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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】多重特異性抗体のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220128BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220128BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220128BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20220128BHJP
   C40B 40/08 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 15/06 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220128BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220128BHJP
   C40B 30/04 20060101ALI20220128BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220128BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C40B40/10
C40B40/08
C12N15/06 100
A61P43/00 111
A61K39/395 D
A61K39/395 N
G01N33/53 N
C40B30/04
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2018523010
(86)(22)【出願日】2016-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 US2016060986
(87)【国際公開番号】W WO2017079768
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-11-08
(31)【優先権主張番号】62/252,549
(32)【優先日】2015-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ダンシー, ダイアナ ロナイ
(72)【発明者】
【氏名】ホンゴウ, ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ホックソン
(72)【発明者】
【氏名】園田 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】シュピース, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】イー, アンジー グレース
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/100366(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0000795(KR,A)
【文献】国際公開第2007/108152(WO,A1)
【文献】J. Microbiol. Biotechnol.,2008年,Vol.18, No.6,pp.1186-1190
【文献】J. Biochem.,1995年,Vol.118,pp.825-831
【文献】J. Biol. Chem.,2007年,Vol.282, No.38,pp.27659-27665
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第1の抗原結合ポリペプチドであって、前記第1の抗原結合ポリペプチドが、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる、VLドメイン、リンカー、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む第1の抗原結合ポリペプチド;
(ii)第2の抗原結合ポリペプチドであって、前記第2の抗原結合ポリペプチドが、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる、VLドメイン、リンカー、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む、第2の抗原結合ポリペプチド;及び
(iii)同一の2つのCLドメイン、を含み、ここで、2つのCLドメインのうちの一方が、1つ以上のジスルフィド架橋によって第1の抗原結合ポリペプチドのCH1ドメインに連結され、2つのCLドメインのうちの2つ目が、1つ以上のジスルフィド架橋によって第2の抗原結合ポリペプチドのCH1ドメインに連結され;
前記第1及び第2の抗原結合ポリペプチドが、2つの異なる抗原に結合する、又は前記第1及び第2の抗原結合ポリペプチドが、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合する、
単離された多重特異性抗体。
【請求項2】
前記リンカーが、
(i)1つ以上のグリシン(G)及びセリン(S)残基を含む;
(ii)約1~約50アミノ酸長を有する;
(iii)約20アミノ酸長である;
(iv)GS反復を含む;
(v)配列番号68のアミノ酸配列を含む;及び/又は
(vi)切断可能である、
請求項1に記載の多重特異性抗体。
【請求項3】
前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインとが、多重特異性抗体の形成を促進するように改変されている界面で会合し、
(a)前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと相互作用する前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの表面に突起を発生させてもよく、
(b)前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと相互作用する前記第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの表面上に空洞を発生させてもよく、
ここで、前記より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基が、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)からなる群から選択されてもよく、及び/又は、前記より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基が、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、及びバリン(V)からなる群から選択されてもよい、
請求項1又は2に記載の多重特異性抗体。
【請求項4】
前記抗体が、IgG、IgA、またはIgEアイソタイプである、請求項1~3のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
【請求項5】
前記抗体が、IgGアイソタイプである、請求項4に記載の多重特異性抗体。
【請求項6】
前記抗体が、IgG、IgG、またはIgGアイソタイプである、請求項5に記載の多重特異性抗体。
【請求項7】
前記多重特異性抗体が、アゴニスト多重特異性抗体またはアンタゴニスト多重特異性抗体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
【請求項8】
前記多重特異性抗体が二重特異性抗体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
【請求項9】
前記二重特異性抗体がアゴニスト性バイエピトープ性抗体である、請求項8に記載の多重特異性抗体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗体をコードする配列を含む、単離された核酸。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を発現する、及び/又は請求項10に記載の核酸若しくは請求項11に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項13】
多重特異性抗体の産生方法であって、請求項12に記載の宿主細胞を、前記多重特異性抗体の産生に十分な条件下で培養することを含み、
前記多重特異性抗体を培養物から回収することを更に含んでもよい、方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗体、及び薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物であって、
第2の治療剤を更に含んでもよい、薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を複数含む、又は請求項1~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を複数コードするポリヌクレオチドを複数含む、ライブラリ。
【請求項16】
多重特異性抗体のスクリーニング方法であって、
(a)複数の多重特異性抗体を請求項15に記載のライブラリから得ることと、
(b)前記複数の多重特異性抗体と第1及び第2の抗原または同じ抗原の第1及び第2のエピトープとの結合についてアッセイすることと、
(c)前記第1及び第2の抗原または同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することと、を含む、前記方法。
【請求項17】
多重特異性抗体の識別方法であって、
(a)請求項1~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を細胞中で発現させることと、
(b)前記ステップ(a)の多重特異性抗体を第1の抗原及び第2の抗原または同じ抗原の第1のエピトープ及び第2のエピトープと接触させることと、
(c)前記第1の抗原及び前記第2の抗原または同じ抗原の前記第1のエピトープ及び前記第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することと、を含む、前記方法。
【請求項18】
(c)同じ抗原の前記第1及び前記第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別して、バイエピトープ性抗体を得ることと、
(d)前記バイエピトープ性抗体がアゴニスト活性を呈するかどうかを決定して、バイエピトープ性アゴニスト抗体を得ること、とを含み、
(e)前記バイエピトープ性アゴニスト抗体の前記アゴニスト活性を、前記バイエピトープ性アゴニスト抗体が由来した単一特異性抗体と比較すること
とを含んでもよい、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
(i)前記多重特異性抗体を発現させることが、前記多重特異性抗体をコードする1つ以上の核酸を前記細胞に導入することを含む;
(ii)前記多重特異性抗体が、前記第1及び第2の抗原または同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープと、ステップ(b)において同時に接触する;
(iii)ステップ(b)の多重特異性抗体が、任意選択で、タンパク質Aクロマトグラフィーによって、前記多重特異性抗体を前記第1及び第2の抗原または同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープに接触させる前に精製される;及び/又は
(iv)前記多重特異性抗体と前記第1及び/もしくは第2の抗原または第1及び/もしくは第2のエピトープとの結合が、ELISAによって分析される;
請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
(i)前記多重特異性抗体が、前記第1及び第2の抗原または同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープと、ステップ(b)において同時に接触する;
(ii)ステップ(b)の多重特異性抗体が、任意選択で、タンパク質Aクロマトグラフィーによって、前記多重特異性抗体を前記第1及び第2の抗原または同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープに接触させる前に精製される;及び/又は
(iii)前記多重特異性抗体と前記第1及び/もしくは第2の抗原または第1及び/もしくは第2のエピトープとの結合が、ELISAによって分析される;
請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記抗原が生物複合体中にある、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
細胞が原核細胞である、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
原核細胞が大腸菌(Escherichia coli)細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
細胞が真核細胞である、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
真核細胞が酵母細胞または哺乳動物細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項18~26のいずれか1項に記載の方法を使用して識別れた、単離されたバイエピトープ性アゴニスト抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が本明細書に組み込まれる、2015年11月8日に出願された米国仮出願第62/252,549号の優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2016年11月7日に作成された該ASCIIコピーは、名称が「BB Sequence Listing.txt」、サイズが176,940バイトである。
【0003】
本明細書に開示される主題は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体、及びかかる抗体のスクリーニング方法に関する。本明細書に開示される主題は、クロトー-ベータに結合する抗体、及びこれらの抗体を使用する疾患の治療方法を更に提供する。
【背景技術】
【0004】
二重特異性抗体等の多重特異性抗体は、研究手段、診断手段、及び治療薬として重要である。これは主に、かかる抗体が、2つ以上の抗原または抗原中に存在する2つ以上のエピトープに高い特異性及び親和性で結合するように選択できるということに起因する。例えば、癌治療薬の場合、多重特異性抗体を使用して、癌細胞を、例えばその癌細胞に存在する抗原を免疫細胞に結合させることによって標的化して、免疫応答を誘発することができる。加えて、多重特異性抗体は、ヘテロ二量体受容体に対するリガンドとして使用することができ、このヘテロ二量体受容体は、通常は、それが受容体に結合し、受容体の構成要素間の相互作用を促進するときに、それらの同族リガンドによって活性化される。
【0005】
多重特異性抗体は、これまで、所望の結合特性を保有するモノクローナル抗体等の抗体の化学結合断片によって産生され、またそれにより識別されてきた。この手順には、特異的抗体断片を生成し回収すること、架橋剤または相互作用する他の部分を使用して、断片をカップリングすること、及び抗体断片を連結させてヘテロ二量体を生成することが必要とされる。2つの重鎖-軽鎖対を共発現させることによる組換えDNA技法も使用されており、この場合、2つの重鎖-軽鎖は異なる結合特異性を有する。しかしながら、この手法は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組み合わせのため、異なる抗体分子の混合物を産生させる可能性があり、それらのうちのごく一部の分子のみが所望の多重特異性、例えば、二重特異性の構造を有する。例えば、これらの方法を使用すると、ホモ二量体が産生され得、重鎖が誤った軽鎖と対形成して、目的とする抗原またはエピトープへの所望の特異性を有しない抗体を産生させ得る。このため、ある特定の目的とする抗原及び/またはエピトープに対する多重特異性抗体、例えば、二重特異性及びバイエピトープ性抗体を識別及び選択するための改善した方法が当該技術分野で必要とされている。
【0006】
多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、受容体のアゴニストとして機能することにおいて有用であることが分かっている(例えば、Weidle et al.(2013) Cancer Genomics Proteomics 10(1):1-18を参照されたい)。かかる抗体の恩恵を受け得る1つのかかる受容体はクロトー-ベータ(KLB)である。KLBは、短い細胞内ドメインと、酵素活性に不可欠な特徴的なグルタミン酸残基を欠く2つの細胞外グリコシダーゼドメインとを有する、114-kDaの1型膜貫通型タンパク質である(Ito et al.(2000) Mech.Dev.98:115-119)。哺乳動物種によってコードされる線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)の7つの主要アイソフォーム(1b、2b、3b、1c、2c、3c、及び4)のうち、FGFR1c、2c、及び3cが、補助受容体として作用するクロトー-ベータと相互作用して、ある特定のFGFリガンドに対する機能的受容体複合体を形成することができる。例えば、クロトー-ベータとの複合体中に存在するFGFR1cは、線維芽細胞成長因子21(FGF21)の代謝作用の媒介において中心的な役割を果たすようである(Ogawa et al.(2007) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104(18):7432-37;US2010/0184665)。FGF21は、動物疾患モデルにおいて肥満及び2型糖尿病を回復させた強力な疾患修飾性タンパク質剤として特定された(Kharitonenkov et al.(2005) J.Clin.Invest.115(6):1627-35)。組換えFGF21は、レプチンシグナル伝達欠損(ob/obまたはdb/db)マウスまたは高脂肪食(HFD)を与えられたマウスにおいて、肝臓脂質を減少させ、インスリン感受性を改善させ、血糖管理を正常化することが示されている。血中グルコースレベルの低下及び様々な心血管系危険因子の改善も、組換えFGF21による治療を毎日受けた肥満及び糖尿病アカゲザルにおいて観察されている。
【0007】
FGFR1c及びKLBを標的化する治療剤は、精力的な研究分野となっている。FGFR1cに特異的な抗体アンタゴニストは、マウス及びサルにおいて体重減少を誘導することが報告されており(WO2005/037235)、アゴニスト抗体によって媒介されるFGFR1cの選択的活性化は、糖尿病マウスにおけるFGF21によるインスリン感作を再現するのに十分であった(WO2012/158704;Wu et al.(2011) Sci.Trans.Med.3(113):1-10)。KLB/FGFR1c複合体に結合する抗体は、活性化剤/治療剤として提案されている(US7,537,903;WO2011/071783;WO2012/158704)。他の研究者らは、FGFR1c/クロトー-ベータ複合体を選択的に活性化するための2つの代替的手法を調査した。Foltz et al.(2012) Sci.Transl.Med.4:162ra153は、mimAb1と呼ばれる高親和性抗クロトー-ベータ抗体を開示しており、米国特許第8,372,952号は、ヒト血清アルブミン(HSA)に連結する二重特異性抗FGFR1/クロトー-ベータアビマーポリペプチドC3201を開示している。グルコース代謝及び代謝性疾患におけるクロトー-ベータの重要な役割を考えると、当該技術分野で依然として治療用抗体及びKLB活性の調節方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に開示される主題は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性及びバイエピトープ性抗体、ならびにかかる化合物のスクリーニング方法を提供する。本開示は、かかる抗体の産生及び分析方法を更に提供する。ある特定の態様において、本明細書に開示される主題は、抗KLB抗体に更に関する。具体的には、本開示は、KLB上に存在する少なくとも2つの異なるエピトープに特異的に結合する二重特異性抗体と、本二重特異性抗体、または単一特異性抗体各々の混合物を使用して、対象において疾患を治療するための方法とを提供する。
【0009】
ある特定の実施形態では、本開示の単離された多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、第1の抗原結合ポリペプチドを含み、この第1の抗原結合ポリペプチドは、N末端からC末端への方向に位置付けられる、VLドメイン、リンカー、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本二重特異性抗体は、VLfH(可変軽鎖完全重鎖)形式で構成される。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチドの構成要素は、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる。ある特定の実施形態では、本多重特異性抗体はCLドメインを含まない。あるいは、ある特定の実施形態では、本多重特異性抗体はCLドメインを更に含み得る。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体はtcIgG(三鎖(tri-chain)IgG)形式で構成される。ある特定の実施形態では、CLドメインは、1つ以上のジスルフィド架橋によって第1の抗原結合ポリペプチドに連結し得る。ある特定の実施形態では、CLドメインと第1の抗原結合ポリペプチドとの間のジスルフィド結合は、CLドメインを第1の抗原結合ポリペプチドのCH1ドメインと連結させる。
【0010】
ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、第2の抗原結合ポリペプチドを更に含み得、この第2の抗原結合ポリペプチドは、N末端からC末端への方向に位置付けられる、VLドメイン、リンカー、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合ポリペプチドの構成要素は、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合ポリペプチドはCLドメインを含まない。
【0011】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体は2つのCLドメインを含む。ある特定の実施形態では、2つのCLドメインは同じである。ある特定の実施形態では、2つのCLドメインの一方は、1つ以上のジスルフィド架橋によって第1の抗原結合ポリペプチドに連結し、2つのCLドメインのうちの2つ目は、1つ以上のジスルフィド架橋によって第2の抗原結合ポリペプチドに連結する。ある特定の実施形態では、ジスルフィド架橋は、CLドメインを第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドのCH1ドメインと連結する。
【0012】
本開示の多重特異性抗体が第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドを含むある特定の実施形態では、第1及び第2の抗原結合ポリペプチドは、同じ抗原上の2つの異なるエピトープに結合する。あるいは、第1及び第2の抗原結合ポリペプチドは2つの異なる抗原に結合する。ある特定の実施形態では、本多重特異性抗体はtcBsIgG形式で構成される。ある特定の実施形態では、本多重特異性抗体は、多重特異性アゴニスト抗体または多重特異性アンタゴニスト抗体であり得る。
【0013】
本明細書に開示の抗体は、多重特異性アゴニスト抗体または多重特異性アンタゴニスト抗体であり得る。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の多重特異性抗体は、二重特異性抗体、例えば、1つの標的に対するバイエピトープ性抗体、または2つの異なる標的に対する二重特異性抗体である。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体はアゴニスト性バイエピトープ性抗体である。ある特定の実施形態では、二重特異性抗体はアンタゴニスト性バイエピトープ性抗体である。
【0014】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドを含む単離されたバイエピトープ性アゴニスト抗体を提供し、第1及び第2の抗原結合ポリペプチドの各々は、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる、VLドメイン、リンカー、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む。ある特定の実施形態では、本バイエピトープ性アゴニスト抗体の第1及び第2の抗原結合ポリペプチドは、同じ抗原上の2つの異なるエピトープに結合する。
【0015】
ある特定の実施形態では、バイエピトープ性アゴニスト抗体はCLドメインを含まない。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性アゴニスト抗体は2つのCLドメインを更に含む。ある特定の実施形態では、CLドメインは第1または第2の抗原結合ポリペプチドに共有結合しない。ある特定の実施形態では、CLドメインはVLドメインに共有結合しない。ある特定の実施形態では、VL及びCLは分離している。ある特定の実施形態では、この分離は、VLとCLとの間の任意の結合部にあることができる。ある特定の実施形態では、結合部はT109にあり得る(即ち、CLはT109で開始し得、VLはR108で終結し得る)。ある特定の他の実施形態では、CLはV110から開始し得る。
【0016】
ある特定の実施形態では、2つのCLドメインは同じである。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性アゴニスト抗体の2つのCLドメインは、1つ以上のジスルフィド架橋によって第1の抗原結合ポリペプチドに連結し、2つのCLドメインのうちの2つ目は、1つ以上のジスルフィド架橋によって第2の抗原結合ポリペプチドに連結する。ある特定の実施形態では、ジスルフィド架橋は、CLドメインを第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドのCH1ドメインと連結する。
【0017】
ある特定の実施形態では、開示される抗体の抗原結合ポリペプチド内に存在するリンカーは、グリシン(G)及びセリン(S)残基を含み得る。ある特定の実施形態では、リンカーは約1~約50アミノ酸長を有する。ある特定の実施形態では、リンカーは約20アミノ酸長である。ある特定の実施形態では、リンカーはG4S反復を含む。ある特定の実施形態では、リンカーは配列番号68のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、リンカーは切断可能である。
【0018】
ある特定の実施形態では、開示される多重特異性抗体の第1の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインと第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインとは、多重特異性抗体の形成を促進するように改変されている界面で会合する。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基は、より大きい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、第1の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの表面に突起を発生させる。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基は、より小さい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、第1の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの表面上の突起と相互作用する第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの表面上に空洞を発生させる。ある特定の実施形態では、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)を含み得る。ある特定の実施形態では、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、またはバリン(V)を含み得る。ある特定の実施形態では、突起等のノブ突然変異は、T366W(EU付番)を含み得る。ある特定の実施形態では、空洞等のホール突然変異(複数可)は、T366S、L368A、及びY407V(EU付番)のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または全てを含み得る。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体は、IgG、IgA、またはIgEアイソタイプのものである。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体は、IgGアイソタイプのものである。ある特定の実施形態では、本多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体は、IgG、IgG、またはIgGアイソタイプのものである。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性抗体はバイエピトープ性アゴニスト抗体である。
【0019】
本明細書に開示される主題は、本開示の多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体をコードする配列を含む単離された核酸を更に提供する。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性抗体はバイエピトープ性アゴニスト抗体である。本明細書に開示される主題は、開示される核酸を含むベクターを更に提供する。
【0020】
本明細書に開示される主題は、本開示の多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体を発現する宿主細胞を更に提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体をコードする1つ以上の核酸を含む宿主細胞を提供する。例えば、限定するものではなく、本宿主細胞は、第1の抗原結合ポリペプチドをコードする核酸と、第2の抗原結合ポリペプチドをコードする別個の核酸とを含み得る。あるいは、本宿主細胞は、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドをコードする核酸を含み得る。ある特定の実施形態では、本宿主細胞は、CLドメインをコードする別個の核酸、例えば、第2の核酸または第3の核酸を更に含む。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性抗体はバイエピトープ性アゴニスト抗体である。
【0021】
本明細書に開示される主題は、多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体、例えば、バイエピトープ性アゴニスト抗体の産生方法を更に提供する。ある特定の実施形態では、本方法は、多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体の産生に十分な条件下で宿主細胞を培養することを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、例えば、精製技法によって、多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体を培地から回収することを更に含み得る。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性抗体はバイエピトープ性アゴニスト抗体である。
【0022】
別の態様では、本明細書に開示される主題は、本明細書に開示される多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体を含む薬学的組成物を更に提供する。ある特定の実施形態では、本組成物は第2の治療剤を更に含む。本明細書に開示される主題は、本明細書に開示される多重特異性抗体もしくはバイエピトープ性抗体またはその組成物を含むキットを更に提供する。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性抗体はバイエピトープ性アゴニスト抗体である。
【0023】
本明細書に開示される主題は、複数の開示される多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体を含むライブラリを更に提供する。ある特定の実施形態では、ライブラリは、複数の本明細書に開示される多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体をコードする複数のポリヌクレオチドを含み得る。
【0024】
別の態様では、本明細書に開示される主題は、多重特異性抗体のスクリーニング方法を更に提供する。例えば、限定するものではなく、本明細書に開示される方法を使用して、抗体が同じ抗原上の2つのエピトープに結合するバイエピトープ性抗体をスクリーニングすることができる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を呈する多重特異性抗体、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体を識別することができる。ある特定の実施形態では、本方法は、(a)複数の多重特異性抗体をライブラリから得ることと、(b)複数の多重特異性抗体と第1及び第2の抗原または同じ抗原上の第1及び第2のエピトープとの結合についてアッセイすることと、(c)第1及び第2の抗原または同じ抗原上の第1及び第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することと、を含み得る。
【0025】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体のスクリーニング方法は、(a)多重特異性抗体を細胞中で発現させることと、(b)ステップ(a)の多重特異性抗体を第1の抗原及び第2の抗原または同じ抗原の第1のエピトープ及び第2のエピトープと接触させることと、(c)第1の抗原及び第2の抗原または同じ抗原上の第1のエピトープ及び第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することと、を含み得る。
【0026】
更なる態様では、本明細書に開示される主題は、バイエピトープ性アゴニストまたはアンタゴニスト抗体のスクリーニング方法を更に提供する。ある特定の実施形態では、本方法は、(a)複数の多重特異性抗体をライブラリから得ることと、(b)複数の多重特異性抗体と、同じ抗原の第1及び第2のエピトープとの結合についてアッセイすることと、(c)同じ抗原の第1及び第2のエピトープに結合する1つ以上のバイエピトープ性抗体を識別することと、(d)バイエピトープ性抗体を、アゴニストまたはアンタゴニスト活性を呈する1つ以上のバイエピトープ性抗体から識別して、バイエピトープ性アゴニストまたはアンタゴニスト抗体を得ることと、を含み得る。ある特定の実施形態では、本方法は、バイエピトープ性アゴニストまたはアンタゴニスト抗体のアゴニストまたはアンタゴニスト活性を、バイエピトープ性アゴニストまたはアンタゴニスト抗体が由来した単独または組み合わせでの1つ以上の単一特異性親抗体と比較することを更に含み得る。
【0027】
ある特定の実施形態では、バイエピトープ性アゴニストまたはアンタゴニスト抗体のスクリーニング方法は、(a)多重特異性抗体を細胞中で発現させることと、(b)ステップ(a)の多重特異性抗体を同じ抗原の第1のエピトープ及び第2のエピトープと接触させることと、(c)同じ抗原の第1のエピトープ及び第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別して、バイエピトープ性抗体を得ることと、(d)バイエピトープ性抗体がアゴニストまたはアンタゴニスト活性を呈するかどうかを決定して、バイエピトープ性アゴニストまたはアンタゴニスト抗体を得ることと、を含み得る。ある特定の実施形態では、本方法は、バイエピトープ性アゴニストまたはアンタゴニスト抗体のアゴニストまたはアンタゴニスト活性を、バイエピトープ性アゴニストまたはアンタゴニスト抗体が由来した1つ以上の単一特異性親抗体と単独または組み合わせのいずれかで比較することを更に含み得る。
【0028】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体を細胞中で発現させることは、多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体をコードする1つ以上の核酸を細胞に導入することを含み得る。ある特定の実施形態では、本多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体は、第1及び第2の抗原または同じ抗原の第1及び第2のエピトープと、ステップ(b)において同時に接触する。ある特定の実施形態では、ステップ(b)の多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体は、多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体を第1及び第2の抗原または同じ抗原の第1及び第2のエピトープと接触させる前に精製される。ある特定の実施形態では、多重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体は、タンパク質Aクロマトグラフィーによって精製される。ある特定の実施形態では、本抗原は生物複合体内に存在する。ある特定の実施形態では、細胞は、原核細胞、例えば、Escherichia coli細胞である。ある特定の実施形態では、細胞は、真核細胞、例えば、酵母細胞または哺乳動物細胞である。ある特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。ある特定の実施形態では、多重特異性抗体と第1及び/または第2の抗原との結合はELISAによって分析される。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性抗体はバイエピトープ性アゴニスト抗体である。
【0029】
別の態様では、本開示は、KLB上に存在する少なくとも2つのエピトープに特異的に結合する、二重特異性、例えば、バイエピトープ性の抗体、及び/またはKLB上に存在する少なくとも2つのエピトープに特異的に結合する抗KLB抗体の混合物と、これらの抗体及び/または混合物を使用して対象において疾患を治療する方法とを提供する。ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、第1の抗体またはその抗原結合部分、及び第2の抗体またはその抗原結合部分を含む。例えば、限定するものではなく、第1の抗体またはその抗原結合部分は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得、第2の抗体またはその抗原結合部分は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得、第1の抗体及び第2の抗体、またはそれらの抗原結合部分は、KLB上に存在する異なるエピトープに結合する。
【0030】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号34、36、38、40、または42に記載の配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の配列を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号33、35、37、39、または41に記載の配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の配列を有するアミノ酸を含む。
【0031】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号38に記載の配列と約95%同一の配列を有する重鎖可変領域と、配列番号37に記載の配列と約95%同一の配列を有する軽鎖可変領域とを含み得る。ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号42に記載の配列と約95%同一の配列を有する重鎖可変領域と、配列番号41に記載の配列と約95%同一の配列を有する軽鎖可変領域とを含み得る。
【0032】
ある特定の実施形態では、本開示は、開示される二重特異性抗KLB抗体及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本薬学的組成物は更なる治療剤を含み得る。
