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  • 特許-スプリング式タイマー 図1
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  • 特許-スプリング式タイマー 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】スプリング式タイマー
(51)【国際特許分類】
   E05F 3/12 20060101AFI20220111BHJP
   F16F 9/44 20060101ALI20220111BHJP
   E05F 3/04 20060101ALI20220111BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
E05F3/12
F16F9/44
E05F3/04
F16F9/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018098025
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019203286
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 雄太
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-042235(JP,U)
【文献】特開昭51-110835(JP,A)
【文献】特開平08-177924(JP,A)
【文献】実開昭58-041881(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 3/04
E05F 3/12
F16F 9/34
F16F 9/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドが後退限位置と前進限位置との間を軸方向に往復動自在に装着され、前記ピストンロッドが先端部から突出するアウターチューブと、
液体循環室が形成され、前記アウターチューブ内に回転自在に装着されるインナーチューブと、
前記ピストンロッドの基端部に設けられ、前記液体循環室を前側液体室と後側液体室とに仕切るピストン組立体と、
前記ピストンロッドの先端部と前記アウターチューブとの間に装着され、前記ピストンロッドに前進方向の弾性力を付勢するスプリングと、
前記アウターチューブと前記インナーチューブとの間に設けられ、前記前側液体室と前記後側液体室とを連通させるバイパス通路と、
前記インナーチューブに径方向に貫通して形成され、前記インナーチューブの回転に伴って前記バイパス通路の開度を変化させる連通孔と、
を有し、前記ピストンロッドが後退限位置から前進限位置に向けて前記スプリングの弾性力による前進速度を前記バイパス通路の開度により設定する、スプリング式タイマー。
【請求項2】
請求項1記載のスプリング式タイマーにおいて、前記ピストン組立体は前記後側液体室と前記前側液体室とを連通する開閉通路を有し、前記ピストンロッドが後退移動するときに前記開閉通路を開放し、前進移動するときに前記開閉通路を遮断する逆止弁機構を前記ピストン組立体に設けた、スプリング式タイマー。
【請求項3】
請求項1または2記載のスプリング式タイマーにおいて、円周方向に漸次深さが変化し、前記連通孔に開口する偏心溝を前記インナーチューブに形成し、前記インナーチューブの回転により前記連通孔の開度を無段階に変更可能とした、スプリング式タイマー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のスプリング式タイマーにおいて、前記液体循環室に連通する液体貯留室を、前記インナーチューブの基端部内に装着されたシールピストンの前端面と、前記インナーチューブとにより形成する、スプリング式タイマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンロッドの後退移動によりスプリングに蓄えられた弾性力により、ロッドを前進移動させる際の前進速度を調整するようにしたスプリング式タイマーに関する。
【背景技術】
【0002】
タイマーとして使用される弁機構としては、特許文献1に記載されるように、液体が封入されたシリンダと、貫通孔が設けられたピストンとを備えたものがある。ピストンには貫通孔を開閉する弁部材が設けられ、ピストンロッドを下死点に向けて押し込み移動させるときには、下側の液体は貫通孔等を通ってピストンの上側に流れる。これに対し、ピストンロッドに対する押圧力を解除すると、ピストンにはスプリングにより上方向の弾性力が加わるが、弁部材により貫通孔が閉じられてピストンロッドの上昇速度は低速となる。
【0003】
