(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ケーブル通過型ウインチ
(51)【国際特許分類】
B66D 1/46 20060101AFI20220111BHJP
B66D 1/74 20060101ALI20220111BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
B66D1/46 D
B66D1/74
H02P27/06
(21)【出願番号】P 2018548274
(86)(22)【出願日】2016-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2016063747
(87)【国際公開番号】W WO2017092882
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2018-07-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】202015106629.5
(32)【優先日】2015-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518196217
【氏名又は名称】デュアルリフト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】DUALLIFT GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】リュールフィンク、フランク
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】田村 嘉章
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-202551(JP,A)
【文献】特開2005-41636(JP,A)
【文献】特開2005-237094(JP,A)
【文献】特開昭62-16093(JP,A)
【文献】特開平11-201051(JP,A)
【文献】特開平8-26677(JP,A)
【文献】特開2012-65463(JP,A)
【文献】中国実用新案第204173824(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/015021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00 - 5/34
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニット(20)と、前記駆動ユニット(20)と連結されて駆動力をケーブルに加えるための従動ユニット(60)とを備えたケーブル通過型ウインチであって、
前記駆動ユニット(20)は、
電力供給網(70)から電流を取り込むための一次側(32)と、交流電圧(U
U、U
V、U
W)を送り出すための二次側(36)とを備えた周波数変換器(30)と、
前記周波数変換器(30)により交流電圧(U
U、U
V、U
W)が供給されて可変回転数(ω
1)で前記ケーブル通過型ウインチ(10)を駆動するための交流モータ(40)と、
前記駆動ユニット(20)を制御するために前記周波数変換器(30)及び前記交流モータ(40)と
それぞれに直接的に接続されている制御ユニット(50)とを有し、
前記制御ユニット(50)は、電圧検知手段(52)を有し、
前記制御ユニット(50)は、
前記電圧検知手段(52)により前記一次側(32)で低下電圧を検知した場合には、前記周波数変換器(30)を用いて前記交流モータ(40)の回転数(ω
1)を変更するように構成されており、
前記制御ユニット(50)は、前記交流モータ(40)の回転数(ω
1)を段階的に変更するように構成されており、
前記制御ユニット(50)は、前記電圧検知手段(52)により低下電圧が検知された場合には、検知された低下電圧に依存し、前記交流モータ(40)の回転数(ω
1)を、前記交流モータ(40)の要求電力が、前記周波数変換器(30)において前記電力供給網(70)により提供されている交流電圧(U
R、U
S、U
T)
に対応して低下するように
、段階的に変更するという構成を有し、
前記制御ユニット(50)は、前記交流モータ(40)の要求電力を半減する或いは倍増するように構成されて
おり、
前記制御ユニット(50)は、前記交流モータ(40)の励磁電圧を段階的に変更するように構成されている切替装置を有すること
を特徴とするケーブル通過型ウインチ。
【請求項2】
前記制御ユニット(50)は、超過電流を検知した場合には、前記交流モータ(40)の回転数(ω
1)を
段階的に変更するように構成されていること
を特徴とする、請求項1に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項3】
前記制御ユニット(50)は、制御データベースを有し、前記制御データベースは、予めプログラミングされた制御値を前記制御ユニット(50)へ提供するように構成されていること
