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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-23
(45)【発行日】2022-01-18
(54)【発明の名称】消毒液と塗布器
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/44 20060101AFI20220111BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20220111BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220111BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220111BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A01N47/44
A61L2/18
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018561235
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017034238
(87)【国際公開番号】W WO2017205498
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】15/163,500
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510003324
【氏名又は名称】ケアフュージョン・2200・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREFUSION 2200, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マッギンリー, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ボロウスキ, ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】デラリンガ, ブランドン
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-506130(JP,A)
【文献】特表2001-508785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 47/44
A61L 2/18
A01P 1/00
A01P 3/00
A01N 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)溶媒、
(B)pH低下剤、および
(C)有効pH範囲を有するpH依存性抗菌剤を含む消毒液であって、
前記消毒液は、前記有効pH範囲より低い貯蔵時の第1のpH、及び前記有効pH範囲内にある活性化時の第2のpHを有し、
前記消毒液は、表面に塗布するための塗布器に配置され、
前記塗布器は(a)および(b)を有し、前記(a)および(b)は、
(a)綿撒糸、および
(b)塗布部材 であり、
前記綿撒糸および/または前記塗布部材は、前記消毒液が前記綿撒糸および/または前記塗布部材を通過する時に、前記pH低下剤と相互剤用する相互作用剤を含み、前記綿撒糸は前記塗布部材の内側に配置され、
前記(a)および/または(b)中の前記相互作用剤は、(i)および(ii)のうち少なくとも1つを含む、消毒液。
(i)前記pH低下剤と化学的に反応することにより、前記pH低下剤を少なくとも部分的に、前記消毒液のpHを低下させない成分に変換する中和剤であり、
前記中和剤は、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸塩、または炭酸カリウムから選択される。
(ii)前記消毒液から前記pH低下剤の少なくとも一部を除去する除去剤であり、
前記除去剤は、陰イオン交換樹脂またはイオン交換ポリマ-から選択される
【請求項2】
前記pH依存性抗菌剤は、クロルヘキシジン及び/又はその塩を含む請求項1に記載の消毒液。
【請求項3】
前記有効pH範囲は、約5.5以上である請求項1に記載の消毒液。
【請求項4】
前記第1のpHは、約5より低い請求項1に記載の消毒液。
【請求項5】
(A)溶媒、
(B)pH低下剤、および
(C)有効pH範囲を有するpH依存性抗菌剤を含む消毒液であって、
前記消毒液は、前記有効pH範囲より低い貯蔵時の第1のpH、及び前記有効pH範囲内にある活性化時の第2のpHを有し、
少なくとも一部の前記pH低下剤は、活性化時に前記消毒液から放出され
前記pH依存性抗菌剤は、クロルヘキシジン及び/又はその塩を含む、
消毒液。
【請求項6】
前記pH低下剤は、前記消毒液中の少なくとも1種の成分と可逆的に反応して酸を形成するように構成される、請求項1に記載の消毒液。
【請求項7】
前記pH低下剤は、ガス状二酸化炭素である請求項5に記載の消毒液。
【請求項8】
前記pH低下剤は、酸を含む請求項1に記載の消毒液。
【請求項9】
前記相互作用剤は、前記消毒液が前記綿撒糸および/または前記塗布部材を通過する時に、前記pH低下剤と相互作用して消毒液のpHを有効pH範囲内に十分上昇させるように構成される、請求項1に記載の消毒液。
【請求項10】
前記相互作用剤は、前記消毒液から少なくとも一部の前記pH低下剤を除去するように構成される除去剤を含む請求項9に記載の消毒液。
【請求項11】
前記相互作用剤は、中和剤を含む請求項9に記載の消毒液。
【請求項12】
前記貯蔵時のpHは、前記有効pH範囲より少なくとも0.5単位低い請求項1に記載の消毒液。
【請求項13】
前記消毒液は、前記消毒液を表面に塗布するように構成された塗布器に配置される請求項5に記載の消毒液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年5月24日に出願された「消毒液と塗布器」と題する米国特許出願第15/163,500号に対する優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
本開示は、消毒液と塗布器、及びそれらの使用方法に関する。より具体的には、本開示は、有効pH範囲を有するpH依存性抗菌剤を含み、有効pH範囲より低い貯蔵時のpHを有する消毒液、及び消毒液を表面に塗布するための塗布器に関する。