【0033】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、代謝障害、例えば、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、代謝症候群(MetS)、肥満、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病、非2型糖尿病、1型糖尿病、潜在性自己免疫性糖尿病(LAD)、及び若年発症成人型糖尿病(MODY)、ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、及びALS等の老齢疾患及び関連疾患の治療方法において使用するための二重特異性抗KLB抗体を提供する。ある特定の実施形態では、本二重特異性抗KLB抗体は2型糖尿病の治療に使用される。本方法は、治療有効量の本明細書に開示される主題の抗体を個体に投与することを含み得る。ある特定の実施形態では、疾患は、糖尿病、例えば、2型糖尿病である。ある特定の実施形態では、本方法は、更なる治療剤を個体に投与することを更に含む。
【0034】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、本明細書に開示される主題の二重特異性抗KLB抗体をコードする単離された核酸を提供する。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、本明細書に開示される核酸を含む宿主細胞を提供する。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、本明細書に開示される二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分を発現するハイブリドーマ細胞を更に提供する。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、二重特異性抗体の宿主細胞における産生方法を提供し、本方法は、宿主細胞を本開示の核酸によって形質転換させることと、宿主細胞を、二重特異性抗体を産生させる条件下で培養することとを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、抗体を宿主細胞から回収することを更に含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、KLB-FGFR1c受容体複合体の個体における活性化方法を提供し、本方法は、有効量の開示される二重特異性抗KLB抗体を個体に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】開示される主題の1つの非限定的実施形態に従う、例示的な方法において使用される可変軽鎖完全重鎖(VLfH)形式を図示する。VLfHは、本明細書において「三鎖IgG」または「tcIgG」とも称され得る。tcIgGが二重特異性抗体であるとき、このtcIgGは、より具体的に「tcBsIgG」と称され得る。
図1B】開示される主題の1つの非限定的実施形態に従う、例示的な方法において使用される可変軽鎖完全重鎖(VLfH)形式を図示する。VLfHは、本明細書において「三鎖IgG」または「tcIgG」とも称され得る。tcIgGが二重特異性抗体であるとき、このtcIgGは、より具体的に「tcBsIgG」と称され得る。
図2A】VLfHにフォーマティングした二重特異性抗体のヘテロ二量体化を示す液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)グラフを図示する。
図2B】VLfHにフォーマティングした二重特異性抗体のヘテロ二量体化を示す液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)グラフを図示する。
図3】対応する親である単一特異性のVLfHにフォーマティングした抗体と比較した、GAL4-Elk1系ルシフェラーゼアッセイにおけるKLB上に存在する2つのエピトープに結合する様々なVLfHにフォーマティングした二重特異性抗KLB抗体によるKLB-FGFR1c受容体活性の誘導を図示する。
図4】対応する親である単一特異性抗体と比較した、GAL4-Elk1系ルシフェラーゼアッセイにおけるKLB上に存在する2つのエピトープに結合するIgG形式にある様々な二重特異性抗KLB抗体によるKLB-FGFR1c受容体活性の誘導を図示する。
図5】対応する親であるモノクローナル抗体、抗KLB/抗FGFR1c二重特異性抗体(BsAb2)、及びアイソタイプが一致する対照抗体であるトラスツズマブと比較した、GAL4-Elk1系ルシフェラーゼアッセイにおけるKLB上に存在する2つのエピトープに結合する様々な二重特異性抗KLB抗体によるKLB-FGFR1c受容体活性の誘導を図示する。
図6】対応する親である単一特異性抗体の1:1混合物と比較した、GAL4-Elk1系ルシフェラーゼアッセイにおけるKLB上に存在する2つのエピトープに結合する様々な二重特異性抗KLB抗体によるKLB-FGFR1c受容体活性の誘導を図示する。
図7】GAL4-Elk1系ルシフェラーゼレポーターアッセイを使用した、抗KLBアゴニストモノクローナル抗体による、KLB-FGFR1c受容体活性(密接に関係した受容体複合体であるKLB-FGFR2cの活性ではない)の誘導を図示する。
図8】二重特異性抗KLB抗体がヒト初代脂肪細胞においてERKリン酸化を誘導したことを図示する。
図9】フローサイトメトリーを使用して本明細書に開示される二重特異性抗KLB抗体を生成するために使用されるモノクローナル抗体のKLB結合を図示する。
図10】キメラKLB及びFGFRタンパク質を使用して本明細書に開示される二重特異性抗KLB抗体を生成するために使用されるモノクローナル抗体によるKLB/FGFR1c受容体活性の誘導を図示する。
図11】(A)二重特異性抗体及び対照の抗KLBモノクローナル抗体8C5を生成するために使用される抗KLBモノクローナル抗体についてのエピトープビニングの要約である。(B)ヒト/ラットKLBキメラタンパク質を発現しているHEK293T細胞とのFACS結合である。
図12図7に要約するエピトープビンを決定するために使用される例示的なバイオレイヤーインフェロメトリー(biolayer inferometry)実験を図示する。この実施例では、2C12(ヒトIgG1)が、組換えKLBへの結合について、23B3と競合するが28B7または8C5とは競合しない。
図13-1】抗KLB抗体、クローン12B8についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図13-2】抗KLB抗体、クローン12B8についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図14-1】抗KLB抗体、クローン2C12についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図14-2】抗KLB抗体、クローン2C12についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図15-1】抗KLB抗体、クローン4H7についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図15-2】抗KLB抗体、クローン4H7についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図16-1】抗KLB抗体、クローン23B3についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図16-2】抗KLB抗体、クローン23B3についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図17-1】抗KLB抗体、クローン28B7についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図17-2】抗KLB抗体、クローン28B7についての軽鎖可変領域配列及び重鎖可変領域配列を図示する。
図18A】tcBsIgG形式により、単一細胞における二重特異性抗体生成が可能となることを図示する。(A)tcBsIgG形式の概略図である。抗体VLドメインは、(GS)リンカーを介して抗体重鎖に繋留される(左)。CH1の折り畳みの欠陥は、別々のプラスミドからのトランスでのCL発現によって補償される(右)。
図18B】tcBsIgG形式により、単一細胞における二重特異性抗体生成が可能となることを図示する。(B)タンパク質A親和性カラム精製回収後の、IgG1、2、及び4のアイソタイプ、ならびにIgG1及びIgG4の脱グリコシル化(N297G)バージョンにおける、抗KLB抗体、クローン28B7単一エピトープ性tcIgGの発現のキャピラリー電気泳動である。VLfH発現が微量しかないかまたは全くない、HECK293細胞におけるCのない単独のVLfHとしての発現(レーン1);標準IgG発現(レーン3)と同等であるtcIgG発現(レーン2)をもたらす、CとのVLfHの同時発現。
図18C】tcBsIgG形式により、単一細胞における二重特異性抗体生成が可能となることを図示する。(C)ノブ半IgG(レーン1);ホール半IgG(レーン2);単一細胞におけるノブ及びホール同時発現IgGとしての、標準IgG1、2、及び4、ならびにtcIgG1、2、及び4カウンターパートについてのタンパク質A親和性カラム精製回収後の抗KLB抗体、クローン28B7単一エピトープ性tcIgGの発現のキャピラリー電気泳動である。
図18D】tcBsIgG形式により、単一細胞における二重特異性抗体生成が可能となることを図示する。(D)タンパク質A及びサイズ排除クロマトグラフィー後の、抗KLB抗体、クローン28B7単一エピトープ性tcIgGの完全なLC-MS/MSである。
図19A】tcBsIgG形式の抗KLBバイエピトープ性抗体の産生を開示する。(A)単一細胞においてtcBsIgGを産生させるための、7×7のノブ及びホール組み合わせにおける陽性及び陰性発現対照tcIgGと5つの抗KLB tcIgG半抗体との同時発現のキャピラリー電気泳動である。
図19B】tcBsIgG形式の抗KLBバイエピトープ性抗体の産生を開示する。(B)単一細胞において発現された対応するtcBsIgGの親tcIgG発現のキャピラリー電気泳動である。
図19C-1】tcBsIgG形式の抗KLBバイエピトープ性抗体の産生を開示する。(C)ProAクロマトグラフィー後のtcIgGの分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。
図19C-2】tcBsIgG形式の抗KLBバイエピトープ性抗体の産生を開示する。(C)ProAクロマトグラフィー後のtcIgGの分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。
図19C-3】tcBsIgG形式の抗KLBバイエピトープ性抗体の産生を開示する。(C)ProAクロマトグラフィー後のtcIgGの分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)である。
図20】抗体アイソタイプが抗体アゴニスト活性に与える影響を開示する。(A)は、異なるアイソタイプの活性を示すルシフェラーゼレポーターアッセイである。(B)は、異なる抗体アイソタイプがヒト初代脂肪細胞におけるERK1/2リン酸化に与える影響である。(C)は、異なる抗体アイソタイプ及びそれらの組み合わせがヒト初代脂肪細胞におけるERK1/2リン酸化に与える影響である。
図21】抗KLB抗体クローン28B7と4H7との間の結合親和性の差を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
明瞭化のためであり、限定するものではなく、本明細書に開示される主題の発明を実施するための形態は、以下の小節に分けられる。
I.定義
II.抗体
III.スクリーニング及び産生方法
IV.使用方法
V.薬学的製剤
VI.製品及びキット
【0038】
I.定義
本明細書で使用される場合、「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義される、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、またはそれは、アミノ酸配列変化を含有し得る。ある特定の実施形態では、アミノ酸変化の数は、約10以下、約9以下、約8以下、約7以下、約6以下、約5以下、約4以下、約3以下、または約2以下である。ある特定の実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「親和性」は、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位の間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(K)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的かつ例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0040】
「親和性成熟」抗体とは、改変を有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の改変を有し、かかる改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「クロトー-ベータ」、「KLB」、及び「ベータ-クロトー」は、別途指定されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯動物(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源からの任意の天然クロトー-ベータを指す。この用語は、「完全長」の非プロセシングKLB、ならびに細胞内でのプロセシングから得られるKLBの任意の形態を包含する。この用語は、KLBの突然変異型及び天然に存在する異型、例えば、スプライス異型または対立遺伝子異型も包含する。
【0042】
シグナル配列を除く、本開示の二重特異性抗体によって標的化されるヒトKLBアミノ酸配列の非限定例は、
FSGDGRAIWSKNPNFTPVNESQLFLYDTFPKNFFWGIGTGALQVEGSWKKDGKGPSIWDHFIHTHLKNVSSTNGSSDSYIFLEKDLSALDFIGVSFYQFSISWPRLFPDGIVTVANAKGLQYYSTLLDALVLRNIEPIVTLYHWDLPLALQEKYGGWKNDTIIDIFNDYATYCFQMFGDRVKYWITIHNPYLVAWHGYGTGMHAPGEKGNLAAVYTVGHNLIKAHSKVWHNYNTHFRPHQKGWLSITLGSHWIEPNRSENTMDIFKCQQSMVSVLGWFANPIHGDGDYPEGMRKKLFSVLPIFSEAEKHEMRGTADFFAFSFGPNNFKPLNTMAKMGQNVSLNLREALNWIKLEYNNPRILIAENGWFTDSRVKTEDTTAIYMMKNFLSQVLQAIRLDEIRVFGYTAWSLLDGFEWQDAYTIRRGLFYVDFNSKQKERKPKSSAHYYKQIIRENGFSLKESTPDVQGQFPCDFSWGVTESVLKPESVASSPQFSDPHLYVWNATGNRLLHRVEGVRLKTRPAQCTDFVNIKKQLEMLARMKVTHYRFALDWASVLPTGNLSAVNRQALRYYRCVVSEGLKLGISAMVTLYYPTHAHLGLPEPLLHADGWLNPSTAEAFQAYAGLCFQELGDLVKLWITINEPNRLSDIYNRSGNDTYGAAHNLLVAHALAWRLYDRQFRPSQRGAVSLSLHADWAEPANPYADSHWRAAERFLQFEIAWFAEPLFKTGDYPAAMREYIASKHRRGLSSSALPRLTEAERRLLKGTVDFCALNHFTTRFVMHEQLAGSRYDSDRDIQFLQDITRLSSPTRLAVIPWGVRKLLRWVRRNYGDMDIYITASGIDDQALEDDRLRKYYLGKYLQEVLKAYLIDKVRIKGYYAFKLAEEKSKPRFGFFTSDFKAKSSIQFYNKVISSRGFPFENSSSRCSQTQENTECTVCLFLVQKKPLIFLGCCFFSTLVLLLSIAIFQRQKRRKFWKAKNLQHIPLKKGKRVVS(配列番号1)である。
【0043】
「KLBのC末端ドメイン」という用語は、KLBのカルボキシ末端グリコシダーゼ様ドメインを指す。例えば、配列番号1に示される例示的なKLBタンパク質のC末端ドメインは、アミノ酸配列:
FPCDFSWGVTESVLKPESVASSPQFSDPHLYVWNATGNRLLHRVEGVRLKTRPAQCTDFVNIKKQLEMLARMKVTHYRFALDWASVLPTGNLSAVNRQALRYYRCVVSEGLKLGISAMVTLYYPTHAHLGLPEPLLHADGWLNPSTAEAFQAYAGLCFQELGDLVKLWITINEPNRLSDIYNRSGNDTYGAAHNLLVAHALAWRLYDRQFRPSQRGAVSLSLHADWAEPANPYADSHWRAAERFLQFEIAWFAEPLFKTGDYPAAMREYIASKHRRGLSSSALPRLTEAERRLLKGTVDFCALNHFTTRFVMHEQLAGSRYDSDRDIQFLQDITRLSSPTRLAVIPWGVRKLLRWVRRNYGDMDIYITASGIDDQALEDDRLRKYYLGKYLQEVLKAYLIDKVRIKGYYAFKLAEEKSKPRFGFFTSDFKAKSSIQFYNKVISSRGFPFENSSSR(配列番号2)を含む。
【0044】
本明細書で言及される場合、「抗原結合ポリペプチド」は、結合相手である別の分子に対して強力な親和性を有する抗原結合領域または抗原結合部分を含むタンパク質またはポリペプチドである。抗原結合ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片、及び融合タンパク質を包含する。
【0045】
「抗体」という用語は、本明細書で最も広義に使用され、所望の抗原結合活性を呈する、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体、及び抗体断片を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)、または抗体の「抗原結合断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原及び/またはエピトープと結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab´、Fab´-SH、F(ab´);ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);及び多重特異性、例えば、二重特異性抗体から形成される抗体断片が挙げられる。
【0047】
ある特定の実施形態では、「アゴニスト」及び「アゴニスト性」という用語は、受容体(例えば、抗原)と相互作用、例えば、結合し、受容体の天然リガンドによって惹起、模倣、及び/または刺激される反応または活性と類似または同じである反応または活性を惹起、模倣、及び/または刺激することができる、分子(例えば、抗原結合ポリペプチド及び/または抗体及び/または抗原結合抗体断片)を指し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるアゴニストは、受容体に関連するシグナル伝達経路の活性化を誘導、増強、強化、及び/または刺激することが可能である。
【0048】
参照抗体と「結合において競合する抗体」とは、競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原、例えばKLBへの結合を50%以上遮断する抗体を指し、逆に、参照抗体は、競合アッセイにおいて抗体のその抗原、例えばKLBへの結合を50%以上遮断する。例示的な競合アッセイは、「Antibodies」Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY)に記載されている。
【0049】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の源または種に由来し、一方で重鎖及び/または軽鎖の残りが異なる源または種に由来する抗体を指す。
【0050】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAに更に分けることができる。免役グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、開示される抗体のクラスまたはサブクラス(アイソタイプ)のうちのいずれであってもよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、「細胞傷害性薬剤」という用語は、細胞機能を阻害もしくは阻止する、かつ/または細胞死もしくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性薬剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤もしくは化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);成長阻害剤;核酸分解酵素等の酵素及びそれらの断片;抗生物質;細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片及び/または変異形を含む)等の毒素;ならびに下に記載される様々な抗腫瘍または抗癌薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
「エフェクター機能」とは、抗体のアイソタイプにより異なる抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化が挙げられる。
【0053】
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異型Fc領域を含む。ある特定の実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、しない場合もある。本明細書で別途明記されない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されている、EUインデックスとも呼ばれるEU付番システムに従う。
【0054】
「フレームワーク」または「FR」とは、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン、FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般に、VH(またはVL)にFR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4の順序で出現する。
【0055】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書で、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、または本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すように同義に使用される。
【0056】
同義に使用される「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、外因性核酸が中に導入されている細胞を指し、かかる細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び継代の数にかかわらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではない場合があるが、変異を含み得る。最初に形質転換された細胞についてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークを指す。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列の下位群からである。一般に、配列の下位群は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3に見られるような下位群である。ある特定の実施形態では、VLの場合、下位群は、Kabat et al.(上記参照)に見られるような下位群カッパIである。ある特定の実施形態では、VHの場合、下位群は、Kabat et al.(上記参照)に見られるような下位群IIIである。
【0059】
本明細書で使用される場合、「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み得、そのHVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化型」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0060】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は、一般に類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存フレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。)単一のVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、VHドメインまたはVLドメインを使用して抗原に結合する抗体から単離されて、それぞれ、相補的VLドメインまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングすることができる。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993)、Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」)、かつ/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触体」)を含有する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。本明細書における例示的なHVRは、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)で生じるCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で生じる抗原接触体(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996));ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/または(c)の組み合わせ、を含む。
別途指定されない限り、HVR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.(上記参照)に従って本明細書で付番される。
【0062】
本明細書で使用される場合、「免疫複合体」は、細胞傷害性薬剤を含むがこれに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)に複合体化される抗体を指す。
【0063】
本明細書で同義に使用される「個体」、「患者」、または「対象」は、哺乳動物を指す。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「単離された」抗体とは、その天然環境の成分から分離された抗体を指す。ある特定の実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって決定される、95%または99%を超える純度に精製される。抗体の純度を評定するための方法の概説については、例えば、Flatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0065】
本明細書で使用される場合、「単離された」核酸とは、その天然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常は核酸分子を含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、その核酸分子が染色体外に、またはその天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0066】
「抗体をコードする単離された核酸」(特異的抗体、例えば、抗KLB抗体への言及を含む)は、抗体重鎖及び軽鎖(またはそれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクターまたは別個のベクター内のかかる核酸分子(複数可)を含み、かかる核酸分子(複数可)は、宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが結合している別の核酸を運搬することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入される宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合している核酸の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、例えば、天然に存在する変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に発生する可能な変異型抗体(かかる変異型は、一般的に少量で存在する)、または多重特異性抗体、例えば、少なくとも2つの異なるエピトープに結合する抗体を除く。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体の集団から得られるときの抗体の特徴を示しており、いかなる特定の方法による抗体の産生を必要とするものとしても解釈されない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない、多様な技法によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及び他の例示的な方法が、本明細書に記載されている。
【0069】
本明細書で使用される場合、「裸の抗体」は、異種性部分(例えば、細胞傷害性部分)または放射標識に複合されていない抗体を指す。裸の抗体は、薬学的製剤中に存在してもよい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「天然抗体」とは、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、限定するものではないが、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン(variable heavy domain)または重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)とを有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメイン(variable light domain)または軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、その後に定常軽(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの型うちの1つに割り当てられ得る。ある特定の実施形態では、ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、IgGの残基約231から約340まで延びる。ある特定の実施形態では、「CH3ドメイン」は、Fc領域におけるC末端からCH2ドメインまで(即ち、IgGのアミノ酸残基約341からアミノ酸残基約447)の残基の伸展を含む。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」は、概して、ヒトIgGlのアミノ酸Glu216からPro230を指す(Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖内S-S結合を形成する最初及び最後のシステイン残基を同じ位置に入れることによってIgG1配列と整列し得る。
【0072】
「界面」という用語は、第2の抗原結合ポリペプチドの界面で1つ以上の「接触」アミノ酸残基(または他の非アミノ酸基)と相互作用する第1の抗原結合ポリペプチドにおける「接触」アミノ酸残基(または炭水化物群、NADH、ビオチン、FAD、またはヘム群等の他の非アミノ酸群)を含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、「添付文書」という用語は、かかる治療薬の適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症についての情報、及び/またはその使用に関する警告を含有する、治療剤製品の市販パッケージに通例含まれる指示書を指す。
【0074】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、いずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後の、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一の候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するための整列は、当該技術分野の技術範囲内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたる最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的では、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって記述され、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権庁(U.S.Copyright Office),Washington D.C.,20559に提出されており、米国著作権番号TXU510087の下に登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に入手可能であるか、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変動しない。
【0075】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によって、そのプログラムのA及びBの整列において完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくはならないことが理解されるだろう。別段具体的に述べられない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「薬学的製剤」という用語は、調製物の中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を何ら含有しない調製物を指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、対象にとって無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療すること」等のその文法上の変形)とは、治療されている個体の自然経過を変更することを目的とした臨床介入を指し、予防のために、または臨床病理過程中に実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患進行速度の減少、病状の回復または寛解、及び緩解または予後の改善が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明の抗体を使用して、疾患の発達を遅延させるか、または疾患の進行を減速させる。
【0079】
薬剤、例えば、薬学的製剤の「治療有効量」または「有効量」とは、必要な投与量で必要な期間にわたって所望の治療または予防結果を達成するのに有効な量を指す。例えば、限定するものではなく、「治療有効量」または「有効量」は、疾患の何らかの直接的もしくは間接的な病理学的帰結の縮小、疾患進行の速度の低下、病態の回復、寛解もしくは予後改善、疾患の発生もしくは再発の防止、及び/または症状の緩和をもたらす、二重特異性抗体の投薬量を指し得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、値の測定方法または決定方法、即ち、測定システムの限界にある程度依存することになる、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内であることを意味する。例えば、「約」は、当該技術分野における慣行により、3以上の標準偏差内であることを意味する。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%、より好ましくは更に最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物系または生物学的過程に関して、本用語は、値の好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の桁内であることを意味し得る。
【0081】
本明細書に記載される場合、いずれの濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲も、別途指定されない限り、挙げられる範囲内のいずれの整数値、及び適切な場合にはその分数(整数の10分の1、及び100分の1等)を含むことが理解される。
【0082】
II.抗体
本明細書に開示される主題は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体を提供する。本開示の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる結合特異性を有する。例えば、米国特許第5,922,845号及び同第5,837,243号;Zeilder(1999)J.Immunol.163:1246-1252;Somasundaram(1999)Hum.Antibodies 9:47-54;Keler(1997)Cancer Res.57:4008-4014を参照されたい。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性抗体、例えば、バイエピトープ性抗体は、抗原上の少なくとも2つの異なるエピトープに結合するか、または抗原上で重なり合う少なくとも2つのエピトープに結合し得る。あるいは、ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に結合し得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を指す。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面分類からなり、通常、特定の3次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープと非立体配座エピトープとは、変性溶媒の存在下で前者への結合が失われるが、後者への結合は失われないことにおいて区別される。
【0084】
A.多重特異性抗体
本明細書に開示される主題は、抗原上に存在する少なくとも2つのエピトープ、例えば、重なり合っているエピトープまたは重なり合っていないエピトープに結合する、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体及びバイエピトープ性抗体を提供する。本明細書に開示される主題は、第1の抗原上の少なくとも1つのエピトープと第2の抗原上の少なくとも1つのエピトープとに結合する多重特異性抗体を更に提供する。本明細書に開示される多重特異性抗体は、アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体であり得る。
【0085】
ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、1つ以上の抗原結合ポリペプチドを含み得る。例えば、限定するものではなく、本開示の多重特異性抗体は、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドを含み得る。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドは、異なる結合特異性を有する。例えば、限定するものではなく、第1の抗原結合ポリペプチドは抗原上の第1のエピトープに結合することができ、第2の抗原結合ポリペプチドは抗原上の第2のエピトープに結合することができる。あるいは、ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチドは第1の抗原に結合することができ、第2の抗原結合ポリペプチドは第2の抗原に結合することができる。
【0086】
ある特定の実施形態では、また図1Bに示されるように、第1の抗原結合ポリペプチド及び/または第2の抗原結合ポリペプチドは、軽鎖可変領域(VL)、重鎖可変領域(VH)、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及び/またはCH3ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、開示される多重特異性抗体の抗原結合ポリペプチドは、VL、VH、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含み、これらの構成要素は、互いに対して、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる。ある特定の実施形態では、第1及び/または第2の抗原結合ポリペプチドは、CH1ドメインとCH2ドメインとの間のヒンジ領域を更に含み得る。
【0087】
ある特定の実施形態では、抗原結合ポリペプチド(例えば、第1の抗原結合ポリペプチド)内に存在するVLドメインは、リンカーによって、同じ抗原結合ポリペプチド内に存在するVHに接合し得る。例えば、限定するものではなく、VLドメインのC末端は、VHドメインのN末端に連結し得る。本開示の多重特異性抗体が少なくとも2つの抗原結合ポリペプチドを含むある特定の実施形態では、抗原結合ポリペプチドの各々の中に存在するリンカーは同じであり得る。あるいは、抗原結合ポリペプチドの各々の中に存在するリンカーは異なってもよい。
【0088】