を特徴とする、請求項1又は2に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項4】
前記制御ユニット(50)は、電流検知手段(56)により超過電流が検知された場合には、検知された超過電流に依存し、前記交流モータ(40)の回転数(ω
1)を、前記交流モータ(40)の要求電力が、前記周波数変換器(30)において前記電力供給網(70)により提供されている交流電圧(U
R、U
S、U
T)
に対応して低下するように
、段階的に変更するという構成を有すること
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項5】
前記周波数変換器(30)は、所定数の相を有する電力供給網(70)において稼働されるように構成されていること
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項6】
前記周波数変換器(30)と前記制御ユニット(50)は、統合型の装置(90)として構成されていること
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項7】
前記電力供給網(70)は、少なくとも50Vの定格電圧を有すること
を特徴とする、請求項4に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項8】
前記交流モータ(40)は、単相の230Vの定格交流電圧を用いた稼働のために構成されていること
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項9】
前記周波数変換器(30)は、少なくとも400Vを有する三相の電力供給網(70)における稼働のために構成されていること
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項10】
直流変換器の制御電圧は、24Vであり、又は230Vであること
を特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のケーブル通過型ウインチ。
【請求項11】
前記ケーブル通過型ウインチ(10)は、電力供給網側の一次側と、前記ケーブル通過型ウインチ(10)と接続するための二次側とを備えたアダプタ(80)を有し、
前記アダプタ(80)は、少なくとも単相の230Vの定格交流電圧を二次側に提供するように構成されていること
を特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のケーブル通過型ウインチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットと、該駆動ユニットと連結されて駆動力をケーブル(ないしロープ)に加えるための従動ユニットとを備えたケーブル通過型ウインチに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にウインチは、以前から知られており、荷物や人物を引き上げるために、特に高さの違いを橋渡しするために、産業の全ての分野において使用されている。ウインチの1つの所定の形式は、ケーブル(ないしロープ)をウインチ上で例えばドラムに巻き上げる代わりに、ケーブルがウインチを通過するように案内される所謂ケーブル通過型ウインチ(連続式ないしキャプスタン式ケーブルウインチ Seildurchlaufwinde)である。ケーブルは、例えばケーブル通過型ウインチの一方の側面又は両方の側面で重力に起因するか又は係合する荷重に基づいてぶら下がっており、それによりケーブル通過型ウインチは、ケーブル通過型ウインチを通過するように案内されるケーブルの部分をため込む必要がない。従ってケーブル通過型ウインチは、基本的に無制限の引上長ないし引張長を有することができる。そのようなケーブル通過型ウインチは、特に引上シャフト又は建造物において外部のウインチを固定するためのインフラが提供されている場合及び/又は提供可能である場合に使用される。
【0003】
ケーブル通過型ウインチは、通常、例えば窓清掃用ゴンドラにおいて、人物の移送や資材の移送のために使用される。
【0004】
駆動部として、ケーブル通過型ウインチにおいては、例えば差込接続部(コネクタ)を介して電力供給網(電力系統)と接続可能である交流モータが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US 2015/090946 A1
【文献】US 2003/098668 A1
【文献】EP 0 347 408 A1
【文献】US 2003/205703 A1
【文献】EP 0 710 619 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ケーブル通過型ウインチのこれらの構造は、通常、電力供給網内の電圧低下が直接的に駆動ユニットへ作用し、その際にはケーブル通過型ウインチが不安定な作動点に陥るという、欠点を有する。この稼働特性は、特にケーブル通過型ウインチが電力供給の粗悪な国では条件付きでのみ使用可能であるということ、をもたらす。
