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  • 特許-定電流回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】定電流回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/26 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
G05F3/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018177359
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020047193
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐野 稔
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-185221(JP,A)
【文献】特開2013-37435(JP,A)
【文献】特開2008-197994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地端子に接続された抵抗と、前記接地端子と前記抵抗に接続された第一のカレントミラー回路と、電源端子と前記第一のカレントミラー回路の間に接続された第二のカレントミラー回路とを備えた定電流発生回路と、
前記定電流発生回路の起動を検出し、検出信号を出力する起動検出回路と、
前記定電流発生回路に起動電圧を出力するクランプ回路と、
前記電源端子に電源電圧が投入されたことを検出すると前記クランプ回路を起動し、前記起動検出回路の検出信号を受けると前記クランプ回路を停止する、電源検出回路と、を備え、
前記クランプ回路の出力する前記起動電圧は、前記定電流発生回路が動作している時の前記第一のカレントミラー回路を構成するトランジスタのゲート電圧より高い前記ゲート電圧の近傍の電圧であることを特徴とする定電流回路。
【請求項2】
前記起動検出回路は、定電流インバータで構成したことを特徴とする請求項1に記載の定電流回路。
【請求項3】
前記電源検出回路は、
前記定電流インバータの前記検出信号を受ける論理回路と、
前記電源端子と前記定電流インバータの出力端子の間に設けられたコンデンサと、
前記論理回路が出力信号を反転するときに発生する貫通電流を前記コンデンサに流すカレントミラー回路と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の定電流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の低消費化技術として、未使用時に回路をスリープ状態にすることで電力消費を削減する間欠動作技術が知られている。定電流回路は、間欠動作において、短時間で安定して起動することが求められる。
【0003】
図5は、従来の起動回路を備えた定電流回路の回路図である。従来の定電流回路500は、定電流回路部510と起動回路部520を備えている。
【0004】
従来の定電流回路500は、定電流回路部510がノードAの電圧が低いと起動しないので、起動回路部520を備えている。起動回路部520は、ノードAの電圧が低いとNMOSトランジスタ521をオンして、PMOSトランジスタ511から起動電流を引き抜くことによって、定電流回路部510を起動させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-118532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の起動回路を備えた定電流回路500は、定電流回路部510のPMOSトランジスタ511のゲート・ソース間電圧が電源電圧に依存して変化する。従って、電源電圧が高い場合は、PMOSトランジスタ511からNMOSトランジスタ521に過大な起動電流が流れてしまう、という課題がある。
【0007】
従って、本発明は、電源電圧が高い場合であっても、起動時に過大な電流が流れることのない定電流回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の定電流回路は、
接地端子に接続された抵抗と、前記接地端子と前記抵抗に接続された第一のカレントミラー回路と、電源端子と前記第一のカレントミラー回路の間に接続された第二のカレントミラー回路とを備えた定電流発生回路と、
前記定電流発生回路の起動を検出し、検出信号を出力する起動検出回路と、
前記定電流発生回路に起動電圧を出力するクランプ回路と、
前記電源端子に電源電圧が投入されたことを検出すると前記クランプ回路を起動し、前記起動検出回路の検出信号を受けると前記クランプ回路を停止する、電源検出回路と、を備え、
前記クランプ回路の出力する前記起動電圧は、前記定電流発生回路が動作している時の前記第一のカレントミラー回路を構成するトランジスタのゲート電圧より高い前記ゲート電圧の近傍の電圧であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の定電流回路によれば、クランプ回路30で発生させたクランプ電圧で定電流発生回路10を起動しているため、電源電圧が高い場合であっても、起動時に過大な電流が流れること防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の定電流回路を示すブロック図である。
図2】本実施形態の定電流回路の一例を示す回路図である。