ある特定の実施形態では、リンカーは、中性、極性、または非極性アミノ酸を含み得る。ある特定の実施形態では、リンカーは、約1~約100アミノ酸長、例えば、約1~50アミノ酸長の長さであり得る。例えば、限定するものではなく、第1及び/または第2の抗原結合ポリペプチド内に存在するリンカーは、約1以上、約2以上、約3以上、約4以上、約5以上、約6以上、約7以上、約8以上、約9以上、約10以上、約15以上、約20以上、約25以上、約30以上、約35以上、約40以上、または約45以上のアミノ酸を含み得る。リンカーの非限定例は、Shen et al.,Anal.Chem.80(6):1910-1917(2008)及びWO2014/087010に開示されており、これらの内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、リンカーはGly(G)4Ser(S)リンカー(配列番号70)である。ある特定の実施形態では、リンカーは、GGGGS反復配列、例えば、約2の反復配列((GGGGS))(配列番号73)、約3の反復配列((GGGGS))(配列番号74)、約4の反復配列((GGGGS))(配列番号68)、約5の反復配列((GGGGS))(配列番号75)、約6の反復配列((GGGGS))(配列番号76)、または約7の反復配列((GGGGS))(配列番号77)を含む。リンカーの追加の非限定例は表7に開示される。ある特定の実施形態では、リンカーは配列番号68に記載のアミノ酸配列を含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカー、例えば、自己切断可能な、酵素的に切断可能な、または化学的に切断可能なリンカーであり得る。全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2011/034605を参照されたい。例えば、限定するものではなく、リンカーの酵素的切断は、エンドペプチダーゼまたはエキソペプチダーゼの使用を含み得る。エンドペプチダーゼの非限定例には、ウロキナーゼ、Lys-C、Asp-N、Arg-C、V8、Glu-C、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、パパイン、トロンビン、ゲネナーゼ、第Xa因子、TEV(タバコエッチウイルスシステインプロテアーゼ)、エンテロキナーゼ、HRV C3(ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ)、イニノゲナーゼ(ininogenase)、スブチリシン様前駆タンパク質転換酵素(例えば、フーリン(PC1)、PC2、またはPC3)、及びN-アルギニン二塩基性転換酵素が挙げられる。エキソペプチダーゼの非限定例には、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、カルボキシペプチダーゼD、カルボキシペプチダーゼE(カルボキシペプチダーゼHとも呼ばれる)、カルボキシペプチダーゼM、カルボキシペプチダーゼN、またはカルボキシペプチダーゼZが挙げられる。ある特定の実施形態では、化学切断は、ヒドロキシルアミン、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、または臭化シアンを使用することによって行われ得る。
表7
【0090】
ある特定の実施形態では、例えば、本開示の多重特異性抗体は、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドを含み、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドは、1つ以上のジスルフィド架橋によって相互作用し得る。例えば、限定するものではなく、ある特定の実施形態では、第1及び第2の抗原結合ポリペプチドのヒンジ領域は、1つ以上のジスルフィド架橋、例えば、2つのジスルフィド架橋によって相互作用し得る。
【0091】
ある特定の実施形態では、本多重特異性、例えば、二重特異性抗体は、本明細書に開示される抗体の抗原結合ポリペプチドの各々の中にヘテロ二量体化ドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、開示される多重特異性抗体の第1及び第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインは、第1及び第2の抗原結合ポリペプチドのヘテロ二量体化を促進するように改変され得る。例えば、限定するものではなく、第1及び/または第2の抗原結合ポリペプチドは、第1の抗原結合ポリペプチドと第2の抗原結合ポリペプチドとの間の会合及び/または相互作用を促進するために、ノブ・イン・ホール技術(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,731,168号及び同第8,216,805号を参照されたい)を使用する1つ以上のヘテロ二量体化ドメインを含み得る。
【0092】
ある特定の実施形態では、第1及び/または第2の抗原結合ポリペプチドは、抗原結合ポリペプチドの表面に突起または空洞を発生させるように改変され得る。例えば、限定するものではなく、第1の抗原結合ポリペプチドは、第1の抗原結合ポリペプチドの表面に突起を発生させるように改変され得、第2の抗原結合ポリペプチドは、第2の抗原結合ポリペプチド上に空洞を発生させるように改変され得、ここで、第1の抗原結合ポリペプチドの突起は、第2の抗原結合ポリペプチドの空洞と相互作用して、ヘテロ二量体化を促進する。ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性、例えば、二重特異性抗体は、界面で相互作用する第1の抗原結合ポリペプチドと第2の抗原結合ポリペプチドとを含み得、第1の抗原結合ポリペプチドは、界面で突起を有し、この突起は、第2の抗原結合ポリペプチドの界面の空洞の中に位置付けることができる。例えば、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,216,805号を参照されたい。
【0093】
ある特定の実施形態では、突起または空洞を発生させるように改変される抗原結合ポリペプチドの領域は、CH3ドメインの位置であり得る。例えば、第1の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメイン内の突起は、側鎖が小さいアミノ酸、例えば、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、またはバリン(V)を、側鎖が大きいアミノ酸、例えば、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、またはトリプトファン(W)で代置することによって発生させることができる。例えば、限定するものではなく、突起(例えば、「ノブ」)を発生させるために抗原結合ポリペプチドに導入することができる突然変異には、T366W(EU付番)が挙げられる。突起と同一または類似サイズの補償空洞を、例えば、側鎖がより大きいアミノ酸を、側鎖がより小さいアミノ酸で代置することによって、第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメイン内に発生させることができる。例えば、限定するものではなく、空洞(例えば、「ホール」)を生成するために抗原結合ポリペプチドに導入することができる突然変異には、T366S、L368A、及び/またはY407V(EU付番)が挙げられる。
【0094】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体は、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドを含み得、ここで第1の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基は、より大きい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインと相互作用する第1の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの表面に突起を発生させる。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基は、より小さい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、第1の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインと相互作用する第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの表面上に空洞を発生させる(例えば、図1Bを参照されたい)。
【0095】
ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性抗体は軽鎖定常ドメイン(CL)を含まない。あるいは、本明細書に開示される多重特異性抗体は1つ以上のCLドメインを含むことができる。例えば、限定するものではなく、多重特異性抗体がCLドメインを含む場合、このCLドメインは、1つ以上のジスルフィド架橋によってCH1ドメインと相互作用する。ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性抗体が第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドを含む場合、本多重特異性抗体は2つのCLドメインを更に含み得る。ある特定の実施形態では、例えば、1つ以上のジスルフィド架橋を通して、CLドメインのうちの一方が第1の抗原結合ポリペプチドと相互作用し、他方のCLドメインが第1の抗原結合ポリペプチドと相互作用する。例えば、限定するものではなく、これらのCLドメインは、抗原結合ポリペプチドのCH1ドメインと相互作用することができる。ある特定の実施形態では、2つのCLドメインは同じであることも異なることもできる。ある特定の実施形態では、CLドメインは第1または第2の抗原結合ポリペプチドに共有結合しない。ある特定の実施形態では、CLドメインはCH1ドメインに共有結合しない。ある特定の実施形態では、CLドメインはVLドメインに共有結合しない。ある特定の実施形態では、VL及びCLは分離している。ある特定の実施形態では、この分離は、VLとCLとの間の任意の結合部にあることができる。ある特定の実施形態では、結合部はT109にあり得る(即ち、CLはT109で開始し得、VLはR108で終結し得る)。ある特定の他の実施形態では、CLはV110から開始する。
【0096】
本明細書に開示される主題は、アンタゴニスト抗体及びアゴニスト抗体を更に提供する。例えば、限定するものではなく、本開示のアゴニスト抗体はバイエピトープ性抗体であり、ここで、本抗体は同じ抗原上の2つのエピトープに結合する。ある特定の実施形態では、本バイエピトープ性抗体が結合するエピトープは、抗原上で重なり合っていないか、または少なくとも部分的に重なり合っている。ある特定の実施形態では、本開示のバイエピトープ性抗体、例えば、アゴニスト性バイエピトープ性抗体は、本明細書に開示されるように、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドを含み得る。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドは、異なる結合特異性を有し、ここで、第1の抗原結合ポリペプチドは抗原上で第1のエピトープに結合し得、第2の抗原結合ポリペプチドは抗原上で第2のエピトープに結合し得る。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題のバイエピトープ性アゴニスト抗体の抗原結合ポリペプチドは、VL、リンカー、VH、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含み得、これらの構成要素は、互いに対して、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる。本開示のアゴニスト性バイエピトープ性抗体の抗原結合ポリペプチドは、本明細書に開示されるように、ポリペプチドの各々の中にヘテロ二量体化ドメインを更に含み得る。ある特定の実施形態では、これらのヘテロ二量体化ドメインは、ノブ・イン・ホール技法によって生成される。例えば、限定するものではなく、第1の抗原結合ポリペプチドは、例えば、そのCH3ドメイン内に突起を有し得、第2の抗原結合ポリペプチドは、例えば、そのCH3ドメイン内に空洞を有し得、これらが相互作用してヘテロ二量体化を促進する。
【0097】
ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性アゴニスト抗体、例えば、バイエピトープ性アゴニスト抗体は、単独または組み合わせでの本バイエピトープ性アゴニスト抗体が由来する親の単一特異性抗体よりも優れたアゴニスト活性を呈する。例えば、限定するものではなく、本明細書に開示されるバイエピトープ性アゴニスト抗体は、同一のVL及びVH配列を有する単一特異性抗体よりも優れたアゴニスト活性を呈する。ある特定の実施形態では、本開示のバイエピトープ性アゴニスト抗体は、同一のVL、VH、CH1、CH2、及び/またはCH3配列を有する単一特異性抗体よりも優れたアゴニスト活性を呈する。
【0098】
ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性アンタゴニスト抗体、例えば、バイエピトープ性アンタゴニスト抗体は、単独または組み合わせでの本バイエピトープ性アンタゴニスト抗体が由来する親の単一特異性抗体よりも優れたアンタゴニスト活性を呈する。例えば、限定するものではなく、本明細書に開示されるバイエピトープ性アンタゴニスト抗体は、同一のVL及びVH配列を有する単一特異性抗体よりも優れたアンタゴニスト活性を呈する。ある特定の実施形態では、本開示のバイエピトープ性アンタゴニスト抗体は、同一のVL、VH、CH1、CH2、及び/またはCH3配列を有する単一特異性抗体よりも優れたアンタゴニスト活性を呈する。
【0099】
B.二重特異性抗KLB抗体
本明細書に開示される主題は、クロトー-ベータ(KLB)に結合し、FGFR1c/KLB受容体複合体の活性を調節するように機能することができる、多重特異性抗体、例えば、二重特異性及びバイエピトープ性抗体を更に提供する。開示される抗KLB抗体は、例えば、リガンドの効果を刺激し、かつ/またはFGFR1c/KLB受容体複合体を活性化させる、FGFR1c/KLB受容体複合体のアゴニストとして機能し得る。
【0100】
本明細書に開示される主題は、KLBタンパク質上に存在する少なくとも2つのエピトープに結合する抗KLB抗体またはそれらの抗原結合部分、例えば、二重特異性または多重特異性抗体を提供する。例えば、限定するものではなく、本明細書に開示される主題は、KLB上に存在する第1のエピトープのための1つの結合部位(例えば、抗原結合部位)と、KLB上に存在する第2のエピトープのための第2の結合部位とを有する、二重特異性抗体、例えば、バイエピトープ性抗体を提供する。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、少なくとも3つの結合部位を有する多重特異性抗体を提供する。
【0101】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の開示される二重特異性抗体は、KLBのグリコシダーゼ様ドメインであるKL1内に存在する2つのエピトープに結合する。ある特定の実施形態では、開示される二重特異性抗体は、KLBのグリコシダーゼ様ドメインであるKL2内に存在する2つのエピトープに結合する。ある特定の実施形態では、開示される二重特異性抗体は、KLB上に存在する2つのエピトープに結合し、ここで、エピトープのうちの一方はKL1内に存在し、第2のエピトープはKL2内に存在する。
【0102】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の開示される二重特異性抗体は、アミノ酸配列iqfynkvissrgfpfensssrcsqtqentectvclflvqkkpliflgccffstlvlllsiaifqrqkrrkfwkaknlqhiplkkgkrvvs(配列番号43)またはその断片を含むKLBの断片に結合する。
【0103】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の開示される二重特異性抗体は、アミノ酸配列ADSHWRAAERFLQFEIAWFAEPLFKTGDYPAAMREYIASKHRRGLSSSALPRLTEAERRLLKGTVDFCALNHFTTRFVMHEQLAGSRYDSDRDI(配列番号44)またはその断片を含むKLBの断片に結合する。
【0104】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の開示される二重特異性抗体は、アミノ酸配列
FSGDGRAIWSKNPNFTPVNESQLFLYDTFPKNFFWGIGTGALQVEGSWKKDGKGPSIWDHFIHTHLKNVSSTNGSSDSYIFLEKDLSALDFIGVSFYQFSISWPRLFPDGIVTVANAKGLQYYSTLLDALVLRNIEPIVTLYHWDLPLALQEKYGGWKNDTIIDIFNDYATYCFQMFGDRVKYWITIHNPYLVAWHGYGTGMHAPGEKGNLAAVYTVGHNLIKAHSKVWHNYNTHFRPHQKGWLSITLGSHWIEPNRSENTMDIFKCQQSMVSVLGWFANPIHGDGDYPEGMRKKLFSVLPIFSEAEKHEMRGTADFFAFSFGPNNFKPLNTMAKMGQNVSLNLREALNWIKLEYNNPRILIAENGWFTDSRVKTEDTTAIYMMKNFLSQVLQAIRLDEIRVFGYTAWSLLDGFEWQDAYTIRRGLFYVDFNSKQKERKPKSSAHYYKQIIRENGFSLKESTPDVQGQFPCDFSWGVTESVLKPESVASSPQFSDPHLYVWNATGNRLLHRVEGVRLKTRPAQCTDFVNIKKQLEMLARMKVTHYRFALDWASVLPTGNLSAVNRQA(配列番号45)またはその断片を含むKLBの断片に結合する。
【0105】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の開示される二重特異性抗体は、配列番号42、43、44、及び/または45に記載のアミノ酸配列を有するKLBの1つ以上の断片に結合する。例えば、限定するものではなく、本開示の二重特異性抗KLB抗体は、配列番号45に記載のアミノ酸配列またはその断片を含むKLBの1つの断片に結合することができ、かつ配列番号44に記載のアミノ酸配列またはその断片を含むKLBの第2の断片に結合することができる。
【0106】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の開示される二重特異性抗体は、KLB/FGFR1c複合体活性を調節し、本複合体のFGFR1cは、アミノ酸配列KTVALGSNVEFMCKVYSDPQPHIQWLKHIEVNGSKIGPDNLPYVQILKTAGVNTTDKEMEVLHLRNVSFEDAGEYTCLAGNSIGLSHHSAWLTVLEALEERPAVMT(配列番号46)またはその断片を含む。
【0107】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される二重特異性抗体は、抗体断片またはダイアボディであり得る。ダイアボディは、二価の二重特異性抗体であり、この二重特異性抗体においては、VHドメイン及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上のこれらの2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗体、例えば、抗原、抗原結合部位を創出する(例えば、Holliger,P.,et al.(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al..(1994)Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0108】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される二重特異性抗KLB抗体は、抗体がKLBの標的化において診断薬及び/または治療剤として有用になるのに十分な親和性でKLBに結合することができる抗体である。ある特定の実施形態では、抗KLB抗体が無関係の非KLBタンパク質に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体のKLBへの結合の約10%未満である。
【0109】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される抗KLB抗体は、KLB/FGFR1c複合体活性を調節する抗体を指す。例えば、二重特異性抗KLB抗体は、アゴニストとして機能し、KLB/FGFR1c複合体を活性化させることができる。ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、KLB/FGFR1c複合体の活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または99.9%増加させる抗体である。ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、KLB/FGFR1c複合体の下流にある標的、例えば、MAPK及び/またはERKのリン酸化をもたらす抗体であり得る。
【0110】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。ある特定の実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号34、36、38、40、または42に記載の配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の配列を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号33、35、37、39、または41に記載の配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の配列を有するアミノ酸を含む。
【0111】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号34に記載の配列と約95%同一である配列を有する重鎖可変領域と、配列番号33に記載の配列と約95%同一である配列を有する軽鎖可変領域とを含み得る。
【0112】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号36に記載の配列と約95%同一である配列を有する重鎖可変領域と、配列番号35に記載の配列と約95%同一である配列を有する軽鎖可変領域とを含み得る。
【0113】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号38に記載の配列と約95%同一の配列を有する重鎖可変領域と、配列番号37に記載の配列と約95%同一の配列を有する軽鎖可変領域とを含み得る。
【0114】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号40に記載の配列と約95%同一である配列を有する重鎖可変領域と、配列番号39に記載の配列と約95%同一である配列を有する軽鎖可変領域とを含み得る。
【0115】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号42に記載の配列と約95%同一である配列を有する重鎖可変領域と、配列番号41に記載の配列と約95%同一である配列を有する軽鎖可変領域とを含み得る。
【0116】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域とを含む。ある特定の実施形態では、重鎖可変領域CDR1ドメインは、配列番号3、4、5、6、または7に記載の配列を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、重鎖可変領域CDR2ドメインは、配列番号8、9、10、11、または12に記載の配列を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、重鎖可変領域CDR3ドメインは、配列番号13、14、15、16、または17に記載の配列を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域CDR1ドメインは、配列番号18、19、20、21、及び22に記載の配列を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域CDR2ドメインは、配列番号23、24、25、26、または27に記載の配列を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、軽鎖可変領域CDR3ドメインは、配列番号28、29、30、31、または32に記載の配列を有するアミノ酸配列を含む。
【0117】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号7に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR1;配列番号12に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR2;配列番号17に記載の配列を有する重鎖可変領域CDR3;配列番号22に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR1;配列番号27に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号32に記載の配列を有する軽鎖可変領域CDR3を含む。
【0118】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、第1の抗体またはその抗原結合部分、及び第2の抗体またはその抗原結合部分を含み、この第1の抗体またはその抗原結合部分及び第2の抗体またはその抗原結合部分は、KLB上に存在する異なるエピトープに結合する。例えば、限定するものではなく、第1の抗体またはその抗原結合部分は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得、第2の抗体またはその抗原結合部分は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得る。ある特定の実施形態では、第1及び/もしくは第2の抗体またはその抗原結合部分の重鎖可変領域は、配列番号34、36、38、40、または42に記載の配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を有するアミノ酸を含む。ある特定の実施形態では、第1及び/もしくは第2の抗体またはその抗原結合部分の軽鎖可変領域は、配列番号33、35、37、39、または41に記載の配列を有するアミノ酸を含む。
【0119】
例えば、限定するものではないが、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号40に記載の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号39に記載の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、配列番号42に記載の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号41に記載の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含み得る。
【0120】
ある特定の実施形態では、二重特異性抗KLB抗体は、配列番号34に記載の配列と約95%同一である配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号33に記載の配列と約95%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、配列番号40に記載の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び配列番号39に記載の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含み得る。
【0121】
1.抗体親和性
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される多重特異性及び二重特異性抗体は、解離定数(K)が、約0.001nM~約1μMまたは約10-8M~約10-13Mであり得る。例えば、限定するものではなく、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、Kが、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下であり得る。ある特定の実施形態では、多重特異性抗体は、Kが、約10-8M以下、約10-9M以下、約10-10M以下、約10-11M以下、約10-12M、または約10-13M以下からまでであり得る。
【0122】
ある特定の実施形態では、Kは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定され得る。ある特定の実施形態では、RIAは、目的とする二重特異性抗体のF(ab)バージョン及びその2つの抗原で実行される。例えば、抗原に対するF(ab)の溶液結合親和性は、非標識抗原の一連の滴定の存在下で、F(ab)を最小濃度の(125I)標識抗原と平衡化し、その後、抗Fab抗体でコーティングされたプレートで結合した抗原を捕捉することによって、測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間にわたって室温(約23℃)で遮断する。非吸着性のプレート(Nunc番号269620)中で、100pMまたは26pM[125I]-抗原を、目的とするFabの段階希釈液と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)の抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致する)。次いで、目的とするFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションは、平衡に達することを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)継続してもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。その後、溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT-20(商標);Packard)を付加し、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)上で10分間、計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0123】
ある特定の実施形態では、Kは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定することができる。 例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイを、約10の応答単位(RU)で、固定化された抗原CM5チップを用いて25℃で実行する。ある特定の実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示書に従って、N-エチル-N´-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(約0.2μM)になるまで希釈した後に、5μL/分の流量で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fabの2倍段階希釈液(0.78nM~500nM)を、25℃の0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中約25μL/分の流量で注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムとを同時に当てはめることによって計算される。平衡解離定数(K)を、比率koff/konとして計算する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。オン速度が、上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって、10-1-1を超える場合、オン速度は、撹拌されたキュベットを備えるストップトフロー装着分光光度計(Aviv Instruments)または8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)等の分光計において測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、25℃でのPBS(pH7.2)中の20nM抗-抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する、蛍光消光技法を使用することによって、判定することができる。
【0124】
2.抗体断片
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片には、F(ab´)、ダイアボディ、及び以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたく、PCT出願第WO93/16185号ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。
【0125】
ダイアボディは、二価または二重特異性であってもよい2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP特許出願第404,097号;PCT出願第WO1993/01161号;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)で説明されている。
【0126】
抗体断片の追加の非限定例には、Fab、Fab´、Fab´-SH、Fv、及びscFv断片が挙げられる。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む、抗体断片である。特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA、例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照されたい)。
【0127】
サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab´)断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0128】
抗体断片は、本明細書に記載される、インタクトな抗体のタンパク分解、ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない、様々な技法によって作製され得る。
【0129】
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される多重特異性及び二重特異性抗体はキメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。ある特定の実施形態では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0130】
ある特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低減させるために、ヒト化され得る。ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDRまたはその一部が非ヒト抗体由来であり、かつFRまたはその一部がヒト抗体配列由来である1つ以上の可変ドメインを含み得る。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部を含み得る。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0131】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat´l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)移植について説明);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェイシング」について説明);Dall´Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャフリング」について説明)、ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択」アプローチについて説明)に更に記載されている。
【0132】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「最良適合」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞株フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)。
【0133】
4.ヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される多重特異性及び二重特異性抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0134】
ヒト抗体は、抗原投与に応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するかもしくは動物の染色体内にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)技術について説明)、米国特許第5,770,429号(HuMab(登録商標)技術について説明)、米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)技術について説明)、及び米国特許出願公開第US 2007/0061900号(VelociMouse(登録商標)技術について説明)を参照されたい。かかる動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって更に修飾され得る。
【0135】
ある特定の実施形態では、ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が説明されてきた(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体もまた、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載される。更なる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて説明)に記載の方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0136】
ある特定の実施形態では、ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。かかる可変ドメイン配列は、次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法は、以下に記載される。
【0137】
5.ライブラリ由来抗体
本開示の多重特異性及び二重特異性抗体、例えば、二重特異性抗KLB抗体は、所望の活性(単数または複数)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、限定するものではないが、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を保有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための多様な方法が、当該技術分野で既知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O´Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説されており、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992)、Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods284(1-2):119-132(2004)に更に記載されている。
【0138】
ある特定のファージディスプレイ方法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリでランダムに組み換えられ、その後、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されるように抗原結合ファージについてスクリーニングされる。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片をディスプレイする。免疫付与源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)によって記載されるように、ナイーブレパートリーは、クローニングされ(例えば、ヒトから)、いかなる免疫付与も伴わずに、幅広い非自己抗原また自己抗原に対する抗体の単一の源を提供することができる。最後に、ナイーブライブラリはまた、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞からの再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、無作為配列を含有するPCRプライマーを使用して高度可変CDR3領域をコードし、インビトロで再配列を達成することによって、合成的に作製することができる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公開としては、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0139】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0140】