【0007】
この背景から本発明の基礎を成す課題は、上述の欠点をできるだけ軽減するケーブル通過型ウインチを創作すること、特にケーブル通過型ウインチの使用を電力供給の粗悪な国のためにも可能とすること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本発明の基礎を成す課題を、請求項1に記載の特徴を有する冒頭に掲げた形式のケーブル通過型ウインチにより解決する。
即ち本発明の一視点により、駆動ユニットと、前記駆動ユニットと連結されて駆動力をケーブルに加えるための従動ユニットとを備えたケーブル通過型ウインチであって、前記駆動ユニットは、電力供給網から電流を取り込むための一次側と、交流電圧を送り出すための二次側とを備えた周波数変換器と、前記周波数変換器により交流電圧が供給されて可変回転数で前記ケーブル通過型ウインチを駆動するための交流モータと、前記駆動ユニットを制御するために前記周波数変換器及び前記交流モータと接続されている制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、前記周波数変換器を用いて前記交流モータの回転数を変更するように構成されていることを特徴とするケーブル通過型ウインチが提供される。
より詳しくは、本発明の前記一視点において、駆動ユニットと、前記駆動ユニットと連結されて駆動力をケーブルに加えるための従動ユニットとを備えたケーブル通過型ウインチであって、前記駆動ユニットは、電力供給網から電流を取り込むための一次側と、交流電圧を送り出すための二次側とを備えた周波数変換器と、前記周波数変換器により交流電圧が供給されて可変回転数で前記ケーブル通過型ウインチを駆動するための交流モータと、前記駆動ユニットを制御するために前記周波数変換器及び前記交流モータとそれぞれに直接的に接続されている制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、電圧検知手段を有し、前記制御ユニットは、前記電圧検知手段により前記一次側で低下電圧を検知した場合には、前記周波数変換器を用いて前記交流モータの回転数を変更するように構成されており、前記制御ユニットは、前記交流モータの回転数を段階的に変更するように構成されており、前記制御ユニットは、前記電圧検知手段により低下電圧が検知された場合には、検知された低下電圧に依存し、前記交流モータの回転数を、前記交流モータの要求電力が、前記周波数変換器において前記電力供給網により提供されている交流電圧に対応して低下するように、段階的に変更するという構成を有し、前記制御ユニットは、前記交流モータの要求電力を半減する或いは倍増するように構成されており、前記制御ユニットは、前記交流モータの励磁電圧を段階的に変更するように構成されている切替装置を有することを特徴とする。
尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)上記一視点のとおり。
(形態2)前記制御ユニットは、電圧検知手段を有し、低下電圧を検知した場合には、前記交流モータの回転数を変更し、特に減少するように構成されていることが好ましい。
(形態3)前記制御ユニットは、電流検知手段を有し、超過電流を検知した場合には、前記交流モータの回転数を変更し、特に減少するように構成されていることが好ましい。
(形態4)前記制御ユニットは、前記交流モータの回転数を段階的に変更し、好ましくは4つの段階の間で変更し、特に好ましくは2つの段階の間で変更するように構成されていることが好ましい。
(形態5)前記制御ユニットは、制御データベースを有し、前記制御データベースは、予めプログラミングされた制御値を、特に検知された電圧と電流に依存し、前記制御ユニットへ提供するように構成されていることが好ましい。
(形態6)前記制御ユニットは、電圧検知手段により低下電圧が検知された場合、及び/又は電流検知手段により超過電流が検知された場合には、検知された低下電圧、及び/又は検知された超過電流に依存し、前記交流モータの回転数を、前記交流モータの要求電力が、前記周波数変換器において前記電力供給網により提供されている交流電圧と同じ分だけ低下するように変更するという構成を有することが好ましい。
(形態7)前記制御ユニットは、前記交流モータの要求電力を半減する或いは倍増するように構成されていることが好ましい。
(形態8)前記周波数変換器は、好ましくは単相から三相までの範囲内で、所定数の相を有する電力供給網において稼働されるように構成されていることが好ましい。
(形態9)前記周波数変換器と前記制御ユニットは、統合型の装置として構成されていることが好ましい。
(形態10)前記電力供給網は、少なくとも50Vの定格電圧、好ましくは少なくとも100Vの定格電圧、更に好ましくは少なくとも200Vの定格電圧、特に好ましくは少なくとも230Vの定格電圧を有することが好ましい。