【0003】
医療措置を実施する前に、抗菌剤を含む消毒液を、例えば患者の皮膚に塗布して細菌を死滅させることは、当分野で知られている。しかしながら、従来の消毒液において、抗菌剤は、製造(例えば、滅菌)中に及び/又は経時的に、特に水を含む溶液中で分解することが多い。抗菌剤の分解速度は、消毒液のpHによって影響される場合が多い。さらに、抗菌剤の微生物学的活性も消毒液のpHによって影響されることがある。多くの場合、抗菌剤の許容可能な化学的安定性及び微生物学的活性を両立できる単一のpH値又はpH範囲が存在しない。
【0004】
このため、塗布器を用いて従来技術で知られている消毒液を塗布する場合、許容可能な貯蔵時の化学的安定性及び塗布時の微生物学的活性の両方を与えることは困難である。例えば、消毒液の許容可能な化学的安定性に必要なpHと、許容可能な微生物学的活性に必要なpHとが異なることがある。したがって、当分野では、消毒液の許容可能な貯蔵時の化学的安定性及び使用時の微生物学的活性の両方を可能にする消毒液及び塗布器が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様によれば、消毒剤は、有効pH範囲を有するpH依存性抗菌剤を含む溶液を含み、上記溶液は上記有効pH範囲より低い貯蔵時のpHを有する。いくつかの態様によれば、上記溶液は、pH低下剤を含む。いくつかの態様によれば、上記溶液は、活性化時の第2のpHを含み、上記第1のpHは、有効pH範囲より低く、上記第2のpHは、上記有効pH範囲内にある。
【0006】
他の態様によれば、消毒液は、本体と、消毒液を収容するための内室と、塗布部材とを備える塗布器に配置される。いくつかの態様によれば、上記塗布器は、内室に封入され、消毒液をその内部に収容するアンプルをさらに備える。いくつかの態様によれば、上記塗布器は、塗布部材と内室との間に配置され、液体が本体から流れる速度を制御し、液体に染料を供給し、及び/又は塗布器の使用中にガラスの破片が塗布部材を押し通すことを回避することに役立つ綿撒糸をさらに備える。いくつかの態様によれば、上記綿撒糸及び/又は塗布部材に相互作用剤が配置され、それにより消毒液が綿撒糸及び/又は塗布部材を通過する時に、上記消毒液の1種以上の成分が上記相互作用剤と相互反応する。
【0007】
以下の詳細な説明から当業者にとっては極めて明らかであるが、消毒液及び塗布器の例示的な構成のみを示して説明する。以下の記載から分かるように、本発明は、消毒液及び塗布器の他の態様及び異なる態様を含み、本開示全体にわたって提示された様々な詳細は、本発明の要旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の点で修正することができる。これにより、図面及び詳細な説明は、本質的には限定的なものではなく、例示的なものとみなすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の特定の態様に係る綿撒糸を有する消毒剤塗布器の側面断面図である。
図2】本発明の特定の態様に係る消毒剤塗布器の斜視図である。
図3図2の消毒剤塗布器のヘッド部分の斜視図である。
図4】実施例2に記載されているように、pH低下剤としてグルコン酸を含む溶液中の全関連物質の濃度に対するpHを示す。
図5】実施例2に記載されているように、pH低下剤として酢酸を含む溶液中の全関連物質の濃度に対するpHを示す。
図6】実施例2に記載されているように、pH低下剤としてクエン酸を含む溶液中の全関連物質の濃度に対するpHを示す。
図7】実施例4に記載されているように、ダウエックス(登録商標)66遊離塩基陰イオン交換樹脂を除去剤として使用する異なる消毒液画分中のグルコン酸クロルヘキシジンの濃度を示す。
図8】実施例4に記載されているように、アンバーライト(登録商標)IRA96陰イオン交換樹脂を除去剤として使用する異なる消毒液画分中のグルコン酸クロルヘキシジンの濃度を示す。
図9】実施例4に記載されているように、アンバーリスト(登録商標)A21遊離塩基陰イオン交換樹脂を除去剤として使用する異なる消毒液画分中のグルコン酸クロルヘキシジンの濃度を示す。
図10】実施例5に記載されているように、異なる消毒液画分中の黄色ブドウ球菌ATCC29213に対する有効性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の態様によれば、消毒剤は、有効pH範囲を有するpH依存性抗菌剤を含むことができる。
【0010】
本明細書で使用する場合、用語「約」とは、所与の値の±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±1%以内であることを意味する。本明細書で使用する場合、溶液に対する用語「安定な」とは、肉眼で見るとき、溶液中に識別可能な沈殿物、粒子、陰影又は白濁が存在しない(すなわち、溶液中の全ての成分が可溶化されたままである)ことを意味する。本明細書で使用する場合、溶液に関する用語「不安定な」とは、肉眼で見るとき、溶液中に識別可能な沈殿物、粒子、陰影及び白濁が存在する(すなわち、溶液の少なくとも1種の成分が少なくとも部分的に不溶化されている)ことを意味する。換言すれば、「安定な」溶液は裸眼で透き通って見える一方、不安定な溶液は、少なくとも沈殿物、粒子、陰影又は白濁がいくらか見える。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「pH依存性抗菌剤」とは、抗菌活性がpHにより影響される抗菌剤を指す。いくつかの態様によれば、適切なpH依存性抗菌剤は、ビグアニド類(例えば、クロルヘキシジン塩)を含む。いくつかの好ましい態様によれば、上記pH依存性抗菌剤は、クロルヘキシジン及び/又はその塩を含むことができる。例えば、いくつかの態様によれば、上記pH依存性抗菌剤は、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0012】
ビグアニド類/ビグアニド誘導体の例としては、クロルヘキシジン/クロルヘキシジン塩以外に、アレキシジン、アレキシジン塩、ポリヘキサミド、ポリヘキサミド塩、ポリアミノプロピルビグアニド、ポリアミノプロピルビグアニド塩及び他のアルキルビグアニドを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「誘導体」とは、a)第1の化学物質に構造的に関連し、かつそれから誘導される化学物質、b)第1の化合物の1つの原子が別の原子又は原子団で置換されている場合に、類似の第1の化合物から形成される化合物又は他の第1の化合物から生じることが想像され得る化合物、c)親化合物から誘導するか又は取得され、かつ親化合物の必須元素を含有する化合物、又はd)1つ以上のステップで類似の構造の第1の化合物から生成され得る化学化合物、を指す。