6.抗体変異型
ある特定の実施形態では、開示される抗体のアミノ酸配列変異型が本明細書で提供される。例えば、抗体のアミノ酸配列変異型を生成することによって、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。本開示の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗KLB抗体のアミノ酸配列変異型は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列の残基からの欠失、及び/またはそこへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。最終構築物に到達するために欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行うことができるが、但し、その最終構築物が所望の特性、例えば、抗原結合を保有することを条件とする。
【0141】
a)置換、挿入、及び欠失変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異型が提供される。置換型変異誘発の目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換の非限定例が、「好ましい置換」の見出しで表1に示される。より実質的な変化の非限定例は、「例示的な置換」という見出しで表1に提供され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される。アミノ酸置換を、目的とする抗体中に導入することができ、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低減、または補体依存性細胞傷害もしくは抗体依存性細胞媒介性細胞傷害の改善について生成物をスクリーニングすることができる。
【0142】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0143】
ある特定の実施形態では、非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0144】
ある特定の実施形態では、一種の置換型変異型は、親抗体、例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、更なる研究のために選択される、得られた変異型(複数可)は、親抗体と比べて、親和性の増加、免疫原性の低減等であるがこれらに限定されないある特定の生物学的特性における改変、例えば、改善を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有することになる。置換変異型の非限定例は親和性成熟抗体であり、これは、例えば、本明細書に記載される技法等のファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成され得る。簡潔には、1つ以上のHVR残基が変異し、変異形抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0145】
ある特定の実施形態では、改変(例えば、置換)は、HVRにおいて、例えば、抗体親和性を改善するために行われ得る。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟過程中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされた残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)参照されたい)、及び/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異型VHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、それから再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37に記載されている(O´Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))。親和成熟のある特定の実施形態では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択された可変遺伝子中に多様性が導入され得る。次いで、二次ライブラリが創出される。次いで、ライブラリがスクリーニングされ、所望の親和性を有する任意の抗体変異型を特定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6つの残基)がランダム化されるHVR指向アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3及びCDR-L3が標的化されることが多い。
【0146】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR間で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)がHVR内で行われ得る。かかる改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上述の変異型VH配列及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0147】
変異誘発のために標的とされ得る抗体の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって説明される「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、及びglu等の荷電残基)が特定され、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体と抗原との相互作用に影響が及ぼされたかどうかを決定する。更なる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。あるいは、または更に、抗体と抗原との間の接触点を識別するための抗原-抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異型がスクリーニングされて、それらが上記の所望の特性を有するかを決定することができる。
【0148】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれ得る。末端挿入の非限定例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型変異型には、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのため)またはポリペプチドへの抗体のN末端もしくはC末端の融合を挙げることができる。
【0149】
b)グリコシル化変異型
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される多重特異性及び二重特異性抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変され得る。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が創出または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成され得る。
【0150】
抗体がFc領域を含むある特定の実施形態では、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。ある特定の実施形態では、本発明の抗体中におけるオリゴ糖の修飾は、特定の特性の改善を有する抗体変異型を作製するために行われ得る。
【0151】
ある特定の実施形態では、Fc領域に(直接または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異型が提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、約1%~約80%、約1%~約65%、約5%~約65%、または約20%~約40%、及びその間の値であり得る。
【0152】
フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載のMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対するAsn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定され得る。Asn297は、Fc領域の約297位(Fc領域残基のEu付番)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体内のわずかな配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸上流または下流、即ち294~300位の間に位置し得る。かかるフコシル化変異型は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第US2003/0157108号(Presta,L.)、同第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異形に関する公報の例には、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。
【0153】
脱フコシル化抗体は、タンパク質フコシル化が欠乏した任意の細胞株中で産生させることができる。細胞株の非限定例には、タンパク質フコシル化が欠乏したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US 2003/0157108 A1号、Presta,L;及びWO2004/056312 A1、Adamsら、特に実施例11)、ならびにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0154】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分される、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異型が更に提供される。かかる抗体変異型は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異型の非限定例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異型も提供される。かかる抗体変異型は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異形は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0155】
c)Fc領域変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それによりFc領域変異型が生成され得る。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置でアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG、IgG、IgG、またはIgGFc領域)を含んでもよい。
【0156】
ある特定の実施形態では、本発明は、全てではなくいくつかのエフェクター機能を保有し、それにより、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、更にある特定のエフェクター機能(補体及びADCC等)が不必要であるか、または有害である用途に対して望ましい候補となる、抗体変異型を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat´l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat´l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985)、同第5,821,337号(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または更に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat´l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されるもの等の動物モデルにおいて、評価されてもよい。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができず、それ故にCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003)、及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定も、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int´l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0157】
低下したエフェクター機能を有する抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上における置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0158】
FcRへの結合が改善したまたは減衰したある特定の抗体変異型が説明されている(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、抗体変異型は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU付番)での置換を有するFc領域を含む。ある特定の実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.164:4178-4184(2000)に記載されているように、改変された(即ち、改善したまたは減衰した)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす改変がFc領域中でなされる。
【0159】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される二重特異性抗体のFc領域中でなされた改変により、増加した半減期と、母体IgGの胎児への移送に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合とを有する変異型抗体を産生させることができ(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))、これは、US2005/0014934A1(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。そのようなFc変異形は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。
【0160】
Fc領域変異形の他の例に関して、Duncan&Winter,Nature322:738-40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0161】
d)システイン操作された抗体変異型
特定の実施形態において、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗体、例えば、「thioMAb」を作製することが望ましい場合がある。ある特定の実施形態では、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じ得る。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基がそれにより抗体の利用しやすい部位に位置付けられ、それを使用して、薬物部分またはリンカー-薬物部分等の他の部分に抗体を複合体化して、本明細書に記載されるように、免疫複合体を作製することができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0162】
e)抗体誘導体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される多重特異性、例えば、二重特異性抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレン(propropylene)グリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造において有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、分岐状であっても非分岐状であってもよい。抗体に結合するポリマーの数は異なり得、1つ以上のポリマーが結合する場合、それらは同じ分子であっても異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下で治療に使用されるかどうか等を含むがこれらに限定されない検討事項に基づいて決定され得る。
【0163】
ある特定の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る、抗体及び非タンパク質性部分の複合体が提供される。ある特定の実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブ(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))である。ある特定の実施形態では、放射線は、任意の波長のものであることができ、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に隣接する細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むがこれらに限定されない。
【0164】
C.免疫複合体
本明細書に開示される主題はまた、化学療法剤もしくは化学療法薬、成長阻害剤、タンパク質、ペプチド、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素活性毒素、もしくはそれらの断片)、または放射性同位体等の1つ以上の細胞傷害性薬剤と複合された本明細書に開示される多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体を含む、免疫複合体を提供する。例えば、開示される主題の抗体または抗原結合部分は、別の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合模倣体等の1つ以上の他の結合分子に機能的に連結し得る(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有的会合などによって)。
【0165】
ある特定の実施形態では、免疫複合体は、抗体が1つ以上の薬物に複合体化された抗体-薬物複合体(ADC)であり、この薬物としては、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び欧州特許第0 425 235 B1号を参照されたい);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF等のオーリスタチン(MMAE及びMMAF)(米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号及び同第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン:カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、及び同第5,877,296号、Hinman et al.,Cancer Res.53:3336-3342(1993)、ならびにLode et al.,Cancer Res.58:2925-2928(1998)を参照されたい)、ダウノマイシンまたはドキソルビシン等のアントラサイクリン(Kratz et al.,Current Med.Chem.13:477-523(2006)、Jeffrey et al.,Bioorganic & Med.Chem.Letters 16:358-362(2006)、Torgov et al.,Bioconj.Chem.16:717-721(2005)、Nagy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:829-834(2000)、Dubowchik et al.,Bioorg.& Med.Chem.Letters 12:1529-1532(2002)、King et al.,J.Med.Chem.45:4336-4343(2002)、及び米国特許第6,630,579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン、ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセル等のタキサン;トリコテシン;ならびにCC1065を含むが、これらに限定されない。
【0166】
ある特定の実施形態では、免疫複合体は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、ならびにトリコテセン(tricothecene)を含むがこれらに限定されない酵素活性毒素またはその断片に複合された本明細書に記載される抗体を含む。
【0167】
ある特定の実施形態では、免疫複合体は、放射性原子に複合されて放射性複合体を形成する、本明細書に記載される多重特異性抗体を含む。放射性複合体の産生には、様々な放射性同位体が利用可能である。非限定例には、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性複合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、mri)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含み得る。
【0168】
抗体及び細胞傷害性剤の複合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)等の多様な二官能性タンパク質結合剤を使用して作製され得る。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science238:1098(1987)に記載されている通りに調製することができる。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への複合のための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020)が使用され得る。リンカーの非限定例は上に開示されている。
【0169】
本明細書の免疫複合体またはADCは、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびに(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)市販されているSVSB(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)を含むが、これらに限定されない架橋剤試薬で調製される複合体を明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0170】
IV.スクリーニング及び産生方法
本明細書に開示される主題の多重特異性抗体は、それらの物理的/化学的特性及び/または生物活性について、当該技術分野で既知の様々なアッセイによって、特定し、スクリーニングし、または特徴付けることができる。
【0171】
A.多重特異性抗体スクリーニングアッセイ
ある特定の実施形態では、本開示の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体は、既知の方法によって特定することができる。例えば、限定するものではなく、二重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体は、上で考察した「ノブ・イントゥ・ホール」ヘテロ二量体化技法を使用して特定することができる。Ridgway et al.,Protein Engineering,Vol.9:7,p617-621(1996)、Atwell et al.J.Mol.Biol.270,26-35(1997)、及びSpiess et al.,Nat.Biotech.31,753-759(2013)を参照されたい。
【0172】
本明細書に開示される主題は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体またはバイエピトープ性抗体のスクリーニング方法を更に提供する。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される方法を使用して、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性を呈する多重特異性抗体、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体を識別することができる。
【0173】
ある特定の実施形態では、本方法は、多重特異性抗体を1つ以上の細胞中で発現させることを含む。例えば、限定するものではなく、本多重特異性抗体は、第1の抗原結合ポリペプチド、第2の抗原結合ポリペプチド、及びCLドメインを含み得る。第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドは、別個の結合特異性を有し得る。例えば、限定するものではなく、第1の抗原結合ポリペプチドは抗原の第1のエピトープに結合することができ、第2の抗原結合ポリペプチドは抗原上の第2のエピトープに結合することができる。あるいは、第1の抗原結合ポリペプチドは第1の抗原に結合することができ、第2の抗原結合ポリペプチドは第2の抗原に結合することができる。ある特定の実施形態では、本抗原結合ポリペプチドの各々は、VL、VH、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含み、これらの構成要素は、互いに対して、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる。ある特定の実施形態では、第1及び/または第2の抗原結合ポリペプチドは、CH1ドメインとCH2ドメインとの間のヒンジ領域を更に含み得る。ある特定の実施形態では、VLドメインのC末端は、VHドメインのN末端にリンカーを介して連結し得る。第1及び/または第2の抗原結合ポリペプチドは、本明細書に開示されるヘテロ二量体化ドメイン、例えば、CH3ドメイン中の突起または空洞を更に含み得る。
【0174】
ある特定の実施形態では、核酸、例えば、第1の抗原結合ポリペプチドをコードする第1の核酸、またはその核酸を含むベクターを、細胞に導入し得る。第2の抗原結合ポリペプチドをコードする第2の核酸、または第2の核酸を含むベクターを細胞に導入し得る。ある特定の実施形態では、CLドメインをコードする第3の核酸、または第3の核酸をコードするベクターを細胞に導入し得る。これらの核酸は、当該技術分野で既知の任意の方法によって細胞に導入することができる。例えば、限定するものではなく、核酸は、形質転換またはトランスフェクションによって細胞に導入することができる。
【0175】
開示される方法で使用される細胞は、本明細書に開示される細胞のうちの任意のもの、例えば、本明細書に開示される宿主細胞であり得る。例えば、限定するものではなく、細胞は、原核細胞、例えば、Escherichia coli(E.coli)であり得る。ある特定の実施形態では、細胞は、真核細胞、例えば、酵母細胞または哺乳動物細胞である。ある特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0176】
ある特定の実施形態では、本方法は、1つ以上の細胞から得た多重特異性抗体を、2つ以上の抗原、例えば、第1及び第2の抗原または同じ抗原上に存在する2つ以上のエピトープ、例えば、抗原上の第1及び第2のエピトープと接触させることを更に含み得る。ある特定の実施形態では、2つ以上のエピトープは、重なり合っていても重なり合っていなくてもよい。ある特定の実施形態では、本多重特異性抗体は、2つ以上の抗原または2つ以上のエピトープと同時にまたは連続して接触させることができる。例えば、限定するものではなく、本多重特異性抗体を2つ以上の抗原または2つ以上のエピトープのうちの一方と接触させた後、本多重特異性抗体を2つ以上の抗原または2つ以上のエピトープのうちの2つ目と接触させることができる。多重特異性抗体を抗原またはエピトープと接触させる前に、本多重特異性抗体を、例えば細胞から、精製及び/または単離し得る。例えば、限定するものではなく、本多重特異性抗体は、クロマトグラフィー方法によって、例えば、タンパク質Aクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0177】
ある特定の実施形態では、本方法は、2つ以上の抗原または2つ以上のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することを更に含み得る。ある特定の実施形態では、結合は、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示される任意のアッセイによって決定することができる。例えば、限定するものではなく、結合は、ELISAによって、またはフローサイトメトリー、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)によって決定することができる。
【0178】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体のスクリーニング方法は、複数の本明細書に開示される多重特異性抗体を含むライブラリの生成を含み得る。例えば、限定するものではなく、このライブラリは、複数の細胞を含み得、ここで各細胞は、単個の本明細書に開示される多重特異性抗体を発現する。ある特定の実施形態では、ライブラリの各細胞は、第1の抗原結合ポリペプチド、第2の抗原結合ポリペプチド、及びCLドメインを発現する。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチド、第2の抗原結合ポリペプチド、及び/またはCLドメインをコードする核酸、またはかかる核酸を含むベクターは、例えば、形質転換またはトランスフェクションによって、細胞に導入することができる。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチド、第2の抗原結合ポリペプチド、及び/またはCLドメインの各々は、別個の核酸、またはかかる核酸を含む別個のベクターによってコードされる。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドは第1の核酸(または第1の核酸を含む第1のベクター)によってコードされ、CLドメインは第2の核酸(または第2の核酸を含む第2のベクター)によってコードされる。例えば、限定するものではなく、本明細書に開示される主題の第1の核酸は、第1の抗原結合ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)と、第2の抗原結合ポリペプチドをコードするORFとを含み得る。ある特定の実施形態では、第2の核酸は、CLドメインをコードするORFを含み得る。ある特定の実施形態では、CLドメインは、第1の抗原結合ポリペプチド及び/または第2の抗原結合ポリペプチドをコードする同じ核酸(またはその核酸を含むベクター)によってコードされない。
【0179】
本方法は、ライブラリ内の複数の多重特異性抗体を、抗原上の2つ以上のエピトープ、例えば、抗原上の第1及び第2のエピトープへの結合についてアッセイすることとを更に含み得る。あるいは、または更に、本方法は、ライブラリ内の複数の多重特異性抗体を、2つ以上の抗原、例えば、第1の抗原及び第2の抗原への結合についてアッセイすることを含み得る。ある特定の実施形態では、結合は、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示される任意のアッセイによって決定することができる。本方法は、2つ以上の抗原または抗原上の2つ以上のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することを更に含み得る。例えば、限定するものではなく、バイエピトープ性抗体は、抗原上の2つのエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することによって、開示される方法を使用して得ることができる。
【0180】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性抗体のスクリーニング方法は、例えばルシフェラーゼアッセイによって、多重特異性抗体の活性を決定することを更に含み得る。例えば、限定するものではなく、本方法は、多重特異性抗体がアンタゴニスト活性を呈するかどうかを決定することを含み得る。ある特定の実施形態では、本方法は、多重特異性抗体がアゴニスト活性を呈するかどうかを決定することを含み得る。ある特定の実施形態では、本方法は、多重特異性抗体の活性を、それが由来する単一特異性親抗体の活性と比較して、単独または組み合わせでの単一特異性親抗体よりも優れた活性、例えば、アンタゴニスト活性またはアゴニスト活性を呈する多重特異性抗体を識別することを更に含み得る。多重特異性抗体の活性は、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示される任意の活性アッセイによって決定することができる。
【0181】
本明細書に開示される主題は、本明細書に開示されるスクリーニング方法を使用するバイエピトープ性抗体の識別方法を更に提供する。例えば、限定するものではなく、開示されるスクリーニング方法は、アンタゴニスト活性またはアゴニスト活性を呈するバイエピトープ性抗体を識別するために使用することができる。ある特定の実施形態では、開示されるスクリーニング方法を使用して、アゴニスト活性を呈するバイエピトープ性抗体を識別することができる。ある特定の実施形態では、開示される方法を使用して識別されたバイエピトープ性抗体は、単独または組み合わせでのバイエピトープ性抗体が由来する単一特異性親抗体よりも優れたアゴニスト活性を呈する。ある特定の実施形態では、開示される方法を使用して識別されるバイエピトープ性抗体は、同一のVL及びVH配列を有する単一特異性抗体よりも優れたアゴニスト活性を呈する。ある特定の実施形態では、本開示のバイエピトープ性抗体は、例えば、バイエピトープ性抗体の抗原結合ポリペプチドのうちの1つとして、同一のVL、VH、CH1、CH2、及び/またはCH3配列を有する単一特異性抗体よりも優れたアゴニスト活性を呈する。
【0182】
ある特定の実施形態では、バイエピトープ性アゴニスト抗体の識別方法は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体を1つ以上の細胞中で発現させることを含み得る。例えば、限定するものではなく、本多重特異性抗体は、本明細書に開示されるように、第1の抗原結合ポリペプチド、第2の抗原結合ポリペプチド、及びCLドメインを含み得る。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチドは抗原上の第1のエピトープに結合し、第2の抗原結合ポリペプチドは抗原上の第2のエピトープに結合する。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチドは、第1の単一特異性抗体の同じ結合特異性ならびに/または同じVL及びVH配列を有し、第2の抗原結合ポリペプチドは第1の単一特異性抗体の同じ結合特異性ならびに/または同じVL及びVH配列を有する。
【0183】
本方法は、1つ以上の細胞から得た多重特異性抗体、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体を、目的とする同じ抗原上に存在する2つのエピトープ、例えば、抗原上の第1及び第2のエピトープと接触させることを更に含み得る。例えば、限定するものではなく、本多重特異性抗体を2つのエピトープのうちの一方と接触させた後、多重特異性抗体を2つのエピトープのうちの2つ目と接触させることができる。上記のように、本多重特異性抗体、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体は、2つのエピトープと接触させる前に精製することができる。ある特定の実施形態では、本方法は、目的とする2つのエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することを更に含み得る。エピトープへの結合は、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示される任意のアッセイによって決定することができる。
【0184】
ある特定の実施形態では、本方法は、識別された2つのエピトープに結合するバイエピトープ性抗体の活性を決定することを更に含み得る。例えば、限定するものではなく、本方法は、バイエピトープ性抗体がアゴニスト活性を呈するかどうかを決定することを含み得る。バイエピトープ性抗体のアゴニスト活性は、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示される任意の活性アッセイによって決定することができる。ある特定の実施形態では、バイエピトープ性抗体のアゴニスト活性は、抗原、例えば、受容体を、バイエピトープ性抗体と接触させ、そのバイエピトープ性抗体が、その受容体と関連付けられるシグナル伝達経路の活性化をもたらすかどうかを分析することによって決定され得る。例えば、限定するものではなく、アゴニスト活性は、インビトロのレポーター系アッセイ、例えば、ルシフェラーゼアッセイを使用してすることによって決定され得、このルシフェラーゼアッセイでは、受容体、例えば、抗原の活性化が、レポーター、例えば、ルシフェラーゼの発現をもたらす。あるいは、または更に、アゴニスト活性は、受容体のシグナル伝達経路の下流標的、例えば、タンパク質の発現、活性、及び/またはリン酸化を分析することによる、受容体、例えば、抗原の活性化が、受容体によって調節されるシグナル伝達経路の活性化をもたらす、インビトロの細胞アッセイによって決定することができる。
【0185】
ある特定の実施形態では、本方法は、バイエピトープ性抗体のアゴニスト活性を、単独または組み合わせでの単一特異性親抗体(例えば、そのバイエピトープ性抗体が由来したもの)のアゴニスト活性と比較すること、及び単一特異性親抗体の活性よりも優れたアゴニスト活性を呈するバイエピトープ性抗体を識別することを更に含み得る。例えば、限定するものではなく、本方法は、バイエピトープ性抗体のアゴニスト活性を決定して、バイエピトープ性抗体のアゴニスト活性と単一特異性抗体のアゴニスト活性とを比較するために使用する技法と同じ技法を使用して、バイエピトープ性アゴニスト抗体の単一特異性親抗体のアゴニスト活性(例えば、単独または組み合わせでの)を決定することを更に含み得る。
【0186】
ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチドのVL、VH、CH1、CH2、及び/またはCH3ドメインは、第1の親モノクローナル抗体のVL、VH、CH1、CH2、及び/またはCH3ドメインと同じ配列を有し得る。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合ポリペプチドのVL、VH、CH1、CH2、及び/またはCH3ドメインは、第2の親モノクローナル抗体のVL、VH、CH1、CH2、及び/またはCH3ドメインと同じ配列を有し得る。開示される方法により、2つの親モノクローナル抗体、例えば、単一特異性抗体の結合特異性を有する2つの抗原結合ポリペプチドを対にすることで、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体及びバイエピトープ性抗体の識別が可能となり得る。ある特定の実施形態では、開示されるスクリーニングアッセイによって識別される多重特異性抗体は、単独または組み合わせでの親抗体、例えば、単一特異性抗体よりも高い結合親和性、及び/または活性、例えば、アゴニスト活性を呈する。その結果、開示される方法により、単一特異性抗体のVL領域及びVH領域を対ごとにスクリーニングして、多重特異性、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体を識別するためのスループット方法が得られる。ある特定の実施形態では、開示されるスクリーニング方法によって識別される多重特異性抗体、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体は、異なる抗体フォーマットにフォーマティングすることができる。例えば、限定するものではなく、開示される方法によって識別される多重特異性抗体、例えば、二重特異性またはバイエピトープ性抗体は、完全抗体フォーマット、例えば、IgGアイソタイプのものに再フォーマティングすることができる。
【0187】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体、二重特異性抗体、またはバイエピトープ性抗体が結合する抗原は、受容体である。ある特定の実施形態では、抗原は生物複合体である。例えば、限定するものではなく、受容体は、生物複合体内、例えば、1つ以上の補助受容体及び/またはタンパク質との複合体中に存在する。
【0188】
B.結合アッセイ及び他のアッセイ
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウェスタンブロットアッセイ等の既知の方法によって、その抗原結合活性について試験され得る。これらのアッセイの各々は、概して、目的とする複合体に特異的な標識された試薬(例えば、抗体)を用いることによって、特に目的とするタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0189】
