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特許6998839エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20220111BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20220111BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220111BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20220111BHJP
   C30B 25/16 20060101ALI20220111BHJP
   C30B 25/14 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/24
C23C16/455
C30B29/06 504C
C30B25/16
C30B25/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018119767
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020004760
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】山本 純
(72)【発明者】
【氏名】松田 信也
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-179466(JP,A)
【文献】特開平11-045861(JP,A)
【文献】特開2009-004424(JP,A)
【文献】特開2012-069559(JP,A)
【文献】特開2013-098271(JP,A)
【文献】特許第5343162(JP,B1)
【文献】特開2007-326761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/24
C23C 16/455
C30B 29/06
C30B 25/16
C30B 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハが載置されるサセプタを境に上部空間と下部空間とに区画され、前記上部空間と下部空間とが所定の隙間を介して連通される反応炉内において、前記シリコンウェーハの表面に、エピタキシャル膜を形成するエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法であって、
前記反応炉内の上部空間には、シリコンウェーハの上面に沿って横方向に流れるプロセスガスの気流を形成しつつ、前記下部空間には、前記サセプタの下方から該サセプタに向かって上方へ流れるメインパージガスの気流を形成し、
前記上部空間に流れるプロセスガスの流量を100とした場合、前記下部空間を流れるメインパージガス流量の比を1.0~1.5とし、
少なくとも前記上部空間の気圧を大気圧±0.2kPa内に制御することを特徴とするエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記サセプタの外周に沿って配置された環状のプリヒートリングの内周縁部と、前記サセプタの外周縁部との間に前記隙間が形成され、
前記サセプタの高さを前記プリヒートリングの高さの+0mm~-3mm以内に設定することを特徴とする請求項1に記載されたエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記反応炉におけるシリコンウェーハの搬入出ゲートとなるスリットから、前記下部空間に流れるスリットパージガスの気流を形成し、
前記上部空間に流れるプロセスガスの流量を100とした場合、前記下部空間を流れる前記メインパージガス及び前記スリットパージガスの流量の比を20.5以下とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルシリコンウェーハの製造方法に関し、特に、形成したエピタキシャル膜中のカーボン濃度(強度)を低減することのできるエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子と正孔のキャリアをデバイスの駆動原理として利用するIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)系のデバイスにあっては、エピタキシャル膜中における低カーボン濃度化への要求が高い。即ち、エピタキシャルシリコンウェーハを製造するにあたり、エピタキシャル膜中へのカーボン成分の取り込み抑制は重要な要求事項となっている。