この弁機構においては、ピストンロッドが上死点に近づくと、高速復帰溝にも液体を流すことにより、上死点附近のスイッチを作動させるようにしているが、ピストンロッドを下死点位置から上死点位置に復帰させる時間を変化させることはできない。
【0004】
一方、開放された建造物のドアに閉じる方向の操作力を加えるために、特許文献2に記載されるガスばねが開発されている。このガスばねは、管状本体と、この管状本体の先端部から突出するシャフトとを有している。管状本体の内部の流体室に組み込まれた第1のピストン組立体がシャフトの内方端に取り付けられ、第1のピストン組立体と管状本体の基端部との間には、第2のピストン組立体が移動自在に配置されている。流体室には液体が充填され、第2のピストン組立体と管状本体との間の小室にはガスが充填されている。
【0005】
ガスばねの管状本体の基端部は建造物とドアの一方に取り付けられ、シャフトの先端部は建造物とドアの他方に取り付けられる。ドアを開けるときには、内部のガス圧に抗してシャフトが管状本体の内部に押し込まれる。ガスの圧力によりシャフトが前進駆動されることにより、ドアの閉鎖動作が行われる。シャフトが前進駆動されるときの第1のピストン組立体を通過する液体の流量により、ドアの閉塞速度は設定される。このガスばねを使用すると、ドアが開放された後に一定の時間をかけて、ドアを閉じるというタイマーとして利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭58-41881号公報
【文献】特開平8-177924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載のように、シャフトの押し込み動作が行われた後に、シャフトをゆっくりと前進動作させると、ドアを一定時間かけて、ゆっくりと自動的に閉鎖することができる。したがって、このようなタイマーを使用すると、第1の位置から第2の位置に人為的に操作される操作部材を、操作部材に対する操作が完了した後に、一定時間をかけて、その操作部材を第2の位置から第1の位置に戻すことができる。例えば、水道水等の液体の出口部分つまり蛇口には、液体の流れの開閉や流量を調整するために操作部材としての水栓が設けられている。公共施設のように、不特定人に使用される水栓には、手動操作で水栓が開かれた後に、一定時間をかけて水栓を自動的に閉じるタイマーの開発が望まれている。さらに、不特定人に使用されるシャワー設備においては、使用者がシャワーヘッドから温水を吐出させてから、一定時間が経過すると、温水の吐出停止を自動的に行うためのタイマーの開発が望まれている。
【0008】
このように、部材を戻す動作をするための機械的なタイマーとしては、その用途に応じて戻し動作が完了するまでの時間が広い範囲にまで及んでおり、同種のタイマーを複数の用途に使用するには、戻し動作時間を広い範囲で調整できるようにする必要がある。しかも、上述したように、水栓やシャワー設備に使用されるタイマーとしては、ドアの閉鎖用のタイマーよりも小型化しなければ、使用することができず、さらに、耐久性に優れ、頻繁なメンテナンス作業を不要とする必要がある。
【0009】
本発明の目的は、操作部材を戻し動作するための小型のスプリング式タイマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のスプリング式タイマーは、ピストンロッドが後退限位置と前進限位置との間を軸方向に往復動自在に装着され、前記ピストンロッドが先端部から突出するアウターチューブと、液体循環室が形成され、前記アウターチューブ内に回転自在に装着されるインナーチューブと、前記ピストンロッドの基端部に設けられ、前記液体循環室を前側液体室と後側液体室とに仕切るピストン組立体と、前記ピストンロッドの先端部と前記アウターチューブとの間に装着され、前記ピストンロッドに前進方向の弾性力を付勢するスプリングと、前記アウターチューブと前記インナーチューブとの間に設けられ、前記前側液体室と前記後側液体室とを連通させるバイパス通路と、前記インナーチューブに径方向に貫通して形成され、前記インナーチューブの回転に伴って前記バイパス通路の開度を変化させる連通孔と、を有し、前記ピストンロッドが後退限位置から前進限位置に向けて前記スプリングの弾性力による前進速度を前記バイパス通路の開度により設定する。
【発明の効果】
【0011】
ピストンロッドを往復動自在に収容するアウターチューブの内部には、インナーチューブが組み込まれ、インナーチューブ内に形成された液体循環室の内部には、ピストンロッドに設けられたピストン組立体が装着されており、インナーチューブの内部にはスプリングが設けられていないので、アウターチューブを小径とすることができ、スプリング式タイマーを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態であるスプリング式タイマーを示す縦断面図である。