ある特定の実施形態では、抗原(例えば、KLB)-抗体複合体は、例えば、その抗原(例えば、KLB)-抗体複合体を認識し、それらに特異的に結合する酵素結合抗体または抗体断片を使用して検出することができる。あるいは、これらの複合体は、様々な他の免疫アッセイのうちの任意のものを使用して検出することができる。例えば、本抗体は、ラジオイムノアッセイ(RIA)において放射性標識され使用され得る(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Weintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,March,1986を参照されたい)。放射性同位体は、ガイガー計数管もしくはシンチレーション計数管の使用等の手段によって、またはオートラジオグラフィーによって検出することができる。
【0190】
ある特定の実施形態では、競合アッセイを使用して、本明細書に開示される主題の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体と競合する抗体を識別することができる。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法が、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)に提供されている。例示的な競合アッセイの非限定例において、固定化された抗原(例えば、KLB)を、抗原(例えば、KLB)に結合する第1の標識抗体、及び抗原(例えば、KLB)への結合について第1の抗体と競合するその能力について試験されている第2の未標識抗体を含む溶液中でインキュベートし得る。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。対照として、固定化された抗原(例えば、KLB)を、第1の標識抗体を含むが第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートする。第1の抗体の抗原(例えば、KLB)への結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、過剰な非結合抗体を除去し、固定化された抗原(例えば、KLB)に関連する標識の量を測定する。固定化された抗原(例えば、KLB)に関連する標識の量が、対照試料と比較して試験試料中で相当量低減している場合、それは、第2の抗体が抗原(例えば、KLB)への結合について第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
【0191】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の、抗体の抗原を発現している細胞、例えば、293T細胞への結合は、フローサイトメトリーを使用して決定することができる。例えば、限定するものではないが、(例えば、KLBの)抗原またはエピトープを発現している細胞株を、0.1%のBSA及び10%のウシ胎仔血清を含有するPBS中の様々な濃度の二重特異性抗体と混合し、37℃で1時間インキュベートし得る。洗浄後、細胞を、一次抗体染色と同じ条件下で、フルオレセインで標識した抗ヒトIgG抗体と反応させ得る。次に、試料を、光及び側方散乱特性を使用してFACScan機器によって分析し、単一細胞に対してゲーティングし得る。フローサイトメトリーアッセイに加えてまたはその代わりに、フルオレセイン顕微鏡法を使用する代替的なアッセイを使用してもよい。細胞を上記の通りに染色し、フルオレセイン顕微鏡法によって検査し得る。この方法により、個々の細胞が可視化され、細胞中の抗原の局在を分析できるようになる。
【0192】
本開示の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体を、ウェスタンブロットによって、抗体のエピトープまたは抗原との反応性について更に試験することができる。例えば、限定するものではないが、目的とする抗原(例えば、KLB)を発現している細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し得る。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース膜に移し、10%のウシ胎仔血清でブロックし、試験するモノクローナル抗体でプローブする。二重特異性抗体結合を、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを使用して検出し、BCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem.Co.,St.Louis,MO)を用いて現像し得る。
【0193】
C.活性アッセイ
本開示は、生物活性を有する多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の識別用アッセイを提供する。例えば、限定するものではなく、本開示は、生物活性を有する多重特異性抗体、例えば、抗KLB抗体の識別用アッセイを提供する。例えば、限定するものではなく、抗KLB抗体についての生物活性は、例えば、KLB/FGFR1c受容体複合体の活性化を含み得る。かかる生物学的活性をインビボ及び/またはインビトロで有する抗体も提供される。ある特定の実施形態では、本アッセイは、本開示の二重特異性抗体を、細胞、例えば、KLBを発現している293T細胞に結合させること、及びKLB-FGFR1受容体複合体の1つ以上の下流にある標的、例えば、ERKの活性及び/またはリン酸化状態を分析することを含み得る。ある特定の実施形態では、本アッセイは、本開示の二重特異性抗体を、対象、例えば、非ヒト動物に投与すること、及び抗体が対象においてグルコース値に与える影響を分析することを含み得る。
【0194】
D.産生方法
本明細書に開示される多重特異性、二重特異性、及びバイエピトープ性抗体は、当該技術分野において利用可能であるかまたは既知である任意の技法を使用して産生させることができる。例えば、限定するものではないが、抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されている組換え方法及び組成物を使用して産生させることができる。二重特異性抗体、例えば、抗KLB二重特異性抗体を生成するための詳細な手順は、以下の実施例に記載されている。
【0195】
ある特定の実施形態では、二重特異性、バイエピトープ性、及び/または多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する、例えばVLfH形式にある、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え同時発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、PCT特許出願第WO93/08829号、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、ならびに例えば「ノブ・イン・ホール」操作を使用して産生させたヘテロ二量体化ドメイン(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。「ノブ・イン・ホール」技法は、突然変異をCH3ドメインに導入して、接触界面を修飾することによって、2つの異なる抗体重鎖を対形成させることを狙いとする。1つの重鎖において、1つ以上の元のアミノ酸を、側鎖が短いアミノ酸によって代置して、「ホール」または「空洞」を創出し得る。ある特定の実施形態では、ホール突然変異(複数可)は、T366S、L368A、及び/またはY407V(EU付番)のうちの1つ以上を含み得る。逆に、側鎖が大きい1つ以上のアミノ酸を第2の抗体重鎖の他方のCH3ドメインに導入して、「ノブ」を創出した。ある特定の実施形態では、ノブ突然変異はT366W(EU付番)を含み得る。これらの2つの重鎖(及び両方の重鎖に適した2つの同一の軽鎖)を同時発現させることによって、ヘテロ二量体形成(「ノブ-ホール」)対ホモ二量体形成(「ホール-ホール」または「ノブ-ノブ」)の高い収率が観察される(Ridgway,Protein Eng.9(1996)617-621、及びWO96/027011を参照されたい)。ノブ・イン・ホール技術は、2つの重鎖が各々異なるかまたは同族である軽鎖と対になる場合にも使用されている。例えば、限定するものではなく、2つの重鎖/軽鎖対は、各々、別々の細胞中で産生されて折り畳まれ、精製され、組織化されて、インビトロでノブ・イン・ホール二重特異性抗体を形成し得る。例えば、WO2012/106587、WO2011/133886、及びWO2013/055958を参照されたい。これらの内容は、ここに全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示の実施例2も参照されたい。2つの重鎖のヘテロ二量体化を促進するために開示される抗体のFc領域に導入され得る更なる突然変異は、以下に開示されている。
【0196】
ある特定の実施形態では、ホモ二量体よりもヘテロ二量体の形成が非常に好ましい他のヘテロ二量体化ドメインは、開示される多重特異性抗体中に、例えば、かかる抗体のインビトロまたはインビボでの産生のために、組み込むことができる。かかるヘテロ二量体化ドメインの非限定例は、WO2007/147901(イオン相互作用を説明する)、WO2009/089004(静電ステアリング効果を説明する)、WO2010/034605(コイルドコイルを説明する)に開示されており、これらの内容は、ここに全体が参照により本明細書に組み込まれる。ロイシンジッパーを説明しているPack and Plueckthun,Biochemistry 31:1579-1584(1992)、及びヘリックスターンヘリックスモチーフを説明しているPack et al.,Bio/Technology 11:1271-1277(1993)も参照されたい。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性抗体は、ヘテロ二量体を生成して、例えば、多重特異性抗体の第1の抗原結合ポリペプチドと第2の抗原結合ポリペプチドとの間の相互作用を促進するために、1つ以上のヘテロ二量体化ドメインを含み得る。ヘテロ二量体化ドメインを、抗体内、例えば、本開示の抗体の第1及び/または第2の抗原結合ポリペプチド内で生成するために使用することができる技法の更なる非限定例には、第1の抗原結合ポリペプチド鎖におけるF405L及び第2の抗原結合ポリペプチド鎖におけるK409R(Labrijn et al.Efficient generation of stable bispecific IgG1 by controlled Fab-arm exchange.Proc.Nat´l.Acad.Sci.USA 110:5145-5150(2013));第1の抗原結合ポリペプチド鎖におけるT350V、L351Y、F405A、及びY407V、ならびに第2の抗原結合ポリペプチド鎖におけるT350V、T366L、K392L、及びT394W(Kreudenstein et al.Improving biophysical properties of a bispecific antibody scaffold to aid developability:quality by molecular design.MAbs 5:646-654(2013));第1の抗原結合ポリペプチド鎖におけるK409D及びK392D、ならびに第2の抗原結合ポリペプチド鎖におけるD399K及びE356K(Gunasekaran et al.Enhancing antibody Fc heterodimer formation through electrostatic steering effects:applications to bispecific molecules and monovalent IgG.J.Biol.Chem.285:19637-19646(2010));第1の抗原結合ポリペプチド鎖におけるD221E、P228E、及びL368E、ならびに第2の抗原結合ポリペプチド鎖におけるD221R、P228R、及びK409R(Strop et al.Generating Bispecific Human IgG1 and IgG2 Antibodies from Any Antibody Pair.J Mol Biol 420:204-219(2012));IgG/Aキメラ(Davis,J.H.et al.SEEDbodies:fusion proteins based on strand-exchange engineered domain(SEED)CH3 heterodimers in an Fc analogue platform for asymmetric binders or immunofusions and bispecific antibodies.Protein Eng.Des.Sel 23:195-202(2010));第1または第2の抗原結合ポリペプチド鎖のうちの一方におけるH435R(US 2014/0248664A1);第1の抗原結合ポリペプチド鎖におけるY349C、K360E、及びK409W、ならびに第2の抗原結合ポリペプチド鎖におけるS354C、Q347R、D399V、及びF405T(Choi et al.Crystal structures of immunoglobulin Fc heterodimers reveal the molecular basis for heterodimer formation.Mol.Immunol.65:377-383(2015));ならびに第1の抗原結合ポリペプチド鎖におけるS364H及びF405A、ならびに第2の抗原結合ポリペプチド鎖におけるY349T及びT394F(Moore et al.A novel bispecific antibody format enables simultaneous bivalent and monovalent co-engagement of distinct target antigens.MAbs 3:546-557(2011))が挙げられる。
【0197】
本開示の多重特異性、バイエピトープ性、及び二重特異性抗体は、抗体Fc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果の操作(WO2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985));ロイシンジッパーを使用する二重特異性抗体の産生(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照されたい);二重特異性抗体断片作製のための「ダイアボディ」技法の使用(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照されたい);ならびに単鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい);ならびに例えばTutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されているような三重特異性抗体の調製によって作製することができる。
【0198】
本開示の二重特異性及び多重特異性分子も、化学的技法(例えば、Kranz(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:5807を参照されたい)、「ポリドーマ」技法(例えば、米国特許第4,474,893号を参照されたい)、または組換えDNA技法を使用して作製することができる。本発明の二重特異性及び多重特異性分子は、構成結合特異性、例えば、第1のエピトープ及び第2のエピトープ結合特異性を、当該技術分野で既知であり本明細書に記載される方法を使用して複合させることによって調製することもできる。例えば、二重特異性及び多重特異性分子の各結合特異性は、別個に生成した後で互いに複合させ得る。結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合には、多様な結合剤または架橋剤を共有的符複合体化に使用することができる。架橋剤の例には、タンパク質A、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及び4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スルホスクシンイミジル(スルホ-SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky(1984)J.Exp.Med.160:1686、Liu(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照されたい)。他の方法には、Paulus(Behring Ins.Mitt.(1985)No.78,118-132;Brennan(1985)Science 229:81-83)、Glennie(1987)J.Immunol.139:2367-2375)によって説明されているものが挙げられる。結合特異性が抗体(例えば、2つのヒト化抗体)である場合、それらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して複合体化され得る。このヒンジ領域は、複合前に、奇数、例えば、1つのスルフヒドリル残基を含有するように修飾され得る。
【0199】
ある特定の実施形態では、両方の結合特異性が、同じベクター中でコードされ、同じ宿主細胞中で発現され組織化され得る。本方法は、二重特異性及び多重特異性分子がMAb×MAb、MAb×Fab、Fab×F(ab´)、またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。本開示の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、単鎖分子、例えば、単鎖二重特異性抗体、1つの単鎖抗体及び結合決定基を含む単鎖二重特異性分子、または2つの結合決定基を含む単鎖二重特異性分子であり得る。二重特異性及び多重特異性分子は、単鎖分子であることもでき、あるいは少なくとも2つの単鎖分子を含んでもよい。二重または多重特異性分子の調製方法は、例えば、米国特許第5,260,203号、米国特許第5,455,030号、米国特許第4,881,175号、米国特許第5,132,405号、米国特許第5,091,513号、米国特許第5,476,786号、米国特許第5,013,653号、米国特許第5,258,498号、及び米国特許第5,482,858号に記載されている。「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位(例えば、エピトープ結合部位)を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0200】
ある特定の実施形態では、動物系を使用して、開示される抗体を産生させることができる。ハイブリドーマを調製するための1つの動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ産生は、極めて確立されている手順である。免疫付与プロトコル、及び融合のための免疫付与した脾細胞の単離技法は、当該技術分野で既知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手順も既知である(例えば、Harlow and Lane(1988),Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor New York)を参照されたい)。
【0201】
本明細書に開示される主題は、本明細書に開示される多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体をコードする単離された核酸を更に提供する。例えば、単離された核酸は、多重特異性抗体の第1の抗原結合ポリペプチド及び/または第2の抗原結合ポリペプチドをコードし得る。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドは、2つの別個の核酸によってコードされる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、CLドメイン、例えば、カッパCLドメインをコードする単離された核酸を更に提供する。
【0202】
ある特定の実施形態では、この単離された核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/または抗体のVHを含むアミノ酸配列、例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖をコードし得る。ある特定の実施形態では、単離された核酸は、配列番号34、36、38、40、及び42に記載の配列を有する重鎖可変領域アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、及び/または配列番号33、35、37、39、及び41に記載の配列を有する軽鎖可変領域アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含み得る。ある特定の実施形態では、本核酸は、1つ以上のベクター、例えば、発現ベクター中に存在し得る。
【0203】
本明細書において使用される場合、「ベクター」は、それが連結した別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの一種には「プラスミド」があり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る円形の二本鎖DNAループを指す。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、これにおいて、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムへとライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに統合することができるため、宿主ゲノムと共に複製される。更に、ある特定のベクター、発現ベクターは、それらが動作可能に連結されている遺伝子の発現を導くことが可能である。一般に、組換えDNA技法における利用される発現ベクターは、プラスミド(ベクター)の形態である場合が多い。しかしながら、開示される主題は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ関連ウイルス)等の発現ベクターの他の形態を含むことが意図される。
【0204】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体をコードする核酸及び/またはその核酸を含む1つ以上のベクターを、宿主細胞中に導入する、例えば、形質転換することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、(1)第1の抗原結合ポリペプチドを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター;(2)第2の抗原結合ポリペプチドを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター;及び(3)本抗体のCLドメインを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第3のベクターで形質転換することができる。
【0205】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、(1)本抗体のVLを含むアミノ酸配列及び本抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)本抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び本抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含み得る、例えば、形質転換されている。
【0206】
ある特定の実施形態では、多重特異性抗体の作製方法は、本抗体または本抗体の特定の成分、例えば、第1の抗原結合ポリペプチド、第2の抗原結合ポリペプチド、及び/またはCLドメインをコードする1つ以上の核酸が導入されている宿主細胞を抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に抗体を宿主細胞及び/または宿主細胞培地から回収することとを含み得る。ある特定の実施形態では、本抗体は、宿主細胞を溶解させることによって、宿主細胞から回収することができる。あるいは、本抗体は、宿主細胞から分泌され、宿主細胞培地から回収することができる。ある特定の実施形態では、本抗体は、クロマトグラフィー技法によって、宿主細胞、例えば、宿主細胞溶解物、または宿主細胞培地から回収される。
【0207】
本発明の抗体の組換え産生については、例えば、上述の抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内での更なるクローニング及び/または発現のために、1つ以上のベクター中に挿入される。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することで)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0208】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核生物細胞または真核生物細胞が含まれる。例えば、抗体は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合に、細菌中で産生され得る。細菌における抗体断片及び抗原結合ポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(E.coliにおける抗体断片の発現について説明している、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照されたい。)発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製され得る。ある特定の実施形態では、宿主細胞はE.coliである。
【0209】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物は、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、そのグリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌及び酵母株を含む。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得ることができる。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が挙げられる。特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と併せて使用され得る、多数のバキュロウイルス株が特定されている。
【0210】
ある特定の実施形態では、植物細胞培養物を宿主細胞として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について説明)を参照されたい。
【0211】
ある特定の実施形態では、脊椎動物細胞を宿主として使用してもよい。例えば、懸濁液中で成長するように適合させた哺乳動物細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)で形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載される293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるTM4細胞;サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳房腫瘍(MMT 060562);例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるTRI細胞;MRC 5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞株には、DHFRCHO細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびにY0、NS0、及びSp2/0等の骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0212】
IV.使用方法
本明細書に開示される主題は、開示される多重特異性及び二重特異性抗体の使用方法を更に提供する。ある特定の実施形態では、開示される方法は、本明細書に開示される抗体の治療的使用を対象とする。ある特定の実施形態では、開示される方法は、診断方法における開示される抗体の使用を対象とする。
【0213】
A.治療方法
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題の1つ以上の抗体は、対象において疾患を治療するために使用され得る。ある特定の実施形態では、個体の治療方法は、個体に治療有効量の本明細書に開示される抗体を投与することを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、対象に、治療有効量の少なくとも1つの追加の治療剤を投与することを更に含み得る。追加の治療剤、例えば、第2の治療剤の非限定例は、以下に記載される。
【0214】
ある特定の実施形態では、疾患は代謝障害であり得る。代謝障害の非限定例には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、代謝症候群(MetS)、肥満、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病、非2型糖尿病、1型糖尿病、潜在性自己免疫性糖尿病(LAD)、若年発症成人型糖尿病(MODY)、ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、及びALS等の老齢疾患及び関連疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、自己免疫疾患または障害及び炎症性疾患等の免疫関連疾患または障害の治療方法を提供する。ある特定の実施形態では、本方法は、本開示の抗体、または本抗体を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。免疫関連疾患または障害の非限定例には、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、骨関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症、特発性炎症性筋疾患、シェーグレン症候群、全身性脈管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、甲状腺炎、真性糖尿病、I型またはII型真性糖尿病、免疫介在性腎疾患、中枢及び末梢神経系の脱髄疾患、例えば、多発性硬化症、特発性脱髄性多発神経炎、またはギラン・バレー症候群、及び慢性炎症性脱髄性多発神経障害、肝胆汁性疾患、例えば、感染性自己免疫性慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、グルテン過敏性腸症及びウィップル病、水疱性皮膚症、多形性紅斑及び接触性皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患、例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症、及び蕁麻疹、肺の免疫疾患、例えば、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、及び過敏性肺炎、移植片拒絶及び移植片対宿主病を含む移植関連疾患が挙げられる。ある特定の他の実施形態では、免疫関連疾患は、喘息、多発性硬化症、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、紅斑性狼瘡、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、または特発性肺線維症である。
【0216】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される主題は、本開示の抗体、または本抗体を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、細胞増殖関連疾患または障害の治療方法を提供する。ある特定の実施形態では、細胞増殖関連疾患は、結腸直腸癌、腎細胞癌(例えば、腎細胞癌腫)、黒色腫、膀胱癌、卵巣癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌、HER2陽性乳癌、またはホルモン受容体陽性癌)、及び非小細胞肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌または非扁平上皮非小細胞肺癌)であり得るが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本開示の方法による治療対象の癌には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本開示の方法による治療対象の癌には、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌を含む)、黒色腫、腎細胞癌腫、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌または胃の癌(消化管癌を含む)、膵臓癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝細胞癌、及び様々なタイプの頭頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽細胞性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変性NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(例えば脳腫瘍に関連するもの等)、及びメイグス症候群に関連する異常血管増殖が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、癌は、早期癌であっても後期癌であってもよい。ある特定の実施形態では、癌は、原発性腫瘍であってもよい。ある特定の実施形態では、癌は、上記の種類の癌のいずれかに由来する第2の部位における転移性腫瘍であってもよい。
【0217】
ある特定の実施形態では、開示される方法において使用するための多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗KLB抗体は、薬学的組成物中に存在し得る。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。更にまたはあるいは、本薬学的組成物は第2の治療剤を含み得る。抗体が別の治療剤と一緒に投与されるとき、それらの2つは、いずれの順序で投与することも、または同時に投与することもできる。
【0218】
疾患の予防または治療に関して、本明細書に開示される主題の抗体の適切な投薬量、例えば、治療有効量は、単独で、または1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体が予防目的投与されるのか治療目的で投与されるのか、以前の療法、患者の病歴及び抗体への応答、ならびに主治医の裁量に左右されることになる。
【0219】
ある特定の実施形態では、本抗体は、1回で、または一連の治療にわたって患者に投与される。例えば、限定するものではないが、本抗体及び/または薬学的製剤は、本明細書に開示される抗体を含有し、1日2回、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、4日毎に1回、5日毎に1回、6日毎に1回、週1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、月1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、6カ月毎に1回、または年1回、対象に投与され得る。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される本抗体及び/または抗体を含有する薬学的製剤は、週1回または月1回、対象に投与され得る。
【0220】
ある特定の実施形態では、疾患の種類及び重症度に応じて、例えば1回以上の別個の投与によってであれ連続注入によってであれ、約1μg/kg~約15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体が、患者に投与するための初回候補投薬量となり得る。1つの典型的な日用量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kgの範囲に及び得る。ある特定の実施形態では、日用量は約100mg/kg超であり得る。いくつかの方法において、投薬量は、1~1000μg/mLの血漿中抗体濃度、及びいくつかの方法においては、25~300μg/mLの血漿中抗体濃度を達成するように、調整される。あるいは、抗体は、持続放出製剤として投与することができ、その場合、必要とされる投与の頻度はより低い。投薬量及び頻度は、患者における本抗体の半減期に基づいて変動し得る。
【0221】
数日間以上にわたる反復投与では、病態に応じて、治療は一般に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで続けられ得る。ある特定の実施形態では、本抗体の投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲であり得る。例えば、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(またはそれらの任意の組み合わせ)のうちの1つ以上の用量が患者に投与されてもよい。かかる用量は、間欠的に、例えば、毎週または3週間に1回(例えば、患者が約2~約20回、または例えば約6回用量の抗体を受けるように)投与され得る。より高い初回負荷量、続いて1回以上のより低い用量が、投与され得る。
【0222】
ある特定の実施形態では、本方法は、対象のモニタリング及び治療効果の決定を更に含み得る。例えば、この療法の進行は、従来の技法及びアッセイによって容易にモニタリングすることができる。
【0223】
B.診断及び検出方法
本明細書に開示される主題は、本明細書に開示される、開示される抗体を使用する疾患の診断及び/または検出方法を提供する。更なる態様では、生体試料中の抗原の存在及び/またはレベルの検出方法が提供される。本明細書で使用される場合、「検出すること」という用語は、定量及び/または定性検出を包含する。
【0224】
試料の非限定例には、培養細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体液(例えば、血液、血漿、血清、便、尿、リンパ液、腹水、乳管洗浄液、乳頭吸引液、唾液、気管支肺胞洗浄液、涙液、及び脳脊髄液)、ならびに組織試料が挙げられるが、これらに限定されない。試料の供給源は、個体由来の固形組織(例えば、採取したての、凍結された、及び/もしくは保存された、臓器、組織試料、生体組織、もしくは吸引液)、血液もしくは任意の血液組成成分、体液(例えば、尿、リンパ液、脳脊髄液、羊膜液、腹腔液、もしくは間質液等)、または細胞であり得る。ある特定の実施形態では、生体試料は肝臓由来の組織及び/または細胞である。
【0225】
ある特定の実施形態では、診断または検出方法は、二重特異性抗KLB抗体のKLBへの結合を許容する条件下で、生体試料を本明細書に記載の二重特異性抗KLB抗体と接触させることと、複合体が二重特異性抗KLB抗体とKLBとの間で形成されるかどうかを検出することと、を含む。かかる方法は、インビトロ方法またはインビボ方法、例えば、免疫蛍光またはウェスタンブロットであってもよい。ある特定の実施形態では、例えば、KLBが患者選択のためのバイオマーカーである場合に、本明細書に開示される二重特異性抗KLB抗体を使用して、抗KLB抗体による療法に適格な対象を選択する。
【0226】
ある特定の実施形態では、本方法において使用するための開示される抗体は標識され得る。標識には、直接的に検出される標識または部分、例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、及び放射性標識、ならびに例えば、酵素反応または分子相互作用を介して間接的に検出される部分、例えば、酵素またはリガンドが含まれるがこれらに限定されない。標識の非限定例には、放射性同位体32P、14C、125I、H、及び131I、希土類キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体等のフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferases)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号を参照されたい)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼとカップリングされた、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ等の複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定した遊離ラジカル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0227】
V.薬学的製剤
本明細書に開示される主題は、薬学的に許容される担体を伴う、本明細書に記載される多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体を含有する薬学的製剤を更に提供する。ある特定の実施形態では、本薬学的組成物は、複数の(例えば、2つ以上の)単離された本明細書に開示される主題の多重特異性、例えば、二重特異性抗体、及び/またはその抗原結合部分の組み合わせを含み得る。