【0003】
エピタキシャル膜中のカーボン濃度が高くなる原因としては、エピタキシャル膜の形成途中において、プロセスガスがチャンバ内の部材に接することによりカーボン成分を含み、これがエピタキシャル膜中に取り込まれることが考えられる。
更には、ウェーハを支持するサセプタの下方を流れるパージガスが炉内部材に触れることによりカーボン成分を含み、それがサセプタ上方まで巻き上がることによってウェーハの成膜成分にカーボンが取り入れられるものと考えられている。
即ち、炉内のガス流の制御が、エピタキシャル膜中のカーボン濃度に大きく影響するといえる。
【0004】
エピタキシャル膜を形成するにあたり、チャンバ内のガス流を制御する試みとしては、例えば特許文献1に開示された気相成長方法がある。特許文献1に開示される気相成長方法にあっては、図6に示すように、プロセスガスのガス導入口201及びガス排出口202が形成された反応炉200内において、サセプタ205に載置されたウェーハW上にエピタキシャル膜を形成する際に、サセプタ205表面側に沿ってプロセスガスを導入しつつ、サセプタ205の裏面側に、サセプタ205を支持する回転軸206に沿うようにパージガスを導入する。
【0005】
そして、サセプタ表面側のプロセスガスはサセプタ表面側ガス排出口202から排出し、サセプタ裏面側のパージガスは、サセプタ裏面側に備えられたパージガス排出口207から排出する。これにより、サセプタ表面側と裏面側とでの圧力差が無い状態とされる。
サセプタ205の周縁部には、サセプタ205を境とする上下空間を連通する隙間208が形成されているが、圧力差に基づくガス流が制限され、殆ど生じないものとなる。したがって、パージガスが上部空間に流出し、パージガスによるエピタキシャル形成膜の汚染を無くすことができる。
【0006】
このようにサセプタ205によりチャンバ内の空間が上下に分割された構成とすれば、チャンバ内のガス流の制御がしやすく、ウェーハW上に形成するエピタキシャル膜中に含まれるカーボン濃度を制御しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-326761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしなら、特許文献1に開示された気相成長方法にあっては、サセプタ上方を流れるプロセスガスと、サセプタ下方を流れるパージガスとの気流のガスバランスについて考慮されていない。
そのため、プロセスガスの流量に対するパージガスの流量比が所定値より大きい場合には、前記隙間208より上部空間へのパージガスの流れ込みが多くなり、カーボン成分を含む雰囲気の巻き上げが生じる虞があった。その結果、ウェーハWに形成するエピタキシャル膜中のカーボン濃度が高くなるという課題があった
【0009】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、シリコン単結晶基板上にエピタキシャル膜を形成するエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法において、前記エピタキシャル膜中のカーボン濃度を低減することのできるエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係るエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法は、シリコンウェーハが載置されるサセプタを境に上部空間と下部空間とに区画され、前記上部空間と下部空間とが所定の隙間を介して連通される反応炉内において、前記シリコンウェーハの表面に、エピタキシャル膜を形成するエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法であって、前記反応炉内の上部空間には、シリコンウェーハの上面に沿って横方向に流れるプロセスガスの気流を形成しつつ、前記下部空間には、前記サセプタの下方から該サセプタに向かって上方へ流れるメインパージガスの気流を形成し、前記上部空間に流れるプロセスガスの流量を100とした場合、前記下部空間を流れるメインパージガス流量の比を1.0~1.5とし、少なくとも前記上部空間の気圧を大気圧±0.2kPa内に制御することに特徴を有する。
尚、前記サセプタの外周に沿って配置された環状のプリヒートリングの内周縁部と、前記サセプタの外周縁部との間に前記隙間が形成され、前記サセプタの高さを前記プリヒートリングの高さの+0mm~-3mm以内に設定することが望ましい。