【0013】
いくつかの態様によれば、上記消毒液中の上記pH依存性抗菌剤の濃度は、使用される特定のpH依存性抗菌種又は所望の抗菌効果に応じて変化してもよい。例えば、いくつかの態様によれば、溶液中のpH依存性抗菌剤の濃度は、約0.01%~約20%w/v、好ましくは約0.01%~約10%w/v、より好ましくは約0.01%~約5%w/v、さらに好ましくは約0.5%~約4%w/v、最も好ましくは約1%~約3%w/vであってもよい。いくつかの態様によれば、溶液中のpH依存性抗菌剤の濃度は、約0.5%~約2%w/vであってもよい。いくつかの態様によれば、溶液中のpH依存性抗菌剤の濃度は、約2%w/vであってもよい。
【0014】
いくつかの態様によれば、上記pH依存性抗菌剤は、溶媒を含む溶液中に含有されてもよい。いくつかの態様によれば、上記溶媒は有機成分を含む。いくつかの実施形態では、上記pH依存性抗菌剤は、水及び/又はアルコール、好ましくはイソプロピルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール及びこれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1種の溶媒を含む溶液中に含有されてもよい。
【0015】
いくつかの態様によれば、上記溶液中の上記溶媒の濃度は、約50%~約99.99%v/v、好ましくは約55%~約90%v/v、より好ましくは約60%~約85%v/v、さらに好ましくは約65%~約75%v/vであってもよい。いくつかの態様によれば、溶液中の溶媒の濃度は、約70%v/vであってもよい。
【0016】
いくつかの態様によれば、上記消毒液は、70%v/vのイソプロピルアルコール中に2%w/vのグルコン酸クロルヘキシジンを含むことができる。
【0017】
いくつかの態様によれば、上記消毒液は、水溶液であってもよい。すなわち、上記溶液の上記溶媒は、主に水である。本明細書で使用する場合、用語「水溶液」とは、少なくとも約50%v/vの水、より好ましくは少なくとも約60%v/vの水、より好ましくは少なくとも約70%v/vの水、より好ましくは少なくとも約80%v/vの水、より好ましくは少なくとも約90%v/vの水、より好ましくは少なくとも約95%v/vの水、最大100%v/vの水であることを意味する。いくつかの態様によれば、上記溶液が100%v/v未満の水である場合、残りの体積は、例えば、アルコール溶媒などの1種以上のさらなる溶媒を含むことができる。
【0018】
いくつかの態様によれば、上記pH依存性抗菌剤は、有効pH範囲を有する。本明細書で使用する場合、用語「有効pH範囲」とは、許容可能な微生物学的活性を示すpH依存性抗菌剤を含む消毒液のpH範囲を指す。いくつかの態様によれば、上記有効pH範囲は、消毒液が塗布された表面の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%の標的微生物を死滅させるpH依存性抗菌剤を含む消毒液のpH範囲であってもよい。
【0019】
いくつかの態様によれば、上記有効pH範囲は、消毒溶液が塗布された表面上の標的微生物の少なくとも2対数減少、好ましくは少なくとも3対数減少、より好ましくは少なくとも3.5対数減少、最も好ましくは少なくとも4対数減少を示すpH依存性抗菌剤を含む消毒液のpH範囲であってもよい。
【0020】
いくつかの態様によれば、上記有効pH範囲は、少なくとも5.0、好ましくは少なくとも5.1、より好ましくは少なくとも5.2、さらに好ましくは少なくとも5.3、さらに好ましくは少なくとも5.4、最も好ましくは少なくとも5.5のpHであってもよい。
【0021】
いくつかの態様によれば、上記消毒液は、有効pH範囲より低い貯蔵時のpHを有する。本明細書で使用する場合、用語「貯蔵」とは、本明細書に記載されるように、その使用時点又は活性化時点まで消毒薬溶液を貯蔵することを指す。いくつかの態様によれば、貯蔵は、消毒液を容器内に収容する期間を指すことができる。例えば、いくつかの態様によれば、貯蔵は、消毒液を塗布器のアンプル内に収容する期間を指すことができる。いくつかの態様によれば、上記アンプルは、密封されてもよい。いくつかの態様によれば、上記アンプルは、ガス状成分の損失を最小化し、及び/又は消毒液が周囲の環境に接触することを防止する材料を含むことができる。
【0022】
いくつかの態様によれば、貯蔵は、特定の環境条件が必要とされる。例えば、いくつかの態様によれば、貯蔵は、特定の温度及び/又は相対湿度(RH)条件が必要とされる。いくつかの態様によれば、貯蔵は、25℃±2℃及び60%RH±5%RHの環境条件を指すことができる。いくつかの態様によれば、貯蔵は、30℃±2℃及び65%RH±5%RHの環境条件を指すことができる。いくつかの実施形態では、貯蔵は、製造に必要な条件(例えば、滅菌に必要な高温)を追加的又は代替的に指すこともできる。
【0023】
いくつかの態様によれば、上記消毒液は、上記有効pH範囲より少なくとも0.1pH単位低く、好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも0.2pH単位低く、より好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも0.3pH単位低く、さらに好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも0.4pH単位低く、さらに好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも0.5pH単位低く、さらに好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも0.6pH単位低く、さらに好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも0.7pH単位低く、さらに好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも0.8pH単位低く、さらに好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも0.9pH単位低く、最も好ましくは上記有効pH範囲より少なくとも1pH単位低い貯蔵時のpHを有する。いくつかの態様によれば、上記消毒液は、5.0未満の貯蔵時のpHを有することができる。