【0228】
ある特定の実施形態では、開示される薬学的製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の純度を有する開示される多重特異性、例えば、二重特異性抗KLB抗体を、1つ以上の薬学的に許容される担体(Remington´s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と組み合わせることによって調製することができる。例えば、限定するものではないが、凍結乾燥された抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。ある特定の実施形態では、水性抗体製剤には、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908号に記載されているものが含まれ、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0229】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、純度が、約80%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、約99%超、約99.1%超、約99.2%超、約99.3%超、約99.4%超、約99.5%超、約99.6%超、約99.7%超、約99.8%超、または約99.9%超であり得る。
【0230】
薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投薬量及び濃度ではレシピエントに非毒性であり、それらとしては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される担体の更なる非限定例には、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)等のヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質等の介在性薬物分散剤を更に含む。rHuPH20を含む、ある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されており、その内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼ等の1つ以上の更なるグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0231】
担体は、(例えば、注射または注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または上皮投与に好適であり得る。投与経路に応じて、本活性化合物、即ち、二重特異性抗体は、化合物を、酸の作用及び化合物を不活性化し得る他の天然の条件から保護するために物質中にコーティングされてもよい。
【0232】
本開示の医薬組成物はまた、併用療法において、即ち、他の薬剤と組み合わせて、投与することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される薬学的組成物は、治療される特定の適応症の必要に応じて2つ以上の活性成分、例えば、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する活性成分も含み得る。ある特定の実施形態では、薬学的製剤は、第1の治療薬により治療される疾患と同じ疾患を治療するための第2の活性成分を含み得る。かかる活性成分は、好適には、意図される目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
【0233】
本開示の組成物は、当該技術分野で既知の多様な方法によって投与することができる。投与の経路及び/または様式は、所望の結果に応じて変動する。活性化合物は、化合物を、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル封入送達系を含む放出制御製剤等の、急速な放出から保護する担体と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤を調製するための多くの方法は、例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978によって説明されている。ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、米国食品医薬品局の医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(Good Manufacturing Practice)(GMP)条件下で製造される。
【0234】
開示される二重特異性抗KLB抗体を含有する持続放出製剤も調製することができる。持続放出調製物の好適な例には、本抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられるがこれに限定されず、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。ある特定の実施形態では、活性成分は、例えば、コアセルベーション技法もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタシレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中、またはマイクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技法は、Remington´s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0235】
ある特定の投与経路によって本開示の抗体を投与するためには、化合物を、その不活性化を防止するための物質でコーティングするか、またはそれを化合物と同時投与することが必要であり得る。例えば、本化合物は、適切な担体、例えば、リポソーム、または希釈剤中で対象に投与されてもよい。薬学的に許容される希釈剤には、生理食塩水及び緩衝水溶液が挙げられる。リポソームには、水中油中水型CGFエマルション、及び従来のリポソームが挙げられる(Strejan et al..(1984)J.Neuroimmunol.7:27)。
【0236】
薬剤的に許容される担体には、滅菌水溶液または分散液、及び滅菌注射液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。薬学的活性物質のためのかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野で既知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合性である限りを除いて、本発明の医薬組成物におけるその使用が企図される。補足的活性成分を組成物に組み込むこともできる。
【0237】
治療用組成物は、典型的に、製造及び保管条件下で、無菌であり、実質的に等張であり、かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として、処方することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)を含有する溶媒または分散媒質、及びその適切な混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトール等のポリアルコール、または塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含むことによって、もたらすことができる。
【0238】
無菌注射液は、必要な量の本二重特異性抗体を、必要に応じて、上に列挙された成分のうちの1つまたはその組み合わせを有する適切な溶媒中に組み込み、続いて精密濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に、その事前に滅菌濾過された溶液からの任意の追加的な所望の成分を添加した粉末をもたらす、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0239】
治療用組成物は、当該技術分野で既知の医療機器により投与することができる。例えば、本開示の治療用組成物は、例えば、米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、または同第4,596,556号に開示されている機器等の無針皮下注射機器により投与することができる。本発明において有用なインプラント及びモジュールの例には、制御された速度で薬剤を分注するための埋め込み型マイクロ注入ポンプを開示している米国特許第4,487,603号;薬剤の経皮投与のための治療用機器を開示している米国特許第4.,486,194号;正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを開示している米国特許第4,447,233号;連続的薬物送達のための変流量式埋め込み型注入装置を開示している米国特許第4,447,224号;複数のチャンバ部分を有する浸透圧性薬物送達システムを開示している米国特許第4,439,196号;及び浸透圧性薬物送達システムを開示している米国特許第4,475,196号が挙げられる。多くの他のかかるインプラント、送達システム、及びモジュールが既知である。
【0240】
治療量組成物用の本発明の製剤は、経口、経鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、直腸、膣、及び/または非経口投与に好適なものを含む。本製剤は、好都合にも単位剤形で提供することができ、薬学の分野において周知である任意の方法によって調製することができる。担体材料と組み合わせて単一剤形を産出することができる二重特異性抗体の量は、治療される対象及び特定の投与様式に応じて変動する。担体材料と組み合わせて単一剤形を産出することができる二重特異性抗体の量は、一般に、治療効果をもたらすような組成物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、約0.01パーセント~約99パーセントの活性成分、約0.1パーセント~約70パーセント、または約1パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0241】
また膣内投与に好適な本明細書に開示される主題の製剤には、当該技術分野において適切であることが知られているような担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡、または噴霧製剤が挙げられる。本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形には、粉末、噴霧、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤が挙げられる。活性化合物は、薬学的に許容される担体と、必要であり得る任意の保存剤、緩衝液、または噴霧剤と一緒に、無菌条件下で混合され得る。
【0242】
「非経口投与」及び「非経口で投与される」という語句は、経腸及び局所投与以外の投与様式、通常は注射による投与を意味し、限定せずに、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内注射ならびに注入を含む。
【0243】
これらの薬学的組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤等のアジュバントを含有することができる。微生物の存在の防止は、上記の滅菌手順によって、ならびに、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の様々な抗菌剤及び抗真菌剤を含めることによっての両方で、確実にされ得る。糖、塩化ナトリウム等のような等張剤を組成物に含めることもまた、望ましいことであり得る。更に、注射可能な医薬形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅らせる薬剤を含めることによってもたらすことができる。
【0244】
本発明の抗体が医薬品としてヒト及び動物に投与されるとき、それらは、それ自体で、または例えば薬学的に許容される担体と組み合わせられた約0.01%~約99.5%(または約0.1~約90%)の二重特異性抗体を含む医薬組成物として、与えることができる。
【0245】
VI.製品及びキット
本明細書に開示される主題は、更に製品及びキットに関する。例えば、限定するものではなく、本開示の製品及び/またはキットは、1つ以上の本明細書に開示される多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体を含み得る。
【0246】
ある特定の実施形態では、本製品は、容器と、容器上のまたは容器に伴うラベルまたは添付文書とを含む。好適な容器の非限定例には、ボトル、バイアル、シリンジ、及びIV溶液バッグが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチック等の多様な材料から形成され得る。容器は、それ自体によって、または別の組成物と組み合わせて、病態の治療、予防、及び/または診断に有効である組成物を保持することができ、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈注射溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアルであり得る)。
【0247】
ある特定の実施形態では、本開示の製品及び/またはキットは、上記の障害の治療、予防、及び/または診断に有用な物質を含有する。ある特定の実施形態では、組成物中の少なくとも1つの活性剤が本明細書に開示される主題の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が、選定した病態を治療するために使用されることを示し得る。
【0248】
ある特定の実施形態では、本製品は、(a)本明細書に開示される主題の本明細書に開示される二重特異性抗体を含む組成物を中に収容した第1の容器と、(b)更なる細胞傷害性薬剤または治療剤を含む組成物を中に収容した第2の容器とを含み得る。ある特定の実施形態では、本製品は、本組成物が特定の病態を治療するために使用され得ることを示す添付文書を更に含み得る。
【0249】
ある特定の実施形態では、本製品は、追加の容器、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液等であるがこれらに限定されない薬学的に許容される緩衝液を含む第2または第3の容器を更に含み得る。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含むことができる。
【0250】
以下の実施例は、本明細書に開示される主題を例示するだけのものであり、決して限定的であるとみなされるべきではない。
【実施例
【0251】
実施例1:抗KLB抗体の開発及び特性評価
この実施例は、抗KLBモノクローナル抗体の生成を説明する。抗KLBモノクローナル抗体を産生させるために、KLBノックアウト(KLB.ko)マウス(Genentech,South San Francisco,CA)に、KLBもしくはFGFR1cのいずれかを発現しているpRKベクターもしくはpCMVベクターか、または乳酸加リンガー溶液中で希釈したmFlt3リガンド(DNA)及びmGM-CSF(DNA)(Genentech)を伴うかもしくは伴わない、ヒトKLB及びFGFR1cを発現しているpCMV.hKLB.IRES.hFGFR1cベクターか、いずれかを、それぞれ50μg用いて、合計3~13注射で、1~4週間隔で、水圧尾静脈(HTV)注射によって免疫付与するか、あるいはPBS中で希釈したヒトKLB及びFGFR1cで安定してトランスフェクトした500万個の300.19細胞を用いて、合計12注射で、腹腔内(i.p.)注射によって、毎週、免疫付与した。マウスに、HTVを介したKLB及びFGFR1cプラスミドDNAか、またはi.p.注射を介したそれぞれ2μgのヒトKLBタンパク質及びカニクイザルKLBタンパク質を伴う500万個の300.19-KLB/FGFR1cトランスフェクト細胞か、いずれかを、それぞれ50μg、融合前ブーストとして与えた。
【0252】
最後の免疫付与の3日後に脾臓を採取した。FACSによって全ての血清がヒトKLB及び/またはKLB/FGFR1c複合体を過剰発現している293細胞への強力な結合を示したマウス由来の脾細胞を、電気融合(Cyto Pulse CEEF-50装置、BTX Harvard Apparatus,Holliston,MA)によってP3X63-Ag8U.1マウス骨髄腫細胞(American Type Culture Collection,Manassas,VA)と融合させた。Cytofusion Medium C(BTX Harvard Apparatus 47-0001)によって2回洗浄した後、単離した脾細胞及び骨髄腫細胞を1:1の割合で混合し、次に1000万細胞/mlでCytofusion Medium C中に再懸濁させた。電気融合は製造業者の指示に従って行った。融合させた細胞を、7%COインキュベーターにおいて37℃で一晩ClonaCell-HY Medium C(Stemcell Technologies、カタログ番号03803)中で培養した。翌日、融合させた細胞を遠心分離させた後、抗マウスIgG-FITC(Jackson Immunoresearch,West Grove,PA)を有する10mlのClonaCell-HY Medium C中に再懸濁させ、次にHAT成分を含有する90mlのMethylcellulose-based ClonaCell-HY Medium D(Stemcell Technologies、カタログ番号03804)と一緒に穏やかに混合した。細胞をOmniTrayプレート(Thermo Fisher Scientific,Rochester,NY)にプレーティングし、7%COインキュベーターにおいて37℃で成長させた。6~7日間の培養後、蛍光コロニーを選択し、Clonepix FL(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して、200μL/ウェルのClonaCell-HY Medium E(StemCell Technologies、カタログ番号03805)を含有する96ウェルプレート(Becton Dickinson、カタログ番号353075)に移した。ハイブリドーマ培地をELISAスクリーニングの3日前に交換した。ピッキングの7日後に上清をELISAによって抗マウスIgGに対してスクリーニングした。ELISAによってマウスIgG発現を示すハイブリドーマを増殖させ、細胞ベースのELISA及び/またはFACSによって、ヒトKLβ、マウスKLB、カニクイザルKLB、ヒトKLB/FGFR1c複合体、カニクイザルKLB/FGFR1c複合体、ヒトFGFR1c、及び/またはヒトKLα/KLBを過剰発現している293細胞への結合についてスクリーニングした。上清も、FACSによって抗KLB 8C5抗体(Genentech)との結合競合についてスクリーニングした。全てのIgG陽性上清も、ヒトFGFR1c及びKLβ/FGFR1c複合体を過剰発現している293細胞を使用して、GAL/Elk1ルシフェラーゼアッセイにおいて、アゴニスト活性についてスクリーニングした。RNeasyキット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用してFACS陽性及びアゴニスト性ハイブリドーマ細胞株からRNAを抽出し、cDNAを生成し、配列決定のために増幅させた。重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子を、発現のためにpRKプラスミドベクター(Genentech,Inc.)に挿入した。FACS結合活性及びアゴニスト活性を示した固有のクローンからのプラスミドDNAを、293細胞において組み換え発現させた。次いで、これまでに説明されているように(Hongo et al.,Hybridoma 19:303,2000)、上清をプロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0253】
上記の方法を使用して、KLBの単一エピトープに結合するモノクローナル抗KLB抗体を産生する約4個の異なるハイブリドーマ、2C12、4H7、23B3、及び28B7を特定した。
【0254】
第5のモノクローナル抗体である12B8は、以下の実験方法を使用して特定した。Balb/cマウスを、hFGFR1c及びhKLBタンパク質を安定して発現しているHEK293細胞で免疫付与した。12週間後に膵臓を採取し、ハイブリドーマを生成した。ハイブリドーマを産生する抗hKLB抗体を、免疫付与に使用したHEK293細胞を使用して、FACS分析によって特定した。簡潔には、hKLBを単独で発現しているか、hFGFR1を単独で発現しているか、またはそれらの両方を発現している293細胞を、FACS緩衝液(PBS中0.5%のBSA)中の希釈したハイブリドーマ上清及びPE複合体化ヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson Labs)で染色した。同じFACS緩衝液を使用して染色した細胞を洗浄した。染色した細胞をFACScan(Becton Dickinson)及びFlowJo FACS分析ソフトウェア(Tree Star)によって分析した。IgG重鎖及び軽鎖をコードしているcDNAを発現ベクターにクローニングした。
【0255】
これら5つの抗KLB抗体、12B8、2C12、4H7、23B3、及び28B7は、KLB/FGFR1cアゴニスト抗体として機能することが示された(図4及び5)。これら5つの抗体についての重鎖可変領域及び軽鎖可変領域CDR配列を、それぞれ、表2及び表3に示す。これらの抗KLB抗体の完全長重鎖及び軽鎖配列は、表4及び図13~17に示す。これらの抗体は、本明細書では親抗体と称する。
表2.抗KLB抗体についての重鎖可変領域CDR配列
表3.抗KLB抗体についての軽鎖可変領域CDR配列
表4.特定した抗KLB抗体の重鎖及び軽鎖可変領域
【0256】
実施例2:二重特異性抗KLB抗体のスクリーニング
この実施例では、二重特異性抗KLB抗体のスクリーニングを行い、二重特異性抗KLB抗体のKLB/FGFR1cアゴニスト活性を293T細胞中で試験した。
【0257】
KLB上の2つの結合部位、例えば、エピトープに結合する二重特異性抗体を、表1及び2で上に列挙した親抗体の抗KLB抗体配列を使用して生成した。生成した二重特異性抗体の要約については表5を参照されたい。二重特異性抗体は、VLfH(可変軽完全重(variable light full heavy))形式で完全重鎖に連結した単一軽鎖可変領域を用いる「ノブ・イントゥ・ホール」ヘテロ二量体化技法を使用して産生させた(図1を参照されたい)。Ridgway et al.,Protein Engineering,Vol.9:7,p617-621(1996)、Atwell et al.J.Mol.Biol.270,26-35(1997)、Spiess et al.,Nat.Biotech.31,753-759(2013)も参照されたい。
【0258】
KLB/FGFR1cアゴニスト活性を呈した二重特異性抗体をスクリーニングするために、軽鎖及び重鎖の各々をVLfH形式で発現させた。図1に示すように、VLfH形式は、配列番号68に記載の配列を有するアミノ酸を含むリンカーを介して可変軽鎖ドメインに連結した完全長重鎖を含む。VLfH形式の軽鎖可変ドメイン及び完全長重鎖を有するポリペプチドを生成するために、ATGAYA(配列番号83)をコードするcDNA-R108(EU付番システムに従う)までの軽鎖可変ドメイン-GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(リンカー、配列番号68)-CH1残基F126(EU付番システムに従う)までを含み、5´末端でBsiWI制限部位を、3´末端でPspOMI/ApaI制限を含む重鎖可変ドメインを、商業的に合成した。様々なアイソタイプ及びCH3におけるノブホール突然変異を含むヒンジ変異型を有する、完全重鎖をコードする標準的なpRKベクターにサブクローニングするために、cDNAを制限酵素BsiWI及びPspOMIで消化させた。結果として得られる翻訳されたポリペプチドは、形式MGWSCIILFLVATATGAYA(シグナルペプチド、配列番号69)-R108(EU付番システムに従う)までの軽鎖可変ドメイン-GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(リンカー、配列番号68)-完全重鎖を含む。
【0259】
同じ軽鎖定常鎖(CL)ドメインをVLfHポリペプチドの各対に使用した。CLドメインを、プライマー:5´-TTTCCCTTTATCGATTGAATTCCACCATGGGATGGTCATGTATC ATCCTTTTTCTAGTAGCAACTGCAACTGGAGTACATTCAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTC-3´(配列番号63)、5´-TTTCCCTTTAAGCTTAACACTCTCCCCTGTTGAAGC TCTTTGT-3´(配列番号64)を使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、配列番号66に記載の以下のヌクレオチド配列を含むヒトカッパ(κ)軽鎖についてのcDNAを含有するプラスミドから増幅させた。配列番号66は以下に提供する。
CGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCTTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCCGTGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGT(配列番号66)
配列番号66は、以下に提供する配列番号65に記載のアミノ酸配列をコードする。 RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号65)
【0260】
次に、増幅させたDNAを、オープンリーディングフレーム(ORF)の開始前及び停止コドンの後で固有部位と同じ制限酵素部位を含有する標準的なpRKベクターにサブクローニングするために、制限酵素ClaI及びHindIIIで消化させて、以下に提供する配列番号67に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをもたらした:
MGWSCIILFLVATATGVHSTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号67)。カッパ定常軽の開始は、T109(EU付番システムに従う)であるが、T109に限定されず、R108及び前のエルボー(elbow)残基を含む。この定常軽鎖(CL)DNAを1回だけクローニングし、上に開示のVLfH DNAとの対形成に再利用した。
【0261】
これまでに記載されている様々な体積のCHO(Wong et al.(2010) Biotechnol.Bioeng.,106:751-763)細胞またはHEK293T(Bos et al.(2014) Journal of Biotechnology,180:10-16)細胞の一過性トランスフェクション培養における発現のために、VLfHとCL pRK DNAとを同量で混合し、二重特異性抗体のヘテロ二量体化を促進した。CLドメインを、VLfHポリペプチドから別個のポリペプチドとして発現させた。CLドメインが自律的に折り畳み、折り畳んでいる間にBiPと相互作用しないことがこれまでに示されている(Hellman et al.(1999) J.Cell Biol.144:21-30)。加えて、CLドメインは、重鎖(HC)と対形成されるまで分泌を失速させるER保留シグナルを有しないため、自身で効率的に分泌され得る。軽鎖(LC)及び代理軽鎖(λ5)(Bankovich et al.(2007) Science 316:291-294)は、2つのドメインを介してHCと相互作用することができる。CL:CH1界面に加えて、(LCについての)VL及び(λ5についての)第1のベータ鎖は、相互作用中に更なる安定性を提供する。単離されたCLについての会合動態が、うまく(i)CH1上のBiP等のシャンペロンを置き換え、(ii)CH1と安定して対形成し、(iii)CH1を安定させて、CH1において最終プロリン異性化を可能にし、最終折り畳み状態に入るために十分早く締まっているかどうかは現在のところ分かっていない(Feige et al.(2009) Mol Cell.34:569-579)。可変ドメインの相互作用の寄与がないと、CL:CH1相互作用は、CH1の適当な折り畳みを可能にし、VL-HC融合の折り畳みの欠陥を取り返すには一過性の程度が過ぎた可能性がある。
【0262】
2つのVLfHポリペプチドの同時発現によってヘテロ二量体化が得られたかどうかを決定するために、質量分析を行った。質量分析データを、Agilent 6230 TOF LC-MSシステム及び1290 Infinity HPLC(Agilent Technology,Santa Clara,CA,USA)を使用して取得した。二重特異性抗体を、4.6mm×50mmのPLRP-S逆相カラム(Agilent Technology)を使用して精製した。完全な質量を、MassHunterソフトウェア(Qualitative Analysis B.04.00)を使用してMaximum Entropy Deconvolutionによって得た。図2A~Bに示すように、VLfHの同時発現により、2つのVLfHポリペプチドのヘテロ二量体化が生じた。開示される方法により、95%超のヘテロ二量体化及び5%未満のホモ二量体化が生じた。
表5.二重特異性抗KLB抗体
【0263】
VLfH形式の二重特異性抗体のアゴニスト活性を決定するために、ルシフェラーゼアッセイを行った。HEK293T細胞を、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)+10%のウシ胎仔血清(FBS)、GlutaMax(Life Technologies)、及びAntibiotic-Antimycotic(Life Technologies)中で培養し、FuGENE(登録商標)HD Transfection Reagent(Roche)を使用して、ウミシイタケルシフェラーゼ(pRL-SV40,Promega)をコードする発現ベクター、FGFR1c、転写活性化因子(pFA2-Elk1,Stratagene)、及びGAL4 結合部位によって駆動される蛍ルシフェラーゼレポーター(pFR-Luc、Stratagene)によって一過性トランスフェクションを行った。翌日、トランスフェクトした細胞を、更に6~8時間、無血清培地中で培養し、二重特異性抗KLB抗体及び対応する親モノクローナル抗体の各々を、濃度を増加させながら試験した。組換えヒトFGF21(R&D)を一部のルシフェラーゼ実験において参照として使用した。細胞をPassive Lysis Buffer(Promega)で溶解させ、4℃で1時間、または-20℃で一晩のいずれかでインキュベートした。細胞ルシフェラーゼ活性を、DUAL-GLO(登録商標)Luciferase Assay System(Promega)及びEnVision(登録商標)Multilabel Reader(PerkinElmer)を使用して決定した。蛍ルシフェラーゼ活性を、同時発現させたウミシイタケルシフェラーゼ活性に対して正規化し、結果を、リガンド濃度の関数として相対発光量(RLU)でプロットした。
【0264】
HEK293TdelFGFR1細胞中で、FGFR1遺伝子を、ガイドRNAであるaacttcactgtcttggcagccgg及びgatctccaggtacaggggcgaggを使用するCRISPR/Cas9技術によって不活性化した。細胞を、CMVプロモーターによって駆動されるCas9発現プラスミドと、U6プロモーターの制御下で各ガイドRNAを発現しているプラスミドとを用いてトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、コロニーを、DMEM75%と、22ミクロンのフィルターを通して事前に濾過しておいたトランスフェクトした培養物からの上清25%とで構成される馴化培地を含む96ウェルプレート中、1ウェルあたり1細胞でソーティングした。コロニーを、FACSによってFGFR1c表面発現の不在についてスクリーニングした。プライマーであるATGCTCTCCCCTCCTCGG(配列番号84)及びAGGCCCCTGTGCAATAGATG(配列番号85)を使用するゲノムDNA PCRを使用して、FGFR1欠乏クローンがFGFR1遺伝子座における欠失を担持することを更に確認した。1つのFGFR1陰性クローンを増殖させてルシフェラーゼレポーターアッセイに使用した。
【0265】
図3に示すように、VLfH形式の二重特異性抗体(tcBsIgG)はアゴニスト活性を呈した。例えば、VLfH形式の二重特異性抗体12B8/23B3は、単独のVLfH形式の親抗体12B8及び23B3よりも高いアゴニスト活性を呈した(図3)。加えて、VLfH形式の二重特異性抗体12B8/23B7は、単独のVLfH形式の親抗体12B8及び23B7よりも高いアゴニスト活性を呈した(図3)。これらの結果により、二重特異性抗体を特定するためのVLfH系スクリーニング方法が、アゴニスト活性に著しい影響を与えず、二重特異性抗体の一般的スクリーニングとして使用できることを示す。5つのバイエピトープ性抗体及び親抗体を、同じtcBsIgG形式ではあるが、HMW種及び他の可能性のある不純物を除去するために2カラム精製を用いて、連続して産生させた。これらの単分散tcBsIgG調製物は単一特異性の親と比較してより優れたアゴニスト活性を保持したため(データ割愛)、最初のスクリーニングプロセス中に更なる精製の必要がないことを確認した。
【0266】
実施例3:二重特異性抗KLB抗体の特性評価
実施例2で特定した二重特異性抗体を、二重特異性IgG抗体に再フォーマティングし、実施例2に記載したルシフェラーゼを使用してKLB/FGFR1cアゴニスト活性について分析した。図4及び5に示すように、アゴニスト活性を呈すると特定したVLfH形式の二重特異性抗体(tcBsIgG)は、IgG抗体に再フォーマティングしたときにも活性を示したため、実施例2に記載したスクリーニング方法によるいかなる偽の陽性も生じなかったことが示された。例えば、二重特異性抗体12B8/23B3は、単独の親抗体12B8及び23B3よりも高いアゴニスト活性を呈した。二重特異性抗KLB抗体12B8/2C12、23B3/28B7、2C12/28B7、及び4H7/28B7についても類似の結果が観察された(図4及び5)。これらの結果により、開示される二重特異性抗体がそれらの対応する単独の単一特異性親抗体よりも高いアゴニスト活性を呈することが示される。
【0267】
二重特異性抗KLB抗体の有効性を、対応する親抗体対の1:1混合物の活性を比較することで分析した。例えば、二重特異性抗体23B3-28B7の活性を、23B3対28B7の1:1混合物の活性と比較した。図6に示すように、複合体特異的抗KLB二重特異性抗体23B3/28B7の1対はロックされた二重特異性を必要とした。即ち、23B3及び28B7結合部位のアゴニスト作用は、これらの可変領域が同じ二重特異性抗体の一部である場合、それらが2つの別個のモノクローナル抗体の一部として作用する場合よりも優れている。
【0268】
実施例4:KLB二重特異性抗体のアゴニスト活性にはFGFR1cが必要である
この実施例では、開示される二重特異性抗体を更に分析して、それらのアゴニスト活性が発現FGFR1c及び/またはKLBに依存したかどうかを決定した。
【0269】
KLBを有するFGFR1cを発現しているかまたはKLBを有するFGFR2cを発現しているHEK293T細胞中のGAL4-Elk1系ルシフェラーゼアッセイにおいて試験した際、抗KLB抗体のアゴニスト活性には、KLBの発現及びFGFR1cの発現が必要とされたことを観察した(図7)。本二重特異性抗体は、ルシフェラーゼ活性を、組換えFGFR1c及びhKLBを発現している細胞においては用量依存性様式で誘導するが、FGFR1cに極めて密接に関係している受容体であるFGFR2cとKLBとを同時発現している細胞においては誘導しなかったことが観察されたため、これらの二重特異性抗体が、KLB依存性FGFRアゴニストとして作用することが示された(図7)。
【0270】
更に、二重特異性抗KLB抗体は、FGF21の抗糖尿病活性についての関連細胞型を表す初代ヒト脂肪細胞においてERK等のMAPKシグナル伝達媒介物のリン酸化を誘導する活性を呈した(図8)。FGF21、抗KLB/抗FGFR1c二重特異性抗体(BsAb2)、FGFR1cアームとKLBアームとを有する二重特異性抗体(主抗体)、及びアイソタイプ一致抗体であるトラスツズマブを対照として使用した。
【0271】
二重特異性抗KLB抗体についての作用様式を更に理解するために、KLB及びFGFR1cを発現しているHEK293T細胞においてMAPKリン酸化カスケードを始動させるそれらの能力を、ルシフェラーゼ系レポーターアッセイを使用して定量化した。
【0272】
抗体結合をフローサイトメトリーによって決定した。細胞を、96ウェル組織培養プレートに2×10細胞/ウェルでプレーティングし、一晩成長させた。翌日、各ウェルを、FugeneHDトランスフェクション試薬(Roche)を製造業者の仕様に従って使用し、100ngのプラスミドDNAでトランスフェクトした。48時間後、細胞を解離させ、3%のウシ胎仔血清(FCS)を補充した冷PBS中で洗浄し、2μg/mlの指定された抗KLB抗体と共に45分間氷上でインキュベートし、再度洗浄した後、4μg/mlの抗ヒトIgG-Alexa 488(Life Technologies)と共に45分間氷上でインキュベートした。細胞を、FACSCalibur分析器(Becton Dickinson)を使用してフローサイトメトリーによって分析した。以下の表6に示すように、本二重特異性抗体は、主抗KLB/抗FGFR1c二重特異性抗体であるBsAb2と比較して高いEC50を呈した。例えば、二重特異性抗KLB抗体23B3/28B7は、ルシフェラーゼ系レポーターアッセイを使用して、0.63nMというBsAb2と比較して極めて高いEC50値を呈した(表6を参照されたい)。
表6
【0273】
実施例5:抗KLB抗体のエピトープマッピング
この実施例では、実施例1で特定した抗KLB抗体のエピトープマッピングを、FACS(図9)、ルシフェラーゼ系レポーターアッセイ(図10)、及びエピトープビニング(図11A~11B)によって行った。
【0274】
以下に記載のキメラヒト/ラットKLBタンパク質(図9及び10)またはキメラヒトFGFR1c/FGFR2cタンパク質(図10)を、HEK293TまたはHEK293TdelFGFR1細胞の表面上で一過性発現させ、示す抗体で染色し、フローサイトメトリー(図9)またはルシフェラーゼ系レポーターアッセイ(図10)によって分析した。図9及び10では、KLB及びFGFRキメラを絵で表し、ヒトKLBまたはFGFR1c配列を黒色で、ラットKLBまたはヒトFGFR2c配列を白色で示す。
【0275】
これらのアッセイに基づくと、モノクローナル抗体12B8が、KLBのアミノ酸配列
IQFYNKVISSRGFPFENSSSRCSQTQENTECTVCLFLVQKKPLIFLGCCFFSTLVLLLSIAIFQRQKRRKFWKAKNLQHIPLKKGKRVVS(配列番号43)の少なくとも一部に結合すると推論できる。
【0276】
モノクローナル抗体2C12、23B3、及び4H7は、KLBのアミノ酸配列
ADSHWRAAERFLQFEIAWFAEPLFKTGDYPAAMREYIASKHRRGLSSSALPRLTEAERRLLKGTVDFCALNHFTTRFVMHEQLAGSRYDSDRDI(配列番号44)の少なくとも一部に結合する。
【0277】
モノクローナル抗体28B7は、KLBのアミノ酸配列
FSGDGRAIWSKNPNFTPVNESQLFLYDTFPKNFFWGIGTGALQVEGSWKKDGKGPSIWDHFIHTHLKNVSSTNGSSDSYIFLEKDLSALDFIGVSFYQFSISWPRLFPDGIVTVANAKGLQYYSTLLDALVLRNIEPIVTLYHWDLPLALQEKYGGWKNDTIIDIFNDYATYCFQMFGDRVKYWITIHNPYLVAWHGYGTGMHAPGEKGNLAAVYTVGHNLIKAHSKVWHNYNTHFRPHQKGWLSITLGSHWIEPNRSENTMDIFKCQQSMVSVLGWFANPIHGDGDYPEGMRKKLFSVLPIFSEAEKHEMRGTADFFAFSFGPNNFKPLNTMAKMGQNVSLNLREALNWIKLEYNNPRILIAENGWFTDSRVKTEDTTAIYMMKNFLSQVLQAIRLDEIRVFGYTAWSLLDGFEWQDAYTIRRGLFYVDFNSKQKERKPKSSAHYYKQIIRENGFSLKESTPDVQGQFPCDFSWGVTESVLKPESVASSPQFSDPHLYVWNATGNRLLHRVEGVRLKTRPAQCTDFVNIKKQLEMLARMKVTHYRFALDWASVLPTGNLSAVNRQA(配列番号45)の少なくとも一部に結合する。
【0278】
同様に、FGFR1c配列
KTVALGSNVEFMCKVYSDPQPHIQWLKHIEVNGSKIGPDNLPYVQILKTAGVNTTDKEMEVLHLRNVSFEDAGEYTCLAGNSIGLSHHSAWLTVLEALEERPAVMT(配列番号46)が、モノクローナル抗体12B8、23B3、4H7、及び28B7がアゴニスト活性を及ぼすために必要とされる。
【0279】
以下のヒト/ラットKLB及びヒトFGFR1c/FGFR2cタンパク質ならびにキメラを、ベクターにクローニングし、FACS分析のためにはHEK293T、またはルシフェラーゼアッセイのためにはHEK293TdelFGFR1の表面に発現させた。ヒトKLB配列は太字で示し、ヒト/ラット配列の結合部付近にある相同配列は斜体で示す。同様に、FGFR2cは太字で示し、FGFR1cとFGFR2cとの間で相同である結合配列は斜体で示す。
【0280】
ヒトKLB:
(配列番号47).