(形態11)前記交流モータは、単相の230Vの定格交流電圧を用いた稼働のために構成されていることが好ましい。
(形態12)前記周波数変換器は、少なくとも400Vを有する三相の電力供給網における稼働のために構成されていることが好ましい。
(形態13)直流変換器の制御電圧は、24Vであり、好ましくは230Vであることが好ましい。
(形態14)前記ケーブル通過型ウインチは、電力供給網側の一次側と、前記ケーブル通過型ウインチと接続するための二次側とを備えたアダプタを有し、前記アダプタは、少なくとも単相の230Vの定格交流電圧を二次側に提供するように構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明により、駆動ユニットと、該駆動ユニットと連結されて駆動力をケーブルに加えるための従動ユニットとを備えたケーブル通過型ウインチが提案される。この際、駆動ユニットは、電力供給網から電流を取り込むための一次側と、交流電圧を送り出すための二次側とを備えた周波数変換器と、該周波数変換器により交流電圧が供給されて可変回転数でケーブル通過型ウインチを駆動するための交流モータと、駆動ユニットを制御するために周波数変換器及び交流モータと接続されている制御ユニットとを有する。この際、制御ユニットは、周波数変換器を用いて交流モータの回転数を変更するように構成されている。特に本発明により、ケーブル通過型ウインチは、制御ユニットと周波数変換器を有し、これらは、周波数変換器を用いて交流モータの回転数を変更するように構成される。
【0011】
この際、本発明は、引上装置と引張手段(例えばケーブルないしロープ)が稼働時には実質的に一定の負荷(ないし荷重 Last)を有し、従って駆動出力が実質的に回転数の関数であるという認識を利用している。本発明は、特に、引上装置では、引き上げるべき負荷だけが加えるべき引上力を決定し、従って供給電圧が低下する場合、即ち電力供給網電圧が低下する場合には、電圧低下の影響に対抗するために、交流モータの速度、即ち交流モータの回転速度ないし回転数が低下されるということを利用している。
【0012】
好ましくは、制御ユニットは、電圧検知のための電圧検知手段を有し、低下電圧(定格値より低い電圧)を検知した場合には、交流モータの回転数を変更し、特に減少するように構成されている。つまり制御ユニットは、電圧を検知するための少なくとも1つの装置を有し、特に、周波数変換器の電圧、好ましくは周波数変換器の一次側の電圧を検知し、検知された電圧を制御ユニットへ転送するように構成されている電圧測定器を有する。更に制御ユニット自体は、そのように検知された電圧を予めプログラミングされた電圧境界値(複数)と比較し、下側の境界値を下回る場合、即ち所謂低下電圧の場合には、交流モータの機械的な出力が、電力供給網により提供されている電気的な出力に対応するように交流モータの回転数を適合するという構成を有する。つまり制御ユニットは、交流モータを減速するよう、特に交流モータの回転数を減少するように準備されている。
【0013】
本発明の有利な一実施形態により、ケーブル通過型ウインチの制御ユニットは、電流検知のための電流検知手段を有し、この際、制御ユニットは、超過電流を検知した場合には、交流モータの回転数を変更し、特に減少するように構成されている。好ましくは、電流検知手段は、超過電流保護部として構成されており、周波数変換器の二次側において定格電流を検知し、そのように検知された定格電流を制御ユニットへ提供するように構成されている。更に制御ユニットは、予めプログラミングされた電流境界値を有し、そのように検知された電流を予めプログラミングされた電流境界値(複数)と比較し、上側の境界値を上回る場合、即ち所謂超過電流の場合には、交流モータの機械的な出力が、電力供給網により提供されている電気的な出力に対応するように交流モータの回転数を適合するという構成を有し、ないし交流モータを危険な稼働電流から保護するという構成を有する。
【0014】
電流と電圧の検知は、単相でも複数相でも行うことが可能である。
【0015】
オプションとして、ケーブル通過型ウインチの制御ユニットは、交流モータの回転数を段階的に変更し、好ましくは4つの段階の間で変更し、特に好ましくは2つの段階の間で変更するように構成されている。この際、制御ユニットは、例えば、特に交流モータがその回転方向も変更可能であり、交流モータの励磁電圧を段階的に変更するように構成されている切替装置(スイッチング装置)を有する。好ましくは、交流モータは、少なくとも、前進回転方向において第1速度と第2速度で稼働可能であり、並びに少なくとも、後退回転方向において第1速度で稼働可能である。つまりそれらの段階は、好ましくは、回転方向と速度に依存して選択可能である。
【0016】
