(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】インサートの取付用治具およびスリーブ、インサートの取付方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20220111BHJP
B28B 23/00 20060101ALI20220111BHJP
B28B 7/00 20060101ALI20220111BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20220111BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E04B1/41 502F
B28B23/00
B28B7/00 D
F16B21/04 A
F16B7/18 A
(21)【出願番号】P 2018066409
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(73)【特許権者】
【識別番号】500551323
【氏名又は名称】明電セラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 伸夫
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025527(JP,A)
【文献】実公平03-025934(JP,Y2)
【文献】特開平09-279694(JP,A)
【文献】特開平08-260576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
E04G 9/10
B28B 23/00
B28B 7/00
F16B 21/04
F16B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部材を固定するインサートをコンクリート構造物に埋設する際、前記インサートを型枠に取り付ける治具であって、
前記インサートの雌ねじ穴に締結される雄ねじ部が形成された一端部と、
前記型枠内に装着された管状のスリーブ内に回転自在に挿入される他端部と、を備え、
前記他端部の外周は、前記スリーブの内周に形成された凸状部を前記挿入時に軸方向に沿って案内するガイド部と、前記ガイド部から略円周方向に形成された溝部と、備え、
前記他端部の前記挿入後に一方向に回転させたときに前記凸状部が前記溝部に入り込んで、前記他端部が前記スリーブの内周に固定される
ことを特徴とするインサートの取付用治具。
【請求項2】
前記溝部は、前記一端部側への傾斜が施された螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のインサートの取付用治具。
【請求項3】
前記溝部は、前記挿入方向側の溝壁に段差が形成され、
前記段差の奥に前記凸状部と係合する凹状部を備え、
前記凸状部が前記凹状部に係合することで前記他端部が前記スリーブの内面に固定される
ことを特徴とする請求項1また2記載のインサートの取付用治具。
【請求項4】
前記一端部と前記他端部との間に括れ部を備える
ことを特徴とする請求項
3記載のインサートの取付用治具。
【請求項5】
前記他端部の外周は、前記凹状部から前記括れ部までの間に抜溝を備える
ことを特徴とする請求項4記載のインサートの取付用治具。
【請求項6】
前記他端部の前記括れ部側の外周には、工具の先端が差し込み可能なスリット溝が形成されている
ことを特徴とする請求項4または5記載のインサートの取付用治具。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の取付用治具により前記インサートを前記型枠に取り付ける際、前記型枠に固定されるスリーブであって、
管状のスリーブ本体と、該スリーブ本体の内周に設けられた前記凸状部と、を備え、
前記凸状部は、前記スリーブ本体内に挿入された前記他端部を一方向に回転させたときに前記溝部に入り込んで、前記他端部を前記スリーブ本体の内周に固定する
ことを特徴とするインサート取付用治具のスリーブ。
【請求項8】
被固定部材を固定するインサートをコンクリート構造物に埋設する際、前記インサートを請求項4記載の取付用治具を用いて型枠に取り付ける方法であって、
前記取付
用治具の雄ねじ部を前記インサートの雌ねじ穴に締結し、前記取付
用治具を前記インサートに取り付ける第1工程と、
前記取付用治具の他端部を前記スリーブ内に回転自在に挿入し、前記凸状部を前記他端部の軸方向に沿ってガイド部により案内する第2工程と、
前記取付用治具を前記インサートと共に一方向に回転させ、前記凸状部を前記凹状部に係合させ、前記他端部を前記スリーブの内周面に固定する第3工程と、