図3図2の定電流回路の動作を示すタイミング図である。
図4】本実施形態の定電流回路の他の例を示す回路図である。
図5】従来の定電流回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態の定電流回路を示すブロック図である。本実施形態の定電流回路100は、定電流発生回路10と、起動検出回路20と、クランプ回路30と、電源検出回路40を備えている。
【0012】
定電流発生回路10は、第一のカレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ10、11と、第二のカレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタ12、13と、抵抗14を備えている。起動検出回路20は、PMOSトランジスタ21とNMOSトランジスタ22を備え、定電流インバータを構成している。クランプ回路30は、電圧源31と、スイッチ32を備えている。
【0013】
定電流発生回路10は、NMOSトランジスタ10及び11のゲートにクランプ回路30の出力端子が接続されている。起動検出回路20は、PMOSトランジスタ21のゲートにPMOSトランジスタ13のゲートが接続され、NMOSトランジスタ22のゲートにNMOSトランジスタ11のゲートが接続されている。電源検出回路40は、入力端子に起動検出回路20の出力端子が接続されている。クランプ回路30は、電圧源31がスイッチ32を介して出力端子に接続され、スイッチ32の制御端子に電源検出回路40の出力端子が接続されている。
【0014】
電源が投入された直後において、定電流発生回路10が起動していないと、起動検出回路20は、PMOSトランジスタ21とNMOSトランジスタ22は共にオフしているので、出力端子はハイ・インピーダンスになっている。電源検出回路40は、電源電圧が入力されていて、起動検出回路20の出力端子がハイ・インピーダンスの時は、定電流発生回路10が起動していないと判断して、出力端子から起動信号を出力する。クランプ回路30は、電源検出回路40の起動信号を受けると、スイッチ32をオンして電圧源31の電圧を出力する。ここで、電圧源31の電圧は、定電流発生回路10が通常動作している時のNMOSトランジスタ10及び11のゲート電圧より高いゲート電圧の近傍の電圧に設定されている。
【0015】
定電流発生回路10は、NMOSトランジスタ10及び11のゲートにクランプ回路30の電圧源31の電圧が印加されることで起動電流が発生して、起動する。起動検出回路20は、定電流発生回路10が起動したのを検知して、例えば、NMOSトランジスタ22がオンしてLowレベルの検出信号を出力する。電源検出回路40は、起動検出回路20から検出信号を受けると起動信号の出力を停止して、クランプ回路30の動作を停止させる。
【0016】
以上説明したように、本実施形態の定電流回路100は、クランプ回路30がNMOSトランジスタ10及び11のゲートに上述の電圧を印加して定電流発生回路10を起動するので、過剰な起動電流が流れることなく速やかに起動することが出来る。
【0017】
また、起動検出回路20は、電源電圧依存性がない定電流インバータで構成したので、電源電圧によらず定電流発生回路10の起動を検出することが出来る、という効果もある。
【0018】
図2は、本実施形態の定電流回路の一例を示す回路図である。図2の定電流回路100aでは、イネーブル端子ENを備え、外部からのイネーブル信号によって間欠動作を可能にした回路例を示している。
【0019】
定電流発生回路10は、NMOSトランジスタ10、11のゲートと接地端子の間にスイッチ15aと、PMOSトランジスタ12、13のゲートと電源端子の間にスイッチ15bを、更に備えている。スイッチ15aとスイッチ15bの制御端子は、イネーブル端子ENに接続されている。
【0020】
クランプ回路30は、電圧源31としてダイオード結線されデプレッション型のPMOSトランジスタ31a、NMOSトランジスタ31b及びNMOSトランジスタ31cと、NMOSトランジスタ31dと、スイッチ32a、32b及び32cと、NOT回路32dとを備えている。スイッチ32a及び32bの制御端子は、電源検出回路40aの出力端子が接続されている。スイッチ32cの制御端子は、電源検出回路40aの出力端子がNOT回路32dを介して接続されている。
【0021】
電源検出回路40aは、NAND回路41と、コンデンサ42と、スイッチ43を備えている。NAND回路41は、一方の入力端子にイネーブル端子ENが接続され、他方の入力端子に起動検出回路20の出力端子が接続され、出力端子は電源検出回路40aの出力端子に接続されている。コンデンサ42とスイッチ43は、電源端子とNAND回路41の他方の入力端子の間に並列に接続されている。
【0022】
ここで、スイッチ15a、15b、32a、32b、32c、43は、制御信号がLowレベルでオンして、Highレベルでオフするように構成している。
【0023】
次に、定電流回路100aの動作について説明する。図3は、定電流回路100aの動作を示すタイミング図である。
【0024】
時刻t1以前では、イネーブル信号ENがLowレベルになっているので、スイッチ15a、15bがオンしているので、定電流発生回路10は動作を停止している。また、起動検出回路20は、PMOSトランジスタ21とNMOSトランジスタ22がオフしているが、スイッチ43がオンしているので、出力端子の電圧VO20はHighレベルになっている。電源検出回路40aは、NAND回路41に電圧VO20のHighレベルとイネーブル信号ENのLowレベルが入力されているので、出力端子の電圧VO40はHighレベルになっている。