本発明の更なる有利な一実施形態により、制御ユニットは、制御データベースを有し、この際、制御データベースは、予めプログラミングされた制御値を、特に検知された電圧に依存し、制御ユニットへ提供するように構成されている。制御ユニットの制御データベースは、好ましくは、ケーブル通過型ウインチが大きく異なる電力供給網においても作動可能であるように、使用場所に対応する制御値、ないし対応の電力供給網に対応する制御値が保存(記憶)されるという構成を有する。そのような実施形態は、大量生産の分野において特に有利に使用可能であり、それは、ケーブル通過型ウインチがそれらの使用場所に依存しないで製造され、現地で使用場所に対応してプログラミング可能なためである。
【0017】
更に好ましくは、ケーブル通過型ウインチの制御ユニットは、電圧検知手段により低下電圧が検知された場合、及び/又は電流検知手段により超過電流が検知された場合には、検知された低下電圧、及び/又は検知された超過電流に依存し、交流モータの回転数を、交流モータの要求電力が、周波数変換器において電力供給網により提供されている交流電圧と同じ分だけ低下するように変更するという構成を有する。この際、制御ユニットは、例えば、検知された電流ないし検知された電圧を予めプログラミングされた目標値と比較し、偏位(ずれ)がある場合には、交流モータは、電気的なトルクと機械的なトルクが実質的に同じ大きさであるように、適切な段階(速度段階)へ切り替えられる。このことは、特にケーブル通過型ウインチの通り抜け(即ち、過大駆動 Durchgehen)、及び/又は交流モータの超過電流を防止する。
【0018】
本発明の更なる有利な一実施形態により、ケーブル通過型ウインチの制御ユニットは、交流モータの要求電力を半減する或いは倍増するように構成されている。つまり好ましくは、交流モータの駆動制御は、互いに倍数をなす複数の段階において行われる。この際、このことが簡単に例えば抵抗ブリッジ回路又は簡単な切替過程(スイッチング過程)により実現可能であることは、特に有利であり、それにより例えば交流モータの連続的な駆動制御において該当するような複雑すぎる駆動制御は回避される。
【0019】
本発明の更なる有利な一実施形態により、ケーブル通過型ウインチの周波数変換器は、好ましくは単相から三相までの範囲内で、所定数の相を有する電力供給網において稼働されるように構成されている。この際、交流モータは、例えば単相モータないし三相モータとして構成されており、それにより交流モータは、単相の電力供給網でも三相の電力供給網でも稼働可能である。
【0020】
本発明の特に有利な一実施形態により、ケーブル通過型ウインチの周波数変換器と制御ユニットは、統合型の装置として構成されている。統合型の特に一体型の構成において、それに基づく、ケーブル通過型ウインチの現存の交流モータの簡単な後付け可能性を提供するモジュール構造は、特に有利である。
【0021】
本発明の特に有利な一実施形態により、ケーブル通過型ウインチが接続されている電力供給網(電力系統)は、少なくとも50Vの定格電圧、好ましくは少なくとも100Vの定格電圧、更に好ましくは少なくとも200Vの定格電圧、特に好ましくは少なくとも230Vの定格電圧を有する。従ってケーブル通過型ウインチは、例えば50Vのような低い定格電圧を有する電力供給網においても稼働されるように構成されている。ケーブル通過型ウインチは、好ましくは、200Vから400Vまでの定格電圧を有する電力供給網において(接続して)稼働される。
【0022】
本発明の更なる有利な一実施形態により、ケーブル通過型ウインチの交流モータは、単相の230Vの定格交流電圧を用いた稼働のために構成されている。これに応じて交流モータは、単相230V交流モータとして構成されている。この際、そのような交流モータの交換部品の密度が高い(即ち交換部品の準備が揃っている)こと並びに整備が簡単なことは、特に有利である。このことは、特に、通常は実質的に不安定な電力供給網を提供することにもなる粗悪なインフラを有する国において特に重要である。
【0023】
本発明の更なる有利な一実施形態により、ケーブル通過型ウインチの周波数変換器は、少なくとも400Vを有する三相の電力供給網における稼働のために構成されている。つまりケーブル通過型ウインチは、ヨーロッパの地域においても使用されるように構成されている。
【0024】
本発明の更なる有利な一実施形態により、直流変換器(整流器)の制御電圧は、24Vであり、好ましくは230Vである。従ってケーブル通過型ウインチの切替(スイッチング)は、24V又は230Vの制御電圧を用いて行われる。しかし他の制御電位も想定可能であろう。
【0025】
本発明の更なる有利な一実施形態により、ケーブル通過型ウインチは、電力供給網側の一次側と、ケーブル通過型ウインチと接続するための二次側とを備えたアダプタを有し、この際、アダプタは、少なくとも単相の230Vの定格交流電圧を二次側に提供するように構成されている。電力供給網に対するケーブル通過型ウインチの接続のためには、例えば、ケーブル通過型ウインチを電力供給網と電気的に電気接続するように構成されているアダプタを使用することができる。好ましくは、アダプタは、周波数変換器に対し、230Vの単相交流電圧を提供する。この際、ケーブル通過型ウインチが、僅かなコストにより、電圧の高さや差込接続部や供給網構造がケーブル通過型ウインチの接続のために互換性をもたない電力供給網において作動するように構成可能であることは、特に有利である。そのようなアダプタの幾つかの例は、以下で更に説明される。