また、前記反応炉におけるシリコンウェーハの搬入出ゲートとなるスリットから、前記下部空間に流れるスリットパージガスの気流を形成し、前記上部空間に流れるプロセスガスの流量を100とした場合、前記下部空間を流れる前記メインパージガス及び前記スリットパージガスの流量の比を20.5以下とすることが望ましい。
【0011】
このような構成によれば、反応炉の上部空間を流れるプロセスガスの流量と、下部空間を流れるパージガスの流量との比率を制御することにより、カーボン雰囲気の巻き上げを抑制し、エピタキシャル膜中のカーボン濃度を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリコン単結晶基板上にエピタキシャル膜を形成するエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法において、前記エピタキシャル膜中のカーボン濃度を低減することのできるエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法を適用可能なCVD(化学気相成長)装置の平面図である。
図2図2は、図1の一プロセスチャンバのB-B矢視断面図である。
図3図3は、図1の一プロセスチャンバのA-A矢視断面図である。
図4図4は、本発明に係る実施例及び比較例の結果を示す表である。
図5図5は、本発明に係る他の実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
図6図6は、従来の化学気相成長方法が実施されるプロセスチャンバの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法について説明する。図1は、本発明に係るエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法を適用可能なCVD(化学気相成長)装置の平面図である。また、図2は、図1の一プロセスチャンバのB-B矢視断面図であり、図3は、A-A矢視断面図である。
【0015】
図1に示すようにCVD装置100は、複数のウェーハを一時的に保持するバッファチャンバ101と、バッファチャンバ101の外周に沿って配置された複数のプロセスチャンバ102A~102Cとを備える。
更に、CVD装置100は、バッファチャンバ101の外周側に配置された2基のロードロックチャンバ103A、103Bと、1基の冷却チャンバ104とを備える。
【0016】
バッファチャンバ101は、その中に搬送ロボット101aを有する。この搬送ロボット101aは、ロードロックチャンバ103A、103Bとプロセスチャンバ102A~102Cとの間でウェーハWを搬送する。
【0017】
前記ロードロックチャンバ103A、又は103Bは、クリーンルーム雰囲気と該ロードロックチャンバ103A,103Bから先の装置内雰囲気とを切り分けるために設けられている。
即ち、クリーンルーム内の図示しないウェーハ搬送コンテナからウェーハWがロードロックチャンバ103A、又は103Bに搬入されると、チャンバ内は一旦減圧され、Nガスによりパージされる。そして、チャンバ内が常圧になった後、搬送ロボット101aによりプロセスチャンバ102A~102Cのいずれかに搬入されるようになっている。
尚、前記冷却チャンバ104は、ウェーハWを搬送する間にこれを冷却するために使用される。
【0018】
図2図3に示すように、各プロセスチャンバ102A~102Cは、その内部にエピタキシャル膜形成室2(以下、単に膜形成室2とも呼ぶ)を有する。この膜形成室2は、円板状の天井部3とすり鉢状の底部4とが、それらの周縁部を保持フレーム5によって支持されて形成された空間である。前記天井部3及び底部4は、例えば石英により形成され、チャンバ上方及び下方に配置されたハロゲンランプ(図示せず)により、膜形成室2内部に載置されたシリコンウェーハ基板Wが加熱されるようになっている。
【0019】
前記膜形成室2内には、シリコンウェーハ基板Wが載置されるサセプタ6が配置される。
このサセプタ6は、載置されたシリコンウェーハ基板Wとともに回転すべく、回転軸7により下方から支持されている。膜形成室2の空間は、サセプタ6を境として上下に略二分され、上部空間2aと下部空間2bとが形成されている。
前記のようにサセプタ6上にシリコンウェーハ基板Wが載置され、このシリコンウェーハ基板Wの上面が主表面としてのエピタキシャル膜の形成面となる。
【0020】
図2に示すように保持フレーム5には、サセプタ6の上方、即ち上部空間2aにプロセスガスを導入するためのガス導入口5aと、これに対向する反対側に形成されたガス排気口5bとが形成されている。
