(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】配線・配管材固定具、配線・配管材固定具セット、および配線・配管材固定装置
(51)【国際特許分類】
F16L 3/22 20060101AFI20220111BHJP
F16L 3/12 20060101ALI20220111BHJP
F16B 2/06 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F16L3/22 A
F16L3/12 B
F16B2/06 Z
(21)【出願番号】P 2018080249
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】川村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】川端 誠規
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-220927(JP,A)
【文献】特開2010-101498(JP,A)
【文献】特開2016-211620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/22
F16L 3/12
F16B 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線・配管材を配設面に固定するための配線・配管材固定具であって、
前記配線・配管材を取り囲んで保持する保持部を備えるとともに、前記配線・配管材を挟む一方の側にあって前記保持部から延設される一方の固定部と、前記配線・配管材を挟む他方の側にあって前記保持部から延設される他方の固定部とを備え、
前記一方の固定部と前記他方の固定部とは、その固定部が前記配設面に固定されるよう、鋲打ち機から発射されて前記配設面に打ち込まれる鋲が通る固定孔を有し、
前記一方の側に、上側重合部が、前記保持部と繋がるように設けられ、
前記他方の側に、この配線・配管材固定具と並列して配置される同一形状の他の配線・配管材固定具の上側重合部が上から重なることが可能な、下側重合部が、前記保持部と繋がるように設けられ
、
前記一方の固定部と前記上側重合部とは、並んで設けられ、前記他方の固定部は、前記下側重合部を兼ねる、配線・配管材固定具。
【請求項2】
前記下側重合部を兼ねる前記他方の固定部に、前記他の配線・配管材固定具の上側重合部が上から重なったとき、その上側重合部が、前記他方の固定部の前記固定孔を覆う、請求項1に記載の配線・配管材固定具。
【請求項3】
前記一方の固定部と前記上側重合部とは、前記配線・配管材の配設方向に沿って並ぶように設けられる、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具としての、第1の配線・配管材固定具と第2の配線・配管材固定具とを備え、
前記第1の配線・配管材固定具と前記第2の配線・配管材固定具とは、各保持部の形成する取り囲み空間の大きさが異なるが、一方の固定部の固定孔と、他方の固定部の固定孔と、上側重合部と、下側重合部との相対位置は同じであって、
前記第1の配線・配管材固定具の下側重合部と前記第2の配線・配管材固定具の上側重合部とが重なるようにして、両配線・配管材固定具は、並列して配設可能である、配線・配管材固定具セット。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具と、前記鋲を発射する鋲打ち機とからなり、
前記一方の固定部の固定孔と前記他方の固定部の固定孔との間隔は、前記鋲打ち機が許容する最低鋲間隔である最低離間距離と同一もしくはそれを超える間隔であり、かつ、
この配線・配管材固定具と、同一形状の他の配線・配管材固定具とで、この配線・配管材固定具の下側重合部と他の配線・配管材固定具の上側重合部とが重なるようにして、両配線・配管材固定具が並列して配置されたとき、この配線・配管材固定具の一方の固定部の固定孔と、他の配線・配管材固定具の一方の固定部の固定孔との間隔が、前記鋲打ち機の最低離間距離と同一もしくはそれを超える間隔である、配線・配管材固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線・配管材を配設面に固定するための配線・配管材固定具、配線・配管材固定具セット、および配線・配管材固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、管などの長尺体を被取付面に固定するための長尺体保持具があった(例えば、特許文献1参照)。