【0026】
以下、本発明を、有利な実施例に基づき、添付の図面に関連して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態によるケーブル通過型ウインチの模式的な側面図を示す図である。
【
図2】一実施形態によるケーブル通過型ウインチの模式的な回路図を示す図である。
【
図3】一実施形態によるケーブル通過型ウインチの制御構成を模式的に示す図である。
【
図4A】一実施形態によるケーブル通過型ウインチのアダプタを模式的に示す図である。
【
図4B】
図4Aによるアダプタの一次側の更なる一実施形態を模式的に示す図である。
【
図4C】
図4Aによるアダプタの一次側の更に有利な一実施形態を模式的に示す図である。
【実施例】
【0028】
同じ要素又は類似の要素には、実施例に関して同じ符号が付けられている。従って図面について明確な言及がない場合、それぞれの図面には、その他の図面に関する説明が該当する。
【0029】
図1は、駆動ユニット20を備えたケーブル通過型ウインチ(連続式ないしキャプスタン式ケーブルウインチ)10を示しており、この際、駆動ユニット20は、電力供給網(電力系統)から電流を取り込むための一次側と、交流電圧を送り出すための二次側とを備えた周波数変換器30と、周波数変換器30により交流電圧が供給されて可変回転数ω
1でケーブル通過型ウインチ10を駆動するための交流モータ40と、駆動ユニット20を制御するために周波数変換器30及び交流モータ40と接続されている制御ユニット50と、駆動ユニット20と連結されて駆動力をケーブル(ないしロープ、非図示)に加えるために第2の回転数ω
2を有する従動ユニット60とを有する。
【0030】
可変回転数ω2を有する従動ユニット60は、連結装置(伝動装置)Gを介し、例えば変速機を介して駆動ユニット20と連結されており、それによりそれらの回転数は、変速比を有する。更なる一実施形態において、従動ユニット60と駆動ユニット20は、共通のフランジを介して結合されているか又は共通の軸を有する。これらの場合において、変速比は、実質的に1であり、駆動ユニット20の回転数ω1は、従動ユニット60の回転数ω2に対応する。
【0031】
ケーブル通過型ウインチの電力供給のために、駆動ユニット20は、例えばアダプタ80として構成されている接続装置80を介し、ケーブル通過型ウインチ10が稼働可能に通電されるように電力供給網と接続されている。周波数変換器30と制御ユニット50は、ここでは2つの部分から構成されている。
【0032】
図2は、一実施形態によるケーブル通過型ウインチ10の回路図を示している。駆動ユニット20は、直流電圧中間回路Cを有する周波数変換器30を有し、この際、周波数変換器30の一次側32は、電流を取り込むために三相L
1、L
2、L
3を有し、これらは、電力供給網70の三相R、S、Tと、対応して同相で、周波数変換器30には一次側32において電力供給網70の定格電圧(好ましくは230V)が提供されるように接続されている。つまり周波数変換器30は、稼働のために通常の三相の電力供給網70に設置されている。更に一次側32ないし周波数変換器30は、少なくとも400Vの入力電圧で稼働されるように構成されている。
【0033】
周波数変換器30は、一次側で直流変換装置(整流装置)33を、二次側で交流変換装置(インバータ装置)35を有し、この際、これらは、直流電圧中間回路Cを介して互いに接続されており、この際、ケーブル通過型ウインチ10を通過するケーブル62に駆動力Fを加えるために、交流モータ40が従動ユニット60を駆動できるように、周波数変換器30は、その二次側36において、好ましくは三相の交流電圧UU、UV、UWを3つの相U、V、Wを介して交流モータ40に提供する。
【0034】
更にケーブル通過型ウインチ10の駆動ユニット20は、制御ユニット50を有し、制御ユニット50は、配線S、E1、E2を介して周波数変換器30及び交流モータ40と接続されており、この際、配線Sを介しては、制御信号が周波数変換器30へ提供され、往路配線E1と復路配線E2から構成されている配線を介しては、交流モータ40が励磁される。
【0035】
周波数変換器30と制御ユニット50は、特に有利な一実施形態において実質的に一体型で、即ち1つの装置90(破線で示唆、以下「一体型装置」と称するものとする)として構成されており、一体型装置90は、アダプタ80を介して電力供給網70へ接続される。この際、アダプタ80は、電力供給網側の一次側と、ケーブル通過型ウインチ10と接続するため、特に周波数変換器30及び/又は制御ユニット50と接続するための二次側とを有する。更にアダプタ80は、二次側に少なくとも単相の230Vの定格交流電圧を提供するように構成されており、電力供給網70は、少なくとも50Vの定格電圧、好ましくは少なくとも100Vの定格電圧、更に好ましくは少なくとも200Vの定格電圧、特に好ましくは少なくとも230Vの定格電圧を有する。