前記ガス導入口5aからは、膜形成室2内にSiHClやSiHClなどのSiソースガス(原料ガス)を水素ガス(キャリアガス)で希釈し、それにドーパントを微量に配合したプロセスガスが、シリコンウェーハ基板Wの表面に沿って横方向に流れるよう供給される。この供給されたプロセスガスは、シリコンウェーハ基板Wの表面を通過して、エピタキシャル膜の形成後、ガス排出口5bより装置外に排出される。
【0021】
また、保持フレーム5の内周側には、円環状のプリヒートリング11が取り付けられ、その内周縁部から所定の隙間10を空けて前記サセプタ6が配置されている。即ち、サセプタ6は、プリヒートリング11によって周囲を囲まれている。より詳細には、プリヒートリング11の内周縁部から0mm~-3mmの高さにサセプタ6の周縁部が位置するように配置され、これにより隙間10の寸法が決定される。また、このようにプリヒートリング11とサセプタ6とに高低差を設けることにより、プロセスガスの気流の乱れを抑制する効果が得られる。また、前記隙間10によりサセプタ6は回転自在であり、前記隙間10がサセプタ6の上部空間2aと下部空間2bとを連通する連通路となる。
【0022】
また、下部空間2bにおいては、パージガスである水素(H)が、回転軸7の下方から導入され、サセプタ6に向かって上方に流れ、底部4のすり鉢のような拡がりに沿って広がり、回転軸7やサセプタ6の回転により一部は渦を巻くように流れる。このパージガスは前記隙間10を通って上部空間2aに流れ、ガス排出口5bより排出される。
【0023】
また、図3に示すようにバッファチャンバ101との連結部ゲートには、スリット12が形成され、このスリット12から下部空間2bに向かってパージガスが流される。これは、スリット12にプロセスガスが入り込み、スリット12にダメージを与えることを防止するためである。
【0024】
続いて、このように構成されたCVD装置100により、シリコンウェーハ基板Wに対しエピキシャル膜を形成する方法について一連の流れに沿って説明する。
まず、図示しないウェーハ搬送コンテナから例えばロードロックチャンバ103Aにシリコンウェーハ基板Wが搬入されると、チャンバ内は一旦減圧され、Nガスによりパージされる。
【0025】
次いで、ロードロックチャンバ103A内が常圧になると、バッファチャンバ101の搬送ロボット101aがロードロックチャンバ103AからウェーハWを受け取り、これを例えばプロセスチャンバ102Bのサセプタ6上に載置する。
プロセスチャンバ102Bでは減圧された膜形成室2が形成される。ここで、上部空間2aの気圧は、大気圧±0.2kPaの範囲に制御される。これは、カーボン雰囲気の巻き上げの要因となるチャンバ内のプロセスガスの流れの乱れを抑制するためである。
そして、ガス導入口5aからは、所定の流量(30slm~60slm)でプロセスガスが導入され、これがウェーハW上面に平行に流れてガス排出口5bから排出される。
【0026】
一方、下部空間2bにおいては、パージガスが、回転軸7の下方の導入口(図示せず)から導入される。導入されたパージガス(メインパージガスと呼ぶ)は、サセプタ6に向かって流れ、底部4のすり鉢状の拡がりに沿って広がる。そして、プリヒートリング11とサセプタ6との間の隙間10を通って上部空間2aに流れ、ガス排出口5bより排出される。
【0027】
ここで、上部空間2aを流れるプロセスガスの流量を100とした場合、下部空間2bを流れるパージガス流量の比は、1.0~1.5となるよう制御される。これは、パージガス流量の比が1.0未満の場合、チャンバ内が金属汚染される虞があり、1.5を超える場合、カーボン雰囲気の巻き上げが生じる虞があるためである。
【0028】
また、保持フレーム5とバッファチャンバ101との連結部ゲートに形成されたスリット12からは、下部空間2bに向かって所定流量のパージガス(スリットパージガスと呼ぶ)が流される。
ここで、上部空間2aを流れるプロセスガスの流量を100とした場合、スリットパージガスとメインパージガスとによる下部空間2bにおける流量は20.5以下となされる。それにより、サセプタ表裏界面領域における圧力バランスを、上部空間2aの気圧>下部空間2bの気圧とすることができ、それにより上部空間2aへのカーボン雰囲気の巻き上げを抑制することができる。
【0029】
このようにガスの流量制御がなされることによりウェーハWの表面には、カーボン濃度の低く制御されたエピタキシャル膜が形成される。