図16に示すように、この長尺体保持具24は、長尺体22を保持する保持部25と、その保持部25の両端に設けられた取付部26とを備え、その取付部26には、その取付部26を被取付面21に固定するための固定素子23が挿通される挿通孔26aがあけられていた。ここで、固定素子23を、発射装置を用いて打ち込むにあたっては、両挿通孔26a、26a間に、発射装置の最小打設間隔を確保する必要があった。そこで、両挿通孔26a、26aの間隔が、この最小打設間隔に満たない場合には、延長取付具27が用いられた。この延長取付具27は、長尺体保持具24の取付部26に対して着脱自在であって、取付部26への連結端部27aとは反対側に、固定素子23が挿通される延長側挿通孔27bがあけられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の長尺体保持具24(配線・配管材固定具)にあっては、両挿通孔26a、26aの間隔が、発射装置(鋲打ち機)における最小打設間隔(最低離間距離)以上となる場合には、延長取付具27は必要ないものの、長尺体保持具24を複数並列して配置した場合には、隣り合う長尺体保持具24、24の互いに向かい合う取付部26、26にあけられた挿通孔26a、26aの間隔を、最小打設間隔以上とする必要があり、これら長尺体保持具24、24を互いに近づけることができなかった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、鋲打ち機を用いる場合であっても、隣り合う配線・配管材固定具を互いに近づけて配置することができる、配線・配管材固定具、配線・配管材固定具セット、および配線・配管材固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る配線・配管材固定具、配線・配管材固定具セット、および配線・配管材固定装置は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、配線・配管材を配設面に固定するための配線・配管材固定具であって、前記配線・配管材を取り囲んで保持する保持部を備えるとともに、前記配線・配管材を挟む一方の側にあって前記保持部から延設される一方の固定部と、前記配線・配管材を挟む他方の側にあって前記保持部から延設される他方の固定部とを備える。前記一方の固定部と前記他方の固定部とは、その固定部が前記配設面に固定されるよう、鋲打ち機から発射されて前記配設面に打ち込まれる鋲が通る固定孔を有する。また、前記一方の側に、上側重合部が、前記保持部と繋がるように設けられる。そして、前記他方の側に、この配線・配管材固定具と並列して配置される同一形状の他の配線・配管材固定具の上側重合部が上から重なることが可能な、下側重合部が、前記保持部と繋がるように設けられる。そこで、前記一方の固定部と前記上側重合部とは、並んで設けられ、前記他方の固定部は、前記下側重合部を兼ねる。
【0007】
この配線・配管材固定具によると、一方の側に上側重合部を設け、他方の側に下側重合部を設けることで、この配線・配管材固定具と、同一形状の他の配線・配管材固定具とを並列して配置した際、この配線・配管材固定具の下側重合部に他の配線・配管材固定具の上側重合部を重ねて、この配線・配管材固定具の下側重合部、ひいては他方の固定部の浮き上がりを抑えることができる。このため、この配線・配管材固定具の他方の固定部を、鋲で固定する必要がない。したがって、この他方の固定部の固定孔と、他の配線・配管材固定具の一方の固定部の固定孔との間に、鋲打ち機が許容する最低鋲間隔である最低離間距離を確保する必要がなく、この配線・配管材固定具と他の配線・配管材固定具とを互いに近づけて配置することができる。そして、他方の固定部が下側重合部を兼ねることで、この配線・配管材固定具の下側重合部に他の配線・配管材固定具の上側重合部を重ねた際、他方の固定部の浮き上がりをこの上側重合部で直接抑えることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1に記載の配線・配管材固定具において、前記下側重合部を兼ねる前記他方の固定部に、前記他の配線・配管材固定具の上側重合部が上から重なったとき、その上側重合部が、前記他方の固定部の前記固定孔を覆う。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具において、前記一方の固定部と前記上側重合部とは、前記配線・配管材の配設方向に沿って並ぶように設けられる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る配線・配管材固定具セットは、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具としての、第1の配線・配管材固定具と第2の配線・配管材固定具とを備える。