【0025】
クランプ回路30は、Highレベルの電圧VO40が入力されているので、スイッチ32a、32bはオフ、スイッチ32cがオンしているので、クランプ回路30は動作を停止し、出力端子の電圧VO30はハイ・インピーダンスになっている。
【0026】
時刻t1でイネーブル信号ENがHighレベルになると、スイッチ15a、15bがオフするが、定電流発生回路10が起動しないとPMOSトランジスタ21とNMOSトランジスタ22がオフしている。NAND回路41の入力端子の電圧は、スイッチ43がオフするが、コンデンサ42によりHighレベルに維持される。NAND回路41は、電圧VO20のHighレベルとイネーブル信号ENのHighレベルが入力されるので、出力端子の電圧VO40はLoレベルになる。
【0027】
従って、クランプ回路30は、スイッチ32a、32bがオン、スイッチ32cがオフするので、動作を開始する。クランプ回路30は、デプレッション型のPMOSトランジスタ31aの電流がNMOSトランジスタ31b及びNMOSトランジスタ31cに流れることによってNMOSトランジスタ31bのゲートに発生する電圧に基づいて、NMOSトランジスタ31dのソースから定電流発生回路10が起動するための電圧を出力する。
【0028】
クランプ回路30の出力電圧VO30は、NMOSトランジスタ31b、NMOSトランジスタ31c、NMOSトランジスタ31dの夫々のゲート・ソース間電圧をVGS31a、VGS31b、VGS31dとすると、以下の式で表わされる。
O30=VGS31b+VGS31c-VGS31d
【0029】
ここで、クランプ回路30の出力電圧VO30を、電圧VGS31a、VGS31b、VGS31dを調整することによって、定電流発生回路10が通常動作している時のNMOSトランジスタ10及び11のゲート電圧より高いゲート電圧の近傍の電圧に設定する。このようにすることで、定電流回路100aは、定電流発生回路10の起動電流が定常時の電流の近傍に発生するため、過剰な起動電流が流れることなく、速やかに起動することが出来る。
【0030】
時刻t2において、定電流発生回路10が起動すると、起動検出回路20は、NMOSトランジスタ10及び11のゲート電圧の上昇によってその起動を検知して、PMOSトランジスタ21とNMOSトランジスタ22で構成される定電流インバータが出力端子の電圧VO20をLowレベルする。NAND回路41は電圧VO20のLowレベルが入力されるので出力電圧がHighレベルになり、クランプ回路30は動作を停止する。そして、定電流回路100aは、起動動作が完了する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の定電流回路100aは、クランプ回路30がNMOSトランジスタ10及び11のゲートに上述の電圧を印加して定電流発生回路10を起動するので、過剰な起動電流が流れることなく速やかに起動することが出来る。
【0032】
図4は、本実施形態の定電流回路の他の例を示す回路図である。図4の定電流回路100bの電源検出回路40bは、定電流回路100aの電源検出回路40aに第三のカレントミラー回路を構成するPMOSトランジスタ44、45と、第四のカレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ46、47を更に備えている。なお、定電流回路100bの他の回路構成は、定電流回路100aと同一であるため、同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0033】
起動検出回路20が出力端子の電圧VO20をLowレベルにするとき、定電流インバータがコンデンサ42の電荷を放電するので、HighレベルからLowレベルに反転するのに時間を要する。即ち、NAND回路41は、入力端子の電圧が反転するのに時間を要するので、その間に貫通電流が発生してしまう。そこで、電源検出回路40bは、NAND回路41の動作電流をコンデンサ42の放電電流にする第三のカレントミラー回路と第四のカレントミラー回路を備えている。
【0034】
上述のコンデンサ42の電荷を放電するときに、NAND回路41に貫通電流が発生すると、第三のカレントミラー回路と第四のカレントミラー回路は、その貫通電流によってコンデンサ42の電荷を放電する。従って、起動検出回路20が定電流発生回路10の起動を検出したとき、電圧VO20を急速にLowレベルに反転することが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、クランプ回路30の電圧源31は、定電流発生回路10が通常動作している時のNMOSトランジスタ10及び11のゲート電圧より高いゲート電圧の近傍の電圧を出力すれば良く、図示した回路に限定されない。また、起動検出回路20は、定電流発生回路10が起動したことを検出できる回路であれば良く、図示した定電流インバータに限定されない。また、定電流回路の具体例では、イネーブル端子ENを備えた例で説明したが、それに限定されるものではない。電源検出回路40は、イネーブル信号に拠らず、電源が起動したことを検出してクランプ回路30を起動する回路であっても良く、また、論理回路は上記の回路に限定されない。
【符号の説明】
【0036】
10 定電流発生回路
20 起動検出回路
30 クランプ回路
31 電圧源
40、40a、40b 電源検出回路
EN イネーブル端子
図1
図2
図3
図4
図5