【0024】
いくつかの態様によれば、上記消毒液は、貯蔵時の分解物の形成速度を低下させるような貯蔵時のpHを有することができる。本明細書で使用する場合、用語「分解物」とは、組成物中の望ましくない物質を指す。いくつかの実施形態では、分解物は、消毒液の1種以上の成分の分解により形成される。いくつかの実施形態では、分解物は、pH依存性抗菌剤の分解により形成される。
【0025】
いくつかの態様によれば、本明細書に記載されるように、上記消毒液は、pH低下剤を含まないことを除いて同一の溶液の貯蔵時の分解物の形成速度より低い貯蔵時の分解物の形成速度を有するような貯蔵時のpHを有することができる。例えば、いくつかの態様によれば、上記消毒液は、pH依存性抗菌剤がより高いpHを有する溶液中に分解される場合に比べて遅い速度で分解されるような貯蔵時のpHを有することができる。いくつかの態様によれば、上記消毒液は、pH依存性抗菌剤が有効pH範囲内にあるpHを有する溶液中に分解される場合に比べて遅い速度で分解されるような貯蔵時のpHを有することができる。
【0026】
いくつかの態様によれば、上記消毒液は、一定の貯蔵期間内に安定であるような貯蔵時のpHを有することができる。いくつかの態様によれば、本明細書に記載されるように、上記消毒液は、一定の貯蔵期間の後に、pH低下剤を含まないことを除いて同一の溶液より分解物の濃度が低いような貯蔵時のpHを有することができる。いくつかの実施形態では、上記消毒液は、一定の貯蔵期間の後に、有効pH範囲内にあるpHを有する類似の消毒液より分解物の濃度が低いような貯蔵時のpHを有することができる。
【0027】
いくつかの態様によれば、上記消毒液の貯蔵期間は、少なくとも1ヶ月間、好ましくは少なくとも2ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間、より好ましくは少なくとも4ヶ月間、より好ましくは少なくとも5ヶ月間、より好ましくは少なくとも6ヶ月間、より好ましくは少なくとも7ヶ月間、より好ましくは少なくとも8ヶ月間、より好ましくは少なくとも9ヶ月間、より好ましくは少なくとも10ヶ月間、より好ましくは少なくとも11ヶ月間、より好ましくは少なくとも12ヶ月間、好ましくは少なくとも13ヶ月間、より好ましくは少なくとも14ヶ月間、より好ましくは少なくとも15ヶ月間、より好ましくは少なくとも16ヶ月間、より好ましくは少なくとも17ヶ月間、より好ましくは少なくとも18ヶ月間、より好ましくは少なくとも19ヶ月間、より好ましくは少なくとも20ヶ月間、より好ましくは少なくとも21ヶ月間、より好ましくは少なくとも22ヶ月間、より好ましくは少なくとも23ヶ月間、より好ましくは少なくとも24ヶ月間、より好ましくは少なくとも25ヶ月間、より好ましくは少なくとも26ヶ月間、より好ましくは少なくとも27ヶ月間、より好ましくは少なくとも28ヶ月間、より好ましくは少なくとも29ヶ月間、より好ましくは少なくとも30ヶ月間、より好ましくは少なくとも31ヶ月間、より好ましくは少なくとも32ヶ月間、より好ましくは少なくとも33ヶ月間、より好ましくは少なくとも34ヶ月間、より好ましくは少なくとも35ヶ月間、最も好ましくは少なくとも36ヶ月間であってもよい。
【0028】
いくつかの態様によれば、上記溶液は、pH低下剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「pH低下剤」とは、溶液のpHを低下させるために選択される上記消毒液の成分を指す。いくつかの実施形態では、上記pH低下剤が上記消毒液中に存在することにより、上記溶液は本明細書に記載される貯蔵時のpHを有することができる。いくつかの態様によれば、上記pH低下剤の存在は、上記消毒液のpHを上記有効pH範囲から上記貯蔵時のpHまで低下させる。換言すれば、いくつかの態様によれば、上記pH低下剤のない消毒液は、上記有効pH範囲内にあるpHを有することができる一方、上記pH低下剤を含有する同様の消毒液は、本明細書に記載されるような貯蔵時のpHを有することができる。
【0029】
いくつかの態様によれば、上記pH低下剤は、上記消毒液の1種以上の成分と可逆的に反応して溶液のpHを低下させる成分を含むことができる。上記消毒液の成分と可逆的に反応するpH低下剤の一例には、二酸化炭素が含まれるが、それに限定されない。
【0030】
いくつかの態様によれば、上記pH低下剤は、ガスを含むことができる。例えば、いくつかの態様によれば、上記pH低下剤が、消毒溶液が密封容器(例えば、塗布器のアンプル)内に収容される前に消毒溶液を通してバブリングされたガスを含むことにより、上記消毒液は通常の大気中濃度より高い濃度の上記ガスを含むことができる。例えば、いくつかの態様によれば、上記pH低下剤は、ガス状二酸化炭素を含むことができる。いくつかの態様によれば、上記ガス状のpH低下剤は、冷却された(例えば、2-8℃程度に冷却される)消毒液を通してバブリングされることができる。ガス状二酸化炭素はその後、例えば上記消毒液中の水と可逆的に反応して炭酸を可逆的に形成することにより、上記消毒液のpHを低下させることができる。
【0031】
いくつかの態様によれば、上記pH低下剤は、酸を含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「酸」とは、プロトン(水素イオン)供与体として機能する成分を指す。いくつかの態様によれば、上記pH低下剤は、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、塩酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、ピロリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸及び/又はトリフルオロ酢酸のうちの1種以上を含むことができるが、それらに限定されない。
【0032】
いくつかの態様によれば、上記溶液は、上記有効pH範囲内にある貯蔵後の第2のpHを有することができる。いくつかの態様によれば、上記溶液は、活性化時の第2のpHを有することができる。本明細書で使用する場合、用語「活性化」とは、消毒液のpHの変化を誘発する貯蔵の直後又はすぐ後の特定の事象を指す。
【0033】