ここで、前記第1の配線・配管材固定具と前記第2の配線・配管材固定具とは、各保持部の形成する取り囲み空間の大きさが異なるが、一方の固定部の固定孔と、他方の固定部の固定孔と、上側重合部と、下側重合部との相対位置は同じである。そして、前記第1の配線・配管材固定具の下側重合部と前記第2の配線・配管材固定具の上側重合部とが重なるようにして、両配線・配管材固定具は、並列して配設可能である。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る配線・配管材固定装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具と、前記鋲を発射する鋲打ち機とからなる。この配線・配管材固定装置は、前記一方の固定部の固定孔と前記他方の固定部の固定孔との間隔は、前記鋲打ち機が許容する最低鋲間隔である最低離間距離と同一もしくはそれを超える間隔である。そして、この配線・配管材固定具と、同一形状の他の配線・配管材固定具とで、この配線・配管材固定具の下側重合部と他の配線・配管材固定具の上側重合部とが重なるようにして、両配線・配管材固定具が並列して配置されたとき、この配線・配管材固定具の一方の固定部の固定孔と、他の配線・配管材固定具の一方の固定部の固定孔との間隔が、前記鋲打ち機の最低離間距離と同一もしくはそれを超える間隔である。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る配線・配管材固定具、および配線・配管材固定装置によれば、一方の側に上側重合部を設け、他方の側に下側重合部を設けて、この配線・配管材固定具の下側重合部に他の配線・配管材固定具の上側重合部を重ねることで、鋲打ち機を用いる場合であっても、隣り合う配線・配管材固定具を互いに近づけて配置することができる。
【0013】
また、配線・配管材固定具セットによれば、各保持部の形成する取り囲み空間の大きさが異なる第1の配線・配管材固定具と第2の配線・配管材固定具においても、第1の配線・配管材固定具の下側重合部に第2の配線・配管材固定具の上側重合部を重ねることで、鋲打ち機を用いる場合であっても、隣り合う第1および第2の配線・配管材固定具を互いに近づけて配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の一実施の形態の、配線・配管材固定具の斜め右上から見た斜視図である。
【
図2】同じく、配線・配管材固定具の斜め左上から見た斜視図である。
【
図3】同じく、配線・配管材固定具の斜め下から見た斜視図である。
【
図4】同じく、配線・配管材固定具の平面図である。
【
図5】同じく、
図4におけるA-A線による断面図である。
【
図6】同じく、配線・配管材固定具を二つ並列して配置する過程の斜視図である。
【
図7】同じく、配線・配管材固定具を二つ並列して配置した斜視図である。
【
図8】同じく、配線・配管材固定具を二つ並列した配置した平面図である。
【
図9】同じく、
図8におけるB-B戦による断面図である。
【
図10】同じく、配線・配管材固定具を三つ並列して配置した斜視図である。
【
図11】同じく、二つの配線・配管材固定具の内の一つを90°回動して並べた斜視図である。
【
図12】同じく、三つの配線・配管材固定具のうちの二つを順に90°回動して並べた斜視図である。
【
図13】同じく、配線・配管材固定具セットを配置する過程の斜視図である。
【
図14】同じく、配線・配管材固定具セットを配置した斜視図である。
【
図15】同じく、鋲を、固定孔を通して配設面に打ち込んだ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に係る配線・配管材固定具、配線・配管材固定具セット、および配線・配管材固定装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1~
図15は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、建物の壁、床、天井等、その他の配設面を示す。2は、前記配設面1に配設される配線・配管材(配線材または配管材)を示す。3は、釘などの固着具あるいは留め具である鋲を示す。4は、配線・配管材2を配設面1に固定するための配線・配管材固定具を示す。5は、配線・配管材固定具セットを示し、前記配線・配管材固定具4としての、第1の配線・配管材固定具401と第2の配線・配管材固定具402とを備える。また、配線・配管材固定装置は、前記配線・配管材固定具4と、前記鋲3を発射する鋲打ち機とからなる。ここで、鋲打ち機は、例えば、ガス、圧縮空気、電気、火薬等により作動するが、これらに限るものではない。
【0017】