【0036】
更に制御ユニット50は、少なくとも1つの電圧検知部52を有し、低下電圧を検知した場合には、交流モータ40の回転数ω1を変更し、特に減少するように構成されている。一実施形態において、電圧検知のための電圧検知手段52は、周波数変換器30の一次側32において、電圧検知部52が電力供給網70の電力供給網電圧の電圧低下を検知することができるように配設されている。制御ユニット50は、周波数変換器30の二次側36においてモータ電圧UU、UV、UWを検知するもう1つの更なる電圧検知部を有することも可能である。
【0037】
更に制御ユニット50は、少なくとも1つの電流検知部56を有し、超過電流を検知した場合には、交流モータ40の回転数ω1を変更し、特に減少するように構成されている。一実施形態において、電流検知のための電流検知手段56は、周波数変換器30の二次側36において、電流検知部56が交流モータ40の高すぎる電流(超過電流)を検知することができるように配設されている。制御ユニット50は、周波数変換器30の一次側32において、周波数変換器30へ流れる電力供給網電流を検知するもう1つの更なる電流検知部を有することも可能である。
【0038】
制御ユニット50は、電圧検知手段52ないし電流検知手段56により検知された低下電圧及び/又は超過電流が駆動ユニット20の出力において考慮されるように、交流モータ40の回転数ω1を段階的に切り替えるという構成を有し、この際、特に電圧低下の場合には、駆動ユニット20の回転数ω1と、従って従動ユニット60の回転数ω2は、ケーブル通過型ウインチ10を通過するケーブル62がより低い速度、特に定格速度の半分の速度を有するように低下される。特に有利な一実施形態において、ケーブル62は、分あたり18メートルの定格速度を有し、制御ユニット50は、ケーブル62の速度を分あたり9メートルに半減するように構成されている。
【0039】
つまり制御ユニット50は、検知された低下電圧及び/又は検知された超過電流に依存し、交流モータ40の回転数ω1を、交流モータ40の要求電力が、周波数変換器30において電力供給網70により提供されている交流電圧UR、US、UTと同じ分だけ低下するように変更するという構成を有する。
【0040】
図3は、一実施形態によるケーブル通過型ウインチ10の有利な制御構成を示しており、この際、周波数変換器30と制御ユニット50は、電流を取り込むために三相L
1、L
2、L
3を有する一体型装置90内に構成されている。三相L
1、L
2、L
3は、
図2に従い、電力供給網(非図示)へ接続可能である。例えば超過電流時のケーブル通過型ウインチ10の損傷を防ぐために、ケーブル通過型ウインチ10は、緊急スイッチ92を有し、緊急スイッチ92は、ケーブル通過型ウインチ10を電力供給網から分離するように構成されている。有利な一実施形態において、このことは、制御出力部A
1を有する制御ユニット50を用いて行われ、制御出力部A
1は、ケーブル通過型ウインチ10が電力供給網から分離されるように緊急スイッチ92を制御するよう構成される。更にケーブル通過型ウインチ10は、そのために例えば押しボタン(非図示)を有することも可能であり、該押しボタンは、ケーブル通過型ウインチ10を損傷から防ぐために、故障の場合にサービス作業員により手動で操作可能である。
【0041】
周波数変換器30は、三相U、V、Wを有し、これらの三相を用い、ケーブル通過型ウインチ10の交流モータ40が通電される。更に周波数変換器30は、少なくとも単相を有する電力供給網において稼働されるように構成されている。好ましくは、周波数変換器30は、三相を有する電力供給網において稼働されるように構成されている。
【0042】
更に制御ユニット50は、2つの制御出力部A10、A11を有し、これらの制御出力部A10、A11は、行き導線E1及び戻り導線E2を介して、交流モータ40が第1段階S1の回転数を有するように交流モータ40が第1励磁電圧で励磁されるように接続されており、それによりケーブル通過型ウインチ10は、例えば分あたり18メートルの第1速度を有する。第1段階S1は、制御ユニット50により第1スイッチS1を用いて選択される。
【0043】
更に制御ユニット50は、制御出力部A22を有する。低下電圧及び/又は超過電流が検知された場合、制御ユニット50は、交流モータ40が第2段階S2の回転数を有するために交流モータ40が第2励磁電圧で励磁されるように制御出力部A11、A22を切り替え、それによりケーブル通過型ウインチ10は、例えば分あたり9メートルの第2速度を有する。第2段階S2は、制御ユニット50により第2スイッチS2を用いて選択される。制御の形式に応じ、切替ロジックとして様々な切替状態が得られ、例えば第1段階S1のためには、第1スイッチS1が閉じられ、第2スイッチS2は開かれており、第2段階S2のためには、第1スイッチS1が開かれ、第2スイッチS2は閉じられている。つまり制御ユニット50は、交流モータ40の回転数を段階的に2つの段階S1、S2の間で変更するように構成されている。好ましくは、制御ユニット50は、交流モータ40の要求電力が半減される或いは倍増されるように交流モータ40の回転数を変更するという構成を有する。オプションとして制御ユニット50は、交流モータ40の回転数ω1を段階的に4つの段階の間で変更するように構成されている。