前記型枠内に打設されたコンクリートの硬化後に前記型枠を取り外し、前記括れ部を破断させる第4工程と、
を有することを特徴とするインサートの取付方法。
【請求項9】
前記第4工程後に前記スリーブ内に残存する前記他端部を、
前記破断側から押し込んで前記他端部を前記スリーブ内から排出する第5工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項8記載のインサートの取付方法。
【請求項10】
前記第4工程後に前記スリーブ内に残存する前記他端部のスリット溝
に工具の先端を差し込んで他方向に回転させることで前記凹状部と前記凸状部との係合を解除し、
前記解除後に前記工具を持ち上げて前記他端部を引き抜く第5工程をさらに備えることを特徴とする請求項8記載のインサートの取付方法。
【請求項11】
前記第4工程後の前記一端部は、前記インサートの前記雌ねじ穴内に残存することを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載のインサートの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定部材を固定するインサートをコンクリート構造物に埋設する際、インサートを型枠に取り付ける治具、スリーブ並びに取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のようにコンクリート構造物、例えばトンネルやボックスカルバートのコンクリート壁・天井にはセラミック製のインサートが埋設され、該インサートに所望の被固定部材が締結されている。
【0003】
このインサートは、あらかじめコンクリート打設前に型枠の内側に取り付けられている。このインサートを型枠に取り付ける治具としては、非特許文献1の固定用ボルトが知られている。
【0004】
この固定用ボルトによれば、その軸部を型枠の外側からインサートの雌ねじ穴に螺入させてインサートを型枠に片持状に取り付け、その後に型枠内にコンクリートを打設する。
【0005】
このコンクリートの硬化後に固定用ボルトをインサートの雌ねじ穴から螺出させ、インサートをコンクリートに埋設する。ここで埋設されたインサートの雌ねじ穴には、例えば足場用の支持ボルトや天井の吊りボルトなどの被固定部材が締結される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“ファインセラミックス製コンクリートアンカー MEIDEN 明電セラミックインサート(先付けアンカー) 明電セラミックアンカー(あと施工アンカー)”,[online],[平成30年3月15日検索],インターネット{HYPERLINK "URL:http://www.m-cera.com/pages/common/pdf/zal-2875.pdf%20",URL:http://www.m-cera.com/pages/common/pdf/zal-2875.pdf }
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-27597
【文献】特開2005-297316
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1によれば、インサートを型枠に取り付ける際には、工具などにより固定ボルトを一方向に回して、固定ボルトの軸部をインサートの雌ねじ穴に締結する作業が必要となる。
【0009】
また、コンクリート硬化後の脱型に際しては、工具などで固定ボルトを他方向に回して前記締結を解除する作業が必要となる。ところが、コンクリート構造物には多数のインサートが埋設されるため、個々のインサート毎に前記各作業を行わなければならない。そのため、インサート埋設作業の労力が増加し、コンクリート構造物の施工期間や施工コストなどに影響を与えるおそれがある。
【0010】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、インサートの埋設作業の作業効率を改善し、作業労力の軽減を図ることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一態様は、被固定部材を固定するインサートをコンクリート構造物に埋設する際、前記インサートを型枠に取り付ける治具であって、
前記インサートの雌ねじ穴に締結される雄ねじ部が形成された一端部と、
前記型枠内に装着された管状のスリーブ内に回転自在に挿入される他端部と、を備え、
前記他端部の外周は、前記スリーブの内周に形成された凸状部を前記挿入時に軸方向に沿って案内するガイド部と、前記ガイド部から略円周方向に形成された溝部と、備え、