配線・配管材固定具4は、配線・配管材2を取り囲んで保持する保持部7を備えるとともに、配線・配管材2を挟む一方の側にあって保持部7から延設される一方の固定部8と、配線・配管材2を挟む他方の側にあって保持部7から延設される他方の固定部9とを備える。そして、一方の固定部8と他方の固定部9とは、その固定部8、9が配設面1に固定されるよう、鋲打ち機から発射されて配設面1に打ち込まれる鋲3が通る固定孔8a、9aを有する。
【0018】
また、配線・配管材固定具4は、前記一方の側に、上側重合部10が、保持部7と繋がるように設けられ、前記他方の側に、この配線・配管材固定具4と並列して配置される同一形状の他の配線・配管材固定具4X(配線・配管材固定具4)の上側重合部10が上から重なることが可能な、下側重合部11が、保持部7と繋がるように設けられる(
図6参照)。
【0019】
配線・配管材固定具セット5においては、
図13および
図14に示すように、第1の配線・配管材固定具401(配線・配管材固定具4)と第2の配線・配管材固定具402(配線・配管材固定具4)とは、各保持部7の形成する取り囲み空間7aの大きさが異なるが、一方の固定部8の固定孔8aと、他方の固定部9の固定孔9aと、上側重合部10と、下側重合部11との相対位置は同じである。そして、第1の配線・配管材固定具401の下側重合部11と第2の配線・配管材固定具402の上側重合部10とが重なるようにして、両配線・配管材固定具401、402は、並列して配置可能である。
【0020】
配線・配管材固定装置においては、前記一方の固定部8の固定孔8aと、前記他方の固定部9の固定孔9aとの間隔L1は、鋲打ち機が許容する最低鋲間隔である最低離間距離と同一もしくはそれを超える間隔である(
図4、
図8参照)。そして、この配線・配管材固定具4と、同一形状の他の配線・配管材固定具4Xとで、この配線・配管材固定具4の下側重合部11と、他の配線・配管材固定具4Xの上側重合部10とが重なるようにして、両配線・配管材固定具4、4Xが並列して配置されたとき、この配線・配管材固定具4の一方の固定部8の固定孔8aと、他の配線・配管材固定具4Xの一方の固定部8の固定孔8aとの間隔L2が、鋲打ち機の最低離間距離と同一もしくはそれを超える間隔である(
図4、
図8参照)。なお、鋲打ち機の最低離間距離は、鋲打ち機によって異なるが、一般には、80mmとか、60mmである。
【0021】
具体的には、配線・配管材固定具4は、例えば、全体が合成樹脂により一体に形成される。この配線・配管材固定具4における保持部7は、配設面1側となる下方が開放し、配線・配管材2の両側方および上方を取り囲むように略逆U字状に湾曲して形成されている。そして、一方の固定部8と上側重合部10とは、配線・配管材2を挟む一方の側(つまり、保持部7を挟む一方の側)において、配線・配管材2の配設方向Pに沿って並ぶように設けられる。また、配線・配管材2を挟む他方の側(つまり、保持部7を挟む他方の側)にあっては、他方の固定部9と、下側重合部11とが設けられる。
【0022】
一方の固定部8は、保持部7の一方端から側方に板状に延設される固定部本体8bを備える。同様に、他方の固定部9は、保持部7の他方端から側方に板状に延設される固定部本体9bを備える。そして、これら一方の固定部8と他方の固定部9とは、配線・配管材2の配設方向Pにずれて位置する。ここで、一方の固定部8と他方の固定部9は、その固定部本体8b、9bから上方に突出する筒状部8c、9cと、その筒状部8c、9cを取り囲むように固定部本体8b、9bから上方に突出する突出壁8d、9dとを備える。筒状部8c、9cは、鋲打ち機から発射される鋲3をガイドし、また、発射された鋲3の衝撃を緩和するものであって、この筒状部8c、9cと固定部本体8b、9bとを貫通するようにして前記固定孔8a、9aが設けられる。そして、筒状部8c、9cには、その周面からひれ状に突出する複数の突片8e、9eが設けられており、これら突片8e、9eを含めた筒状部8c、9cが、発射された鋲3の頭部で圧潰される(
図15参照)。突出壁8d、9dは、筒状部8c、9cと同心となる略円形形状に形成されている。そこで、この突出壁8d、9dは、鋲3を発射する鋲打ち機の発射部Sの先端と係合してその先端を位置合わせする先端位置合わせ部となる(
図15参照)。
【0023】
上側重合部10は、保持部7を挟んで、他方の固定部9と対向位置する。つまり、上側重合部10と他方の固定部9とは、保持部7を挟んで、配線・配管材2の配設方向Pと直交する方向に並ぶ。この上側重合部10は、保持部7の一方端から側方に板状に延設される上側重合部本体10aと、その上側重合部本体10aから上方に膨らむ中空膨出部10bとを備える。この中空膨出部10bは、基端側が径大となり先端側が径小となった段付き筒状に形成されて、その内側が、上側重合部本体10aを貫いて下方に開口する。そして、上側重合部10(詳しくは、上側重合部本体10a)は、一方の固定部8(詳しくは、固定部本体8b)とは連続するように設けられる。そして、上側重合部本体10aが、一方の固定部8の固定部本体8bよりも上方に位置し、両者の間に段差を有する。