【0044】
また制御ユニット50は、制御データベース58を有し、制御データベース58は、予めプログラミングされた制御値を、特に検知された電圧と電流に依存し、制御ユニット50へ提供するように構成されている。つまりケーブル通過型ウインチ10は、所定の電力供給網及び/又は所定の役割のために、ケーブル通過型ウインチの使用分野に応じて適合可能であるようにプログラミングされるという構成を有する。制御ユニット50は、オプションとして24Vの制御電圧を有する。特に有利な一実施形態において制御電圧は230Vである。
【0045】
つまり制御ユニット50は、電圧検知手段により低下電圧を検知した場合、及び/又は電流検知手段により超過電流を検知した場合には、検知された低下電圧及び/又は検知された超過電流に依存し、交流モータ40の回転数を、交流モータ40の要求電力が、周波数変換器30ないし一体型装置90において電力供給網により提供されている交流電圧と同じ分だけ低下するように変更するという構成を有する。
【0046】
更に制御ユニット50は、制御出力部A33を有し、制御出力部A33は、交流モータ40の回転方向を反転させるために設けられている。従って制御出力部A33は、交流モータ40を流れる励磁電流がその方向を反転するように制御出力部A11、A22の電位に対して反対の電位を有する。一実施形態において、ケーブル通過型ウインチ10は、2つの前進速度と1つの後退速度を有する。
【0047】
更に一体型装置90は、保護装置94を有し、保護装置94は、交流モータ40の誤り励磁電流を検知するために設けられている。このことは、例えば制御ユニット50の電流検知手段により行うことが可能である。励磁電流に誤りがある場合には、保護装置94が作動し、交流モータ40の励磁を遮断する。
【0048】
更に一体型装置90は、電気的なブレーキ96を有し、電気的なブレーキ96は、制御出力部A40、A44を介して制御可能であり、この際、電気的なブレーキ96は、交流モータ40と、従ってケーブル通過型ウインチ10を制動するように構成されている。
【0049】
図4Aは、一実施形態によるケーブル通過型ウインチ10のアダプタ80の模式図を示している。
【0050】
アダプタ80は、電力供給網側の一次側82と、ケーブル通過型ウインチと接続するための二次側84とを有し、これらは、接続要素86を介して互いに接続されている。電力供給網側の一次側82は、端子L1、L2、L3、N、PEを有し、それによりアダプタ80は、任意の電力供給網と、例えばコネクタを介して接続されるように構成されている。二次側84は、端子L1、L2/N、PEを有し、それにより二次側は、一実施形態による交流モータ40と接続されるように構成されている。更にアダプタ80は、少なくとも単相の230Vの定格交流電圧を二次側に提供するように構成されている。
【0051】
図4Bは、
図4Aによるアダプタの一次側の更なる一実施形態の模式図を示している。一次側82は、端子L
1、L
3、P
Eを有し、それによりアダプタは、それに対応する電力供給網端子と接続されるように構成されている。
【0052】
図4Cは、
図4Aによるアダプタの更に有利な一実施形態の模式図を示している。一次側82は、端子L
1、N、P
Eを有し、それによりアダプタは、それに対応する電力供給網端子と接続されるように構成されている。
【符号の説明】
【0053】
10 ケーブル通過型ウインチ(連続式ないしキャプスタン式ケーブルウインチ)
20 駆動ユニット
30 周波数変換器
32 周波数変換器の一次側
33 直流変換装置(整流装置)
35 交流変換装置(インバータ装置)
36 周波数変換器の二次側
40 交流モータ
50 制御ユニット
52 電圧検知部(電圧検知手段)
56 電流検知部(電流検知手段)
58 制御データベース
60 従動ユニット
62 ケーブルないしロープ
70 電力供給網(電力系統)
80 接続装置(アダプタ)
82 アダプタの一次側
84 アダプタの二次側
86 アダプタの接続要素
90 統合型装置
92 緊急スイッチ
94 保護装置
96 電気的なブレーキ
G 連結装置(例えば変速機)
C 直流電圧中間回路
F 駆動力
ω1 交流モータの回転数
ω2 従動ユニットの回転数
R、S、T 三相
L1、L2、L3 三相
U、V、W 三相
S、E1、E2 配線
S1、S2 スイッチ
A1、A10、A11、A22、A33、A40、A44 制御出力部
L1、L2、L3、N、PE アダプタの端子(一次側)
L1、L2/N、PE アダプタの端子(二次側)