いくつかの態様によれば、活性化は、上記消毒液を、例えば上記溶液が収容された密封容器(例えば、内室又は塗布器の内室内にあるアンプル)を開けることにより、周囲大気と接触させること、及び/又は容器から上記溶液を放出することを含む。いくつかの態様によれば、上記消毒液を周囲大気と接触させることは、ガス状pH低下剤全部又はその一部が上記溶液から放出されることを可能にし、それにより上記ガス状pH低下剤が溶液中に存在しないか又は低下した濃度で存在するので、その成分と可逆的に反応することができない。結果として、上記pH低下剤が存在しないため、上記消毒液のpHは増加する。
【0034】
例えば、1つの実施形態では、ガス状二酸化炭素を含む消毒液は、塗布器のアンプル内に収容される時に貯蔵時のpHを有することができる。この例では、上記アンプルが破砕され、押しつぶされ、又は他の方法で開けられることによって、上記消毒液は上記アンプルから放出され、上記溶液を周囲大気と接触させることが可能になる。上記溶液が上記アンプルから放出されるとき、ガス状二酸化炭素は、上記溶液から周囲大気に放出される。この例では、溶液中の二酸化炭素の濃度が低下するため、上記溶液中の上記炭酸は、同時に二酸化炭素及び水に変換され、形成された二酸化炭素もその後に上記溶液から放出される。このように、上記溶液中の二酸化炭素の濃度が低下するため、上記溶液のpHは増大する。
【0035】
いくつかの態様によれば、上記溶液は、活性化直後に第2のpHを有する。いくつかの態様によれば、上記溶液は、活性化して間もなく第2のpHを有する。例えば、いくつかの実施形態では、上記溶液は、活性化後の約120秒以内、好ましくは活性化後の約90秒以内、より好ましくは活性化後の約60秒以内、最も好ましくは活性化後の約30秒以内に第2のpHを有する。いくつかの態様によれば、上記溶液は、表面に塗布される時に第2のpHを有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、活性化は、上記消毒液を相互作用剤と接触させることを含む。本明細書で使用する場合、用語「相互作用剤」とは、上記消毒液中の上記pH低下剤と相互作用して、上記消毒液のpHを増加させる成分を指す。
【0037】
いくつかの態様によれば、上記相互作用剤は、中和剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「中和剤」とは、上記消毒液中に上記pH低下剤と化学的に反応することにより、上記pH低下剤を少なくとも部分的に、上記消毒液のpHを低下させない成分に変換する成分を指す。いくつかの態様によれば、上記中和剤は、酸性pH低下剤と反応することができる。中和剤の例としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸塩(例えば、CO使用)及び炭酸カリウムを含むが、それらに限定されない。いくつかの態様によれば、本明細書に記載されるように、上記中和剤は、除去剤と同じであるか又はそれを含むことができる。いくつかの態様によれば、上記中和剤と上記pH低下剤との反応により、pH依存性抗菌剤の微生物有効性を影響しない塩成分を形成することができる。
【0038】
いくつかの態様によれば、上記中和剤は、上記消毒液中の上記pH低下剤全部又はその一部と反応することができる。いくつかの実施形態では、上記中和剤は、上記消毒液中の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは100%の上記pH低下剤と反応することができる。
【0039】
いくつかの態様によれば、上記相互作用剤は、除去剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、用語「除去剤」とは、上記消毒液から上記pH低下剤を除去することにより、上記消毒液のpHを増加させる成分を指す。
【0040】
いくつかの態様によれば、上記除去剤は、上記pH低下剤と相互作用(例えば、結合)し、好ましくは選択的に相互作用する官能基を含むことができる。例えば、上記除去剤は、陰イオン交換樹脂などのイオン交換樹脂を含むことができる。適切な除去剤の例としては、イオン交換ポリマーを含むが、それに限定されない。適切なイオン交換ポリマーの例としては、ダウエックス(登録商標)66遊離塩基陰イオン交換樹脂、アンバーライト(登録商標)IRA96陰イオン交換樹脂、アンバーリスト(登録商標)A21遊離塩基陰イオン交換樹脂及びスカベンジポア(登録商標)フェネチルジエチルアミンを含むが、それらに限定されない。
【0041】
いくつかの態様によれば、上記除去剤は、上記消毒液中の上記pH低下剤全部又はその一部を除去することができる。いくつかの実施形態では、上記除去剤は、上記消毒液中の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは100%の上記pH低下剤を除去することができる。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、活性化により、上記pH依存性抗菌剤の化学的整合性は最小限に影響されるか又は影響されない。いくつかの態様によれば、活性化により、上記pH依存性抗菌剤の約10%未満が化学的に変化し得る。いくつかの態様によれば、活性化により、上記消毒液中の総関連物質が最小限に影響されるか又は影響されず、及び/又は活性化前に上記消毒液中に存在しない付加的な不純物がわずかに形成されるか又は形成されない。いくつかの態様によれば、活性化により、活性化されていない同一の溶液と比較して、総関連物質が約10%未満増加することができる。いくつかの態様によれば、活性化により、活性化されていない同一の溶液と比較して、不純物が約10%未満増加し得る。
【0043】
いくつかの態様によれば、上記消毒液は、上記消毒液を表面に塗布するように構成された塗布器内に配置される。いくつかの実施形態では、上記表面は、動物の皮膚又はヒトの皮膚であってもよい。
【0044】
本発明のいくつかの態様によれば、上記塗布器は、本体と、上記消毒液を収容するための内室と、塗布部材とを含む。いくつかの態様によれば、上記塗布器は、内室に封入され、消毒液をその内部に収容するアンプルをさらに含むことができる。いくつかの態様によれば、上記塗布器は、塗布部材と内室との間に配置され、液体が本体から流れる速度を制御し、及び/又は塗布器の使用中にガラスの破片が塗布部材を押し通すことを回避することに役立つ綿撒糸をさらに含むこともできる。いくつかの態様によれば、上記綿撒糸及び/又は塗布部材に相互作用剤を配置することにより、消毒液が綿撒糸を通過するか及び/又は塗布部材内に入る時に消毒液の1種以上の成分が上記相互作用剤と相互反応する。すなわち、いくつかの態様によれば、「活性化」は、上記消毒液が上記相互作用剤を配置された綿撒糸を通過する及び/又は上記相互作用剤を配置された塗布部材内に入るときを指す。