【0024】
下側重合部11においては、他方の固定部9が、この下側重合部11を兼ねている。そこで、他方の固定部9(下側重合部11)に、この配線・配管材固定具4と並列して配置される同一形状の他の配線・配管材固定具4Xの上側重合部10が上から重なったとき、上側重合部10の上側重合部本体10aが、他方の固定部9(下側重合部11)の固定部本体9bに密着し、上側重合部10の中空膨出部10bが、他方の固定部9(下側重合部11)の、固定孔9aと突片9eを含めた筒状部9cと突出壁9dとを覆い、また、上側重合部10の中空膨出部10bの下部から上側重合部本体10aに至る部分の内側に、他方の固定部9(下側重合部11)の突出壁9dが嵌まる。
【0025】
ところで、上側重合部10には、上側嵌合部10c(図示実施の形態においては、中空膨出部10bの下部から上側重合部本体10aに至る部分の内周面)が設けられる(
図3、
図5参照)。一方、下側重合部11には、隣り合う同一形状の他の配線・配管材固定具4Xの上側重合部10に設けられた上側嵌合部10cに嵌合する下側嵌合部11a(図示実施の形態においては、突出壁9d)が設けられて、その嵌合によって、この配線・配管材固定具4と他の配線・配管材固定具4Xとが連結される。そして、上側嵌合部10cと下側嵌合部11aとは、この配線・配管材固定具4の下側嵌合部11aと前記他の配線・配管材固定具4Xの上側嵌合部10cとが、配設面1に沿った少なくとも二つの相対的な回動位置で嵌合するよう形成される(
図7、
図10、
図11、
図12参照)。なお、前述したように、他方の固定部9が、下側重合部11を兼ねており、他方の固定部9における突出壁9d(先端位置合わせ部)は、下側嵌合部11aを兼ねている。また、
図11における符号2aは、配線・配管材2、2(詳しくは、配管材)を接続するエルボー継ぎ手を示し、
図12における符号2bは、配線・配管材2、2(詳しくは、配管材)を接続するチーズ継ぎ手(3方分岐継ぎ手)を示す。
【0026】
詳細には、上側嵌合部10cと下側嵌合部11aとは、いずれか一方(図示実施の形態においては、上側嵌合部10c)が凹多角形状に形成され、いずれか他方(図示実施の形態においては、下側嵌合部11a)が凸多角形状に形成されて、この配線・配管材固定具4の下側嵌合部11aと前記他の配線・配管材固定具4Xの上側嵌合部10cとは(つまりは、この配線・配管材固定具4と前記他の配線・配管材固定具4Xとは)、それらの凹凸嵌合により、配設面1に沿った相対的な回動位置に位置決めされる。より詳細には、上側嵌合部10cと下側嵌合部11aとは、正八角形状をしており、それらの凹凸嵌合により、この配線・配管材固定具4の下側嵌合部11aと前記他の配線・配管材固定具4Xの上側嵌合部10cとは(つまりは、この配線・配管材固定具4と前記他の配線・配管材固定具4Xとは)、配設面1に沿った45°単位の相対的な回動位置に位置決めされる。
【0027】
次に、以上の構成からなる配線・配管材固定具4、配線・配管材固定具セット5、および配線・配管材固定装置の作用効果について説明する。配線・配管材固定具4および配線・配管材固定装置にあっては、一方の側に上側重合部10を設け、他方の側に下側重合部11を設けることで、この配線・配管材固定具4と、同一形状の他の配線・配管材固定具4X(配線・配管材固定具4)とを並列して配置した際、この配線・配管材固定具4の下側重合部11に他の配線・配管材固定具4Xの上側重合部10を重ねて、この配線・配管材固定具4の下側重合部11、ひいては他方の固定部9の浮き上がりを抑えることができる。このため、この配線・配管材固定具4の他方の固定部9を、鋲3で固定する必要がない。したがって、この他方の固定部9の固定孔9aと、他の配線・配管材固定具4Xの一方の固定部8の固定孔8aとの間に、鋲打ち機が許容する最低鋲間隔である最低離間距離を確保する必要がなく、この配線・配管材固定具4と他の配線・配管材固定具4Xとを互いに近づけて配置することができる。すなわち、一方の側に上側重合部10を設け、他方の側に下側重合部11を設けて、この配線・配管材固定具4の下側重合部11に他の配線・配管材固定具4Xの上側重合部10を重ねることで、鋲打ち機を用いる場合であっても、隣り合う配線・配管材固定具4、4Xを互いに近づけて配置することができる。
【0028】