前記他端部の前記挿入後に一方向に回転させたときに前記凸状部が前記溝部に入り込んで、前記他端部が前記スリーブの内周に固定されることを特徴とする。
【0012】
(2)本発明の他の態様は、前記取付用治具により前記インサートを前記型枠に取り付ける際、前記型枠に固定されるスリーブであって、
管状のスリーブ本体と、該スリーブ本体の内周に設けられた前記凸状部と、を備え、
前記凸状部は、前記スリーブ本体内に挿入された前記他端部を一方向に回転させたときに前記溝部に入り込んで、前記他端部を前記スリーブ本体の内周に固定することを特徴とする。
【0013】
(3)本発明のさらに他の態様は、被固定部材を固定するインサートをコンクリート構造物に埋設する際、前記インサートを前記取付用治具を用いて型枠に取り付ける方法であって、
前記取付治具の雄ねじ部を前記インサートの雌ねじ穴に締結し、前記取付治具を前記インサートに取り付ける第1工程と、
前記取付用治具の他端部を前記スリーブ内に回転自在に挿入し、前記凸状部を前記他端部の軸方向に沿ってガイド部により案内する第2工程と、
前記取付用治具を前記インサートと共に一方向に回転させ、前記凸状部を前記溝部の凹状部に係合させ、前記他端部を前記スリーブの内周面に固定する第3工程と、
前記型枠内に打設されたコンクリートの硬化後に前記型枠を取り外し、前記両端部間の括れ部を破断させる第4工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
(3)本発明のさらに他の態様は、前記第4工程後の前記一端部が前記インサートの前記雌ねじ穴内に残存することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インサート埋設作業の作業効率が改善され、作業労力の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るインサート取付用治具の斜視図。
【
図4】同 取付用治具によるインサート取付方法の第1工程完了の状態を示す斜視図。
【
図6】同 第2工程完了後の状態を示す部分斜視図。
【
図7】(a)は同第3工程の開始状態を示す部分斜視図、(b)は(a)の断面図、(c)は同第3工程の完了状態を示す部分斜視図、(d)は(c)の断面図。
【
図9】(a)はスリーブから取付治具の先端を取りだす際にマイナスドライバーを差し込んで左回転させる工程を示す状態図、(b)は(a)の工程後にマイナスドライバーを持ち上げて取付治具の先端を引き抜く工程を示す状態図。
【
図10】(a)はスリーブから取付治具の先端を取りだす際、取付治具の先端を押し込む状態を示す斜視図、(b)は(a)の押し込み完了を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るインサートの取付用治具、スリーブ並びにインサートの取付方法を説明する。ここでインサートは、例えば橋の橋脚などのコンクリート構造物に埋設され、足場用の支持ボルトなどの被固定部材をコンクリート構造物に固定するために用いられる。
【0018】
≪構成例≫
図1~
図4に基づき構成例を説明する。
図1~
図3中の1は、前記取付用治具を示している。この取付用治具1は、セラミック製のインサート2をコンクリート構造物に埋設する際、型枠3の型孔9に装着されたスリーブ4(
図4参照)を介してインサート4を型枠3に着脱自在に取り付けている。
【0019】
このスリーブ4は、円管状に形成されたスリーブ本体10と、スリーブ本体10の周方向の180度の位置にそれぞれ設けられたピン10aとを備え、スリーブ本体10内には貫通孔10bが形成されている。
【0020】
このピン10aは、スリーブ本体10の外周側から内周側まで貫通して設けられ、スリーブ本体10の内周に凸状部として突出している(
図5~
図9参照)。また、スリーブ本体10の一端側の外周には、型孔(雌ねじ孔)9に締結される雄ねじ部10cが形成されている。
【0021】
具体的には取付用治具1は、
図1~
図3に示すように、一本状に形成され、インサート2(
図4参照)に螺設される一端部5と、スリーブ本体10の内周に固定される他端部6と、両者5,6間の括れ部11とを有し、両端部5,6内の軸方向には
図3に示す空洞部5a,6aが形成されている。ここで一端部5の外周には、インサート2の雌ねじ穴7(
図4参照)に締結される雄ねじ部8が形成され、また括れ部11側に円環状のフランジ12が形成されている。
【0022】
一方、他端部6は、前記スリーブ本体10の貫通孔10b内に回転自在に挿入さる。この他端部6の外周は、
図1および