【0045】
本発明の態様に従って使用されるいくつかの塗布器は、様々な作動手段により、消毒液の内蔵型リザーバを放出して、患者の皮膚を滅菌する。例えば、いくつかの塗布器は、穿刺手段を備えるように設計される。これらの塗布器は、例えば、一般的にはスパイクを備えたヘッドと、密封容器又はカートリッジとを含む。押し又はねじ込み動作を介して、上記ヘッドを上記密封容器に向かって軸方向に移動させることにより、上記スパイクは、上記密封容器を貫通し、密封容器に収容された溶液の放出を達成することができる。穿刺手段を用いる塗布器のいくつかの例としては、それぞれ参考として組み込まれる米国特許第4,415,288号、第4,498,796号、第5,769,552号、第6,488,665号及び第7,201,525号、並びに米国特許出願公開第2006/0039742号を含む。
【0046】
本発明の態様に従って使用される他の塗布器は、一方向の指向性力を印加するか又は局所的な圧力を印加することにより、内蔵された脆弱なアンプルを破壊する。上記指向性力は、一般的には、圧縮応力下でアンプルを破壊するように設計された押し動作により、アンプルの一端に縦方向に印加され、時には所定の応力集中領域において印加される。或いは、脆弱なアンプル中に含まれる抗菌溶液を放出するために、圧力は、アンプルの一部分を粉砕するように設計された絞り動作によりアンプルの局所的な部分に印加されてもよい。上述した手段で脆弱なアンプルを用いる塗布器のいくつかの例としては、それぞれ参考として組み込まれる米国特許第3,757,782号、第5,288,159号、第5,308,180号、第5,435,660号、第5,445,462号、第5,658,084号、第5,772,346号、第5,791,801号、第5,927,884号、第6,371,675号、及び第6,916,133号、第7,182,536号を含む。
【0047】
本発明の態様に従って使用される他の塗布器は、例えばそれぞれ参考として組み込まれる米国特許第8,708,983号、第8,899,859号及び第9,265,923号、並びに米国特許出願公開第2013/0251439号に記載の消毒液を放出する他の方法を含む。
【0048】
他の関連技術の塗布器は、それぞれ参考として組み込まれる米国特許第9,119,946号、米国特許出願公開第2011/0319842号、2015年1月12日に出願された「消毒剤塗布器」と題する米国特許出願公開第14/595,084号、及び2014年12月10日に出願された「消毒剤塗布器」と題する米国特許出願公開第14/566,608号を含む。
【0049】
消毒剤塗布器の様々な態様は、1つ以上の例示的な実施形態を参照して記述される。本明細書で使用する場合、用語「例示的な」とは、実施例、事例又は例示となることを意味し、必ずしも本明細書に開示される消毒剤塗布器の他の実施形態より好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0050】
図1は、本発明に従って使用される消毒剤塗布器10の一例を示す。消毒剤塗布器10は一般的に、本体12と、本体12のフランジに固定された塗布部材16と、レバー26とを含む。消毒液を収容するための脆弱なアンプル14は、本体12内に封入される。その一端は、キャップ19によって密封される。本体12は、内室22を含む。上記塗布器の壁は、薄壁40を含む。本体12の壁の厚さは、押しつぶし領域42の周りで低減される。薄壁40により、レバー26が押し下げられる時に、レバー26の押しつぶし部分36はアンプル14を容易に破砕することができる。綿撒糸46は、塗布部材16とアンプル14との間に配置される。綿撒糸46は、液体が本体から流れる速度を制御し、及び/又は塗布器の使用中にガラスの破片が塗布部材16を押し通すことを回避することに役立つ。レバー26は、ヒンジ部分38、押しつぶし部分36及びレバー26の遠位端から延びる操作部分34を含む。レバー26が押し下げられる時に、力は、レバー26の押しつぶし部分36に伝達される。
【0051】
いくつかの態様によれば、相互作用剤は上記綿撒糸46に染み込まれるか又は別の方法で供給され得る。発泡体塗布部材16は、相互作用剤が追加的又は代替的に染み込まれるか又は別の方法で提供される1枚の均一な発泡体シートを含むことができる。図1の塗布器の例では、アンプル14を破砕するために十分な力でレバー26を動作させることにより上記消毒液が放出される。
【0052】
図2及び3は本発明の態様に従って使用される消毒剤塗布器100の他の例を示す。図2及び3に示されるように、塗布器100は、流体室が収容されるか又は形成される実質的に中空の容器102と、容器102の遠位端に結合されたヘッド部分110と、ヘッド部分110に取り付けられた塗布部材104とを含む。ヘッド部分110は、近位端、遠位端、及び流体室を画定する内側部分を含む。図3に示されるように、ヘッド部分110の近位端は、容器102の遠位端に接続される一方、ヘッド部分110の遠位端は、塗布部材104に接続される。したがって、ヘッド部分110は、容器102と塗布部材104との間に配置される。塗布器100は、押し下げられると容器102内に貯蔵された消毒液を放出する動作アーム106を含む。消毒液を容器からヘッド部分の流体室内に放出するための様々な例示的な機構及び方法は、それぞれ参考として本明細書に組み込まれる上記に挙げられた関連技術の参考文献に含まれる。図2に示された全ての構造が、引用された関連技術の塗布器に見られる任意の適切な構造で置換されてもよいことは、理解すべきである。すなわち、当業者であれば、関連技術の消毒剤塗布器の塗布部材を塗布部材104で置換することによって、塗布部材104を任意の公知の消毒剤塗布器に適用することができる。例えば、塗布部材104を上記参考文献の任意の塗布部材に適用することができる。図1に示される綿撒糸と類似の綿撒糸も塗布器100に含まれることができる。
【0053】