また、他方の固定部9が下側重合部11を兼ねることで、この配線・配管材固定具4の下側重合部11に他の配線・配管材固定具4Xの上側重合部10を重ねた際、他方の固定部9の浮き上がりをこの上側重合部10で直接抑えることができる。そして、他方の固定部9が下側重合部11を兼ねて、他方の固定部9に備わる突出壁9d(先端位置合わせ部)が、下側嵌合部11aを兼ねることから、この下側嵌合部11aを別途設ける必要がない。
【0029】
また、配線・配管材固定具セット5によれば、加えて、各保持部7の形成する取り囲み空間7aの大きさが異なる第1の配線・配管材固定具401(配線・配管材固定具4)と第2の配線・配管材固定具402(配線・配管材固定具4)においても、第1の配線・配管材固定具401の下側重合部11に第2の配線・配管材固定具402の上側重合部10を重ねることで、鋲打ち機を用いる場合であっても、前記した最低離間距離に関わりなく、隣り合う第1および第2の配線・配管材固定具401、402を互いに近づけて配置することができる。
【0030】
また、配線・配管材固定具4において、この配線・配管材固定具4の下側重合部11に他の配線・配管材固定具4Xの上側重合部10を重ねたとき、下側重合部11に設けられた下側嵌合部11aと上側重合部10に設けられた上側嵌合部10cとが嵌合して、この配線・配管材固定具4と他の配線・配管材固定具4Xとが連結される。ここで、この配線・配管材固定具4の下側嵌合部11aと他の配線・配管材固定具4Xの上側嵌合部10cとは、配設面1に沿った少なくとも二つの相対的な回動位置で嵌合することから、その嵌合する相対的な回動位置を選ぶことで、保持される配線・配管材2、2の互いの配設方向Pを変えることができる。すなわち、この配線・配管材固定具4の下側重合部11における下側嵌合部11aと、他の配線・配管材固定具4Xの上側重合部10における上側嵌合部10cとが、配設面1に沿った少なくとも二つの相対的な回動位置で嵌合することで、複数の配線・配管材固定具4、4Xを連結することができ、かつ、それら配線・配管材固定具4、4Xによって保持される配線・配管材2、2の互いの配設方向Pを変えることができる。
【0031】
また、例えば、
図12に示すようなチーズ継ぎ手2bにおいては、互いに径の異なる配線・配管材2,2(詳しくは、配管材)が接続されることがあるが、このような場合であっても、各保持部7の形成する取り囲み空間7aの大きさが異なる配線・配管材固定具セット5を用いて、隣り合う配線・配管材固定具4、4を互いの向きを変えて連結することで、最低離間距離を確保しながら、異なる径の配線・配管材2、2を、互いの配設方向Pを変えて保持することができる。
【0032】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、他方の固定部9は、下側重合部11を兼ねるが、兼ねることなく、他方の固定部9と下側重合部11とが個別に設けられてもよい。この場合、下側重合部11は、保持部7と直接繋がってもよく、保持部7と直接繋がることなく、他方の固定部9を介して繋がってもよい。
【0033】
また、上側重合部10は、保持部7と直接繋がっているが、保持部7と直接繋がることなく、一方の固定部8を介して繋がってもよい。
【0034】
また、一方の固定部8と上側重合部10とは、配線・配管材2の配設方向Pに沿って並ぶように設けられなくとも、配線・配管材2の配設方向Pに対して斜めの方向とか直交する方向に沿って並ぶように設けられてもよい。
【0035】
また、一方の固定部8と他方の固定部9(下側重合部11)とは、配線・配管材2の配設方向Pにずれて位置するが、ずれることなく、配設方向Pと直交する方向に並んで位置してもよい。
【0036】
また、この配線・配管材固定具4の下側嵌合部11aと、同一形状の他の配線・配管材固定具4Xの上側嵌合部10cとは、それらの凹凸嵌合によって、配設面1に沿った相対的な回動位置に位置決めされるが、例えば、下側嵌合部11aと上側嵌合部10cとを円形形状とすることで、相対的な回動位置に位置決めされることなく、任意の相対的な回動位置で嵌合してもよい。また、この嵌合は、隙間嵌めに限らず、圧入による嵌合であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 配設面
2 配線・配管材
3 鋲
4 配線・配管材固定具
4X 他の配線・配管材固定具
401 第1の配線・配管材固定具
402 第2の配線・配管材固定具
7 保持部
7a 取り囲み空間
8 一方の固定部
8a 固定孔
9 他方の固定部
9a 固定孔
10 上側重合部
11 下側重合部
L1 一方の固定部の固定孔と他方の固定部の固定孔との間隔
L2 この配線・配管材固定具の一方の固定部の固定孔と、他の配線・配管材固定具の一方の固定部の固定孔との間隔
P 配線・配管材の配設方向