第一の実施形態を参照することとして割愛する。また、本実施形態のゴムストッパ70は、基本構造を第一の実施形態のゴムストッパ10と共通にしており、係止部の別態様を例示するものであり、理解を容易とするために、第一の実施形態のゴムストッパ10と同じ構造とされた部位については、第一の実施形態と同一の符号を付しておく。
【0073】
すなわち、本実施形態のゴムストッパ70では、ストッパ本体部48の長手方向の両側部分に位置して互いに対峙して突設された一対の取付脚部72,72において、係止部74、74の互いに対峙する内方側に切欠状部76,76が形成されている。要するに、係止部74、74の切欠状部76,76は、ストッパ本体部48の長手方向で対向して開口位置せしめられている。
【0074】
また、かかる切欠状部76は、要求されるストッパ部40への係止力や取付用孔54への圧入力などに応じて形状や大きさなどが適宜に設定され得るが、本実施形態では、周方向に1/2周以上で3/4周以下の幅寸法をもって、係止部74の軸方向に略一定の周方向幅寸法で延びる幅広の溝状とされている。なお、本実施形態における切欠状部76の深さ寸法は、首部56の外周面から係止部74の大径側端部の径方向突出高さと等しくされており、首部56の外周面が切欠状部76の底面まで連続した同一面をもって軸方向に広がっている。
【0075】
更にまた、首部56の外径に比して突出部60の外径が小さくされていることから、首部56の底面と径方向位置が等しい底面を備えた切欠状部76は、第一の実施形態の切欠状部62と同様に、係止部74の上端から下方に向かって中間部分まで延びており、切欠状部76の軸方向長さは、係止部74の軸方向長さよりも小さくされている。
【0076】
このような本実施形態のゴムストッパ70では、第一の実施形態に比して、取付脚部72の係止部74に対して一層大きな切欠状部76が設けられている。そして、取付脚部72の係止部74における大径側端面のストッパ部40に対する当接面が、実質的に、ストッパ本体部48の長手方向の外側に位置する略半周かそれ以下の部分だけとされている。
【0077】
これにより、本実施形態のゴムストッパ70は、係止部74ひいては取付脚部72を、ストッパ部40の取付用孔54に対して一層容易に挿通させて装着することが可能になる。一方、係止部74のストッパ部40に対する当接面が、第一の実施形態よりも小さくなるが、かかる当接面は、ストッパ本体部48の面方向における主たる荷重作用方向である
図15中の左右方向で、それぞれの両側外方に位置せしめられていることから、取付用孔54から係止部74を抜き出す外力に対して効率的に抜け効力を発揮し得る。
【0078】
従って、本実施形態の切欠状部76が設けられた係止部74を備えた取付脚部72によれば、ゴムストッパ70のストッパ部40への固定に必要とされる係止部74のストッパ部40に対する係止作用による固定力を確保しつつ、係止部74を取付用孔54へ挿通してゴムストッパ70をストッパ部40へ組み付ける作業性の更なる向上を図ることが可能になるのである。
【0079】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明は上述の具体的な記載によっって限定的に解釈されるものでない。例えば、係止部58,74に設けられる切欠状部62,76の具体的な形状や大きさなどは要求特性に応じて適宜に変更可能であり、また、係止部の周方向で3つ以上の切欠状部を設けたり、複数の切欠状部を設けるに際して互いに形状や大きさなどを異ならせたりすることも可能である。
【0080】
具体的には、前記実施形態では、係止部の外周面に向かって次第に周方向に拡開するV字状等の断面形状をもって切欠状部が形成されていたが、例えば略一定の周方向幅寸法で外周面に開口する角形の溝形状や、係止部の外周部分を弦方向に切り欠いた弦月状の断面形状をもって軸方向に延びる切欠状部なども採用可能である。
【0081】
また、係止部58,74や首部56、突出部60などの形状も例示の如き逆円錐台形状や円形ロッド形状に限定されるものでなく、例えば角形や楕円形などの適宜の外周面形状が採用され得る。
【0082】
更にまた、ストッパ本体部48に形成される取付脚部52,72の位置や大きさ、数なども、本発明において限定されない。例えばストッパ本体部48の幅寸法が大きい場合には、前記実施形態のように長手方向の両端部分だけでなく幅方向の端部等にも取付脚部を必要に応じて設け得るし、長手方向の両端部分において複数本の取付脚部を設けることも可能である。
【0083】
また、本発明に係るゴムストッパが装着される防振装置やブラケットなどは、その具体的な形状や構造などが限定されるものでないことは言うまでもなく、例えばブラケットを備えずに、防振装置本体やパワーユニット側又は車両ボデー側などに対して直接にストッパ部が設けられていても良い。
【0084】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
10,70:ゴムストッパ、12:防振装置、40:ストッパ部、48:ストッパ本体部、50:凹溝、52,72:取付脚部、54:取付用孔、56:首部、58,74:係止部、60:突出部、62,76:切欠状部