図2図1に示されたインナーチューブとエンドチューブの分解平面図である。
図3図2に示されたインナーチューブとエンドチューブとを組み立てた状態を示す縦断面図である。
図4】(A)は図3におけるA-A線断面図であり、(B)はインナーチューブを(A)に示した状態から90度回転させた状態を示す断面図であり、(C)は変形例の同様の部分を示す断面図である。
図5】ピストンロッドを引っ込めた状態におけるスプリング式タイマーの縦断面図である。
図6】ピストンロッドが突出している状態におけるスプリング式タイマーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示されるように、スプリング式タイマー10は段付きのアウターチューブ11を有している。アウターチューブ11は、ロッドカバー部12が設けられた先端部13と、雄ねじ14が設けられ先端部よりも大径の中央部15と、基端部16とを有している。先端部13内に装着された軸受部材17によりピストンロッド18が軸方向に往復動自在に支持され、ピストンロッド18の先端の突出端部がロッドカバー部12に設けられた貫通孔19から突出している。ピストンロッド18は、図1に示される前進限位置から図5に示される後退限位置の間を移動する。この明細書においては、ピストンロッド18が突出する方向の端部を各部材の先端部とし、反対側を基端部とする。また、ピストンロッド18が突出する方向を前進とし、反対方向を後退とする。
【0014】
アウターチューブ11の基端部16は開口部を有し、開口部からインナーチューブ21とエンドチューブ22がアウターチューブ11の内部に挿入される。エンドチューブ22の中央部22aの外周面に設けられた雄ねじ23は、アウターチューブ11の基端部16の内周面に設けられた雌ねじ24にねじ結合され、エンドチューブ22はアウターチューブ11に締結される。インナーチューブ21はエンドチューブ22の内側に回転自在に装着されるとともに、インナーチューブ21の外周面は、エンドチューブ22の内周面に接触する。インナーチューブ21の基端部25はエンドチューブ22よりも突出しており、操作ノブ26が基端部25にピン27により取り付けられている。すなわち、操作ノブ26は、スプリング式タイマー10の基端部に設けられている。ピン27が嵌合される嵌合孔27aが、図2に示されように、インナーチューブ21の基端部25に形成されている。操作ノブ26を操作することによりインナーチューブ21が回転され、所定の回転角度に設定される。インナーチューブ21の回転角度を設定した後、インナーチューブ21が回転しないようにするために、止めねじ28がエンドチューブ22に取り付けられている。止めねじ28は、エンドチューブ22に形成されたねじ孔28aにねじ結合される。
【0015】
ピストンロッド18には、軸受部材17の後端面17aに突き当てられる突起部29が設けられている。突起部29が後端面17aに突き当てられると、ピストンロッド18は前進限位置となる。ばね受けキャップ31がピストンロッド18の先端部に止具32により取り付けられている。すなわち、ばね受けキャップ31は、スプリング式タイマー10の先端部に設けられている。ピストンロッド18に前進方向の弾性力を付勢するために、コイルスプリング33がピストンロッド18の先端部とアウターチューブ11との間に装着されている。コイルスプリング33の一端は、ばね受けキャップ31に接触し、他端はアウターチューブ11の段差部34に接触している。
【0016】
ピストン組立体35がピストンロッド18の基端部に設けられている。ピストン組立体35は、インナーチューブ21の先端部内に設けられた液体循環室36内に装着され、軸方向に移動自在である。液体循環室36内には、非圧縮性の作動媒体液として油が充填される。液体循環室36はピストン組立体35の前面側の前側液体室36aと、後面側の後側液体室36bとにピストン組立体35により仕切られている。ピストン組立体35は、ピストンロッド18の基端部に装着される環状ピストン37を有している。環状ピストン37の内径はピストンロッド18の外径よりも大きく、開閉通路38が、環状ピストン37とピストンロッド18との間に形成されている。ナットからなるストッパ41がピストンロッド18に形成された雄ねじ42にねじ結合され、環状ピストン37は突起部29とストッパ41との間を軸方向に移動自在である。
【0017】
ストッパ41の外径は環状ピストン37の内径よりも大径である。環状ピストン37の内径よりも径方向寸法が小さい平坦な切欠き部29aが突起部29に形成されている。したがって、ピストンロッド18をアウターチューブ11内に引っ込めるように後退移動させるときには、図5に示されるように、環状ピストン37の前端面は突起部29に接触し、環状ピストン37の後端面とストッパ41との間の隙間43は広がる。これにより、開閉通路38は開放される。一方、ピストンロッド18の先端部をアウターチューブ11から突出させる方向に前進移動させると、図6に示されるように、環状ピストン37はストッパ41に接触し、隙間43と開閉通路38は閉じられる。このように、環状ピストン37とストッパ41とにより逆止弁機構44が形成されている。