塗布部材104は、例えば、発泡体スポンジ材料、又は容器102から塗布器100の外部の表面への収容溶液の塗布を制御可能にする任意の適切な材料を含むことができる。例えば、発泡体はポリウレタンフォームを含むことができる。発泡体は、容器内に収容された消毒液に応じて親水性又は疎水性であってもよい。塗布部材104に適切な発泡体又は他の材料は、関連する塗布器で見られる。本発明の態様によれば、塗布部材104に相互作用剤が染み込まれる。いくつかの実施形態では、塗布部材104は、第1の層112及び第2の層114を含み、第1の層112及び第2の層114のいずれか一つに相互作用剤が染み込まれるか又は別の方法で提供される。例えば、吹き付け塗装や、発泡体を相互作用剤中に滴下してその上に吸着させること、又は発泡体を形成すると共に相互作用剤を発泡体基材と混合することにより、相互作用剤は第1の層及び/又は第2の層に染み込まれる。図3に示されるように、第1の発泡体層112は、ヘッド部分110の遠位端に向かって位置付けされ又は配置され、第2の発泡体層114は、ヘッド部分110の遠位端から離れて配置される。換言すれば、第1の発泡体層は、ヘッド部分に接続された塗布部材の部分である一方、第2の発泡体層は、使用中に患者の皮膚に接触する部分である。したがって、この構成では、塗布中に消毒液は、まず第1の発泡体層を通過し、その後に第2の発泡体層を通過する。塗布部材104を通過する溶液を案内してその流量を制御するために、選択された発泡材料は、例えば、特定の浸漬速度を有する多孔性材料であり、又は切れ目又は隙間を含む構造的特徴を有する。第1及び第2の発泡体層は、同じ又は異なる発泡体材料を含むことができる。さらに、第1及び第2の発泡体層は、相互に一体的であってもよい。換言すれば、塗布部材104は、1つの発泡体から形成されてもよい。第1及び第2の発泡体層が別個の発泡体から形成される場合、第1及び第2の発泡体層は、例えば、多孔性接着剤、音波積層又は熱積層によって接続されてもよい。
【0054】
容器102は、可撓性、及び変形と化学的浸出に対する耐性を有する、例えば高密度ポリエチレンプラスチック等のプラスチックなどの適切な材料で形成された内蔵構造であることが好ましい。消毒液を直接的に収容するか又は消毒液を貯蔵するアンプル、パウチなどを収容するために、容器102は一般的に中空である。消毒液が容器102からヘッド部分の流体室内に流れることを可能にする従来技術の任意の塗布器の消毒液放出機構は、本発明の塗布器に実装されてもよい。消毒液放出機構は、アンプルを穿刺し、パウチを引き裂き、栓を持ち上げ、又は別の方法で消毒液がヘッド部分の流体室に流入するための流体経路を提供する装置を含む。図2に示される変形例では、消毒液放出機構は、流体容器102に向かって押し込み内部に消毒溶液が含まれるアンプルを穿刺するか又は破壊するための動作アーム106を含む。
【0055】
本発明は、本明細書に記載の消毒液及び/又は塗布器を使用する方法も提供する。いくつかの態様によれば、本発明に係る消毒液及び/又は塗布器は、表面を消毒するために用いられる。好ましくは、本発明に係る消毒液及び/又は塗布器は、例えば、医療処置前に消毒液を患者の皮膚に塗布して微生物を死滅させることにより、医療処置前に表面を消毒するために用いられる。上記患者は、動物又はヒトであってもよい。
【0056】
本発明について、例示の目的のみのために提供される以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例
【0057】
実施例1 pH依存性抗菌剤の分解に対するpHの効果
【0058】
本実施例では、pH依存性抗菌剤であるグルコン酸クロルヘキシジンの分解速度に対する、消毒液のpHの影響について調査した。
【0059】
まず、70%v/vのイソプロピルアルコール中に2%w/vのグルコン酸クロルヘキシジンを含み、かつ見かけpHが7.6であるバルク消毒液を4つの別個の画分に分けた。最初の3つの画分に対して、それぞれ酢酸、クエン酸及び塩酸を用いてそれぞれ約4.5の見かけpHに調整した。1つの画分を対照として使用した。
【0060】
その後に、4つの画分を4つの別個のガラスアンプル内に密封した。次に、各ガラスアンプルを、油浴で約110℃で約30分間加熱し、その後に冷却した。室温まで冷却した後、各画分について、有効分析試験方法で全関連物質(TRS)を測定した。全関連物質の形成は、pH依存性抗菌剤の分解を示唆する。
【0061】
表1は、対照に対する各画分の分解の百分率と共に、加熱後の全関連物質(△TRS)の変化を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示されるように、酢酸、クエン酸又H塩酸でpHが低下した画分では、対照画分と比較して全関連物質は実質的に低い変化を示した。これは、これらの画分が対照画分より低いpH依存性抗菌剤の分解速度を提供することを示す。
【0064】
実施例2 pH依存性抗菌剤の分解に対するpHの効果
本実施例では、70%v/vのイソプロピルアルコール中に含まれる約2%w/vのグルコン酸クロルヘキシジン(7.6の初期見かけpHを有する)の分解速度に対する、消毒液のpHの影響について調査した。
【0065】
まず、バルク消毒液を10個の別個の画分に分けた。表2に示されるように、pH低下剤(グルコン酸、酢酸又はクエン酸のいずれか1種)で9つの画分のpHを調整した。1つの画分を対照として使用した。
【0066】
【表2】
【0067】
その後に、10個の画分を別個のガラスアンプル内に密封した。次に、各ガラスアンプルを、約115℃で約20分間加熱し、その後に各画分の全関連物質を試験した。その後に、各ガラスアンプルを、約115℃でさらに20分間(合計40分間)加熱し、その後に全関連物質を再び試験した。試験結果を、図4-6に示す。
【0068】
例えば、図4は、約115℃で20分間、40分間加熱した後の、pHと全関連物質の濃度との間の相関性を示す。実施例1で述べられるように、全関連物質の形成は、pH依存性抗菌剤の分解を示す。図4に示されるように、約5.5以下のpH値を有する画分について、いずれも20分間後及び40分間加熱した後に、実質的に低い濃度の全関連物質(従って、実質的に低い分解速度)が観察された。図5及び6は、それぞれ酢酸及びクエン酸でpHを調整した画分の類似の傾向を示す。さらに、溶液1~9のいずれも、対照溶液中にも存在しなかった関連物質を示さなかった。
【0069】
実施例3 消毒液中のpH低下剤の中和
本実施例では、4つの消毒液を用意した。各溶液は、70%v/vのイソプロピルアルコール中に約2%w/vのグルコン酸クロルヘキシジンを含有した。各溶液のpHを、pH低下剤で約4.5に調整した。
【0070】
その後に、試料を、中和剤(重炭酸ナトリウム)が埋め込まれるか又は埋め込まれない発泡体綿撒糸に供給した。具体的には、溶液1を中和剤を含まない綿撒糸を通過させ、溶液2を綿撒糸に供給せず、溶液3を中和剤が埋め込まれた綿撒糸を通過させ、溶液4を中和剤が埋め込まれた綿撒糸に激しく撹拌/浸漬した。