【0281】
KLBタンパク質Aに対応する相同ラット領域:
FSGDGKAIWDKKQYVSPVNPGQLFLYDTFPKNFSWGVGTGAFQVEGSWKADGRGPSIWDRYVDSHLRGVNSTDRSTDSYVFLEKDLLALDFLGVSFYQFSISWPRLFPNGTVAAVNAKGLQYYRALLDSLVLRNIEPIVTLYHWDLPLTLQEEYGGWKNATMIDLFNDYATYCFQTFGDRVKYWITIHNPYLVAWHGFGTGMHAPGEKGNLTAVYTVGHNLIKAHSKVWHNYDKNFRPHQKGWLSITLGSHWIEPNRTENMEDVINCQHSMSSVLGWFANPIHGDGDYPEFMKTSSVIPEFSEAEKEEVRGTADFFAFSFGPNNFRPSNTVVKMGQNVSLNLRQVLNWIKLEYDNPRILISENGWFTDSYIKTEDTTAIYMMKNFLNQVLQAIKFDEIQVFGYTAWTLLDGFEWQDAYTTRRGLFYVDFNSEQKERKPKSSAHYYKQIIQDNGFPLQESTPDMKGQFPCDFSWGVTESVLKPEFTVSSPQFTDPHLYVWNVTGNRLLYRVEGVRLKTRPSQCTDYVSIKKRVEMLAKMKVTHYQFALDWTSILPTGNLSKINRQVLRYYRCVVSEGLKLGISPMVTLYHPTHSHLGLPMPLLSSGGWLNTNTAKAFQDYAGLCFKELGDLVKLWITINEPNRLSDMYNRTSNDTYRAAHNLMIAHAQVWHLYDRQYRPVQHGAVSLSLHSDWAEPANPYVESHWKAAERFLQFEIAWFADPLFKTGDYPLAMKEYIASKKQRGLSSSVLPRFTLKESRLVKGTIDFYALNHFTTRFVIHKQLNTNCSVADRDVQFLQDITRLSSPSRLAVTPWGMRKLLGWIRRNYRDMDIYVTANGIDDLALEDDQIRKYYLEKYVQEALKAYLIDKVKIKGYYAFKLTEEKSKPRFGFFTSDFKAKSSVQFYSKLISSSGFSSENRSPACGQPPEDTECAICSFLTQKKPLIFFGCCFISTLAALLSITIFHHRKRRKFQKARNLQNIPLKKGHSRVFS(配列番号48)
【0282】
ヒト/ラットKLBキメラ:
(配列番号49)
【0283】
ヒト/ラットKLBキメラ:
(配列番号50)
【0284】
ヒト/ラットKLBキメラ:
(配列番号51)
【0285】
ヒト/ラットKLBキメラ:
(配列番号52)
【0286】
ヒト/ラットKLBキメラ:
(配列番号53)
【0287】
ヒト/ラットKLBキメラ:
(配列番号54)
【0288】
ヒト/ラットKLBキメラ:
(配列番号55)
【0289】
ヒト/ラットKLBキメラ:
(配列番号56)
【0290】
ヒトFGFR1c:
(配列番号57)
【0291】
ヒトFGFR2c:
RPSFSLVEDTTLEPEEPPTKYQISQPEVYVAAPGESLEVRCLLKDAAVISWTKDGVHLGPNNRTVLIGEYLQIKGATPRDSGLYACTASRTVDSETWYFMVNVTDAISSGDDEDDTDGAEDFVSENSNNKRAPYWTNTEKMEKRLHAVPAANTVKFRCPAGGNPMPTMRWLKNGKEFKQEHRIGGYKVRNQHWSLIMESVVPSDKGNYTCVVENEYGSINHTYHLDVVERSPHRPILQAGLPANASTVVGGDVEFVCKVYSDAQPHIQWIKHVEKNGSKYGPDGLPYLKVLKAAGVNTTDKEIEVLYIRNVTFEDAGEYTCLAGNSIGISFHSAWLTVLPAPGREKEITASPDYLEIAIYCIGVFLIACMVVTVILCRMKNTTKKPDFSSQPAVHKLTKRIPLRRQVTVSAESSSSMNSNTPLVRITTRLSSTADTPMLAGVSEYELPEDPKWEFPRDKLTLGKPLGEGCFGQVVMAEAVGIDKDKPKEAVTVAVKMLKDDATEKDLSDLVSEMEMMKMIGKHKNIINLLGACTQDGPLYVIVEYASKGNLREYLRARRPPGMEYSYDINRVPEEQMTFKDLVSCTYQLARGMEYLASQKCIHRDLAARNVLVTENNVMKIADFGLARDINNIDYYKKTTNGRLPVKWMAPEALFDRVYTHQSDVWSFGVLMWEIFTLGGSPYPGIPVEELFKLLKEGHRMDKPANCTNELYMMMRDCWHAVPSQRPTFKQLVEDLDRILTLTTNEEYLDLSQPLEQYSPSYPDTRSSCSSGDDSVFSPDPMPYEPCLPQYPHINGSVKT(配列番号58)
【0292】
FGFR1c/FGFR2cキメラ:
(配列番号59)
【0293】
FGFR1c/FGFR2cキメラ:
(配列番号60)
【0294】
FGFR1c/FGFR2cキメラ:
(配列番号61)。
【0295】
FGFR1c/FGFR2cキメラ:
(配列番号62)。
【0296】
エピトープビニング実験(図11A~11B)を、Octet Red384システム(Pall Life Sciences,Menlo Park,CA)において、抗マウスFcまたは抗ヒトFc捕捉バイオセンサを使用して、8チャネルまたは16チャネルモードのBioLayer Inferometryによって行った。アッセイは7ステップの結合サイクルからなった:1)抗マウスFcバイオセンサを泳動緩衝液(1倍の動力学用緩衝液、ForteBio 18-5032)に1分間浸漬させ、ベースラインを確立し、2)20μg/mlのマウスIgG2a(参照)抗体を10分かけて捕捉し、3)別のベースラインを1.5分かけて確立し、4)100nMのヒトKLBを10分かけてローディングし、第3のベースラインを1.5分かけて確立し、6)5μg/mlのヒトIgG1(試験)抗体を10分かけて会合させ、7)10分かけて解離させた。抗ヒトFc捕捉バイオセンサを用いたエピトープビニングを同様に行った。図11の要約は、各抗体について決定されたビンを示す。
【0297】
図12は、例示的なバイオレイヤーインフェロメトリー実験を示す。この実施例では、2C12(ヒトIgG1)が、組換えKLBへの結合について、23B3とは競合するが28B7または8C5(マウスIgG)とは競合しない。
【0298】
実施例6:三鎖二重特異性IgG:高速二重特異性抗体スクリーニングのための抗体プラットフォーム
材料及び方法
キャピラリー電気泳動による精製された抗体の特性評価
Caliper GX IIマイクロ流体システム(PerkinElmer Biotechnology,Waltham,MA,USA)において試料を分析した。全ての試料を、これまでに説明されているように調製した(Kim,2016)。チップは、LabChip GXII User Guideに提供されている製造業者の指示に従って調製した。
【0299】
LC-MS/MSによる精製された抗体の特性評価
質量分析データを、Agilent 6230 TOF LC-MSシステム及び1290 Infinity HPLC(Agilent Technology,Santa Clara,CA)を使用して取得した。IgGを4.6mm×50mmのPLRP-S逆相カラム(Agilent Technology,Santa Clara,CA)で分離させた。完全な質量を、MassHunterソフトウェア(Qualitative Analysis B.04.00)を使用してMaximun Entropy Deconvolutionによって得た。
【0300】
Biacore Kinetics分析
tcIgG及び従来のIgGの結合親和性決定のために、BIAcore T200及びタンパク質Aセンサチップを用いる表面プラズモン共鳴(SPR)測定を使用し、単量体ヒトKLBの希釈物を、分析物として、固定したtcIgGまたは従来のIgGに25℃で注射して、一価親和性を決定した。会合速度(kon)及び解離速度(koff)を、単純な1対1Langmuir結合モデルを使用して計算した。平衡解離定数(Kd)を、比率koff/konとして計算した。
【0301】
ウェスタンブロット
ヒト初代皮下前脂肪細胞をLonza(Walkersville,MD)から得た。細胞を、供給業者のプロトコルに従って成長させ、分化させた。簡潔には、細胞を、FBS、L-グルタミン、及びGA-1000を含有する前脂肪細胞基礎培地-2において成長させた。集密に達した後、細胞を、デキサメタゾン、インドメタシン、及び3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)を含有する成長培地中で分化させた。ERKシグナル伝達分析のために、細胞を10日間分化させ、3時間無血清培地中で成長させた後、示される抗体と共にもう1時間更に培養した。プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤錠(Roche,USA)を含有する2倍のLDS緩衝液(Invitrogen,USA)中で細胞を溶解させて、細胞抽出物を生成した。試料を、標準的な方法によってウェスタンブロット分析に使用した。ウェスタンブロット分析に使用した抗体は、Cell Signaling Technology(Danvers,MA)製であった:pERK1/2(T202/204)、(カタログ番号4370)、ERK1/2(カタログ番号4695)、及びHSP90(カタログ番号4874)。
【0302】
結果
トランスのV-HC融合及びC発現により、BsIgGについての同族軽鎖対形成問題が解決される
新規の三鎖BsIgG(tcBsIgG)形式についての模式図を図18Aに示す。この新規のプラットフォームにおいて、重鎖のヘテロ二量体化は、これまでに説明されている「ノブ・イントゥ・ホール」突然変異(Ridgway,1996、Atwell,1997)によって達成した。V-HC融合(VLfH)を設計し、正しい重鎖-軽鎖対形成を獲得するために、短い(GlySer)4-リンカーを使用し、抗体scFvの設計に類似して抗体VドメインのC末端部を重鎖のN末端に繋留した(図18A、左)。HECK293細胞におけるCを有しないVLfH単独の発現により、タンパク質A親和性カラム精製回収後、キャピラリー電気泳動(CE-SDS)に基づき、VLfH発現は微量しかまたは全く生じなかった(図18B、レーン1)。抗体CH1ドメインの折り畳みがCドメインとの対形成を必要とするというこれまでの観察は、この結果に起因した(Feige,2009)。Cドメインとの対形成は、最終品質管理ステップとして働き、適切に折り畳まれた抗体が分泌されることを確実にすると提案されている(Feige,2014)。これを試験するために、単離されたCドメインが、CH1ドメインの折り畳みを補完し、VLfHハイブリッドタンパク質の生産的な分泌(図18A、右)を可能にして、三鎖IgG(tcIgG)を生むことができるかどうかの決定を目指した。抗KLB抗体、クローン28B7単一エピトープ性tcIgGを、IgG1、2、及び4のアイソタイプ、ならびにIgG1及びIgG4の脱グリコシル化(N297G)バージョン中で作製した。Cドメインをコードする別々のプラスミドの同時トランスフェクションの後、インタクトな親抗体と同等の収率で抗体を回収することに成功した(図18B)。ヒトIgG1アイソタイプのBsIgGが現在の臨床開発では主要な抗体クラスであったが、他のアイソタイプも、抗体エフェクター機能及び抗体活性を調節するために単一特異性抗体として一般に活用利用された。このため、tcIgG技術を他の治療的に関連性のあるヒトアイソタイプIgG2及びIgG4にも利用できるかどうかを評価した。Cドメインの要件は、IgG2及びIgG4におけるVLfHの発現全体で一貫しており、N297G突然変異を有するIgG1及びIgG4の共通した脱グリコシル化バージョンの挙動は類似していた(図18B)。C同時発現後の全体的な収率は、対応する野生型IgGアイソタイプ対照と同等であった。電気泳動分析によって、CとCH1との間の鎖間ジスルフィド結合が効率的に形成されたことが示された。したがって、抗体の生産的な折り畳み及び分泌のために、抗体V及びCドメインが単一ポリペプチド鎖として共有的に接続する必要はない。
【0303】
次に、可能性のある二重特異性抗体産生のために、tcIgG形式がノブ・イントゥ・ホール突然変異と互換性があるかどうかを評定した。ノブ及びホール半分のIgGの発現及び組織化を、各自で、または同時発現時のいずれかで比較した。以前に観察したように、ノブのみまたはホールのみの各自による発現により、半抗体及びいくらかの共有的ホモ二量体が主に生じた(図18C)。標準的なIgGとtcIgG形式との間では、発現または組織化における大きな差異は観察されなかった。同じ細胞におけるノブ及びホール半抗体の同時発現により、IgG1、IgG2、及びIgG4の3つの主要なヒトアイソタイプ全てにおいて、150KDaの種の効率的な組織化が生じた(図18C)。単一特異性二価tcIgGとして及び二重特異性tcIgGとしてのヒトtcIgG2及びtcIgG4の観察された収率及び産生物の品質は、それらの対応するIgGアイソタイプと同等であった。
【0304】
tcIgGノブ及びtcIgGホールの単一細胞発現が抗体重鎖のヘテロ二量体形成に影響しないことを確実にするため、精製した抗体を質量分析によって分析した(図18D)。ホモ二量体汚染物質はわずかしか検出されなかった。本明細書では三鎖IgG(tcIgG)形式と称する、単離されたCドメインと繋留したVLfH形式は、それらの存在度が従来のBsIgGと同等であるため、ヘテロ二量体形成に悪影響を及ぼさないと結論付けた。
【0305】
tcBsIgG形式の抗KLBバイエピトープ性抗体の産生
上記の5つの抗KLBモノクローナル抗体の由来するバイエピトープ性抗体を産生させるために、まず各抗体をVLfHノブベクター及びVLfHホールベクターにクローニングした。これにより、両方の重鎖配向(即ち、ノブ/ホール及びホール/ノブ)にある10個の可能性があるバイエピトープの組み合わせを含む、tcIgG形式の25個の異なる抗体(表8)の産生が可能となった。抗体の組み合わせ各々についてノブ-ホール配向の両方を有することで、独立した複製が提供された。加えて、親単一特異性抗体をtcIgGノブ及びtcIgG.ホール同時発現形式で生成して(表8、灰色のセル)、ベンチマークとし、5つの抗KLBモノクローナル抗体と対形成させる陽性(表8、(+)発現対照)及び陰性(表8、(-)発現対照)ノブ及びホールtcIgG発現対照を含めた。
表8 HEK293T中での発現及びMabSelectSureによる精製後のtc
IgGの回収収率(mg/L)
【0306】
25個全てのtcIgG抗体をキャリパー電気泳動によって特性評価すると、比較可能な組織化効率を示した。全抗体について優勢なバンドは約150kDaであり、このことは正しいドメイン対形成及びジスルフィド結合形成を示す(図19A)。また、親抗体の非効率的な発現により、結果として得られるバイエピトープ性抗体の発現収率が制限されたことに気付いた。これは、ノブ・イントゥ・ホール突然変異による効率的なヘテロ二量体化の結果である。例えば、陰性発現対照tcIgGは、二価として発現されるとき、及び任意の他の抗体と同時発現されるときに、収率が下がった(図19A及び19B)。同時に、これにより、質量分析によって確認して、最低限のホモ二量体形成が確実となった。
【0307】
tcIgGを更に特性評価するために、tcIgGを分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。HTP発現、及びタンパク質Aクロマトグラフィーによる単一カラム精製の後で、tcIgGは1%~70%の範囲の高分子量(HMW)種を有し、これは、親tcIgGの特性に関係すると見られ、このことは、それらの親標準IgGにも相関する。ノブ及びホールtcIgGとして同時発現された陽性発現対照tcIgGは、HMW種を有しなかったが、2つの比較的低発現である抗KLB tcIgG、12B8及び23B3は、はるかに多量のHMW種を有した(図19C)。興味深いことに、HMW種の量は、陽性発現対照tcIgGと12B8 tcIgGとの同時発現、及び挙動が不良な12B8 tcIgGと挙動がわずかに良好な23B3 tcIgGとの同時発現の場合と同様、挙動が良好なtcIgG半抗体が、挙動が不良なtcIgG半抗体と同時発現されたときに、平均された(図19C)。HMWは各抗体の活性に影響し得るが、発明者らは、ルシフェラーゼレポーターアッセイにおける25個の抗体の特性評価を進めることを決定した。更なるカラムステップにより、スループットが減少し得、発明者らは、よりよく精製された物質によって活性を検証することにした。
【0308】
抗KLB tcBsIgGバイエピトープ性抗体のインビトロスクリーニングにより、リンカーのないBsIgGに翻訳される5個の優れた対を特定する。
抗KLB tcBsIgGバイエピトープ性抗体のインビトロスクリーニングは実施例2に記載した。リンカーのないBsIgGに翻訳される5つの優れた対を特定した:12B8/23B3、12B8/2C12、23B3/28B7、2C12/28B7、及び4H7/28B7(図3~6)。
【0309】
tcIgG形式のリンカーがスクリーニング中にバイエピトープ性tcIgGの結合親和性に干渉しないことを確実にするために、相対的アゴニスト活性が最も高い抗体4H7及び28B7の結合動態を、tcIgG1及び標準IgG1の両方としてBiacoreによって評定した。これらの2つの形式についての結合動態における顕著な差は観察されず、このことは、tcIgG形式が親抗体の結合動態を保存すること示した(表9)。
表9 IgG及びtcIgG形式としての抗KLB抗体28B7及び4H7の結合動態 値は、2つの独立したBiacore実験の平均±範囲である
【0310】
抗体アイソタイプが抗体アゴニスト活性に与える影響
抗体アイソタイプが抗体のアゴニスト及びリガンド模倣活性を調節し得ることがこれまでに報告されている(White,2014、Sampei,2014)。これを受けて、抗体アイソタイプが、他のバイエピトープ対と比べて最も高いアゴニスト特性を有した4H7/28B7バイエピトープ性抗体の活性に影響し得るかどうかを調査した。ヒトIgG1、IgG2、及びIgG4アイソタイプとしての抗体を産生させ(インビトロの組織化)、ルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて異なるアイソタイプの活性と比較した(図20A)。ヒトIgG2構築物のために、第2のヒンジシステイン(Kabat付番のC233、EU付番のC220Sと同じ)をセリンに突然変異させて、最も効率的なインビトロの組織化を可能にした。このアッセイでは、IgG1アイソタイプとしての4H7/28B7バイエピトープ性抗体の活性はIgG2アイソタイプの活性の約2倍であった一方で、IgG4アイソタイプは中等レベルの活性を有した。これら3つの抗体のEC50は類似しており、抗体アイソタイプは結合親和性に影響しないという考えと一致した。
【0311】
次に、評価を発展させて、ヒト初代脂肪細胞におけるERK1/2リン酸化を評定した。このアッセイのため、分化させた初代ヒト脂肪細胞を様々なモノクローナル抗体で処理し、ERK1/2リン酸化レベルをウェスタンブロットによって評定した。初代細胞を使用するこのアッセイの結果は、ルシフェラーゼレポーターアッセイと一致した。4H7/28B7バイエピトープ性抗体は、IgG1、IgG2、及びIgG4アイソタイプバックグラウンドのいずれにおいてもアゴニストとして作用する(図20B及び20C)。更に、4H7及び28B7抗体は、1:1混合物として組み合わせたとき、または単一の分子バイエピトープ性抗体として、単一親分子活性と比較してより優れた活性を呈した。
【0312】
考察
二重特異性及びバイエピトープ性抗体が強力なリガンド模倣対として働き得ることは、これまでに示されている。しかしながら、これらの抗体を見い出すことは困難である場合が多く、固有の機能的組み合わせを特定するために最大で何千もの組み合わせをスクリーニングする必要がある(Zhang,2012、Kitazawa,2012、Kolumam,2015)。本明細書に記載されるtcBsIgG形式により、BsIgGの発現及び産生を単純化し、BsIgG組み合わせの大規模パネルのハイスループットスクリーニングを可能にする新規のシステムが提供される。この戦略を使用すると、アゴニスト抗体の活性が、バイエピトープ性抗体への同時製剤化または組み合わせによって更に強化され得ることが示された。助長された活性を呈したバイエピトープの組み合わせは、親抗体の特性評価から完全に予測し得ず、tcBsIgGシステムの可用性を示す。観察は、他のアゴニスト抗体、例えば、OX40、CD27、またはGITRを標的にし、免疫刺激活性をもたらすものに及び得る。
【0313】
tcBsIgG形式は、抗体構造における修飾、特に、インビボの免疫原性反応を励起し得るCLのN末端でのリンカー及びネオエピトープの付加を含む。しかしながら、これらの問題は、インビトロスクリーニング活動には関係がない。いくつかの見込みある抗体対を特定すると、以降の前臨床及び臨床開発のために、選択した数のBsIgGを従来のBsIgG形式で再フォーマティングし得る。この時点で、得られた結果が従来のIgG形式で反復され得ることが、いずれのスクリーニング形式にも必須である。本明細書に記載されるtcIgG形式は、抗体の全体的な構築を保存し、結果を、臨床用途にはより望ましいリンカーのないBsIgGに変換することを可能にする。これは、tcBsIgG形式のような二重特異性分子の産生において類似したスループットを提供するが、標的アーム間の幾何及び距離を改変し得る、scFvのヘテロ二量体Fcへの融合(Moore,2011)等の他の技術よりも有利である。加えて、他のBsIgG形式と比べたtcBsIgG形式の別の利点は、二重特異性抗体のマトリックスを産生するためにクローニングする必要のあるプラスミドの総数がより少ないこと(即ち、各半抗体につき1つのみのプラスミド)である。薬物開発における抗体のスクリーニングの域を越えて、tcIgG形式は、診断用途の二重特異性抗体を産生する可能性を有する。単一細胞中でtcIgGを産生する能力により、BsIgGを産生させるための費用効果の高い方法がもたらされる。
【0314】
tcIgG形式の別の利点は、IgG2及びIgG4アイソタイプへのその適用可能性である。抗体アイソタイプ特異的活性が報告されている。例えば、CD40に対するヒトIgG2抗体が、ヒトIgG1及びIgG4アイソタイプと比べてスーパーアゴニスト活性を呈することがこれまでに報告されている(White,2014)。加えて、第IXa/X因子に向けた二重特異性抗体の第VIII因子リガンド模倣活性の振幅が抗体クラスに依存したことが報告されている(Sampei,2014)。これらの観察に基づき、ヒトIgG1、IgG2、及びIgG4アイソタイプとしての4H7/28B7リードバイエピトープ性IgGのアゴニスト活性を比較した。抗体アイソタイプ間で著しい差異が観察されたが、ヒトIgG1が最良のアゴニスト活性を示した。これは、ヒトIgG1としての抗KLB対を最初にスクリーニングしたことに一部帰し得る。最初のスクリーニングを、全てのアイソタイプのBsIgGを使用して行っていたら、異なる対及びアイソタイプが選択されていた可能性がある。tsIgG形式の他のヒトアイソタイプとの互換性により、このスクリーニングが可能となり得る。加えて、これにより、Fcガンマ受容体との異なる係合の効力によって、三重複合体を形成することが可能となる。これは、本抗KLBモデルシステムにおいては無関係であるが、主要標的化アゴニスト抗体の発見に重要であり得る。
【0315】
結論として、tcBsIgG形式により、幅広い用途に対するBsIgGスクリーニングのための卓越した戦略が提供される。
【0316】
実施例7:結合親和性試験
この実施例では、開示される二重特異性抗体を更に分析して、それらの結合親和性を決定した。抗KLB抗体クローン28B7及び4H7の結合親和性パラメータ(ka(1/Ms)、kd(1/s)、及びKD(nM))を、IgG形式とtcIgG形式との両方で決定した(図21)。各抗体クローン内で、従来のIgG形式とtcIgG形式との間の結合親和性差が最小であった。例えば、クローン28B7のIgG形式及びtcIgG形式のKDは、それぞれ2.65nM及び2.05nMであった。クローン4H7のIgG形式及びtcIgG形式のKDは、それぞれ0.78nM及び1.29nMであった。
【0317】
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Ridgway,J.B.,Presta,L.G.and Carter,P.(1996)Protein Eng.,9 617-621.