【0030】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、シリコンウェーハ基板Wを載置するサセプタによりチャンバ内が上部空間2aと下部空間2bとに略分割されたCVD装置において、上部空間2aを流れるプロセスガスの流量と、下部空間2bを流れるパージガスの流量との比率を制御することにより、カーボン雰囲気の巻き上げを抑制し、エピタキシャル膜中のカーボン濃度を低減することができる。
【実施例
【0031】
本発明に係るエピタキシャルシリコンウェーハの製造方法について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に基づき以下の実験を行った。
【0032】
(実験1)
実験1では、装置構成として図1乃至図3に示したCVD装置を用い、
(1)チャンバ内上部空間におけるプロセスガスの流量を100とした場合の下部空間におけるメインパージガス流量の比率、
(2)チャンバ内気圧(炉内圧)、
(3)プリヒートリング高さに対するサセプタ高さ、
(4)チャンバ内上部空間におけるプロセスガスの流量を100とした場合の下部空間におけるメインパージガス及びスリットパージガスの流量の比率、
のそれぞれの好ましい範囲を規定するために、実験で評価を行った。具体的な評価項目としては、炉内金属汚染、カーボン雰囲気の巻き上げ、プロセスガス流の乱れ、の3点である。
【0033】
図4の表に、実施例1~13、及び比較例1~14の条件と結果を示す。図4の表において、炉内金属汚染は、プロセス処理後ウェーハのライフタイム値を測定し、安定して基準値合格を○、基準値同等、時折不合格値が出る場合を△、基準値不合格を×とした。また、カーボン雰囲気巻き上げは、プロセス処理後ウェーハのカーボン強度を測定し、安定して基準値合格を○、基準値同等、時折不合格値が出る場合を△、基準値不合格を×とした。また、プロセスガス流の乱れは、プロセス処理後ウェーハの膜厚分布を測定し、安定して基準値合格を○、基準値同等、時折不合格値が出る場合を△、基準値不合格を×とした。
【0034】
図4の表に示すように、(1)チャンバ内上部空間におけるプロセスガスの流量を100とした場合の下部空間におけるメインパージガス流量の比率は、1.0~1.5の範囲が好ましく、(2)チャンバ内気圧(炉内圧)は、大気圧±0.2kPaの範囲が好ましく、(3)プリヒートリング高さに対するサセプタ高さは、0~-3mmの範囲が好ましく、(4)チャンバ内上部空間におけるプロセスガスの流量を100とした場合の下部空間におけるメインパージガス及びスリットパージガスの流量の比率は、1.0~20.5の範囲が好ましいことを確認した。
【0035】
(実験2)
実験2では、実験1の結果により規定される好ましい条件の下、チャンバ内下部空間のパージ流量に対するエピタキシャル膜中のPLカーボン濃度について評価を行った。
実施例14では、チャンバ内上部空間におけるプロセスガスの流量を100とした場合の下部空間におけるメインパージガス流量の比率を1.25(流量は0.5slm)とした。また、チャンバ内気圧(炉内圧)は、大気圧±0.2kPaの範とし、プリヒートリング高さに対するサセプタ高さは、0~-3mmの範囲内とした。これらの条件下で、ウェーハ上にエピタキシャル膜を形成し、PL(フォトルミネッセンス)測定法によりカーボン強度を測定した。
【0036】
一方、比較例15では、チャンバ内上部空間におけるプロセスガスの流量を100とした場合の下部空間におけるメインパージガス流量の比率を2.5(流量は1slm)とした。その他の条件は、実施例14と同じとし、同様にPL法によりカーボン強度を測定した。
【0037】
実施例14、及び比較例15の結果を、図5のグラフに示す。図5のグラフにおいて、横軸はメインパージガス流量(slm)、縦軸はカーボン強度を示す。図5のグラフに示すように、実施例14におけるエピタキシャル膜中のカーボン強度は4.38、比較例15では8.29となった。即ち、実施例14によれば、比較例15よりもカーボン強度を半減できた。
【0038】
以上の実施例の結果より、本発明によれば、ウェーハ上に形成するエピタキシャル膜において、従来よりもカーボン濃度を低減することができることを確認した。
【符号の説明】
【0039】
2 エピタキシャル膜形成室
2a 上部空間
2b 下部空間
3 天井部
4 底部
5 保持フレーム
5a ガス導入室
5b ガス排気口
6 サセプタ
7 回転軸
10 隙間
11 プリヒートリング
12 スリット
102A~102C プロセスチャンバ(反応炉)
W シリコンウェーハ基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6