図2に示すように、挿入方向側(一端部5の反対方向側)の端面6bから外周の略中央部までの間に形成された一対の摺合面14と、各摺合面14の括れ部11側から略円周方向に形成された溝部15と、溝部15の奥側から括れ部11まで形成された抜溝16と、括れ部11部近傍に形成された一対のスリット溝17とを有している。
【0023】
この各摺合面14は、他端部6の肉厚を薄肉状にした平坦形状を呈し、他端部6の外周の対称位置にそれぞれ形成されている。ここでは各摺合面14は、前記挿入時にスリーブ本体10の各凸状部10aを軸方向に沿って案内するガイド部としての機能を果たしている。
【0024】
また、溝部15は、
図2に示すように、摺合面14から溝底が連続して形成され、前記挿入方向側の溝壁15aには一端部5側への傾斜が施され、この意味で溝部15は螺旋状を呈しているものといえる。この溝壁15aには段差15bが形成され、段差15bの奥側(摺合面14から周方向の約100度の位置)にはスリーブ本体10の凸状部10aに係合可能な凹状部15cが形成されている。
【0025】
ここでは凹状部15cの対向位置、即ち凹状部15cから軸方向に沿って括れ部11までの間に抜溝16が形成されている。さらに各スリット溝17は、摺合面14と同様に周方向の180度の位置にそれぞれ形成されている。この各スリット溝17は、マイナスドライバー20(
図10参照)の先端を差し込むことが可能大きさに開口している。
【0026】
≪インサートの埋設方法≫
図4~
図8に基づきインサート2の埋設方法を説明する。このインサート2は、
図4~
図8の第1工程~第4工程を経てコンクリート構造物に埋設されている。以下、工程ごとに説明する。
【0027】
(1)第1工程
図4に基づき第1工程を説明する。ここでは取付用治具1の一端部5の雄ねじ部8をインサート2の雌ねじ穴7に螺入させる。これにより雄ねじ部8が雌ねじ穴7に締結され、インサート2に取付用治具1の一端部5が螺設される。
【0028】
(2)第2工程
図5および
図6に基づき第2工程を説明する。ここでは事前に型枠3の型孔9にスリーブ本体10の雄ねじ部10cが締結され、型枠3にスリーブ4が装着さえているものとする。
【0029】
そして、
図5に示すように、スリーブ本体10の貫通孔10bに取付用治具1の他端部6の先端面6bを対向させる。この状態のまま取付用治具1を回転させて各摺合面14をスリーブ本体10の各凸状部10aの位置に合わせる。
【0030】
その後、矢印Pに示すように、スリーブ本体10の貫通孔10bに取付用治具1の他端部6を回転自在に挿入する。このときスリーブ本体10の各凸状部10aは、
図6に示すように、各摺合面14に沿って溝部15の入口15dまで案内される。
【0031】
(3)第3工程
図7に基づき第3工程を説明する。ここでは第2工程の完了後の状態のままインサート2を取付用治具1ごと右回転(約100度)させる。これにより
図7(a)(b)の矢印Q方向に取付用治具1の他端部が回転する。
【0032】
このとき各凸状部10aは、矢印Rに示すように、溝部15の溝壁15aに案内され、その後に
図7(c)(d)に示すように、段差15bを越えて凹状部15cに入り込む。これにより凸状部10aと各凹状部15cとが係合し、取付用治具1の他端部6がスリーブ本体10の内周にロック(固定)され、インサート2の型枠3への取り付けが完了する。
【0033】
また、溝壁15aに傾斜が施されているため、矢印Q方向の回転時に取付用治具1が矢印P方向にさらに押し込まれていく。これによりフランジ12がスリーブ本体10の開口端部10dに密着し、両者12,10d間の隙間が消失する。
【0034】
このようなインサート2の型枠3への取り付け完了後、型枠3の内側にコンクリートCが打設される。この場合に両者12,10d間が密着しているため、コンクリートノロ(液状時のコンクリート)が両者12,10間に侵入することが防止される。この点でコンクリートノロの侵入に伴うトラブル、即ち雌ねじ穴7および空洞部5aの損失などを防止することができる。
【0035】
(4)第4工程
図8に基づき第4工程を説明する。ここでは型枠3の内側に打設されたコンクリートCの硬化後に脱型、即ち型枠3を取り外す作業が実施される。このとき取付用治具1の括れ部11が破断するため、フランジ12を境に両端部5,6が分離し、他端部6がスリーブ4に固定された状態のまま型枠3がコンクリートCから取り外される。
【0036】
また、脱型後に取付用治具1の一端部5は、インサート2内に残存して被固定部材の締結まで雌ねじ穴7のキャップの役割を果たす。これにより雌ねじ穴7が保護されて塵埃などの侵入が防止され、この点で雌ねじ穴7の劣化が抑制される。
【0037】