【0018】
環状突起45がインナーチューブ21の内部に設けられている。この環状突起45の基端部側のシリンダ孔46にはシールピストン47が軸方向に摺動自在に組み込まれている。シール部材48がシールピストン47に装着されている。シールピストン47の前面側とシリンダ孔46とにより液体貯留室49が形成され、液体貯留室49は環状突起45に設けられた連通孔50により液体循環室36の後側液体室36bに連通している。したがって、図1に示されるように、ピストンロッド18が前進限位置まで突出していた状態から、図5に示されるように、後退限位置まで移動すると、ピストンロッド18のうち液体循環室36内に入り込んだ容積に相当する容積の液体が液体貯留室49に入り込む。
【0019】
アウターチューブ11の中央部15の内径は、インナーチューブ21の先端部の外径よりも大きく、バイパス通路51がアウターチューブ11とインナーチューブ21の間に形成されている。図2に示されるように、半円形状の切欠き部52がインナーチューブ21の先端面に設けられており、図1に示されるように、バイパス通路51は切欠き部52を介して前側液体室36aに連通している。
【0020】
オリフィス孔53がエンドチューブ22の先端部22bに設けられ、オリフィス孔53はエンドチューブ22の先端部の外周面と、アウターチューブ11の内周面との間に形成される隙間51aに開口している。オリフィス孔53とほぼ同一内径の連通孔54がインナーチューブ21に形成され、連通孔54の軸方向位置と、オリフィス孔53の軸方向位置は、ほぼ同じである。図2に示されるように、連通孔54を円周方向に横切るように、偏心溝55がインナーチューブ21の外周面に形成されている。偏心溝55は、図4(A)、(B)に示されるように、連通孔54の部分が最も深く、連通孔54を中心に円周方向左右両側に向けて漸次深さが浅くなるように変化している。図1および図4(A)、(B)に示されるように、隙間51a、オリフィス孔53および偏心溝55がバイパス通路51の一部を形成しており、バイパス通路51は、連通孔54を介して後側液体室36bに連通している。
【0021】
したがって、図4(A)に示されるように、連通孔54がオリフィス孔53に向き合っているときには、連通孔54に連通するバイパス通路51の開度は最大となる。この状態から、操作ノブ26によりインナーチューブ21を左右いずれか一方に回転させると、バイパス通路51の開度、つまり連通孔54とオリフィス孔53との連通開度が無段階に小さくなる。図4(B)は、インナーチューブ21を回転角度θとして90度回転させた状態を示しており、この場合には、図4(A)に示される場合よりも、オリフィス孔53の内側開口面と偏心溝55の底面との間の間隔が小さくなっている。
【0022】
このように、インナーチューブ21の回転に伴って連通孔54とオリフィス孔53との連通開度を変化させると、コイルスプリング33に蓄えられた弾性力によって、ピストンロッド18が後退限位置から前進限位置に前進移動させるときの、前進速度を変化させることができる。つまり、連通開度を所定の開度に設定すると、ピストンロッド18が後退限位置から前進限位置まで移動する時間を設定することができる。
【0023】
図4(C)は図4(A)、(B)と同様の部分を示す断面図であり、連通孔54は偏心溝55の一端部における最も深い部分に連通されており、インナーチューブ21を図4(C)において、左方向に回転させると、偏心溝55の溝が浅くなる。約330度程度回転させると、バイパス通路51と連通孔54との連通は遮断される。このように、図4(C)に示された形態においては、図4(A)に示した場合よりも、細かく開度設定を行うことができる。
【0024】
シールピストン47には液体注入孔65が設けられており、インナーチューブ21内に所定量の液体が充填された後に、液体注入孔65はプラグ66により閉じられる。スプリング式タイマー10の内部に充填された液体が外部に漏出するのを防止するために、シール部材61がアウターチューブ11のロッドカバー部12と軸受部材17との間に装着される。シール部材62がアウターチューブ11とエンドチューブ22との間に装着され、シール部材63がエンドチューブ22とインナーチューブ21との間に装着される。
【0025】