【0071】
発泡体綿撒糸で処理した後、溶液のpHを測定した。表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
表3に示されるように、中和剤が埋め込まれた発泡体綿撒糸に供給した溶液(溶液3及び4)は、中和剤のない発泡体綿撒糸に供給した溶液(溶液1)及び発泡体綿撒糸に供給しなかった溶液(溶液2)より実質的に高いpHを示した。
【0074】
処理した後に、各溶液のグルコン酸クロルヘキシジン及び全関連物質の濃度を測定した。表4に示されるように、中和剤を用いた中和は、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の濃度又は全関連物質(TRS)の濃度に実質的に影響しなかった。さらに、中和剤の使用により、中和剤に供給しなかった溶液中に存在しなかった付加的な不純物は何ら形成されなかった。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例4 消毒液中のpH低下剤の除去
本実施例では、70%v/vのイソプロピルアルコール中に2%w/vのグルコン酸クロルヘキシジンを含むバルク消毒液を、pH低下剤でおよそ4.5の見かけpHに調整した。その後に、溶液を別個の画分に分けた。
【0077】
3つの画分を、イオン交換ポリマー(具体的に、ダウエックス(登録商標)66遊離塩基陰イオン交換樹脂)を含む除去剤を通過させた。1つの画分を、除去剤に供給せず、対照として使用した。
【0078】
最初の3つの画分をプールし、プールされた画分を含む溶液のpHを5.7と決めた。さらに、有効試験方法で消毒液の化学的特徴を分析し、具体的には、プールされた溶液及び対照溶液中のグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の濃度を測定した。分析結果を、図7及び表5に示す。
【0079】
特に、図7は、ダウエックスビーズでpH低下剤を除去することによる、グルコン酸クロルヘキシジンの含有量(<8%)への影響は最小限であったことを示す。表5は、ダウエックスビーズを用いてpH低下剤を除去することにより、全関連物質(TRS)の濃度が実質的に影響されなかったことを示す。
【0080】
【表5】
【0081】
さらに、ダウエックスビーズでpH低下剤を除去することにより、対照溶液中に存在しなかった付加的な不純物は何ら形成されなかった。
【0082】
また、異なるイオン交換ポリマー(具体的に、アンバーライト(登録商標)IRA96陰イオン交換樹脂)を除去剤として用いて、同じ実験を行った。
【0083】
本実験では、プールされた画分を含む溶液のpHを6.2と決めた。さらに、有効試験方法で消毒液の化学的特徴を分析し、具体的には、プールされた溶液及び対照溶液中のグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の濃度を測定した。分析結果を、図8及び表6に示す。
【0084】
特に、図8は、アンバーライトビーズでpH低下剤を除去することによる、グルコン酸クロルヘキシジンの含有量への影響は最小限であったことを示す。表6は、アンバーライトビーズでpH低下剤を除去することによる、全関連物質(TRS)の濃度への影響は最小限であったことを示す。
【0085】
【表6】
【0086】
さらに、アンバーライトビーズでpH低下剤を除去することにより、対照溶液中に存在しない付加的な不純物は何ら形成されなかった。
【0087】
また、異なるイオン交換ポリマー(具体的に、アンバーリスト(登録商標)A21遊離塩基陰イオン交換樹脂)を除去剤として用いて、同じ実験を繰り返した。
【0088】
本実験では、プールされた画分を含む溶液のpHを9.3と決めた。さらに、有効試験方法で消毒液の化学的特徴を分析し、具体的には、プールされた溶液及び対照溶液中のグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の濃度を測定した。分析結果を、図9及び表7に示す。
【0089】
特に、図9は、アンバーリストビーズを用いてpH低下剤を除去することによる、グルコン酸クロルヘキシジンの含有量への影響は最小限であったことを示す。表7は、アンバーリストビーズでpH低下剤を除去することにより、全関連物質(TRS)の濃度は影響されなかったことを示す。
【0090】
【表7】
【0091】
さらに、アンバーリストビーズでpH低下剤を除去することにより、対照溶液中に存在しなかった付加的な不純物は何ら形成されなかった。
【0092】
実施例5 消毒液の抗菌効果
本実施例では、pH依存性抗菌剤、グルコン酸クロルヘキシジンの微生物有効性に対する、消毒液のpHの影響について調査した。
【0093】
まず、70%v/vのイソプロピルアルコール中に2%w/vのグルコン酸クロルヘキシジンを含むバルク消毒液を6つの別個の画分に分けた。これらの6つの画分をそれぞれ以下のように処理した。
【0094】
【表8】
【0095】
その後に、全ての6つの画分について、100%、10%及び0.01%のグルコン酸クロルヘキシジン(すなわち、6つの画分について、それぞれ3つの異なる試験濃度試料があり、合計18個の試料であった)の使用濃度で、黄色ブドウ球菌ATCC29213に対する抵抗性を試験した。細菌の平均対数減少を、100%及び10%の試料について30秒後に記録し、0.01%試料について15分間後に記録した。研究結果を、図10に示す。
【0096】
特に、図10は、予想通りに100%の試験濃度で全ての組成において細菌が完全に死滅したことが観察されたことを示す。しかしながら、10%の試験濃度では、画分5(すなわち、pHが4.5であり、又は有効pH範囲以下である画分)は、他の画分(すなわち、pHが有効範囲内にある画分)と比較して、より低い平均対数減少を示した。全般的に、他の5つの組成の平均対数減少について実質的な差は観察されなかった。
【0097】
この研究の結果は、画分5のより低い対数減少によって証明されたように、有効pH範囲以下のpH(例えば、約4.5のpH)を有した溶液中に含有されたpH依存性抗菌剤が、他の5つの画分と比較して、許容可能な微生物学的活性未満であることを示したことを示唆している。さらに、二酸化炭素が供され、酸性化され、その後に中和され、又は酸性化され、除去化合物が供される消毒液について、微生物有効性の変化が観察されなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10