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Zhang,H.,Wilson,I.A.and Lerner,R.A.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.a.,109 15728-15733.
【0318】
図示され特許請求される様々な実施形態に加えて、開示される主題は、本明細書に開示され特許請求される特徴の他の組み合わせを有する他の実施形態も対象とする。このため、本明細書に提示される特定の特徴は、開示される主題が本明細書に開示される特徴の任意の好適な組み合わせを含むように、開示される主題の範囲内において他の様式で互いに組み合わされ得る。開示される主題の特定の実施形態の前述の説明は例示及び説明目的で提示されている。包括的であること、または開示される主題を開示される実施形態に限定することは意図されていない。
【0319】
開示される主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を開示される主題の組成物及び方法に行い得ることが、当業者には明らかとなる。よって、開示される主題は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内である修正及び変形を含むことが意図される。様々な出版物、特許、及び特許出願が本明細書で引用されており、それらの内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
<さらなる実施態様>
[実施態様1]第1の抗原結合ポリペプチドを含む単離された多重特異性抗体であって、前記第1の抗原結合ポリペプチドが、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる、VLドメイン、リンカー、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む、前記多重特異性抗体。
[実施態様2]前記多重特異性抗体がCLドメインを含まない、実施態様1に記載の多重特異性抗体。
[実施態様3]CLドメインを更に含む、実施態様1に記載の多重特異性抗体。
[実施態様4]前記CLドメインが、1つ以上のジスルフィド架橋によって前記第1の抗原結合ポリペプチドに連結する、実施態様3に記載の多重特異性抗体。
[実施態様5]前記ジスルフィド架橋が、前記CLドメインを前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH1ドメインと連結させる、実施態様4に記載の多重特異性抗体。
[実施態様6]第2の抗原結合ポリペプチドを更に含み、前記第2の抗原結合ポリペプチドが、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる、VLドメイン、リンカー、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む、実施態様1~5のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様7]前記第2の抗原結合ポリペプチドがCLドメインを含まない、実施態様6に記載の多重特異性抗体。
[実施態様8]前記多重特異性抗体が2つのCLドメインを含む、実施態様6に記載の多重特異性抗体。
[実施態様9]前記2つのCLドメインが同じである、実施態様8に記載の多重特異性抗体。
[実施態様10]前記2つのCLドメインのうちの一方が、1つ以上のジスルフィド架橋によって前記第1の抗原結合ポリペプチドに連結し、前記2つのCLドメインのうちの2つ目が、1つ以上のジスルフィド架橋によって前記第2の抗原結合ポリペプチドに連結する、実施態様8または9に記載の多重特異性抗体。
[実施態様11]前記ジスルフィド架橋が、前記CLドメインを前記第1の抗原結合ポリペプチド及び前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH1ドメインと連結させる、実施態様10に記載の多重特異性抗体。
[実施態様12]前記第1及び第2の抗原結合ポリペプチドが、同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合する、実施態様6~11のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様13]前記第1及び第2の抗原結合ポリペプチドが、2つの異なる抗原に結合する、実施態様6~11のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様14]前記リンカーが、1つ以上のグリシン(G)及びセリン(S)残基を含む、実施態様1~13のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様15]前記リンカーが約1~約50アミノ酸長を有する、実施態様1~14のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様16]前記リンカーが約20アミノ酸長である、実施態様1~15のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様17]前記リンカーがG S反復を含む、実施態様1~16のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様18]前記リンカーが配列番号68のアミノ酸配列を含む、実施態様1~17のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様19]前記リンカーが切断可能である、実施態様1~16のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様20]前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインとが、多重特異性抗体の形成を促進するように改変されている界面で会合する、実施態様6~19のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様21](a)前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと相互作用する前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの表面に突起を発生させ、
(b)前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと相互作用する前記第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの表面上に空洞を発生させる、実施態様20に記載の多重特異性抗体。
[実施態様22]前記より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基が、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)からなる群から選択される、実施態様21に記載の多重特異性抗体。
[実施態様23]前記より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基が、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、及びバリン(V)からなる群から選択される、実施態様21に記載の多重特異性抗体。
[実施態様24]前記抗体が、IgG、IgA、またはIgEアイソタイプである、実施態様1~23のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様25]前記抗体がIgGアイソタイプである、実施態様1~24のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様26]前記抗体が、IgG 、IgG 、またはIgG アイソタイプである、実施態様25に記載の多重特異性抗体。
[実施態様27]前記多重特異性抗体が、アゴニスト多重特異性抗体またはアンタゴニスト多重特異性抗体である、実施態様1~26のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様28]前記多重特異性抗体が二重特異性抗体である、実施態様1~27のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様29]前記二重特異性抗体がアゴニスト性バイエピトープ性抗体である、実施態様28に記載の多重特異性抗体。
[実施態様30]第1の抗原結合ポリペプチド及び第2の抗原結合ポリペプチドを含む単離されたバイエピトープ性アゴニスト抗体であって、前記第1及び第2の抗原結合ポリペプチドの各々が、VL-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3の順序でN末端からC末端への方向に位置付けられる、VLドメイン、リンカー、VHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む、前記バイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様31]前記第1及び第2の抗原結合ポリペプチドが、同じ抗原上の2つの異なるエピトープに結合する、実施態様30に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様32]前記バイエピトープ性抗体がCLドメインを含まない、実施態様30または31に記載のバイエピトープ性抗体。
[実施態様33]2つのCLドメインを更に含む、実施態様30または31に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様34]前記2つのCLドメインが同じである、実施態様33に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様35]前記2つのCLドメインのうちの一方が、1つ以上のジスルフィド架橋によって前記第1の抗原結合ポリペプチドに連結し、前記2つのCLドメインのうちの2つ目が、1つ以上のジスルフィド架橋によって前記第2の抗原結合ポリペプチドに連結する、実施態様33または34に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様36]前記ジスルフィド架橋が、前記CLドメインを前記第1の抗原結合ポリペプチド及び前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH1ドメインと連結させる、実施態様35に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様37]前記リンカーが、1つ以上のグリシン(G)及びセリン(S)残基を含む、実施態様30~36のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様38]前記リンカーが約1~約50アミノ酸長を有する、実施態様30~37のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様39]前記リンカーが約20アミノ酸長である、実施態様30~38のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様40]前記リンカーがG S反復を含む、実施態様30~39のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様41]前記リンカーが配列番号68のアミノ酸配列を含む、実施態様30~40のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様42]前記リンカーが切断可能である、実施態様30~39のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様43]前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインとが、多重特異性抗体の形成を促進するように改変されている界面で会合する、実施態様30~42のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様44](a)前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと相互作用する前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの表面に突起を発生させ、
(b)前記第2の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインの1つ以上のアミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有する1つ以上のアミノ酸残基で代置されて、前記第1の抗原結合ポリペプチドの前記CH3ドメインと相互作用する前記第2の抗原結合ポリペプチドのCH3ドメインの表面上に空洞を発生させる、実施態様30~43のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様45]前記より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基が、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びトリプトファン(W)からなる群から選択される、実施態様44に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様46]前記より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基が、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、及びバリン(V)からなる群から選択される、実施態様44に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様47]前記抗体が、IgG、IgA、またはIgEアイソタイプである、実施態様30~46のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様48]前記抗体がIgGアイソタイプである、実施態様30~47のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様49]前記抗体が、IgG 、IgG 、またはIgG アイソタイプである、実施態様30~48に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様50]実施態様1~29のいずれか1項に記載の多重特異性抗体または実施態様30~49のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体をコードする配列を含む、単離された核酸。
[実施態様51]実施態様50に記載の核酸を含む、ベクター。
[実施態様52]実施態様1~29のいずれか1項に記載の多重特異性抗体または実施態様30~49のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体を発現する、宿主細胞。
[実施態様53]実施態様50に記載の核酸または実施態様51に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[実施態様54]CLドメインをコードする核酸を更に含む、実施態様53に記載の宿主細胞。
[実施態様55]多重特異性抗体の産生方法であって、実施態様52、53、または54に記載の宿主細胞を、前記多重特異性抗体の産生に十分な条件下で培養することを含む、前記方法。
[実施態様56]バイエピトープ性アゴニスト抗体の産生方法であって、実施態様52、53、または54に記載の宿主細胞を、前記多重特異性抗体または前記バイエピトープ性アゴニスト抗体の産生に十分な条件下で培養することを含む、前記方法。
[実施態様57]前記多重特異性抗体または前記バイエピトープ性アゴニスト抗体を前記培養から回収することを更に含む、実施態様55に記載の方法。
[実施態様58]前記多重特異性抗体または前記バイエピトープ性アゴニスト抗体を前記培養から回収することを更に含む、実施態様56に記載の方法。
[実施態様59]実施態様56または57に記載の方法によって産生される、バイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様60]実施態様1~29もしくは58のいずれか1項に記載の多重特異性抗体または実施態様30~49または59のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体、及び薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
[実施態様61]第2の治療剤を更に含む、実施態様60に記載の組成物。
[実施態様62]実施態様1~29のいずれか1項に記載の多重特異性抗体または実施態様30~49のいずれか1項に記載のバイエピトープ性アゴニスト抗体を含む、キット。
[実施態様63]実施態様1~29のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を複数含む、ライブラリ。
[実施態様64]実施態様1~29のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を複数コードするポリヌクレオチドを複数含む、ライブラリ。
[実施態様65]多重特異性抗体のスクリーニング方法であって、
(a)複数の多重特異性抗体を実施態様63または64に記載のライブラリから得ることと、
(b)前記複数の多重特異性抗体と第1及び第2の抗原または同じ抗原の第1及び第2のエピトープとの結合についてアッセイすることと、
(c)前記第1及び第2の抗原または同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することと、を含む、前記方法。
[実施態様66]多重特異性抗体の識別方法であって、
(a)実施態様1~29のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を細胞中で発現させることと、
(b)前記ステップ(a)の多重特異性抗体を第1の抗原及び第2の抗原または同じ抗原の第1のエピトープ及び第2のエピトープと接触させることと、
(c)前記第1の抗原及び前記第2の抗原または同じ抗原の前記第1のエピトープ及び前記第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別することと、を含む、前記方法。
[実施態様67]バイエピトープ性アゴニスト抗体のスクリーニング方法であって、
(a)複数の多重特異性抗体を実施態様63または64に記載のライブラリから得ることと、
(b)前記複数の多重特異性抗体と、同じ抗原の第1及び第2のエピトープとの結合についてアッセイすることと、
(c)1つ以上のバイエピトープ性アゴニスト抗体を、同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープに結合する前記複数の多重特異性抗体から識別することと、
(d)前記バイエピトープ性抗体を、アゴニスト活性を呈する前記1つ以上のバイエピトープ性アゴニスト抗体から識別して、バイエピトープ性アゴニスト抗体を得ることと、を含む、前記方法。
[実施態様68]バイエピトープ性アゴニスト抗体のスクリーニング方法であって、
(a)実施態様1~29のいずれか1項に記載の多重特異性抗体を細胞中で発現させることと、
(b)前記ステップ(a)の多重特異性抗体を同じ抗原の第1のエピトープ及び第2のエピトープと接触させることと、
(c)同じ抗原の前記第1のエピトープ及び前記第2のエピトープに結合する多重特異性抗体を識別して、バイエピトープ性抗体を得ることと、
(d)前記バイエピトープ性抗体がアゴニスト活性を呈するかどうかを決定して、バイエピトープ性アゴニスト抗体を得ることと、を含む前記方法。
[実施態様69]前記バイエピトープ性アゴニスト抗体の前記アゴニスト活性を、前記バイエピトープ性アゴニスト抗体が由来した単一特異性抗体と比較することを更に含む、実施態様67または68に記載の方法。
[実施態様70]前記多重特異性抗体を発現させることが、前記多重特異性抗体をコードする1つ以上の核酸を前記細胞に導入することを含む、実施態様66または68~69のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様71]前記多重特異性抗体が、前記第1及び第2の抗原または同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープと、ステップ(b)において同時に接触する、実施態様66または68~70のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様72]前記ステップ(b)の多重特異性抗体が、前記多重特異性抗体を前記第1及び第2の抗原または同じ抗原の前記第1及び第2のエピトープに接触させる前に精製される、実施態様66または68~71のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
[実施態様73]前記多重特異性抗体がタンパク質Aクロマトグラフィーによって精製される、実施態様72に記載の方法。
[実施態様74]前記抗原が生物複合体中にある、実施態様65~73のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様75]前記細胞が原核細胞である、実施態様66または68~74のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様76]前記原核細胞がEscherichia coli細胞である、実施態様75に記載の方法。
[実施態様77]前記細胞が真核細胞である、実施態様66または68~74のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様78]前記真核細胞が酵母細胞または哺乳動物細胞である、実施態様77に記載の方法。
[実施態様79]前記哺乳動物細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、実施態様78に記載の方法。
[実施態様80]前記多重特異性抗体と前記第1及び/もしくは第2の抗原または第1及び/もしくは第2のエピトープとの結合が、ELISAによって分析される、実施態様65~79のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様81]実施態様65~80のいずれかに記載の方法を使用して識別及び/または産生された、単離されたバイエピトープ性アゴニスト抗体。
[実施態様82]KLBの2つのエピトープに結合する、単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様83]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号34、36、38、40、及び42からなる群から選択され、前記軽鎖可変領域が、配列番号33、35、37、39、及び41からなる群から選択される、単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様84]単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分であって、
(a)配列番号3~7及びそれらの保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR1と、
(b)配列番号8~12及びそれらの保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR2ドメインと、
(c)配列番号13~17及びそれらの保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR3ドメインと、
(d)配列番号18~22及びそれらの保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR1ドメインと、
(e)配列番号23~27及びそれらの保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR2ドメインと、
(f)配列番号28~32及びそれらの保存的置換からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR3ドメインと、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様85]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、
(a)配列番号34に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号33に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号36に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号35に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号38に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号37に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
(d)配列番号40に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号39に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、ならびに
(e)配列番号42に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号41に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、からなる群から選択される、前記単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様86]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、
(a)配列番号34に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号33に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号36に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号35に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号38に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号37に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、
(d)配列番号40に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号39に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、ならびに
(e)配列番号42に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域、及び配列番号41に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域、からなる群から選択される、前記単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様87]CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域と、を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様88]前記重鎖可変領域CDR1ドメインが、配列番号3~7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施態様87に記載の二重特異性抗体。
[実施態様89]前記重鎖可変領域CDR2ドメインが、配列番号8~12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施態様87または実施態様88に記載の二重特異性抗体。
[実施態様90]前記重鎖可変領域CDR3ドメインが、配列番号13~17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施態様87~89のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[実施態様91]前記軽鎖可変領域CDR1ドメインが、配列番号18~22からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施態様87~90のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[実施態様92]前記軽鎖可変領域CDR2ドメインが、配列番号23~27からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施態様87~91のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[実施態様93]前記軽鎖可変領域CDR3ドメインが、配列番号28~32からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施態様87~92のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
[実施態様94]単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分であって、CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域と、を含み、前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3ドメインが、
(a)配列番号3に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号13に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号18に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号23に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号28に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;
(b)配列番号4に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号9に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号14に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号19に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号24に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号29に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;
(c)配列番号5に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号10に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号15に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号20に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号25に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号30に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号6に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号11に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号16に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号21に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号31に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3;ならびに
(e)配列番号7に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号12に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号17に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号22に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号27に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号32に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、からなる群から選択される、前記単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様95]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号34に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号33に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様96]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号36に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号35に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様97]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号38に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号37に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様98]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号40に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号39に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様99]重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、配列番号42に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号41に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸及びそれらの保存的置換を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様100]配列番号3に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号13に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号18に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号23に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号28に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様101]配列番号4に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号9に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号14に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号19に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号24に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号29に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様102]配列番号5に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号10に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号15に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号20に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号25に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号30に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様103]配列番号6に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号11に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号16に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号21に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号31に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様104]配列番号7に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号12に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号17に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号22に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号27に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号32に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3を含む、単離された二重特異性抗KLB抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様105]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号34、36、38、40、及び42、ならびにそれらの保存的置換からなる群から選択され、前記軽鎖可変領域が、配列番号33、35、37、39、及び41、ならびにそれらの保存的置換からなる群から選択される、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号34、36、38、40、及び42、ならびにそれらの保存的置換からなる群から選択され、前記軽鎖可変領域が、配列番号33、35、37、39、及び41、ならびにそれらの保存的置換からなる群から選択される、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含み、
前記第1の抗体またはその抗原結合部分及び前記第2の抗体またはその抗原結合部分が、KLB上に存在する異なるエピトープに結合する、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様106]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号34に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号33に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号36に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号35に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様107]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号34に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号33に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号38に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号37に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様108]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号34に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号33に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号40に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号39に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様109]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号34に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号33に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号42に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号41に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様110]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号38に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号37に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号36に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号35に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様111]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号42に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号41に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号36に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号35に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様112]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号40に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号39に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号38に記載の配列と少なくとも95%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号37に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様113]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号42に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号41に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号38に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号37に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様114]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号36に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号35に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号40に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号39に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様115]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号40に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号39に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2の抗体またはその抗原結合部分であって、前記重鎖可変領域が、配列番号42に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含み、前記軽鎖可変領域が、配列番号41に記載の配列と少なくとも85%同一の配列を有するアミノ酸を含む、前記第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様116]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号3に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号13に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号18に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号23に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号28に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号4に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号9に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号14に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号19に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号24に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号29に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様117]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号3に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号13に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号18に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号23に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号28に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号5に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号10に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号15に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号20に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号25に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号30に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様118]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号3に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号13に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号18に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号23に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号28に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号6に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号11に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号16に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号21に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号31に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様119]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号3に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号8に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号13に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号18に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号23に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号28に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号7に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号12に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号17に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号22に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号27に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号32に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様120]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号5に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号10に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号15に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号20に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号25に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号30に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号4に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号9に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号14に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号19に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号24に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号29に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様121]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号6に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号11に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号16に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号21に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号31に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号4に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号9に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号14に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号19に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号24に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号29に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様122]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号7に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号12に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号17に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号22に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号27に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号32に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号4に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号9に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号14に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号19に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号24に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号29に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様123]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号5に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号10に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号15に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号20に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号25に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号30に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号6に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号11に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号16に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号21に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号31に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様124]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号5に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号10に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号15に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号20に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号25に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号30に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号7に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号12に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号17に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号22に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号27に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号32に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様125]単離された二重特異性抗KLB抗体であって、
(a)配列番号7に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号12に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号17に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号22に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号27に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号32に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第1の抗体またはその抗原結合部分と、
(b)配列番号6に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR1;配列番号11に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR2;配列番号16に記載の配列を有するアミノ酸を含む重鎖可変領域CDR3;配列番号21に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR1;配列番号26に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR2;及び配列番号31に記載の配列を有するアミノ酸を含む軽鎖可変領域CDR3、を含む、第2の抗体またはその抗原結合部分と、を含む、前記単離された二重特異性抗KLB抗体。
[実施態様126]単離された二重特異性抗体であって、
(a)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第1のポリペプチドであって、前記重鎖可変領域が、配列番号34、36、38、40、及び42、ならびにそれらの保存的置換からなる群から選択され、前記軽鎖可変領域が、配列番号33、35、37、39、及び41、ならびにそれらの保存的置換からなる群から選択される、前記第1のポリペプチドと、
(b)重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む第2のポリペプチドであって、前記重鎖可変領域が、配列番号34、36、38、40、及び42、ならびにそれらの保存的置換からなる群から選択され、前記軽鎖可変領域が、配列番号33、35、37、39、及び41、ならびにそれらの保存的置換からなる群から選択される、前記第2のポリペプチドと、を含み、
前記第1及び第2のポリペプチドが、各々、KLB上に存在する異なるエピトープに結合する、前記単離された二重特異性抗体。
[実施態様127]KLB上に存在する2つのエピトープに結合し、前記2つのエピトープが前記KLBのKL2ドメイン内に位置する、単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様128]KLB上に存在する2つのエピトープに結合し、前記KLBの2つのエピトープが前記KLBのKL1ドメイン内に位置する、単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様129]KLB上に存在する2つのエピトープに結合し、前記KLBの2つのエピトープのうちの一方が前記KLBのKL2ドメイン内に位置する、単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様130]前記KLB上に存在する2つのエピトープのうちの2つ目が前記KLBのKL2ドメイン内に位置する、実施態様129に記載の単離された二重特異性抗体。
[実施態様131]配列番号43に記載のアミノ酸配列を含む、KLB上のエピトープに結合する、単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様132]配列番号44に記載のアミノ酸配列を含む、KLB上のエピトープに結合する、単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様133]配列番号45に記載のアミノ酸配列を含む、KLB上のエピトープに結合する、単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様134]前記抗体またはその抗原結合部分がKLB/FGFR1cアゴニスト活性を有する、実施態様82~133のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様135]キメラ抗体またはその抗原結合部分である、実施態様82~134のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様136]前記抗体が完全長IgG抗体である、実施態様82~135のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様137]ヒト化抗体またはその抗原結合部分である、実施態様82~134のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様138]前記抗原結合部分がF(ab´) または化学結合したF(ab´) である、実施態様82~135または137のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様139]前記抗体またはその抗原結合部分がKLB/FGFR1c複合体を活性化する、実施態様82~138のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様140]前記抗体またはその抗原結合部分がインビボの血中グルコース値を低下させる、実施態様82~139のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様141]前記抗体またはその抗原結合部分が骨密度に著しい影響を与えない、実施態様81~140のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様142]前記抗体またはその抗原結合部分が、約10 -8 M以上の結合親和性でKLBに結合する、実施態様82~141のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
[実施態様143]代謝障害治療用の薬学的組成物の製造における実施態様82~142のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体の使用であって、前記代謝障害が、多嚢胞性卵巣症候群、代謝症候群、肥満、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病、非2型糖尿病、1型糖尿病、潜在性自己免疫性糖尿病、及び若年発症成人型糖尿病、ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、及びALS等の老齢疾患及び関連疾患からなる群から選択される、前記使用。
[実施態様144]代謝障害を有する個体の治療方法であって、治療有効量の実施態様82~142のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体を前記個体に投与することを含む、前記方法。
[実施態様145]第2の治療剤を前記個体に投与することを更に含む、実施態様144に記載の方法。
[実施態様146]前記代謝障害が、多嚢胞性卵巣症候群、代謝症候群、肥満、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪肝疾患、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病、非2型糖尿病、1型糖尿病、潜在性自己免疫性糖尿病、及び若年発症成人型糖尿病、ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、及びALS等の老齢疾患及び関連疾患からなる群から選択される、実施態様144または145に記載の方法。
[実施態様147]前記代謝障害が糖尿病である、実施態様144~146のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様148]実施態様82~142のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分、及び薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
[実施態様149]第2の治療剤を更に含む、実施態様148に記載の組成物。
[実施態様150]個体におけるKLB-FGFR1受容体複合体の活性化方法であって、治療有効量の実施態様82~142のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体を前記個体に投与することを含む、前記方法。
[実施態様151]実施態様82~142のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分をコードする配列を含む、単離された核酸。
[実施態様152]実施態様82~142のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分を発現する、宿主細胞。
[実施態様153]実施態様82~142のいずれか1項に記載の単離された二重特異性抗体またはその抗原結合部分を発現する、ハイブリドーマ細胞。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C-1】
図19C-2】
図19C-3】
図20
図21
【配列表】
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