このスプリング式タイマー10は、例えば、タンク内に収容された液体を外部に吐出する止め栓を開閉する機械式スイッチのような被操作部材を閉鎖操作するために使用することができる。また、このスプリング式タイマー10は、水道水の水栓を自動的に閉鎖するために使用することができ、さらには、開放された建造物のドアに閉じる方向の操作力を加えるためにも使用することができる。
【0026】
このスプリング式タイマー10が、上述のように、例えば、止め栓を開閉する機械式スイッチを備える装置に、機械式スイッチを閉塞操作するために組み込まれるときには、スプリング式タイマー10は、雄ねじ14によって、その装置に取り付けられる。さらにピストンロッド18の先端もしくはばね受けキャップ31の先端面は機械式スイッチである被操作部材に接触する。図1に示されるように、ピストンロッド18が前進限位置となっている状態のもとで、タンク内の液体を外部に排出するときには、人手により操作部材である機械式スイッチにより止め栓が開放操作される。機械式スイッチの操作によってピストンロッド18が後退する方向に押し込まれる。ピストンロッド18が押し込まれると、後側液体室36b内の液体は、隙間43、開閉通路38を通って前側液体室36aに流れ、さらに、バイパス通路51を通って前側液体室36aに流れる。このときには、液体循環室36内の液体の流れには大きな流通抵抗が加わらないので、容易にピストンロッド18をコイルスプリング33の弾性力に抗して後退移動させることができる。これにより、止め栓は全開状態に操作される。図5は、ピストンロッド18が後退限位置まで押し込み操作された状態を示す。
【0027】
機械式スイッチから手が離れると、ピストンロッド18はコイルスプリング33による前進方向の弾性力により突出する方向に駆動され、操作部材である機械式スイッチは閉じる方向に駆動される。このときには、図6に示されるように、環状ピストン37はストッパ41に当接して、隙間43が閉じられる。このため、前側液体室36a内の液体は、バイパス通路51のみを通って後側液体室36bに向けて流れるので、ピストンロッド18の前進速度は、ピストンロッド18を後退させるときよりも、低下する。したがって、止め栓が開かれてから閉じられまでの戻し動作時間は、バイパス通路51を通って前側液体室36aから後側液体室36bに流入する液体の流速により設定される。この時間は、操作ノブ26によりインナーチューブ21を回転させて、バイパス通路51の開度を調整することにより、調整される。バイパス通路51の開度を調整した後、止めねじ28を締めることで、インナーチューブ21の回転を防ぐことができる。操作ノブ26が、スプリング式タイマー10の基端部に設けられているので、雄ねじ14によって、スプリング式タイマー10が、装置内に取り付けられてアウターチューブ11が回転できない状態でも、操作ノブ26を回転操作することができる。
【0028】
ピストンロッド18を前進移動させる操作は、ピストンロッド18が後退限位置まで操作されてから行うようにしても良く、後退限位置の手前の位置で前進移動させるようにしても良く、いずれの場合にもピストンロッド18の前進限位置までの前進移動時間が連通孔54の開度により設定される。
【0029】
このスプリング式タイマー10においては、インナーチューブ21の内部にはスプリングが設けられておらず、液体循環室36を前後に仕切るピストン組立体35と、液体循環室36に連通するシールピストンとが設けられているのみであり、コイルスプリング33はピストンロッドの突出端側に設けられており、外径を小さくすることができる。これにより、スプリング式タイマー10を小型化することが可能となる。特許文献1のように、内部に可撓性被膜を用いることがなく、耐久性に優れたスプリング式タイマー10とすることができ、頻繁のメンテナンスも不要となる。
【0030】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。このスプリング式タイマーは、水栓の戻し用のみならず、シャワー設備においてシャワーヘッドからの温水の吐出停止のタイマーとして、さらには機械的な操作部材の操作時間の設定のためにも適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 スプリング式タイマー
11 アウターチューブ
12 ロッドカバー
15 中央部
16 基端部
18 ピストンロッド
21 インナーチューブ
22 エンドチューブ
26 操作ノブ
29 突起部
33 コイルスプリング
35 ピストン組立体
36 液体循環室
36a 前側液体室
36b 後側液体室
37 環状ピストン
38 開閉通路
41 ストッパ
43 隙間
44 逆止弁機構
45 環状突起
46 シリンダ孔
47 シールピストン
49 液体貯留室
50 連通孔
51 バイパス通路
52 切欠き部
53 オリフィス孔
54 連通孔
55 偏心溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6