このような取付用治具1およびスリーブ4によれば、第2工程の完了後にインサート2を約100度右回転させるだけで型枠3に取り付けることができる。したがって、従来のように、工具などで固定ボルトを一方向に回してインサート2に締結する作業は不要であり、インサート2を型枠にワンタッチで簡単に取り付けることが可能となる。
【0038】
また、脱型作業時に括れ部11が破断するため、従来のように脱型時に固定ボルトの締結を解除する作業も不要となる。これによりインサートの埋設作業の作業効率を改善し、作業労力の軽減を図ることをできる。さらに特許文献1,2に対して以下の効果を得ることができる。なお、特許文献1,2の説明に使用した符号は、それぞれの特許公開公報に記載の符号を示している。
【0039】
(A)特許文献1の保持用インサートによれば、型孔Kaに挿通されたストッパ5のストッパ片5aが抜け止めとなってインサート本体1を型枠Kに取り付けている。しかしながら、特許文献1のストッパ片5aは型枠Kへの組付性が弱く、ぐらつきが生じて型孔Kaから抜けるおそれがある。
【0040】
これに対して取付用治具1の他端部6は、単なる抜け止めではなく、各凸状部10aと凹状部15cとを係合させることでスリーブ4の内周に強固に固定される。これにより特許文献1のようにぐらつきが生じるおそれはなく、この点で型枠3にインサート2を確実に取り付けることができる効果を得られる。
【0041】
(B)特許文献2のインサートホルダー3によれば、型枠P内の取付部材4に保持部8が挿通されている。この保持部8の係止部13を取付部材4に係止させ、インサート2を型枠Pに取り付けている。
【0042】
しかしながら、係止部13は取付部材4内を通り抜けたときに形状が復元して係止するものの、両者13,4間を密着させることが困難なため、両者13,4間の隙間を通って、インサート2の雌ねじ穴2aにコンクリートノロが侵入するおそれがある。
【0043】
これに対して取付用治具1は、凸状部10aと凹状部15cとを係合させる構成を備え、さらにインサート2を右回転させればスリーブ4内を矢印P方向に押し込まれるため、フランジ12とスリーブ本体10の開口端部10dとの間が密着する。この点でコンクリートノロの侵入が防止される効果も得られる。
【0044】
≪他端部6の取外方法≫
前述のように第4工程後、スリーブ4内には取付用治具1の他端部6が残存する。以下、スリーブ4内の他端部6を取り外す二通りの方法(第5工程)を説明する。
【0045】
(1)
図9に基づきスリーブ4から他端部6を引き抜く方法を説明する。まず、
図9(a)に示すように、他端部6の一方のスリット溝17にマイナスドライバー20の先端を差し込んで矢印T方向に回転させて、スリーブ4の凸状部10aと他端部6の凹状部15cとの係合を解除する。
【0046】
つぎに
図9(b)に示すように、マイナスドライバー20を持ち上げて、他端部6を引き抜けばよい。これにより作業効率や作業労力に影響を与えることなく、簡単に他端部6をスリーブ4内から取り外すことができる。
【0047】
(2)
図10に基づきスリーブ4から他端部6を押し込んで取り外す方法を説明する。ここでは
図10(a)に示すように、スリーブ4内に残った他端部6の破断側の端面6cからマイナスドライバー20などの工具により矢印S1方向に押し込めばよい。
【0048】
このとき凸状部10aが抜溝16経由で抜かれるため、
図10(b)中の矢印S2に示すように、スリーブ4内の他端部6は型枠3外に落下する。したがって、スリーブ4内に残った他端部6の端面6bを工具で押し込むだけで、該他端部6を簡単に取り外すことができ、この点で作業効率の改善および作業労力の軽減化に貢献することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されることなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えばスリット溝17を廃止し、第4工程後に
図10の方法で他端部6を取り外してもよい。
【0050】
また、溝部15の段差15bおよび凹状部15cを廃止し、スリーブ4の凸状部10aを溝壁15aに当てて、取付用治具1の他端部6をスリーブ4の内周に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…インサートの取付用治具
2…インサート
3…型枠
4…スリーブ
5…一端部
6…他端部
6b…端面
7…雌ねじ穴
8…雄ねじ部
10…スリーブ本体
10a…ピン(凸状部)
11…括れ部
14…摺合面(ガイド部)
15…溝部
15a…溝壁
15b…段差
15c…凹状部
16…抜溝
17…スリット溝